差別禁止部会 第9回(H23.10.14)参考資料2 「障害者に対する障害を理由とする差別事例等の調査」 (平成21年3月内閣府委託調査)(抜粋) ※下記の事例・事案は、「障害を理由とする差別に当たると考え、してほしくないこと」及び「障害によって区別や排除が制限されないように、配慮や工夫をしてほしいこと」を障害者に自由記述で尋ね、収集したものの一部である。 ◆3−1「雇用・就業」(差別関係) 1 採用(募集)を拒否する ○車いすの利用、人工呼吸器の使用、難病、聴覚障害、視覚障害、精神障害、てんかんなどを理由として採用を拒否すること ○電話対応などの業務ができないことを理由に採用を拒否すること ○トイレなどの設備がないことを理由に採用を拒否すること など 【記述の例】 ・車椅子の男性が上半身は丈夫でもトイレの設備がないため採用が困難と言れた。(肢体不自由、70 代以上、男性) ・精神状態が良くなってきたので三十四、五のとき働きたいと思いある会社に行き面接をしている途中安定剤を飲んでいる事を話したときその場で面接を中止された。(精神障害、50代、男性) 2 採用(募集)を制限する ○公共交通機関での通勤、自力による通勤、介助者なしでの勤務、自動車免許の所持、「普通活字印刷に対応できること」などを採用の条件とすること など 【記述の例】 ・障害者の就職面接会にくる企業でも履歴書の記入を自筆とする企業がある、視覚障害者は排除されている。(視覚障害、50 代、男性) ・ハローワークの障がい者の窓口に、電話をしたら、医師の「働ける」と証明したものを 持ってこいと言われた。また、2〜3 時間の仕事しかない、と言われた。(精神障害、40 代、女性) 3 賃金について差別的に取り扱う ○賃金を引き下げること、低い賃金を設定すること、昇給をさせないこと ○残業手当、通勤手当、交通費などを支払わないこと など 【記述の例】 ・他の人間よりも賃金は低く設定された。大卒だが高卒扱いでの採用だった。理由は他の社員に業務外での仕事、私の補助があるため。同じ賃金では同僚から不満が出るからとのこと。(肢体不自由、20 代、男性) ・採用時に提示された賃金(時給)を、働き始めたあとに、減額された。一応、雇用者側から減額について、どうかという相談はあったものの、親としては働き続けさせてもらう上で拒否する訳にはいかなかった。3年目になっても時給アップの話はない。(知的障害、 30代、女性) 4 職場の配置など(仕事の配分や権限を与えることを含む)について差別的に取り扱う ○嘱託、パートなどとしてしか働かせないこと ○窓口業務などに配属しないこと・清掃業務だけに従事させること ○障害が起きたあと復職しても障害を理由に仕事を与えないこと など 【記述の例】 ・失明後、リハビリを受けて教職に復帰したが、何年間も担当科目や担当クラスを与えられなかった。(視覚障害、50 代、女性) ・以前15 年間働いていた所で障害者ということで嘱託でした。(肢体不自由、50代、女性) 5 昇進、降格などについて差別的に取り扱う ○昇進をさせないこと ○異動までの期間が長くなること ○昇進試験を受けさせないこと など 【記述の例】 ・入院がきっかけで降格の対象になった。病気という理由で降格の対象になった。(重複障害、30代、女性) ・一般事務職から総合職に変わりたいと希望し、規定通り論文を書いたが、上司が相手にしてくれず内容のチェックさえしてくれなかった。(肢体不自由、年齢記載なし、女性) 6 仕事のなかで差別的に取り扱う ○立ち上がりが困難な障害者に立ち上がることを強いること、体力的に負担のかかる労働を強いること ○会議への参加を認めないこと、回覧を回さないこと、ネットメールを接続しないこと ○仕事を与えずに放っておくこと ○本人の存在を無視して担当でないの別の人に尋ねること など 【記述の例】 ・盲ろうである私に「これ確認して」と言われたが、見えないので難しかった。会ギ(のようなもの)にも何を言っているのか分からず、一人ポツンとしていた(盲ろう、40代、女性) ・接客業で、立ち上がってのあいさつを強いられた。車イスを仕事中は使えと言われた。