差別禁止部会 第14回(H24.2.24) 川島委員提出資料 第14回部会提出資料 差別禁止部会委員 川島聡 法案骨格試案(2012年2月24日版) 第一章 総則(第一条〜第十条) 第二章 障害に基づく差別の禁止(第十一条〜第十六条) 第三章 障害者権利委員会(第十七条〜十八条) 第四章 紛争の解決(第十九条〜二十七条) 第五章 罰則(第二十八条) 附則 (略) 法案骨格私案(2012年2月24日版)について 障害差別禁止法の基本構造は、「AはBに対してCについてDをしてはならない」である。第一章(総則)では、「Bに対して」「Dをしてはならない」の部分を扱う。Bは「すべての者」(何人)であり、Dは「障害差別」である。これは「障害」と「差別」に分けて定義する。 第二章では、「Aは」「Cについて」の部分を具体的に定める。「労働」「教育」「物品・役務」「不動産・交通」「結社」「公務」の分野ごとに、AとCを明確にする。差別禁止法は、公務遂行者だけではなく、私人の社会・経済活動を規制する法律であるので、「義務を負う者(A)が誰で」、「対象内容(C)が何か」、を明確に特定する必要がある。 障害差別禁止法に定める権利を侵害された者に適切・迅速な救済をもたらし、法律違反をチェックできる仕組みとして、第三章は障害者権利委員会(仮称)、第四章は紛争解決手続を定める。 この法案骨格私案は、十分な検討を経たものではない。しかし、たとえ不十分な内容であっても、法案骨格の具体的な全体像を今提示することは、部会での建設的な議論に僅かでも役に立ちうると思い、この私案を今部会に提出する。この私案は、今後の議論を踏まえ、柔軟に変更していく予定である。 障害差別禁止法は、国民・住民にとって予測可能なものになるために、できる限り分かりやすい構造を持ち、なるべく平易な書きぶりで、上記のABCDを明確にする必要がある。また障害差別禁止法では、権利を持つ者と義務を負う者とのバランスを適正に図る必要がある。そのバランスを適正なものにするためには、4つの次元の障害者の不利、すなわち1)健常者集団と比べた障害者集団の構造的不利、2)障害者諸小集団で異なる不利、3)障害者諸個人で異なる不利、4)障害と他の特徴の結合に応じて異なる不利、を議論の出発点に据える必要がある。 第一章 総則(第一条〜第十条) 第一条 目的 この法律は、日本国憲法及び国連障害者の権利条約にのっとり、障害の有無にかかわらず、すべての者が人間の尊厳、自己決定、差異の尊重、社会参加及び機会平等を実質的にひとしく享受しうるように、何人に対しても障害を理由とする差別の禁止を保障し、もつて障害のある人もない人も共に暮らしやすい万人のための社会の形成に寄与することを目的とする。 説明:尊厳・自己決定・社会参加・機会平等・差異の尊重は、障害者の権利条約の基本原則である。これを実質的にひとしく享受すべきであるとする実質的平等を目的に明示した。 第二条 定義 「障害者」とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 説明:障害者基本法に準じた「障害者」の定義を用いた。この法律では、障害者の定義よりも、障害の定義のほうが、重要な意味をもつ。「障害者に対して障害差別を禁止する」のではなく、「何人に対しても障害差別を禁止する」のが、この法律のめざすところだからである。 2 「障害」とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害をいう。 3 前項に規定する「心身の機能の障害」は、日常生活又は社会生活に相当な制限を受けるものか否かは問わない。ただし、一時的(継続期間が二週間未満のもの)又は些細な「心身の機能の障害」は、「障害」に含まない。 4 第2項に規定する「障害」は、次に掲げる場合を含む。 一 障害の経歴がある場合 二 障害が将来生ずる可能性がある場合 三 障害があると他者が誤認した場合 四 外貌に顕著な特徴がある場合 五 関係者に障害がある場合 説明:障害者基本法の定義を基にしながら、諸国の経験や学説を踏まえ、言葉を少し加えた「障害」の定義にした。「障害」の定義は、基本的に「インペアメント」を意味する。学説の知見を踏まえると、「障害」の定義に「日常生活又は社会生活に相当な制限を受けるもの」という要件を含める必要はないので、このことを明記した。 そのほかに留意すべきこととして、2点ある。@「障害が将来生ずる可能性がある場合」は、疾患の遺伝的素因ゆえに将来障害が生じうることを理由に、相手側が差別をすることを想定している。A「関係者に障害がある場合」の「関係者」とは、親族(民法725 条)、同居者、介助者、事業交流者、文化交流者を想定している。 第三条 定義 「障害を理由とする差別」とは、次のいずれかに該当する行為をいう。 