差別禁止部会 第5回(H23.6.10) 参考資料1 障がい者制度改革推進会議における差別禁止に関わるこれまでの議論 ○ 第4回推進会議・資料2〜「差別禁止法について」 ○ 第4回推進会議〜差別禁止に関する議事要録抜粋 ○ 第22回推進会議・資料1、2 〜「障害者基本法の改正に関する条文イメージ素案(総則関係部分)」に関する意見  2.定義、4.差別の禁止 ○ 第22回推進会議 〜「障害者基本法の改正に関する条文イメージ素案(総則関係部分)」に関する意見  2.定義、4.差別の禁止 上記についての議事要録抜粋  ○ 第25回推進会議・資料1 〜「障害」、「障害者」の定義を議論するにあたってのポイント(障がい者制度改革推進会議担当室メモ) ○ 第25回推進会議・佐藤委員提出資料 〜障害者基本法改正における障害・障害者の定義について ○ 第25回推進会議 障害、障害者の定義に関する議事要録案 抜粋 第4回推進会議・資料2 「差別禁止法について」 ○ 法制度創設の必要性 1.あらゆる分野を包括する差別禁止法の必要性についてどう考えるか 【大久保委員】 障害者施策に関わる様々な分野の法制に対して、差別に係る基準を示すとともに整合性を確保する意味で、差別禁止法の制定は必要と考える。 【大谷委員】 「あらゆる分野を包括する差別禁止法」の必要性は極めて高く、当会議においても、その創設を最重要課題に位置づけるべきである。 (1)わが国に暮らす障がいのある人は、現在、様々な生活の場面において深刻な差別などの人権侵害を受けており、社会の一員として等しく扱われ、自立した個人として充実した生活を営むことが困難な状況に置かれている。 これまで、この状況を改善するため、様々な運動が行われ、多くの福祉施策が講じられてきたところではあるが、残念ながら、今もってその目標の達成には至っていないといわざるを得ない。 かかる状況を抜本的に打開するためには、わが国においても、以下の①ないし③の条件を全て満たす差別禁止法制の整備が不可避であると考える。 ① あらゆる生活分野を適用対象とする規範であること ←差別は社会生活の全般に関係する問題であるため。 ② 行政と私人の関係のみならず、私人間の関係をも規律する規範であること ←現実の差別は、国や地方自治体によるもののみならず、事業者なども含む私人によって行われることが多いため ③ 障がいのある人の具体的権利が明定され、裁判規範性を有する規範であること ←理念として差別禁止をうたうのみで差別が行われた場合の救済手段が担保されていなければ、現実的に差別を是正することはできないため。 (2)以上の条件を全て満たすような差別禁止法制を現存する個々の法律の改正を通じて実現することは立法技術的に極めて困難であるといわざるを得ない。またそもそも、差別禁止法における基本的に理念や概念を一貫させ、権利法としての性質を維持するためには、個別法でなく包括的な差別禁止法制定が不可欠である。そのため、新たに、「あらゆる分野を包括する差別禁止法」を創設することが必要なのである。 (3)さらに、いわば障がいを持つ人の差別禁止法が制定されることは、これまで障がいのある人を差別し続けてきた社会全体の意識を変革させる強力なインパクトとなるとともに、日本国内に暮らす全ての障がいを持つ人に社会参加への希望と勇気を与えることにも繋がる。 (4)障害者基本法3条3項の差別の禁止では不十分である= 裁判規範性の重要性について 従来、障がいのある人が差別を受けたことを理由に裁判を起こしたとしても、差別禁止を定める裁判規範性のある法規が存在しないため、司法的な救済が行われることはほとんどなかった(後掲の二つの事例資料参照)。 「あらゆる分野を包括する差別禁止法」は、いわゆるプログラム規定や同義的努力義務ではなく、裁判規範として機能する法規としての内容と体裁を持って制定されなければならない。障がいのある人の現状を抜本的に打開するためには、お題目としての差別禁止ではなく、差別の法的救済を可能にする実効性のあるルールこそが求められるのである。 〔事例資料1〕 電動車いす利用者が高架駅にエレベーター設置を求めた事例 平成11年3月11日大阪地方裁判所判決(判例タイムス1055) 「・・原告指摘の法令の諸規定(鉄道事業法、障害者基本法、大阪府福祉のまちづくり条例など)は、いずれも国ないし地方公共団体と被告(鉄道事業者)との間の権利義務関係を規律するものであって、原告の被告に対する具体的な権利関係に関する規定と解することはできないばかりか、右諸規定においては、国ないし地方公共団体との関係においても、鉄道駅へのエレベーターの設置が費用負担などの経済的制約を不可避的に伴うことに鑑み、被告に対して道義上の努力義務を示しているにすぎないのであるから、かかる法令の諸規定を前提としても、本両駅にエレベーターが設置されていないことをもって違法であると評価することはできない。」 〔事例資料2〕 鉄道車両に車いす対応トイレが設置されていないことの違憲訴訟事例 平成13年7月23日東京地方裁判所判決、同14年3月28日東京高等裁判所判決、(判例タイムス1131) (なお、この列車には普通の乗客用のトイレ設備は設置されている) 「被告(鉄道事業者)は公益的事業を営むとはいえ、どの線区に車いす対応トイレ設置車両を投入するかについて・・判断する自由を有している」 「障害者基本法の諸規定は、国に対して施策の基本方針を示し、または抽象的な責務を規定するにとどまり、これらの諸規定が、障害者対策として特定の施策を実施すべき被告国の義務を規定したものとはいえない」 【大濱委員】 権利条約の各条項で求められている措置の履行のためには、裁判規範性を持った包括的な差別禁止法の制定が必要であると考える。また、「基本法」という性格から、障害者基本法の改正では対応できないと考える。 【小川委員】 障害に基づく差別は、労働、教育などあらゆる分野にわたって、日常的に存在し、裁判規範性のある障害者差別禁止法(仮称)の制定は急がれている。 【尾上委員】 必要である。 実質的な差別禁止(機会均等)は、すべての障害者が障害のない人と平等にすべての日常生活や社会参加を行うための基礎となると考える。 障害者の生活という点からみた時には、様々な分野での差別は密接不可分につながっている。例えば、雇用の推進という一つの分野から見ても、交通や住居のアクセス、教育期からインクルージョンの実現は不可欠である。 ちなみに、障害者権利条約においては第2条、第4条、第5条等の総則規定において差別禁止規定がなされており、これらの規定は、第10条以下の全ての個別条項に係るものである。 【勝又委員】 この種の法は「あらゆる分野」を包括することができるのか。可能性を知りたい。 【門川委員】 障害者に限らず、あらゆる分野におけるあらゆる差別は禁止されるべきである。 したがって、差別禁止法を制定するのであれば、本来は「障害者差別禁止法」ではなく、「差別禁止基本法」のような上位法を制定し、その上で障害者関連の差別を禁止する法律を制定することが望ましいと考える。 しかし、現実に、障害者に対する重大な差別が存在し、それを緊急に禁止する必要がある以上、次善の策として、障害者差別の禁止を明示する法令を制定することが必要である。 ただし、憲法に次ぐ法である現行の「障害者基本法」の一部として位置付けることが適切か、それとも「障害者差別禁止法」として別の法令を独立して制定することが適切かについては、立法作業上の問題点も含め、慎重に議論すべきである。 【川ア委員】 必要です。障がい者の権利擁護のために、障がい者が普通に生活するために、差別禁止法は必要な法律と考えます。 【佐藤委員】 必要だと思う。障害に基づく差別は日常的でかつ広範囲にわたる。さらに相互に関連して障害者の社会参加を妨げている。個別の分野ごとの法律で差別禁止を図るとともに、総合的なものも必要である。 以下はこのことを示す一例。(障害者欠格条項をなくす会の臼井氏より) 2008年6月から、自動車の運転免許の交付対象が、聴力基準未満の人に拡大した。しかしこの制度開始後1年に新たに免許を交付された人は、全国で約50人にすぎない。 50人と少ない背景には、 ・ 大きな制約と条件つきで、取得するだけの魅力がない免許 (運転できるのは普通四輪だけ。原付、二輪、荷物積載できる4ナンバー車不可、聴覚障害者マーク、ワイドミラー装着が罰金付条件) ・ 受講に必要なサポートが乏しい (手話通訳や文字通訳つきで受講できる教習所が少なく、通えるエリアにそうした教習所がない人は、知識や技術の習得も困難) ・ 免許行政窓口の問題 (筆談も拒否されたりコミュニケーションをはかる姿勢が不十分) などが挙げられる。 このように、大きな制限をそのままにして、かつ、単に免許交付対象を拡大するだけでは、実際の取得・交付は進まない。 なお、日本の免許行政は「聞こえない人が運転するのは危険のおそれがある」とみなしているが、諸外国は、以前から、普通自動車や二輪は、聴力不問のところが多く、聞こえない人も、日本の標準的な装備の自動車や二輪で、あたりまえに運転している。2005年度に1475人の聴覚障害当事者が回答したアンケート結果によると、75%が聴力を理由とする制約・制限を「撤廃すべき」と回答している。回答者のほとんどは「補聴器をつける」などの条件下で運転してきたベテランドライバー。また、視覚についても、視力検査数値だけで判定せずに個別アセスメントを重視する国々があり、日本では免許交付されない人もそれらの国では問題なく運転できている。 【新谷委員】 包括的な差別禁止法が有効と考えます。幅広い分野に適用できる総則規定を作り、個別分野として、労働・雇用、教育、性、医療、政治参加、司法、行政サービス、情報・通信、交通、経済・文化サービス、不動産取引などを網羅すべきと考えます。 【関口委員】 必要。 ただし強制入院法規(医療観察法、精神保健福祉法、医療法施行令)や適用除外規定(制限行為能力、訴訟無能力、欠格条項、民法770条第1項第4号)の改廃なくして、成立させてはならない。移行措置の担保なく成立させると、適用除外のある差別禁止法となる。適用除外のある差別禁止法では、立法趣旨である目的に反した法体系となる。 補足意見:大阪精神障害者連絡会 塚本正治 精神障害者は隔離・収容施策の下、精神病院や地域において数々の差別・人権侵害を受けてきた。病院においては、職員による暴行(死亡のケースもある)・不当な隔離室への拘禁・違法な身体拘束・違法な面会妨害・無視・放置・プライバシーの無さなど病を癒すどころか人生を深く傷つけられてきた。その結果として人生や地域生活への自信を喪失し、約15万人の社会的入院者を生み出してきた。病院の敷地内で命途絶えた精神障害者もまたその被害者である。 一方、退院にたどり着いたとしても、保証人もいないし、地域での入居差別があり、暮らすところが見つからない。暮らすところを見つけたとしても、「精神障害者はなにをするかわからない」という社会的偏見の中、地域で孤立した生活を強いられ、就労するにも就労先が見つからないという差別を受けてきた。 精神障害者への社会的偏見にもとづく差別に対して、病院や地域において精神障害者への差別を禁止することによって、精神障害者施策を治安対策から福祉施策へと転換することを強く願う。 【竹下委員】 差別禁止法(専門法としての独立した立法)が必要不可欠である。理由は以下のとおりである。 (1)国民に差別禁止の意義を周知徹底することが必要であり、これを立法によって広報し、国民のコンセンサスを作り出すことが必要である。 (2)障害のある人の意識を改善していくためにも、差別禁止法は必要である。 (3)障害、障害のある人及び障害を理由とする差別の定義、意義について明確な立法が必要である。 (4)裁判における規範性を明確にするためには、できるだけ分野ごとにかつ具体的に差別の基準を示すことが必要である。 【土本委員】 具体的に何が「差別」なのかをはっきりする必要がある。 【差別】 あるものと別のあるものとの間に認められる違い。また、それに従って区別すること。取り扱いに差をつけること。特に、他よりも不当に低く取り扱うこと。 主な差別 【偏見】 かたよった見方・考え方。ある集団や個人に対して、客観的な根拠なしにいだかれる非好意的な先入観や判断。 「へん」「おかしい」「何をするかわからない」「あぶない」 「何もわからない」「何もできない」「やくにたたない」 【社会的排除】 障がいを理由として個人または集団が社会から排除される事、またはその状態をいう。 「病院に入院しろ」「入所施設へ行け」 【抑圧】 抑制し圧迫すること。むりやりおさえつけること。 「虐待」「奴隷労働」「搾取」 【制約】 ある条件や枠をもうけて、自由な活動や物事の成立をおさえつけること。 「放置」「利用者負担」「サービスの利用資格制限や時間制限」 【支配】 ある地域や組織に勢力・権力を及ぼして、自分の意のままに動かせる状態に置くこと。 ある要因が人や物事に影響を及ぼして、その考えや行動を束縛すること。 「洗脳」「威圧」「暴言」「暴行」 【堂本委員】 障害のある人の権利を保障し、差別をなくすことを実効あるものとするため、 あらゆる分野を包括する差別禁止法の整備が必要である。 現行の障害者基本法では、障害のある人は社会活動に参加する機会が恩恵的に与えられる対象とみなされ、社会参加を権利として保障するものとなっていない。また、障害のある人に対する差別を禁止しているが、何が差別に当たるのか、さらに、差別や権利侵害が行われた場合にどのように迅速かつ効果的な救済を図っていくのかを規定していないため、差別禁止が実効あるものとなっていない。 私は、千葉県知事在任中、「どんなに福祉サービスが充実しても、地域社会に誤解や偏見、差別があっては、障害のある人が、ありのままにその人らしく地域で暮らすことはできない。」と考え、障害者差別をなくすための条例を制定することにした。最初に、差別に当たると思われる事例を県民から募集したが、教育、医療、サービス提供、労働、建物・交通アクセス、福祉など様々な分野から合計約800件寄せられた。千葉県の条例は、こうした実態を踏まえ、誰もが暮らしやすい社会をつくるために制定されたものである。 一方、内閣府が実施した「平成20年度障害者に対する差別事例等の調査研究」の結果を見ると、車椅子の利用等を理由とする採用(募集)の拒否・制限、賃金等の差別的取扱い、重度の障害等を理由とする福祉サービスの利用や治療・入院の拒否・制限などが、差別事例として当事者から指摘されている。 このように、障害のある人に対する差別の解消は全国的な問題となっている。北海道が平成21年3月に議員提案で条例を制定したほか、他の自治体でも条例制定の動きが活発化している。国として、障害者差別禁止法を整備する必要がある。 【中西委員】 障害者に対する差別はその生活のあらゆる分野に及ぶものであるので、分野ごとの縦割りではなく、全体を包括する差別禁止法は必要である。 心身障害者対策基本法が障害者基本法に改正されても、更生と保護に基づく旧来からの障害者施策の枠にとどまり、障害者への差別禁止規定は盛り込まれなかった。つまり、障害当事者は障害の軽減と克服のための努力をおしつけられ、重度の障害者に対しては隔離・収容型の施設入所が引き続き推進されていると考えざるを得ない。 【長瀬委員】 障害に基づく差別を禁止する新たな法律が必要である。 日本では、2004年の障害者基本法の改正によって、1967年に身体障害者福祉法による差別禁止規定が削除されてから37年ぶりに、法的な障害差別禁止規定が復活した。しかし、この障害者基本法第3条の「障害者に対して、障害を理由として、差別すること」を禁止する規定は不十分である。なぜなら、一つには、障害者の権利条約は、合理的配慮の欠如を差別と定義している(第2条)が、現在の障害者基本法は合理的配慮の欠如を差別と規定してないからである。また、障害者基本法は、差別があった際の救済規定も欠いているためである。 【久松委員】 障害者権利条約に基づく障害者の権利を具体的に担保できる裁判規範性をもった法律(障害者差別禁止法)の制定が必要である。 【松井委員】 障害者は、雇用・就労、教育、サービスや情報へのアクセス、公共交通機関、住まいなど生活の様々な領域で差別を被っている。個別法で差別禁止規定を設けることも必要であるが、苦情申立や共済措置などの窓口を共通化することで、さまざまな領域で被る差別に迅速に対応するためにも包括的な差別禁止法の制定が必要である。もっとも障害者だけでなく、女性やこども、外国人など社会的マイノリティグループも差別などの人権上の問題に直面していることから、これらすべての人びとの人権問題を取り扱う人権擁護法の制定もあわせてすすめるべきであろう。そして、人権擁護法に基づき、人権委員会が設置されれば、その一部門として障害者権利員会を設けるのが現実的と思われる。 【森委員】 現行の法体系で障害と認められていない、いわゆる制度の谷間の障害者も含め、その障害を理由に、社会的、文化的、政治的、経済的その他のあらゆる分野における権利を包括する法律が必要である。また、障害者権利条約を批准するためには、合理的配慮義務を課すことを含めた障害者差別禁止法の制定が必要であり、また、現行の個別の法改正だけでなく、包括的な差別禁止法の立法が必要である。 ○ 差別の定義 1. 総則的定義をどのようにするか 【大久保委員】 差別、間接差別、合理的配慮の定義は必要と考える。 特に、知的障害者の社会参加のためには、合理的配慮は欠かせない。また、知的障害の場合は、ハード面での配慮だけでなく、心配りなどのソフト面が欠かせない。合理的配慮には、建物設備や補助的器具などのハード面だけでなく、心配りなどソフト面を含むよう、特に強調する必要があると考える。 【大谷委員】 あらゆる場面、あらゆる権利の享有に適用されるべきこと、及び、直接差別のみならず間接差別や合理的配慮の欠如も禁止されるべきことを明示し、「政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のいかなる分野において」「あらゆる形態の」差別が禁止されるべきことを明確に打ち出すべきである。 条約2条は、障がいに基づく差別は「障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のいかなる分野においても、他の者との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを害し又は無効にする目的又は効果を有するもの」だけでなく、さらにそれに加えて「障害に基づく差別には、合理的配慮を行わないことを含むあらゆる形態の差別を含む」と規定している。 すなわち、意図的な差別だけでなく、意図的ではなくても差別の効果が生じる場合も差別であることを明確にし、さらに、これに加えて、「区別、排除又は制限」といった異なる取扱だけではなく、合理的配慮を行わないことが差別であることを明言した。 日本においても、条約2条に従った総則規定を置いた差別禁止法が制定されなければならない(条約4条)。 尚、間接差別は障がいに関わらない事由を要件とすることによって結果として差別となるものであり、障がいに関わらない事由を要件とすることに合理的な理由がないときに認められる。これについては従来要件があいまいである等を理由に認められていなかったが、2006年男女雇用機会均等法において性別以外の事由を要件とする措置についても差別と認め、間接差別の禁止を導入するに至った。その内容は省令で定めることとし、その範囲が狭いことは問題であるが、障がい者差別においてもこれを認め、詳細については以下に述べる合理的配慮の内容と合わせ障がい者権利委員会でガイドラインを提示するべきである。 【大濱委員】 「直接差別」「間接差別」「合理的配慮の欠如」の3つで定義するのが良いと考える。 【小川委員】 障害に基づくあらゆる差別を禁止するという視点で、障害者本人に対する差別のみならず、障害者の家族、障害者関係者に対する差別、あるいは、過去に障害をおっていたという履歴による差別、現在、または将来において障害があると看做される事による差別など、包括的に差別を禁止していく必要がある。障害をあからさまの理由とした直接差別のみならず、間接差別、そして「条約」に盛り込まれた合理的配慮の欠如についても、障害に基づく差別とみなしていく必要がある。また、障害の定義については社会モデルを採用する必要がある。 【尾上委員】 「直接差別」、「間接差別」、「合理的配慮を行わないこと」という差別の3類型を規定すべきである。 「直接差別」は、障害に基づいて制限・排除・分離・拒否等により不利益となる取り扱いを行うこと、「間接差別」は、形式的には障害に関係しない中立的な規定や基準の適用、あるいは取り扱いが障害をもつ人に不利な結果を招き、又は結果を招く恐れがある行為をおこなうこと、「合理的配慮を行わないこと」は、個別規定に定める合理的配慮を行わないこと、といった定義にするべきである。 【勝又委員】 人種・性別・年齢・宗教・障害の有無等の違いを理由に、法の権利によってさだめられた生活分野や場面(雇用・教育・住宅・移動交通・投票・公共サービス・市民施設の利用等)で、協定の行為基準に基づいて平等に扱うことをしないこと。 