差別禁止部会 委員提出資料第15 回(H24.3.9) ○池原毅和委員、大谷恭子委員 竹下義樹委員 ○太田修平委員 ○川島聡委員 医療の分野における差別禁止について 差別禁止部会 委員 竹下義樹 同 大谷恭子 同 池原毅和 1 基本的な考え方 (1) 障害者権利条約の医療に関する基本的規定 ○ 障害者権利条約14 条は、障害を理由とした自由剥奪を禁止しており、これは障害のある人だけが特別な自由剥奪処分の対象とされてきている状況を踏まえて、そのような偏頗な自由剥奪処分は差別であるとする思想を表明したものである。 ○ 障害者権利条約19 条は、特定の生活様式を強いられないとしており、これも障害を理由に地域から隔絶した施設での生活を事実上強いられてきている状況を踏まえ、そのことが差別と社会的排除を生んでいるので、これを禁止する思想を表明したものである。 ○ 障害者権利条約が、医療及びハビリ・リハビリテーションについて「任意のものであること」を求めているのは1、他の者には前提とされている自発的意思に基づく医療提供が、障害を理由に無視されてきた状況を踏まえて、他の者と同質・平等の医療提供の内容に任意性・自発性が含まれることを求めたものである2。 ○ 障害者権利条約17 条は障害のある人の心身のあるがままの状態を尊重すること(インテグリティの保障)を求めている。これは障害を医学的に治療されるべき望ましくない状態とし、本人の意思にかかわらずに医療が強いられてきている状況を踏まえ、障害のある人の自律性とアイデンティティを保障して、医学モデルが生み出す障害に対する否定的評価と差別をなくすことを求めたものである。 (2) 現行法制と障害者差別禁止法の関係 ○ 現行法制度にすでに存在している強制入院制度を同じ法律のレベルで改廃させることは困難と考えられる(障害者権利条約が国内法的効力を有するに至れば、上位法である同条約の要請からは改廃されるべきことになろう)。 ○ これに対して、個別的治療行為についての強制や代諾について定めた規定は現行実定法にはなく、インフォームド・コンセントの原則は医療を行う上での基本的な原則として承認されているので、差別禁止法で障害を理由としてインフォームド・コンセントを否定するのは差別であるとする規定を置くことは現行法と抵触しないと考えられる。 ○ また、現行法の強制入院の実定法上の要件を変更するのではなく、地域での療養生活を可能にする合理的配慮を尽くさずに入院を開始しまたは継続させることは、他の者と平等に地域生活を享受することを妨げることになるので、差別となるとすることも現行法に抵触しないと考えられる(米連邦最高裁、オルムステッド事件)。 2 医療分野における差別禁止条項案 第○条 保健医療の公平な水準の保障 何人も、障害に基づく差別なしに、障害のために必要とされる保健サービスを含め、他のものに提供されるものと同一の範囲、質及び水準の保健医療を本人の求めに応じて保障されなければならない。 第○条 保健医療における合理的配慮義務 医行為、医業類似行為又はこれらに関連する行為(以下「医行為等」という3)に関与する者は、次に掲げる合理的配慮を行わなければならない。 (1) 適切な情報伝達方法 (2) 医行為等に関して十分な説明に基づく自由な同意が行われるために必要な自己決定の支援4 (3) 補助者の付添いの承諾 (4) 補助機器、人的援助の提供 (5) 医行為等の提供に関する運用、方針、手続における不利益除去対策 (6) 在宅での療養及び可能な限り居住地域で医療的ケアを受けられ るようにするための支援5 (7) その他、障がいのある人のサービスの提供を受ける権利を実質的 に保障するために必要な合理的配慮を行うこと。 第○条 保健医療における差別の定義 保健医療に関する差別とは、次に掲げるものをいうものとする。 (1) 次の行為を行うこと @ 障がいを理由とする、医療の提供の拒否又は制限、不利益取扱い A 障がいを理由として、自発的意思に基づかない医行為等を行うこと (2) 前条の合理的配慮義務に違反すること。ただし、当該合理的配慮を行うことが過度の負担となることが証明された場合はこのかぎり でない。 1 条約25 条dは、「他の者と同一の質の医療〔ケア〕(特に、十分な説明に基づ く自由な同意に基づいたもの)を障害のある人に提供するよう要請する」とし、 26 条bは、「障害のある人により任意〔自由〕に受け入れられるものであること」 と定めている。 2 条約 25 条は、「障害に基づく差別なしに到達可能な最高水準の健康を享受する 権利を有することを認める」とし、「他の者に提供されるものと同一の範囲、質及 び水準の無償の又は負担可能な費用の保健サービス(性及び生殖に関する保健サ ービス、並びに地域社会の公衆衛生計画を含む。)を提供すること。」、「障害のあ - 4 - る人自身が属する地域社会(農村を含む。)に可能な限り近くで提供すること。」を求めている。 3 医療に関連する行為としては、医行為、医療関連行為、医業類似行為がある。 4 自発的治療を前提にすることから自発的意思の表明が困難な場合について必要な合理的配慮義務 5 地域生活を可能にし入院を回避するための合理的配慮義務 2012年3月9日 日常生活(医療)に関する意見書 障がい者制度改革推進会議 差別禁止部会 構成員 太田修平 私たち障害のある者たちの日常生活において、医療は生涯にわたって重要な位置を占めています。 それは、「生命」に直結する課題であり、「自由」と関係する問題だからです。 障害があると、この問題で不利益な扱いを受けることが多くなります。 それは、 ・インフォームドコンセントが守られない。 (強制入院をさせられる、あるいは十分な説明がないまま、治療を十分に受けられない状況など) ・地域で治療を受けたいと考えても、安易に病院に入院させられる。 (最善の治療をしてくれない、あるいはそういうところを紹介してくれない。) ・入院しても、人権が守られる環境どころか、十分な看護・ケアを受けられない。 ・病院や医師によっては、障害のある人の診療を拒否する。 ・医療機関それ自体に建物のバリアがある。 ・言語の障害があるため、話をよくきいてくれない。 ・医療的所見のもと、不当に日常生活に制限を加える。 ・その時点における医学水準と、正しい情報のもとに、必要な医療を受けることができるような機会が少ない ・明らかに不要と思われる医療を継続させられる。 ・保険点数が低いため、転院を余儀なくされたり、必要なリハビリが打ち切られる。 などなどです。 上記の中で、差別禁止という観点からは、特にインフォームドコンセントの問題、診療拒否の問題、構造上のバリアの問題、そしてコミュニケーションの問題などの解決が重要であると考えます。 なお、JDF条約小委員会が2008年10月29日の政府意見交換会に出した意見書 の抜粋と、2010年年6月7日の障がい者制度改革推進会議第一次意見、2010年12月17日の障がい者制度改革推進会議第二次意見を資料に添付します。さらに、末尾に 第15 回差別禁止部会(H24.3.9) 太田修平委員提出資料 JDF委員からの資料も参考として、添付させて頂きます。 2008 年10 月29 日 第6回 政府意見交換会 障害者権利条約厚生労働省関連(2 回目)の項目についての意見書(抜粋) 5.医療等(第4条、第12 条、第25 条、第26 条ほか) (1) 精神保健福祉法上の保護者制度及び措置入院制度 第3 回意見交換会でも表明したとおり、精神保健福祉法の保護者制度及び措置入院制度 は、権利条約第12 条2 項の「あらゆる側面において他のものとの平等を基礎として法的能力を有する」との規定と、第25 条(d)の「保健の専門家に対し、他の者と同一の質の医療〔ケア〕(特に、十分な説明に基づく自由な同意に基づいた医療(free and informed consent))を障害のある人に提供するよう要請すること。」に違反していると考える。JDF としては、制度を改廃すべきであると考えるが、前回、明確な回答は無かったと記憶している。また、自傷他害の別表関連については、持ち帰るとしたが、これらの点につき、重ねて貴省の見解をお聞きしたい。 (参考:自傷他害の別表は→ http://www005.upp.so-net.ne.jp/smtm/page3301.htm) (2)心神喪失者等医療観察法 心神喪失者等医療観察法について第3 回意見交換会では、管掌は法務省とのことでお答 えいただけなかったが、今般の厚生労働省令133 号は法の趣旨の根幹を破壊するものと考 える。省令により法務省所管の法律の根幹を変質させることが、許されるのか。 また、国連においては、「被拘禁者」の中に非自発的な施設への入所者が入っていることは、もはや自明である。心神喪失者等医療観察法と権利条約第12・14・15・16・17・19・25d・26b 条との間での貴省の見解をお聞きしたい。 (3)患者の権利の確立 第25 条(d)(e)項の規定を担保する患者の権利を保障する法律が必要である。日本に はインフォームド・コンセントを担保する法律・制度が無く、現状では権利条約に抵触する。貴省はいかがお考えか。 平成22年6月7日 障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)(抜粋) 4)医療 (推進会議の問題認識) 障害者が地域において安心して自立した生活が送れるためには、すべての障害者が障害を理由とする差別なしに可能な限り最高水準の健康を享受できるよう、必要な医療やリハビリテーション等が提供されなければならない。特に精神医療に関しては、医療と福祉が混在し制度上の問題を多く含んでいる精神保健福祉法の抜本的な改正が必要である。 【精神障害者に対する強制入院等の見直し】 現行制度では、精神障害者に対する措置入院、医療保護入院、裁判所の決定による入院、強制医療介入等については、一定の要件の下で、本人の同意を必要とせずに、強制的な入院・医療措置をとることが可能となっており、障害者権利条約を踏まえ、自由の剥奪という観点から検討すべき問題がある。 