第20回差別禁止部会 (H24.6.29) 西村正樹委員 提出資料 第20回障がい者制度改革推進会議 差別禁止部会提出資料 地方自治体における採用試験に関する現状から (仮称)障害者差別禁止法策定に向けた提言 自治労障害労働者全国幹事会(障労連) 代表幹事 西村 正樹  障害者雇用の促進を主要な課題のひとつとしている障労連の取り組みに基づき、「(仮称)障害者差別禁止法」における個別分野とされる雇用・就労の採用に関して、法律に盛り込むべき内容について以下のとおり提言する。  また、本提言は、地方自治体における採用試験に関する現状に基づくが、同時に入学、資格取得等の試験の応募規定、実施方法、資格付与の制限等にも関連することから、こうした分野への適用も、併せて提言する。  なお、各自治体のホームページ等から採用制限等については、確認可能である。 1.地方自治体の採用試験(一般・障害者枠)における現状について (1)障害を理由とした直接・間接・関連した受験制限・制約について ・介助者なしで職務遂行可能である者→介助を必要とする障害者は受験不可 ・口頭面接に対応可能である者→手話通訳等を必要とする障害者は受験不可 ・活字印刷物に対応可能である者→点字を必要とする障害者は受験不可 ・自家用車での来場は、認めない→公共交通機関が利用できない者は受験不可 (2)障害に応じた配慮について ・点字試験の実施、手話通訳等の配置、駐車場の用意、福祉機器持ち込み可能 ・体力試験の免除、集団討論への配慮 2.差別禁止法に盛り込むべき受験・資格取得等に関する規定について (1)試験の実施者は、障害または障害に関連した理由で受験および資格取得等を制限・制約してはならない。 (2)試験の実施者は、受験にあたって、個々の障害に応じて必要とする合理的配慮(情報および物理的アクセスの確保等)を確保しなければならない。 (3)国および地方公共団体は、障害または障害に関連する受験および資格取得等の制限をなくすために必要な措置を講じなければならない。 (4)国および地方公共団体は、障害または障害に関連した理由で、受験および資格取得等を制限・制約している既存の法制度等を検証し、必要に応じて改正しなければならない。 3.その他 (1)法文上への盛り込み方(総則・個別規定等)は、別途、検討する。 (2)障害に応じて必要とする合理的配慮等については、自治労障労連調査結果等を資料として提出するが、差別禁止部会において示すことを、期待したい。 注)2005年11月9日 障害者施策推進課長会議決定「資格取得試験等における障害の態様に応じた共通的な配慮について」が公表されている。(別紙) (3)採用後の継続雇用を確保し、障害者が障害のない者と同様に働く機会と環境を整備するための措置を盛り込むことも必要である。(資料参照) 4.提出資料(自治労障労連) (1)地方自治体における障害者枠採用試験の実施状況に関する調査結果報告 (2)障害者が必要とする労働・雇用における合理的配慮に関するガイドライン (3)08 障害者の職場状況に関する調査結果報告書 別紙 〜以下、内閣府のホームページから〜 資格取得試験等における障害の態様に応じた共通的な配慮について 平成17年11月9日 障害者施策推進課長会議決定  障害者の社会参加を促進する一環として、資格制限等による制度的な障壁を除去するため、「障害者対策に関する新長期計画」(平成5年3月22日障害者対策推進本部決定)において、「個々の資格制度における取得要件や各種の試験制度における試験方法等について、障害者がその有する能力を十分に発揮できるよう、中長期的に検討を行う」旨が記載されたところである。  このうち「資格制度における取得条件」については、「障害者に係る欠格条項の見直しについて」(平成11年8月9日障害者施策推進本部決定)に基づき、63制度の欠格条項を見直す方針が示され、現在までに必要な見直しが終了したところである。  一方、「試験制度における試験方法等」については、「障害者に係る欠格条項の見直しに伴う教育、就業環境等の整備について」(平成13 年6 月12 日障害者施策推進本部申合せ)において、資格取得試験については「障害者の持つ知識、技能が適切に判定されるよう障害の態様に応じて点字等の方法により試験を実施するとともに、受験に際しては障害の態様に応じて手話通訳や移動介助等による支援を行う」及び「実技試験においては、福祉用具等の補助的手段の活用に最大限配慮する」旨の方針が示されたところである。  この点については、「障害者基本計画」(平成14 年12 月24 日 閣議決定)に基づく「重点施策実施5か年計画」(同日 障害者施策推進本部決定)においても、「障害者施策推進本部申合せ(平成13 年6 月12 日)に沿って、障害者に係る欠格条項見直しに伴う教育、就業環境等の整備に努める」ことが明示されたところである。  各試験制度においては、当該申合せに基づき、障害の態様に応じた配慮がそれぞれ検討され、実施されてきているが、その一層の推進を図る観点から、今般、国が直接実施する資格取得試験等において、各試験制度で共通的に対応すべき配慮事項を以下のとおり示し、その徹底を図るものとする。  なお、国の資格取得試験等であって国が直接実施しないものについても、同様の配慮が行われるよう関係団体に協力を要請するものとする。  また、各試験制度ごとに試験問題等の特性を踏まえた個別の対応が必要な配慮事項については、それぞれの試験制度において更に検討を進めるものとする。 1.共通的な配慮事項 (1)試験における配慮 ア.問題用紙及び解答用紙に関する配慮 ・拡大問題用紙や拡大解答用紙の提供 ・マークシートに代わる文字記入解答用紙やチェック解答用紙の提供 イ.器具等の使用に関する配慮 ・拡大鏡、補聴器等の持参使用 ・照明器具の持参使用 ・車いすで座れる机の提供 ウ.移動に関する配慮 ・試験室までの介助者の同伴 エ.情報伝達に関する配慮 ・注意事項等の文字による伝達 オ.その他 ・試験時間中の糖質類等の補飲食及び服薬等 (2)試験案内及び申請書等における配慮 ア.試験案内における配慮(冊子又はホームページ等) ・配慮内容の明示 (共通的な配慮事項及び各試験制度で対応可能な配慮事項を列記) ・問い合わせ先のFAX番号又はメールアドレスを記載 イ.申請書等における配慮 ・配慮事項希望欄の設定 (共通的な配慮事項及び各試験制度で対応可能な配慮事項を列記するとともに、その他の配慮希望欄を設定) ・受験者が希望する連絡先記載欄の設定 (電話番号のほかFAX番号又はメールアドレスの記載欄を設定) (3)配慮の手続 ・事前に受験者からの申し出を受けて対応 ・申請書等に障害者手帳の写し又は医師の診断書等を添付 (4)応対における配慮 ・障害のある受験者に対しては、それぞれの障害種別の特性を踏まえて適切に対応 (5)適用時期 ・平成18年度に実施する試験から適用 (対応可能な配慮事項については平成17年度から速やかに適用) 2.共通的な配慮事項の見直し ・共通的な配慮事項の内容については、配慮技術の進歩、個別試験制度における配慮の状況等を踏まえ、適宜見直しを行うものとする。 ■申請書等における配慮のイメージ [PDF:14KB] 地方自治体における障害者枠採用試験の実施状況に関する調査結果報告 1.目的  自治労は、障害者雇用と障害労働者の組織化を重要課題として位置づけ、1981年の国際障害者年に、障害をもつ組合員の結集軸として、本部に「自治労障害労働者全国連絡会(全国障労連)」を設置した。そして、障労連が、中心となって、障害者雇用の促進に向けた運動を進めてきた。  その後、2006年12月に国連において「障害者権利条約(以下、権利条約)」が成立した。以降、2007年9月に日本政府署名、2008年5月に条約発効、そして、現在、民主党を中心とした新政権は、この条約を批准するために「障がい者制度改革推進会議」を設置して、具体的な国内法の検証と見直し作業を進めている。  以上の経過と現状から、本調査は、地方自治体における障害者の採用に関する試験の実施状況を調査し、その実態の把握に努め、権利条約に基づく障害者雇用施策の改善に資することを目的として実施した。 2.実施時期  2010年7月26日(月)から9月30日(木)まで 3.実施方法 (1)別添、調査票により自治労本部から各県本部へ調査を依頼した。 (2)調査対象とする採用試験は、昨年度または今年度実施分としたが、障害者を対象とし た試験については、確認できる直近のものとした。 4.回答状況 (1)39県本部582単組から回答を受ける。 回収率 県本部82.9%(39/47)、単組21.2%(582/2,745) (2)把握した自治体は、28都道府県320市203町31村 5.調査票  別添「自治体における障害者の採用に関する調査票」のとおり 6.集計表  別添「自治体における障害者の採用に関する調査集計表」のとおり 自治労発2010第0857号 2010年7月16日 各 県本部委員長 様 全日本自治団体労働組合 中央執行委員長 徳 永 秀 昭 (総合政治政策局 社会福祉評議会) 地方自治体における障害者枠採用試験の実施状況に関する調査について  連日の取り組みに対し敬意を表します。  自治労は、障害者雇用と障害労働者の組織化を重要課題として位置づけ、1981年の国際障害者年に、障害をもつ組合員の結集軸として、「自治労障害労働者全国連絡会(全国障労連)」を設置し、障害者雇用の促進に向けた運動を進めてきました。  2006年12月に国連において「障害者権利条約(以下、権利条約)」が成立し、以降、2007年9月に日本政府署名、2008年5月に条約発効、そして現在、民主党を中心とした新政権は、この条約を批准するために「障がい者制度改革推進会議」を設置して、具体的な国内法の検証と見直し作業を進めています。  