【門川委員】 差別の禁止は「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。」とする日本国憲法第11条の精神を具現化したものとして定義されるべきである。 すなわち、障害者の基本的人権の享有が妨げられることをもって、「差別」として定義すべきではないか。 なお、「障害を理由とした差別」を禁止するという規定の仕方が適切であるかどうかは、慎重に議論すべきである。 なぜなら、この規定では、差別行為に先んじて「障害」が実体として実存する、という理解を認容する趣旨を含んでおり、近年の障害学の知見および国際的な障害者運動、そして「障害者権利条約」の精神から言っても、抵抗がある(例えば、「障害者権利条約」前文(e)では障害概念に触れて、それが個人と社会との「相互作用」である点を明示している)。 したがって、基本的人権の享有を妨げる行為が行われる際の「付加的理由」として「障害」が持ち出されるという位置付けのほうが適切ではないか。すなわち、被差別対象として社会的に作られる存在としての「障害者」という側面に留意した上で、一人ひとりの障害者に対する具体的な、基本的人権の享有を妨げる「行為」を禁止する、という組立が望ましいのではないか。 参考:「障害者権利条約」前文(e) 公定訳(案) 障害が発展する概念であることを認め、また、障害が、機能障害を有する者とこれらの者に対する態度及び環境による障壁との間の相互作用であって、これらの者が他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げるものによって生ずることを認め、 川島・長瀬訳 障害〔ディスアビリティ〕が形成途上にある〔徐々に発展している〕概念であること、また、障害が機能障害〔インペアメント〕のある人と態度及び環境に関する障壁との相互作用であって、機能障害のある人が他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げるものから生ずることを認め、 【川ア委員】 障害者権利条約に基づいて、障害を理由にする不利益な取り扱い及び、間接差別、合理的配慮義務の違反を差別とする。 【佐藤委員】 「定義」とはいえないが、直接差別、間接差別、合理的配慮の欠如の3類型という定式化が適切かどうか疑問である。できるだけ単純でわかりやすいものにしたい。小学生も含めて、すべての国民が理解できるように。 とくに後二者の違いは?盲人がいるのに墨字の受験用紙しか用意しないのは間接差別だろうが、落ち着かないから個室で受験させてほしいと希望する人に個室を用意せず、皆同じ部屋で受験をと求めるのは間接差別か合理的配慮欠如か? オーストラリアの障害者差別禁止法の2009年改正では、直接差別と間接差別の定義の中に合理的配慮を含めた。 「障害を理由とする差別」には、 A もっぱら障害を理由とする差別 B 複数の理由による差別で障害が主要な理由 C 複数の理由による差別で障害はその中の一つまたは副次的 などがありえるが、これらすべてを含めることを明確にすべきと思う。 「障害を理由とする差別」には、補装具・日常生活用具・点字・手話・補助犬などの利用、医療・訓練などの受療・利用、障害者団体等への参加、など障害に関連することがらを理由にした差別も含むことを明確にすべきと思う。 障害の定義では、まだ症状や機能障害が現れていなくても将来現れる可能性がある、「病気や機能障害の遺伝的素因」も含めるべきである。 【新谷委員】 障害者基本法の規定との整合性が必要と考えます。障害者基本法に規定するか障害者差別禁止法に規定するかは別にして、直接差別、間接差別、合理的配慮の欠如の3類型の明記は必要と考えます。 【関口委員】 障害を理由としたあらゆる不利益取り扱いおよび人権侵害(他国との比較を含む)、直接差別、間接差別、合理的配慮の欠如 【竹下委員】 別紙日弁連試案を参考とすべきである。 【土本委員】 しょうがいしゃであるまえにひとりの人間として 【堂本委員】 障害を理由として障害のある人に対し障害のない人と比べ不利益な取扱いをする(作為・不作為を問わない)こと及び障害のある人が障害のない人と平等にすべての権利を行使することを確保するために必要な合理的な配慮が行われないことを差別と定義すべきである。 障害者権利条約では、合理的配慮の否定を差別の定義に含めている。また、不利益取扱いについては、直接差別だけでなく間接差別(中立・平等に見えるが、実質的に障害のある人に不利になる結果をもたらす、あるいはもたらす可能性のある差別)も含むものと解されている。 【中西委員】 障害者の定義に関しては、条約制定の際にも、社会モデルを基盤としながらも医療モデルの色彩を残しているICFの基準枠を超えた定義が用いられている。それを踏襲した定義とする。 差別を定義付けする以前に、障害者の尊厳を保障できるよう、「自己決定権」について明記することが必要である。差別の定義は、条約に基づいて「直接差別」、「間接差別」、「合理的配慮の否定」の3つとする。 「差別を受けない権利」、「制約を受ける場合の原則」も明確化され、総則的定義に含まれるものとする。特に後者は、予算の欠如をその合理的理由として差別が行われているので、必要と考える。 【長瀬委員】 定義においては、障害の履歴や「見なし」(障害者と見なされること)を含む広範な障害の定義が必要である。障害に基づく差別の定義としては、「あらゆる形態の差別」を含むとしている障害者の権利条約に基づいて、①直接差別、②間接差別、③合理的配慮の欠如、いずれもが含まれるべきである。 【久松委員】 「障害」及び「差別」の定義を下記の内容で設けること。 ①「障害」が社会における障壁の相互作用から生じるものと捉える、いわゆる「社会モデル」の考え方に準拠し、対象者を幅広くする必要がある。 ②「差別」の定義は、障害を理由として不利益な取り扱いをすること、及び社会生活を営むために必要な合理的配慮を行わないこととする。 「言語」及び「コミュニケーション」の定義及び権利規定を下記の内容で設けること。 ①手話が音声言語と同等の言語であることを定義すること。 ②手話を使用する権利を規定すること。 ③専門的な手話通訳者を利用する権利を規定すること。 ④障害者権利条約におけるコミュニケーションの定義と同等に、手話(手話通訳)、要約筆記、指文字、触手話、指点字、手書き文字その他の方法による通訳、拡大文字、写真、図画、ひらがな、平易な表現による表記等を入れてコミュニケーションを定義し、自ら適切な情報・意思伝達方法を選択することを保障すること。 ⑤社会のあらゆる分野において、聴覚以外の手話、文字、筆記通訳、光、振動等の方法により情報を利用する権利を規定すること。 【松井委員】 障害者権利条約第2条にある「障害に基づく差別」を参考に定義すること。この定義から明らかなように、障害に基づく差別には、直接差別、間接差別および「合理的配慮の否定」も含まれる。ヨーロッパ連合(EU)の雇用均等指令(2000年)で差別の一種とされるハラスメント(嫌がらせ)についてもその定義に含めてよいと思われる。 【森委員】 自己決定、自己選択をもとに自立生活を達成するために差別をなくすことの必要性を明記することが重要である。特に、障害とは、身体的、精神的、知的状態が疾病、傷害、その他の事情に伴い、その時々の社会的環境において、日常生活または社会生活において相当な制限を受ける状態であることを明記する必要がある。その上、直接差別、間接差別、合理的配慮の欠如を含め明確に整理しておくべきと考える。 2. 個別分野別定義をどのようにこするか 【大久保委員】 分野別定義は、現状においては難しいと考える。 教育分野での特別支援教育施策や労働分野の障害者雇用施策、福祉分野の就労支援施策などについて議論が尽くされていない状況もある。 【大谷委員】 個別分野毎に差別の定義(特に合理的配慮義務の内容、義務を負う主体)を明示的に定めることが、裁判規範性をもつ立法の実現のため、もっとも肝要である。 差別の内容、特に合理的配慮義務の内容に関する規定については、社会生活における様々な場面に応じて、個別、具体的にその内容が異なるものであり、社会生活の個々具体的な場面ごとに、網羅的にその内容が規定される必要がある。また、合理的配慮義務を課される者についても、国や地方公共団体だけではなく、民間の事業者などもこれに含まれることとなるので、社会生活の個々具体的場面ごとに、内容のみならず、義務の主体を明示する必要がある。 【大濱委員】 裁判規範性を持たせるために、個別分野ごとに具体的な定義を列挙してカタログ化するべきだと考える。 【小川委員】 総則の規定を踏まえたうえで、個別条項における禁止されるべき差別行為を定義すべきである。 【尾上委員】 個別分野における差別は差別禁止法の実施上、重要なものになるものであり、書き込むべきである。例えば、地域生活の分野においては強制的な施設収容の禁止、教育の分野においては特別支援学校への通学の強制、医療分野における本人の同意のない治療やリハビリテーションの強制、などである。 【勝又委員】 特定の分野や場面における適格な対象者を規定する必要 【門川委員】 差別禁止法が障害者に対する差別を包括的に禁止し、個別具体的な人権侵害行為を禁止・抑止するものである以上、個別分野別に定義をすることは、かえって法の抜け穴を設けることにもなりかねず、慎重であるべきである。 【川ア委員】 個別分野別に定義するとかなり広範囲になるが、それをどうするか。 精神障がいでいえば、医療における他科との差別、雇用における差別、報道の差別、福祉施設反対運動に見る無理解からくる差別などがあります。 【新谷委員】 個別分野別ごとに差別定義を具体化することが必要と考えます。ただ、差別定義を細かくした場合、障害者基本法の差別定義や個別分野の定義相互の整合性が問題となりますので、細かな整合作業が必要と考えます。 【関口委員】 総則的差別の基準となるような、具体的な差別例を挙げて、裁判規範性を可能な限り担保すべきである。 分野は少なくとも、教育(普通教育・高等教育、障害社会人教育、職業訓練を含む)、雇用、自営業、医療、福祉、司法、契約。 【竹下委員】 同じく日弁連試案を参考にすべきである。 【土本委員】 それぞれ特有の「差別」がある。 【堂本委員】 現実の社会での差別の実態を踏まえて分野別に定義していくべきであり、明確にわかりやすく規定する必要がある。 千葉県では、前述したとおり、県民から差別と思われる事例を募集したが、寄せられた約800件の事例を分野別に整理し、この事例をもとに官民協働の「障害者差別をなくすための研究会」で条例の差別の定義や差別の解消に向けた具体的な取組みについて検討した。最終的に、以下のとおり8分野の15の行為について差別と定義した。 (参考) 障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例第2条第2項 この条例において「差別」とは、次の各号に掲げる行為(以下「不利益取扱い」という。)をすること及び障害のある人が障害のない人と実質的に同等の日常生活又は社会生活を営むために必要な合理的な配慮に基づく措置(以下「合理的な配慮に基づく措置」という。)を行わないことをいう。 一 福祉サービスを提供し、又は利用させる場合において、障害のある人に対して行う次に掲げる行為 イ 障害を理由として、福祉サービスの利用に関する適切な相談及び支援が行われることなく、本人の意に反して、入所施設における生活を強いること。 ロ 本人の生命又は身体の保護のためやむを得ない必要がある場合その他の合理的な理由なく、障害を理由として、福祉サービスの提供を拒否し、若しくは制限し、又はこれに条件を課し、その他不利益な取扱いをすること。 二 医療を提供し、又は受けさせる場合において、障害のある人に対して行う次に掲げる行為 イ 本人の生命又は身体の保護のためやむを得ない必要がある場合その他の合理的な理由なく、障害を理由として、医療の提供を拒否し、若しくは制限し、又はこれに条件を課し、その他不利益な取扱いをすること。 ロ 法令に特別の定めがある場合を除き、障害を理由として、本人が希望しない長期間の入院その他の医療を受けることを強い、又は隔離すること。 三 商品又はサービスを提供する場合において、障害のある人に対して、サービスの本質を著しく損なうこととなる場合その他の合理的な理由なく、障害を理由として、商品又はサービスの提供を拒否し、若しくは制限し、又はこれに条件を課し、その他不利益な取扱いをすること。 四 労働者を雇用する場合において、障害のある人に対して行う次に掲げる行為 イ 労働者の募集又は採用に当たって、本人が業務の本質的部分を遂行することが不可能である場合その他の合理的な理由なく、障害を理由として、応募若しくは採用を拒否し、又は条件を課し、その他不利益な取扱いをすること ロ 賃金、労働時間その他の労働条件又は配置、昇進若しくは教育訓練若しくは福利厚生について、本人が業務の本質的部分を遂行することが不可能である場合その他の合理的な理由なく、障害を理由として、不利益な取扱いをすること。 ハ 本人が業務の本質的部分を遂行することが不可能である場合その他の合理的な理由なく、障害を理由として、解雇し、又は退職を強いること。 五 教育を行い、又は受けさせる場合において、障害のある人に対して行う次に掲げる行為 イ 本人に必要と認められる適切な指導及び支援を受ける機会を与えないこと。 ロ 本人若しくはその保護者(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第十六条に規定する保護者をいう。以下同じ。)の意見を聴かないで、又は必要な説明を行わないで、入学する学校(同法第一条に規定する学校をいう。)を決定すること。 六 障害のある人が建物その他の施設又は公共交通機関を利用する場合において、障害のある人に対して行う次に掲げる行為 イ 建物の本質的な構造上やむを得ない場合その他の合理的な理由なく、障害を理由として、不特定かつ多数の者の利用に供されている建物その他の施設の利用を拒否し、若しくは制限し、又はこれに条件を課し、その他不利益な取扱いをすること。 ロ 本人の生命又は身体の保護のためやむを得ない必要がある場合その他の合理的な理由なく、障害を理由として、公共交通機関の利用を拒否し、若しくは制限し、又はこれに条件を課し、その他不利益な取扱いをすること。 七 不動産の取引を行う場合において、障害のある人又は障害のある人と同居する者に対して、障害を理由として、不動産の売却、賃貸、転貸又は賃借権の譲渡を拒否し、若しくは制限し、又はこれに条件を課し、その他不利益な取扱いをすること。 八 情報を提供し、又は情報の提供を受ける場合において、障害のある人に対して行う次に掲げる行為 イ 障害を理由として、障害のある人に対して情報の提供をするときに、これを拒否し、若しくは制限し、又はこれに条件を課し、その他不利益な取扱いをすること。 ロ 障害を理由として、障害のある人が情報の提供をするときに、これを拒否し、若しくは制限し、又はこれに条件を課し、その他不利益な取扱いをすること。 【中西委員】 条約に書かれている定義に準じたものとする。検討委員会に詳細の討議がゆだねられた際には、実施されてこなかった項目に関しては何故そうなったそうなってきたかの経緯を含め、差別が合理的理由なく行われていた検証をもとに反対意見を持つ人を納得させられるような議論をしてほしい。 【長瀬委員】 各分野において、権利の定義と共に差別の定義を設けるべきである。 【久松委員】 裁判規範性のある法制度を創設する観点から、個別分野において立証可能な定義が必要であり、生活の個々の分野毎に、不利益取扱い及び合理的配慮の義務違反に整理し具体的にその内容を定める必要がある。 【松井委員】 障害に基づく差別の一種とされる「合理的配慮の否定」については、雇用・就労、教育 などでその具体的な内容が異なることから、個別分野別に規定する必要がある。 【森委員】 個別分野ごとに差別の内容は具体的に異なるので、合理的配慮義務も含めて、各分野ごとで網羅的にその内容を規定するべきである。ただし、個別分野を定義することによって、定義されなかった分野における差別を除外するものではなく、総則においてあらゆる分野における差別を対象とすることを明記しておく必要がある。 3. 抽象的な例外規定をどう明確化・限定化するか 【大久保委員】 例外規定を詳細に明確化することは、現実的に困難ではないかと考える。 同法に見直し規定を設け、その過程の中で定期的に議論していくべきと考える。 【大谷委員】 例外規定は可能な限り具体的な定めとし、解釈ガイドラインを別途定めることにより、安易な拡張解釈を許さないようにすべきである。又、細則は、障がいのある人もメンバーに加わった、障がいのある人の権利委員会(仮称)で定められるべきである。 条約2条では、合理的配慮が相手方に「不釣合いな又は過度な負担を課さない」場合であることを求めている。人権相互の比較考量論からすれば、一方でそこで問題となっている人権の性格や重要性、具体的に選択された手段の不可欠性、非代替性、そのことがないことによって蒙る権利侵害の程度などが判断の要素となる。他方、求められる相手方の要素として相手方の性格(個人か、団体か、公的機関か)、業務の内容、規模、業務の公共性、不特定性、事業規模から見た負担の程度、事業に与える影響などが判断の要素となる。 第一に両者の要素の比較にあたっては、具体的な根拠及び資料に基づいてなされなければならない。第二に、そもそも両者の要素の単純比較であってはならない。障がいのある人にとって見れば、合理的配慮がなければ平等な生活自体が奪われるという性格の問題であり、また、人権享有における格差自体は個人の力では変えようのない社会のあり方そのものによって生じているからである。 【小川委員】 合理的配慮という概念においては過度な負担のない範囲という概念が盛り込まれている。 【尾上委員】 事業者側等による恣意的な解釈がなされないように間接差別の正当化に関する適用除外規定、合理的配慮の過度な負担に関する適用除外規定は規定すべきであるが、差別禁止法の適用において特定の障害者が排除されることがないよう法律を作り上げるべきである。 【勝又委員】 明確化・限定化することが可能か?可能だとして、明確化・限定化することのメリットとデメリットをはっきりしてから判断が必要。 【門川委員】 基本的人権の享有を妨げることを差別として禁止する以上、原則として例外規定を設ける必要はないと考える。ただし、合理的配慮の欠如について言えば、当該の合理的配慮が過重な負担を伴うものであることを立証した場合には、その欠如は差別とみなさないなどの例外規定は必要だろう。 【佐藤委員】 障害者の参加を促進するための特別な扱いは差別としないという規定は必要と思う。例えば、障害者雇用率制度、補装具など福祉サービスの支給、料金割引など。 【新谷委員】 積極的差別是正措置が差別(逆差別?)に当たらないことは明記すべきと考えます。また、合理的配慮に対する過重な負担の抗弁を許す一般的な規定は必要と思いますが、「過重な負担の抗弁」を許す個別分野は制限的に考えるべきと思います。(例えば、義務教育段階での配慮義務に対して、国・自治体や私立の教育機関の「過重な負担の抗弁」を許すべきではなく、もっといえば「合理的配慮」の言葉を使わず端的な「過重な負担の抗弁を許さない配慮義務」を課すべきと考えます。) 【関口委員】 例外規定について、合理的配慮の欠如についての「過大な負担」については救済機関が個別に判断することとする。明確化・限定化の明文はおかない。むしろ、障害者団体が差別と認めたことを証明する書類によって、明確化・限定化すべきである。 なお、差別については告発された側が差別でないことの挙証責任を負う事が重要である。 すなわち、例外規定については特に明文化せず、個別ケースごとの判断とする その為の判定委員会には障害者が過半数を占めること。 【竹下委員】 同じく日弁連試案を参考にすべきである。 【堂本委員】 障害者差別禁止法が社会に受け容れられるためには、現実の社会の実態を踏まえて規定する必要がある。差別の中には、すぐに解決できるものもあれば、時間やお金をかけなければ解決が困難なものもある。例えば、車椅子使用の人の移動保障のために建築物にエレベータを設置する場合、事業者の規模や経営状況も考慮する必要がある。エレベータがないことは、差別に当たるとしても、それを解消することが事業者に過重な負担を課すことになり、すぐには不可能と判断される場合には、差別禁止の適用除外として扱うことが妥当である。したがって、例外規定は設ける必要がある。 千葉県の条例では、「不利益取扱いをしないこと又は合理的な配慮に基づく措置を行うことが、社会通念上相当と認められる範囲を超えた人的負担、物的負担又は経済的負担その他の過重な負担になる場合」においては差別禁止の適用除外とすることとした。一切差別禁止の例外を認めないとすると、差別となることをおそれて障害のある人とは関わらないという人が増え、結果的に共生社会の実現は困難となるからである。