一 不均等待遇 二 合理的配慮義務の不履行 説明:障害差別の定義は、日本においては全く馴染みがないため、なるべく簡潔に分かりやすくするために、1)不均等待遇、2)合理的配慮義務の不履行の2類型にした。 2 「不均等待遇」とは、障害又は障害に関連する事由に基づく行為又は基準が、障害者又は他の者に実質的不利をもたらすことをいう。ただし、その目的が正当であり、かつ、その目的を達成する手段が適切である場合は、この限りでない。 説明:「不均等待遇」の定義は、次の5点を考慮に入れた。1)直接差別、間接差別、関連(起因)差別という英国平等法の3概念すべてを、ひとつの概念(不均等待遇)にまとめあげる。2)障害者が差別を受けたことを証明するときに、比較対象の特定を不要となるような書きぶりにする。3)相手側に、「正当な目的の達成に相応な手段」による正当化の抗弁を認めることで、障害者の権利と相手側の義務とのバランスをはかる。4)「障害又は障害に関連する事由に基づく行為又は基準」という表現を用いることで、直接差別、間接差別、関連(起因)差別の三つをカバーする。なお、障害差別の概念は、X(障害自体を理由とする障害差別)とY(障害自体を理由としない障害差別)とに区別しうる。X に該当するのが直接差別、Y に該当するのが間接差別と関連(起因)差別である。「障害に関連する事由」という文言は、関連(起因)差別と間接差別をカバーする。5)英国平等法は、直接差別については正当化の抗弁を認めていない。直接差別に対して正当化の抗弁を認めないという論点については、今後の検討課題である。第九条の「指針」で、何らかの手立てをすることが考えられうる。 3 前項及び第七条一号に定める「基準」は、規則、事物、制度、慣行、慣習、観念又は規定を含む。 説明:「障害又は障害に関連する事由に基づく基準」の中の「基準」の定義は、間接差別の概念を念頭に置いて、広い意味内容にした。 4 「合理的配慮義務」とは、障害者又は他の者に実質的不利をもたらさないように、その要求に応じて、現状を変更するための合理的措置(以下「合理的配慮」という。)を講じなければならないことをいう。ただし、過重な負担及び著しい困難が生じる場合は、この限りでない。 説明:合理的配慮義務の定義について次の2点を考慮に入れた。1)相手側に「過重な負担及び著しい困難」の抗弁を認めることで、障害者の権利と相手側の義務とのバランスをはかる。2)合理的配慮義務は、基本的に、障害者の求めに応じてなされる。 5 前項に定める「合理的配慮」は、次の合理的措置からなり、その意味は各章の定めるところによる。 一 障害又は障害に関連する事由に基づく行為又は基準が、障害者又は他の者に実質的不利をもたらす場合に、その要求に応じて、当該行為又は基準を変更するための合理的措置 二 建物等の物理的形状が、障害者又は他の者に実質的不利をもたらす場合に、その要求に応じて、当該形状を変更するための合理的措置 三 補助手段の不備が、障害者又は他の者に実質的不利をもたらす場合に、その要求に応じて、当該手段を提供するための合理的措置 四 本項第一号及び第三号に関し、情報について実質的不利が生じる場合に講ずる合理的措置には、利用可能な様式によつて情報を保障する措置が含まれる。 説明:合理的配慮の概念を明確にするために、英国平等法にならい合理的措置が3つの次元から成ることを明記する。「一」は物事の決め方・やり方の変更、「二」は物理的形状(障壁)の変更、「三」は個人への補助手段・補助サービスの提供である。合理的配慮は「二」の側面に限定される配慮であるような印象を持たれることもあるので、「一」「二」「三」を明示することで、合理的配慮の概念が明確になる。特に情報保障の基本的重要性を踏まえ、「四」において情報保障を明示した(英国平等法も同様の規定をもつ)。 6 第4項に定める「過重な負担及び著しい困難」は、次のいずれかの状態をいい、その意味は各章の定めるところによる。 一 事柄の本質を変更する状態 二 財政面その他の面で過重な負担を伴う状態 三 第三者に著しい損害を与える状態 四 障害の存在を知り得なかった状態 7 本条に定める「実質的不利」は、次のいずれかの状態をいう。 一 平等な機会を実質的に享受しえない状態 二 人間の尊厳又は人格が害される状態 三 社会参加が実質的に妨げられる状態 四 自己決定が実質的に妨げられる状態 8 前項に定める「実質的」とは、「軽微又は些細な程度」を超えた状態をいう。 説明:「一」「二」「三」「四」は第一条の内容とリンクする。「二」でハラスメントを扱っている。 第四条 定義 結合差別は、これを障害を理由とする差別とみなす。結合差別とは、障害と他の特徴(人種、信条、性別、社会的身分、門地を含む。)との結合に基づく行為又は基準が、当該特徴を持つ障害者に実質的不利を負わせることをいう。ただし、その目的が正当であり、かつ、その目的を達成する手段が適切である場合は、この限りでない。 