(お客様から見て障害者とわかる様に)(肢体不自由、20代、男性) 7 勤務時間、休憩時間などについて差別的に取り扱う ○障害を無視して長時間の残業をさせること ○他の人より作業時間がかかるという理由で休憩を取らせないことなど 【記述の例】 ・透析時間があるので3時頃退社しようとしたら、だから透析患者は、いやだ、一番忙し い時に帰るなど言われた(内部障害、40代、男性) ・職場での休憩時間は45 分と決められていたが、仕事がこなせていないということで休憩時間を取らせてもらえないことが多かった。(何もしていなければすぐにサボっていると見なされた)(肢体不自由、20 代、男性) 8 教育や研修などについて差別的に取り扱う ○研修、現場実習を受けさせないこと ○研修に情報保障がないこと ○聞こえないのに電話応対の研修を受けさせること など 【記述の例】 ・障害を理由に、本格的な研修はさせない。(新施策などの) ・障害で電話ができないのに、電話対応の業務訓練を強制的にやらせられた。(聴覚障害、50 代、男性) ・耳が悪いからと言って、研修や会議出席の免除を言われる。(聴覚障害、60代、女性) 9 退職(解雇)について差別的に取り扱う ○障害の進行、長期入院を理由として退職を強いること ○隠していた障害が明らかとなった場合に退職を強いること ○サポート体制が不足したことを理由に退職を強いること など 【記述の例】 ・視力が落ちてもできる仕事に変えてもらいたいと申し出たが認めてもらえず退職した(盲ろう、40代、女性) ・障害者雇用で受け入れたのに、パニックを起こすかもしれない。事故が起こると、工場長の汚点になるということで解雇された。(知的障害、20代、男性) 10 福利厚生などについて差別的に取り扱う ○親睦会、懇親旅行などに参加させないこと・誘わないこと など 【記述の例】 ・給料の一部で積立た会社行事に参加させないこと。会社の保養所に行かせないこと(情報おしえないこと)(知的障害、40 代、男性) ・車椅子ではバスの乗り降りやトイレに時間がかかるので次の機会にと旅行に参加させない(肢体不自由、50 代、男性) 11 職場において差別的な言動をする ○休息時間などに存在を無視すること ○上司や同僚が罵声をあびせること、中傷することなど 【記述の例】 ・障害ゆえに、できにくい仕事について、「給料をもらっているのだから・・・頑張ってやれ!!」と人の前で言われること。(内部障害、70代以上、男性) ・知的しょうがい者はこんなんだからと言っている人がいる。(知的障害、30代、女性) 12 求職活動で差別的に取り扱う ○職業紹介において、視覚障害者に対しマッサージや針灸といった限られた選択肢しか示 さないこと ○就職相談などで本人の存在を無視して付き添いの者としか話さないこと ○障害者のできない仕事を紹介すること など 【記述の例】 ・「そんな重度な障害者には仕事があるわけがない」「健常者でも見つからないのに…」当事者の意見や能力についての理解をしない。(肢体不自由、50代、男性) ・職安で希望職種をだしても、始めから「この仕事は無理」との一点張りで、屈辱感を味わったり求職活動の意欲減退、自分の障害を恨むなど自己肯定感がますますもてなくなったりする。(聴覚障害、40代、女性) ◆3−2「雇用・就業」(配慮工夫関係) 1 採用のときに配慮や工夫をしてほしい ○書類だけでなく面接を実施すること、詳しい適性検査を行うこと ○問題用紙を点訳・音訳すること・試験などで拡大読書器を利用できるようにすること・試験の回答時間を延長すること・回答方法を工夫すること ○面接や試験の際に手話通訳や要約筆記を用紙すること など 【記述の例】 ・私は弱視ろうです。ただし、拡大器があればある程度は見る事が可能。テストの時も拡大器利用させて下さればどんなに助かったか。10 年前はありませんでした。これからは障者のニーズに合わせて準備してほしいです。(盲ろう、50代、女性) ・いくら知的障害者でも、しゅうしょくの時に出す、りれきしょうを見て、それをはんだんをしてほしくありません。