障害のある人に対する理解を広げつつ、差別禁止の実効を上げていく努力が求められる。 障害者権利条約でも、「合理的な配慮」は、「特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。」とされており、同様の規定は必要である。 その一方で、例外規定によって差別の禁止がなし崩しにならぬよう、例外規定の適用を受ける側がそのことを立証する責任を負うなどの工夫をすべきである。 (参考) 障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例第8条  何人も、障害のある人に対し、差別をしてはならない。ただし、不利益取扱いをしないこと又は合理的な配慮に基づく措置を行うことが、社会通念上相当と認められる範囲を超えた人的負担、物的負担又は経済的負担その他の過重な負担になる場合においては、この限りではない。 条例の解釈指針 ・ 「過重な負担」であるか否かは、判断時における①当該措置の実現可能性、②当該措置を講ずる場合に必要とされる費用、及び当該費用を支出することによる事業等への影響、③事業主等の資産の規模、④当該措置を講ずるに当たって、事業主等が利用できる財政的又はその他の支援等を考慮して判断します。 なお、「当該措置の実現可能性」とは、技術的な問題など、金銭のみでは解決できない事情の有無をいいます。 ・事業者等が当該事案において「合理的な配慮に基づく措置」を行うことが「過重な負担」であることを主張する際には、具体的な根拠及び資料に基づき説明する必要があります。 【中西委員】 抽象的概念の解釈は時とともに変化する。いろいろな人々の生き方や生きがいを互いにどのように尊重し、認め合い、共に生きていくかというところに、差別の課題があるので、現段階ではまず条約での規定をもとに作成するのが最適な方法であると考える。 一番問題となるのが「合理的配慮」で言われている「過重な負担」であろう。日本で初めて導入される概念であるため、負担が過度であると主張する側の立証責任を明確化することとする。 【久松委員】 障害者への差別に当たらないことについて、国民が判読・判断できる具体的な例外規定を設けるか、あるいは具体的でわかりやすいガイドラインを通知するかを検討していく必要がある。 【松井委員】 米国の「障害のあるアメリカ人法(ADA)」でも、「過度の負担」が合理的配慮の例外として規定され、それを明確化・限定化するため、雇用機会均等委員会がガイドラインを定めている。わが国でも、とくに雇用・就労領域で求められる合理的配慮の免責事由については、ガイドラインなどで明確化する必要があろう。 【森委員】 「障害を理由として」、「著しい困難や過重な負担・出費」、「合理的配慮」等の抽象的な例外規定の具体的内容は、障害者差別禁止の適正な実施を任務とする機関として、別に障害者権利委員会(仮称)を置いて規則等で定める必要がある。 ○ 個別分野 1. 生活分野として、いかなる分野を規定すべきか (例 地域生活、自己決定と法的能力、移動、建物、利用、情報保障とコミュニケーション、教育、就労、医療及びリハビリテーション、性、政治参加、司法手続、その他) 【大久保委員】 「社会参加」も明示すべきと考えるが、全体として、概念を整理する必要があると考える。 なお、「情報保障」については、知的障害の特性に配慮した支援の必要性を特に明示すべきと考える。知的障害者の場合、情報伝達支援(支援者によるかみ砕いた説明など)について明確な位置づけがない。また、行政手続きや契約の際の支援や公共施設の分かりやすい表示やわかりやすい公文書など、知的障害者に対する情報保障が担保されないこと自体が差別であることを明示する必要があると考える。 【大谷委員】 自由権から社会権を含む広い分野を対象とすべきである。 差別の定義を規定する条約2条は「政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のいかなる分野」を対象としており、現に、条約はこの総則規定を受けて自由権から社会権を含む第10条「生命への権利」から第30条「文化的生活等への参加」に至る各論全てにおいて、差別の禁止を定めている。 日弁連は2007年3月「障がいを理由とする差別を禁止する法律」法案概要(以下差別禁止法・日弁連案という)を公表したが、個々具体的な適用場面として以下を提案している。最も根幹をなす教育を冒頭に置き、次いで労働、アクセス(建築物の利用、交通機関の利用、情報)、サービス(サービス、医療、不動産)、参政権、司法と整理したものである。 【大濱委員】 例示の分野が適切だと考える。 【小川委員】 あらゆる分野である。ただその事を前提に、期待される分野として、労働、教育、医療、情報・コミュニケーションなどが想定されよう。 【尾上委員】 地域生活、教育、労働、利用及び移動に関するアクセス、意思疎通・情報伝達移動、サービス、不動産、医療とリハビリテーション、性と生殖、自己決定と法的能力、行政手続と行政サービス司法手続き、政治参加、等の分野における規定が考えられる。 【勝又委員】 すべての生活分野であり、列挙したことで、そこに含まれない分野を残さないような工夫が必要。 【門川委員】 例として挙げられている生活分野は相互に深い関係をもち、それぞれを別個に取り出して規定することは、法の抜け穴を設けることにもつながりかねず、慎重に検討すべきである。 ここで留意しなければならないのは、個別分野の規定が必要となる場合とは、とりわけ「社会が何もしない」ことが差別となりうる場合だという点である(不作為、放置など)。そうした場合については、差別禁止という法制度だけでは必ずしも対処できないのではないか。むしろ具体的な支援が適切に行われるように(各種福祉法のように)別途の法体系において、支援の実施主体を明記して担保する必要がある。 また、例として挙げられている各分野については、障害者と公的機関との間に何らかの権力関係が生じている(特に、利用、教育、医療など)分野であり、もし仮に規定する場合には、公的機関や公務員(及び支援者など公務員に準じる立場の者)による権力の濫用を禁止する規定とした方が実効性が高いと考える。 【川ア委員】 精神障がいの場合 地域生活 長期入院の解消、地域生活のための諸条件の整備。 雇用   短時間労働、休憩の保障、人的支援などの合理的配慮を規定 教育   不登校時や入院時の学業の保障。 医療   精神科医療の在り方、他科受診、合併医療の保障など。 情報の提供  災害時における情報提供 政治  選挙の機会の保障 【新谷委員】 労働・雇用、教育、医療、性、政治参加、司法、行政サービス、情報・通信、交通、経済・文化サービス。不動産取引など。 【関口委員】 個別分野に関しては、緊急性が認められるものの即時的救済制度(アパート契約拒否等の救済など)を入れ込むべきである。 分野は 地域生活(自己決定、民事契約、住宅の確保、介護保障) 移動 建物 契約 情報保障とコミュニケーション 教育 就労 医療及びリハビリテーション、ハビリテーション 性 政治参加 司法手続 注)リハビリテーションは条約に基づき、リハビリテーション及びハビリテーションとすべきである。 また、司法手続きのみならず、未決・既決を含めた刑事施設処遇・入管施設その他あらゆる拘禁施設についても規定すべきである。 補足意見:私の気になるところは、障害者の生存権を基とした所得保障の問題です。 差別禁止法の個別分野で、「就労」がパッと見、浮いてしまっていて、「働かなくても文化的生活が保障される」事も「合理的配慮に基づく」とでもしたらよいのでしょうか、強調されたらどうかと思いました。 障害者にとって、必要にして十分な経済生活の保障が無条件に担保されていて欲しいと思います。 【竹下委員】 (1)日弁連試案を参考にすべきである。 (2)本人にとっての安全確保と不利益性が明確な場合には、自己決定権の例外としての支援者(保護者)による代理的決定を認めるべきである。 【土本委員】 権利条約をもとにしたすべて。 『認知・認識・表現・コミュニケーション』の困難を抱えている仲間たちに対する具体的な「合理的配慮」が必要です。 特に「わかりやすい情報」と「経験」できるしくみ。 地域のふくしサービスを増やす。 入所施設をなくす。 【堂本委員】 千葉県の条例では、県民から寄せられた事例を基に、①福祉サービス、②医療、③商品及びサービスの提供、④労働者の雇用、⑤教育、⑥建物等及び公共交通機関、⑦不動産の取引、⑧情報の提供等の8分野における15の行為を差別と定義している。 内閣府が平成20年度に実施した「障害者に対する差別事例等の調査研究」の結果を見ると、障害のある人が日ごろから差別に当たると考え人々にしてほしくないと望んでいること、人々に対し配慮や工夫をしてほしいと望んでいることとしては、雇用・就業、福祉、保健・医療の順に多くなっており、これらは特に重要である。ほかにも、教育・育成、建物・公共交通機関、商品サービス提供、政治・行政・司法なども規定すべき分野である。 【中西委員】 障害者が差別を体験してきた分野全てを網羅すべきであり、そのため例示された「自己決定と法的能力、移動、建物、利用、情報保障とコミュニケーション、教育、就労、医療及びリハビリテーション、性、政治参加、司法手続」の各分野は当然規定されるものとする。 「出生」も含めるべきである。 「性」に関しては婚姻、出産も併記する。 「地域生活」は自立生活とする。 虐待に関しても触れておくべきなので「虐待、放置、金銭的搾取」も規定の対象とする。 「資格の取得」を加える。 「利用」では公共サービスの利用のみでなく、不動産取引、店舗での商品の売買、レストラン等での飲食、ホテル等の宿泊などを含む幅広いものとする。 「政治」関しては「参政権」とする。 【長瀬委員】 上記に加えて、障害者の権利条約の第30条が規定している、文化的な生活、レクリエーション、余暇、スポーツヘの参加の明記が必要である。観光を含め、こうした分野は軽視されがちだが、生きる上での重要度は決して低くない。他国の障害差別禁止法の先行例でもこうした分野は取り上げられているのを参照すべきである。 【久松委員】 「情報とコミュニケーション」の分野は、「地域生活」「自己決定」のように、今までの福祉施策を根本的に変えなければならない分野であり、きちんと規定していく必要がある。その他、「アクセス」「財産」「サービス」を追加する。 【松井委員】 生活分野としては、上記に加え、もの(不動産も含む。)とサービスなども規定すべきであろう。また、教育には、大学等の高等教育や専門教育も、そして就労は、雇用・就労を含むものとして明確化しておいたほうがよいと思われる。 【森委員】 教育、就労、建築物の利用、交通機関の利用、情報、医療及びリハビリテーション、サービス、不動産の取得・利用、政治参加、司法手続き等、地域社会の議員として生活する平等の権利性を認め、享受され、社会参加できる社会を目標とする限り、生活の必須要素分野ごとに規定すべきである。また、地域生活、性、自己決定と法的能力、情報保障とコミュニケーション、その他については総則に明記すべきである。 ○ 関係個別立法との関係 1. 差別禁止に抵触する立法の改廃についてどう考えるか 【大久保委員】 被後見人への選挙権停止を解決するため、公職選挙法を改正すべきと考える。また、衆参議院選挙においても記号投票を導入する必要があると考える。その際、○印が明瞭に記入されないことも配慮し、併せて補助者の活用も考慮する必要があると考える。 また、被後見人と被保佐人に対する欠格条項を廃止すべく、国家公務員法と地方公務員法を改正すべきと考える。 【大谷委員】 差別禁止に抵触する立法は、差別禁止法の制定と共に改廃されるべきである。 差別禁止法と個別立法の関係性が問題となるが、考え方としては、法律に優先する法規たる条約の主内容を具体化する法律である以上、差別禁止の法規範において差別禁止法が個別立法に優位する準基本法的位置づけになるべきである。そしてこの内容に沿った既存個別法の改廃がなされ、また必要な個別法の新規立法がなされるべきである。なぜなら、個別分野における差別、合理的配慮といった基本的な重要概念について差別禁止法という単独立法による一貫した理念に基づく定めが必要であると考えられるからである。 例えば、分離教育を前提とした学校教育法の定めは、差別禁止法制定と共にインクルーシブな教育を内容とするものに改正されなければならない。また合理的配慮義務規定は差別禁止法において定められるが、公教育における合理的配慮の具体的中身は、学校教育法において定められるべきものもあると考えられる。 【大濱委員】 成年被後見人の選挙権と被選挙権や、就学指導による原則分離などについて、権利条約の早期批准のための国内法整備を念頭に、差別禁止法の施行と同時に改廃すべきだと考える。 【小川委員】 差別禁止法に合致しない法律は直ちに改廃されるべきである。障害に基づく差別を完全になくしていくという視点に立ちながら、関係法は適宜改正していくべきである。 【尾上委員】 差別禁止法に抵触する法律の洗い出しと改正は必須であり、差別禁止法の立法作業と同様に重要な作業であると考える。 例えば、最新の調査によれば、443の法律に、障害者にかかわる欠格条項が存在する。特定の病気や障害についての欠格条項の新設は、2007年以後は見あたらず、1999−2004年当時の見直しで相対的欠格となったものが、ほとんどそのまま、存続している。成年後見の欠格と「心身の故障」などの取得後の欠格は新しい法律に取り入れられ続けている。(別紙資料参照) こうした状況をみると、差別禁止法に抵触する法律の洗い出しと改正は不可欠である。 韓国では2007年の障害者差別禁止法の制定以降、抵触法の洗い出しを政府主導の下で進めている。 【勝又委員】 必須であるが、立法の改廃は差別禁止法が施行された後に期限をつけて実施されるべきで、立法の改廃を差別禁止法の施行の前提にすべきではない。 【門川委員】 差別禁止に抵触する場合で容認することが可能でありうる場合とは、「公共の福祉」を理由として「一時的に」基本的人権の享有を留保する場合であり、当該「公共の福祉」を優先させることが、長期的に全ての人々の基本的人権の享有を促進する場合に限られると考える。 したがって、「公共の福祉」を理由とせずに差別禁止に抵触する場合には、当然立法(法令)を改廃する必要があり、また、「公共の福祉」を理由とした場合にも、当該「公共の福祉」の内容を明示し、基本的人権の享有の留保が「一時的」であることを担保するように改廃する必要がある。 【川ア委員】 保護者制度の撤廃。 障害者雇用促進法において、精神障害者が雇用義務に入っていないなど、あらゆる法律において、障害別にサービスが異なる法律の改正をすること。 精神障害者には福祉法がなく、障害者相談員というピアサボートの制度もない。 【佐藤委員】 権利条約と差別禁止法に抵触・違反する立法を、改廃することが必要である。 1987年まで、銭湯は精神障害者の入浴を拒否しなければならないという法律があった。それから20年後、町の銭湯にまだ「精神病者の方は、法によりお断りします」という看板を出しているところがあった。 いったん作られた欠格条項は、削除されてもなお、このように社会に影響し続ける。 社会参加を阻む欠格条項は早急に削除して、支える制度、合理的配慮をいかに提供できるようにするかを前進させる必要がある。 障害者欠格条項をなくす会の調査によれば、いまなお障害者にかかわる欠格条項が443の法律にある。 欠格条項の内容 対象 数 例 資格を認めない・認めないことがある 成年被後見人・被保佐人のみ 128 公務員、馬主 成年被後見人のみ 18 選挙権・被選挙権 心身の障害 69 行政書士、通訳案内士 精神の機能の障害、精神の著しい障害、等 56 船員、狩猟 視覚・聴覚の機能の障害 27 薬剤師、医師 もっている資格を取り消す・取り消すことがある 「心身の故障」、成年後見人・被保佐人、何らかの障害 44 各種の委員会の委員、法人役員、学校教員 資格や免許に限らない権利の制限 さまざまな権利制限 35 精神病院の入退院の自己決定、遺言の立会人 特定の病気や障害についての欠格条項の新設は、2007年以後は見あたらず、1999-2004年当時の見直しで相対的欠格となったものが、ほとんどそのまま、存続しています。 成年後見の欠格と「心身の故障」などの取得後の欠格は、法律の新設・改定時に、似た法律からコピーされ自動的に追加されて、増加しています。情報元: http://www.dpi-japan.org/friend/restrict/shiryo/data/data2009.html 2009年9-12月の総合調査をもとに計数。複数の分類にあてはまる法令が多いので法律数443とこの表の単純合計は一致しません。 また、内閣府がJDFの協力を得て行ったの2008年の障害者差別等に関する調査では、制度が使いにくい、格差が大きい、などの意見が多く見られた。十分でない日本の社会権保障の現状の中で、こうした法がどの程度、権利救済において実効性を発揮できるのかが重要で、「制度オンブズマン」等の仕組みを加味し、制度改善のための救済方法を検討すべきである。 【新谷委員】 障害者基本法や障害者差別禁止法に歴然と違反している法令、特に人権侵害に類する法令・欠格条項や障害者福祉サービスに関わる違反法令は速やかに改廃すべきと考えます。 また、障害者基本法や障害者差別法に違反していることがすぐには顕在化しない法令も多いと考えますので、障害者基本法や障害者差別禁止法に個別法への優位性を明記し、違反法令の改廃が迅速・容易に進む仕組みを作り上げることが必要と考えます。 【関口委員】 医療観察法、精神保健福祉法、民法6条-21条、民法770条第1項第4号、医療法施行規則第10条、民事訴訟法第31条など、関連法規の改廃は必須である。 とりわけ差別欠格条項、成年後見法、精神保健福祉法および医療観察法の廃止が必要。 保護者制度及び特定医制度による移送に関しては即時撤廃を求める。成年後見法および精神保健福祉法の改廃については年度を区切って代替的施策制度の開発と平行して行程表を作って進められるべきである。 精神保健福祉法が自立支援法の成立によって一部改正されたことを考慮すると、自立支援法廃止、総合福祉法成立と同時並行で精神保健福祉法の緊急性の高い撤廃事項は実行されるべきである。 【竹下委員】 (1)特別法としての差別禁止法を制定し、関連法規における改廃を順次行う。その際、差別禁止法の規定中に「この法律に反し、または矛盾する法令、その他の規定はその効力を停止する」といった規定を設けることが必要である。 (2)第2段階として、関連法規において当該分野ごとに詳細でより具体的な規定を法律、政省令などとして規定する。 【土本委員】 悪い法律はなくす。 【堂本委員】 差別禁止の法制化の検討過程で、既存の関係個別立法との関係を十分調査し、両者の内容の整合を図る必要がある。 【中西委員】 差別禁止に抵触する法律は改廃する。 条約を基盤として国内法を検証した場合、すでにその内容が差別禁止に抵触する法律が存在しているので、それらをできるだけ早期に改廃する。 【長瀬委員】 障害者の権利条約の批准(締結)に向けて、欠格条項の見直しを含め、障害に基づく差別を含む法律全般の見直しが必要である。 【久松委員】 障害者権利条約に基づく法律であり、差別禁止法の制定にあたっては、抵触する法律等も改廃が必要なことは当然と考える。従って、差別禁止法は関連する他の個別法を拘束する権限を持ったものにする必要がある。 例を挙げれば、 ・ 「手話は言語である」ことを定義し、手話の使用の権利を規定すれば、学校教育法施行規則で定める教科に「手話」を位置付ける。 ・ 公務員の採用試験の受験条件に「介助者なしで職務遂行が可能であること。」となっている自治体があり、地方公務員法第19条「2 人事委員会は、受験者に必要な資格として職務の遂行上必要な最少且つ適当の限度の客観的且つ画一的要件を定めるものとする。」の改廃が必要。 ・ 労働者が希望する言語・コミュニケーションによる会議・研修等の保障を図る。(労働契約法、労働基準法) ・ その他、道路交通法、公職選挙法、放送法、著作権法等も見直しが必要である。 【松井委員】 障害者権利条約第4条一般的義務(b)で規定されているように、「障害者に対する差別となる既存の法律、規則・・・などを修正し、又は廃止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとる」べきである。 【森委員】 まず包括的立法である障害者差別禁止法を制定した上で、差別禁止法に抵触する既存の法制度等は全て必要な改正または廃止するための適正な措置を行う必要がある。 2. 合理的配慮の具体化に向けた改正についてどう考えるか 【大久保委員】 具体的内容について盛り込むことが必要と考える。より実効性を持たせるため、社会的啓発についても積極的に行う必要があることも合わせて明記すべきと考える。 差別禁止法での対応に加え、相談支援などの福祉サービス、行政サービス、教育、雇用、司法などの各分野の個別の法律に知的障害者への情報保障、人的支援など、合理的配慮を明示する必要があると考える。 