説明:たとえば「障害のない女性」と比べても、「障害のある男性」と比べても、より不利に取扱われた「障害のある女性」は、障害と女性という二つの保護特徴の結合を理由に差別を被っている。そのような状況を「障害を理由とする差別」とみなす規定を設けた。 第五条 差別の禁止 何人も、障害を理由とする差別を受けない。 説明:差別禁止法の基本構造は「AはBに対しC について障害差別をしてはならない」である。Bは「すべての人」にすべきであるので、「何人も」という文言を用いた。しかし、Aは「すべての人」にするのは難しい。差別禁止法は、私人の社会・経済活動を規制する法律であるので、差別禁止法によって義務を課せられる者(A)の範囲を明確にする必要がある。Aの範囲は、第二章で分野ごとに明確に定める(すなわち第二章では、「○○○は、障害を理由とする差別をしてはならない」と定めることになる)。 第六条 機密保持 障害者又は他の者は、第二章の下で義務を負う者に対し、障害の存在又は性格を内密に扱うことを要求する権利を有する。 第七条 事前的改善措置 障害者又は他の者に実質的不利をもたらす現状をあらかじめ改善するために、この法律の第二章において障害を理由とする差別の禁止に関する義務を負う主体は、次に掲げる合理的措置(以下「事前的改善措置」という。)を継続的に講じなければならない。ただし、過重な負担が生じる場合は、この限りでない。 一 障害又は障害に起因する事由に基づく基準が実質的不利をもたらす場合に、当該基準を変更するための合理的措置 二 建物等の物理的形状が実質的不利をもたらす場合に、当該形状を変更するための合理的措置 三 補助手段の不備が実質的不利をもたらす場合に、当該手段を提供するための合理的措置 四 本項第一号及び第三号に関し、情報について実質的不利が生じる場合に講ずる合理的措置には、利用可能な様式によつて情報を保障する措置が含まれる。 説明:合理的配慮義務の実効性を確保するために、障害者個人ではなく、一定の障害種別を念頭に置いて障害者一般の地位向上をめざす事前的改善措置を講ずる必要がある。合理的配慮とは、各障害者が、個別具体の場面で必要に応じて、相手側に配慮を求めるものである。社会のルールを変えるのではなく、そのルールに例外を設けることを要求するのが、合理的配慮である。そのため、合理的配慮だけでは社会のルールの変更(社会全体のバリアフリー)はなかなか進まない。また相手側も、何の準備もしていない状況で、突然特定の配慮を求められても、その配慮を提供したくても提供することが困難な場合が生じうる。障害者の要求に沿った合理的配慮を相手側が行いうるためにも、事前的改善措置を相手側に義務づけることが有効となる。また相手側は、そのような事前の措置を講ずることで、中長期的にみて効率よく合理的配慮を提供できるようになると思われる。そのため、合理的配慮に対応した規定を事前的改善措置の中で設けている。日本の既存の法律は、実質的に、この事前的改善措置の内容を備えている場合がある。この差別禁止法との調整が必要となる。 第八条 費用の負担 合理的配慮又は事前的改善措置を享受する障害者又は他の者は、その費用を負担することはない。 第九条 啓発 国及び地方公共団体は、この法律の目的について国民の関心と理解を深め るとともに、当該目的を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものと する。 第十条 財政措置 政府は、この法律の目的に資する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。 第二章 障害に基づく差別の禁止(第十一条〜第十六条) 第十一条 労働 事業主は、次に掲げる事項について、何人に対しても障害を理由とする差別をしてはならない。 一 募集、採用、配置、昇進、降格及び教育訓練 二 住宅資金の貸付その他これに準ずる福利厚生の措置 三 労働者の職種及び雇用形態の変更 四 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新 五 雇用に関係する他の事項 第十二条 教育 学校及び学校設置者は、次に掲げる事項について、何人に対しても障害を理由とする差別をしてはならない。 一 入学、卒業、転学、除籍、退学、復学 二 教育の提供 三 あらゆる役務、設備又は利益 四 処分 五 その他の学校関係事項 第十三条 物品・役務 次に掲げる者は、その供給する物品又は役務について、何人に対しても障害を理由とする差別をしてはならない。 