このため、現行の精神障害者に対する強制入院、強制医療介入等について、いわゆる「保護者制度」も含め、見直すべきである。 【厚生労働省】 【地域医療の充実と地域生活への移行】 精神科病院においては、入院治療の必要がないにもかかわらず、長期入院による自立生活の困難等の問題により入院せざるを得ない、いわゆる「社会的入院」患者が厚生労働省の統計から推定される人数でも約7万人いるといわれている。 このような現状を改善するため、入院中の精神障害者に対する退院支援の充実を図るべきである。退院支援や地域生活への移行後における医療、生活面からのサポート(ショートステイ等を含む。)の在り方については、総合福祉部会で検討を進める。 【厚生労働省】 【精神医療の一般医療体系への編入】 現行制度においては、精神疾患のある患者は、臨時応急の場合を除いて、原則として精神病室以外の病室には入院できないこととなっており、このことが精神障害者とって一般医療サービスを受けることを困難にしている。また、精神科医療の現場においては、いわゆる「精神科特例」により一般医療に比して医師や看護師が少ない状況にある。 このような状況を踏まえ、以下を実施すべきである。 ・ 精神医療の一般医療体系への編入の在り方について、総合福祉部会での今後の議論を踏まえ、推進会議において検討を進める。 ・ 特に精神医療の現場における医師、看護師が一般医療より少ない現状を改善し、その体制の充実を図るため、「精神科特例」の廃止を含め、具体的な対応策を講ずる。 【厚生労働省】 【医療に係る経済的負担の軽減】 障害者は健康面における特段の配慮や対応を必要とする場合が多いが、継続的な治療等に要する費用負担が大きいため、必要な医療を受けることが困難な状況がある。 このような状況を改善するため、障害者がその健康状態を保持し、自立した日常生活等を営むために必要な医療を受けたときに要する費用負担については、本人の負担能力に応じたものとする方向で、総合福祉部会において引き続き検討する。 【厚生労働省】 【地域生活を容易にするための医療の在り方】 日常生活における医療的ケア(たん吸引、経管栄養等)についても、一部はホームヘルパー等によって行われているが、原則として医師・看護師等のみに限定されているため、単身での在宅生活の途が閉ざされ、また同居の場合その家族にとって重い介助が負担となっている。 このような状況を改善するため、以下を実施すべきである。 ・ たん吸引や経管栄養等の日常生活における医療的ケアについては、その行為者の範囲を介助者等にも広げ、必要な研修や手続の更なる整備等を行う。 ・ 障害者や児童に対する受診拒否の実態を把握し、改善のための措置を講ずる。 【厚生労働省】 (政府に求める今後の取組に関する意見) ○ 精神障害者に対する強制入院、強制医療介入等について、いわゆる「保護者制度」の見直し等も含め、その在り方を検討し、平成 24 年内を目途にその結論を得る。 ○ 「社会的入院」を解消するため、精神障害者に対する退院支援や地域生活における医療、生活面の支援に係る体制の整備について、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成23 年度内にその結論を得る。 ○ 精神科医療現場における医師や看護師等の人員体制の充実のための具体的方策について、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成24 年内を目途にその結論を得る。 ○ 自立支援医療の利用者負担について、法律上の規定を応能負担とする方向で検討し、平成23 年内にその結論を得る。 ○ たん吸引や経管栄養等の日常における医療的ケアについて、介助者等による実施ができるようにする方向で検討し、平成22 年度内にその結論を得る。 平成22年12月17日 障害者制度改革のための第二次意見(抜粋) 4)健康、医療 (推進会議の問題認識) 障害者権利条約の考え方を踏まえ、すべての障害者が可能な限り最高水準の健康を享受し、その尊厳にふさわしい生活を営むことができるよう、障害に基づく差別なしに必要な医療が自らの選択によって受けられるようにすべきであり、医療提供に当たっては、人権の尊重が徹底されなければならない。 こうした医療の提供は、地域生活を支援する必要なサービスの提供と相互に連携してなされなければならない。 同時に、先端医療分野で障害原因の軽減や根本治癒が再生医療として可能となりつつある現状を踏まえ、この分野においても希少疾患として障害者が取り残されることがないように、必要な措置が講じられるべきである。 【地域生活を可能とする医療の提供】 障害者が安心して地域社会で生活を営むことができるためには、まずは、障害に基づく医療拒否等の差別が禁止されなければならない。 また、医療及び医療的ケアの必要性が高い重症心身障害者や重度障害者等が地域社会での日常生活を営むためには、医療及び医療的ケア(たん吸引、経管栄養等)が日常生活、社会生活の場において円滑に提供されなければならず、そのための体制確保が必須である。 更には、日常生活における医療的ケアが、介助者等にも行えるようにするなど、地域生活のために必要な行為として制度的に保障されるべきである。 【難病、その他希少疾患等に対する適切なサービス提供及び調査研究の推進】 難病、その他希少疾患等(以下、「難病等」という。)については、本人、家族や周囲の者はもとより、医療関係者においても適切かつ十分な理解がなされておらず、これらの難病等に対して早期になすべき対応に遅れが出たり、適切な医療が提供されなかったり、地域社会で生活する上で必要となる生活支援のためのサービスがない場合もある。 そこで、これらの難病等により支援の必要な状態にある人に対して、医療面での対応として、身近なところで専門性のある医療サービスを受けることができる環境整備を進めるとともに、地域社会で生活する上での困難に対して、その生活を支援するためのサービスが提供されなければならない。 更に、障害の原因となるこれらの難病等の予防や治療に関する調査及び研究を推進することが必要である。 【人権尊重の観点からの精神医療の体制整備】 精神障害者への医療サービスは、精神医療のニーズを十分に精査し、必要最低限かつ適正な数の病床数への削減を行い、急性期・重症患者等への医療の充実を図るとともに、入院を要しない精神障害者への地域での医療提供体制を確保する必要がある。その際には、人権への理解を含め高い資質を備えた者による医療サービス提供体制が確保されなければならない。 また、入院及び隔離拘束の際の保護者に代わる公的機関(司法の関与を含む。)の責任が明記されなければならない。 更に、苦情処理、権利擁護等を行う第三者機関による新たな監視システムが必要である。 今後、これまでの病院への入院を主体とする施策を転換し、人権擁護に基づいた地域に根差した精神医療体制を構築すべきである。 また、精神障害者及び家族に対して、病状及び治療方針等の情報が十分に提供されなければならない。 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。 ・ 十分な説明を受けた上で、自由な意思に基づく同意・選択によって障害に基づく差別なしに必要な医療が受けられること。 ・ 医療及び医療的ケアの必要性が高い重症心身障害者や重度障害者等が地域社会で自立した生活を営むことができるよう、日常生活、社会生活の場において訪問医療等の必要な医療や生活支援サービスが提供されること。 ・ 日常生活における医療的ケアが、介助者等によっても行える体制の整備がなされること。難病その他の疾患等により支援の必要な状態にある人には、身近なところで専門性のある医療が提供されるとともに、地域社会で自立した生活を営むために必要なサービスが提供されること。 ・ 障害原因の軽減や根本治癒についての再生医療に関する研究開発の推進が図れるよう必要な措置を取ること。 ・ 難病等についての調査研究の推進がなされること。 ・ 人権尊重の観点を踏まえた適切な精神医療の体制整備が図られること。 (基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見) ○ 障害者の人権を確保しつつ、必要な医療が提供されるために必要な施策 を講ずること。 ○ 障害者が地域社会で自立した生活を営むことができるよう、日常生活における可能な限り身近なところで必要な医療や支援サービスが提供されるために必要な施策を講ずること。 ○ 障害の原因となる難病等の治療や症状の軽減に係る調査及び研究を推進すること。 (JDF委員より) 障害者権利条約モニタリング人権モニターのための指針 専門職研修シリーズNo.17 国際連合人権高等弁務官事務所国際連合 12 ニューヨーク/ジュネーブ2010 年 http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/rightafter/right_agreement_monitor.html 以下一部引用 法律の前における平等な承認の権利では、とりわけ、障害を法的能力はく奪の根拠とすることを廃止する必要がある。たとえば、障害のある人の代理として決定を下す後見人を任命する慣習を廃止し、代わりに、障害のある人が自ら決定できるよう支援する。 身体の自由及び安全の権利では、とりわけ、十分な説明にもとづく自由な同意がない限り、誰も精神障害および知的障害などの障害を理由に、精神科施設およびその他の施設に収容されることがないよう、監視する必要がある。 拷問からの自由で は、とりわけ、各施設が障害のある人に対し、電気ショック療法の実施や檻のベッドの使用などを最終手段として用いたり、あるいは本人の意思に反して、障害 を矯正するための押しつけがましい、または元に戻すことのできない治療を課したりしているかどうかを調査しなければならない。 