ちゃんとめんせつをしてほしい(知的障害、30代、女性) 2 職場の施設や設備について配慮や工夫をしてほしい ○休憩できる部屋を設けること ○車いすでも動きやすい机、音声パソコン、拡大読書器・電光掲示・音声ガイドなどを設置すること ○車いす用トイレ、オストメイト用トイレ、広い出入口、手すりを設置すること、段差を解消すること ○障害者専用駐車場を確保すること・屋根つきの駐車場を確保することなど 【記述の例】 ・職場の改装などをする場合は障害者の意見を聞いてほしい。職場の床に厚い絨毯が敷かれ、車椅子で動くことが非常に困難になった。配置転換を命ずるときは、そこがその障害者にとって働ける環境かどうかを確認してほしい。どうしても移動が必要な際は、改めて環境を改善することが必要。他の部署へ移るよう命じられたが、その部署は机がびっしりと入り、車椅子では移動できなかった。(視覚障害、50 代、女性) ・職場にもオストメイト対応トイレを1個は設置してほしい。(内部障害、60 代、男性) 3 職場でのコミュニケーションや情報のやりとりについて配慮や工夫をしてほしい ○手話通訳者・要約筆記者を配置・派遣すること、手話のできる職員を確保すること ○点字・拡大文字で書類を作れるようにすること ○文字だけでなく口頭での説明を行うこと・口頭だけでなくわかりやすい文書・絵図を用いて説明すること・筆談ができるようにすること ○書類の代読・代筆ができるようにすることなど 【記述の例】 ・職場で聴覚障害者がいた時、その職場の同僚、管理職が情報保障を意識できる環境をつくってほしい。当の聴覚障害者自身の努力では限界がある。(聴覚障害、50 代、男性) ・会議の際は点字や大活字、データなどで平等に情報を保障してほしい。(視覚障害、50代、女性) 4 ほかの職員への教育について配慮や工夫をしてほしい ○職員に対し障害・障害者への理解を促進すること ○職員に対し手話、介助方法の研修を行うこと・障害当事者による講話を行うことなど 【記述の例】 ・勤め始めた頃一緒に働いている職員に「なぜ障害者を雇用しなければならないの」等よく言われ、約3年間は口も利いてもらえなかった。職員の人たちに障害者の雇用について説明をして欲しかった。(肢体不自由、50 代、女性) ・聞こえない障害の特性を理解するために、障害当事者の講話を行うことが望ましい。(理解しないために、ろう者いじめの原因になる)(聴覚障害、60 代、男性) 5 業績の評価について配慮や工夫をしてほしい ○健常者とは別に障害者枠として評価すること ○仕事に直接必要な能力で評価すること など 【記述の例】 ・障害であるために個人の努力では出来ない部分を見るのではなく、その人の能力、実績、努力をみて欲しい(聴覚障害、60 代、女性) ・能力基準をもうけていない所がある。評価基準の具体化が必要と思う(重複障害、40代、 女性) 6 勤務時間について配慮や工夫をしてほしい ○ITを活用した在宅勤務によって勤務時間を短縮すること ○障害者同士が分担できる勤務時間とすること ○通勤時のラッシュを避けるため勤務時間を変更することなど 【記述の例】 ・透析患者にとっては、透析時間が絶対的に必要なものなので、その為に勤務時間への配慮をしてほしい。(内部障害、60代、女性) ・難病者は、1日のうちで、症状が出たり、出なかったりです。休けい時間、勤務時間の短縮を考えてほしい(難病、30代、女性) 7 通勤や出張について配慮や工夫をしてほしい ○移動のための介助サービスを利用できるようにすること ○ガイドヘルパーを利用できるようにすること ○手話通訳や要約筆記など情報保障を利用できるようにすること など 【記述の例】 ・人工肛門、人工膀胱保有者にとって、ひどく混雑した電車で腹部を圧迫されることは危 険である。時差出勤と、対応した勤務スケジュールを考えてほしい。(内部障害、70代以上、男性) ・出張先で手話通訳をつけるよう、出張先の研修等の主催者に連絡してほしい。(聴覚障害、40代、女性) 8 休暇を取ることについて配慮や工夫をしてほしい ○障害による通院を年次休暇とは別に取り扱うこと ○症状が悪化したときは有給休暇として認めること など 【記述の例】 ・パート職で年次休暇が40 日もあるが、気を使って欠勤している。本人が休むと代りのバイトを入れるので、二重に賃金を支払い会社の負担が大きい・・・・・それらしき言葉があり、親が有給を使わないで申請している。