差別禁止部会 参考資料2 第15 回(H24.3.9) 「障害者に対する障害を理由とする差別事例等の調査」 (平成21 年3月内閣府委託調査)(抜粋) ※ 下記の事例・事案は、「障害を理由とする差別に当たると考え、してほしくないこと」及び「障害によって区別や排除が制限されないように、配慮や工夫をしてほしいこと」を障害者に自由記述で尋ね、収集したものの一部である。 ◆2−1「保健・医療」(差別関係) 1 治療・入院を拒否する ○精神科に通っていたこと・見えない・聞こえないこと・肝炎や感染症などを理由に治療・入院を断ること ○障害者は対応できないから大きな病院へ行ってくれということ など 【記述の例】 ・歯科で I 型糖尿病を理由に診察を拒否された。(内部障害、30 代、女性) ・食欲がなく、やせて10kg 近く体重がへったので内科医院に行ったのに、統合失調症であることを言ったら、通院している精神科の病院に行けと追い出された。(精神障害、60 代、男性) 2 治療・入院を制限する ○介助者や親と一緒でなければ受け入れられないと入院を断ること など 【記述の例】 ・重度の障害があると、ヘルパーや介護者が付き添っていないと入院を拒否される場合がある。しかし入院中はヘルパー制度が使えないことからヘルパーなどの付き添いは難し い。(肢体不自由、20 代、男性) ・今度はきこえる方と一緒に来て下さい、と言われた。筆談するかわかりやすく話してくれれば伝わるのに。(聴覚障害、40 代、男性) 3 診療しているときなどに差別的な言動をする ○赤ちゃん言葉で接すること ○車いすに乗っているだけで医師が「働いているの?」と聞くこと ○わずらわしそうな態度で接すること ○医師の処方なのに薬剤師が毎回薬の必要性を尋ねること など 【記述の例】 ・障害の説明をしているにもかかわらず、パニック時に「どんなしつけをした。」とどなる。 (発達障害、20 代、女性) ・@出産の時、看護師に「一人で育てるの」と驚かれた。A本人を無視して、付き添いの友人に検査の説明を始めた(視覚障害、50 代、女性) ・聞えないから書いて!と言っても家族か要約筆記者、同伴で来い!と言われた。(聴 覚障害、70 代、男性) 4 診療しているときなどに差別的に取り扱う ○精神科の患者を救急車でなくパトカーで運ぶこと ○重度の自閉症者を料金の高い個室に入れること ○声が聞こえないからとはいえ待合室で大きなプラカードに名前を書いて回すこと ○人工呼吸器の利用者が風邪をひいても、担当医の診療日まで診察しないこと など 【記述の例】 ・こうじのうきのうしょうがいできおくする事がニガテなので何度も聞きかえす事が多くなると不気げんになる(重複障害、20 代、男性) ・耳鼻科で順番待ちをしている時に、ナースに聴こえない旨を伝え、ではここでおまち下さいといわれた。イスに座ってまっていたが、2時間またされたのでナースにいうと、「何度も呼んだのよ!」とどなられた。それについて病院のご意見箱に投書したら、次からは私の事を肩をかかえ、支えて歩こうとした。聴こえないだけで自分で歩ける。耳鼻科 のナースなのに、ちっとも聴障者を解っていない、屈辱的だった。(聴覚障害、40 代、女性) 5 診療しているときなどに暴力や虐待を行う ○看護員が患者に暴力をふるったりいじめること ○時間がないとはいえ体を押さえ拘束して治療すること ○男性看護師が女性の体を洗うこと など 【記述の例】 ・精神病院に入院していた時、何人かの人が看護師が患者をなぐっていた(精神障害、50代、男性) ・マッサージ師による猥褻行為。女性の障害者に対する男性看護師による排泄行為。全盲女性の病室に、男性看護師や医師が黙って入ってくること。黙ったまま医療行為やケア をすること。全盲で全身性の障害のある患者が、方向を確かめ、ベッドから落ちないよ うに身を守るものとして頼りにしていたベッドの柵を看護師が勝手にはずし、なぜ外す のかという説明をしなかったため、不安に襲われた。(視覚障害、50 代、女性) ・聞き直しをするたびに「チェッ!またか」と舌打ちをする精神的な虐待である(聴覚 障害、60 代、男性) 6 制度について差別的に取り扱う ○病院の人員、病室などに関する「精神科特例」があること ○制度利用に医師の診断書・意見書の作成が必要な場合に費用が自己負担であること など 【記述の例】 ・制度利用に医師の診断書作成が必要な場合、費用が10 割全て自己負担である。また病院に行くとき移動支援を頼んだ場合、病院の職員が全て案内をしてくださることは考えにくいので、病院での待ち時間が全て10 割負担というのはおかしいと思う。(視覚障害、 30 代、女性) ・医療費負担に知的障がい者との間に大きな異いがある。