今回、地方自治体における障害者の採用に関する試験の実施状況の実態を把握し、権利条約に基づく障害者雇用施策の改善に資することを目的として、標記調査を行います。 各県本部におかれましてはお忙しいところ恐縮ですが、各単組、社会福祉評議会、障労連関係者に広くご周知いただき、調査にご協力いただきますようよろしくお願い申し上げます。 記 1.調査方法 @各県本部・各県本部障労連を通じて、各単組へ調査をお願いします。 A調査は、当局への照会や各自治体のホームページ(採用)を確認しご回答ください。  なお、(財)地方自治情報センターのホームページから各自治体のホームページを確認できます。 http://www.lasdec.nippon-net.ne.jp/cms/1,0,15.html 2.調査期間 〜2010年9月30日 3.回答方法  下記の調査票にご記入の上、本部・社会福祉評議会まで、FAXまたはe-mailにてお送りくだ さい。 (報告先) 自治労本部・社会福祉評議会 FAX 03−5210−7422 e-mail kenpuku@jichiro.gr.jp 4.回答締切期限  9月30日(木)までに、自治労本部・社会福祉評議会まで、FAXまたはメールにてご返信ください。 5. その他 お問い合わせについては、本部社福評(秋野、永野)までお問い合わせください。 TEL 03−3263−0261 FAX 03−5210−7422 以 上 地方自治体における障害者の採用に関する調査票 (元資料が画像データのため、このテキストデータでは省略した。) 自治体における障害者の採用に関する調査集計表 (元資料が画像データのため、このテキストデータでは省略した。) ― 2010 年度第2 回自治労障害労働者全国連絡会幹事会確認 ― 障害者が必要とする労働・雇用における合理的配慮に関するガイドライン 〜 障害者権利条約批准と国内履行にむけて 〜 <合理的配慮とは>  合理的配慮とは、障害者権利条約で定義された新たな概念であり、障害者の人権と基本的自由及び実質的な機会の平等が、障害のない人々と同様に保障されるために行われる「必要かつ適当な変更及び調整」であり、障害者の個別・具体的なニーズに配慮するためのものである。  また、変更及び調整を行う者に対して「均衡を失した又は過度の負担」を課すものではないが、障害者が必要とする合理的配慮を提供しないことは、差別とされる。  なお、労働・雇用における合理的配慮の内容は、障害者の求めに応じて、労働者代表委員会または当該障害者と事業主との協議・調整による決定を基本とし、可能な限り短期間に当該事案の解決をはからなければならない。 <事業主の責務> ○ 障害をもつ労働者の請求に対して、過度な負担が生じる場合を除いて、採用時及び採用後において合理的配慮を提供しなければならない。 ○ 障害をもつ労働者が必要とする合理的配慮を拒否することは、差別であり、合理的配慮を求めたことを理由として不利益な扱いをすることも差別となる。 ○ 障害をもつ労働者に提供しなければならない具体的な合理的配慮等の事例は、以下のとおりとする。 1.採用について (1)採用試験 @ 採用試験の実施にあたっては、点字・音声パソコン・拡大文字・照明・手話通訳・文字通訳(パソコン文字・要約筆記・筆記)・機器の活用等、障害者が受験するために必要とする配慮を提供する。 A 知的障害者の採用にあたっては、一般競争試験以外の手法により、その個人の適正と求められる職務内容を加味して実施する。 (2)採用試験の会場  採用試験は、車いす使用者等が容易に利用できるバリアフリーな環境が整備されている会場で実施する。また、必要に応じて駐車場を確保する。 注)採用試験における受験資格として「活字印刷文による出題や口頭による試験に対応できる者」、「自力通勤及び介助者なしで職務遂行が可能な者」及び「身体障害者」に限定している要件は、採用する職務内容(電話交換・運転業務等)と関連がない場合は、間接差別的な表現ではあるが、その実態からは、直接及び合理的配慮の提供を拒否する差別項目である。また、採用試験時に配慮しなければならない事項は、採用後においても確保されなければならない。 2.労働条件の整備について (1)賃金  障害のない労働者と職務内容に違いがないのに障害を理由として賃金を低くしない。 (2)通勤  一般公共交通機関を利用できない場合は、障害に基づき必要とする通勤方法(自家用車、福祉移送サービス、介護タクシー、移動支援等)を保障する。 (3)異動 @ 異動の機会を保障する。 A 異動に際しては、事前に異動先の職場の状況等に関する情報を提供する。 B 当該障害者が必要とする労働環境等を確保する。 (4)昇任・昇格等 @ 昇任・昇格等の適用にあたっては、障害による不利益な扱いをしない。 A 試験等の実施時には、障害に応じた配慮を確保する。 (5)職務評価 評価に当たっては、障害の状況を十分に勘案し、障害による不利益な評価をしない。 (6)労働安全衛生 @ 障害の重度化及び進行を防ぐための対応(職務内容・労働密度・職場環境等の検証及び休息・ 通院時間等の確保)をする。 A 障害に応じて必要とする休息時間・場所を確保する。 B 健康診断の実施にあたっては、障害に応じた配慮(会場、検査、結果通知等)をする。 (7)出張 出張に際して、障害者が必要とする配慮(宿舎、移動手段等)をする。 (8)解雇 @ 障害を理由とする解雇はしない。 A 中途で障害をもった場合は、原職復帰を原則とし、本人の希望する配慮を提供する。 B 職場復帰に向けた対応(治療・リハビリ期間の確保、職場環境の改善等)をする。 C 本人の希望する配慮の提供がされても原職復帰が困難な場合等は、職務を変更する。 3.労働環境の整備について (1)人的サポート 障害者の必要に応じてガイドヘルパー、代読者、代筆者、手話・文字通訳者、介助者、ジョブコーチ等を確保する。 (2)執務室等 @ 移動するために必要な経路及びスペースを確保する。 A 事務機器等(コピー機・電話・書棚等)が使用できるように配慮する。 B 障害に対応したIT環境(インターネット、メール、電子決裁)を整備する。 C 体温調整機能に障害がある場合は、室温や湿度に関する配慮をする。 (3)研修・会議 障害に応じた配慮(点字・文字データ、手話・文字通訳、車いすトイレ等)をする。 (4)福利厚生 福利厚生事業の実施にあたっては、障害者が必要とする配慮(社宅及び宿泊施設のユニバーサルデザインの推進、介助者等の同行等)をする。 (5)防災・危機管理 @ 災害時の避難、対応等に関する訓練を実施し、マニュアルを作成する。 A 音声及び視覚による災害状況及び避難等に関する情報の提供体制を整備する。 (6)啓発・教育 すべての管理職及び労働者に対して「障害」及び「合理的配慮」に関する研修を実施する。 <障害種別ごとの配慮例> (1)視覚障害 @ 誘導チャイム、点字ブロック、音声案内、案内表示及び照明等を整備する。 A 労働用具(音声パソコン、拡大読書機、点字プリンター等)を整備・支給する。 B 労働者に提供されるすべての情報は、点字、文字データ等により保障する。 (2)聴覚・言語障害 労働者に提供されるすべての情報は、手話・文字通訳、文字データ等により保障する。 (3)肢体障害 駐車場の確保、段差解消、エレベーター・車いすトイレ等を整備する。 (4)内部障害 障害に基づき必要とする人工透析等については、勤務時間調整・変更等により配慮する。 (5)知的障害 職務内容の見直し・調整、職務を遂行するための生活面等に関する支援をする。 (6)精神障害 職務内容の見直し、人間関係への配慮及び休息時間・場所と相談体制を確保する。 4.手続き (1)職場環境の変更 職場の改装・改築及び新たなシステム導入等、職場・労働環境を変更する場合は、事前に障害者に説明し、その意見を反映する。 (2)紛争解決 @ 紛争の解決 ア.職場の集団的労使関係において解決する。 イ.行政救済(都道府県労働局紛争調整委員会による調停) において解決する。 ウ.民事訴訟および労働審判制度等の司法救済において解決する。 A 立証責任 ア.労働者は、合理的配慮の内容と義務違反の事実を提示する。 イ.事業主は、合理的配慮を提供しなかった措置の正当性を立証する。 (3)過度な負担 @ 企業の経営状況、業種、規模等に応じて個別に判断される。 A 事業主が説明責任を負う。 <検討課題> 1.障害者雇用施策で定める障害者の範囲、重度の定義、法定雇用率の見直しは、障害者基本法及び各関連法の障害者の範囲の見直しを受けて検討する。 2.障害者権利条約では、手話・文字通訳は、言語と定義されたため、我が国における今後の手話・文字通訳に関する制度の見直し等を受けて検討する 3.障害者権利条約では、締約国に対して合理的配慮を確保するための措置をとることを定めていることから、障害者雇用促進法に基づく支援措置と財源確保及び障害福祉施策の利用については、別途、検討する。 4.地方自治体、教育委員会等の公務部門も新たに納付金及び助成対象とするが、制度の具体的な適用内容等については、別途、検討する。 5.障害者が必要とする支援の確保と充実をはかることにより、現在、重度障害者の雇用促進のために実施されているダブルカウントに替わる制度を検討する。 参考 障害者の権利に関する条約 公定訳(2009 年雛祭バージョン) <総則から抜粋> 第一条 目的  この条約は、すべての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、及び確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的とする。  