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日時:2013年02月03日(10:30~16:00)
場所:戸山サンライズ 大研修室
 

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障がい者制度改革推進会議 第17回(H22.7.26) 資料2

教育関係団体提出意見書等

全国特別支援学校長会

全国特別支援学級設置学校長協会、全日本中学校長会

全国連合小学校長会

全国コーディネーター研究会

全国特別支援教育推進連盟

レジュメ

平成22年7月26日

障がい者制度改革推進会議 議長 小川 榮一様

全国特別支援学校長会 会長 尾崎 祐三

第17回 障がい者制度改革推進会議におけるヒアリング意見書

1 日本独自のインクルーシブ教育システムの実現について

(1)インクルーシブ教育システムと特別支援教育の関わり

インクルーシブ教育システムと特別支援教育は相反するものではなく、同じ方向を向いているものと考えています。

これからは、日本で行っていくべき独自のインクルーシブ教育システムを一層発展させるための検討を行い、学校だけでなく地域社会における障害のある子ども達のあり方を着実に整備していくことが肝要です。

(2)財政基盤を整えたインクルーシブ教育システムの制度設計の実現

インクルーシブ教育システムについては、子どもの能力を可能な最大限度まで発達させるとの権利条約の趣旨を踏まえれば、理念や制度論のみ議論するのではなく、必要な人的体制や施設設備などの物的条件の整備や環境の整備、教育課程の在り方の検討などの条件整備を進めることを前提として議論・検討すべきだと考えます。

(3)議論の深化と国民的理解に向けた努力

障害者の共生社会への参画や一人一人の社会自立を実現するには、財政的な考えや仕組みを整備していくための計画を作成し、国民の理解を得ながら実施することが必要です。

さらに、学校教育にだけに留まらず、地域関係機関(医療・福祉・労働など)との連携を図り、インクルーシブ教育システムが地域に根ざし、発展するような検討が必要です。

2 具体的な検討課題と提言

  • (1)特別支援学校の地域への設置
  • (2)障害のある児童生徒の学籍の考え方
  • (3)就学相談や就学決定のあり方
  • (4)特別支援学校の教育における児童生徒のニーズに合わせた教育内容の充実
  • (5)特別支援学校を選択した場合の地域との繋がり
  • (6)進路指導の充実と就労の支援
  • (7)教員等の確保と専門性の担保と人材育成
  • (8)地域の小学校・中学校等支援のための特別支援教育のセンター的機能の拡張
  • (9)就学先における合理的配慮
  • (10)虐待行為者の範囲

3 各障害種別校長会からの意見

(1)盲学校

全国盲学校長会 会長 澤田 晋

(2)聾学校

全国聾学校長会 会長 鈴木 茂樹

(3)肢体不自由及び病弱特別支援学校

全国特別支援学校肢体不自由教育校長会 事務局長 田村 康二朗

(4)知的障害特別支援学校

全国特別支援学校知的障害教育校長会 事務局長 横倉 久

第17回 障がい者制度改革推進会議におけるヒアリング意見書

平成22年7月26日

障がい者制度改革推進会議 議長 小川 榮一様

全国特別支援学校長会 会長 尾崎 祐三

Ⅰ はじめに

全国特別支援学校長会(以下、全特長)は、第13回推進会議で審議された「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)素案」に対して、平成22年6月1日付けで、障がい者制度改革推進本部長鳩山由紀夫内閣総理大臣及び川端達夫文部科学大臣宛に全国の5校長会長(全国連合小学校長会長、全日本中学校長会長、全国高等学校長協会長、全国特別支援学校長会長、全国特別支援学級設置学校長協会長)の連名で再度要望書を書面で提出しました。

しかしながら、6月29日においては「第一次意見」を踏まえた障がい者制度改革推進本部の方針決定及び閣議決定がなされました。

本会としては、教育関係者を踏まえた議論が充分行われてこなかったと認識していますが、今回は、今までの我々の要望を受け止め、教育関係者を交えた検討体制を考慮していただけたものと期待し、このような機会を全特長にいただいたことを感謝いたします。

以下、本会としての意見を述べさせていただきます。

Ⅱ 日本独自のインクルーシブ教育システムの実現について

(1)インクルーシブ教育システムと特別支援教育の関わり

特別支援教育は、平成19年以降の新たな特別支援教育制度の枠組みの下、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行う教育として着実に成果を上げてきました。

その範囲は、従来の特別支援学校、特別支援学級のみならず小学校・中学校の通常の学級、幼稚園、高等学校にまで及んでいます。

また、一人一人にきめ細かく対応する特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒への教育に留まらず、障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ様々な人々が生き生きと活躍できる共生社会の形成の基礎となるものであり、日本の現在及び将来の社会にとって重要な意味をもっています。

その点においてはインクルーシブ教育システムと特別支援教育は相反するものではなく、同じ方向を向いているものと考えています。

これからは、日本で行っていくべき独自のインクルーシブ教育システムを一層発展させるための検討を行い、学校だけでなく地域社会における障害のある児童生徒のあり方を着実に整備していくことが肝要です。

そのためには、障害のある幼児児童生徒のニーズに対応できる通常学級での特別支援教育や特別支援学級、特別支援学校における特別支援教育の充実が一層重要となります。

(2)財政基盤を整えたインクルーシブ教育システムの制度設計の実現

インクルーシブ教育システムについては、子どもの能力を可能な最大限度まで発達させるとの権利条約の趣旨を踏まえれば、理念や制度論のみ議論するのではなく、必要な人的体制や施設設備などの物的条件の整備や環境の整備、教育課程の在り方の検討などの条件整備を進めることを前提として議論・検討すべきだと考えます。

また、推進会議の中では、受け入れる側の通常の学校の条件整備の方向が示されていません。今後は、特別な支援が必要な児童生徒の教育内容の充実と同時に通常学級の児童生徒の教育内容の充実についても検討することが大事です。そして、通常学級に就学した場合の障害のある児童生徒が通常学級で学ぶことが可能となるためのあらゆる配慮や条件整備が必要となります。

(3)議論の深化と国民的理解に向けた努力

推進会議では、共に学ぶ教育をインクルーシブ教育としていますが、本校長会は、特別支援学校も含めたすべての学校で、共生社会の実現を目指す教育をインクルーシブ教育システムととらえています。したがって、障害者の共生社会への参画や一人一人の社会自立を実現するには、財政的な考えや仕組みを整備していくための計画を作成し、国民の理解を得ながら実施することが必要です。

インクルーシブ教育システムの実現に向けた教育分野の種々の課題や制度設計の議論を行うに当たっては、必要な条件・環境整備のないままに拙速な制度改革が進められることによる学校現場への重大な影響・弊害が生じないよう、現場の実態等を十分踏まえた慎重な検討・議論を行っていただくようお願いいたします。

さらに、学校教育にだけに留まらず、地域関係機関(医療・福祉・労働など)との連携を図り、共生社会の実現を目指すインクルーシブ教育システムが地域に根ざし、発展するような検討が必要です。

Ⅲ 具体的な検討課題と提言

(1)特別支援学校の地域への設置

特別支援学校を希望する保護者が増え、知的障害や発達障害を中心として児童生徒が増加しています。それに伴い、学級数や学校数が増えていますが、現状は「カーテンで仕切られた教室」「玄関を仕切った教室」「プレハブで校庭がなくなった」などの教育現場の実態が全国的に幅広く見られ、通常では考えられないような教室不足が生じ深刻な状況にあります。

特別支援学校の教室不足を解消するとともに、地域社会における児童生徒の生活を充実させる観点からも、特別支援学校の増設を積極的に促進することが必要です。

その際、特別支援学校と同等の教育条件を全ての通常の学校で整えることが困難であることを考えれば、都道府県に特別支援学校の設置を義務付けることは、障害者権利条約第24条第1項(b)の「障害者が、その人格、才能及び創造力並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること」に合致させるために必要であると考えます。

(2)障害のある児童生徒の学籍の考え方

通常学級に在籍することを原則とすると、特別支援学校や特別支援学級の設置の根拠がなくなり、特別支援学校や特別支援学級の専門性のある教員の確保や障害にあわせた教育環境の整備が計画的にできなくなる恐れがあります。

言語・意思疎通の環境だけでなく、個人にとって最も適切な教育環境(専門性のある教員の配置、障害に合わせた教育内容・指導方法、バリアフリーの環境、児童生徒が安定して過ごせる環境、感染症対策など医療に配慮された環境等)を必要とする場合は、特別支援学校 や特別支援学級に在籍する制度が必要です。

特別支援学校は、児童生徒の学籍があることによって学級認定され、学籍のある児童生徒の障害に対応した施設・設備が整えられ、専門的な教員の配置がなされているので、特別支援学校に学籍をおく制度の存続は極めて重要です。

