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虐待防止について

黒岩 海映氏提出資料

障がい者制度改革推進会議 第16回(H22.7.12) 資料3

学校現場における虐待防止について

2010年7月12日 弁護士 黒岩 海映

Ⅰ 現状の分析(場の比較)

虐待の起きる場所
  家庭 学校 企業 施設 病院  
子供 ×  
女性 × × × ×  
高齢者 × ×  
障害のある人 ・・・最も「場」が多い
とられている対策
  家庭 学校 企業 施設 病院  
子供 × × 児童虐待防止法
女性 DV防止法
高齢者 × 高齢者虐待防止法
障害のある人 × × × × × 特別法なし
発見義務・通報義務等 ~自己決定権と要保護性のバランス
  専門職の発見義務/通告義務 一般の通告義務
子供 発見努力義務 ○
(専門職=学校、施設、病院、弁護士等)
○ ・・・義務が一番重い
=要保護性が強い
女性 通報可、但し本人意思尊重
情報提供努力義務
(専門職=医療関係者)
努力義務
・・・一番軽い
高齢者 施設において
発見努力義務 ○
(専門職=施設職員)
家庭・施設において
○ 生命身体に重大な危険)
努力義務(上記以外)
障害のある人 児童とほぼ同等の要保護性を認めてよいのではないか
救済
  立入 保護命令 避難場所
子供 × 施設への措置入所
女性 × 保護命令 母子自立支援施設・民間シェルター
高齢者 × 施設への措置入所
障害のある人 × × 施設への措置入所

Ⅱ 学校における虐待の実態

<体罰>

1 文科省

度々、通知を出すなどして体罰防止の徹底を図る対策をしているが、依然、毎年多数の教職員が、体罰を理由に懲戒処分を受けている。

障害のある児童・生徒を念頭に置いた特別の対策がとられている様子はない。

2 都道府県・市区町村

都道府県も文科省の通知などを受けて、同様の通知を出すなどしている。

しかし市区町村には独自の対策がない場合がほとんど。

<わいせつ行為>

1 「セクシュアル・ハラスメント」対策の歴史

日本ではまず、1989年頃から企業におけるセクシュアルハラスメント(強制わいせつ・強姦を含む概念)が注目され、多数の判例が形成された。

判例においては、企業が苦情処理体制の整備や研修などによりセクシュアルハラスメント防止義務を負うこと、また事後的に調査・被害者保護・加害者処分等の義務を負うことが明確化された。

1999年、企業におけるセクシュアルハラスメントが男女雇用機会均等法上定義されるのに機を合わせて、文科省においても、訓令の形でセクハラ規定が置かれるに至った。

これを受けて、H15 度調査では、国立大学の99%が、セクハラ相談窓口を設置している。

都道府県及び政令指定都市においても、近年、ほぼ 100%がセクハラ規定を置くに至っている。

これに対し、市区町村では、独自のセクハラ規定をもたないところがまだ多いと思われる。(これについての統計資料は見あたらない)

しかし小中学校は大部分が市区町村立である。

2 わいせつにより懲戒処分を受けた教育職員の数(文科省調査)

文科省調査によると、懲戒処分をうけた教育職員の内、「わいせつ行為等」が原因である者は、以下の人数である。

H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20
122 175 196 166 142 190 164 176

高水準で推移する数値に対し、文科省が抜本的な対策をとっている様子はない。

3 自治体実施の調査

(1) 大分県

平成15年大分県教育委員会(スクール・セクハラ防止検討委員会)の「スクール・セクハラ」防止の在り方報告書では、スクールセクハラの担当者設置率が、小学校で33.2%、中学校で74%、高等学校で100%、盲聾養護学校で73.3%となっており、スクールセクハラの担当委員会設置率は、小学校が33.2%、中学校が52.7%、高等学校が54.7%、盲聾養護学校が13.3%と、全般的に、小学校及び盲聾養護学校の対策が遅れていることがうかがえる。

(2) 千葉県

千葉県は、平成16年から独自のスクールセクハラ実態調査を行っている。(対象が県立学校に限られるため、高等学校及び特別支援学校のみである。)