(知的障害、30 代、女性) ・障害者が年休を取ることをためらう職場(休めば他の職員に負担がかかる。迷惑になるといった)気持ちになるので年休は職員の当然の権利であり、年休をとっても、職場は困らないようシフトをつくるとか等の工夫がほしい。(聴覚障害、50代、男性) 9 仕事を理解するために配慮や工夫をしてほしい ○時間をかけて説明・指導すること・ゆっくりとわかりやすい説明をすること ○パソコンや資格のための講習会・研修会に参加する機会を作ること ○職員研修などで手話通訳・要約筆記など情報保障を行うこと など 【記述の例】 ・パソコンのメールや筆談でも良いので、「朝礼」で言った事や、重要なことはわかりやすく伝えて欲しい。また「会議」では要約筆記(ノートテイク)をつけてほしい(聴覚障害、40代、男性) ・発達障害者、知的障害者、精神障害者、聴覚障害者それぞれの各自の生育環境、障害程度、能力、障害特性が違う。それに合わせた職場定着ができるようなジョブコーチを養成、活用してほしい。(聴覚障害、40 代、女性) 10 職場での相談について配慮や工夫をしてほしい ○職場において相談できる場所を設けること・カウンセラー・ジョブコーチを置くこと ○雇用主との間で調整する相談員を置くこと ○相談の際に手話通訳や要約筆記などの情報保障を行うこと など 【記述の例】 ・精神障がいがあると、人とのコミュニケーションが、ものすごく、ストレスになるので、精神障がい者のことを専門にしている方(PSW など)を、1 人はおいてほしい。(精神障害、40代、女性) ・聴覚障害者が何人かいる職場では、手話ができるカウンセラー(聴覚障害の立場が分かる)を配置してほしい。(聴覚障害、60代、男性) 11 職場での介助について配慮や工夫をしてほしい ○盲ろうのための介助者など、障害に応じた介助者を置くこと ○介助のための機器を設置すること など 【記述の例】 ・必要に応じてヒューマンアシスタントを配置してほしい。また、誰をヒューマンアシスタントにするかは、障害者本人の意思を尊重して決めてほしい。(視覚障害、50代、女性) ・精神障害は「目に見えない為」その障害は無視されがちです。出来れば職場通勤に慣れ るまでガイドヘルパー利用できるようなシステムが必要です。(フェイスシート記載なし) 12 福利厚生などについて配慮や工夫をしてほしい ○職員旅行、忘年会、送別会などのときに車いすの利用に配慮すること・介助者を置いたり派遣したりすること・手話通訳や要約筆記など情報保障を行うこと ○職員旅行、忘年会、送別会のときに声かけをすることなど 【記述の例】 ・職員旅行、飲み会等(歓送迎会・新年・忘年会)聞こえに配慮がなければ楽しめない。(聴覚障害、60代、女性) ・福利厚生の内容を本人にわかりやすく説明した上で、「参加しない」という選択肢もある事を伝えてほしい。「行かねばならない」とつらくなる事もあるので。(発達障害、10 代、男性) 13 求職活動について配慮や工夫をしてほしい ○職業紹介の窓口に障害当事者を相談員として置くこと ○就職後も引き続き相談や支援などをすること ○職業紹介の施設におけるバリアフリー化・情報保障を行うこと など 【記述の例】 ・一番の理解者は障害者同志、出来る事なら就職窓口に当事者を置くことは良い事と思います。(精神障害、70 代以上、女性) ・就職後も、ハローワークの担当者が職場訪問して、様子を見て下さると安心。親が職場を訪問するのは気兼ねがある。(知的障害、30 代、女性) 14 制度について配慮や工夫をしてほしい ○公的機関で障害者雇用を進めること、法定雇用率を引き上げること、雇用率を障害種類別・部位別に設定すること、障害者の失業率を把握し健常者のものに近づけること、 ○ジョブコーチやヒューマンアシスタントなどの制度を充実させることなど 【記述の例】 ・ジョブコーチをもっと使いやすいように、また、企業の方でも、ジョブコーチについて理解を進め、積極的に利用するようPR してほしい。(知的障害、30代、女性) ・障害者雇用罰金が少ない為、障害者雇用にほとんど結び付いていない。罰金を支払う企業ばかりで、障害者の雇用率が上がらない。ただ障害者を雇用させるだけでなく、雇用後のアフターケアも大切。(肢体不自由、20代、男性)