学籍の一元化に伴う算定根拠は、全員が地域の学校に学籍を持つことを前提にした場合、希望によって他の選択ができる場合など異なります。慎重な制度設計が必要です。

また、本人・保護者が望む場合にのみ、特別支援学校や特別支援学級に就学できるとする考え方をとる場合は、就学前における医療や福祉関係機関による療育相談や障害児支援、教育関係者による教育相談活動を充実するなど、乳幼児期から就学時までの一貫した相談支援体制を確立することを前提とすべきであると考えます。

(3)就学相談や就学決定のあり方

前述したとおり、障害のある幼児児童生徒にとっては、保護者の理解の下、幼児期から学校卒業後まで、一貫した教育的支援が必要です。就学期においては、専門家や関係者の多面的な観察・助言を生かして就学先を判断できるような就学相談の充実とともに、これまでより一層「個別の教育支援計画」作成プロセスへの保護者の参画を進め、学校の義務と保護者の権利をより明確にしたものとし、保護者の意見を最大限尊重して設置者が決定する仕組みを作ることが必要です。

結果として保護者の意向を十分尊重して、実際の指導・支援のあり方が決定できるようにすることが重要です。

特別支援教育においては、教育、医療、福祉、労働の関係機関が連携・協力の下、個別の教育支援計画を作成し一人一人のニーズに合わせた教育的支援を実施しています。特に、就学期において障害の早期発見、早期対応が重要で、保護者の同意の下、関係機関による就学前の療育や教育に関する支援が重要です。

就学先を通常の学校を選択するにしても、特別支援学校を選択するにしても、保護者の意見を最大限尊重し、就学する子どものニーズに応じた教育的支援を受けられる場を三者の合意の下に決定する必要があります。

したがって、保護者の意見が最大限尊重できるようにするためにも、就学先の決定の際は、保護者、学校、学校設置者の合意形成を重視できる形が望ましいと考えます。

そのためには、保護者、学校、設置者の三者の合意を調整するための機関は、指導の専門性と客観・公正な見識をもち併せる構成員にする必要があります。

さらに、就学後、児童生徒が不適応を起こしたり、就学時に想定されなかった教育的ニーズが必要になったりした際には、児童生徒のニーズに合わせた教育ができるようにアフターケアーを行い、就学先の変更が速やかに行われる仕組みを作る必要があります。

また、三者の合意を調整する機関を設置する場合は、各地でモデル事業を行いその機能について研究を行い、その先行事例を広め、紹介ができる取り組みが必要です。

(4)特別支援学校の教育における児童生徒のニーズに合わせた教育内容の充実

推進会議の一次意見では、発達障害、知的障害等の子どもの特性に応じた教育を実現するため、教員の専門性向上に必要な措置を講ずることと述べています。

障害のある児童生徒の特別支援学校での学習活動を充実するためには、

  • ① 障害のある児童生徒一人一人の障害の状態や教育的ニーズにきめ細かく対応するための専門的な知識と経験を有する教員が配置されていること、
  • ② 児童生徒が十分に教育を受けるために障害の特性に応じた必要な施設・設備があること、
  • ③ 児童生徒が使用するための障害に配慮された教材が整っていること、
  • ④ 障害に起因し環境の適応に困難な児童生徒も多くいるので、環境が整備されていること

が欠かすことができないと考えます。

教育現場においては、コミュニケーションの手段を確保した上で、障害の特性に応じた教育内容を設定し、指導方法を工夫する必要があります。また、特別支援学校においては通常教育に比べると一律に学ぶ内容が規定されていないため、個に応じた教科書等の作成、副読本等の教材が必須となりますので、早急に整備をする必要があります。加えて、小学校・中学校等でのICT活用による情報保障やコミュニケーション手段の確保等を充実させる研究開発も必要です。

(5)特別支援学校を選択した場合の地域との繋がり

特別支援学校を選択した児童生徒にとっても地域社会での生活が重要です。それぞれの学校の教育課程を尊重しながら、交流及び共同学習が行われ、地域社会の一員としての存在を相互に理解できるような制度が必要です。

障害のある幼児児童生徒と障害のない幼児児童生徒との交流及び共同学習は、障害のある幼児児童生徒の社会性や豊かな人間性を育む上で重要な役割を担っており、また、障害のない幼児児童生徒が、障害のある幼児児童生徒とその教育に対する正しい理解と認識を深めるための機会です。

このため、現在各学校においては、双方の幼児児童生徒の教育的ニーズに対応した内容・方法を十分検討し、早期から組織的、計画的、継続的に実施することなど、一層の効果的な実施に向けた取り組みを推進しています。交流及び共同学習を推進するためには、通常の学級の教育課程が円滑に実施できるようにするための教育方法の工夫が必要です。障害のある児童生徒にとっても、障害のない児童生徒にとっても効果的な教育ができることを実証されることによって、初めて学ぶ場を共有した交流及び共同学習が可能となります。

今後は、いくつかの地域で行っている副籍のような制度の創設が望ましく、副籍を地域の学校に置くかどうかについても、保護者の意見を最大限尊重する必要があります。

(6)進路指導の充実と就労の支援

共生社会の実現に向けて、障害のある児童生徒一人一人が勤労観・職業観を身に付け、主体的に社会参加・自立できるように小学校段階からのキャリア教育・職業教育を充実することが重要です。そして、障害のある生徒が、将来の進路を主体的に選択することができるよう、生徒の実態や進路希望等を的確に把握し、早い段階からの進路指導の充実を図ってくことが重要です。さらに、企業等への就職は、職業的な自立を図る上で有効であることから、労働関係機関等との連携を密にした就労支援を進めることが大切です。

現在、特別支援学校の高等部においては、多様な障害に対応して、生徒一人一人のニーズにあわせた職業教育を実施し、企業就労等に結び付けています。専門的な職業教育への期待は高く、多くの生徒や保護者が、専門的な教育を行う高等部への入学を希望しています。そのため、障害の特性に合わせた専門的な職業教育を受けることのできる特別支援学校の高等部を拡充し、職業教育の機会均等を図ることが大切です。

(7)教員等の確保と専門性の担保と人材育成

障害者の人格、才能及び能力を可能な限り発達させるためには、コミュニケーション手段の保障はもとより、本人のニーズに合わせた教育内容・方法が重要です。

「障害者にかかわる教育に関する専門的知識を有する教員」の条件としては、障害の特性に応じたコミュニケーション手段を獲得していること、障害者に関わる教育に関する教育課程を熟知し、児童生徒の障害の状態に合わせた指導内容・方法を計画し実践できることが考えられます。障害のある児童生徒の障害の状態は多様なので、一人一人の障害に対応できる専門的な知識を有する教員の配置を欠かすことができません。

しかし、障害のある児童生徒の特性に応じた指導が可能な専門性の高い教員は、特別支援学校、特別支援学級においても不足しているため、児童生徒の在籍状況に合わせた措置が必要です。通常学級に在籍する発達障害のある児童生徒も年々増加の一途を辿っており、必要な人的措置が追いつかない状況です。

各学校における校内研修の実施や教員を校外での研修に参加させたりすることにより専門性の向上に努めることが必要ですし、一定の研修を修了した後でも、より専門性の高い研修を受講したり、自ら最新の情報を収集したりするなどして、継続的に専門性の向上に努める必要があります。

そのためには、各教育委員会における研修体制の充実や特別支援教育に関する研究・研修センターの整備も必要です。

(8)地域の小学校・中学校等支援のための特別支援教育のセンター的機能の拡張

特別支援学校においては、これまで蓄積してきた専門的な知識や技能を生かし、地域における特別支援教育のセンターとしての機能の充実を図ってきました。

特に、幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び中等教育学校の要請に応じて、発達障害を含む障害のある幼児児童生徒のための個別の指導計画の作成や個別の教育支援計画の策定などへの援助を含め、その支援に努めてきました。

このような取組は着実に成果を上げ、多くの特別支援学校の保護者・PTA関係者からも、自立と社会参加に向けた教育・支援の実績・成果を高く評価する声が聞かれます。

また、小学校・中学校においても、発達障害をはじめとする支援を要する児童生徒への効果的な対応・支援を図るべく、地域の保健・医療・福祉等の関係機関との連携及び特別支援学校等との協調・協働を通じ、校内体制の整備や通級指導の充実等による通常の学級での指導・支援が充実するように取り組んできました。