国連人権高等弁務官事務所08 年10 月「被拘禁者のための尊厳と正義の週間、情報 ノートNo.4 障害者」 http://www.ohchr.org/EN/UDHR/Documents/60UDHR/detention_infonote_4.pdf) 以下一部引用 「障害者権利条約は、障害の存在に基づく自由の剥奪は国際人権法に反しており、本質的に差別であり、そしてそれゆえに不法であることを明確に宣言する。障害に加えて追加の根拠が自由の剥脱の正当化に使われる場合に対しても、こうした違法性は拡大して認められる。追加の根拠とは例えばケアや治療の必要性あるいはその人や地域社会の安全といったものである。」 08年7月28日 国連第63回総会への拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰に関する、人権理事会特別報告官(Prof. Manfred Nowak)の報告 英文全体はこちらからワードファイルダウンロード http://nagano.dee.cc/63175en.doc 拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰に関する中間報告 要約 国連総会決議62/148に従って提出する当報告書において、特別報告官は彼の権限内にある疑問点についてのとりわけ全体的は傾向と発展において特に懸念される事柄について述べている。 特別報告官は総会に対して、障害者の状況について注意を喚起しており、障害者が放置、拘束や隔離という厳しい状態、また同様に、身体的、精神的、性的暴力に頻繁にさらされていることに注意を喚起する。彼は公的施設のみならず民間領域でも同様にこうした行為が行われているにもかかわらず、こうした行為が表面化せず、また拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰と認識されていないことに懸念を表明する。最近発効した障害者権利条約とその選択議定書は障害者に関して反拷問という枠組みから再点検する絶好の機会を提供している。障害者に対してふるわれている暴力と虐待を拷問あるいは残虐な取り扱いとして再考することにより、被害者そしてその権利を擁護するものはより強い法的保護と人権侵害への補償を獲得することができる。 4 章において、特別報告官は独居房への隔離拘禁の使用を検証している。独居拘禁は明白に、精神的健康への否定的な影響があるものとして記録されている。 そしてそれゆえ、独居拘禁は例外的な条件においてのみあるいは犯罪調査の目的で絶対的に必要とされる場合にのみ行われるべきであるとしている。特別報告官は報告の付属文書として、非拘禁者の権利尊重と保護を促進する有益な手段として独居拘禁の利用と効果におけるイスタンブール宣言に注意を喚起している。 中略 三章 障害者の拷問からの保護 37 その権限行使において、特別報告官は障害者に対して行われている多様な形態の暴力と虐待についての情報を得てきた。これら障害者には男性、女性、子供が含まれるが、彼らの障害ゆえにこの人たちは放置と虐待の対象とされている。 38 障害者は施設に入れられ社会から隔離されていることが多い。こうした施設には刑務所、福祉的ケアセンター、児童施設そして精神保健施設が含まれる。障害者は意思に反しあるいは自由なインフォームドコンセントもなしに、長期間自由を奪われている。これは時には一生にわたる場合もある。これらの施設内部では、障害者は、頻繁に言語に絶する屈辱的な処遇、放置、身体拘束と隔離拘禁といった厳しい処遇、同様に身体的、精神的、性的暴力にさらされている。拘禁施設における合理的配慮の欠如は放置、暴力、虐待、拷問そして残虐な処遇にさらされる危険を増加しているといえよう。 39 民間領域において、障害者はとりわけ暴力と性的虐待も含む虐待にさらされやすい弱者である。家庭内、家族の手によってあるいは介護するもの、保健従事者、そして地域社会の成員の手によって虐待が行われている。 40 医学実験や侵襲的で非可逆的な医療が同意なしに障害者に対して行われている(例えば、不妊手術、中絶そして、電気ショックや抗精神病薬を含む精神を変容させる薬といった障害を矯正したり軽減したりすることを目的とした介入) 41 特別報告官は、多くの事例において、こうした行為が障害者に対して行われる場合において、表面化しなかったり、あるいは正当化されたりしており、拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰と認識されていないことに懸念を表明する。最近発効した障害者権利条約とその選択議定書は障害者に関連する事柄について拷問禁止の枠組みから検証する絶好の機会を提供している。 A 拷問から被害者を保護する法的な枠組み 42 拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は罰禁止条約、および、国連自由権規約7 条、子供の権利条約37 条、において拷問の絶対的禁止が含まれており、障害者権利条約においても拷問の禁止が15 条において再確認されている。障害者権利条約15 条によれば、障害者は拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない権利を有しており、特に科学的医学的実験を受けない権利を有している。15 条第2項において締約国は、他のものと平等に拷問や虐待から障害者を保護するために、効果的な立法上、行政上、司法上その他の措置をとる義務がある 43 障害者権利条約16 条は障害者に対しての暴力、虐待搾取を禁じており、また17 条はすべての障害者に対して、身体的精神的インテグリティ(不可侵性完全性)が尊重される権利を認めている。 44 特別報告官は障害者に関しては、障害者権利条約は更に権威あるガイドを提供することにより、拷問および虐待の禁止についてのほかの人権条約を補強していることを明記する。たとえば、条約3 条は障害者の個人としての自律の尊重の原則そして自らの選択の自由を宣言している。さらに12 条はあらゆる生活領域、例えばどこにすむか決めること医療を受けるか否かを決めることなどが含まれるが、において法的能力を享受する平等な権利を認めている。さらに付け加えて、25 条においては障害者の医療は自由なインフォームドコンセントを基盤としなければならないとしている。したがってかつての拘束力のない基準、例えば国連原則として知られている、1991 年の精神疾患者の保護および精神保健ケアの改善に関する原則(決議46/119)について、特別報告官は非自発的治療と非自発的拘禁を受け入れることは障害者権利条約の条項に違反と明記する。 B 障害者に対して、適用する拷問と虐待からの保護の枠組み 45 国際法において、とりわけ拷問禁止条約の下では国家は拷問を犯罪行為とする義務がある。すなわち加害者を起訴し、犯罪の重大さに応じた適切な刑罰を科し、そして被害者に賠償提供する義務がある。障害者に振るわれている暴力と虐待を拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰として認識し位置づけなおすことにより、被害者およびその権利擁護者は人権侵害に対するより強い法的保護と補償や回復を獲得しうる。 1 拷問の定義の要素 46 拷問と虐待からの保護に関する障害者権利条約15 条の適用については拷問禁止条約の1 条に含まれる拷問の定義によって説明することができる。障害者に対する行為あるいは障害者を尊重しないという怠慢が拷問となるには、拷問禁止条約の拷問の定義の4 つの要素すなわち、激しい痛みや苦痛、意図、目的そして国家の関与、が存在することが必要である。この定義を満たさない行為であっても、拷問禁止条約16 条のもとで、残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰となることもある 47 その本質上、苦痛や痛みの度合いの評価に当たっては、そのケースについてのすべての条件が検討されることが求められる。その条件には障害の存在そのものと同様に、被害者の処遇や拘禁条件の結果、損傷が生じあるいは悪化したかについても注目する必要がある。医学的治療として完璧に正当化されうるものであろうと、医療は重大な痛みや苦痛をもたらし、侵襲的で非可逆的な本質があるがゆえに、治療的目的に欠けるときあるいは障害を矯正するまたは軽減する目的を持つときで、当事者の自由なインフォームドコンセントなしに強制され行われるならば、拷問そして虐待を構成することとなろう。 48 拷問禁止条約における拷問の定義は、いかなるものであろうと差別を根拠とした身体的精神的苦痛をもたらす行為を明白に禁止している。障害者の場合、特別報告官は障害者権利条約第2 条が障害を根拠とした差別について以下述べていることを想起する。「障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のいかなる分野においても、他の者との平等を基礎として すべての人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを害し又は無効にする目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、合理的配慮を行わないことを含むあらゆる形態の差別を含む。」 49 さらに拷問禁止条約の第1 条の意図という要件は障害に基づいて差別されてきた人については有効に適用されうる。このことはとりわけ、障害者に対する医療の文脈において、重大な侵害と差別が障害者に対して、保健専門職の一部においては「よき意図」というごまかしにおいてなされうるということについては重要な関連がある。