障害者には、長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害であって、様々な障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げ得るものを有する者を含む。 第二条 定義 この条約の適用上、  「意思疎通」とは、言語、文字の表示駅点字・触覚を使った意思疎通、拡大文字、利用しやすい マルチメディア並びに筆記、音声、平易な言葉、朗読その他の補助的及び代替的な意思疎通の形態、手段及び様式(利用しやすい情報通信機器を含む。)をいう。  「言語」とは、音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいう。  「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者とめ平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。  「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。  「ユニバーサルデザイン」とは、調整又は特別な設計を必要とすることなく、最大限可能な範囲ですべての人が使用することのできる製品、環境、計画及びサービスの設計をいう。ユニバーサルデザインは、特定の障害者の集団のための補装具が必要な場合には、これを排除するものではない。 第三条 一般原則 この条約の原則は、次のとおりとする。 (a) 固有の尊厳、個人の自律(自ら選択する自由を含む。)及び個人の自立の尊重 (b) 無差別 (c) 社会への完全かつ効果的な参加及び包容 (d) 差異の尊重並びに人間の多様性の一部及び人類の一員としての障害者の受入れ (e) 機会の均等 (f) 施設及びサービス等の利用の容易さ (g) 男女の平等 (h) 障害のある児童の発達しつつある能力の尊重及び障害のある児童がその同一性を保持する権利の尊重 第四条 一般的義務 1 締約国は、障害に基づくいかなる差別もなしに、すべての障害者のあらゆる人権及び基本的自由を完全に実現することを確保し、及び促進することを約束する。このため、締約国は、次のことを約束する。 (a) この条約において認められる権利の実現のため、すべての適当な立法措置、行政措置その他の措置をとること。 (b) 障害者に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し、又は廃止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとること。 (c) すべての政策及び計画において障害者の人権の保護及び促進を考慮に入れること。 (d) この条約と両立しないいかなる行為又は慣行も差し控えること。また、公の当局及び機関がこの条約に従って行動することを確保すること。 (e) いかなる個人、団体又は民間企業による障害に基づく差別も撤廃するためのすべての適当な措置をとること。 (f) 第二条に規定するユニバーサルデザインの製品、サービス、設備及び施設であって、障害者に特有のニーズを満たすために必要な調整が可能な限り最小限であり、かつ、当該ニーズを満たすために必要な費用が最小限であるべきものについての研究及び開発を実施し、又は促進すること。また、当該ユニバーサルデザインの製品、サービス、設備及び施設の利用可能性及び使用を促進すること。さらに、基準及び指針が作成される場合には、ユニバーサルデザインが当該基準及び指針に含まれることを促進すること。 (g) 障害者に適した新たな機器(情報通信機器、移動補助具、補装具及び支援機器を含む。)についての研究及び開発を実施し、又は促進し、並びに当該新たな機器の利用可能性及び使用を促進すること。この場合において、締約国は、負担しやすい費用の機器を優先させる。 (h) 移動補助具、補装具及び支援機器(新たな機器を含む。)並びに他の形態の援助、支援サービス及び施設に関する情報であって、障害者にとって利用しやすいものを提供すること。 (i) この条約において認められる権利によって保障される支援及びサービスをより良く提供するため、障害者と共に行動する専門家及び職員に対する当該権利に関する研修を促進すること。 2 各締約国は、経済的、社会的及び文化的権利に関しては、これらの権利の完全な実現を漸進的に達成するため、自国における利用可能な手段を最大限に用いることにより、また、必要な場合には国際協力の枠内で、措置をとることを約束する。ただし、この条約に定める義務であって、国際法に従って直ちに適用されるものに影響を及ぼすものではない。 3 締約国は、この条約を実施するための法令及び政策の作成及び実施において、並びに障害者に関する問題についての他の意思決定過程において、障害者(障害のある児童を含む。以下この3 において同じ。)を代表する団体を通じ、障害者と緊密に協議し、及び障害者を積極的に関与させる。 4 この条約のいかなる規定も、締約国の法律又は締約国について効力を有する国際法に含まれる規定であって障害者の権利の実現に一層貢献するものに影響を及ぼすものではない。この条約のいずれかの締約国において法律、条約、規則又は慣習によって認められ、又は存する人権及び基本的自由については、この条約がそれらの権利若しくは自由を認めていないこと又はその認める範囲がより狭いことを理由として、それらの権利及び自由を制限し、又は侵してはならない。 5 この条約は、いかなる制限又は例外もなしに、連邦国家のすべての地域について適用する。 第五条 平等及び無差別 1 締約国は、すべての者が、法律の前に又は法律に基づいて平等であり、並びにいかなる差別もなしに法律による平等の保護及び利益を受ける権利を有することを認める。 2 締約国は、障害に基づくあらゆる差別を禁止するものとし、いかなる理由による差別に対しても平等かつ効果的な法的保護を障害者に保障する。 3 締約国は、平等を促進し、及び差別を撤廃することを目的として、合理的配慮が提供されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。 4 障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、この条約に規定する差別と解してはならない。 <個別規定から抜粋> 第二十七条 労働及び雇用 1 締約国は、障害者が他の者との平等を基礎として労働についての権利を有することを認める。この権利には、障害者に対して開放され、障害者を包容し、及び障害者にとって利用しやすい労働市場及び労働環境において、障害者が自由に選択し、又は承諾する労働によって生計を立てる機会を有する権利を含む。締約国は、特に次のことのための適当な措置(立法によるものを含む。)をとることにより、労働についての障害者(雇用の過程で障害を有することとなった者を含む。)の権利が実現されることを保障し、及び促進する。 (a) あらゆる形態の雇用に係るすべての事項(募集、採用及び雇用の条件、雇用の継続、昇進並びに安全かつ健康的な作業条件を含む。)に関し、障害に基づく差別を禁止すること。 (b) 他の者との平等を基礎として、公正かつ良好な労働条件(均等な機会及び同一価値の労働についての同一報酬を含む。)、安全かつ健康的な作業条件(嫌がらせからの保護を含む。)及び苦情に対する救済についての障害者の権利を保護すること。 (c) 障害者が他の者との平等を基礎として労働及び労働組合についての権利を行使することができることを確保すること。 (d) 障害者が技術及び職業の指導に関する一般的な計画、職業紹介サービス並びに職業訓練及び継続的な訓練を利用する効果的な機会を有することを可能とすること。 (e) 労働市場において障害者の雇用機会の増大を図り、及びその昇進を促進すること並びに職業を求め、これに就き、これを継続し、及びこれに復帰する際の支援を促進すること。 (f) 自営活動の機会、起業家精神、協同組合の発展及び自己の事業の開始を促進すること。 (g) 公的部門において障害者を雇用すること。 (h) 適当な政策及び措置(積極的差別是正措置、奨励措置その他の措置を含めることができる。)を通じて、民間部門における障害者の雇用を促進すること。 (i) 職場において合理的配慮が障害者に提供ざれることを確保すること。 (j) 開かれた労働市場において障害者が職業経験を得ることを促進すること。 (k) 障害者の職業リハビリテーション、職業の保持及び職場復帰計画を促進すること。 2 締約国は、障害者が、奴隷の状態又は隷属状態に置かれないこと及び他の者との平等を基礎として強制労働から保護されることを確保する。 2008年度 障害労働者の職場状況に関する 調査結果報告書 自治労障害労働者全国連絡会 目 次 障害労働者の職場状況に関する調査結果について P 2〜 7 別紙1 2008年度障害労働者の職場状況に関する調査 P 8〜14  視覚障害 P 8  聴覚障害 P 9〜10  肢体障害 P11〜13  内部障害 P14 別紙2 アンケート調査説明文&調査票 P15〜16 資料1 2007年度自治労全道庁労連障労連独自アンケート調査 P17〜20 資料2 介護・福祉集会等の意見から P21 資料3 寄せられた「障害者差別に当たると思われる事例(労働)」(千葉県) P22〜28 資料4「障害のある当事者からのメッセージ」の意見募集結果(内閣府) P29〜33 資料5 障害のある人の権利に関する条約 P34〜35 別添 障害者が働く中で不便に感じたり、提供して欲しかった配慮に関するアンケート調査集計表 注)資料3〜5は削除する。 