今後、特別支援教育コーディネーター等の人員増や情報共有化のためのICT機器の活用の研究開発が必要となります。

(9)就学先における合理的配慮

障害のある児童生徒の教育内容は、個々の障害の状態に応じて弾力的に選択することが必要です。通常の学級で実施される教育内容・方法と障害のある児童生徒のニーズに合わせた教育内容・方法との整合性や学習活動の可能性などについても十分検討する必要があります。障害のある児童生徒にとっても、障害のない児童生徒にとっても「人間の多様性を尊重しつつ、精神的・身体的な能力を可能な限り発達させる」ことになることを検証した上で、通常の学級での教育を実施することが重要です。

また、教員の加配や施設設備の整備などの合理的配慮にもとづく条件整備は、児童生徒の就学前に整えておく必要があります。条件整備がなされる前に就学することになると、「保護者の多大な負担」がそのまま就学先に課され、未整備な側面が全て合理的配慮を欠くと解釈される恐れがあるだけでなく、その間、十分な教育を受けられなくなることになりますので、条件整備を先行させながら、教育環境が整った学校から実施する制度設計が必要です。

「障害者が十分に教育を受けるために必要な学校の施設・設備の充実」のありようは、障害の状態や程度にとって様々である。一人一人の児童生徒の学校生活における健康と安全を守るためには、一人一人の障害の状態に合わせた施設設備が必要であり、不備による事故を起こすことは絶対に許されるものではありません。就学先がどこであれ、障害の状態に応じた合理的配慮を欠かすことができないと考えます。

① 視覚や聴覚に障害のある児童生徒への合理的配慮

視覚や聴覚に障害のある児童生徒の教育においては、点字・手話等さまざまなコミュニケーション手段の保障及び早期からの教育が必要です。さらに、視覚や聴覚の障害に配慮した学習環境を整えることが必要です。視覚障害、聴覚障害の児童生徒にとって同じ学習方法で学ぶための一定程度の集団の確保が重要であり、専門的指導・支援のための設備・機器(点字ブロック、校内文字表示盤等)の整備が大切です。

② 肢体不自由や病弱のある児童生徒への合理的配慮

肢体不自由・病弱教育における重度の障害のある児童生徒には、医療的ケアを必要とすることもあり、それに応じた対応が必要です。また、バリアフリー環境の整備を進めるとともに、外部の専門家(理学療法士や心理の専門家等)との連携を図り身体や病気の状態に応じた専門的な指導が大切です。また、病弱教育では、病状に応じた配慮だけでなく、入院前にいた学校(前籍校)との繋がりを確保できるよう機器(TV会議システム等)を整備することも重要です。

医療的ケアを必要とする子ども達にとっては、安心して通学できる環境が整った特別支援学校でなければ、生命の保障すらなりません。濃厚な医療や全面的な介助が必要な障害児の教育のあり方については、現実を直視した議論が進められることを希望します。

③ 知的障害のある児童生徒への合理的配慮

知的障害教育においては、一人一人の障害の状態等に合わせたきめ細かい「オーダーメイド」の教育課程が必要です。進度別、学年タテ割りの指導、少人数・個別指導、ソーシャルスキルの獲得のための指導など、指導内容・方法を工夫することが重要であり、これを支える教員の専門性が大切です。

(10)虐待行為者の範囲

学校においては、人権教育を積極的に進めており、児童生徒の障害についての理解・啓発活動も積極的に行っています。また、学校には、障害や環境の不適応が要因となって精神的に不安定になり、突発的な行動をする児童生徒もいます。そのような時は、体を抑えるなど、行動を抑制することも必要ですが、その場合、外から見れば、虐待なのかどうか区別が付きません。虐待行為者の範囲に学校が入れられることにより、虐待行為者と見られることを恐れ、対応しなくなる恐れもあります。また、障害のある無しにかかわらず児童生徒への虐待はあってはならないことなので、障害のある者を対象とする虐待の行為者の範囲から学校をはずすことを要望します。

全国盲学校長会意見書

平成22年7月26日

視覚障害のある幼児児童生徒は、視覚による周りの状況の把握が難しく、学習面においても、聴覚、触覚等の活用や学習方法の工夫をして、時間をかけた指導が不可欠です。精神的・身体的な能力を可能な最大限度まで発達させるためには、盲学校・視覚障害特別支援学校(以下、「盲学校」)における早期からの教育を行うことが適切です。

また、盲学校では、交流及び共同学習を積極的に推進することで共に生活し、共に学ぶ教育を実施することが可能です。

さらに、幼児児童生徒のコミュニケーション手段の保障は重要です。盲学校では、視覚障害の程度に応じて、点字や拡大文字、普通文字等、一人一人のニーズに応じた文字を使用して指導を行うことが可能です。その他の学習に必要な教材も十分に用意されています。なお、視覚に障害のある幼児児童生徒が点字を習得するには、早期からの教育が重要であり、中学校や高等学校段階からでは、困難さが増してきます。

1 盲学校における点字指導等の 専門性豊かな教育の推進について

全国68校の盲学校では、点字や点図等の読み取り、歩行に関する指導等の視覚障害教育の専門性の確保を学校経営計画の最重点事項としています。全校を挙げて専門性豊かな教育を推進しています。

(1)全盲の幼児児童生徒、及び点字による教育を必要とするあるいは将来必要とする弱視幼児児童生徒に、点字を用いて教育を行っています。従って、相当な時間の研修を通して教員の点字に関する理解(以下、「点字力」)・点字の読み書きについて指導する力(以下、「点字指導力」)を高めています。点字指導者としての適格性を有する教員を確保すべきことは、必要最低限のことであり、それだけでは十分ではなく、適格性を有する教員の点字力・点字指導力の専門性を向上させる不断の研修を大切にしています。

(2)そのため、文部科学省、国立特別支援教育総合研究所、各都道府県等教育委員会における研修や、全国盲学校長会等の校長会や研究団体が行う研修とともに、各盲学校等では、点字等視覚障害教育の専門性を高める校内研修を充実させています。特に、新規採用や他の学校種からの人事異動による教員への研修を年度当初に集中的に行っています。また専門性を継承し点字力・点字指導力を向上させるための有効な研修として、各盲学校では、先輩教員から後輩教員へ職務を通して行うOJT(On the Job Training)研修を実施していて成果を上げています。

(3)点字は視覚障害を有する幼児児童生徒にとって大変重要なコミュニケーション手段です。したがって、盲学校等では教員のみならず、寄宿舎指導員、実習助手も点字について適格性を有するように育成しています。また教員による研修会等を通して、点字習得に努めている保護者も多いです。

(4)点字による教育をすすめるためには、教科書等の点訳だけでは不十分です。点図等の触って学ぶ教材を十分に活用した指導や、視覚に頼らない理科実験等、盲学校だからできる学習も多いです。

(5)幼稚園・小学校・中学校・高等学校等の教員や児童生徒、地域住民への点字講習会等を行うことができるのも盲学校です。

(6)点字・活字双方向の変換ソフト、音声読み上げソフト等や、点字プリンター、点字ディスプレイ等のハード機器を国や都道府県等の支援により整備し、ICT教育を推進しています。

(7)白杖を使った歩行について十分に学べるのも盲学校です。白状を使った歩行は、単に白杖の使い方を学ぶだけではありません。幼少時から安全な環境で積極的に歩くことに取り組み、方向感覚等必要な能力を身に付けていかなければなりません。その学習が自然にできることも盲学校の良さです。

2 盲学校での早期教育の重要性について

(1)幼児期、小学校段階の全盲児及び重度の弱視児には、概念形成や行動の基礎を育成していくことが、将来の学習や自立のために特に重要です。また、安心 して安全に学べる学習環境が必要です。そのことを保護者に適切に情報提供をしていく必要があります。

(2)環境が整えられている盲学校であれば、幼児期、小学校段階での基礎作りの教育が適切にできます。幼児児童も安心して安全に学ぶことができます。教育環境が不十分な場合、基礎的能力の育成は極めて困難です。また教育には適時性というものがあり、大きくなってからでは概念形成や行動の基礎が身に付かないことが多いです。

3 専門性の高い教育を受けながら地域で学べる現在の盲学校
-交流および共同学習と進路拡大に関して-

(1)盲学校においては、少人数である利点を生かして、交流及び共同学習が盛んです。特に教科学習を通しての共同学習が進めやすいです。東京都等では盲学校で一人一人に応じた専門性の高い教育を受けながら、居住地域の小・中学校等で大勢の児童生徒と共に学び、成果を挙げている例も多いです。またそのための副籍等の制度もあります。

(2)平成22年度の全国盲学校幼児児童生徒の在籍者数は3,478名(全国盲学校長会調査)であり、それぞれが、盲学校への入学を希望し、教育ニーズに応じたきめ細かい専門的な教育を受けています。最近では、盲学校で点字や単眼鏡、ルーペ等、個々に必要な学習の仕方を身に付けた後、大学に進学するケースも増加しています。盲学校で一人一人に応じた手厚い専門性の高い教育を受けて、高等部卒業後に大学進学や企業就労を希望する生徒・保護者も増加しています。