単なる過失や怠慢は1 条の求める要件である意図にかける、しかし、重大な痛みや苦痛をもたらすものであるなら、そうした過失や怠慢も虐待を構成しうる。 50 拷問すなわち、個人のインテグリティ(不可侵性統一性)と尊厳へのもっとも重大な人権侵害は、他の者による全的な支配の下に被害者が置かれるが故の、無力さを前提としている。障害者がそうした状況におかれることはよくあることだ。例えば、監獄あるいは他の場で自由を奪われているときあるいは介助者や法的後見人の支配下におかれているとき。一定の状況下では個人の特定の障害が、その個人を依存的な状況下に置くことがありがちで、そしてそうした個人は容易に虐待の対象となりがちである。しかし「無力さ」はしばしば個人の外側にある環境がもたらすものである。意思決定の行使そして法的能力を差別的な法律や運用によって奪われ他の人にその権限を与えられるというときに「無力さ」が生じるのだ 2 誰に責任があるか? 51 政府の関与という要件に関して、特別報告官は、拷問の禁止は公務員に限ることなく、厳密な意味で法的な権限を持った機関のようなものに限らず、民間病院、あるいは他の施設や拘禁施設で働く場合も含めて、医師や保健従事者、ソーシャルワーカーにも適用されることもあると明記する。拷問禁止条約委員会の一般見解のNo.2(2008)で強調されているのは、あらゆる種類の施設で拷問の禁止がなされなければならないということであり、締約国は国家機関によらないあるいは民間機関における拷問の禁止については徹底して予防し、調査し、起訴処罰すべきであるとしている。 3 何に責任があるのか? (a)貧しい拘禁条件 52 数え切れないほどくりかえし、拷問禁止条約委員会は精神保健施設や障害者用の家の貧しい生活条件について、拷問等禁止条約16 条の下の虐待という視点から、懸念を表明してきた。施設の貧しい条件は、適切な食事、水、医療的ケア、衣服を拘禁下ある人に提供すべき義務を国家が果たしていない結果である場合が多い。そしてこうした貧しい条件は拷問と虐待を構成しうるのだ。 53 国家は障害者に対して直接的間接的な差別がなされないよう、拘禁下の処遇あるいは環境条件を整えることを確保するさらなる義務がある。もしこうした差別的処遇が痛みや苦痛をもたらすのであれば、それは拷問あるいは他の虐待を構成しうる。ハミルトン対ジャマイカのケースにおいて、人権委員会は、申立人の障害を考慮し、適切な配慮をして、独房に拘禁し、彼の汚水バケツを取り上げることを認めたことが、国連自由権規約の7 条と10 条に違反するか否かを審査した。委員会は両足の麻痺した申立人は、条約10 条の第1 項に違反して、人道的にかつ人間としての固有の尊厳への尊重を持って処遇されていないと判断した。プライス対英国の場合、ヨーロッパ人権裁判所は、身体障害のある女性の拘禁条件について、利用不可能のトイレとベッドも含め、ヨーロッパ人権条約3 条の品位を傷つける処遇となるとした。 54 特別報告官は障害者権利条約14 条第2 項は以下の締約国の義務を定めていると明記する。それは自由を奪われた人は合理的配慮を提供される権利があるということを確保するという義務である。このことは手続きにおいてまた、拘禁施設、これらはケアのための施設や病院も含むが、において障害者が他のものと同じ権利と自由を享受することを確保するために、その調整が過大な負担をもたらさない限り、適切な調整を行う義務があるということだ。障害者に対する合理的配慮の否定や欠如は虐待や拷問とみなされるほどの拘禁や生活条件を生み出しうる。 (b)身体拘束と隔離の使用 55 施設の貧しい条件はしばしば身体拘束と隔離という厳しい形態を伴っている。障害のある子供たちや成人は長期にわたりベッドや、檻あるいはいすに縛られたりすることがある。鎖や手錠をはめられることもある。"檻"や"檻つきのベッド"に拘禁されることもある。また大量の薬を与えられることも化学的身体拘束といえよう。"長期にわたる身体拘束は筋肉の萎縮、生命にかかわる変形、そして内蔵の損傷を生み出しうるということ"、そして精神的な損傷を悪化させることを明記しておくことは重要である。特別報告官は拷問や虐待を構成しうる長期にわたる身体拘束について、治療的正当化はありえないと明記する。 56 治療的理由からは正当化できず、処罰の一形態であるにもかかわらず、施設において障害者は管理の一形態としてあるいは医療的治療としてしばしば隔離され独房に拘禁される。2003 年12 月米州人権委員会はパラグアイの国営神経精神病院に拘禁されている460 人を保護するために予防的対策を承認した。この460 人の中には独房に裸で非衛生的な条件で4 年間以上も独居拘禁されていた二人の十代の少年も含まれていた。Victor Rosario Congo 対エクアドルの場合、米州人権条約委員会は社会復帰センターにおいて精神障害のあるCongo 氏が独房に拘禁されていることは米州人権条約第5 条2 項に定められた非人道的で品位を傷つける処遇を構成すると認めた。特別報告官は人に対する長期の独居拘禁と隔離は拷問あるいは虐待を構成する場合があることを明記する。 (c)医療の領域 57 医療の領域において、障害者はしばしば重大な虐待と身体的精神的インテグリティの権利の侵害を体験している。とりわけ実験においてあるいは特定の損傷の矯正あるいは軽減を目指した治療において。 (@)医学的科学的実験 58 障害者権利条約15 条の下では、薬物の治験含め障害者に対する医学的科学的実験は当事者の自由な同意のあるときのみ、そして実験の本質が拷問または残虐で非人道的品位を傷つける処遇とみなされえないときにのみ許される。 (A)医療的介入 59 ロボトミーと精神外科手術の実施は実例として役立ちうる。侵襲的で非可逆的な治療であればあるほど、自由なインフォームドコンセントを根拠としてのみ保健専門職が治療を障害者に提供することを確保するより強い義務が国家にはある。子供の場合にはもしそうした介入が治療的目的にのみ行われるのであれば、保健専門職がそうした介入が子供の最善の利益において、そして両親の自由なインフォームドコンセントに基づき行われることを国家は確保しなければならない。(しかしながら両親の同意は治療が子供の最善の利益に基づかない場合は無視されなければならない)。さもなければこうした治療は拷問あるいは残虐で、非人道的もしくは品位を傷つける処遇となりうると特別報告官は明記する。 a 妊娠中絶と不妊手術 60 無数の障害のある成人と子供が政策の結果としてまたそうした目的を持って制定された法律によって強制的に不妊手術を行われてきた。障害者とりわけ女性と少女が施設の中と外とを問わず、自由なインフォームドコンセントなしに中絶や不妊手術を強制され続けている。この行為の関しては報告されている。特別報告官は障害者権利条約23 条C項の下で「障害者(障害のある子どもを含む。)が他の者との平等を基礎として生殖能力を保持する」ことを確保し、また自由と責任をもって、子供の数と出産の期間を決める権利を確保することが締約国の義務であることを明記する。 b 電気痙攣療法 61 囚人に対する電気ショックの使用は拷問および虐待を構成すると認められてきた。発作を引き起こす電気ショックあるいは電気痙攣療法の使用は精神あるいは知的障害をもつ人への治療法として、1930 年代にはじまった。ヨーロッパ拷問禁止委員会は非修正電気痙攣療法(例えば麻酔、筋弛緩剤あるいは酸素補給なしのもの)が精神保健施設において障害の治療のために人に行われていることさらには処罰の形態としてさえ行われていることを報告している。特別報告官は、非修正電気痙攣療法は、重大な痛みや苦痛そしてしばしば重大な医療的結果例えば骨折、じん帯の損傷や脊髄損傷、また認知障害や記憶喪失の可能性などをもたらすことがあることを明記する。非修正電気痙攣療法は医療行為として許容されることはできず、また拷問あるいは虐待を構成しうる。修正電気ショックの形態であれ、当事者の自由なインフォームドコンセントにもとづいてのみ行われることはきわめて重要である。この自由なインフォームドコンセントには、副作用や心臓への影響や混乱、記憶喪失さらには死亡といったリスクの説明を受けること含まれる。 c 強制的精神医学的介入 62 拷問や虐待の手段としての政治的弾圧を目的とした、例えばテロリズムとの戦いという文脈での精神医学の使用、より少ないとはいえ、個人の性的指向を弾圧し、支配し変更しようとする試みを目的として行われる治療については詳しく報告されてきた。しかし、特別報告官は精神医学の乱用と障害者への強制、主として精神的知的障害をもつ人への強制についてより重大な注意を喚起する。 63 施設内そして地域での強制医療も同様であるが、精神医療、抗精神病薬と精神を変容させる薬も含む投薬が精神障害者の自由なインフォードコンセントなしにあるいは意思に反して強制的にあるいは処罰の一形態として行われることがある。拘禁施設と精神保健施設における薬の投与、それは抗精神病薬も含まれえるが、この抗精神病薬はふるえをもたらしたり、無気力な状態にさせたり、知性を曇らせたりするものであり、こうした薬の投与は拷問の一形態として認識されてきた。Viana Acosta 対ウルグアイのケースでは、人権委員会は、申立人の処遇、治療は非人道的処遇を構成すると結論を出した。この治療処遇には、精神医学的実験、彼の意思に反したトランキライザーの強制的注射などがふくまれていた。特別報告官は精神状態の治療のための、強制的そして同意のない、精神科の薬の投与とりわけ抗精神病薬の投与は詳細に検証される必要があることを明記する。個別のケースの情況、与えられる苦痛そして個人の健康への効果、これらの検証しだいでは、拷問あるいは虐待の一形態となることもありうる。 d 非自発的精神保健施設への収容 64 多くの国家が、法的根拠のあるなしにかかわらず、精神障害者を自由なインフォームドコンセントなしに施設収容することを許容している。