障害労働者の職場状況に関する調査結果について 〜はじめに〜  「障害者の権利条約(以下、権利条約)」では、各国の定義が異なるなどの理由により、障害者の明確な定義はされていない。  しかし、障害について前文では、「(e)・・・機能障害(インペアメント*1)のある人と態度上及び環境上の障壁との相互作用であって、それらの者(障害者)が他の者(障害のない人)との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げるものから生じる・・・」と明記されている。  また、第1条(目的)においては、「・・・障害(ディスアビリティ*2)のある人には、種々の障壁との相互作用により、他の者(障害のない人)との平等を基礎とした社会への完全かつ効果的な参加を妨げることのある。長期の身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害(インペアメント)のある人を含む。」とも明記されている。  これは、身体、知的、精神的な機能等の損傷等により、その人に生じた状態(インペアメント)と、その人が住む地域や働く職場の状況との相互関係の中で抱える困難さ(ディスアビリティ)を障害としている。  また、併せて「他の者(障害のない人)との平等を基礎」との定義は、障害のない人々がもっていない新たな権利を障害のある人々にだけ保障するものでも、創りだすものでもないことを意味している。  しかし、前文の「(c)・・・障害のある人に対してすべての人権及び基本的自由の差別のない完全な享有を保障する必要性を改めて確認」と「(v) 障害のある人がすべての人権及び基本的自由を完全に享有することを可能とするに当たり、物理的、社会的及び経済的環境のアクセシビリティ、保健及び教育のアクセシビリティ並びに情報及びコミュニケーションのアクセシビリティが重要」及び第5条(平等及び被差別)の「3 締約国は、(障害者と障害のない人の)平等を促進し及び差別を撤廃するため、(障害者に必要な)合理的配慮 (*3)が行われることを確保するためのすべての適切な行動をとる。」と記載されていることには、十分に留意することが重要であり必要である。  それは、障害のある人々が障害のない人々に保障されてきた当たりまえの社会参加やサービスの利用等から排除されてきた事実を指摘するとともに、障害のある人々が、自らの障害を理由として社会生活全般で受けてきた様々な制限や制約の解消を図り、障害のない人々との生活上の格差を是正するための対応を社会に求めるものである。  言い換えるならば、障害によって、失われてきた障害のある人々の人としての「自由」と「平等」と「暮らし」と「尊厳」の回復を図ることを意味することである。 *1 見えない、聞こえない、歩けない、階段を上がれないなどといった身体状況や金銭管理・読み書き・計算などが困難な知的状況及び主観的心理や環境条件の変化によって生活全般において、それまでできていたことができなくなってしまう精神的状況などといわれる。 *2 *1の状況等のため例えば階段しか昇降手段がないために移動が自由にできない、支援者や表現変更等の配慮がないため生活に支障が生じる状況等のため、就労や通学等の社会参加や日常生活が制限されることといわれている。 *3 「合理的配慮」とは、特定の場合において必要とされる、障害のある人に対して他の者との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を享有し又は行使することを確保するための必要かつ適切な変更及び調整で不釣り合い又は加重な負担を課さないもの。(第2 条) 〜アンケート調査の実施について〜  昨年の9月に日本政府は、国連本部において、権利条約に署名をしている。  これは、将来、日本政府としてこの条約を批准することへの意志表明であり、それは同時に、我が国の法律や施策と障害のある人々の生活の実態が検証されることになる。そして、それらの状況が権利条約に相反するものであれば違法行為とされ、その改善が求められるのである。  こうした状況を踏まえて、「自治労障害労働者全国連絡会(以下、障労連)」として、自治労に結集している障害労働者に対してそれぞれが働く現場で抱えているまたは感じている問題等に関するアンケート調査を実施した。  そして、その回答内容から障害労働者の置かれている現状と課題を検証し、自治労及び障労連として今後の権利条約の批准と国内法等の整備等に当たって活用していくことを目的として実施した。  アンケート調査に関する実施及び集約に関する概要は、以下のとおりである。 ○回答状況  実施主体:自治労障害労働者全国連絡会  実施時期:2007年11月9日〜2008年1月31日  都道府県:16都道府県 回答者:男 53名 女 10名  年代:20代11名 30代15名 40代25名 50代9名 60代2名  障害種別:視覚7名 聴覚11名 言語1名 肢体(上肢16名 下肢24名 体幹12名 内部(腎臓3名 直腸・膀胱2名)  補装具等:白杖3名 補聴器6名 手動車いす7名 杖7名 下肢装具4名 パウチ1名 サポーター1名 人工内耳1名 拡大鏡3名 FM補聴システム1名、吊り具1 名)  配慮事項:拡大文字3名 手話7名 要約筆記6名 身障トイレ14名 透析3名その他各1名(点字 エレベーター等の段差解消 車いす用駐車場 TEL音声拡大器 ワークアシスタント 手すり 床素材 デジタル資料 音声読み上げ資料 荷物運び パソコン)  調査用紙:別紙1のとおり  回答内容:別紙2及び別添「調査集計表(自由記載を除く)」のとおり 〜調査内容のまとめ〜  「障害者雇用は、ノーマライゼーション理念(*4)に基づき、障害者がその障害の種別や程度に関わりなく、働く意欲と能力に応じて、地域社会で働きながら暮らすこと。(以下、基本視点)」が一般的な障害者雇用の基本的な考え方であり、視点といえるだろう。  そうした基本視点を念頭におきながら以下、共通項目と障害種別(程度)に分類して障害者が働く中で感じてきたことや実際の出来事をまとめてみた。 <共通項目> ・人間関係をはじめとする職場の状況から困ったことや問題はないが、今後の異動等によってこうした状況が維持されるかが不安である。 ・採用試験においては障害に対する必要な配慮があったが、採用後の職場においては、配慮が不足またはされていない。 ・新たなシステム導入や職場改修等に当たっては、計画段階で障害者への事前説明と協議が必要である。こうした情報を得た時には、そのシステムや設備を障害者が利用できないものであり、改善もできないことがよくある。 ・本人自身が大丈夫と思い、申し立てても、過剰な配慮を受け担当させてもらえない。 ・事務室内の環境(備品配置・配線・移動経路・広さ・照明・室温)が整備されていない。 ・外見から認識される障害については、理解を受けることができるが、見てわからない障害に関しては、理解されずにいる。 ・研修や会議において障害に必要な情報保障や設備の配慮がされていない。 ・障害が人事評価に反映され不利なあつかいを受ける心配がある。 ・職員及び管理職に障害に関する研修を実施することが必要である。特に人事評価担当職員、産業医や職員の相談対応担当者には必要である。 ・障害のある職員同志が問題を話し合い共有し解決するための場が不足またはない。 <視覚障害> ・事務室内の広さや備品の配置などのため移動時に人や物にぶつかったりする。特に機器の配線やゴミ箱等は、移動の支障になる。 ・節電等を理由に照明がおさえられるため移動に支障が生じる。 ・障害者の職域を開発できる機能があるのに、視覚障害者の使用を想定していなかったためIT 機器が使用できない。(ほとんどが改良できるが経費負担増を理由に拒否さる。) ・庁舎等の案内表示、書類等の印字が小さく読めない。 ・点字、データ、音声といった視覚以外の情報保障が必要である。 ・ワークアシスタントが必要である。 <聴覚障害> ・会議、研修等における手話通訳等の情報保障が予算等の問題で配置されない。 ・口話等によるコミュニュケーション手段では、十分な意思疎通ができていないことがあり、双方の認識レベルに相違が生じてしまうことがある。 ・手話通訳や要約筆記が保障されても情報把握、分析、質問、意見が健聴者に比較して時間を要するため、質疑等における時間的配慮や情報の把握状況等の確認が必要である。 ・火災報知器や放送について視覚による情報提供が必要である。 <肢体障害> ・車いすで使用できるトイレが少なく、にもかかわらずそれを必要としていない人が使用している。 ・FAXやコピー機器等が高く、使用できない。または使いにくい。 ・エレベーター設備の表示がわかりにくい。 ・手すりの設置が少ない。 ・電源スイッチ、セキュリティーシステム等が車いす使用者は使用できない。 ・段差、エレベーターが未設置等のため庁舎内(売店・食堂・会議室等)の移動ができない。また、床面素材への配慮が必要である。 ・駐車場の車いすで乗降できる駐車スペースと駐車場から庁舎への移動(特に冬期間や悪天候時)の移動経路を確保することが必要である。 <内部障害。その他> ・人工透析に必要な特別休暇の創設が必要である。 ・体温調整ができないため事務室の寒暖が負担である。 *4 ノーマライゼーション(normalization)とは、1950 年代後半。デンマークの知的障害者の親の会の運動を起点として、バンク・ミケルセンが提唱した考え方である。  