視覚障害のある幼児児童生徒の能力を伸ばし、社会自立・社会参加を目指す教育を行うためには、盲学校が最も適した人的及び物的な教育環境を有しています。卒業生は盲学校で学ぶことにより基礎的な力を身に付け、またその能力・個性を伸ばして、社会自立・社会参加を成し遂げています。そして、様々な分野で社会貢献を果たしています。障害のある人もない人も共に生きるというノーマライゼイション社会の実現に、盲学校が果たしている役割は大きいです。

全国聾学校長会意見書

平成22年7月26日

聴覚障害教育では、豊かな表現力や言語力を身につけ、自らコミュニケーションしていくこと、最終的に就労し自立していく生徒を育成することが求められています。そのためには、コミュニケーション、集団、学習内容・方法などの言語環境を整備する必要があります。これらのことと、閣議決定された基本的な方向性の背景として、6月7日に障害者制度改革推進会議の第一次意見があるので、合わせて意見を述べさせていただきます。

聴覚障害教育を行う特別支援学校(以下、聾学校)に在籍する生徒の、聴覚障害や発達障害の程度は様々です。このため情報保障(コミュニケーション保障、視覚情報等)や配慮を行っていますが、聾学校と同じ仕組みを通常学校の中で展開すると、問題点が幾つか出てきます。

まず、聴覚活用が不十分な幼児児童生徒(以下、生徒)に対しては、手話による教育が主になりますが、精神的な安定を図り、基礎学力や社会性を培うためにも、生徒同士が互いにコミュニケーションできる環境を確保することが大切です。「基本的な方向」には、この内容が入っているので、評価できます。

また、手話言語を学習する権利を保障すること、手話についての適格性を有する教員を確保すること、教育におけるあらゆる形態様式のコミュニケーションを保障するこという考え方についても、異論はありません。

しかしながら、聴覚障害生徒を手話だけで指導するという仕分けは、次の理由で、現実的ではないと考えます。

① 全国的にみると、聾学校の聴覚障害児の数が少なく、1学年6名以上の集団を確保しにくくなっています。また、聴こえには幅があり、補聴すると60dB内外にあります。人工内耳装用生徒は、重複学級に措置されている割合とほぼ同じ約15%在学し、聾学校普通学級に在籍する聴覚障害生徒の内、約30%に 発達障害があるといわれています。

② 聾学校のコミュニケーション手段は、口話、聴覚活用、指文字、日本語対応手話、日本手話、キュードスピーチ等がありますが、はじめの4つの使用状況は約90%を占めています。

以上、①②より現状では、学習集団の大きさ、聴こえの程度、重複や発達障害の状況、コミュニケーション手段の状況、更に家庭環境等は一定していません。「基本的な方向」は、聴力や障害の程度に幅があるにも関わらず、聴覚障害生徒全てを聾者として捉えて、コミュニケーション手段を手話に限定しています。

また、情報保障の面から考えてみる時、手話を使う1人の生徒のために、全教職員が手話を身につけるという考え方をするならば、聴覚活用する1人の生徒のために、全教職員が補聴に関して情報保障していくことを考える必要もあります。しかし、こちらの方は全く触れられていません。やはり、多様な生徒に対応するためには、実情に合わせて全てのコミュニケーション手段を同等に扱うことが望ましいと考えます。

次に、聴覚障害児と通常の児童生徒を、統合して教育したり、分離して教育するという考え方は、共に必要で、一方がよいとか悪いという問題ではないので、保護者の選択に任せるという点も評価できます。

聾学校には、30年以上の統合教育(インテグレーション)や15年以上の通級指導の歴史の中に、成功した例や失敗した例があります。成功例の感想には、授業が分からなかった、友人関係がうまくいかなかったというものが半数を占めてはいますが、本人の努力と才能で克服した者たちです。そうではなく学習空白等があり不適応を起こして、聾学校(高等部・中学部)に戻ってきた事例が数多くあるので、このことを押さえておく必要があります。

「基本的な方向」に出てくる「専門性」は、あたかも手話ができれば良しとするものです。全人格的な発達を促すための指導は、コミュニケーション手段にとらわれることなく、聴覚障害教育の言語指導、聴覚活用、手話指導、教科指導、職業教育等の専門性は不易なもので、担保していく必要があります。

このため、各学校とも、①発音・発語、読話等を生かす口話法、②聴覚の状態を知り、聴覚を最大限生かす聴覚活用、③会話を容易にする手話・指文字、④教科の専門性・指導方法などの研修、⑤人工内耳施術者に対する配慮事項、などの基本的な知識をトータルに身につけることが必要だと考え、異動者や新規採用者が、早く専門的ノウハウを身に付けるようにするために、計画的に研修をしているところです。

また、補聴器やシステムを整えれば、聴こえるようになることでもありません。要約筆記者を配置するということは、国語力があって文章が読めることが前提です。手話通訳者にしても、自立に向かって力を付けていくのは聴覚障害生徒自身なので、第三者を介すことが必ずしもベストではないと考えます。

最も大切なことは、聴こえないことによる不便さを、勇気を出して、周りの生徒に伝えていく力の育成です。

以上、現在までに培ってきた聴覚障害教育の専門性を担保しながら、本改革を進めていくようにお願いします。

全国特別支援学校肢体不自由教育校長会意見書

平成22年7月26日

本会は、昭和32年の発足以来、肢体不自由のある児童生徒とその保護者の教育への願いを受け止めながら、一人一人の自立と社会参加及び共生社会を目指して、肢体不自由教育の振興に努めてきました。今回提示された、「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)」にある「障害の有無にかかわらず、それぞれの個性の差異と多様性が尊重され、それぞれの人格を認め合う『共生社会』の実現」を目指すインクルーシブ教育システムは、本会の目指す方向と重なると考えています。

一方、特別支援学校(肢体不自由)の現在に至る経過に目を向けると、障害の重度化・重複化・多様化等に伴って医療的ケア体制、個に応じた教育環境の構築及び通学手段の確保等が不可欠であり、こうした状況に対応し、条件整備等を進めながら克服してきた経過があります。共に学び生きる共生社会を目指すインクルーシブ教育システムの推進については、本会の目指すところですが、現在の特別支援学校(肢体不自由)に在籍する児童生徒に対し、適切な教育を行うためには、次のような教育環境や教育条件の整備について十分に検討する必要があります。

1 医療的ケア体制について

(1)医療的ケアとして①注入、②吸引、③導尿等のケアがあり、学校教育を行う上で不可欠です。(現状では、多数の児童生徒について医療的ケアを欠かすことができない特別支援学校(肢体不自由)の実態があるとともに、小・中学校の教職員が現状のまま医療的ケアを行うとするならば、その実施体制や安全の確保について詳細に検討する必要があります。)

(2)小・中学校において、医療的ケアを支援・実施する常勤看護師及び教職員に医療的ケア研修を実施するためには、指導・助言・育成・相談支援を担う専門医の配置が必要です。

(3)重症心身障害の児童生徒の医療に関する専門医(指導医)及び看護師の確保が必要です。(現状では、求人難のために医療専門職の確保が、極めて困難な実態があります。)

(4)保健室要員(養護教諭、看護師、非常勤看護師、各科の校医、薬剤師等)の確保が必要です。

2 個々の児童生徒の実態に応じた教育環境の総合整備

(1)トイレ(車いす対応便器、生徒サイズの寝台、シャワー、手すり等)、洗面台(車いす使用者対応)、バリアフリー(車いす・電動車いす使用者用スロープまたはエレベーターの設置)等の整備が前提となります。

(2)個の実態に応じた自立活動に関する専門性ある人材(PT:理学療法士、OT:作業療法士、ST:言語聴覚士、他)の確保と、自立活動のための施設・設備が必要です。

(3)個に応じた学習用・医療用備品(机、椅子、教材・教具、医療器具等)が必要です。

(4)個別の指導計画・個別の教育支援計画の作成とともに、個に応じた進路指導などの学習を用意する必要があります。

(5)個々の摂食機能に応じた給食、例えば4段階の形態食:初期食、中期食、後期食、普通食など用意し、摂食指導を行うためには、専門的職歴を有する栄養士と経験と技能を有する給食委託業者が不可欠です。(不足している現状があります。)

3 通学手段等の確保

(1)通学時に、自力で通学が困難な児童生徒の通学手段を確保する必要があります。(スクールバス、タクシー、通学支援ヘルパー等)

(2)課外活動・校外遠足・修学旅行・移動教室等における交通手段(リフト付バス等)の確保及び引率する医療関係者(医師、看護師)の確保が必要です。

4 訪問教育対象児童生徒への対応

在宅及び入院加療中の児童生徒に対し、教育面において、知識・経験の高い教員を確保し、教育の機会を確保する必要があります。また、スクーリングを行う際の児童生徒の交通手段等の確保も大切です。