その根拠は精神障害の診断の存在と共に追加の基準が使われることがよくある、それは例えば「自らあるいは他者に対する危険性」あるいは「治療の必要性」というものである。特別報告官は障害者権利条約の14 条が法によらない恣意的な自由の剥奪の禁止と障害の存在が自由の剥奪の正当化とされてはならないとしていることを想起する。 65 特定の事例においては恣意的あるいは法によらない障害の存在を根拠とした自由の剥奪はまた個人へ重大な痛みや苦痛をもたらす場合もあり、したがって拷問禁止条約の対象となる。自由剥奪による苦痛の影響を検証するには、施設収容の期間、また拘禁や処遇条件が考慮されなければならない。 (d)性的暴力も含む障害者に対する暴力 66 施設内において、他の患者や被収容者また同様に施設職員によって障害者は暴力にさらされることがある。Ximenes Lopes 対ブラジルのケースでは米州人権裁判所は、精神科病院へ収容された患者に対する暴力という文脈において、被害者に行われた日常的な殴打や身体拘束そして貧しい拘禁条件,(たとえば貧しい保健ケア、低い衛生状態や不足がちな食事)は、米州人権条約5 条の1 項と2 項の下での拷問と虐待の禁止と身体的精神的インテグリティの権利の侵害であるとした。 67 もし、病院、ケア施設あるいは同様の施設において働く公務員も含む、公務員によって、あるいは公務員の示唆にまたは同意あるいは黙認の下で行われたのであれば、拘禁下での強姦は拷問を構成することを特別報告官は繰り返し発言する。 68 民間領域において、家族の手によってまた障害者の介護者によっての双方によって、障害者は男女にかかわらずほぼ3 倍も身体的性的虐待と強姦の被害者となっている。女性や少女はジェンダーと障害の二重の差別の結果として、親しいパートナーによる暴力も含め高い比率の暴力を経験している。Z対英国とA対英国のケースにおいてヨーロッパ人権裁判所は個人とりわけ子供と他の弱者を虐待から保護する政策を採る義務が締約国にあることを認めた。同様に当局は虐待を防止する合理的な段階を取るための知識を持つあるいは持つべき義務を認めた。 69 障害者権利条約16 条が宣言しているように、締約国は家庭の内外、そしてジェンダーにもとづくものも含み、あらゆる形態の暴力、虐待および搾取から障害者を保護しそれらを予防するため、またこれらの責任について調査し訴追するすべての適切な政策をとる義務がある。特別報告官は、締約国の障害者への暴力に関する黙認は多くの形態がありうることを明記する。それは、法的能力を奪う法律という差別的な法の枠組みや運用あるいはこれらの暴力が刑罰を逃れるという結果をもたらす障害者に対する司法への平等なアクセス保障の失敗もふくまれる。 C 結論と勧告 70 特別報告官は障害者権利条約の発効にあたって以下を歓迎する。障害者権利条約は拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰の絶対的な禁止を再確認していることそして、障害者の基本的な権利と自由へ解釈についての権威あるガイドを示していること。障害者に対して行われた侮辱、放置、暴力そして虐待の一連の報告に対して、これらの行為がどう認識されるか、例えば拷問や虐待と認識されることそして、国際的拷問禁止の枠組みが活用されることは、法的保護と補償への道を切り開くであろう。 71 特別報告官はとりわけ2 条の非差別条項に注目した上で、障害者権利条約の批准と、完全履行を各国政府に呼びかける。 72 条約締約国は条約が公刊され広められ、そして市民にあまねく啓発啓蒙がなされ関連するさまざま専門職グループ(例えば、裁判官、弁護士、法執行公務員、公務員、地方自治体公務員、施設職員そして保健専門職など)すべてに広く訓練されることを確保しなければならない。公務員と民間機関の職員は同様に障害者を拷問と虐待から保護しそれらを防止する役割を持つ。 73 条約を守るために締約国は、障害者に法的能力があることを認める法律を制定しなければならない。また必要であるならば、説明を受けた上で決定するために必要な支援を提供することを確保しなければならない。 74 締約国は、「自由なインフォームドコンセント」が何を意味するかについての明白であいまいでないガイドラインを条約の求める基準で公布しなければならない。また使いやすくアクセスしやすい不服申し立ての手続きも作らなければならない。 75 独立した人権監視機関(例えば国内人権機関、拷問禁止機構、市民団体など)は障害者が住んでいる施設、例えば監獄、福祉ケア施設、児童養護施設そして精神保健施設などを定期的に監視しなければならない。 76 特別報告官は関連する国連および地域の人権機構に対して、個人の不服申し立ても含み、拘禁施設の監視を行うさいに、障害者権利条約に含まれる新たな基準に完全に配慮した上で、これらの監視調査に新たな基準を統合することを呼びかける。 第 15 回部会提出資料 差別禁止部会委員 川島聡 法案骨格私案(2012 年3 月9 日版) 第一章 総則(第一条〜第十条) 第二章 差別禁止の義務(第十一条〜第十七条) 第三章 障害者権利委員会(第十八条〜十九条) 第四章 紛争の解決(第二十条〜二十八条) 第五章 罰則(第二十九条) 附則(略) 法案骨格私案(2012 年3 月9 日版)について これは、第14 回部会(2012 年2 月24 日)に提出した私案の改訂版である。今後の議論を踏まえ、柔軟に変更していく予定である。 障害差別禁止法の基本構造とは、「AはBに対してCについてDをしてはならない」である。総則規定である第一章では、「Bに対して」「Dをしてはならない」の部分を扱う。すなわち第一章では「何人も(B)、障害差別(D)を受けない」と定め、障害と差別の定義などを設ける。 第二章では、「Aは」「Cについて」の部分を具体的に定める。「労働」「教育」「役務」「医療」「福祉」「不動産」「結社」「公務・公益」の分野ごとに、AとCを明確にする。 差別禁止法は、公務遂行者だけではなく、私人の社会・経済活動を規制する法律であるので、「義務を負う者(A)が誰で」、「対象事項(C)が何か」、を明確に特定する必要がある。 障害差別禁止法に定める権利を侵害された者に適切・迅速な救済をもたらし、法律違反をチェックできる仕組みとして、第三章では障害者権利委員会(仮称)、第四章では紛争解決手続を定める。 障害差別禁止法は、国民・住民にとって予測可能なものになるために、できる限り分かりやすい構造を持ち、なるべく平易な書きぶりで、上記のABCDを明確にする必要がある。また障害差別禁止法では、権利を持つ者と義務を負う者とのバランスを適正に図る必要がある。そのバランスを適正なものにするためには、4つの次元の障害者の不利、すなわち@健常者集団と比べた障害者集団の構造的不利、A障害者諸小集団で異なる不利、B障害者諸個人で異なる不利、C障害と他の特徴の結合に応じて異なる不利、を議論の出発点に据える必要がある。 第一条 目的 この法律は、日本国憲法及び国連障害者の権利条約にのっとり、障害の有 無にかかわらず、すべての者が人間の尊厳、自己決定、差異の尊重、社会参加及び機会平等を実質的にひとしく享受しうるように、何人に対しても障害を理由とする差別の禁止を保障し、もつて障害のある人もない人も共に暮らしやすい万人のための社会の形成に寄与することを目的とする。 説明:「人間の尊厳」「自己決定」「差異の尊重」「社会参加」「機会平等」という基本的価値は、障害者権利条約の基本原則である。この基本的価値の実質的な実現を、この法律の目的に明示した。そして、この基本的価値を障害者に実質的に保障するためには、「同様の者たちを異なって扱ってはならない」という原則のみならず、「異なる者たちを同様に扱ってはならない」という原則をも、この法律の差別概念に導入しなければならない。この法律の第三条以下は、両原則を具体化したものである。もちろん、諸国の障害差別禁止法も、両原則を具体化した差別概念を定めている。 第二条 定義 「障害者」とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)そ の他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 説明:障害者基本法に準じた「障害者」の定義を用いた。この法律では、障害者の定義よりも、障害の定義のほうが、重要な意味をもつ。「障害者に対して障害差別を禁止する」のではなく、「何人に対しても障害差別を禁止する」のが、この法律のめざすところだからである。 2 「障害」とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害をいう。 3 前項に規定する「心身の機能の障害」は、日常生活又は社会生活に相当な制限を受けるものか否かは問わない。ただし、一時的(継続期間が二週間未満のもの)又は些細な「心身の機能の障害」は、「障害」に含まないものとする。 4 第二項に規定する「障害」は、次に掲げる場合を含む。 一 障害の経歴がある場合 二 障害が将来生ずる可能性がある場合 三 障害があると他者が誤認した場合 四 外貌に顕著な特徴がある場合 五 関係者に障害がある場合 説明:障害者基本法の定義を基にしながら、諸国の経験や学説を踏まえ、言葉を少し加えた「障害」の定義にした。「障害」の定義は、基本的に「インペアメント」を意味する。学説の知見を踏まえると、「障害」の定義に「日常生活又は社会生活に相当な制限を受けるもの」という要件を含める必要はないので、このことを明記した。そのほかに留意すべきこととして、2点ある。@「障害が将来生ずる可能性がある場合」は、疾患の遺伝的素因ゆえに将来障害が生じうることを理由に、相手側が差別をすることを想定している。A「関係者に障害がある場合」の「関係者」とは、親族(民法725 条)、同居者、介助者、事業交流者、文化交流者を想定している。 