精神科通院者は、一般(精神科以外)治療は、3割負担。(精神障害、30 代、男性) ◆2−2「保健・医療」(配慮工夫関係) 1 施設や設備について配慮や工夫をしてほしい ○病室を車いすで利用しやすい広さにしたり、窓口のカウンターなどを車いすで使いやす い高さにすること。レントゲン車などの診察車を車いすで利用できるようにすること。 ○補助犬が診察室まで入れるようにすること ○靴を脱がずに診察室に入れるようにすること ○オストメイト対応トイレを設置すること など 【記述の例】 ・病院内は弱視者も見やすい表示や配色にすること。階段の降り口などに必ず黄色い点字 ブロックを設置すること。視覚障害者も安全に院内を移動できるために、通路などに空 中に飛び出したものがないように配慮すること。障害者用の駐車場を十分に確保するこ と。精神科等の入院病棟にも障害者トイレを設置すること。(視覚障害、50 代、女性) ・大規模施設(病院・公共機関)には障害者用トイレが備わっているが、小規模施設には 未だ備わっていない所があり、何等かの対策で備えるようにすること。(内部障害、70 代以上、男性) 2 コミュニケーションや情報のやりとりについて配慮や工夫をしてほしい ○医師が筆談で対応すること・窓口などに筆談具を用意すること ○病院の案内や情報を、わかりやすく伝えること・電子データで提供すること ○いろいろな薬(の袋)を触覚で区別できるようにすること ○医師・看護師がマスクをはずし、口の動きを読めるようにすること ○検診申し込みに電話番号だけでなくファックス番号も記すること ○待合室などで順番が来たら電光表示や振動の出る機器などで知らせること など 【記述の例】 ・検査結果や薬の説明をテキストかワードでいただきたい。(認められるなら、USB を携帯する)(視覚障害、40 代、女性) ・全身性の障害である為、ナースコールが押せなかった。(肢体不自由、60 代、男性) 3 医療機関における介助や移動について配慮や工夫をしてほしい ○入院中に重度障害者には洗濯・買い物・外部との通信に介助をすること ○冬は雪で通院がしにくいので送迎などを行うこと ○診療時にガイドヘルパーを診察室内に入れること など 【記述の例】 ・現在の制度では院内はガイトヘルパーを使えないため、手伝ってくれる人を見つけるにも困難がある視覚障害者にとって、病院はたいへん利用しづらい場所になっている。案 内カウンターはできるだけ出入り口に近いところにし、いつでも対応可能な人を配置し てほしい。(視覚障害、20 代、女性) ・入院した時盲ろう者とのコミュニケーションを医師看護師にも覚えてほしい。(盲ろう、60 代、女性) 4 本人の了解と同意を得るうえで配慮や工夫をしてほしい ○本人にわかるように医療情報を提供し、本人が納得して医療を受けられるようにするこ と ○家族や付添人の説明ではなく、本人が説明することを聞くこと ○検査前に「大丈夫、痛くありません」と言うだけでなく流れをきちんと教えること など 【記述の例】 ・私は7回入院しているが、全て、私の説明を聞かず、即入院でした。自分で納得してな いので入院中医師と信頼関係が結べない。(精神障害、40 代、女性) ・付添人が一緒だと医師の説明は長いが難聴一人だと何も説明しないで3時間待って5秒で終る。(聴覚障害、70 代以上、女性) 5 そのほか障害の特性に応じてきめ細かく配慮や工夫をしてほしい ○脳性まひは怒鳴られるとますます緊張して動いてしまうので、検査などで動くなと怒鳴らないこと ○障害のため待てない、落ち着かないなどの特性に配慮し対応すること など 【記述の例】 ・しんさつのための丸イスもひどい。ちゃんとすわっていられない病人もいるのに。2本のつえを体のささえにしていたら、「君、何、そのタイドは?」と言われた。キンジストロフィーだからと答えたら、別のはなしをはじめた。(難病、50 代、女性) ・採血などをする際、脳性まひ特有の緊張のため動いてしまうので、緊張がゆるむまでまって欲しい(重複障害、20 代、男性) 6 制度について配慮や工夫をしてほしい ○知的障害者も身体障害者と同じように医療費を軽減すること ○入院中も自立支援法が使えるようにすること ○医療の自己負担を減らすこと など 【記述の例】 ・小児特定慢性疾患に認定されていたが、大人になると制度外になり医療費の負担が大きく大変。難病指定してほしい。あるいは療育手帳Bでも医療証がほしい。(知的障害、20代、女性) ・入院中、重度障害者はコミュニケーションが慣れた者でなければ取りにくい。ナースコールが押せない、細やかな体位交換が必要、水分補給が必要など病院側だけでは対応で きないので、自立支援法でヘルパーを使えるようにして欲しい。(肢体不自由、50 代、女性)