5 肢体不自由のある児童生徒全てに対する教育の機会均等

例えば肢体不自由の単一障害であるなどの、一部の児童生徒のみがインクルーシブ教育の対象とはならない教育制度の設計が不可欠です。例えば小学校内で医療的ケア対象の児童の保護者だけが付き添いの負担を負うようなことがないようにするなど、他の健常な児童生徒の保護者の負担と負担量が同等となるように種々の支援が十分に用意されている必要があります。

6 後期中等教育(高等学校等)への進学への対応

現在、高等学校の制度設計上、単位取得者でなければ上級学年への進級が認められません。仮に障害の有無や程度にかかわらず小・中学校に就学することになった場合、中学校の教育を終える肢体不自由生徒に対し、高校進学時に、高等学校教育の履修(単位修得)を可能とするための障害に対応した教育内容・方法、学校環境整備、支援体制を整備しておく必要があります。

肢体不自由のある児童生徒に関して対応が必要と考えられる内容について述べさせていただきました。近年、特別支援教育制度への移行に伴い、以前に比べ特別支援学校は変化してきています。また、児童生徒の障害・疾病の状況も変化してきています。ぜひ、学校現場をつぶさにみていただき、児童生徒や多くの保護者の声を聞き取るなど現状を踏まえた上で、改善の方向性を明瞭にさせていくことが、真のインクルーシブ教育システム構築につながると確信しています。

全国特別支援学校知的障害教育校長会意見書

平成22年7月26日

本会は、発足以来一貫して、知的障害のある児童生徒の一人一人の能力を最大限に伸長するため、乳幼児期から学校卒業後までを見通した多様な教育を展開し、社会的自立を図ることのできる力や地域の一員として生きていける力を培い、「共生社会の実現」に寄与してまいりました。今回提示された「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)」にある「障害の有無にかかわらず、それぞれの個性の差異と多様性が尊重され、それぞれの人格を認め合う『共生社会』の実現」を目指すインクルーシブ教育システムは、本会の目指す方向と重なると私たちは、考えています。

一方、現実に目を向けると①在籍者増による狭隘化及び発達障害児童生徒への対応等の課題②幼稚園・小中学校・高校からの支援ニーズの増大と人的配置等の課題③特別支援教育(知的障害教育)を支える専門性の育成の課題④自立と社会参加を目指す特別支援教育(知的障害教育)の推進の課題など、一刻の猶予もない課題が山積しています。こうした課題を一つ一つ解決していくことを通じてはじめて、「共生社会の実現」に到達すると私たちは考えています。換言すれば、こうした課題をそのままにして制度改革が行われるようなことがあれば、知的障害のある児童生徒の教育に重大な影響・弊害が生ずることを危惧します。

以下に特別支援学校(知的障害)において対応すべ喫緊の課題について触れさせていただきます。

1 在籍者数の増加に伴う狭隘化及び発達障害のある児童生徒への対応について

特別支援学校(知的障害)の在籍者数は増加の一途をたどっており、平成9年度約53,000人に対し、現在(平成21年度)約100,000人となり、この十数年間の間に約46,000人増加しています。なかでも高等部の増加が著しく障害の軽度の生徒に加えて、知的障害の程度が境界線級の発達障害の生徒の顕著な増加も指摘されています。

このような在籍者の増加に伴い、各学校においては、特別教室を普通教室に転用したり、普通教室をパーティションで分割したりして急場を凌いでいるのが現状です。施設設備、教員の配置、専門性の維持・向上、自閉症のある児童生徒への対応、教育課程、指導体制等の教育環境の整備や教育的対応の在り方についての改善が喫緊の課題となっています。

2 小・中・高校の支援ニーズに応える人的配置について

特別支援学校は、新学習指導要領において「これまで蓄積してきた専門的な知識や技能を活かして、地域における特別支援教育のセンターとしての機能の充実を図ること」とされ、「幼稚園、小学校、中学校、高等学校の要請に応じて、障害のある幼児児童生徒のための個別の指導計画の作成や個別の教育支援計画の作成などへの支援に努めること」とされました。

特別支援学校(知的障害)の幼小中高校への支援の状況については、本会会員(約560校)に対する「平成21年度全国調査」によれば、96,000件で昨年度に比べ17,000件増加していました。一方、特別支援教育コーディネータの指名は1,759名(昨年度比61名増)で、一校あたりの平均では3,2人でした。コーディネータの指名の状況は、専任が16%、授業軽減有り46%、授業軽減無し38%で、他の教師と同じように授業を持ちながら小・中学校の支援にあたる役割を担うなど、大変厳しい状況が続いています。今後とも支援要請が増加傾向にあることが予想されることから、新たな人的な配置等、制度的な対応が課題となっています。

3 知的障害教育の特色を踏まえた専門性の育成について

知的障害の特色は、障害の状況や学習上の特性などを踏まえ、生活する力を高める「生活中心の教育」です。指導にあたっては、一人一人の児童生徒の教育ニーズを把握し、障害の程度や発達段階及び障害に応じた個別の指導計画が立てられ、それに基づいた指導が行われています。また、指導にあたっては様々な学習上の工夫をしています。例えば、児童生徒と教師の一対一の個別指導、複数の教師による小集団・大集団による指導等、学習集団編成においての配慮や一人一人の児童生徒の運動能力や感覚機能等を高めるための教材・教具の作成、開発を行っています。

知的障害のある児童生徒たちは、抽象的な理解力やコミュニケーション能力に課題がある場合が多く、自分の心情や考えを適切に伝えたり、即時に判断したりすることが困難な傾向があります。そのために、行動特徴や心理特性については、一人一人の児童生徒達の姿をよく見つめる必要があります。興味・関心に合った活動を計画し、進んで意欲的に活動し、達成感・成就感が持てるように適切に支援することが大切だとされています。児童生徒達とかかわる上で最も重要なことは児童生徒達を豊かな個性の持ち主として受け止め、一人一人の児童生徒の差に配慮した指導を展開することのできる教師の専門性だと言われています。こうした教師の専門性を如何に維持し、向上させていくのか大きな課題になっています。

4 自立と社会参加を目指す特別支援教育(知的障害)の推進

卒業後の社会参加を進めるためには、学校と関係機関が連携を図り、生徒一人一人の障害や能力、本人の希望等の状況に応じた様々な支援を行っていくことが大切です。そのため特別支援学校(知的障害)は、ハローワークや障害者職業センター、就業・生活支援機関と連携して一人一人の生徒に応じた進路開拓を行ってきました。また、在学時から個別の教育支援計画や個別の指導計画を活用し、進路指導を進めるとともに、卒業時には、個別移行支援計画を作成し、卒業後の支援の在り方を明らかにしています。生徒が様々な支援を選択し、活用しながら卒業後の社会生活を豊かにしていくため、学校では自己理解・自己選択・自己決定の力をつけるための進路指導の充実に努めています。

自立と社会参加に必要な知識・技能を授けることは学校教育の使命であり、また、障害のある人々の職業的な自立は、共生社会の形成において極めて重要な意義を持っています。各校で取り組んできた成果等を踏まえ、職業教育や進路指導・就労支援の充実に向けた教育環境整備等、知的障害のある児童生徒の自立と社会参加に向けた取組をより一層推進していくことが求められています。

特別支援学校(知的障害)において対応すべき喫緊の課題について述べさせていただきました。こうした基本的な課題を一つ一つ解決していくこと、改善の方向性を明瞭にさせていく営為こそが、真のインクルーシブ教育システム構築の近道になるものと確信しています。

全国特別支援学校病弱教育校長会意見書

平成22年7月26日

1 病弱教育の基本的な考え方

病弱の子どもたちの教育は、病弱教育特別支援学校で行われています。病弱教育特別支援学校の大部分は、病院等の医療機関が隣接あるいは併設されており、在籍している子どもたちは医療管理を受け、様々な生活規制のもと入院(入寮)あるいは通学により学校生活をおくっています。即ち、地域の小・中学校や高等学校で学ぶことができない子どもたちの教育を病弱教育特別支援学校が行う必要があります。

また、病弱の子どもたちの教育は、子どもの病気等による状態に十分配慮し、小・中学校等の学習指導要領に準じた教育を実践し、その目標達成に努めると同時に、個々の子どもたちの病気の改善・克服ができることを目指すことなどが大きな責務です。

2 病弱教育の課題

(1)学籍(二重籍)について

病弱教育特別支援学校に在籍する子どもたちの大多数は、隣接する医療機関等で入院加療を必要とします。子どもたちの疾病や病状は多様であり、一人一人の教育的ニーズに応じた支援が求められています。