【大谷委員】 合理的配慮義務規定は、差別禁止法の中でなるべく具体的に入れるべきであるが、法律の規定では具体性に限界があるため、より詳しくは規則、そして具体例を盛り込んだわかりやすいガイドラインが必要であると考えられる。これは基本的には、権利規定の形で定める差別禁止法の中、及び差別禁止法から委任された規則やガイドラインで定められるべきであって、個別法やそれに基づく規則、ガイドラインによるべきではない。仮に個別法の中で定める方がふさわしい規定があるとしても、権利規定となるよう定められなければならない。 規則やガイドラインの策定は、後述の「促進」機関が行うべきである。 また、民間事業者が負う合理的配慮義務については、民間事業者の独力で履行するのを期待したのでは「過度な負担」として合理的配慮が遂行されない場合が多いのではないかと危倶される。よって国や自治体による民間事業者に対する補助・助成、情報提供などが非常に重要な役割を持つことになる。民間事業者が合理的配慮義務を速やかに履行することを促進するための公的援助について、制度的に根拠づける法律が必要であると考える。この根拠法は、差別禁止法以外の個別法、例えば雇用促進法などであってもよいと考える。 これまでの業法に基づく国に対する義務と異なって、民間事業者は、障がいのある人に対し義務を負うものであり、障がいのある人は民間事業者に対し権利行使をするものであるが、民間事業者は義務を遂行するために国の援助を受けることができる、という位置づけになる。そして援助を受けられるのに受けずに合理的配慮義務違反を構成した場合は、障がいのある人に対する差別となるものである。 【大濱委員】 具体的内容について盛り込むことが必要と考える。より実効性を持たせるため、社会的啓発についても積極的に行う必要があることも合わせて明記すべきと考える。 差別禁止法での対応に加え、相談支援などの福祉サービス、行政サービス、教育、雇用、司法などの各分野の個別の法律に知的障害者への情報保障、人的支援など、合理的配慮を明示する必要があると考える。 【小川委員】 合理的配慮の基本的なあり方について差別禁止法の中により具体的に示していく必要がある。また、政令等で合理的配慮の進め方、手続き等について示していく必要がある。 【尾上委員】 まずは差別禁止法において、各分野における合理的配慮の基本的な内容を規定する必要がある。そして、条例やガイドラインなどでさらに詳細に合理的配慮義務の内容や決定過程等を規定する必要がある。 例えば、都道府県の身体障害者むけ職員採用試験においてさえ、「自力通勤、介助なし職務遂行、活字印刷文対応」といった受験資格のために、受験することからも門前払いされている実態がある。そして試験において必要な配慮、合理的配慮が提供されないために(手話通訳、文字通訳がつかない面接試験など)受験しても合格が見込めない試験が広範囲にある。(別紙資料参照)こうしたことの是正のためにも必要である。 【勝又委員】 判例による蓄積が必要だが、それには時間も労力もかかる。そこで、相談やあっせんなどの監視行動の中で、事例を蓄積しつつ、行政指導により具体化してはいかがか。 【門川委員】 合理的配慮の具体化は、障害者が「基本的人権の享有を妨げられている状態」を解消するために必要不可欠なものである。 ただし、具体化の方法は、「法令による強制」のみを意味するものではなく、各分野の実情に応じた具体化が必要であって、合理的配慮という概念を各分野において明記すること以上の具体化については、障害者のみならず関係者が議論をする場が必要であり、そうした議論を通じた具体化のみが、実際に差別禁止を実現するものになりうると考える。 【川ア委員】 分野別の合理的配慮は規定されるべきで、部会、研究会の設置が必要ではないか。 【佐藤委員】 法律上では「合理的配慮」の言葉を残しつつ、普及パンフレットなどでは「合理的配慮(差別防止措置)」「合理的配慮(平等化配慮)」など、分かりやすい言葉も併用する必要があるのではないか。大事なのは意味が分かることであり、厳密な訳語よりも正確に概念が伝わることであるから。 必要に応じて、国や自治体が事業者に対して合理的配慮を可能とさせる補助を行なえるシステムなどが必要だと考えられる。たとえば、障害者の診療で一般以上に時間がかかる、補助者が必要などの場合があるが、診療報酬上の加算的な措置が必要とされるのではないか。 まず公的機関がきちんと自己点検すべきである。都道府県の身体障害者むけ職員採用試験においてさえ、「自力通勤、介助なし職務遂行、活字印刷文対応」といった受験資格のために、受験することからも門前払いされている実態がある。そして試験において必要な配慮、合理的配慮が提供されないために(手話通訳、文字通訳がつかない面接試験など)受験しても合格が見込めない試験が広範囲にある。是正が必要。 【新谷委員】 合理的配慮について、権利条約にあるような原則的な規定を障害者基本法や障害者差別法に明記することは必要と考えます。また、合理的配慮にとって大切なのは、配慮を求め、その配慮が必要であるかどうかを判定し、それを実行に移す、またそのプロセスを記録し、次の事例に適用していく仕組みを構築することだと考えます。具体的には、救済受付・即時救済・調停・仲裁などを行う救済機関の手続き規定を障害者差別禁止法に明記すべきと考えます。 【関口委員】 ガイドラインを作成し、例示を列挙すべきだが、合理的配慮の範囲はあくまでも個別ケースごとに判断されるべきことを明らかにする。 この際、簡便な人権119番のようなものを作り、速やかに調整、調停、救済するのが第一段階となる。 【竹下委員】 (1)合理的配慮の内容、基準、考え方を可能な限りで法令において定める。 (2)分野ごとにおける合理的配慮の内容や基準については、政省令及びガイドライン等によって提示することが必要不可欠である。 【土本委員】 必要。 何が「合理的配慮」なのか、わかりづらいのでは意味がない。 仲間たちが、理解できるようにすること。 【堂本委員】 合理的配慮は、例えば、車いす使用者等の移動保障のためのスロープの設置や、視覚障害や聴覚障害のある人に対する情報保障のため、点字、拡大文字、音声コードの添付、手話通訳や要約筆記の配置、補聴援助システムの設置などの配慮をすることなどであるが、障害者権利条約で規定された新しい概念であり、内閣府が平成21年度に実施した「障害を理由とする差別等に関する意識調査」結果を見ても、国民の認知度は低い。したがって、合理的配慮の内容を具体化し国民に周知することがたいへん重要である。 合理的配慮の内容は、障害の種別や程度又は生活の場面ごとに異なることから、まずは、差別禁止法で概念を規定することとし、具体的内容は、ある程度時間をかけて検討し指針を定めて国民に周知することが望ましい。その上で国民の理解が得られたものについては、逐次個別の法律に規定することを検討してはどうか。 (参考) 障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例の解釈指針には、合理的配慮の例として、以下のことを提示している(抜粋)。 福祉サービス 聴覚障害のある人が福祉サービスの内容などを理解しやすいように、筆談を交えて説明すること。 医療 電光掲示板で順番を知らせている医療機関において、視覚障害者に直接声をかけて順番が来たことを知らせること。 商品及びサービスの提供 車いすを利用するお客様のために、商品の陳列方法を工夫したり、店員が陳列棚の高い位置にある商品を手渡すこと。 労働者の雇用 車いすを利用する従業員のために、車いすが入る机を用意することなど、障害特性に応じた職場環境づくりをすること。 教育 障害特性に応じた教材を用意すること。 建物等公共交通機関 移動経路で高低差のある場所にスロープや手すり等を整備すること。 不動産の取引 重要事項の説明に当たり、聴覚障害者のために筆記等による丁寧な説明を行うこと。 情報の提供等 知的障害のある人が理解しやすいように、資料に写真やふりがなを入れること。 【中西委員】 「合理的配慮」は差別禁止の一基準である。同時にそれを拒否することは差別であると規定することにより、使用者に対する義務であることを明記しなければならない。合理的配慮の拒否により何らかの差別が生じていることに対して救済を図っていくことも必要である。 そのための具体的事例と改善法の提示は、合理的配慮の法制化にとって不可欠である。 そして、適切な対応を実施できるようにする仕組みをつくることが必要である。 【長瀬委員】 合理的配慮の欠如を差別として位置づけ、新たな障害差別禁止法で原則として包括的に取り扱うべきである。 その際には、すでに先行して検討を進めてきた雇用分野(厚生労働省労働政策審議会障害者雇用部会)での成果を、本推進会議での新たな議論を基に、可能な限り活かす方向で検討する。 合理的配慮の全般的義務付けにおいては適切な範囲での財政面の公的支援策の導入も検討すべきである。 【久松委員】 「情報・コミュニケーション」分野の合理的配慮としては、下記の内容を元に検討を進めて頂きたい。 ・ 言語としての手話の研究と普及を促進すること。 ・ 手話通訳者の養成と有資格者の確保、配置を進めること。 ・ 国として、手話・手話通訳等の研究・研修機関を設置すること。 具体的に言うと、 ①自治体による手話通訳者設置事業の実施が進まない現状の問題点を解決するために、自治体の役所に手話通訳士(者)有資格者の配置基準を明示すること。 ②相談支援における手話コミュニケーション対応機能の強化が進まない現状の問題点を解決するために、聴覚障害者情報提供施設や生活・相談支援センターに十分な手話コミュニケーションにより対応できる職員の配置基準を明示すること。 ③雇用場面・職場定着支援における情報とコミュニケーション保障が進まない現状の問題点を解決するために、ハローワークに十分な手話コミュニケーションにより対応できる職員の配置基準を明示すること。 【松井委員】 合理的配慮の具体化には、障害者基本法の改正だけでは十分ではない。障害者権利条約第27条労働及び雇用1項(i)で求められる「職場において合理的配慮が障害者に提供されることを確保すること」については、障害者雇用促進法の改正が必要である。 なお、厚労省では、それに関連して、一昨年から昨年にかけて「障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会」(その「中間のまとめ」が公表されている。)で、そして昨秋からは労働政策審議会障害者雇用分科会で検討がなされていることから、そうした議論を十分踏まえた改正のあり方が検討されてしかるべきである。 【森委員】 障害者権利条約第2条で規定され、同条約で重要な事項である合理的配慮については、生活に必要な各分野の指標で具体的に明示することが必要である。すなわち、障害者が他の者との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を享有しまたは行使することを確保するための必要かつ適切な変更及び調整を行うことを明示すべきと考える。そして、個別分野における合理的配慮については具体的に整理し明記する必要性があることからも、別に障害者権利委員会(仮称)を置いて規則等定めることも必要と考える。 ○ 救済機関 1. 行政救済機関の設置についてどう考えるか 【大久保委員】 現状の人権擁護センターなどが十分に機能しているとは思えない。一定の権利行使が伴うことから公的機関であるとともに、行政から独立したものとする必要がある。 既存機関に内部機関を新たに設けるようなものではなく、真に実効性を持たせられる機関とする必要があり、設置は、県ないし福祉圏域が適当と考える。ただし、救済に向けたきめ細かい対応ができるような工夫が必要と考える。 【大谷委員】  障がいのある人の真の人権救済のためには、まずはパリ原則に則った、政府から独立した人権救済機関が必要である。このような人権救済機関においては、障がい専門部門が設けられ、障がい当事者が過半数を占める専門スタッフによる運用がなされなければならない。また権利条約の批准に向けて、障がい分野を扱う人権救済機関を他分野に先行して創設することも検討されるべきである。  権利条約で求められている機能は「促進」「保護」「監視」の3つである。人権救済機関は「保護」機関であり、個別の申立に基づき、あるいは職権により、差別や人権侵害の事例について調査を行い、必要な勧告等を行う機関となる。  「促進」とは、障がい当事者の権利擁護を支援し(相談受付と情報提供やケースワーク)、差別禁止法等の権利保障立法の広報啓発を行い、差別禁止法から授権されて規則を制定し、諸立法をわかりやすく解説したガイドラインを作り、ホームページやパンフレット頒布等の手段により、法の精神と具体的適用を社会に広く知らしめる機能を指すと考えられる。  「監視」とは、政府が権利条約に従った施策を推進する状況を監視し、必要に応じて実態調査等を行い、政府に勧告、法案の答申・提起等を行っていく機能であると考えられる。  この「促進」と「監視」の機能については、政府から独立した機関である「障がいのある人の権利委員会(仮称)」を創設して、そこに担わせるべきである。そしてこの権利委員会の構成員は、過半数が障がいのある人でなければならないものとして、当事者抜きに当事者のことを決めない理念を貫くと共に、活動の専門性を保障するべきである。「保護」の機能については、最も強い権限行使が期待されるのは上記人権救済機関であるが、当事者がより気軽に利用できる問題解決機関があることが望ましい。人権救済機関だと都道府県に1箇所がせいぜいということになるだろうが、これでは利用しにくい。そこでより柔軟で迅速な解決が望める苦情処理手続が整備される必要がある。  イギリスでは、権利委員会から委託された民間調停機関や、準司法機関である雇用審判所、特別教育ニーズ障がい審判所などがこうした機能を持つ。  日本でも、分野によっては行政救済機関の新規創設が検討されるべきである。  例えば雇用の分野では日本でも労働審判が制度化されているが、障がい差別を扱う専門部門を設けるなどして、障がいについて知見を持つ専門家による問題解決が行われることが望ましい。労働局紛争調整委員会などの行政救済機関においても、障がい差別の専門部を設けるか、最低でも障がい差別を扱う専門スタッフを揃えることが必要である。 【大濱委員】 司法救済よりも障害者の負担が少ない調停、仲裁、勧告、是正命令などのため、政府から独立した機関を設けるべきだと考える。 救済機関の構成員は、過半数を障害者とするべきだと考える。 【小川委員】 (1)必要性 ある。政府から独立した機関としての救済機関が求められる。 (2)地域との関係 差別禁止について、地域社会にもその考え方を広げていく必要があると共に、日常的に起きている差別に対応していくため、自治体レベルにおいての救済機関の設置が望まれる。 【尾上委員】 (1)必要性 救済機関としては、いわゆるパリ原則に基いた人権救済機関が必要になるが、さしあたっては、差別禁止法の救済機関として「障害者権利委員会」を内閣府の外局に設置すべきである。 その所掌事務としては、障害に基づく差別の解消に関する指針(ガイドライン)等の策定及び改定に関する事、障害に基づく差別による被害の救済及び予防に関する事項、障害に基づく差別の実態調査に関する事項、障害に基づく差別及び差別助長の防止のための人権啓発と広報に関する事項、障害をもつ人の差別の撤廃と権利に関する国際的又は国内の実施状況に関する情報の収集及び公開に関する事項、この法律の実施状況についての監視(モニタリング)に関する事項規則の制定、その他、権利委員会の任務を達成するための必要な事項が考えられる。そして、委員長及び委員のうち障害をもつ人の数が半数以下とならないようにすべきである。 (2)地域との関係 設置される救済機関については、地方・地域での救済のための地域組織も必要になると考える。 【勝又委員】 必要 基礎自治体になるべく近いところに設置するべきだが、行政費用との関係で工夫が必要。 【門川委員】 行政救済機関は一定程度必要であると考えるが、行政による「救済活動」の透明性が確保されることが大前提となる。 行政救済機関の権限が強くなるほど、「差別事案」とされた個別ケースについて、被差別者に対しても差別者に対しても、権力が大きく介入することになり、行政救済機関による重大な基本的人権の侵害が発生する危険性が高まることに、十分に留意すべきであると考える。 そのため、行政救済機関を設置する場合には、行政救済機関による権力の濫用を禁止し、濫用した場合についての罰則規定を設ける必要がある。 障害者に対する差別は私的関係でも起きているが、それ以上に重大なのは公的関係における差別であり、行政救済機関を設置する場合には、公的関係における差別を禁止することをその主たる任務とすべきであって(そのような差別だけでもかなり広範に存在する)、私的関係に過度に介入するものにならないようにするべきであると考える。 【川ア委員】 第三者機関の設置が必要である。 【佐藤委員】 下記の、日本障害者協議会の「高藤試案:障害をもつ人権利擁護基本法要綱案」(2003.6.1)では、都道府県レベルと市町村レベルに権利擁護委員会をもうけ、都道府県の権利擁護委員会には「差別排除措置」の指示を市町村長等に出す権限を与えている。地域できめ細かい相談、調査、監視、通報などの機能を持つ市町村の権利擁護委員会と相まって、都道府県の委員会が重要な判断・決定を行うこの2段階のシステムがよいと思われる。 第四章 障害をもつ人権利擁護委員会 第二一条(障害をもつ人権利擁護委員会の設置) 1 都道府県に、都道府県障害者権利擁護委員会(以下、「都道府県委員会」という。)を置く。 2 市町村に、市町村障害者権利擁護委員会(以下、「市町村委員会」という。)を置く。 第二二条(都道府県委員会の構成) 1 都道府県委員会は、障害をもつ人利益代表者2人、弁護士2人、医療、福祉、教育に関する学識経験者5人、家庭裁判所調査官1人、医師1人によって構成される。 2 都道府県委員会の委員は、都道府県知事が、関係団体から推薦を受けた者の中から、議会の同意を得て任命する。 3 都道府県委員会の委員長は、委員の互選によって決定する。 4 都道府県委員会に事務局を設置し、専任職員を配置する。 5 都道府県委員会の経費は、都道府県が支弁する。 第二三条(都道府県委員会の職務と権限) 1 当該都道府県内の障害をもつ人の差別を排除するために必要な調査および監視を行うこと。 2 前項の調査および監視により、または市町村委員会からの通報があった場合において、障害をもつ人が差別され、またはそのおそれがあると認めた時、その状況を排除するために必要な措置を決定(以下差別排除措置決定)という。)すること。 3 前項の差別排除措置決定を行った場合には、それを実行するため、必要に応じ、都道府県知事、当該都道府県内にある関係行政機関、市町村長又は市町村委員会にその決定を通告し、その決定を実施すべきことを指示すること。この場合においては、その通告または指示を行った後一定期問経過後、当該差別排除措置決定の実施経過について評価を行い、必要な措置をとるものとする。 4 前三項の職務を行うために必要がある時は、専門分科会を設置するものとする。 5 市区町村委員会に対し、第1項の調査、監視の職務を実行するために必要な協力を求めること。 第二四条(都道府県委員会の決定、指示の効力) 1 前条第3項の規定により都道府県委員会から差別排除措置決定の通告及び指示を受けた都道府県知事、関係行政機関、市町村長、市町村委員会は、その指示に従わなければならない。 第二五条(市町村委員会の構成) 1 市町村委員会は、障害者利益代表2人、医療、福祉、教育の学識経験者5人、民生委員1人、児童委員1人、障害者施設関係者1人によって構成される。 2 市町村委員会の経費は、市町村が支弁する。 3 3−2).3).4).は、市町村委員会に準用する。 第二六条(市町村委員会の職務と権限) 1 障害をもつ人の差別排除に関する相談に応ずること。 2 障害をもつ人の差別排除に関し、一般市民、公共機関に対し、啓蒙活動を 行うこと。 3 当該市町村の区域において、障害をもつ人の差別を排除するために必要な調査及び監視を行うこと。 4 前項の調査及び監視により、又は関係者からの通報により、障害をもつ人が差別されており、又はそのおそれがあると認めた時は、ただちにその事実を都道府県委員会に通報すること。 5 前項に規定するもののほか、当該市町村の区域内における障害をもつ人の差別排除に関する重要な事実その他の情報を、都道府県委員会に通報すること。 6 当該市町村の区域内に居住する障害をもつ人に関し、都道府県委員会の差別排除措置決定の通告および指示を受けた時は、その指示に従い、財産管理、法律行為(訴訟行為を含む。)その他の適当な措置により、当該決定を実施すること。 第二七条(市町村委員会の指示の効力) 前条第6項の規定により市町村委員会が差別排除借置命令を実施するために必要な指示を行った場合には、市町村長、当該市町村内の関係行政機関、およびその市町村の住民は、これに従わなければならない。 