障害者福祉の基本的な考え方で障害者を特別な人と見るのではなく、障害者が社会の中で普通の生活が送れるような条件を整えるべきで、ともに生きる社会こそがノーマルなのだという理念である。  1981年の国際障害者年以降、我が国においても普及してきており、「この社会は、男性がいて女性がいて、子どもがいて若者がいて高齢者がいて、障害者がいることが普通であり、一部の人々を排除する社会は、弱くもろい社会であり、文化的に低い社会である。」 という考え方である。 〜見えてきた課題〜  以上の調査結果から障害者の働く現場からは、障害者の社会参加全般で指摘されるハードとソフトの両面から、障害に対する配慮と理解の必要性が確認できる。  それは、障害によって必要とされる情報保障や段差解消等といったバリアフリー(*5)対応は、障害者が働くために必要な配慮であり、併せて職場の上司や同僚の障害に対する知識と認識と理解を得ることも重要である。  また、「障害者を特別扱いしない。」、「同じ人として見ている。」または「障害者として見ない。」という障害者自身や周囲の言葉に関しては、「障害者はその社会の他のものと異なったニーズをもつ特別の集団と考えられるべきでなく、その通常の人間的なニーズを充たすのに特別な困難をもつふつうの市民(国際障害者年行動計画の定義から)」としてとらえることも確認されなければならない。  それは、かつて障労連が実施した障害者雇用に関する対政府交渉において「視覚障害者への点字試験の実施に関しては、他の(点字を必要としない)受験者が活字印刷物で受験するのだから視覚に障害があるという理由で特別扱いすることは公平性と平等に反する。」と回答を受けたことがあるが、これは通常のニーズを満たすためのものであり、提供されないことが公平性や平等性を確保できないものであり、こうした配慮を求めることは、障害者が自らの障害に甘えているのものではないこととして認識しなければならない。  では、アンケート回答等から新ためて障害者が、安心して働き続けることができるために必要な主な配慮すべき事項を以下、列挙してみる。 1.庁舎や施設の環境整備等について @ 視覚障害者が必要とする誘導チャイム、点字ブロック、音声案内、案内表示及び照明等の整備。 A 聴覚障害者への危機管理及び回避に関する情報提供方法の視覚化。 B 車いす使用者及びその他の下肢障害者の駐車場、駐車場から庁舎への移動環境、エレベーター、トイレ等の整備及び段差の解消。 2. 事務室内の環境整備等について @ 視覚障害者や下肢障害者の移動を困難にするゴミ箱や床上の配線の整理。 A 車いす使用者が移動するために必要な経路及びスペースの確保。 B 車いす使用者のコピー機等の使用に対する配慮。 C 脊髄損傷等により体温調整機能に障害がある者及び内部障害のある者には、温度設定や湿度に関する配慮。 3. 研修、会議における情報保障等について @ 視覚障害者への資料として点字、音声資料、データ資料(読み上げ可)等の提供。 A 聴覚障害者のニードに応じて手話通訳、要約筆記等の配置。 B 視覚、聴覚障害者に対する研修等の内容の理解度及び伝達状況の確認。 C 下肢障害者のニードに応じたアクセシブルな研修会場の確保(段差、EV、トイレ、駐車場等) 4. 上司及び同僚との人間関係等について @ 階層別研修の実施に当たっては、障害(インペアメント&ディスアビリティー)及び必要な配慮に関する内容を必須科目として設定する。 A 設定に当たっては、一般来客等の障害者と上司、同僚また部下として職場で働く障害者を念頭にすること。 B 具体的な項目としては、上記1〜3、下記5〜6及び以下の項目を含めること。 ア. 障害福祉及び障害者雇用に関する理念と現状及び課題について イ. 見える障害だけではなく見えない障害による障害者が抱えている困難さについて ウ. 二次障害について エ. 障害者が必要としているトイレ、駐車場等の設備の意味とこうした設備を必要と しない人のモラル向上について 5. その他 @ 障害に対応したIT 環境(インターネット、メール、電子決裁)の整備。 A 異動に際しては、障害者の障害に配慮されている環境の確保状況を確認して本人に情報を提供する。 B 人事評価の導入及び実施に当たっては、障害者の障害の状況を十分に勘案する。 C 通勤(家族送迎、STS*6)、休暇(人工透析、補装具の修理・判定、補助犬及び手帳の更新)及び福利厚生等について障害に応じた配慮をする。 D バリアフリー、ユニバーサルデザインな独身寮、公宅及び福利厚生施設の整備。 E ワークアシスタント、職場介助者、ジョブコーチといった人的な配置。 F 障害の種別によって「電磁波」、「高気圧環境」、「過労」、「出張」、「荷物の上げ下ろし」、「腹部で荷物を支える」、「重労働」及び「ストレスの多い職務」についての配慮が必要。 G 庁舎の改修、新システムの導入に際しては、企画、計画段階から障害者の意見や不安等を確認する。 H 障害者が自らの障害と職場の状況から生じる不便さや困難さとニードは、当事者へ確認し、その解消または軽減をともに検討し実施する。  以上の配慮がなければ基本視点で指摘されている「ノーマライゼーション理念」、「障害者がその障害の種別や程度に関わりなく」障害者雇用を推進し継続した雇用を確保するために必要な配慮であり対応である。  また、「働く意欲」については、先天性の障害であれ後天性の障害であれ、自らの育った環境や受傷時及びその後、環境の影響に関する配慮と対応が必要であり、「能力に応じて」は、限定的にとらえることなくエンパワーメント(*7)としての積極的、肯定的な視点からとらえなおすことも必要である。 *5 バリアフリーとは障害者や高齢者の社会参加や行動を制限する障壁(バリア)を解消(フリー)することである。例えば、建物内の段差を無くし、出入口や廊下の幅員を広げて、障害者や高齢者などの行動に支障がない状況にするもので、公共施設や交通機関に関するバリアフリーを進めるための法整備も行われている。また、このような段差解消といった「物理的な障壁の解消」以外にも、「情報通信の障壁の解消」、「制度の障壁の解消」及び「心の障壁の解消」もバリアフリーの定義とされている。 *6 STS(Special Transport Service)とは、リフトやスロープなどを装備して車いすのまま乗車できる車両を使用して、バスや電車等の公共交通機関の利用が困難な高齢者や障害者といった移動困難者の移動支援をおこなうサービスである。もともとは、NPOやボランティア団体などがドア・ツー・ドア又はベット・ツー・ベットの移動サービスを提供してきたものであり、かつては「法律上、違法サービスである」と見られる面と「移動困難者への必要なサービス」として認識されるという二面性を持った評価がされてきた。しかし、現在、一定の要件を満たすことで社会的に認知された公的サービスとなっている。 *7 エンパワーメントとは、「能力をつける」「権限を与える」という意味である。しかし、障害福祉関係では、従来、障害者には訓練や指導が必要と見られてきたことに対して、障害者にも元々1 人の人間として可能性や能力があるにもかかわらず、育ってきた環境や置かれている状況から、そうしたものが抑圧されてきたのであり、それを引き出し開花させ、本来の自分自身を回復していくという考え方とされている。 〜おわりに〜  「障害は、不幸なことではなく、不便なことである。」というヘレン・ケラーの言葉は、障害者が置かれている現状や抱えている問題を顕著に指摘している。  それは自らの障害(インペアメント)により生じる身体等の機能の状況によって生じる様々な制限や制約を受けているのが障害者であり、そうした状況を改善していくためのバリアフリーで表現される環境の整備により、障害者が抱える不自由さは、解消または軽減を図ることができる。  しかし、そうした障害(ディスアビリティ)に対する認識がなく、障害のある人々に対して自らの努力のみで障害を克服し、障害のない人々に近づくことのみを求める社会や職場であれば、そこは、障害のある人たちにとって極めて不幸な環境であり、権利条約の理念に反する差別的行為(合理的配慮の否定)であり、人権侵害としてとらえなければならないだろう。  障害者が抱える問題は社会や環境によってつくられてきたといえる。だからこそ、その解決は社会や環境を改善しなければ根本的な問題の解決にはならないのである。  従来、障害者が直面する問題の原因は障害者自身の障害(インペアメント)にある。したがって、障害者問題の根本的解決のためには、治療やリハビリテーションをつうじたインペアメントの除去・軽減が不可欠であるといわれてきた(医療モデル)。しかし障害当事者運動とその参画によって成立した権利条約においては、障害者が直面する問題の原因は、障害者自身の障害(インペアメント)にあるのではなく、社会のしくみや障害者を取りまく環境にあるため、障害者問題の解決のために必要となるのは、障害者を取りまく社会や環境の改善なのである(社会モデル)。  そして、障害者が安心して暮らせる社会や職場は、「バリアフリー」から「ユニバーサルデザイン(*8)」という新たな理念の提起にもあるように、障害のない人々にとっても安心と安全と便利さをもたらすものともいえるだろう。 *8 ユニバーサルデザイン(UD)とは、ユニバーサル(普遍的な、全体の)という意味に基づき「すべての人のためのデザイン」を意味し、年齢、障害有無等に関係なく、最初からより多くの人々が利用可能なデザインすることであり、次の7 つの原則が提唱されている。