また、近年、医療技術の進展や医療制度の変化により、子どもたちの入院期間の短縮化や入院の頻回化により、地域の学校と病弱教育特別支援学校の間で転出入を繰り返す子どもたちが多くなってきています。そのため、子どもたち一人一人の教育を保障するには、地域の学校と病弱教育特別支援学校が連携し、継続的な指導が求められております。それ故、地域の学校と病弱教育特別支援学校の両方に学籍を付与する、又は病弱教育特別支援学校に学籍を移動させなくても、学籍を移動させた場合と同等の教職員の確保や必要な学校の施設設備等の予算が確保できるような制度とすることが重要です。このことは、病弱教育特別支援学校における喫緊の課題と考えます。

このようなことから、病気のため特別な教育的支援が必要な子どもたちに教育を保障する制度とするため、学籍の一元化については慎重に制度設計をすることが必要です。

また、様々な疾患に加えて心身症、精神疾患などにより入院や加療中の子どもが増えています。不登校、適応障害などで学校に通えない子どもたちや集団に入ることが難しい子どもたちへの教育を保障することが必要であり、一人一人の教育的ニーズに応じたきめ細かな指導が求められます。

(2)病弱教育特別支援学校における心理的な課題

病弱教育特別支援学校に在籍している子どもたちは、「健康」な状態から「病気」という状態になることにより心理的な側面から、不安や苛立ち、焦燥感や不信感、時として神経性の腹痛や頭痛といった身体的な症状として表れることもあります。

また、入院を余儀なくされ、子どもの生活の基盤である家庭からの分離により、情緒不安なども見られ、睡眠や食欲不振等も表れることがあります。治療によっては、苦痛も伴いストレスがたまりやすい傾向にあります。このような状況下で前籍校に不安なく復学できるような環境づくりが不可欠です。病気が快方に向かい、自宅からの通学ができるような状態となったとはいえ、入退院の度に転学ではなく、地域の学校と病弱教育特別支援学校の両方に籍を置く支援システム、又は学籍を移動させなくても両校からの教育的な支援を受けることができるシステムを考えていかなくてはなりません。

(3)重症心身障害児の対応について

病弱教育特別支援学校においても医療的ケア(注入、吸引、導尿)等が必要な重症心身障害児が在籍しています。継続した治療が必要になるため、医療設備が整った病院等での対応が求められます。そのような子どもたちの教育機会を保障するには、専門性の高い教員を確保するとともに、教員派遣等による訪問指導を充実するための諸条件を整備しなくはなりません。

重症心身障害児が豊かに生きるための地域との強い繋がりが求められます。地域で共に学び、共に生きる教育を通して、お互いのよさを感じ、支え合い、助け合っていくことが大切です。

(4)病弱教育特別支援学校のこれからの役割

病気の子どもたちに対して、医療と教育が連携・協働して、病気の改善と意欲的な社会自立に向けた基礎づくりを推進していくことは重要なことです。しかし、近年、小児科を設置しない病院が多くなってきています。そのため、病弱教育の充実を図るには憂慮すべき状況となってきています。文部科学行政と厚生労働行政の連携を促進し、小児医療の充実方策を図ることが必要です。

子どもは、居住する地域の病院にとどまらず、先進的な医療を展開する小児医療病院に入院することも多く、市町村や都道府県といった行政区画を超えて入院する事例が増加傾向にあります。地域の学校で担うことができない広域性を踏まえ、病弱教育特別支援学校の役割を再認識しなければならない時期であると考えます。

また、入院することにより、地域の学校の友だちと話をすることができないといった孤立した状態を改善する一つの方法として、情報機器を活用した授業の試みを実践レベルまで引き上げる研究の進展が望まれます。

このように病気のため孤立しがちな子どもに病弱教育特別支援学校での「教育」と「集団」を保障することが大切です。

病気で苦しんでいる子どもたちに適切な教育を保障すること、学習空白をつくらないような連携システムを構築することこそ障がい者制度改革推進会議の第一次意見に示されたインクルーシブ教育の本質であると考えます。

今後わが国が目指す共生社会を実現していくためには、より一層病弱教育特別支援学校の果たすべき役割が重要になっていくことをご認識いただきますようお願い申し上げます。

「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)素案」に対する要望

平成22年6月1日

障がい者制度改革推進本部長 鳩山 由紀夫様

全国連合小学校長会 会長 向山 行雄
全日本中学校長会 会長 新藤 久典
全国高等学校長協会 会長 青山 彰
全国特別支援学校長会 会長 尾崎 祐三
全国特別支援学級設置学校長協会 会長 瀧島 順一

平成19年以降の新たな特別支援教育制度の枠組みの下、特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行う教育として着実に成果を上げてきました。その範囲は、従来の特別支援学校、特別支援学級のみならず小学校・中学校の通常の学級、幼稚園、高等学校にまで及んでいます。

また、一人一人にきめ細かく対応する特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒への教育にとどまらず、障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ様々な人々が生き生きと活躍できる共生社会の形成の基礎となるものであり、我が国の現在及び将来の社会にとって重要な意味をもっています。その点においてはインクルーシブ教育と特別支援教育は相反するものではなく、同じ方向を向いているものと考えています。

障害者の共生社会への参画や一人一人の社会自立を実現するには、財政的な措置や仕組みを整備していくための計画が必要ですし、国民の理解も大変重要であると考えます。

インクルーシブ教育システムについては、子どもの能力を可能な最大限度まで発達させるとの権利条約の趣旨を踏まえれば、理念や制度論のみ議論するのではなく、必要な人的体制や物的条件の整備を進めることを前提として議論・検討すべきだと考えます。

こうしたインクルーシブ教育システム実現に向けた教育分野の種々の課題や制度設計の議論を行うに当たっては、今後多くの教育関係者・専門家を加えた教育部会を設置し、必要な条件・環境整備のないままに拙速な制度改革が進められることによる学校現場への重大な影響・弊害が生じないよう、現場の実態等を十分踏まえた慎重な検討・議論を行っていただくようお願いいたします。

新しい特別支援教育の枠組みの中、相互の緊密な連携・役割分担の下に指導・支援の実績を着実に上げてきた特別支援学校や小学校・中学校・高等学校としては、多くの教育・学校現場で深刻かつ重大な混乱・影響が生ずることがないことを願う次第です。このため、特に次の事項について強く要望します。

  • (1)障がい者制度改革推進会議においては十分な議論や検討を行い、適切な方針が決定されること
  • (2)財政措置や資質・専門性のある人材の確保等も織り込んだ検討及び制度設計を行うこと
  • (3)教育・学校関係者を交えた検討の場を設置すること

「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)素案」に対する具体的な要望

1 特別支援学校の地域への設置

特別支援学校を希望する児童生徒が増加しており、学校数も増えていますが、教室不足が深刻な状況です。特別支援学校の教室不足を解消するとともに、地域社会における児童生徒の生活を充実させる観点からも、特別支援学校の増設、分校、分教室の設置を促進することが必要です。

障害のある児童生徒の地域生活を充実するためには、特別支援学校や特別支援学級と通常の学級との交流及び共同学習を推進する制度や教員の資質向上や補充の強化が必要です。特別支援学校に在籍する児童生徒で希望するものは居住地にある小学校や中学校に副次的な籍を設けることや、特別支援学級に在籍する児童生徒と通常の学級に在籍する児童生徒との交流及び共同学習をより一層推進するための条件整備について検討する必要があります。

2 就学相談での配慮

就学においては、個別の教育支援計画の作成に保護者が積極的に参画し、保護者の意見を最大限尊重して設置者が決定する仕組みを作ることが必要です。そのためには、保護者、学校、設置者の三者の合意を調整する「第三者機関」は、指導の専門性と客観・公正な見識をもち併せる構成員にする必要があります。

さらに、就学後、児童生徒が不適応を起こしたり、就学時に想定されなかった教育的ニーズが必要になったりした際には、児童生徒のニーズに合わせた教育ができるように、就学先の変更が速やかに行われる仕組みを作る必要があります。

3 就学先の決定

障害のある幼児児童生徒にとっては、保護者の理解の下、幼児期から学校卒業後まで、一貫した教育的支援が必要です。就学期においては、専門家や関係者の多面的な観察・助言を生かして就学先を判断できるような就学相談の充実とともに、これまでより一層「個別の教育支援計画」作成プロセスへの保護者の参画を進め、結果として保護者の意向を十分尊重して、実際の指導・支援のあり方が決定できるようにすることが重要です。