第三条 定義 「障害を理由とする差別」とは、次のいずれかに該当する行為をいう。 一 不均等待遇 二 合理的配慮の義務の不履行 説明:障害差別の定義は、日本においては全く馴染みがないため、なるべく簡潔に分かりやすくするために、@不均等待遇、A合理的配慮義務の不履行の2類型にした。 2 「不均等待遇」とは、障害又は障害に関連する事由に基づく行為又は基準が、障害者又は他の者に実質的な不利をもたらすことをいう。ただし、その目的が正当であり、かつ、その目的を達成する手段が相応である場合は、この限りでない。 説明:「不均等待遇」の定義は、次の5点を考慮に入れた。@直接差別、間接差別、起因差別という英国平等法の3概念すべてを、ひとつの概念(不均等待遇)にまとめる。A障害者が差別を受けたことを証明するときに、比較対象の特定を不要となるような書きぶりにする。 B相手側に、「正当な目的の達成に相応な手段」による正当化の抗弁を認めることで、障害者の権利と相手側の義務とのバランスをはかる。C「障害又は障害に関連する事由に基づく行為又は基準」という表現を用いることで、直接差別、間接差別、起因差別の三つをカバーする。なお、障害差別の概念は、X(障害自体を理由とする障害差別)とY(障害自体を理由としない障害差別)とに区別しうる。X に該当するのが直接差別、Y に該当するのが間接差別と起因差別である。「障害に関連する事由」という文言は、起因差別と間接差別をカバーする。 D英国平等法は、直接差別については正当化の抗弁を認めていない。直接差別に対して正当化の抗弁を認めないという論点については、今後の検討課題である。 3 前項及び第四条に定める正当な目的の達成に相応な手段は、第二章の各条に定める関係規定を考慮して、これを解釈しなければならない。 4 第二項及び第七条一号に定める「基準」は、あらゆる規則、事物、制度、慣行、慣習、観念又は規定を含む。 説明:「障害又は障害に関連する事由に基づく基準」の中の「基準」の定義は、間接差別の概念を念頭に置いて、広い意味内容にした。 5 「合理的配慮の義務」とは、障害者又は他の者に実質的な不利をもたらさないように、その要求に応じて、現状を変更するための合理的措置(以下「合理的配慮」という。)を講じなければならないことをいう。ただし、過重な負担及び著しい困難が生じる場合は、この限りでない。 説明:合理的配慮義務の定義について次の2点を考慮に入れた。@相手側に「過重な負担及び著しい困難」の抗弁を認めることで、障害者の権利と相手側の義務とのバランスをはかる。 A合理的配慮義務は、基本的に、障害者の求めに応じてなされる。 6 前項に定める合理的配慮は、次の合理的措置からなる。 一 障害又は障害に関連する事由に基づく行為又は基準が、障害者又は他の者に実質的な 不利をもたらす場合に、その要求に応じて、当該行為又は基準を変更するための合理的措置 二 建物等の物理的形状が、障害者又は他の者に実質的な不利をもたらす場合に、その要求に応じて、当該形状を変更するための合理的措置 三 補助手段の不備が、障害者又は他の者に実質的な不利をもたらす場合に、その要求に応じて、当該手段を提供するための合理的措置 説明:合理的配慮の概念を明確にするため、英国平等法にならい合理的措置が3つの次元から成ることを明記する。「一」は物事の決め方・やり方の変更、「二」は物理的形状の変更、「三」は個人への補助手段・補助サービスの提供である。合理的配慮は「二」の側面に限定される配慮であるような印象を持たれることもあるので、「一」「二」「三」を明示することで、合理的配慮の概念が明確になり、誤解が生じにくくなる。 7 前項第一号及び第三号に関し、情報について実質的な不利が生じる場合に講ずる合理的措置には、利用可能な形式及び様式によつて情報を保障する措置が含まれるものとする。 説明:特に情報保障の基本的重要性を踏まえ、情報保障を明示した(英国平等法も同様の規定をもつ)。 8 本条及び第七条に定める「過重な負担及び著しい困難」は、次のいずれかの状態をいう。 一 事柄(職務、役務、事業、設備及び結社を含む。)の本質を根本的に変更する状態 二 財政面その他の面で過重な負担を伴う状態 三 第三者に著しい損害を与える状態 四 障害の存在を知り得なかった状態 五 権限を越える状態 9 本条及び第七条に定める「不利」とは、次のいずれかの状態をいう。 一 人間の尊厳又は人格が害される状態 二 機会を平等に享受しえない状態 三 参加が妨げられる状態 四 自己決定が妨げられる状態 説明:「一」「二」「三」「四」は第一条の内容とリンクする。この私案では、差別禁止法の基本的性格を、「形式的平等志向」のものではなく、「基本的価値志向」のものとして構成している。ここでいう基本的価値とは「一」「二」「三」「四」である。 10 本条及び第七条に定める「実質的」とは、「軽微又は些細な程度」を超えた状態をいう。 説明:「実質的」の意味は、英国平等法の規定に沿ったものである。 第四条 結合差別 結合差別は、これを障害を理由とする差別とみなす。結合差別とは、障害と他の特徴(人種、信条、性別、社会的身分、門地を含む。)との結合に基づく行為又は基準が、当該特徴を持つ障害者に実質的な不利を負わせることをいう。ただし、その目的が正当であり、かつ、その目的を達成する手段が適切である場合は、この限りでない。 説明:たとえば「障害のない女性」と比べても、「障害のある男性」と比べても、より不利に取扱われた「障害のある女性」は、障害と女性という二つの保護特徴の結合を理由に差別を被っている。そのような状況を「障害を理由とする差別」とみなす規定を設けた。英国平等 法の規定に沿ったものである。 第五条 差別の禁止 何人も、障害を理由とする差別を受けない。 説明:差別禁止法の基本構造は「AはBに対してCについて障害差別をしてはならない」である。Bは「すべての人」にすべきであるので、「何人も」という文言を用いた。しかし、Aは「すべての人」にするのは難しい。差別禁止法は、私人の社会・経済活動を規制する法律であるので、差別禁止法によって義務を課せられる者(A)の範囲、そして対象事項(C)を明確にする必要がある。Aの範囲は、第二章で分野ごとに明確に定める。すなわち第二章では、「Aは、Cについて、何人に対しても障害を理由とする差別をしてはならない」と定めることになる。 第六条 秘密保持 障害者又は他の者は、この法律の第二章において障害を理由とする差 別の禁止に関する義務を負う主体(以下、義務者という。)に対し、障害の存在又は性格を内密に扱うことを要求する権利を有する。 第七条 事前的改善措置 義務者は、障害者又は他の者に実質的な不利をもたらす現状を あらかじめ改善するための合理的措置(以下、「事前的改善措置」という。)を継続的に講じなければならない。ただし、過重な負担及び著しい困難が生じる場合は、この限りでない。 2 前項に定める事前的改善措置は、次の合理的措置からなる。 一 障害又は障害に起因する事由に基づく基準が実質的な不利をもたらす場合に、当該基準を変更するための合理的措置 二 建物等の物理的形状が実質的な不利をもたらす場合に、当該形状を変更するための合理的措置 三 補助手段の不備が実質的な不利をもたらす場合に、当該手段を提供するための合理的措置 3 前項第一号及び第三号に関し、情報について実質的な不利が生じる場合に講ずる合理的措置には、利用可能な形式及び様式によつて情報を保障する措置が含まれるものとする。 説明:合理的配慮義務の実効性を確保するために、障害者個人ではなく、一定の障害種別を念頭に置いて障害者一般の地位向上をめざす事前的改善措置を講ずる必要がある。合理的配慮とは、各障害者が、個別具体の場面で必要に応じて、相手側に配慮を求めるものである。 社会のルールを変えるのではなく、社会のルールに「例外」を個別具体の場面ごとに設けることを要求するのが、合理的配慮である(この「例外」は、人間の差異を尊重し、社会の多様性を確保するために設けるためのものである)。そのため、合理的配慮だけでは、社会のルールの在り方・決め方全体の変更(社会全体のバリアフリー)はなかなか進まない。また相手側も、何の準備もしていない状況で、突然特定の配慮を求められても、その配慮を提供したくても提供することが困難な場合が生じうる。障害者の要求に沿った合理的配慮を相手側が行いうるためにも、事前的改善措置を相手側に義務づけることが有効となる。また相手側は、そのような事前の措置を講ずることで、中長期的にみて効率よく合理的配慮を提供できるようになると思われる。そのため、合理的配慮に対応した規定を事前的改善措置の中で設けている。日本の現行法は、実質的に、この事前的改善措置の内容を備えている場合がある。 現行法とこの差別禁止法との調整が必要となる。 第八条 費用の負担 合理的配慮又は事前的改善措置を享受する障害者又は他の者は、そ の費用を負担することはない。 第九条 啓発 国及び地方公共団体は、この法律の目的について国民の関心と理解を深め るとともに、当該目的を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものとする。 第十条 財政措置 政府は、この法律の目的に資する施策を実施するため必要な法制上又 は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。 第二章 差別禁止の義務(第十一条〜第十七条) 29 第十一条 労働 事業主は、次に掲げる事項について、何人に対しても障害を理由とする 差別をしてはならない。 一 募集、採用、配置、昇進、降格及び教育訓練 二 住宅資金の貸付その他これに準ずる福利厚生の措置 三 労働者の職種及び雇用形態の変更 四 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新 五 雇用に関係する他の事項 2 本条に関して、第三条第二項及び第四条の但し書きは、合理的配慮を尽くした上で次に 掲げることに支障が生じたことを考慮して、これを解釈しなければならない。 