「@誰でも使えて手にいれることが出来る(公平性)」、「A柔軟に使用できる(自由度)」、「B 使い方が簡単にわかる(単純性)」、「C使う人に必要な情報が簡単に伝わる(わかりやすさ)」、「D 間違えても重大な結果にならない(安全性)」、「E 少ない力で効率的に、楽に使える(省体力)」、「F使うときに適当な広さがある(スペースの確保)」 別紙1 2008年度障害労働者の職場状況に関する調査 〜障害者が働く中で不便に感じたり、提供して欲しかった配慮に関するアンケート調査〜 結果集計票(自由記載) ○視覚障害 <男 20代 視覚 白杖使用> ・廊下や事務室内が狭いため、人や物によくぶつかってしまう。とても歩きにくい。車いす利用者でなくてもスペースは、必要です。 ・エネルギー節約のため昼休みなど電灯を消すことが多くなったが、夜盲があるので見えづらくて困る。 <男 年代未記入 視覚 拡大文字必要> 職場での視覚障害者へ対応したIT 環境(インターネットやe メール)の未整備。 <男 20代 視覚> 現職場では不便に感じたことは特にないが、異動によりでてくるかもしれない。 <男 30代 視覚 拡大鏡使用> 採用及び承認試験時に拓一でマークシートの免除、選択数字の記入へ変更。論文での原稿用紙の拡大及び濃いマス目の用紙の使用をそれぞれ配慮してもらっている。 <男 40代 視覚 白杖・拡大鏡使用 拡大文字必要> 身障手帳2級を取得したばかりなので、今後の配慮希望になりますが、進行性の疾患のため年に1〜2回の定期的な人事部局等との職場環境などの聞き取りなどの配慮を希望。 <男 50代 拡大鏡使用 拡大文字必要> 印刷文字のポイントが小さく読みにくいことが多い。建物内の表示からファイルインデックスの表示まで見えにくいものが多い。 <男 50代 視覚 点字必要> 活字が読めない、書けないのでアシスタントをつけてほしい。 <男 50代 視覚 白杖使用> ・ 役所でデジタル情報化による資料配付または音声による読み上げ。 ・ 庁内システム(コンピューター)の開発時におけるアクセシビリティー確保のための事前協議システム、変更時の研修等、PC 技能習得のための機会の確保。 ・ 会議等資料の事前配布視覚障害者の対応枠の確保。 ・ 会議に使うPC(モバイル用)の確保貸与。 ・ 適正な人事評価と人事配置。 ○聴覚障害 <男 20代 聴覚 補聴器使用 手話通訳・要約筆記必要>  職場で勤務中、上司や同僚のみんなが、それぞれの仕事で通常の持ち場を離れ、ただ1人職場に残ることになった時の電話応対や接客が発生した場合に困ることが多い。電話をとったところで聞こえないし、また、お客が来た時、要件によっては対応できずに気まずいことになることがある。  人員削減の影響もあり、人手が足りなくなる時がある。ここが不便だと思ったのと、また不安。 <女 30代 聴覚 手話通訳・要約筆記必要>  予算はいつも前もって作成されているので(6カ月前とか)その時その時、臨機応変に使うことができない。固定してしまっている。このために何か県の研修や説明会に行きたいと思って通訳派遣の打診をしても、理解はできるが予算がないからとくる。こじつけ、言い逃れのような気がする。このための支出をあらかじめ枠を予備として予算の中につくれないのかな? <女 30代 聴覚 補聴器使用 手話通訳・要約筆記必要>  係・課の会議の補助の確保が未整備である。例えば国主催の研修を受ける際の予算が設定されておらず、所属内の余ったお金を流用している。しかも、その流用の決裁が(財政課まで)おりるまでに時間がかかる。大量の添付書類の作成を求められる。これは一種の差別では? <男 40代 聴覚 補聴器使用 手話通訳・要約筆記必要>  補聴器を使用し、1体1なら会話ができることから聞こえにくいという部分での理解が、なかなか得られにくい。  特に自分自身が「聞こえてなかった」とか「聞きもらしていた」ということに気づかず、会話を続けて、後で話しがかみ合わなかったということが度々あった。  周りの理解があるので、フォローなどしてもらえているが、人が変わってフォロー体制をとってもらえなくなると、どうなるか不安が大きい。 <40代 聴覚 補聴器使用 手話通訳・要約筆記必要>  会議に手話通訳等をつけたときにいつも感じることだが、討論のテンポが早いと(聞こえる人たちにとっては、それが普通だろうけれど)自分の意見を出すことができない。なぜなら通訳を見終わってから「さて、今の意見は」と自分の頭の中で質問や意見を整理したときには、すでに他の人が発言したり、議事が進んでしまって発言するタイミングをつかめなくなるから。  手話通訳等をつければ聞こえない人の情報保障は、OK という単純な話しではない。以上のことも理解してもらう必要を強く感じる。 <女 40 代 聴覚 手話通訳必要> ・採用試験には、多少の配慮はあるが、採用後の職場では、ほとんど期待できないのが聴覚障害者。困った時に相談するにしても直属の上司は、障害を持つ職員に必要な配慮や具体的な対応の知識がない。だから辞めてしまう障害者が出てくる。雇用率だけではなく人事研修に係長、課長の必須研修として障害を持つ職員の職場環境整備と障害の基礎知識等の研修を設けるべき。 ・「安全衛生委員会」なるもので会議や研修に活用するFMマイクと補聴器の申請に関する面談聴取があり、本人、係長、健康管理係長、保健師?(産業医?)で話し合ったが本人以外誰も聴覚障害に関する知識がない。保健師にいたっては高圧的で、とてもカウンセリングの専門家とは思えないほど信頼できない人だった。このような人がメンタルな職員や障害をもつ職員の対応をしていることに危機感を覚えた。直接の健康管理係長に代わって問題を持って苦しんでいる職員が退職するように仕向けているようにも思えた。私は、直属の係長の理解があって守ってもらえたが、直属の上司にさえ理解がなければ、とてもやっていけない。人事評価の厳しい状況の中で、上司むけ乃パンフを是非とも作成してほしい。 ・火災報知器の視覚化が役所で進んでいない!どのようになっているのか知りたい。消防法の規制対象外なのか?この問題が原因で聴覚障害者の残業には、必ず同僚や上肢も一緒に残業せねばならず、仕事があるのに残業させてもらえない実状もある。 <男 40代 聴覚>  庁内放送の半分くらいしか教えてくれない。100%教えてくれるよう要望したら必要ではない情報以外は必ず教えますと返事がきた。必要でない情報も教えてもらった方がいいか否か迷っている。 <男 50代 聴覚 人工内耳 要約筆記必要>  今の職場は、会議の際など情報保障をきちんとしてくれるが、昨年度までは、そのような配慮はなかった。  現在のところに関しては、聴覚障害者の情報提供施設なので特に物理的にサポートしてほしい分野はないが、障害をもっている方にとって職場で最も配慮してほしいことはハード面より心の部分のサポートだと思っている。 ○肢体障害 <女 20代 肢体(上下肢) サポーター使用>  過去の職場で、お茶出しの際は、見苦しいのでサポーターをはずすよう言われた。  重たい物を持つのが辛くて付けているのにと思った。 <女 20代 肢体(上肢)>  特に不便なことはないが見た目で判断され「できない」と思われることがあり、移動のたびにきちんと自分で「できること」と「できないこと」または手伝ってほしいことを伝えています。  今までは、職場の人に恵まれ困ったことは特にありませんでした。  しかし、自分で伝えることができなかったり職場の協力が得られないときや人は、大変だろうと思いました。 <男 20代 肢体(下肢) 杖・下肢装具使用> ・ 障害者用トイレが1つしかない。 ・ 窓口のテーブルが高くて車いすの方が手続きするのが大変。 ・ 仕事場が狭く、よく杖で歩くときに転びそうになる。 <男 30代 肢体(上下肢)>  下肢障害でその部分は周りは、大変よく理解されていて移動時等も配慮されている。  ただ、上肢の障害については、あまり目立たないせいか、あまり理解されていないよう だが、事務処理(記述やパソコン入力)に時間がかかり、「なんでそんなに時間がかかるの?」という目で見られる。やはり見た目でわからない部分が問題だと思います。 <男 30代 肢体(下肢) 杖使用>  身障者トイレに鍵がかかっていて使えないことが多い。  エレベーター表示をわかりやすくしてほしい。 <男 30代 肢体(下肢)>  職場ではないが、電車通勤をしています。  気がついたことは電車内に手すりが少ないことです。私は下肢が不自由なため少しのゆれでも転倒してしまう可能性があります。交通機関には是非、手すりを多く設置していただきたいです。 <男 30代 肢体(上下肢) 手動車いす使用>  私の現在の職場は、福祉課です。車いすは私だけですが、なかなか通路のスペースがありません。すぐ隣に簿冊のロッカーがあるのですが、そこすら取りに行けません。そこで大事になってくるのは職場のチームワーク、コミュニケーションが重要になってくると思います。私は、コミュニケーションを大事にしていますので仕事は円滑にまわっていますが他のみなさんは、その辺どうしているのでしょうか? <男 30代 肢体(下肢) 手動車いす使用> ・県の建物などでバリアフリーになっていないところもあり、車イスでは行けない。生協なども、そこの建物にあり買い物などに不便を感じる。 ・まだまだ職場の中で障害者に対する理解がないところもあり、それを自由に気軽に話せない雰囲気がある。 ・障害を持っている職員同士の悩みの共有ができていない。出先機関と本庁との距離感も影響していると思う。 ・個々の職員が、それぞれの職場で孤立していると思う。 <男 30 代> 車イス利用者にとって、コピー、FAX のタッチパネルの位置が高すぎる。 <女 40代 肢体(上下肢・体幹) 手動車いす使用>  最近は、コピー機の性能が向上してくるにつれて、コピー機が大きくなり、1 人で使いづらくなってきた。  