4 障害のある児童生徒の学籍

通常の学級に在籍することを原則とすると、特別支援学校や特別支援学級の設置の根拠がなくなり、特別支援学校や特別支援学級の専門性のある教員の確保や障害にあわせた教育環境の整備が計画的にできなくなる恐れがあります。言語・意思疎通の環境だけでなく、個人にとって最も適切な教育環境(専門性のある教員の配置、障害に合わせた教育内容・指導方法、バリアフリーの環境、児童生徒が安定して過ごせる環境、感染症対策など医療に配慮された環境等)を必要とする場合は、特別支援学校や特別支援学級に在籍する制度が必要です。インクルーシブ教育システムの構築に当たっては、特別支援学校や特別支援学級の役割も明確にする必要があります。

5 学校教育におけるニーズに合わせた教育内容の保障

障害者の人格、才能及び能力を可能な限り発達させるためには、コミュニケーション手段の保障はもとより、本人のニーズに合わせた教育内容・方法が必要です。障害のある児童生徒の特性に応じた指導が可能な専門性の高い教員は、特別支援学校、特別支援学級においても不足しているため、児童生徒の在籍状況に合わせた措置が必要です。通常学級に在籍する発達障害のある児童生徒も年々増加の一途を辿っており、必要な人的措置が追いつかない状況です。

教育現場においては、コミュニケーションの手段を確保した上で、障害の特性に応じた教育内容を設定し、指導方法を工夫する必要があります。同時に通常の学級の教育課程が円滑に実施できるようにするための教育方法の工夫が必要です。障害のある児童生徒にとっても、障害のない児童生徒にとっても効果的な教育ができることを実証されることによって、初めて学ぶ場の共有が可能となります。

6 キャリア教育・職業教育について

共生社会の実現のためには、障害のある児童生徒一人一人が勤労観・職業観を身に付け、主体的に社会参加・自立できるように小学校段階からのキャリア教育・職業教育を充実することが重要です。

特に、特別支援学校の高等部においては、多様な障害に対応して、生徒一人一人のニーズにあわせた職業教育を実施し、企業就労等に結び付けています。専門的な職業教育への期待は高く、多くの生徒や保護者が、専門的な教育を行う高等部への入学を希望しています。そのため、障害の特性に合わせた専門的な職業教育を受けることのできる特別支援学校の高等部を拡充し、職業教育の機会均等を図ることが大切です。

7 合理的配慮

障害のある児童生徒の教育内容は、個々の障害の状態に応じて弾力的に選択することが必要です。通常の学級で実施される教育内容・方法と障害のある児童生徒のニーズに合わせた教育内容・方法との整合性や学習活動の可能性などについても十分検討する必要があります。障害のある児童生徒にとっても、障害のない児童生徒にとっても「人間の多様性を尊重しつつ、精神的・身体的な能力を可能な限り発達させる」ことになることを検証した上で、通常の学級での教育を実施することが重要です。

教員の加配や施設設備の整備などの合理的配慮にもとづく条件整備は、児童生徒の就学前に整えておく必要があります。条件整備がなされる前に就学することになると、「保護者の多大な負担」がそのまま就学先に課され、未整備な側面が全て合理的配慮を欠くと解釈される恐れがあるだけでなく、その間、十分な教育を受けられなくなることになりますので、条件整備を先行させながら、教育環境が整った学校から実施する制度設計が必要です。

8 視覚や聴覚に障害のある児童生徒への合理的配慮

視覚や聴覚に障害のある児童生徒の教育においては、点字・手話等さまざまなコミュニケーション手段の保障及び早期からの教育が必要です。さらに、視覚や聴覚の障害に配慮した学習環境を整えることが必要です。視覚障害、聴覚障害の児童生徒にとって同じ学習方法で学ぶための一定程度の集団の確保が重要であり、専門的指導・支援のための設備・機器(点字ブロック、校内文字表示盤等)の整備が大切です。

9 肢体不自由や病弱のある児童生徒への合理的配慮

肢体不自由・病弱教育における重度の障害のある児童生徒には、医療的ケアを必要とすることもあり、それに応じた対応が必要です。また、バリアフリー環境の整備を進めるとともに、外部の専門家(理学療法士や心理の専門家等)との連携を図り身体や病気の状態に応じた専門的な指導が大切です。また、病弱教育では、病状に応じた配慮だけでなく、入院前にいた学校(前籍校)との繋がりを確保できるよう機器(TV会議システム等)を整備することも重要です。

10 知的障害のある児童生徒への合理的配慮

知的障害教育においては、一人一人の障害の状態等に合わせたきめ細かい「オーダーメイド」の教育課程が必要です。進度別、学年タテ割りの指導、少人数・個別指導、ソーシャルスキルの獲得のための指導など、指導内容・方法を工夫することが重要であり、これを支える教員の専門性が大切です。

11 虐待行為者の範囲

学校においては、人権教育を積極的に進めており、児童生徒の障害についての理解・啓発活動も積極的に行っています。虐待行為者の範囲から学校をはずすことを要望します。

「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)素案」に対する要望

平成22年6月1日

障がい者制度改革推進本部長 鳩山 由紀夫様

全国連合小学校長会 会長 向山 行雄
全日本中学校長会 会長 新藤 久典
全国高等学校長協会 会長 青山 彰
全国特別支援学校長会 会長 尾崎 祐三
全国特別支援学級設置学校長協会 会長 瀧島 順一

平成19年以降の新たな特別支援教育制度の枠組みの下、特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行う教育として着実に成果を上げてきました。その範囲は、従来の特別支援学校、特別支援学級のみならず小学校・中学校の通常の学級、幼稚園、高等学校にまで及んでいます。

また、一人一人にきめ細かく対応する特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒への教育にとどまらず、障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ様々な人々が生き生きと活躍できる共生社会の形成の基礎となるものであり、我が国の現在及び将来の社会にとって重要な意味をもっています。その点においてはインクルーシブ教育と特別支援教育は相反するものではなく、同じ方向を向いているものと考えています。

障害者の共生社会への参画や一人一人の社会自立を実現するには、財政的な措置や仕組みを整備していくための計画が必要ですし、国民の理解も大変重要であると考えます。

インクルーシブ教育システムについては、子どもの能力を可能な最大限度まで発達させるとの権利条約の趣旨を踏まえれば、理念や制度論のみ議論するのではなく、必要な人的体制や物的条件の整備を進めることを前提として議論・検討すべきだと考えます。

こうしたインクルーシブ教育システム実現に向けた教育分野の種々の課題や制度設計の議論を行うに当たっては、今後多くの教育関係者・専門家を加えた教育部会を設置し、必要な条件・環境整備のないままに拙速な制度改革が進められることによる学校現場への重大な影響・弊害が生じないよう、現場の実態等を十分踏まえた慎重な検討・議論を行っていただくようお願いいたします。

新しい特別支援教育の枠組みの中、相互の緊密な連携・役割分担の下に指導・支援の実績を着実に上げてきた特別支援学校や小学校・中学校・高等学校としては、多くの教育・学校現場で深刻かつ重大な混乱・影響が生ずることがないことを願う次第です。このため、特に次の事項について強く要望します。

  • (1)障がい者制度改革推進会議においては十分な議論や検討を行い、適切な方針が決定されること
  • (2)財政措置や資質・専門性のある人材の確保等も織り込んだ検討及び制度設計を行うこと
  • (3)教育・学校関係者を交えた検討の場を設置すること

「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)素案」に対する具体的な要望

1 特別支援学校の地域への設置

特別支援学校を希望する児童生徒が増加しており、学校数も増えていますが、教室不足が深刻な状況です。特別支援学校の教室不足を解消するとともに、地域社会における児童生徒の生活を充実させる観点からも、特別支援学校の増設、分校、分教室の設置を促進することが必要です。

障害のある児童生徒の地域生活を充実するためには、特別支援学校や特別支援学級と通常の学級との交流及び共同学習を推進する制度や教員の資質向上や補充の強化が必要です。特別支援学校に在籍する児童生徒で希望するものは居住地にある小学校や中学校に副次的な籍を設けることや、特別支援学級に在籍する児童生徒と通常の学級に在籍する児童生徒との交流及び共同学習をより一層推進するための条件整備について検討する必要があります。

2 就学相談での配慮

就学においては、個別の教育支援計画の作成に保護者が積極的に参画し、保護者の意見を最大限尊重して設置者が決定する仕組みを作ることが必要です。そのためには、保護者、学校、設置者の三者の合意を調整する「第三者機関」は、指導の専門性と客観・公正な見識をもち併せる構成員にする必要があります。

さらに、就学後、児童生徒が不適応を起こしたり、就学時に想定されなかった教育的ニーズが必要になったりした際には、児童生徒のニーズに合わせた教育ができるように、就学先の変更が速やかに行われる仕組みを作る必要があります。