第二八条(国の補助) 国は、都道府県又は市町村が支弁した費用の一部を捕助するものとする。 【新谷委員】 救済機関といった大げさな機関ではなく、自治体の障害者福祉課などの行政窓口での広次対応は非常に大切と考えます。行政から独立した救済機関(権利委員会?)設置を障害者差別禁止法に規定することは必要です。また、独立した救済機関は、市町村、都道府県、国レベルにそれぞれ設置すべきと考えます。 【関口委員】 行政救済機関に限らず、あらゆる救済機関が必要だが、原則として、国内人権機関に協会化する方向で。 国内人権機関設置法における国内人権機関に窓口は協会化し、複合差別(障害者で女性で、外国人などの訴えをたらいまわしされない仕組みが必要。 窓口については障害当事者も配置するべき 【竹下委員】 (1)救済機関としての第三者性及び独自性のある「人権救済委員会」を設置する。委員会は中央及び都道府県委員会として設置し、迅速な救済と全国的に平準化された基準を中央委員会において行う。 (2)救済委員会は、差別禁止法の普及啓発の用務をも行い、事業所や行政からの相談をも受け付ける機関として位置づける。 【堂本委員】 障害のある人に対する差別や権利侵害があったときに、裁判外の紛争処理の仕組みとして、簡単に救済の申立てができ、迅速に調停・仲裁などを行えるよう、障害のある人の問題についての専門性を有し、公平中立性が確保された救済機関を創設することが重要である。 (参考) 障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例では、差別があった場合には、民間の地域相談員や県の専門職員である広域専門指導員が相談に応じるとともに、知事の附属機関として、障害のある人、事業者、学識経験者等20人で構成される「千葉県障害のある人の相談に関する調整委員会」を設置し、助言・あっせんを行うことができることとしている。 【中西委員】 行政の機関であるより、第3者による独立機関として存在することとする。また、地方公共団体を一つの単位として設置し、障害者を中心に構成されるものとする。 その機能は ① 申立に基づく立ち入りも含めた調査を実施する。 ② 個々のケースの緊急性や重大性に応じて、是正命令、警告、勧告、要望、公表など 方法を講じる。その際必要であれば、被害者を緊急協業保護する。 ③ 差別の実態を調査し、構造的な差別に関しては、勧告ないし、是正命令を行う。 ④ 根本的な救済にとって必要であるならば訴訟を起こすか、もしくは被害者が起こした訴訟に参加することが出来る。 ⑤ 諸施策の差別をなくすための策定し、その実施を統括する ⑥ 権利擁護に関する情報を提供し、権利擁護に関する啓発活動を推進する。 【長瀬委員】 必須である。障害差別禁止法により、障害者が過半数を占める新たな行政救済機関(障害者権利委員会)を内閣府に設置すべきである。 【久松委員】 「障害者の権利擁護委員会」を設け、半数を障害当事者とし、弁護士等の学識経験者による権限を持った救済機関の設置が必要である。内閣府及び都道府県において設置するか、行政から独立した設置にするかは検討項目としたい。 【松井委員】 差別に関する苦情申立の受付と、その救済に迅速かつ柔軟に対応できるようにするには、行政救済機関の設置が必要かつ有効であることは、すでに障害者差別禁止法をもつ米国や英国などの経験などからも明らかである。この行政救済機関は、内閣府の外部組織として設置されることが望まれる。 【森委員】 人権擁護委員会が法務省の管轄で設置されているが、それとは別に内閣府に障害者権利委員会(仮称)を設置し、権利救済の機能と役割を十分担いうるものとする必要がある。 また、本委員会には事務局を置き、その地方機関として都道府県立政令指定都市には地方事務所を設置することも必要と考える。 2. 人権擁護法案との関係についてどう考えるか 【大久保委員】 障害者を取り巻く環境を考慮し、障害者に特化した法および制度を設け、一般の人権擁護機関とは別に救済等の機関をつくる必要があると考える。 人権擁護法案をめぐる諸議論に拘わらず、障害者に係る救済機関の議論を進めていくことが必要と考える。 【大谷委員】 上記のとおり、廃案となった人権擁護法案はそもそも政府からの独立性等の問題が多々あるため見直されるべきであるが、今後新たな人権擁護法案が作られるとすると、パリ原則に則った人権救済機関を創設する法案となるべきである。また、権利条約の批准に向けて、まずは障がい分野だけを扱う人権救済機関を創設することも検討されるべきことは前記のとおりである。 【大濱委員】 たしかに障害者差別禁止を一般的な人権擁護に統合することは意義のあることだと考える。しかし、差別的言動等ではなく差別的取扱いに主眼を置いている点や合理的配慮など、障害者差別禁止と人権擁護が想定している差別の範囲は必ずしも広致していない。 また、障害者差別禁止法に基づく救済機関の構成員の過半数を障害者とするならば、人権擁護法案に基づく人権委員会などではこの要件を確保できない。よって、当面は人権擁護法案とは別に障害者差別禁止法案の検討を進めるべきだと考える。 【小川委員】 包括的な人権擁護法案も必要かもしれないが、「条約」による障害に基づく差別、すなわち直接差別のみならず、間接的差別や合理的配慮の欠如などを含む新しい概念による差別の禁止が喫緊に必要とされており障害者差別禁止法制は、別個設けられるべきだ。 【尾上委員】 早急に整理すべき課題である。現政権が人権救済機関設置を方針として掲げており、議論の進展が望まれるところである。しかしここで大切なのは、障害者の差別について、権利条約等の規定する差別の3類型にもとづいた個別分野での差別事例への対応を行うことが可能な組織体形が必要であるという点である。人選や組織体制等、今までの人権擁護法の議論に束縛されない新たな議論が必要であると考える。 【勝又委員】 人権擁護法案の下にあるべき関係。 【門川委員】 既に提起されている人権擁護法案については、表現の自由を過度に禁止するなどの問題点も指摘されており論争的であるため、既存の人権擁護法案とはひとまず切り離して、障害者の差別禁止を議論する必要がある。 その上で、人権擁護法案とは別に、公的機関による私人の差別的な取り扱いを禁止することを中心とした差別禁止基本法を構想すべきであると考える。 【佐藤委員】 包括的な人権擁護法も必要であるが、日本においては障害に基づく差別は他の分野の差別より固有性が強く、障害者差別を差別と思っていない人も多い現状があり、また間接差別や合理的配慮など特徴的な概念もある。障害者権利条約の考え方に基づく障害者差別禁止法が必要だと考える。 【新谷委員】 救済機関の問題に関連しますが、人権擁護の法定化とそれに基づく人権機関の設置は必要と考えます。人権機関の役割は障害分野に限定されませんので、人権擁護法案・人権機関に障害分野の特殊性をどのように反映させるかが課題になると考えます。 【関口委員】 人権擁護法案は否定されるべきであり、あくまでパリ原則に基づいた政府から独立した機関を置き、そこに障害分野の機関もおき、窓口協会化と地方での委員会も設置すべき窓口については障害当事者も配置するべき 【竹下委員】 人権擁護法案が速やかに制定される場合は、その機能の一部として差別禁止法に基づく救済手続をも担当することが望ましい。 【堂本委員】 現時点では、法案の内容が明確になっていないので、法案の骨子が明らかになった段階で、差別禁止法の救済機関との関係を整理する必要がある。 【中西委員】 国際人権条約の自由権規約と社会権規約は、障害者を含むすべての人の人権を保障するための条約であることから、障害者の権利を別途保障するための条約は必要でないとされてきた歴史的経緯がある。しかし現実には、障害者、女性、子供といった個別分野に関わる条約の必要性が認められた。このような経緯を分析したうえで、人権擁護法律案への対応を検討することが必要である。 【長瀬委員】 新たな障害差別禁止法のもとでの独自の行政救済機関の設置を行うべきである。ただし、人権擁護法案の動向を見守り、必要に応じた連携を検討すべきである。 【久松委員】 人権擁護法と障害者差別禁止法の制定は、それぞれ個別に考え、あくまでも「障害者」に限った範囲での障害者差別禁止法を制定していくべきである。 【松井委員】 前述したように、障害者だけでなく、女性、こども、外国人などの社会的マイノリティ・グループに属する人びとなども同様に差別などの人権上の問題に直面していることから、障害者差別禁止法にあわせ、あるいはそれに先行して包括的な人権擁護法の制定が必要と思われる。人権擁護法ができ、それに基づいて人権委員会が設置されれば、その一部門として障害者権利委員会を設置するのが、現実的であろう。 【森委員】 人権擁護法案は、その対象が広範囲にわたり、また言論・表現の自由との関係性、恣意的運用の可能性等において、さまざまな意見があること等、対象範囲の広さのために実効性を失うと考えられる側面がある。また、人権擁護法案の人権委員会は、法務省の外局に設置されるものであり、障害者差別禁止法との協会化は基本的にできないものと考える。但し、両法案の規定内容等については、慎重に検討する必要があると考える。 ○ 相談支援機関 1. 会日吉炎者の立場にこ立った支援のあり方と支援機関についてどう考えるか 【大久保委員】 虐待防止法における相談支援機関の位置づけと同様、多くの知的障害者が抱える複合的かつ困難な問題(家族の状況や経済的状況など)も含めた生活環境などを勘案し、生活を支援できるような態勢を整備する必要があると考える。 【大谷委員】 障がいといっても種別や程度、個々のニーズは様々であるから、相談者の立場に立った支援を実現するには、相当な専門的知識・経験が必要となる。 千葉県にある中核地域生活支援センターのような相談支援機関を各地で充実させる必要がある。また支援員の専門化を進めるべく、教育・研修制度が確立されなければならない。 上記権利条約に基づく「促進」機関である障がいのある人の権利委員会(仮称)も相談支援活動を行うものであり、国の機関と自治体の機関がうまく役割分担しながら権利擁護を進めていくべきである。 児童虐待について児童相談所と子ども家庭支援センターが役割分担をしながら虐待防止を進めているのが参考になる。DV防止法においても法に基づく配偶者暴力相談支援センターが各都道府県に最低1箇所置かれると共に、平成19年改正で市町村のセンター設置が努力義務とされている。 きめ細やかな支援を行うためには自治体レベルの制度創設が必須であるが、かといって自治体任せにしていては地域格差が生じることもまた必至である。よって国の機関が各都道府県に存在し、地域格差を埋めながら全国の権利擁護なべースを積み上げていく必要があるものと考えられる。 既存の相談支援機関との関係が問題となるが、既存機関の拡充と新規創設のいずれの場合も、障がいのある人が、相談窓口を選ぶのに困ることがないよう、ワンストップサービスになるような総合的な制度設計が必要である。 また障がい当事者が相談を受けるピアカウンセリング方式の相談業務の導入も検討されるべきである。 【大濱委員】 団体の長と意思決定機関の過半数を障害当事者が占める団体によって支援を行うのが良いと考える。 支援団体は、市町村ごとに設置、もしくは複数の市町村による共同設置とするのが良いと考える。 【小川委員】 救済機関との整理が今後必要とされるが、障害のある当事者が中心となった相談支援が行われる体制が求められる。 【尾上委員】 差別問題を解決するためには、既存の人権擁護機関は役に立っていないのが現状である。この理由の立つとして、権限の問題もあるが、本人の立場に立った仲裁等がされていないという点にある。人権の基準に基いて、本人の立場に立った相談体制を構築すべきである。これを、今後設置される救済機関の業務として位置づけるのか、議論が必要なところである。 【勝又委員】 当事者のエンパワメントが必要であるが、ピアカウンセラーなどの当事者を積極的に相談者に採用する支援機関を整備する必要があると思う。 【門川委員】 差別とは抽象的に生じるのではなく、個別具体的な人間関係(あるいは公的機関と私人との関係)における行為によって生じるものであり、そもそも、障害者が関わるあらゆる機関が相談支援機関として機能すべきであって、差別禁止のために相談支援機関を設置する場合には、「窓口が増える」だけとならないよう、協定程度、救済機関としての機能を有するように留意すべきであると考える。 【川ア委員】 障がい者の権利擁護の視点に立った、相談支援の専門家を養成する。 差別の問題に関し、真摯に向き合う相談支援機関が必要。 当事者、家族の参画も必要か。 【佐藤委員】 相談機関、支援機関は重層的多面的に構想されることが望ましい。公的機関も行うし、NPO等も関わり、障害者団体や家族団体なども独自に行うなど。 【新谷委員】 基礎自治体段階での相談支援機関の設置が必要と考えます。東京都の聴覚障害者の場合、区市等基礎自治体での相談支援機関の整備を図ることなく、以前にあった都レベルの相談支援機関が廃止されています。また、聴覚障害の場合、聞こえなくなったときにはまず耳鼻咽喉科に行きますが、そこで回復の見込みがないと診断されると、医療機関からは見放されます。補償器販売店に行ったり、当事者団体に相談に行ったりすることが聞こえなくなった人の自己解決に委ねられています。突然聞こえなくなって心理的に動揺している人に自己解決を強いることは、実質的な相談拒否です。医療機関、聴覚言語士、ソーシャルワーカー、補聴器技能者、当事者団体などの参画した地域での相談支援ネットワークの構築が必要です。 【関口委員】 協定の権限を持つ、アドボケイト(支援者)を法に位置づけて導入すべき。 障害当事者団体がアドボケイトへの関係者の苦情を受けた場合、所要の是正措置をとる事が出来るものとする。 また団体訴権も障害当事者団体に認めるべきである。 【竹下委員】 人権救済委員会に相談部門を設置し、障害のある人による相談会支援が行われるようにすることが望ましい。 【土本委員】 仲間たちの差別に怒りをもって一緒に考えてくれる「人権」意識のある人たち。 「お金がもらえるからやる」ではダメ。 【堂本委員】 相談支援機関は、障害のある人が差別や権利侵害を受けたときに、身近な地域で気軽に相談でき苦情を訴えられる窓口が必要である。 千葉県では、個別事案解決のための仕組みを検討した結果、まず身近な相談窓口で関係者間の調整等を図り、より専門的な対応が必要な場合に県に設置する委員会が助言・あっせんをするという仕組みを採用した(下図参照)。 身近な相談員として、630人を超える地域相談員を委嘱するとともに、16箇所に障害者差別に関する相談窓口を設置し、相談活動の調整役として広域専門指導員を配置している(広域専門指導員は、障害に対する十分な理解を有する者であることが必要であることから、社会福祉士など障害のある人の支援に長年携わってきた者等を任命することとしている。)。  ★(対象事案解決の仕組み)図表 【中西委員】 支援機関は障害をもつ人の立場に立ち、相談を受け、必要に応じて代理人として、任意の交渉や行政救済手続、司法手続により問題を解決する機能を明確化するために「障害者権利擁護センター」として位置付ける。 障害者権利擁護センターは各都道府県に一つの割合で開設され、その資質を有する団体が委託され運営するものとする。またそこには、障害をもつ人および社会モデルの概念の理解がある専門家が複数職員として配置されるよう、予算が割り当てられなければならない。 各相談員および支援機関は、その取り組みに関して定期的に評価を受けるような評価システムを導入する。 ピアカウシセラー、ピアサポーターはすでに①権利擁護、権利意識の確立、②自己信頼や自信の回復、③地域生活に必要な情報の収集、④自立生活全般に必要な精神的、物理的技能の各分野での支援を行う訓練を受けている。支援機関で彼らを有効なリソースとして活用すべきである。 【長瀬委員】 都道府県と政令市ごとに、障害者の相談を受ける機関を設置するものとする。その理事会の過半数は障害者とするほか、職員採用に当たっても障害者が不利にならないように配慮するものとする。 【久松委員】 不当な差別や取り扱いで不利な立場にいる障害者は障害者の数と同じと言ってもよいのではないか。適切な相談機関や支援機関を保障することが法施行の前提である。行政から独立した機関とするかについては障害を持つ市民が利用しやすい場となるかどうかで検討していく必要がある。 また、障害種別に応じたきめ細かい相談会支援体制が必要である。例えば、現行の聴覚障害者情報提供施設、視覚障害者情報提供施設等を人権擁護機能を付加した総合的な機関として各関係機関(例、救済機関)との連携強化を図ることができるよう整備する必要がある。 【松井委員】 障害者が合理的配慮の否定も含め、職場において不利な取り扱いやハラスメントを受けた場合の相談支援機関としては、①職場内での支援の仕組みと、②職場外の支援の仕組みが考えられる。 ① については、障害者雇用促進法第79条で5人以上の障害者を雇用する事業主は、「障害者職業生活相談員」の配置が義務づけられているが、同相談員は、どちらかといえば、企業サイドから障害従業員の支援を意図したもので、かならずしも障害従業員の立場に立ち、その権利を擁護することを意図したものではない。ドイツの社会法典第9編「障害者のリハビリテーションと参加」(第45条および96条)に基づいて制度化された重度障害者のための利益代表が参考となろう。この利益代表は、障害従業員による選挙で選ばれ、労働条件や労働環境などの改善について企業サイドと交渉する権限を与えられている。 ② のひとつとしては、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づき、都道府県労働局長による助言・指導の詩度と紛争調整委員会によるあっせん制度が設けられている。このあっせん制度を権利救済のための一手段として利用することも可能と思われる。事件ごとに3名のあっせん委員が任命されるが、障害者の権利救済にかかる事件については、同委員会が障害者の立場にたったあっせんを行えるよう、その委員のひとりとして障害団体の代表などをくわえることがルール化されてよい。 【森委員】 相談支援機関の設置は大変重要なものであり、どのような機関で行うかが、法を実効性のあるものにできる大きなポイントとなる。そのため、同法の適正な実施を任務とする機関、例えば障害者権利委員会(仮称)の業務とすべきと考えるとともに、相談支援機関においては、ピアサボートが大きな役割を担うと考えられることから、障害当事者(団体)が大きく関わる必要があると考える。 ○ その他 【大久保委員】 「差別禁止法」の名称については、今後検討する必要があると考える。 機会均等のため、また、被害者を保護する法というだけではなく、障害のある人も主体的に地域社会で共に生きることを後押しするための法という視点を含めた名称にする必要があるのではないかと考える。(「差別禁止」名称は、障害者を「被害者」として強調している印象を受けるのではないか。) 【大濱委員】 地域生活について、差別禁止規定のほか、障害者の権利規定として以下の事項を書き込むべきだと考える。 ▼どこで誰と生活するか(アパートで1人暮らしするのか、家族と同居するのか、施設入所なのか、など)を選択する権利を有すること ▼前項の権利を確保するために、パーソナル・アシスタンスを含む地域支援サービスを受けられる(24時間など長時間の介護が必要な場合などであっても必要な介護をすべて受けられる)権利を有すること ▼障害者が希望しないサービスの利用を強要されない権利(たとえば訪問系サービスの利用を希望しているのに、通所施設、短期入所、ケアホームなどの利用を強要されない権利)を有すること 【小川委員】 ①手話の言語化 「条約」に基づき、手話を言語と位置づけることが求められる。教育や社会活動の様々な場面において手話を使用する権利を認める必要がある。 ②コミュニケーション保障の明文化 手話、指文字、点字、触手話、指点字、要約筆記、筆記、手のひら書き、身振り、物のサイン等のさまざまなコミュニケーション手段があるが、これらのコミュニケーション保障を明文化すべきである。 ③強制医療の禁止 強制医療は基本的に禁止されるべきである。 ④挙証責任について 民法上の損害賠償請求は、被害の存在の証明を原告が行わなければならないが、差別行為を証明するのは現実的に非常に困難な場合が多い。差別行為を是正し、無くすという差別禁止法の目的の達成が難しい。当該行為が、障害を理由にした差別ではない、或いは正当な事由がある、もしくは、合理的配慮を行わない場合に過重な負担があるなどの挙証は、差別行為を受けたと主張する者の相手方がこれをしなければならないとすべきである。 【尾上委員】 (1)法の適用範囲 差別禁止法は「障害に基く」差別を禁止する法律であり、適用範囲については、「全ての障害者」のみならず、過去に障害をもつという経歴を持つ者、障害があると看做され差別を受けた者、顔面の変形等から社会参加を妨げられている者も含めるべきである。