大抵のことは、同僚の理解(配慮)などでクリアされているが、これから先も同様に良い関係を維持できるのかが一番の問題。 <男 40代 肢体(下肢・体幹) 手動車いす使用> OA機器(コピー、プリンター等)が高い。机の周りが狭い。お茶を入れに行くのに床のOA 配線のモールでガタガタして危ない。 <男 40代 肢体(上肢) 内部(腎臓) 杖使用 人工透析必要>  異動先で来客用トイレは様式だったが、職員用トイレは和式だった。これは庁舎改修工事に併せて様式に回収した。  人工透析は、治療ではなく延命措置としての見地から判断してほしい。病院=治療という考え方をあらためてもらい特別休暇(有給)での対応をお願いしたい。 <男 40代 肢体(下肢) 装具使用>  職場の各フロアにセキリティ設備があり非接触型のICカードがないと入室できません。  このICカードの読み取り装置が高い場所にしかなく車いすの方が入室する場合は、手が届かないのではないかと懸念されます。  フロア内は、私が下肢障害があるということで段差は、ほとんど無くスロープも色違いのカーペットを使用していただき、配慮してもらっています。またトイレも洋式です。  異動後に同様な配慮がされるか不安です。 <男 40代 肢体(下肢) 杖使用>  荷物を運ぶことが大変である。 <男 40代 言語・肢体(上下肢)>  いろいろな障害について理解されていない公務員の方もいるので、各障害の状況、対応について国に対して各職場にそういう研修会を実施するよう通達を出すはたらきかけを自治労本部としてしたらどうか。そうすれば研修実施により行政サービスの向上、障害者の雇用率等の向上にもなるような感じがする。 <男 40代 肢体(体幹)>  15年以上前の話しですが、学校用務員として採用されて通勤が遠いので異動希望を出して異動したところ通勤は、確かに近くなりましたが、学校の規模は12学級から26学級となり、人事担当に抗議したところ「近くなったんだからいいでしょう」、「嫌なら辞めてくれ」みたいなことを言われたことがあります。やはり人事異動は、総合的に考えてほしい。 <女 40代 肢体(上下肢)>  職場で先日、自分の席に戻ろうとした寸前にパソコンの配線に右半身麻痺の私は右足を引っかけ、予期せぬ事に難の防衛もできずに、転倒し、両手に持っていた重たい荷物も全部放り投げたような状態で狭い場所でスネや頭を打撲しました。職場環境は、あらゆる所にゴミ箱があり、椅子の後ろは横歩きでしか通れない。パソコン等の電気配線は完璧ではない等々の状況です。コンピューター化されているのに整理整頓がされておらず物が有り過ぎ!!です。ちなみに後日(1 日空けて)頭を打ったこともあり脳神経外科で診てもらい写真も撮り、その結果、異常なしと診断されたのですが、「異常なし」であったために「労災」扱いではなく一般の保険扱いで大きな出費になりました。パソコンの線にひっかかってひっくりかえった者が悪いのか、これってちょっとおかしくないですか? <男 40代 肢体(体幹)> ・ 動作が遅いので気を遣ってほしい。 ・ 将来に希望が持てない。 ・ 差別の壁はこえられないと思う。でも、前に進まなければ何も変わりません。 <男 40代 肢体(体幹)>  自筆で試験を受けると書くことが遅く不利になった。(特に選択肢の一般教養は、記号で選べば良いが論文試験になると規定字数に達するのにも大変だった。) <男 40代 肢体(体幹)>  階段が両方に手すりがないため上がりにくい。組合の交渉時に提案していきたい。 <男 50代 肢体(体幹)>  職場ではないが県の出先や市の組合にスロープや階段に手すりが無いところがある。 <男 50代 肢体(上下肢・体幹)>  採用時にできたことがだんだんと年齢をとっていくと自分自身はできると思っていても体がついていけない。 <男 50代 肢体(上下肢) 手動車いす・杖使用>  ふかふかしていると車いすが動かないので部屋や通路の一定幅は固い質をキープしてほしい。段差を一掃。配転先がまれに2Fだったことがある。 ○内部障害 <男 20代 内部(腎臓)>  不便だと感じたことはないが、「障害者であるから」という理由で、余計な気遣いや配慮は、やる気を出している本人にとって不満であった。  自分が体調等を考えて大丈夫と判断して仕事に取り組もうとしても外されることがある。  また、採用時に同じ職場に前年に別の障害者が採用となり、自分は希望していた部署に配置されなかった。説明としては「貴方の希望の課には、昨年、障害者が入ったから」と言われただけだった。  障害者としての経験・強みを活かして仕事をしたかったが、別の部署への配属となり、非常に残念であった。 <男 30代 内部(排尿)> 身障者用トイレの数が少ない。 別紙2 障害者が働く中で不便に感じたり、提供して欲しかった配慮に関するアンケート調査について <趣旨>  ヘレン・ケラーは、「障害は不幸なことではなく不便なことである。」と言いましたが、昨年12月に国連で成立し、今年の9月に日本政府が署名した「障害者の権利条約」には、障害者が抱える不便さや不自由さを改善するために必要な配慮を合理的配慮と位置づけ、合理的配慮を提供しないことを原則として差別と定義しました。  日本政府は、これからこの条約の批准に向けた検討を行いますが、条約の理念が日本の障害者の生活に反映されるためには、我が国の法制度と障害者の生活実態を確認したり検証したりすることが大切です。  今回のアンケート調査は、私たち自治労に結集している障害労働者が採用時や働いている中で体験してきたことを検証し、条約の批准に向けた課題を明確にするために実施しますので、皆さまのご協力をお願いします。  記載したアンケートは、受付に提出してください。また、調査票は、2枚用意していますので、総会後は、道本部へFAX(011−700−2053)してください。 <参考資料> <事例1 内部障害 1級>  園芸関係の仕事で、これまでどんな仕事についてきたか告げ、履歴書を出し、明日から 仕事に従事してくれるようにと経営者から言われた。自分が人工透析をしていることを言 わねばならないと思い、その事を打ち明けた。すると履歴書を返却され、「採用はしない」と告げられ、帰るように言われた。 <事例2 知的 療育A>  21歳の時、石けん工場にいきました。石けん工場の2階で住みました。社長の親戚の職人が暴力をふるったりしました。ドラム缶を放ったり、ほうきを放ったりしてケガをしました。こわかったです。預けていたお金をとられたこともあります。親方のおばちゃんにお金を3万円預けたのに取られてしまいました。偉そうに言われて20年間働きました。みんなより給料が安かったので、ぼくは値打ちがないと思いました。こき使われたと思っています。 <事例3聴覚 身障2級 >  採用されたある大手銀行で、私の世話役になった女の先輩に、「私は聞こえにくいので、指示する時は書いてください」とお願いしているにもかかわらず、いつも口頭で指示や指導がなされ、2度3度と聞き直すと「もう!」と嫌な顔をしてやっとメモ書きをしてくれる。そんな状態が続いたので、再度「書いて欲しい」とお願いしたら、「つんぼの人はかなわない」と言われた。言い返すことが出来ずに、くやしかった。結局この職場は長く勤めるつもりだったが、耐えきれずにやめてしまった。 *これらの事例は、1998年発行「障害者の人権白書」より引用。 障害者が働く中で不便に感じたり、提供して欲しかった配慮に関するアンケート調査票 1.居住都道府県 2.性別 男 ・ 女 3.年代 10代 20代 30代 40代 50代 60代 4.障害種別 視覚 聴覚 言語 肢体(上肢・下肢・体幹) 内部( ) 5.使用補装具 白杖 補聴器 車いす(手動・電動) その他( ) 6.必要な配慮 点字 拡大文字 手話通訳 要約筆記 身障用トイレ その他( ) 7.採用時や職場で感じた不便なことや配慮して欲しいこと(自由記載) ありがとうございました。 資料1 自治労全道庁労連障害労働者連絡会独自アンケート集計結果 ― 2008 年度全道庁障労連総会公表(07.11.3) ― 1.調査期間 2007 年8 月23 日(水)〜9 月5 日(木) 2.実施団体 自治労全道庁労連障害労働者連絡会 3.調査対象 自治労全道庁労連障害労働者連絡会会員 100 名 4.回収状況 65名回答(回答率65%) 5.障害種別 省略 6.回答内容 一部省略 A 庁舎や設備等について、不備や疑問等があれば書いてください。 〈トイレ関係〉 ・ 保健所内にあるトイレには洋式がないので、使用しづらい。 ・ 車いす用トイレが1 階に1 つしかなく、男女共用である。 ・ 庁舎が狭く、車いすの移動は困難。車いすではトイレも使用できない。 ・ 障害者用トイレを全フロアに付けてほしい。トイレを我慢できない体なのにトイレまで時間がかかるので途中でもらすときがある。大も小も。 〈庁舎関係〉 ・ 本庁舎西口玄関の照明が、数年前より暗くなった。また、西口のスロープ(駐車場の近く)の白線も消えていて、夜間通行するときは非常に見づらい。 ・ 階段の一部に手すりがない。 ・ 2〜4階建てなのに階段しかない(車いすで上がれない。玄関には傾斜面はある)。 ・ 外階段が滑りやすい。 ・ ボイラーが壊れていて、冬は非常に寒く、体調を崩しやすい。 ・ 道庁別館には、夏場、とても暑くなる執務室が多い。 ・ 床材が、冬季や雨季、滑りやすい材質で、転倒の危険性が高い。 ・ 冷房がほしい(庁舎内が暑すぎる)。 ・ 空知合同庁舎内は、1〜5 階まで車いすで移動可能だが、障害者トイレは1 階に1つあるのみ。正面玄関にスロープ有るが、そこそこ急。