一 消費者基本法又は消費者契約法に規定する事業者 二 特定商取引に関する法律に規定する販売業者又は役務提供事業者 三 金融商品取引法に規定する金融商品取引業を行う者 四 医療法に規定する医療の担い手及び医療提供施設 五 医師法に規定する医師 六 歯科医師法に規定する歯科医師 七 保健師助産師看護師法に規定する保健師、助産師、看護師及び准看護士 八 薬剤師法に規定する薬剤師 九 薬事法に規定する薬局の管理者 十 老人福祉法に規定する老人居宅生活支援事業に従事する者 十一 社会福祉法に規定する社会福祉事業の運営主体及び社会福祉事業に従事する者 十二 保険業法に規定する保険会社等 十三 放送法に規定する放送事業者 十四 銀行法に規定する銀行 十五 食品衛生法に規定する食品等事業者 十六 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定する風俗営業を営む者 十七 職業安定法に定める公共職業安定所等 十八 旅館業法に規定する旅館業を営む者 十九 業として対価を得て物品又は役務を提供する者で、○○○で定めるもの 第十四条 不動産・交通 賃貸人又は賃貸人になろうとする者は、不動産に関する契約について、何人に対しても障害を理由とする差別をしてはならない。 2 建築基準法に規定する工事監理者、建築主、設計者及び工事施工者は、建築物に関する事項(○○○で定める。)について、何人に対しても障害を理由とする差別をしてはならない。 3 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に規定する施設設置管理者は、 同法に規定する特定事業について、何人に対しても障害を理由とする差別をしてはならない。 4 宅地建物取引業法に規定する宅地建物取引業を営む者は、同法に規定する宅地建物取引業について、何人に対しても障害を理由とする差別をしてはならない。 5 国及び地方公共団体は、都市計画法に規定する都市の整備、開発その他都市計画の遂行にあたり、何人に対しても障害を理由とする差別をしてはならない。 6 業として対価を得て不動産を提供する者で、○○○で定めるもの 第十五条 結社 法人でない社団又は財団は、その構成員の総数が○○人以上の場合には、 次に掲げる事項について、その構成員に対して障害を理由とする差別をしてはならない。 一 加入、脱退、地位、財産及び業務執行事項 二 ○○○で定めるその他の事項 第十六条 公務 次に掲げる者は、その権限事項又は所掌事務について、何人に対しても障害を理由とする差別をしてはならない。 一 行政手続法及び行政不服審査法に規定する行政機関又は行政庁 二 裁判所法に規定する裁判官及び裁判官以外の裁判所の職員 三 公職選挙法に規定する中央選挙管理会、都道府県の選挙管理委員会及び市町村の選挙 管理委員会 四 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律に規定する刑事施設の長、刑務官及 び留置業務管理者 五 少年院法に規定する少年院の長及び職員 六 更生保護法に規定する保護観察所の長並びに保護観察官及び保護司 七 検察庁法に規定する検察官、検察事務官及び職員 八 地方自治法に規定する地方公共団体の長及び議会の議員 九 警察法に規定する国家公安委員会、内部部局、附属機関、職員及び都道府県公安委員会 十 国家公務員法に規定する国家公務員 十一 地方公務員法に規定する地方公務員 第三章 障害者権利委員会(第十七条〜十八条) 第十七条 内閣府に、第一条の目的を達成することを任務とする障害者権利委員会(仮称)を置く。 2 障害者権利委員会は、○○○の所轄に属する。 3 障害者権利委員会は、第一項の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。 一 障害を理由とする差別の禁止義務の履行状況の監視 二 事前的改善措置義務の履行状況の監視 三 紛争の解決 四 前各号に関する必要な調査研究 五 前各号に掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき、障害者権利委員会に属させられた事務 4 障害者権利委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行う。 5 障害者権利委員会は、委員長及び委員○○人を以て、これを組織する。 一 委員長及び委員は、障害者の委員が過半数を占めるものとする。 二 委員長及び委員会は、法律又は障害に関する学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が、両議院の同意を得て、これを任命する。 三 委員長の任免は、天皇が、これを認証する。 四 委員長及び委員は、これを官吏とする。 6 委員長及び委員の任期は、五年とする。但し、補欠の委員長及び委員の任期は、前任者の残任期間とする。 7 委員長及び委員は、再任されることができる。 8 委員長及び委員は、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがない。 