また、障害者の関係者も適用されるべき、と考える。 (2)挙証責任について 現行民法上の損害賠償請求は、被害の存在の証明を原告が行わなければならないが、差別行為について、その存在を証明するのは現実的に非常に困難な場合が多く、差別行為を是正し、無くすという差別禁止法の目的の達成が難しい。 差別行為が、障害を理由にした差別ではない、或いは正当な事由がある、もしくは、合理的配慮の欠如において、不釣合いな又は過重な負担をともなうものであることに関する主張の挙証は、差別行為を受けたと主張する者の相手方がこれをしなければならないとすべきである。 【門川委員】 法令上の差別ともいうべき、欠格条項及び差別的条項の撤廃を目指すべきである。障害者に関わる欠格条項がある現行法制度について、国内法が障害者権利条約に違反・抵触しないよう、改正・廃止すべきであり、これは差別禁止法制定の取り組みと連動すべきである。 【関口委員】 たとえば障害者が生活保護受給中であると、たとえば自立支援法について不服申し立てすると生活保護のほうから嫌がらせを受けたりする。また精神病院や施設入所者が差別を訴えることは非常に困難なので、団体訴権を差別禁止法に入れることは不可欠。 【竹下委員】 障害を理由とする差別禁止法を特別立法として制定することなく、分野ごとに差別禁止規定を設けることは絶対に避けるべきである。その理由は以下のとおりである。 (1)各規定ごとに解釈運用上のずれが生ずることは避けるべきである。 (2)谷間や隙障ができる事態は不完全な立法であって、絶対に避けるべきである。 【堂本委員】 1 差別禁止法では、個別の差別事案の救済を図る仕組みを設けるとともに、制度や社会慣行等の問題を解決していく仕組みを設ける必要があると考える。 千葉県では、障害のある人及びその支援者、様々な分野の事業者、障害者施策や人権擁護に関する有識者、県の職員で構成する「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり推進会議」を設置し、こうした課題の解決に向けた取組みを推進している。 (参考) 障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例第29条  1 県は、障害のある人に対する理解を広げ、差別をなくすため、障害のある人及びその支援を行う者、次条第一項に規定する分野における事業者、障害のある人に関する施策又は人権擁護に関し専門的知識を有する者並びに県の職員からなる会議(以下「推進会議」という。)を組織するものとする。  2 推進会議の組織及び運営に関し必要な事項は、知事が定める。 2 差別禁止法では、障害のある人に対する理解を広げるための仕組みを設ける必要があると考える。 差別の解消だけを強調すると、「差別をした側」と「差別をされた側」の対立構造を生み出してしまうおそれがある。差別の解消は重要であるが、それとあわせて、障害のある人に対する理解を広げていかなければ、真の意味での共生社会は実現できない。 千葉県の条例では、障害のある人に対する理解を広げ、差別をなくすための民間の取組みについて、県民への情報提供することを規定している。 (参考) 障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例第32条 知事は、障害のある人に対する理解を広げ、差別をなくすための民間の取組について、県民への情報の提供その他の必要な支援をすることができる。 【中西委員】 法律を効果的に実施していくうえで、障害を持つ人の立場に立って権利を支援する障害当事者団体、親の会、NPO団体、公益法律事務所等の存在は重要である。国によるこれらの団体、機関の育成をはかり、経済的助成を行うことも差別禁止法に含むものとする。 第4回推進会議 差別禁止に関する議事要録抜粋 議事 差別禁止法について 1 法制度創設の必要性 (あらゆる分野を包括する差別禁止法の必要性についてどう考えるか・・・主な書面意見) ○ 法的に差別を禁止すべきことに異論はなく、差別禁止に特化した独立の法律による規定を求める(18名、ほぼ全員が同趣旨)。 2 差別の定義 (総則的定義をどのようにするか・・・主な書面意見) ○ 差別に「直接差別」「間接差別」「合理的配慮を提供しないこと」の3つの類型が含まれるべきとの点で意見は一致。この3類型を総則的な規定に含めるべきとの意見もあり(14名)。少数意見として、間接差別と合理的配慮が提供されない場合の区別が困難、もしくは、独自の定義を述べる意見もあり(全体として19名)。 ○ 差別禁止における障害の定義について、過去や将来の機能障害、みなされた障害なども含めるべき。社会モデルの考え方に準拠すべき(いずれも意見は一致し、異論なし)。 (個別分野別定義をどのようにするか・・・主な書面意見) ○ 裁判規範性を保つため、個別分野別の定義を設けるべきという意見が多数(15名)。少数意見としては、現状では困難ではないか、個別化することで抜け穴を生じないか等。しかし、これらは、反対意見ではなく、なんらかの手当てがあれば個別分野ごとに定義できるとの趣旨と考えられる(全体として18名)。 (抽象的な例外規定をどう明確化・限定化するか・・・主な書面意見) ○ 障害者の権利条約では、差別の例外として、積極的是正措置や合理的配慮が「不釣り合いな又は加重な負担」を伴う場合と規定。一般的には、正当な理由がある場合、生命身体に危険が生じる場合等が想定できるが、抽象的であるため、拡大解釈によって例外が多くなるおそれもあり、工夫が必要(東・・・解説的コメント)。委員の意見としては、例外を設けるべきではないという意見もあるが、多くは例外を規定することを前提にしている。積極的差別是正措置だけを論じる見解、例外についての挙証責任に触れる見解、「不釣り合いな又は加重な負担」という抗弁が適用されない公的分野が存在するとの見解もあり。抽象的な例外規定を明確化するためには、条文自体を具体的な文言で書くとともに、ガイドラインや規則などで明確化することが重要であるとの指摘もあり。この点については、議論が十分に整理されておらず、さらに議論が必要(東〔計15名の書面意見を踏まえた総括〕)。 3 個別分野 (生活分野として、いかなる分野を規定するべきか・・・主な書面意見) ○ あらかじめ例示した、地域生活、自己決定と法的能力、移動、建物、利用、情報保障とコミュニケーション、教育、就労、医療およびリハビリテーション、性、政治参加、司法手続の他に、社会参加、行政サービスと行政手続き、経済会文化サービス、不動産取引、契約、福祉サービス、商品及びサービスの提供、出生・婚姻・出産、資格取得、文化生活・レクレーション、スポーツヘの参加、観光を分野として指摘する意見。法の抜け穴や、漏れが生じないような工夫を求める意見。虐待を規定するべきとの意見など(全体として18名)。 4 関係個別立法との関係 (差別禁止に抵触する立法の改廃についてどう考えるか・・・主な書面意見) ○ 差別禁止に抵触する法律を改廃することについては、異論はなし。問題は、差別禁止法の制定と同時に改廃するか、制定後、改廃のための手段を考えるべきか。その準備として、差別禁止に反する欠格条項をはじめとする法律の洗い出しが必要になる。差別禁止法において、同法が他法に優先するとの規定や、差別禁止に抵触する他法の規定の効力を停止させるという条項を規定すべきとの意見もあり(全体として19名)。 (合理的配慮の具体化に向けた改正についてどう考えるか・・・主な書面意見) ○ 既存の個別の法律と差別禁止法との関係については、2つの側面が問題となる。一つは、(前述の)差別に該当する規定をいかに改廃させていくかという問題。もう一つは、既存の法律(これらには合理的配慮の規定が原則として書かれていない)に合理的配慮の規定をどのように書き、差別禁止法との関係をどう整理するかという問題(東・・・解説的コメント)。委員からの意見には、個別法にも必要であれば盛り込むという意見と、可能な限り差別禁止法本体に書き込むという意見の両方がある(全体として19名)。 (行政救済機関の設置についてどう考えるか・・・主な書面意見) ○ 独立性を持ち、かつ、個別救済のために、協定の権限をもつ行政救済機関の設置が必要(18名、ほぼ全員が同趣旨)。[当該救済機関の独立性の意味、必要な権限の内容、相談に始まり、調整、助言、斡旋、調停、審判などの救済の在り方、単独の機関を創設するのか、既存の類似機関があればそれを活用するのか、国レベルや県レベルのみならず市町村レベルまでこうした機関を設置すべきか、等々、さらに議論を詰める必要がある(東・・・総括的コメント)」。 (人権侵害救済法案との関係についてどう考えるか・・・主な書面意見) ○ 新たな人権侵害救済法案(人権侵害による被害の救済及び予防等に関する法律案要綱、2005年に民主党が提出)の必要性には異存はないが、意見は2通り。最も多いのは、障害に基づく差別の固有性のため、一般的な救済制度ではなく、差別禁止法制の中で救済機関を考えるべきという意見。 次に、パリ原則に則った新たな人権擁護(救済)機関が速やかにできるのであれば、窓口を一般化すべきという意見。後者の場合、障害に固有の問題をどう反映できるかが課題となる(全体として17名)。 5 相談支援機関 (相談者の立場に立った支援のあり方と支援機関についてどう考えるか・・・主な書面意見) ○ 支援機関の組織は、行政救済機関の一部として設置するのか、障害当事者団体やNPOが独自に、もしくは、自治体と共同して設置する形にするのか、あるいは既存の社会資源による地域ネットワークを構築すべきなのか、という論点。就労に関しては、職場の内と外の両方に支援機関が必要なのではないか。人的な面では、専門的知識を有する専門家の配置だけでなく、ピアカウンセリングやエンパワーメントの手法を取り入れることができる当事者や家族の参画が極めて重要であるとの指摘もある。整備・配置は、国レベル、都道府県レベル、広域的な(生活圏)レベル、市町村レベルといった段階が想定されるが、基本は、身近な場所での相談と支援の仕組みを構築すること。 また、地域間格差をなくすための最低限度の基準を提示する必要があるとの意見など(全体として19名)。 ○ (発言)雇用の問題も含めて、実効性をどのようなプロセスでどのように担保するのか。差別禁止法を個別に立法した場合、既存の法体系との関係を整理する必要性が生じてくる。例えば、雇用の分野一つをとっても、多面的な検討が必要。法としての実効性、性格づけ、既存の法体系との関係性をどうやってクリア会していくかが重要。 ○ (発言)障害者差別禁止法が何故必要なのか。第一に、裁判でつかえる裁判規範性を持つべきとの意見が多く、私も賛成。第二に、裁判所で差別が認定されるとことによる社会教育的視点。第三に、人権侵害に関わる救済機関ができたときの行動のガイドラインとなるという点。なお、用語としては、(これまでの経緯を想起させる)「人権擁護法案」という用語ではなく、「人権侵害救済法」、または単に「人権救済法」という用語を使うべきではないか。 ○ (発言)裁判規範性のある差別禁止法とした時、最後に問題になるのが刑罰を科すかどうかという点。女性差別撤廃条約に関係して、男女雇用機会均等法における罰則規定が議論された際、経済団体の強い抵抗があり、努力義務になった。2回の勧告の後、1997年に禁止規定になったが、今でも罰則はない。法律ができても実効性において十分ではない。差別禁止法では、罰則を設けるか真剣に考えて頂きたい。また、女性への複合的差別について、規定を設けて欲しい。重要性に鑑み、障害者基本法と差別禁止法の両方に重層的に規定してもいいのではないか。 ○ (発言)罰則規定は必要。特定の生活様式を強制されないことは、基本的権利。 ○ (発言)2002年の障害者基本法改正では、差別禁止条項が入ったが、議論になった。差別禁止法では、刑事罰、刑事法との関係は、特に慎重な検討が必要。差別禁止法に実効性を持たせるための知恵を出すことが必要。合理的配慮について、特に議論が必要。法令に加え、ガイドラインを作成し、同時に、権利擁護委員会のようなものを設置するべき。救済機関については、司法との関係、権利擁護機関との関係を整理するべき。 ○ (発言)すべての差別を禁止するための公民権法が将来的には必要だが、まずは障害者差別禁止法が必要。カナダの人権委員会、アメリカの雇用機会均等委員会の状況を見ると、障害者問題の案件が多い(カナダは3〜4割、アメリカは、2割)。障害者の生活の各領域における差別問題に対応するには、高い専門性が求められる。合理的配慮や過剰な負担についての考え方を具体的に運用するための政策指針の形成と、それを使いこなせる担当者の養成には、かなりの費用と時障がかかる。このため、早く障害者差別禁止法をつくって、運用のための環境整備に力を注いでいく必要がある。 ○ (発言)制度を作ったときに、実効性を担保することは重要。刑事罰以外に、行政機関からの助言、指導、勧告、企業名公表制度、または、いわゆる行政罰として過料なども含め、どのような選択肢があるのか、議論を深めていく必要がある。 ○ (発言)市役所は、身体障害の人は募集しているが、知的障害、精神障害は募集しない。理由は、「どういうことをしてしまうかわからない」と言うが、差別ではないか。学校の問題もある。自分は、特殊学級(当時)に行けと言われ、小学校3年生から説明なく行かされた。 ○ (発言)条約6条は、障害のある女子の複合的差別について規定している。日本は1994年のカイロ国際開発人口会議を経て、96年に母体保護法に改正されるまで優生保護法があり、障害者への人口妊娠中絶を強制する条項が存在していた。性行為、妊娠、出産を禁止や制限、強制されないこと、リプロダクティブ・ヘルスの権利を障害があってもなくとも、一人の女性として自己決定できるようにするべき。 第22回推進会議・資料1、2 「障害者基本法の改正に関する条文イメージ素案(総則関係部分)」に関する意見 2. 定義 4. 差別の禁止 2. 定義 <条文イメージ> (1)障害の定義を、身体障害、知的障害又は精神障害その他の心身機能の損傷とすること。 (2)障害者の定義を、障害があり、かつ社会における様々な障壁との相互作用により、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者とすること。(現行法第2条関係) 【尾上委員】 (結論) たたき台(1)の「障害」を、「機能障害」とした上で、当日述べた意見の通り、「身体的障害、知的障害、精神障害」など、障害者権利条約第1条の書きぶりにならい「〜的」を入れる。 それに伴い、(2)を、「前項の機能障害を有し・・・」と変更する。 (理由) 「障害者権利条約(以下、権利条約)」の英語の原文では、機能障害をあらわす「Impairment」と表記するとともに、機能障害等によってその人の生活や行動が制限・制約されることを「Disability」と表記している。 これは、障害者の社会参加の制限や制約の原因が、個人の属性としての「Impairment」にあるのではなく、「Impairment」と社会との相互作用によって生じるものであることを示している。そして、その表記として使用されているのが「Disability」である。 そうした「Impairment」と「Disability」の区別をふまえて、できるだけ社会モデル的な定義とする必要があるから。 【佐藤委員 1】 (結論) この法律において障害とは、国際生活機能分類(ICF)が示す機能障害(構造障害を含む)、活動制限(活動障害)および参加制約(参加障害)の総称である。 (理由) 「障害」という言葉は、10月12日の第21回推進会議の資料1(総則部分の条文イメージ素案)だけみても数多く使われている。従って、この言葉を使うのか、別な言葉を使うのかの検討の余地はあるが、「障害」の定義はなくし「障害者」の定義のみですませるという意見には無理があろう。  条文イメージ素案の1の「目的」や8の「国民の責務」では、「障害の有無にかかわらず」、3の「基本的理念」では「障害の種類に応じた意思疎通の手段」、10の「施策の基本方針」では「障害の種類と程度」となっている。 これらは「障害」=(条文イメージ素案の表現を使えば)「心身機能の損傷」の意味であり、権利条約やICFの表現を使えば機能障害である。なお、ICFではより詳しくは「機能障害(構造障害を含む)」(厚労省訳)とされる。 さらに4の「差別の禁止」では「障害を理由とする差別」という表記がある。ここでの「障害」は、1,3,8,10での「障害」と全く同じとはいえない。「障害を理由とする差別」における「障害」を「心身機能の損傷」(機能障害)と理解することとした場合には、次のようなことが起きる。 すなわち、視覚障害者を差別しても「障害(機能障害)によるものではない。字が読めないことが理由だ。」と言い逃れを許しかねない。また「精神障害が不採用の理由ではない。長期の失業者であるから断った」と抗弁されるかもしれない。 この問題を解決するには2つの方法がある。1つ目はICFの障害概念の活用である。ICFでは障害を機能障害(構造障害を含む、impairment)、活動制限(activity limitation)、参加制約(participation restriction)の総称としている。わかりやすい表現を使えば、障害は機能障害、活動障害、参加障害の総称である。このような障害概念とすれば上記のような抗弁は阻止できる。 もう一つは、障害=機能障害という定義を設けつつ、「障害に基づく差別には、障害のために補装具を使用していることや活動や参加の困難があることなど、障害に関連したできごとを理由とした差別が含まれる」という規定を設けることである。 しかしこれら2つの方法をとってもなお、障害者権利条約の障害の概念との根本的な違いはどうにもならない。 条約に基づけば、障害の種類とは参加障害の分野の違いであり、労働の障害、スポーツの障害、住宅確保の障害、情報入手の障害などと種類が列挙される。これに対して条文イメージ素案の障害=機能障害(心身機能の損傷)という定義では、障害の種類は視覚障害、肢体不自由、知的障害等々となる。 こうした全く異なる障害の定義を条約と基本法といういずれも実体法の上位に位置づけられる法律に設けることは、法律の実施過程で大きな混乱が生まれることになろうし、論理性という点から国民の信頼を得にくくするものであろう。 この(1)の提案は、権利条約の(社会モデル的な?)障害の概念を含みつつ、かつ現状の日本の法律の定義や人々の障害理解である障害=機能障害をも継続する、統合型の定義である。従来通り障害=機能障害とすれば、新障害者基本法は医学モデルを変えないばかりか逆にそれを明確に定義し固定化したと批判される。権利条約の定義そのものを採用すれば、今度は機能障害が含まれずにいろいろな混乱と不利益が生じる。 ICFの活用については旧政権時代の障害者基本計画(2002年策定)でも、「WHO(世界保健機関)で採択されたICF(国際生活機能分類)については、障害の理解や適切な施策推進等の観点からその活用方策を検討する。」としてきたものであり、唐突なものとはいえない。 【佐藤委員 2】 (結論) この法律において障害者とは、身体的又は精神的な機能障害があり、かつ社会におけるさまざまな障壁との相互作用により、日常生活又は社会生活における相当な制限を受ける者とする。 (理由) 障害者権利条約は、障害者には、障壁と相互作用して参加障害を生み出す可能性のある機能障害のある人が含まれるとしている。この考え方をふまえた定義の提案である。 ただし単に機能障害としたのでは理解されにくい面があり、かといって10月12日の条文イメージ素案のように「身体障害、知的障害又は精神障害その他の心身機能の損傷」としても、「身体障害、知的障害、精神障害又は感覚障害その他の心身機能の損傷」としても、具体例を列挙すればするほど列挙されないタイプの機能障害が無視される危険性が生じてしまう。 なお、権利条約が身体支知的・精神・感覚の4タイプを列挙しているので、日本でもそのまま採用をとの意見に一理はあるが、日本では一つの法律上の区分となっている発達障害が宙に浮きかねない。 また、英語圏では一般に慢性疾患にともなう障害が身体障害に含まれ、感覚障害が身体障害に含まれるか否かあいまいであるためにしばしば身体障害または感覚障害(physical or sensory disability)と表現されるのに対して、日本では歴史的に身体障害に肢体不自由と感覚障害が含まれるのが一般的であり、内部障害や慢性疾患に伴う障害が身体障害に含まれるかどうかの理解があいまいであるという、ねじれともいえる表現上の差異がある。 (2)のように「身体的又は精神的な機能障害があり・・・」と幅広いイメージを示すのが最善であり、これは1975年の障害者権利条約で「身体的又は精神的能力の不全のために・・・」としていることとほぼ同じである。 