午後6 時すぎると正面玄関は施錠され、裏玄関はスロープなし。残業には不便。障害者の通勤用駐車場は来客用を1つつぶして設置しているため苦情が時々くる。執務室はクーラーがなく、今年は1 階で30〜33℃になった。2 階以上はさらに1〜2℃高いと思う。自分はアイスノンと扇風機と冷ピタシートと冷凍おしぼりと水スプレーでしのいでいるが、体温は38〜39 度まで出ていると思う。 ・ 私の職場は、玄関入り口まではスロープがあるが、踊り場とフロアに段差があり、車いすではちょっと無理。 ・ 省エネ対策の中で節電の度が過ぎると、よく見えない私にとって困ることがある。 ・ 体のバランスがとりにくいので、床の配線や障害物に引っかかって転倒しそうになることがたびたびある。かなり気をつけてはいるつもりだが。 ・ 庁舎のスロープの傾斜がきついので、もう少しゆるやかにしてほしい。広いオフィスを作る。現状で事務室の全てに移動できるスペースがほしい。少なくとも一般事務室は移動できるように。 ・ 災害時に安全に逃げる設備を設置してほしい。 〈駐車場関係〉 ・ 現在、警備員が車を移動する機会が多々あり、その際の車の破壊など何らかの事故の補償などについてしっかりした契約を考えた方がよいと思う。 ・ 庁舎前の駐車場を使わせてくれない。 ・ 来庁者用の駐車場(障害者専用)はあるが、職員用も確保の必要はあるのでは。 ・ 駐車場と庁舎との距離はちょっと長く、冬、凍結するときつい。胆振支庁は、基本的に車いすで働くのは無理と思う。 ・ 冬期間の庁舎から身障者用の駐車場までロードヒーティングを稼働させてほしい。 ・ 東側の屋根付き身障者用の駐車場から、ロードヒーティングが引いてある所まで屋根を延ばしてほしい。 ・ 職員用駐車場は砂利であり、支庁まで徒歩5 分かかる。 〈公宅関係〉 ・ 異動で公宅に入居する場合、1 階住居でも階段があったりするので注意。 ・ そもそも入れる公宅がない。 B 職場環境について,不満や不安等があれば書いてください。 ・ 腸の調子が悪く有給をとると、「またか」「身体弱いからな」と上司から言われる。 ・ 文書管理システムやグループマックス、ホームページの閲覧といったIT 分野が、 視覚障害のため職場で使えないこと。 ・ 自家用車の公用使用を認めてほしい。 ・ この先どうなるのか不安。 ・ ストレスでうつ病にならないか不安。 ・ 慣れたのであまり不便を不満と感じなくなった。 ・ 古い書類を綴り込む“分冊”という作業があるのだけど、ヒモでしばるのがゆるく なってしまい、どうしても他人に頼まなければならないが、皆、忙しく頼みづらい。 ・ 上肢障害の人が周りにいないので、不満や不安な点を話し合えない。 ・ 体幹機能障害があるので、今年のように猛暑になると、体温調整がうまくいかず、体温が上昇してしまう。クーラーをつけてほしい! ・ 仕事が変わって、いろいろ覚えることが多くてストレスを感じている。 ・ そういうことを主張することが、自分にとって働きにくい環境になると感じる。 ・ 事務機器等、目線を車いすの高さに合わせてほしい。 C これまでの人事異動で経験したなかであった不都合や注意すべきこと、また、不安に思っていることなどありましたら、書いてください。 ・ 聴覚障害の場合、コミュニケーション・情報保障について理解が得られにくい。 ・ 自分は身障者枠で職員になった訳ではないので体に障害があろうが一般職員と同 じく働いて欲しい。それができないのであれば辞めて欲しい。と言われた。 ・ 異動後に問題となるのは、障害をもつ職員の障害の状況について、細かな点で配慮 が必要と上司がわかるまでには、ある程度時間がかかるようだ。その期間で、障害 が原因で業務に支障がある場合に、「それは本人の能力がない」とか「やる気がな い」と誤解され、人間関係が悪くなるのかもしれない。 ・ 一般職員は、だいたい3 年くらいで異動になるが、ずっと同じ職場で働くことが多く、障害のある職員も異動を多めにした方がよいと思う。 ・ 障害者同士を交換する異動ばかり繰り返されているように感じる。 ・ 障害者お断りという職場(課)が実際ある。 ・ 人工透析をしており、週3回(1回4時間)の通院を要する。現在は、業務終了後通院しているため、業務に支障はないが、これは、勤務地の近くに夜6時から透析が可能な病院があるからである。 ・ 人事異動の際には、業務終了後通院可能な札幌駅周辺の職場を希望するが、今後機構改革等の場合に、業務に支障なく勤務出来る勤務地となるかどうか不安である。 ・ 病院へ通院する回数が多いため、休みをとることに理解をしてもらいにくい上司になったら困るという不安はある。 ・ 障害者だからというわけでもないが、意向打診の時期がもっと早くならないものか。健常者よりも手間・時間等はどうしてもかかってしまうので特にそう思う。また、管理職との面談の際などに「異動があるかもしれないよ」とか事前に言ってもらえないのだろうか。管理職にもよるかもしれないが、私は言ってもらえなかった(同一所属に5 年以上いたが、所内異動して1 年目だったので課長も油断してたのか?)。 ・ 内部障害なので、健常者に見られる。 ・ 事前に庁舎を自分で点検するしかない。 ・ 職場(施設含む)だけでなく、公宅についてもデータベースがあれば良いのでは(町 内の状況も)。 ・ 良くしてもらっている。休暇もとれている。 ・ 異動先の受入態勢や異動先の職場の環境について、上司に相談して確認してもらう等、配慮してもらうことが重要。 ・ 上司の理解は得られていると思っている。 ・ これからは身体障害ばかりではなく、障労連の役割とは言えないが精神疾患に対する問題へも取り組んでいく必要の是非(本来は総務の範疇と考えるが)。 ・ 異動先での住居条件を事前に上司に伝える。実際に異動となったら、大変でも一度 住居を見に行くことが大事。 ・ 今はそうでないが、前の異動では、障害者が後回しとなって、全く人事異動の配慮がなかった。 ・ どこまで言うべきかわからないので、結局言わないことが多い。自分でも当然に主張できるものなのか、それはちょっとずうずうしい主張なのかわかりにくいし、結局言わないというのがベスト。 ・ 道内の身障用公宅の場所を知りたい。 ・ IP メッセンジャーは、聴覚障害職員にとって非常に便利なコミュニケーション方法と思うが、まだ認識されにくいようである。ヒソヒソ話のイメージがあるので使ってもらえない。 D その他、運動の進め方など、障労連へ意見・要望等ありましたら、自由に書いてく ださい。 ・ 給与の削減以来、毎月赤字で貯蓄を崩している。 ・ 2年間以上の給与の削減は止めて欲しい。 ・ 会員の組織率(関係会合への出席率を含む)を少しでも上げることと同時に、会員個々人にどのように問題意識を持ってもらえるか、再検討が必要だ。 ・ 医大にいるので情報が少ないです。 ・ 今後ともよろしくお願いします。 ・ アンケートの締切日にアンケート用紙を受け取った。総支部では早い段階で支部宛に送付したとのことだったが、本人に回答する時間的余裕をもって渡してくれるよう調整願いたい。 ・ まず障害者のみならず、「障労連」というものをみんなに知ってもらう運動をすべき。 ・ 職場で「障労連」と言っても、周りがみな「障労連ってなに?」と言われてしまう。障労連の集会でも、障害者だけにお知らせするのでなく、「障労連ってこんな活動しているんだよ」という広報も必要では。 ・ 胆振総支部は、基本組織がいろいろ動き、アンケート等を取りまとめてくれるが、他総支部についても基本組織に働きかけ、より多くの意見が集約されるよう望む。 ・ 心臓が悪く、自家用車通勤を許可してもらっているが、(駐車箇所が)職員駐車場で、ほんの少しだが心臓病の身には暑さと寒さは本当につらく、庁舎前の駐車場を使わせてもらえればと思う毎日である。 ・ 障労連(本部)の運動状況が見えにくい。 ・ 集会等を開催し、学習会を行ってほしい。 ・ 交流する機会が少ないと思う。 ・ 本部の情報が入ってこないので、活動の内容が見えない。何か情報があれば参考にしたいので資料等を送ってほしい。 ・ 障害をもっていても甘えずに運動を進めていきましょう。 ・ どこの部署に障労連の仲間がいるのか全くわからないので、情報がほしい。 ・ 各庁舎や施設の状況がわからず、人事異動の希望も出しづらい。 ・ 今の時代、財政難や欠員等、厳しい時代だが、当局へは強く必要なことは要求していくべき。 ・ 組合員が障害者も理解してほしい。…障害者体験をしてみる(車いすに乗って1 日すごしてみる)。 ・ 従前のアンケートでは、交渉する内容が決まっているかのようなものだった(「体温」「駐車場」)ので、改善してほしいと思っていた。今回も聞いたフリだけなのかなとも思う。 ・ 連日の活動、ご苦労様です。 資料2 介護・福祉集会等の意見から ○九州地連介護・福祉集会「働く障害者の集い」(08.1.13 宮崎開催)から意見抜粋 ・ 職場の身障者用トイレを障害のない職員が頻繁に使用する。身障者用トイレは数が少なく車いす使用者は、そこしか使用できないので身障者用トイレを特に必要としない人は、 使用を避けて欲しい。 ・ 身障者用駐車場を必要とする障害者ではなく一般の人が使用している。ときに車いすマークを表示して駐車している確信犯としての障害のない人がいるので、この対策が必要。 ○第7 回道本部福祉集会「働く障害者の集い」(08.1.26 札幌開催)から意見抜粋 ・ 車いすを使用する職員が自家用車通勤をするために必要な駐車場を当該職員自身が民間の駐車場を借りて使用している。 障害者が働く中で不便に感じたり、提供して欲しかった配慮に関するアンケート調査集計表(表形式のため、このテキストデータでは省略した。)