一 破産手続開始の決定を受けた場合 二 懲戒免官の処分を受けた場合 三 禁錮以上の刑に処せられた場合 9 障害者権利委員会は、その職務を行うために必要があるときは、次に掲げることをすることができる。 一 関係行政機関の長に対し、資料の提供その他必要な協力を求めること。 二 都道府県知事から必要な調査報告を求めること。 三 公聴会を開いて一般の意見を求めること。 第十八条 何人も、この法律の規定に違反する事実があると思料するときは、障害者権利委員会に対し、その事実を報告し、適当な措置をとるべきことを求めることができる。 2 前項に規定する報告があつたときは、障害者権利委員会は、事件について必要な調査をしなければならない。 3 障害者権利委員会は、この法律の規定に違反する事実があると思料するときは、職権をもつて適当な措置をとることができる。 第四章 紛争の解決(第十九条〜二十七条) 第十九条 苦情の自主的解決 第二章において義務を負う者(以下、「義務者」という。)は、障害を理由とする差別に関する苦情の申出を受けたときは、障害者権利委員会に対し当該苦情の処理をゆだねる等その自主的な解決を図るように努めなければならない。 第二十条 紛争の解決の援助 障害者権利委員会は、第二章に定める事項についての障害者又は他の者と義務者との間の紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。 2 義務者は、障害者又は他の者が前項の援助を求めたことを理由として、当該障害者又は他の者に対して不利益な取扱いをしてはならない。 第二十一条 調停の委任 障害者権利委員会は、第二十条に規定する紛争について、当該紛争の当事者(以下「関係当事者」という。)の双方又は一方から調停の申請があつた場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、調停委員に調停を行わせるものとする。 第二十二条 調停 前条の規定に基づく調停(以下、「調停」という。)は、○人の調停委員が行う。 2 調停委員は、障害者権利委員会の委員のうちから、委員長があらかじめ指名する。 3 調停委員は、調停のため必要があると認めるときは、関係当事者の出頭を求め、その意見を聴くことができる。 4 調停委員は、紛争に係る調停のために必要があると認め、かつ、関係当事者の双方の同意があるときは、関係当事者及び○○○で定める他の関係者の出頭を求め、その意見を聴くことができる。 5 調停委員は、関係当事者からの申立てに基づき必要があると認めるときは、○○○に定める者から当該事件につき意見を聴くものとする。 6 調停委員は、調停案を作成し、関係当事者に対しその受諾を勧告することができる。 7 調停委員は、調停に係る紛争について調停による解決の見込みがないと認めるときは、調停を打ち切ることができる。 8 調停委員は、前項の規定により調停を打ち切つたときは、その旨を関係当事者に通知しなければならない。 第二十三条 訴訟手続の中止 第二十条に規定する紛争のうち民事上の紛争であるものについて関係当事者間に訴訟が係属する場合において、次の各号のいずれかに掲げる事由があり、かつ、関係当事者の共同の申立てがあるときは、受訴裁判所は、四月以内の期間を定めて訴訟手続を中止する旨の決定をすることができる。 一 当該紛争について、関係当事者間において調停が実施されていること。 二 前号に規定する場合のほか、関係当事者間に調停によつて当該紛争の解決を図る旨の合意があること。 2 受訴裁判所は、いつでも前項の決定を取り消すことができる。 3 第一項の申立てを却下する決定及び前項の規定により第一項の決定を取り消す決定に対しては、不服を申し立てることができない。 第二十四条 資料提供の要求等 障害者権利委員会は、調停委員に係属している事件の解決のために必要があると認めるときは、関係行政庁に対し、資料の提供その他必要な協力を求めることができる。 第二十五条 勧告等 障害者権利委員会は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、義務者に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。 第二十六条 公表 障害者権利委員会は、第二章の規定に違反している義務者に対し、前条の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかつたときは、その旨を公表することができる。 第二十七条 委任 本章に定めるもののほか、調停の手続に関し必要な事項は、○○○で定める。 第五章 罰則(第二十八条) 第二十八条 過料 第二十五条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。 附則(略) (以上)