ICFの「機能障害」の概念を採用することによって、従来「谷間」に置かれがちであった各種内部臓器機能の障害(ICFのb4「心血管系・血液系・免疫系・呼吸器系」、b5「消化器系・代謝系・内分泌系」、b6「尿路・性・生殖系」)が含まれることになり、また、「痛みの感覚」(b280)、「易疲労性」(b4552)、「皮膚及び関連部位の構造」(S8、火傷の痕などを含む),「運動に関連した構造」(s7、小人症などを含む)も含まれる。 【中西委員】 (結論) (2)原文に「環境」を追加し、「様々な障壁と環境との相互作用」とし、「相当な」を削除した単純に「制限を受ける」とする。 (理由) たんなる障壁との相互作用ではなく、人ごみや、込み合った公共交通機関、緊張する雰囲気などの環境によってパニックや混乱が生じるので環境要因を追加すべきである。 「継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受けるもの」との表現は、「相当な」の意味の解釈の仕方によって、障害者として認定されない者を産み出す結果となる。出来る限り障害の範囲を広くとるために「相当な」を削除した。これで行政側に障害者でないことを証明する義務が発生することになる。原文では証明責任は障害者本人に帰することになる。 【大濱委員】 (結論) (1)障害の定義を、身体障害、知的障害又は精神障害身体的障害、知的障害、精神的障害又は感覚的障害その他の心身機能の損傷とすること。(現行法第2条関係) (理由) 権利条約第1条を踏まえて、身体障害のなかから視覚障害や聴覚障害を抜き出して明確に位置づけるため。 また、ここで定義する障害(impairment)が、身体障害者福祉法に基づく身体障害、知的障害者福祉法に基づく知的障害、精神保健福祉法に基づく精神障害を限定列挙するものではないことを明確にするため。 【尾上委員 1】 (結論) 障害の定義について、「身体障害、知的障害、精神障害(以下略)」とされているが、「身体的障害、知的障害、精神的障害」など、権利条約第1条の書きぶりに従って、「〜的」という文言を入れるべき。 (理由) 権利条約第1条の「身体的障害」を身体障害者福祉法における「身体障害」と同一と捉えられ、狭く解釈される恐れがあるため。 【尾上委員 2】 (結論) 大谷委員の「共生社会」の定義の新設に賛同。 (理由) 「分け隔てなく」「合理的配慮その他必要な支援の充足を通じて」全ての障害者が地域で生きていくことが出来るという、めざすべき社会のあり方を明示すべきだから。 【佐藤委員 1】 (結論) 「心身機能の損傷」(機能障害)として「障害」を定義するのは、障害者権利条約の障害の概念と矛盾するのでさけるべきである。 (理由)  権利条約は、障害(disability)と機能障害(impairment)とを明確に区別しており、これと矛盾すべきではない。 「(e)障害が発展する概念であることを認め、また、障害が、機能障害を有する者とこれらの者に対する態度及び環境による障壁との間の相互作用であって、これらの者が他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げるものによって生ずることを認め、」「第一条 目的(後段)障害者には、長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害であって、様々な障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げ得るものを有する者を含む。」(いずれも政府公定訳) 【佐藤委員 2】 (結論) 「障害者の定義」の条文イメージの中の「継続的に」を削除した方がよい。 (理由) 変動する、間欠する場合が想定されないおそれがある。排除したいのは風邪を引いたなどの一時的な場合であるので、それであるなら「相当な制限」で足りる。継続的、相当な、と二重のハードルは不要。 【新谷委員】 (結論) 障害者権利条約が「感覚的な機能障害」を加えていることから、「感覚的機能障害」を加えるべき。 (理由) 感覚機能の障害は従来身体機能の障害に含めて考えられてきたが、感覚機能を別だしすることでコミューケーション不全など感覚障害特有の問題を明確にできる。 【関口委員】 (結論) 基本法はなるべく条約に準拠すべきである。 障害者と障害の使われる範囲を考えて、定義するべき (理由) 短時間で検討しなければならないというのと、条約の完全履行を考えれば整合性が在る方が良い。 条約前文e)項は 障害が発展する概念であることを認め、また、障害が、機能障害を有する者とこれらの者に対する態度及び環境による障壁との間の相互作用であって、これらの者が他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げるものによって生ずることを認め、 となっており立方で障害者は広条目的で 障害者には、長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害であって、様々な障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げ得るものを有する者を含む。 である。 障害による差別は第二条定義で 「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。 となっており、障害による差別と障害者本人に対する差別は違うので違う概念規定が必要である。 【竹下委員】 (結論)  障害の定義として「身体障害、知的障害または精神障害その他の心身機能の損傷とする」とすべきではなく、「心身の機能の損傷や特性によって日常生活及び社会生活において困難を有する者」とすべきである。 (理由) 身体障害、知的障害及び精神障害の定義そのものも明確とは言えないし、議論もあるところである。 また、障害の定義を社会モデルに切り替えるべきであることを踏まえた場合、そうした例示は障害者の範囲を狭めるおそれが強いからである。 4. 差別の禁止 <条文イメージ> (1)何人も、障害を理由とする差別(障害者が、障害者でない者と実質的に平等に活動することを可能とするため、個々の場合に必要となる合理的な変更又は調整が実施されないことを含む。以下同じ。)その他の権利利益を侵害する行為をしてはならないこと。(現行法第3条第3項関係) 【中西委員】 (結論) 括弧内に「またその場合に均衡を失した又は過度の負担を課さないこと」を追加し、「個々の場合に必要となる合理的な変更又は調整が実施されないこと、またその場合に、均衡を失した又は過度の負担を課さないことを含む。以下同じ。」 (理由) 何人も障害を理由とする差別を行ってはならないことは規定すべきであるが、その場合に均衡を失くした過度の負担を課すべきとは思わない。差別禁止法を、実効あるものにするためには、経済的な過度の負担を企業などに課すことはその実効性を損なうものである。ただし行政に関してはその限りではないと考える。 【遠藤オブザーバー】 (結論) 基本法としての位置づけを踏まえた規定とすべきである。過度の負担のあり方を含めて差別禁止の類型や定義など、予見可能性を担保できるような具体的な議論が今後求められており、設置予定の差別禁止部会(仮称)での議論に委ねるべきであると考える。 【大濱委員】 (結論) (1)何人も、障害を理由とする差別(障害者が、障害者でない者と実質的に平等に活動することを可能とするため、個々の場合に必要となる合理的な変更又は調整が実施されないことを含む。以下同じ。)その他の権利利益を侵害する行為をしてはならないこと。(現行法第3条第3項関係) (2)前項に掲げる行為のうち、女性である障害者、障害児及び重度障害者(障害者のうち障害程度が重い者を言う。)等の障害とその他の属性による複合的な差別を受けやすい者に対する障害を理由とする差別その他権利利益を侵害する行為については、特にしてはならないこと。(新設) (理由) 女性、障害児、重度障害者などの複合的な差別を受ける障害者の問題を強調するため。 たとえば重度障害者については、ALS患者等の医療的ケアを要する最重度障害者などでは、社会的入院・入所を余儀なくされたり、尊厳死を選択するように圧力を受けたりする等、非常に差別的な状況に置かれているのが現状である。 【新谷委員】 (結論) 間接差別、介助者・家族などへの差別を加えるべき。 (理由) 差別概念の明確化のため。 【関口委員】 (結論) この条文は障害者差別禁止法を担保するものと考えるが、とすれば極めて不十分、不完全である。 (理由) 条約に出てくる、 「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。 ならば精神障害者関連の差別を全て含むと思うが、たたき台では、その多くが抜け落ちるのではと、危倶するから。 【竹下委員】 (結論) 障害者権利条約2条に忠実な規定とするか、同条約2条を十分に投影した規定とすべきである。 (理由) 差別の要素としては不利益取扱いと合理的配慮義務だけではない。「区別」もまた差別であることを忘れてはならない。アメリカで長年にわたり黒人差別が行われてきた過程で「equal but separate」が温存されてきたからこそ、その克服が大きな課題となっていたことを考えれば、必要性ないし合理性のない区別は差別であることを重視すべきである。 また、権利条約2条が効果主義を採用していることも重要である。すなわち、差別の是正や救済にあたり、差別者の主観的要件を問題とすることなく、結果として差別が惹起されている場合にはその救済が必要不可欠である。 【松井委員】 (結論) 意味としては実質的には変わらないが、障害者権利条約(2009年政府仮訳)で用いられている「合理的配慮」という表現を使ったほうがよい。 (理由) 「合理的配慮」は、こなれた日本語としてはなじみにくい表現かもしれないが、障害者権利条約第2条で、「均等を失した又は過度の負担を課さないもの」という条件も含め、定義されているので、それを定着化させる意味でも、その表現を使うのが、適当であろう。 【森委員】 (結論) 障害者差別禁止にかかる条項については、これまでの議論のなかでも述べた通り、障害者差別禁止法の制定への道筋として、附則等で法制度の措置をするよう明記すべきと考える。 【遠藤オブザーバー】 (結論) 創設予定の障害者差別禁止法(仮称)をはじめ他の既存の法律との関係を整理しつつ、議論を深めることを基本とすべきである。その上で、合理的配慮の提供が行われない場合の規定については、かっこ書きで明記するのではなく、条文をかき分けるべきであると考える。 (理由) 合理的配慮については、影響度合いが大きい新しい概念であり、周知を十分に図って国民の理解を得る必要がある。 <条文イメージ> (2)国は、障害を理由とする差別の防止に関する普及啓発を図るため、障害を理由とする差別に該当するおそれのある事例の収集、整理、及び提供を行うものとすること。(新設) 委員からの意見なし 第22回推進会議 議事要録抜粋 「障害者基本法の改正に関する条文イメージ素案(総則関係部分)」に関する意見 2. 定義 4. 差別の禁止 (「障害、障害者の定義」について・・・主な書面意見) ○ 障害の定義をやめて機能障害の定義を設け、障害者の権利条約の書きぶりに改めてはどうか。 ○ 障害者権利条約の観点から、国際生活機能分類に基づいて、障害は構造障害を含む機能障害、活動制限及び参加制約の総称と定義すべきだ。 ○ 条文イメージで障害者の定義として「障害があり、かつ社会における様々な障壁との相互作用により継続的に日常生活または社会生活に相当の制限を受ける者」とあるのは、「障害者とは身体的または精神的な機能障害があり、かつ社会におけるさまざまな障壁との相互作用により、日常生活または社会生活における相当な制限を受ける者」とすべきだ。 ○ 「様々な社会障壁との相互作用」は「様々な社会的障壁と環境との相互作用」とし、「相当な」は削除すべだ (その他・・・主な書面意見など全体を通じて) ○ 地方モニタリング機関について、地方委員会はモニタリングのみでなく施策推進の役割もあるため、自治体への勧告に加えその結果を中央委員会に報告し、中央委員会はそれを国連に報告する。モニタリング及び推進は条約上、国の義務なので、中央委員会は自治体に直接調査し、勧告できるようにすべきだ。 ○ 地方モニタリング機関は必要だが、地方公共団体には既にモニタリングの役割に相当する機関があるため、それらとの関係を十分に精査すべきだ。 ○ 地域で人間らしく暮らす権利などは新しい権利という側面を有するとしても、それは障害のある人の生存権及び基本的人権の保障という場面で変形したものにすぎないので、従来なかった権利を新たにつくり出すものではない。 ○ 法制上の措置(現行10条)は改正法でも残すべきだ。 ○ 障害者相談会支援部門の設置を国広地方自治体に義務づけるべきだ。 ○ 新たに「障害のある女性」「障害のある子ども」「事業者の責任」は項目を設ける必要がある。 ○ 障害者基本法の第4条に、国及び地方公共団体は障害者医療、福祉政策の格差を是正する責務を有するという趣旨を書くべきだ。 ○(発言・・・21名の弁護士名で提出した改正案の説明)「目的」で差異と多様性を尊重する共生社会の実現を目指すと明記した。「基本的理念等」でインクルーシブ社会を実現するために地域社会で生活する権利を入れた。「差別の禁止」では直接差別、間接差別、合理的排除の欠除という差別の類型を明記した。「障害のある女性」「障害のある子ども」を障害者基本法に明記すべきだ。「国の責務」「地方公共団体の責務」「事業者等の責務」「国民の責務・国民の理解」は更にきめ細かな案文が必要だ。特に合理的配慮の実現が国の責務であり、これを制度的に保障するための適切な措置と施策を講じなければならないという趣旨を盛り込むべきだ。「地方公共団体の責務」に地域で障害者の参加を得て施策を推進するという趣旨を盛り込むべきだ。「事業者の責務」に合理的配慮をすることが事業者の義務であることを踏まえ共生社会の実現に寄与しなければならない点を盛り込むべきだ。「国民の責務」と「国民の理解」を合わせて障害者が差別されることなく社会、経済等に参加できるようにすると規定すべきだ。「法制上の措置」に障害者への差別を禁止するために救済の仕組みを含む法制上の措置を講じなければならないということを盛り込むべきだ。「目的」は自立支援法を上回る条項でなければならず、そのために「共生社会をつくる」という趣旨を盛り込むべきだ。 (権利条約の合理的配慮の項で「・・均衡を失し、または過度の負担を課さないもの」とあることが逃げ道になるのではとの指摘に対して)定義としては入れざるを得ない。 ○ (発言)合理的配慮をいう以上は、常に抜け道として過度の負担などが壁になっているのは事実だ。大事なのは判断基準を提示することと、判断するのは誰かという点だ。障害者自身あるいは事業主等が判断するのか、第三者機関を設置してそこが合理的配慮義務の内容を確定できるのかがポイントになる。 ○ (発言)アメリカのADA法の大きな問題は、合理的配慮をする側を特定のサービス提供者や事業者に限定している点だ。今後、日本で取り組む場合は、合理的配慮義務を特定の事業者等だけに課すのではなくて、国や地方自治体等にも課すべきだ。 ○ (発言)精神障害者の施策は遅々として進展しない。自立支援法ができた時に、3障害一元化ということで関係者は期待したが、利用できる福祉サービスは変わらない。医療でも精神科特例という差別が残されている。精神障害者の人権を確保するために、国及び地方公共団体の責務として、障害者医療福祉施策の格差を是正する義務を明記するべきだ。医療は精神保健福祉法ではなく、医療法で別に取り組むべきだ。 ○ (発言)障害は幅広く定義しないと、障害に基づく差別を禁止する場合に救済されない障害を生みかねない。「身体的障害、知的障害、精神的障害、感覚的障害」等と列挙するのではなく「身体的または精神的な機能障害があり、かつ社会における障壁との相互作用により日常生活または社会生活における相当な制限を受けるもの」としたらどうか。機能障害と書くことで、谷間に置かれがちの各種内部臓器の障害や、痛み、易疲労性、皮膚、背の低い小人症など機能形態の構造上の障害がカバーされる。差別の禁止で国の責務として「差別に関する事例を収集して、普及・啓発を図る」とあるが、それだけでなく合理的配慮の実施及び救済機関の設置などについての国の責任や、企業などへの技術的・財政的な支援なども大事だ。障害者週間では、権利条約が国連で採択された12月13日を含めて設定するのが、啓発の意味では大事ではないか。 ○ (東室長)障害及び障害者の定義について、委員の意見に質問したい。①他分野では女性や人種といった個人の属性に係る差別を禁止する法制度になっている。障害を社会モデルの観点で定義して個人の属性プラス社会的な要因を入れた場合、「障害に基づく差別」が「不利益による不利益」というトートロジーにならないか。②社会モデルを反映するのにICFでいう「機能障害」「活動障害」「参加障害」を使うとすると、それぞれの言葉の定義が必要になる。それならば「社会における様々な相互作用により」というような表現を使ってはどうか。 ○ (発言)(上記①質問に対して)社会的不利を理由とする次の不利益を防ぐ必要がある。例えば、「私の会社はあなたが精神障害を持っているから雇用しないのではなく、あなたはここ3年間失業中で仕事ができるか不安なので採用しない」などが考えられる。トートロジーではなく、機能障害・参加の障害・活動の障害のいずれを理由にしても差別は許さないというように、カバーの範囲を広くするということだ。(上記の質問②に対して)障害者権利条約も機能障害と障害という言葉を分けて全体の理解を深める工夫をしているので、仕方のない難しさなのではないか。 ○ (発言)精神の分野ではディジーズをディスオーダーというが、インペアメントはディジーズもディスオーダーも含む。 ○ (発言)障害の定義はどのような支援を必要とするかということから出発し、差別禁止との関係は差別の原因をどうとらえるかによる。すべての場面で障害ゆえに何らかの施策の対象とするためには、おのずと障害の定義は広くなる。その結果として、場合によっては抽象的にならざるを得ない。 ○ (発言)現行基本法の障害者の定義は医学モデルで機能障害があるため生活に制限を受ける者となっており、権利条約も似たような定義をしている。なので、権利条約に基づいて生活上の支障や参加の障害なども更に(障害に)入れようということだ。 ○ (発言)参加や活動まで含めた障害を定義する必要があるのか疑問だ。障害と風邪などの短期的な疾病とは区別した上で、障害は身体的・知的・精神的に感覚的も加えた機能障害とし、後はそれぞれの場面で個別に書かざるを得ないのではないか。 ○ (発言)機能障害がないのにあるとみなされて不利益や差別を受けた場合でも、差別禁止の文脈の中では障害者とみなされるという「みなし」を障害定義に入れておくべきではないか。 ○ (東室長の整理)基本法の定義の中で「みなし」という言葉で入れるということにはならない。本体として入れるかどうかという議論をしていただきたい。 ○ (発言)JDFの障害者基本法の対案でも障害の定義について述べているので、参考にしてほしい。 ○(発言)定義はとても重要だ。障害の定義が余りに包括的だと具体的なサービスを政策化する時に個別のニーズに応じられなくなることを懸念する一方、その後の政策を幅広にとらえることもできる。また身体障害、知的障害、精神障害、または感覚障害、その他の心身機能の損傷などと例示をする場合にはそれに対応したサービスを具体化しやすいということもある。定義の内容による激変を緩和する必要がある。 ○ (発言)基本理念で権利条約19条を踏まえ、特定の生活様式を義務づけられず地域で必要な支援を得ながら自立生活を送る権利を明記するべきだ。総合福祉部会の作業チームなどでの議論を方向付ける意味でも必要だ。 ○ (発言)加えて、権利条約17条を踏まえ障害者は他の者との平等を基礎として、その心身がそのままの状態で尊重される権利を有するという点と、言語及びコミュニケーションに関する権利は考慮していただきたい。 ○ (発言)「実質的に権利を確保する」の「実質的な」は、子どもの権利条約で「実質的な利用及び享受」などと出てくる。それ以降、障害者権利条約策定の過程で実質的に保障するとは、合理的配慮や支援を通じた保障だということが明確になってきた。なので「実質的な」をやめて「合理的な配慮及び支援を通じて」と書き換える。同時に「共生社会の実現」を目的に入れて、共生社会の定義の中で「実質的な確保」は「合理的な配慮及び支援」を通じて行われるとするのがよいのではなか。 ○ (発言)日弁連から出された総則案を議論のたたき台とする必要がある。今回の定義や合理的配慮はどうしても入れたい。また情報・伝達手段という言葉だけでは不十分で、意思・情報伝達手段という言葉にするべきだ。他に、障害のある女性と障害のある子どもという項目は是非必要だ。 ○ (発言)この会議体ではこの構成メンバーの中で議論するのだから、特定の団体のものをたたき台にして議論するのは不適切である。 