一 障害者又は他の者が業務を適切に遂行すること 二 障害者又は他の者の生命及び身体を安全に保つこと 三 障害者が選択した意思表示の方法によって当該障害者の表示しようとする意思を確認 すること 第十二条 教育 学校教育法に規定する学校及び学校設置者並びに学校教育法第一条に 規定する学校以外の教育施設で学校教育に類する教育を行うもののうち当該教育を行うにつき同法以外の法律に特別の規定があるものは、次に掲げる事項について、何人に対しても障害を理由とする差別をしてはならない。 一 入学、卒業、転学、除籍、退学、復学 二 教育の提供 三 あらゆる役務、設備又は利益 四 処分 五 学校に関係する他の事項 2 本条に定める障害を理由とする差別には、障害者又はその保護者への意見聴取及び必要 な説明を行わないで、就学させるべき学校を指定することが含まれる。 3 本条に関して、第三条第二項及び第四条の但し書きは、合理的配慮を尽くした上で次に掲げることに支障が生じたことを考慮して、これを解釈しなければならない。 一 重要な教育目的に不可欠な適性基準を確保すること 二 障害者又は他の者の生命及び身体を安全に保つこと 三 障害者が選択した意思表示の方法によって当該障害者の表示しようとする意思を確認 すること 第十三条 役務 次に掲げる者は、その事業、物品及び役務について、何人に対しても障 害を理由とする差別をしてはならない。 一 消費者契約法に規定する事業者 二 特定商取引に関する法律に規定する販売業者又は役務提供事業者 三 金融商品取引法に規定する金融商品取引業を行う者 四 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定する風俗営業を営む者 五 旅館業法に規定する旅館業を営む者 六 弁護士法に規定する弁護士 七 公認会計士法に規定する公認会計士 八 税理士法に規定する税理士 九 司法書士法に規定する司法書士 十 行政書士法に規定する行政書士 十一 社会保険労務士法に規定する社会保険労務士 十二 弁理士法に規定する弁理士 十三 中小企業支援法に規定する中小企業の経営診断の業務に従事する者 十四 通関業法に規定する通関業者 十五 海事代理士法に規定する海事代理士 十六 職業能力開発促進法に規定する技能士 十七 貸金業法に規定する貸金業者 十八 保険業法に規定する保険会社等 2 本条に関して、第三条第二項及び第四条の但し書きは、合理的配慮を尽くした上で次に掲げることに支障が生じたことを考慮して、これを解釈しなければならない。 一 障害者及び他の者に提供する役務の質を適正に保つこと 二 障害者及び他の者の生命及び身体を安全に保つこと 三 障害者が選択した意思表示の方法によって当該障害者の表示しようとする意思を確認 すること 第十四条 医療・福祉 医療分野において業として物品又は役務を提供する者(次に掲げ る者を含む。)は、その事業、物品及び役務について、何人に対しても障害を理由とする差別をしてはならない。 一 医師法に規定する医師 二 医療法に規定する医療の担い手及び医療提供施設 三 健康保険法に規定する保険医及び保険薬剤師 四 歯科医師法に規定する歯科医師 五 保健師助産師看護師法に規定する保健師、助産師、看護師及び准看護士 六 薬剤師法に規定する薬剤師 七 薬事法に規定する薬局の管理者 八 歯科衛生士法に規定する歯科衛生士 九 歯科技工士法に規定する歯科技工士 十 理学療法士及び作業療法士法に規定する理学療法士及び作業療法士法 十一 視能訓練士法に規定する視能訓練士 十二 臨床工学技士法に規定する臨床工学技士 十三 言語聴覚士法に規定する言語聴覚士 十四 義肢装具士法に規定する義肢装具士 十五 救急救命士法に規定する救急救命士 十六 柔道整復師法に規定する柔道整復師 2 福祉分野において業として物品又は役務を提供する者(次に掲げる者を含む。)は、その事業、物品及び役務について、何人に対しても障害を理由とする差別をしてはならない。 一 社会福祉法に規定する社会福祉事業の運営主体及び社会福祉事業に従事する者 二 社会福祉士及び介護福祉士法に規定する社会福祉士及び介護福祉士 三 障害者自立支援法に規定する各事業者及び各従業者 四 障害者の雇用の促進等に関する法律に規定する障害者職業生活相談員 五 精神保健福祉士法に規定する精神保健福祉士 六 身体障害者福祉法に規定する身体障害者福祉司 七 知的障害者福祉法に規定する知的障害者福祉司 八 児童福祉法に規定する児童相談所の所長、児童福祉司及び保育士 九 介護保険法に規定する介護支援専門員、訪問介護員及び福祉用具専門相談員 十 老人福祉法に規定する老人居宅生活支援事業に従事する者 十一 社会教育法に規定する社会教育主事及び社会教育主事補並びに社会教育関係団体 十二 廃棄物の処理及び清掃に関する法律に規定する環境衛生指導員環境衛生監視員 十三 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律に規定する家庭用品衛生監視員 十四 特定工場における公害防止組織の整備に関する法律に規定する特定事業者 十五 クリーニング業法に規定する営業者 十六 理容師法に規定する理容師 十七 美容師法に規定する美容師 十八 栄養士法に規定する栄養士 十九 調理師法に規定する調理師 二十 製菓衛生師法に規定する製菓衛生師 二十一 食品衛生法に規定する食品等事業者 二十二 浄化槽法に規定する浄化槽製造業者、浄化槽工事業者、浄化槽清掃業者、浄化槽設備士及び浄化槽管理士 二十三 職業安定法に定める公共職業安定所等 3 障害を理由とする差別には、法令に特別の定めがある場合を除き、障害者が希望しない長期間の入院による医療を受けることを当該障害者に強制することが含まれる。 4 本条に関して、第三条第二項及び第四条の但し書きは、合理的配慮を尽くした上で次に掲げることに支障が生じたことを考慮して、これを解釈しなければならない。 一 障害者及び他の者に提供する役務の質を適正に保つこと 二 障害者及び他の者の生命及び身体を安全に保つこと 三 障害者が選択した意思表示の方法によって当該障害者の表示しようとする意思を確認 すること 説明:本条第三項に関しては、そもそも、障害(又は障害に関連する事由)に基づく自由の剥奪(強制入院など)が、人身の自由の侵害でありうると同時に、障害差別でありうることを確認する必要がある。この差別禁止法の下でも、強制入院は障害差別に含まれうるものだと考えるべきである。ただ、この場合、現行法との関係が問題となる。この点、本条第二項で「法令に特別の定めがある場合を除き」と記しているのは、現行法の規定の支持を必ずしも意味しているのではなく、この差別禁止法と現行法との関係性・整合性に関する文言を、本条に置く必要があることを意味している。 第十五条 不動産・交通 不動産分野において業として物品又は役務を提供する者(次に 掲げる者を含む。)は、その事業、物品及び役務について、何人に対しても障害を理由とする差別をしてはならない。 一 宅地建物取引業法に規定する宅地建物取引業を営む者 二 建築基準法に規定する工事監理者、建築主、設計者及び工事施工者 三 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に規定する施設設置管理者 四 建築物における衛生的環境の確保に関する法律に規定する特定建築物所有者等 五 建設業法に規定する建設業者 六 マンションの管理の適正化の推進に関する法律に規定するマンションの区分所有者等、 管理者等、マンション管理士、マンション管理業者及び管理業務主任者 七 土地家屋調査士法に規定する土地家屋調査士 八 土地改良法に規定する土地改良事業に参加する資格を有する者 九 土地区画整理法に規定する施行者 十 建築士法に規定する建築士 十一 不動産の鑑定評価に関する法律に規定する不動産鑑定士 2 交通分野において業として物品又は役務を提供する者(次に掲げる者を含む。)は、その事業、物品及び役務について、何人に対しても障害を理由とする差別をしてはならない。 一 航空法に規定する航空従事者及び指定本邦航空運送事業者 二 船員法に定める船員及び職員 三 船舶安全法に規定する船舶所有者及び船長 四 船舶職員及び小型船舶操縦者法に定める船舶職員 五 海事代理士法に規定する海事代理士 六 道路運送法に規定する道路運送事業を経営する者 七 鉄道事業法に規定する鉄道事業者 八 海上運送法に規定する一般旅客定期航路事業者 九 路上駐車場管理者 3 本条に関して、第三条第二項及び第四条の但し書きは、合理的配慮を尽くした上で次に掲げることに支障が生じたことを考慮して、これを解釈しなければならない。 一 障害者及び他の者に提供する役務の質を適正に保つこと 二 障害者及び他の者の生命及び身体を安全に保つこと 三 障害者が選択した意思表示の方法によって当該障害者の表示しようとする意思を確認 すること 四 建物の基本構造又は公共交通機関の車両、自動車、船舶及び航空機の基本構造を保つこと第十六条 公務・公益 あらゆる公務遂行者(次に掲げる者を含む。)は、その権限事項又は所掌事務について、何人に対しても障害を理由とする差別をしてはならない。 一 行政手続法及び行政不服審査法に規定する行政機関又は行政庁 二 裁判所法に規定する裁判官及び裁判官以外の裁判所の職員 三 公職選挙法に規定する中央選挙管理会、都道府県の選挙管理委員会及び市町村の選挙管理委員会 四 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律に規定する刑事施設の長、刑務官及び留置業務管理者 五 少年院法に規定する少年院の長及び職員 六 更生保護法に規定する保護観察所の長並びに保護観察官及び保護司 七 検察庁法に規定する検察官、検察事務官及び職員 八 地方自治法に規定する地方公共団体の長及び議会の議員 九 警察法に規定する国家公安委員会、内部部局、附属機関、職員及び都道府県公安委員会 十 国家公務員法に規定する国家公務員 十一 地方公務員法に規定する地方公務員 2 公益分野において業として物品又は役務を提供する者(次に掲げる者を含む。)