これを見ると、平成16年度では高等学校と特別支援学校のスクールセクハラ被害率が2倍の開きがあったところ、近年では差がほとんどなくなっている。

しかし、セクハラ相談員の周知率を見ると、平成21年度、高等学校で45.6%に対し、特別支援学校で27.0%と大きな開きがあり、平成18年度からの推移で見ると、高等学校の周知率が年々増加しているのに対し、特別支援学校では増加がほとんど見られない(『平成21年度セクシュアル・ハラスメントに関する実態調査の結果について』千葉県教育庁教育振興部教職員課)。

さらに記名で調査を行った後、調査結果に基づいて実施した対策についての調査結果は、「セクハラを受けたと記入した生徒本人と面談し、事情を聞いた」との回答が、高等学校で74.8%に対し、特別支援学校で48.3%にとどまっている。本人に事情を聞かなかった理由等についてのアンケート項目はない。

こうした数字を総合的に評価すると、特別支援学校に通う障害のある子どもたちに対するスクールセクハラの防止策及び事後対応策は、高等学校におけるものより格段に遅れていると言えよう。

4 PandA-J実態調査(厚労省調査研究プロジェクト)

学校における教員による虐待が最も多い。

教育委員会、児童相談所、障害福祉課は頼りにされていない。

5 オーストラリアの犯罪被害率調査

知的障害のある人の被害率は、強盗(12.7倍)、強姦(10.7倍)。

Ⅲ 対策の必要な局面

予防発見救済処罰被害回復の5段階

② 発見直後に、被害供述を記録・証拠化するシステムが必要。子供の中でも特に障害のある子の場合、必要性が高い。

ex 浦安事件

プラス受傷状況等の証拠化。

立証の困難を克服したい

供述といった主観的な証拠のみならず客観証拠を収集するには、医療関係者等専門家の協力が不可欠と思われる事例が多い。

※ 障害が重い程、立証が困難。

性被害ほど、目撃者がない密室で行われるため、立証が困難。

つまり最も深刻な被害ほど、最も立証が困難。

個別指導が増えている(=密室化している)特別支援学校・教室の実態も踏まえた対策が必要。

③ 権利条約で求められているモニタリング機関の設置

密室化しやすい障がいのある人の施設や学校に対する監視の必要。

Ⅳ 対策の骨子

○ 予防

啓発教育

障害のある人、家族に対する人権啓発教育

被害防止研修

学校関係者への研修

聴き取りスキル(立証面)

障害のある人に対する聴取面接専門家養成(司法面接の導入)

司法関係者への聴取技術研修(特に警察官・検察官)

苦情処理体制構築(「頼りになる」相談機関が必要)

密室のない相互監視体制(特に特別支援学校・教室)

市区町村に対しても文科省によるチェックを及ぼしてナショナルミニマム維持

○ 発見

発見努力義務

通報義務

内部告発者保護(不利益処分の禁止)

証拠収集システム

専門スキルを有する者による聴き取りと供述の録音・録画システム

医療チームによる受傷状況の証拠化

○ 救済

加害者と被害者を隔離

転校その他の措置(被害者が望む場合に限る)

○ 処罰

一般予防、特別予防の見地から必要

加害者が適正に処罰されることが、被害回復の一歩でもある

○ 被害回復

医療的ケアの充実(虐待専門の医師・カウンセラーが必要)

学校全体で、医療や地域とも連携して虐待被害児童のケアのためのネットワークを作る

● 全てのプロセスが、当事者に対する十分な意思確認を踏まえて進められるべき。

Ⅴ 結論

※ 学校、特に小中学校におけるわいせつ被害対策は、最も遅れている。幼い子供ほど、予防・救済の網から漏れていることは全くの矛盾。

※ 障害のある子供の被害率が他より高いにも関わらず、「障害」に着目した対策はおろか、実態調査すらないことが問題。

※ 学校における虐待防止策が必要であることは明らか。さらにその中で、障害に着目した制度構築が必要であると言えよう。

以上