第25回推進会議・資料1 「障害」、「障害者」の定義を議論するにあたってのポイント 障がい者制度改革推進会議担当室メモ 「障害」、「障害者」の定義を議論するにこあたってのポイント 障がい者制度改革推進会議担当室メモ 問題の出発点 社会モデルの視点と現行法の問題点 ・ 生活上の制限の原因を身体障害、知的障害又は精神障害にこ求める一方的因果構造となっている。 ・ 社会モデルからは、社会との関わりが問題となる。 現行障害者基本法上の障害者とは、 身体障害、知的障害又は精神障害(以下「障害」と総称する。)があるため、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう。 総論的に考慮すべき視点 1、関係個別法との関係は? ・ 基本法の定義が個別法を包括するのが基本 ・ 従って、関係個別法が基本法をはみ出すのは問題であるが、ただし、見なし規定などによる取り込みは可能か? 2、障害と障害者を分けるか? ・ 現行法も一文で書いてはあるが、実質は、障害と障害者を規定 ・ 関係個別法においても障害と障害者が別個に規定 3、定義の明確性(範囲の内外をできるだけ明確にする必要性) ・ 文言の明確性(文言の内容が明確であること) ・ 文言の周知性(文言が協定の内容を持つものとして社会に周知されていること) ・ 文言の客観性(主観的判断や評価の要素がある文言は恣意的な判断になりやすい) 4、定義の仕方と範囲の広狭 定義 この法律において、●とは「なになに」をいう。 パターンの1 ●=A A (単独の要件) 例えば、障害とは心身機能の損傷である 問題点明確で、分かりやすいが、心身機能というだけで十分か パターンの2 ●=A かつB かつ・・・ (複数の要件に該当) A B 例えば、障害とは心身機能に損傷があり、社会的障壁との相互作用により、諸生活上の制限を受ける状態である 問題点 単に、機能障害があるだけでは、障害とはならないということでいいのか、ADA上の障害の一つとして「一つ以上の主要な生活活動を実質的に制約する心身のインペアメント」との定義が有した問題点 パターンの3 ●=A またはB または・・・ (いずれかの要件に該当) A B 例えば、障害とは、機能障害、活動制限、または参加制約の総称 問題点いずれかの要件だけでいいのか 5、人的要素か外部的要素か ・ 障害者の定義は、人の範囲を画する機能を果たす。 ・ 従って、障害者の定義の要素としては、人の状態を示す要素として把握すべきではないのか、 ・ 社会モデルとはいえ、人の要素を離れた外部事情そのものを入れるのは、定義を作る目的からいって妥当なのか、 ・ 社会的制約や障壁といった外部事情そのものと、その影響を受けやすい状態にあるといった人の属性とは区別すべきではないのか、 各論のポイント 議論してもらいたい論点を「・」で記述。 議論するに当たって、留意するべき点を「※」で記述。 【ポイント1】 ○ 「障害」、「障害者」 ・ 「障害」を、機能障害(impairment)と定義する(①)か、それとも、機能障害に加えて社会モデルの考え方を反映(②)させたものと定義するか。 ※「障害」を「機能障害」と定義し、「障害者」に社会モデルの考えを反映させたものと定義した場合(①)、権利条約やICF(国際生活機能分類)など、国際的な傾向との整合性をどう考えるか。 ※「障害」を、機能障害に加えて社会モデルの考え方を反映させたものと定義し、「障害者」を「障害」のある者と定義した場合(②)、例えば以下の点についてどう考えるか。 「障害を理由とする差別」という表現 「『日常生活又は社会生活に制限を受けていること』を理由とする差別」という意味になり、同義反復になる恐れがないか。 「障害の種類」という表現など 「『日常生活又は社会生活にこ制限を受けていること』の種類」という意味になるなど、意味の不明確な表現がいろいろと出てきてしまう恐れがないか。 ※議論を具体的に行うため、参考までに例示 【①のイメージ例】 障害の定義:身体障害、知的障害又は精神障害その他の心身機能の損傷 障害者の定義:障害があり、かつ社会における様々な障壁との相互作用により、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者 【②のイメージ例】 障害の定義:身体障害、知的障害又は精神障害その他の心身機能の損傷であって、かつ社会における様々な障壁との相互作用により、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態 障害者の定義:「障害」のある者 【ポイント2】 ○ 「身体障害、知的障害又は精神障害その他の心身機能の損傷」 ・ 例示の要否について ※「身体障害、知的障害、精神障害」などの例示の必要性をどう考えるか。 ※「感覚的な機能障害」を例示として追加するべきかどうか。特に我が国では、これまで、身体障害に視覚障害、聴覚障害などの感覚障害を含めて考えてきたこととの整合性をどう考えるか。 ・ 例示の仕方について ※現行基本法では、「身体障害、知的障害又は精神障害」という例示がされているが、これについてどう考えるか。 推進会議では、 「身体内障害、知的障害、精神内障害」とするべきという意見 「知的障害」を削除して「身体障害、精神障害」とするべきという意見がある。 ※ 障害者権利条約(正文)では以下のとおり Persons with disab ilities include those who have long-term physical,mental,intellectual or sensory impairments・・・ ※ 障害者権利条約(仮訳文)では以下のとおり 障害者には、長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な障害を有する者であって、・・・ 【ポイント3】 ○ 「継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限」 ・ 「継続的に」と、「相当な」の文言の要否 ※ 「継続的に」を削除する場合、例えば、一定期間で治癒する傷病を含む可能性があるがどう考えるか。 ※ 障害者権利条約(正文)では「long-term」と書かれている。 ※ 「相当な」を削除する場合、例えば、軽度なものを含む可能性があるがどう考えるか。 ・ 「周期的」「断続的」に生じる日常生活又は社会生活の制限も、「障害」に含むことを明確にするためには、どのように規定するのが良いか。 【ポイント4】 ○ 「社会における様々な障壁との相互作用」 ・ 「障壁」の具体的内容。その内容を適切に表現する文言は何か。 ・ 「相互作用」の具体的内容。その内容を適切に表現する文言は何か。 ※「障壁」の例 1.物理的な障壁(交通機関、建築物等) 2.制度的な障壁(資格制限等) 3.文化会情報面の障壁(点字や手話サービスの欠如) 4.意識上の障壁(障害者を庇護されるべき存在としてとらえる等) 第25回推進会議・佐藤委員提出資料 障害者基本法改正における障害・障害者の定義について 障害者基本法改正における障害・障害者の定義について 2010年11月5日 日本社会事業大学 佐藤久夫 前回(10月12日)提出した佐藤案 (1)この法律において障害とは、国際生活機能分類(ICF)が示す機能障害(構造障害を含む)、活動制限(活動障害)および参加制約(参加障害)の総称である。 (2)この法律において障害者とは、身体的又は精神的な機能障害があり、かつ社会におけるさまざまな障壁との相互作用により、日常生活又は社会生活における相当な制限を受ける者とする。 今回の佐藤案 (1) ―1 この法律において障害とは、身体的又は精神的な機能障害(構造障害を含む)、およびその機能障害と社会におけるさまざまな障壁との相互作用により生じた、活動制限(活動障害)または参加制約(参加障害)を意味する。 (1) ―2 この法律において障害とは、身体的又は精神的な機能障害(構造障害を含む)、およびその機能障害と社会におけるさまざまな障壁との相互作用により生じた、日常生活又は社会生活における相当な制限を意味する (2)この法律において障害者とは、前項の障害を有する者を意味する。 説明 まず、障害を定義し、障害を有する者を障害者という、とするのが素直でわかりやすい。 我が国でも国際的にも、1980年のWHO国際障害分類以降は、障害とは機能障害、能力低下、社会的不利の3つの次元からなるとの理解が定着してきている。 一方、障害=身体障害、知的障害、精神障害など機能障害とする医学モデル伝統が日本の法制では一般的で、このため法律でも地域や施設の現場でも「障害の種類と程度」などの表現はもっぱら機能障害を意味している。 これは障害者権利条約の障害の考え方と正反対であり、このままでは権利条約に照らして見直したことにならない。また制度改革とも矛盾が生じる。たとえば、6月29日の閣議決定では「障害者雇用促進制度における「障害者」の範囲について、就労の困難さに視点を置いて見直すことについて検討する」としており、機能障害以上に職業生活の困難さを重視してみるよう促している。 こうして、3つの次元からなる障害という見方を法律に規定することが適切である。同時に権利条約が強調する障壁との相互作用という理解も導入する。 なお、(1)―1はICFの表現を採用し、(1)―2は、現行基本法の規定ぶりを残したもので、実質はほぼ同じである。 第25回推進会議 障害、障害者の定義に関する議事要録案 抜粋(未定稿) (「障害」「障害者」の定義について) ○ (東室長よりこれまでの議論の整理)現行基本法は生活上の制限の原因を身体障害、知的障害、精神障害に求めており医学モデルである。これを社会モデルの視点からどう書き換えるかが問題点の出発点だ。社会的不利が何によって生じるかが医学モデルか社会モデルかの分岐になる。基本法の定義が個別関係法の定義を包括する関係にあるべきだ。ただし、差別禁止法における障害には過去の障害や将来発生するかもしれない障害、もしくは周りから障害があると見なされている状態も差別を受けるおそれがあるので含まれる場合もある。次に現行基本法と同じく、「障害」と「障害者」を分ける方法がある。今一つは、障害と障害者を別のものとして規定する方法がある。 次に定義で使う言葉についてだが、定義はそれに該当するものとしないものを峻別する機能があるので、言葉は明確であることが求められる。次に、法律は社会に周知された言葉を使う方がわかりやすい。さらに「継続的」「相当な」といった客観的に広義的に決まらない言葉は避けたほうがよい。 次に定義の仕方と範囲については、まず「障害とは〜である」と単独の言葉で規定するのがパターン1だ。例えば「障害とは心身機能の損傷である」という場合で、分かりやすいがこれだけですべての障害を吸収できるのかが問題になる。 複数の要件で規定するのがパターン2だ。例えば「障害とは心身機能に損傷があり、社会的障壁との相互作用により諸生活上の制限を受ける状態である」と、2つの要件が「かつ」で結ばれる場合、定義は狭くなり機能障害があっても障害にならない。米国ではADA上の障害が「かつ」で狭く規定されていたため、裁判を起こそうとしても機能障害だけでは障害と認定されず、訴えの利益がないとする事例が多く発生した。このため、2008年にADAが改正されている。 最後にパターン3として、2つの要件を「または」で結ぶ場合は「障害とは、機能障害、活動制限、または参加制約の総称」というように、定義の範囲は広くなる。ただ、機能障害がないが参加制約があれば障害者といえるのかという問題がある。参加制約は人種差別や女性差別の分野でもあり、障害分野に限らない。 障害者を定義するのだから人を決める表現になるが、社会モデルの視点でいうと障害はその人の中ではなく外にあるとされる。すると外部の制約が障害者を意味するというように、分かりにくくなる。 ○ (イエローカード)資料にある「一方的因果構造」の意味が分からない。 ○ (東室長)難しい言葉を使い申し訳ない。障害者が社会的に大変な目に遭う原因を、身体障害、精神障害、知的障害という個々人の内部的な問題に一方的に求めている構造になっているということだ。 ○ (藤井議長代理)知的障害のある人が就職できないという場合、企業の方が断るというように本人の外側に多くの問題があるのだが、本人の中に一方的に問題があるとイメージさせることという意味だ。 ○ (発言)見なされた障害や過去の障害などを差別禁止法に書き込むのは適切だ。基本法に全部書くと混乱するので、このような特殊な場合は個別法で規定するのがよい。基本法の障害の定義は「身体的又は精神的な機能障害(構造障害を含む)、およびその機能障害と社会におけるさまざまな障壁との相互作用により生じた、日常生活又は社会生活における相当な制限」などとしてはどうか。 ○ (発言)基本法の中に障害者差別禁止法の種をまくという意味で、障害に基づく差別の定義を入れるべきではないか。 ○ (東室長より論点の提起)1番目は障害を機能障害と定義するか、それとも機能障害に加えて社会モデルの考え方を反映させるかだ。前者の場合は障害者を社会モデルで定義するが、権利条約等国際的傾向からみて障害の定義がどうかという問題ある。また後者の場合、「障害を理由とする差別」という表現の意味が「『日常生活又は社会生活に制限を受けていること』を理由とする差別」となり同義反復になるという問題がある。さらに従来の法律では障害は機能障害としているが、基本法においてのみ社会モデルで規定することの影響も議論するべきだ。 ポイントの2番目は、障害定義の例示をどの程度書くかという点だ。現行法は「身体障害、知的障害又は精神障害」となっている。感覚的な機能障害を付け加えるべきとの意見があるが、従来は身体障害に含まれていたこととの整合性をどう考えるかということだ。また、身体障害ではなくて身体的障害とするべき、身体障害と精神障害の2つの例示に限るべきなどの意見がある。制度の谷 間をなくす観点から包括的な定義とすべきとの意見と、協定の例示は必要との意見をどうするのか。 ポイント3は「継続的」「相当な」という文言について、「継続的」は短期間で治る傷病などは省く、「相当な」は極めて軽微なものは省くために使っている。「継続的」に「周期的」「断続的」に生じる場合が含まれるのかなどがポイントになる。 ポイント4は「社会における様々な障壁との相互作用」という規定ぶり案の「障壁」や「相互作用」の意味する内容や、より適切な表現を議論する必要がある。 ○ (発言)障害と障害者の定義を分け、後者は「前項の障害を有する者を意味する」と単純な構造にしてはどうか。障害はICFを踏まえて「この法律において障害とは、身体的又は精神的な機能障害(構造障害を含む)、およびその機能障害と社会生活におけるさまざまな障壁との相互作用により生じた、継続的又は断続的な日常生活又は社会生活における制限を意味する」とするのが適当だ。 室長提起の4つの論点について。ポイント1の同義反復になるということについては、機能障害を理由とした差別があり、これを理由にした次の差別があり得るので、差別の理由となる障害は機能障害だけでは不十分だ。権利条約は、目が見えない、手足が麻痔していることが障害だというこれまでの理解の仕方を乗り越えて、機能障害と障害を区別するという新しい考え方を提起している。ポイント4について、「障壁」「相互作用」の意味合いを一般的な形で描くのは難しい。 ○ (発言)「障害とは身体的、精神的、知的、感情的状態が疾病、損傷その他の事情に伴い、そのときどきの社会的環境との関係において、日常生活又は人々との社会関係(態度を含む)に相当な制限を受ける程度の状態をいう」と定義してはどうか。この「制限」には自分の身体機能などに基づくものも、社会からの制限も含む。総合福祉法などの給付法では障害者を厳密に確定すべきだが、基本法では「相当な制限を受ける程度の状態」などが適切ではないか。インペアメントを機能障害と訳す場合があるが、これが疾病を含むのかが不明確なので、「疾病、損傷その他事情に伴い」とすれば難病なども含まれる。 ○ (発言)権利条約が障害については深入りせず障害者を定義した点は押さえておく必要がある。 次に、「参加の障害」や「活動の制約」といった社会モデル的な制約は障害者だけの問題ではなく、高齢者、疾病者、お子さんにも起こる。従って、障害を定義するのは、疾病や老齢問題とは別であることを明確にする意味がある。障害を機能障害とすると同義反復になるので「機能損傷」としてはどうか。そして、それと老齢、疾病を切り分ける縛りが「相当な制限」や「長期にわたる制限」などの文言になる。 ○ (発言)味覚障害のある人が料理の学校に入ることを拒まれ料理の仕事ができないというようなケースを障害のために差別を受けたと言えるのか。また色弱、色盲の方が美術学校あるいは医学部に入ることを拒まれ、デザインの仕事につくこと、または医者になることを拒まれた場合、基本法の定義の対象なのかどうか。 ○ (発言)これは、基本法というよりは差別禁止法の議論だろう。いずれの例も心身機能の障害を理由にして入学を断ったことになるわけで、不利益になったことには間違いない。料理学校で味覚障害の人に合理的配慮が提供できるにもかかわらずそれを採用せず入学拒否となった、色弱を補いデザイナーになる可能性があるにもかかわらず教育的な工夫等をしない場合は差別だ。しかし、どんなに工夫をしても合理的配慮がない、教育機関として十分な効果を提供できない場合は差別とは言えない。 ○ (発言)「かつ」ではなく「または」として範囲を広げた方が味覚障害者や視覚障害者等、一般的に軽度言われている障害者は救済される。 ○(東室長)機能障害はあるが社会的制限はない場合も障害、障害者に当たるか。 ○ (発言)当たる。機能障害はあるが、周りの環境がよいために日常生活、社会生活上の支障がない人も障害者だ。 ○ (東室長)障害の定義で参加制約や制限とあるが、制限は個人に属するのではなく外部にあるものだ。これを「前項の障害を有する者を意味する」として障害者に持ち込むとどう理解すればよいか。 ○ (発言)障害を個人の属性としての機能障害と環境との相互作用による困難や支障ととらえるのだから、内部なのか外なのかと問われるとどちらでもないということになる。制限という言葉が外からのものという印象を与えるならば、支障や困難と表現した方がよいかもしれない。 ○ (発言)今の議論は理解しにくい。何故なら一つには、障害には複雑な要素があるため、その全部を定義に盛り込もうとすると分かりにくくなるということ。定義である限りはごくシンプルに「心身の損傷」がよいのではないか。二点目には、基本法での障害、障害者の定義と、差別禁止法の定義を混同してはいけない。とりわけ、今、支援を必要とする障害者を定義するのに、過去又は将来の差別の対象となる人を含むのは無理がある。三点目には、「身体障害、知的障害又は精神障害、その他心身の損傷」という場合、「その他」は前の3つの例示に相当するものを含むことになるが、そうだとすると例示の意味をより丁寧に議論する必要がある。例えば、感覚障害を例示に入れるべきとの意見を採用する場合には、感覚障害の意味を明確にすると同時に、それに即した支援を明らかにする必要がある。 ○ (発言)障害をインペアメントとして障害者の定義に社会モデルの観点を入れるという考え方もあるが、医学モデルから社会モデルに変えるという障害者権利条約の理念からいうと障害の定義自体に社会モデル的な観点を反映した方がよい。私たちに浸み込んでいる医学モデルの障害のとらえ方を変えなければいけない。その場合、障害の定義に差別的な内容が含まれるため、例えば「障害を理由とする差別」というと同義反復になるという問題がでてくるが、これは差別禁止法の段階で工夫できないか。次に例示を書くかどうかについては、身体障害、知的障害、精神障害に加えて、発達障害、感覚障害なども入れる方が谷間を少しでも埋める方向に貢献するのではないか。 ○ (発言)障害の定義の例示について、現行法は発達障害が含まれていないなど制度の谷間がある。制限列挙するといくつ挙げればよいのかという話になるので、包括的で谷間を生まないようにするべきだ。次に「継続的」という書き方も気になる。精神障害のある人で調子の良い時は働くが状態が悪くなると働けない場合には就職差別で解雇される。この場合、障害は継続して協定の状態にあるわけではないので障害と認定されないのではないか。 ○ (発言)障害者の定義としては各種の支援を必要とする者としてはどうか。 ○ (発言)障害をもつ人はそれによって支援や配慮を必要とする人のことだ。障害はこれとは別に定義する必要がある。その際、社会モデルを残した形でシンプルに、含みを持たせた表現がよい。 ○(藤井議長代理)心身障害者対策基本法から障害者基本法に移る過程で1990〜93年頃に激しい議論があった。「心身」の「心」は知的障害を指し精神障害は含まれないという国会答弁があり、これに対し障害団体が猛然と抗議した。それで「心身」という言葉を省き「障害者」と表記することになった。また「対策」は物的な扱いを連想させるので、これも省くことになった。こうした過去の経過も踏まえるべきだろう。