は、その事業、物品及び役務について、何人に対しても障害を理由とする差別をしてはならない。 一 河川法に規定する河川管理者 二 水道法に規定する水道事業者及び水道用水供給事業者 三 下水道法に規定する公共下水道管理者 四 技術士法に規定する技術士及び技術士補 五 消防法に規定する消防長、消防署長その他の消防吏員 六 ガス事業法に規定するガス事業者 七 高圧ガス保安法に規定する販売業者等 八 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律に規定する液化石油ガス販 売事業者 九 電気事業法に規定する電気事業者 十 電気通信事業法に規定する電気通信事業者 十一 放送法に規定する放送事業者 十二 電波法に規定する無線局 十三 電気工事士法に規定する電気工事士 一四 公証人法に規定する公証人 十五 銀行法に規定する銀行 十六 郵便法に規定する郵便事業株式会社 3 本条に関して、第三条第二項及び第四条の但し書きは、合理的配慮を尽くした上で次に掲げることに支障が生じたことを考慮して、これを解釈しなければならない。 一 障害者及び他の者に提供する役務の質を適正に保つこと 二 障害者及び他の者の生命及び身体を安全に保つこと 三 障害者が選択した意思表示の方法によって当該障害者の表示しようとする意思を確認 すること 第十七条 結社 法人でない社団又は財団は、その構成員の総数が○○人以上の場合には、次に掲げる事項について、その構成員に対して障害を理由とする差別をしてはならない。 一 加入、脱退、会員資格、財産及び業務執行事項 二 団体に関係する他の事項 2 本条に関して、第三条第二項及び第四条の但し書きは、合理的配慮を尽くした上で次に掲げることに支障が生じたことを考慮して、これを解釈しなければならない。 一 結社の本質的な性格を適正に保つこと 二 障害者又は他の者の生命及び身体を安全に保つこと 三 障害者が選択した意思表示の方法によって当該障害者の表示しようとする意思を確認 すること 第三章 障害者権利委員会(第十八条〜十九条) 第十八条 委員会の設置 内閣府に、第一条の目的を達成することを任務とする障害者権 利委員会(仮称)を置く。 2 障害者権利委員会は、○○○の所轄に属する。 3 障害者権利委員会は、第一項の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。 一 障害を理由とする差別の禁止義務の履行状況の監視 二 事前的改善措置義務の履行状況の監視 三 紛争の解決 四 前各号に関する必要な調査研究 五 前各号に掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき、障害者権 利委員会に属させられた事務 4 障害者権利委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行う。 5 障害者権利委員会は、委員長及び委員○○人を以て、これを組織する。 一 委員長及び委員は、障害者の委員が過半数を占めるものとする。 二 委員長及び委員会は、法律又は障害に関する学識経験のある者のうちから、内閣総理大 臣が、両議院の同意を得て、これを任命する。 三 委員長の任免は、天皇が、これを認証する。 四 委員長及び委員は、これを官吏とする。 6 委員長及び委員の任期は、○年とする。但し、補欠の委員長及び委員の任期は、前任者 の残任期間とする。 7 委員長及び委員は、再任されることができる。 8 委員長及び委員は、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがない。 一 破産手続開始の決定を受けた場合 二 懲戒免官の処分を受けた場合 三 禁錮以上の刑に処せられた場合 9 障害者権利委員会は、その職務を行うために必要があるときは、次に掲げることをすることができる。 一 関係行政機関の長に対し、資料の提供その他必要な協力を求めること。 二 都道府県知事から必要な調査報告を求めること。 三 公聴会を開いて一般の意見を求めること。 第十九条 委員会の措置 何人も、この法律の規定に違反する事実があると思料するとき は、障害者権利委員会に対し、その事実を報告し、適当な措置をとるべきことを求めることができる。 2 前項に規定する報告があつたときは、障害者権利委員会は、事件について必要な調査をしなければならない。 3 障害者権利委員会は、この法律の規定に違反する事実があると思料するときは、職権をもつて適当な措置をとることができる。 第四章 紛争の解決(第二十条〜二十一条) 第二十条 苦情の自主的解決 義務者は、障害を理由とする差別に関する苦情の申出を受 けたときは、障害者権利委員会に対し当該苦情の処理をゆだねる等その自主的な解決を図るように努めなければならない。 第二十一条 紛争の解決の援助 障害者権利委員会は、第二章に定める事項についての障 害者又は他の者と義務者との間の紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。 2 義務者は、障害者又は他の者が前項の援助を求めたことを理由として、当該障害者又は他の者に対して不利益な取扱いをしてはならない。 第二十二条 調停の委任 障害者権利委員会は、第二十条に規定する紛争について、当該 紛争の当事者(以下「関係当事者」という。)の双方又は一方から調停の申請があつた場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、調停委員に調停を行わせるものとする。 第二十三条 調停 前条の規定に基づく調停(以下、「調停」という。)は、○人の調停委員が行う。 2 調停委員は、障害者権利委員会の委員のうちから、委員長があらかじめ指名する。 3 調停委員は、調停のため必要があると認めるときは、関係当事者の出頭を求め、その意見を聴くことができる。 4 調停委員は、紛争に係る調停のために必要があると認め、かつ、関係当事者の双方の同意があるときは、関係当事者及び○○○で定める他の関係者の出頭を求め、その意見を聴くことができる。 5 調停委員は、関係当事者からの申立てに基づき必要があると認めるときは、○○○に定める者から当該事件につき意見を聴くものとする。 6 調停委員は、調停案を作成し、関係当事者に対しその受諾を勧告することができる。 7 調停委員は、調停に係る紛争について調停による解決の見込みがないと認めるときは、 調停を打ち切ることができる。 8 調停委員は、前項の規定により調停を打ち切つたときは、その旨を関係当事者に通知しなければならない。 第二十四条 訴訟手続の中止 第二十二条に規定する紛争のうち民事上の紛争であるも のについて関係当事者間に訴訟が係属する場合において、次の各号のいずれかに掲げる事由があり、かつ、関係当事者の共同の申立てがあるときは、受訴裁判所は、四月以内の期間を 定めて訴訟手続を中止する旨の決定をすることができる。 一 当該紛争について、関係当事者間において調停が実施されていること。 二 前号に規定する場合のほか、関係当事者間に調停によつて当該紛争の解決を図る旨の合意があること。 2 受訴裁判所は、いつでも前項の決定を取り消すことができる。 3 第一項の申立てを却下する決定及び前項の規定により第一項の決定を取り消す決定に 対しては、不服を申し立てることができない。 第二十五条 資料提供の要求等 障害者権利委員会は、調停委員に係属している事件の解 決のために必要があると認めるときは、関係行政庁に対し、資料の提供その他必要な協力を求めることができる。 第二十六条 勧告等 障害者権利委員会は、この法律の施行に関し必要があると認めると きは、義務者に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。第二十七条 公表 障害者権利委員会は、第二章の規定に違反している義務者に対し、前 条の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかつたときは、その旨を公表することができる。 第二十八条 委任 本章に定めるもののほか、調停の手続に関し必要な事項は、○○○で 定める。 第五章 罰則(第二十九条) 第二十九条 過料 第二十四条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二 十万円以下の過料に処する。 附則(略) (以上) 法案骨格私案(2012 年3 月9 日版):条文見出し一覧 第一章 総則(第一条〜第十条) 第一条 目的 第二条 定義 第三条 定義 第四条 結合差別 第五条 差別の禁止 第六条 秘密保持 第七条 事前的改善措置 第八条 費用の負担 第九条 啓発 第十条 財政措置 第二章 差別禁止の義務(第十一条〜第十七条) 第十一条 労働 第十二条 教育 第十三条 役務 第十四条 医療・福祉 第十五条 不動産・交通 第十六条 公務・公益 第十七条 結社 第三章 障害者権利委員会(第十八条〜十九条) 第十八条 委員会の設置 第十九条 委員会の措置 第四章 紛争の解決(第二十条〜二十一条) 第二十条 苦情の自主的解決 第二十一条 紛争の解決の援助 第二十二条 調停の委任 第二十三条 調停 第二十四条 訴訟手続の中止 第二十五条 資料提供の要求等 第二十六条 勧告等 第二十七条 公表 第二十八条 委任 第五章 罰則(第二十九条) 第二十九条 過料