3 就学先の決定

障害のある幼児児童生徒にとっては、保護者の理解の下、幼児期から学校卒業後まで、一貫した教育的支援が必要です。就学期においては、専門家や関係者の多面的な観察・助言を生かして就学先を判断できるような就学相談の充実とともに、これまでより一層「個別の教育支援計画」作成プロセスへの保護者の参画を進め、結果として保護者の意向を十分尊重して、実際の指導・支援のあり方が決定できるようにすることが重要です。

4 障害のある児童生徒の学籍

通常の学級に在籍することを原則とすると、特別支援学校や特別支援学級の設置の根拠がなくなり、特別支援学校や特別支援学級の専門性のある教員の確保や障害にあわせた教育環境の整備が計画的にできなくなる恐れがあります。言語・意思疎通の環境だけでなく、個人にとって最も適切な教育環境(専門性のある教員の配置、障害に合わせた教育内容・指導方法、バリアフリーの環境、児童生徒が安定して過ごせる環境、感染症対策など医療に配慮された環境等)を必要とする場合は、特別支援学校や特別支援学級に在籍する制度が必要です。インクルーシブ教育システムの構築に当たっては、特別支援学校や特別支援学級の役割も明確にする必要があります。

5 学校教育におけるニーズに合わせた教育内容の保障

障害者の人格、才能及び能力を可能な限り発達させるためには、コミュニケーション手段の保障はもとより、本人のニーズに合わせた教育内容・方法が必要です。障害のある児童生徒の特性に応じた指導が可能な専門性の高い教員は、特別支援学校、特別支援学級においても不足しているため、児童生徒の在籍状況に合わせた措置が必要です。通常学級に在籍する発達障害のある児童生徒も年々増加の一途を辿っており、必要な人的措置が追いつかない状況です。 教育現場においては、コミュニケーションの手段を確保した上で、障害の特性に応じた教育内容を設定し、指導方法を工夫する必要があります。同時に通常の学級の教育課程が円滑に実施できるようにするための教育方法の工夫が必要です。障害のある児童生徒にとっても、障害のない児童生徒にとっても効果的な教育ができることを実証されることによって、初めて学ぶ場の共有が可能となります。

6 キャリア教育・職業教育について

共生社会の実現のためには、障害のある児童生徒一人一人が勤労観・職業観を身に付け、主体的に社会参加・自立できるように小学校段階からのキャリア教育・職業教育を充実することが重要です。

特に、特別支援学校の高等部においては、多様な障害に対応して、生徒一人一人のニーズにあわせた職業教育を実施し、企業就労等に結び付けています。専門的な職業教育への期待は高く、多くの生徒や保護者が、専門的な教育を行う高等部への入学を希望しています。そのため、障害の特性に合わせた専門的な職業教育を受けることのできる特別支援学校の高等部を拡充し、職業教育の機会均等を図ることが大切です。

7 合理的配慮

障害のある児童生徒の教育内容は、個々の障害の状態に応じて弾力的に選択することが必要です。通常の学級で実施される教育内容・方法と障害のある児童生徒のニーズに合わせた教育内容・方法との整合性や学習活動の可能性などについても十分検討する必要があります。障害のある児童生徒にとっても、障害のない児童生徒にとっても「人間の多様性を尊重しつつ、精神的・身体的な能力を可能な限り発達させる」ことになることを検証した上で、通常の学級での教育を実施することが重要です。

教員の加配や施設設備の整備などの合理的配慮にもとづく条件整備は、児童生徒の就学前に整えておく必要があります。条件整備がなされる前に就学することになると、「保護者の多大な負担」がそのまま就学先に課され、未整備な側面が全て合理的配慮を欠くと解釈される恐れがあるだけでなく、その間、十分な教育を受けられなくなることになりますので、条件整備を先行させながら、教育環境が整った学校から実施する制度設計が必要です。

8 視覚や聴覚に障害のある児童生徒への合理的配慮

視覚や聴覚に障害のある児童生徒の教育においては、点字・手話等さまざまなコミュニケーション手段の保障及び早期からの教育が必要です。さらに、視覚や聴覚の障害に配慮した学習環境を整えることが必要です。視覚障害、聴覚障害の児童生徒にとって同じ学習方法で学ぶための一定程度の集団の確保が重要であり、専門的指導・支援のための設備・機器(点字ブロック、校内文字表示盤等)の整備が大切です。

9 肢体不自由や病弱のある児童生徒への合理的配慮

肢体不自由・病弱教育における重度の障害のある児童生徒には、医療的ケアを必要とすることもあり、それに応じた対応が必要です。また、バリアフリー環境の整備を進めるとともに、外部の専門家(理学療法士や心理の専門家等)との連携を図り身体や病気の状態に応じた専門的な指導が大切です。また、病弱教育では、病状に応じた配慮だけでなく、入院前にいた学校(前籍校)との繋がりを確保できるよう機器(TV会議システム等)を整備することも重要です。

10 知的障害のある児童生徒への合理的配慮

知的障害教育においては、一人一人の障害の状態等に合わせたきめ細かい「オーダーメイド」の教育課程が必要です。進度別、学年タテ割りの指導、少人数・個別指導、ソーシャルスキルの獲得のための指導など、指導内容・方法を工夫することが重要であり、これを支える教員の専門性が大切です。

11 虐待行為者の範囲

学校においては、人権教育を積極的に進めており、児童生徒の障害についての理解・啓発活動も積極的に行っています。虐待行為者の範囲から学校をはずすことを要望します。

障がい者制度改革推進会議(第17回)意見書

全国連合小学校長会としての意見及び要望等

特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒への教育にとどまらず、障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ様々な人々が生き生きと活躍できる共生社会の形成の基礎となるものであり、我が国の現在及び将来の社会にとって重要な意味をもっています。その点においてはインクルーシブ教育システムと特別支援教育は相反するものではなく、同じ方向を向いているものと考えています。

障害者の共生社会への参画や一人一人の社会的自立の実現には、財政的な措置や仕組みを整備していくための計画が必要であり、国民の理解も大変重要であると考えます。

インクルーシブ教育システムについては、子どもの「能力を可能な最大限度まで発達させる」との権利条約の趣旨を踏まえれば、理念や制度論のみ議論するのではなく、必要な人的体制や物的条件の整備を進めることを前提として議論・検討すべきだと考えます。

また、全国連合小学校長会では、ここ数年、通常の学級に在籍する発達障害のある児童についての実態調査を実施しておりますので、その調査結果をお知らせし、発達障害のある子どもも含めての対応を考えていくことが必要です。ここまで進んできた校内支援体制が後退しないよう配慮していただきたい。

全国連合小学校長会としての要望

1.特別支援学校や特別支援学級の希望者が年々増加傾向にある実態を踏まえ、特別支援学校や特別支援学級の位置づけの明確化と、保護者・本人のニーズ調査による必要規模の確保を図っていただきたい。

2.就学先の決定に際しては、「能力を可能な最大限度まで発達させる」(障害者の権利に関する条約)ためにも、専門家や関係者の観察・助言が生かせるような仕組み(就学相談・指導等)の充実を図っていただきたい。また、就学相談・指導に関して本人・保護者、学校、学校設置者の三者の合意が得られない場合には、「第三者機関による調整を求めることができる仕組みとする。」とありますが、「第三者機関」は、指導の専門性と客観・公正な見識を持ち合わせた人材で構成していただきたい。

3.「差別」等の定義やその法的整備の前に、全ての学校において「合理的な配慮」が実現できるような計画を示していただきたい。特に、通常の学級に在籍する発達障害のある児童生徒の指導には、早急な人的措置が求められる。

4.現在の特別支援学校や特別支援学級でも専門性のある教員の確保に苦慮している。ぜひ思い切った発想で、実現可能な方策を示していただきたい。

全国連合小学校長会の調査結果(平成21年8月現在)
~通常の学級に在籍する発達障害のある児童について~

調査対象は、全国各都道府県で2年以上同一校に勤務している校長の在籍校で調査対象校を選定し,各都道府県小学校数の4%の学校(特別支援学級,通級指導教室設置校を含む)858校に依頼。回答校849校 回答率98.9%。(全国の小学校数は、21000校)

1 学校の状況について

(1)通常の学級に在籍する発達障害のある児童の人数と全校児童数に対する比率

全国の849校中775校(91.2%)に8,864名の発達障害のある児童が在籍していた。

調査対象校全児童数291,335名に対する割合は3.0%であり昨年度と比較すると人数で1397名,在籍比率で0.5ポイント増加がみられた。平成14年度に行った全国の実態調査では,通常の学級の中に在籍するLDやADHDなどの児童・生徒は約68万人,全児童・生徒数の6.3%の割合で在籍しているとの報告と比べても3.3ポイントの差がある。今回の調査と,調査対象校,調査年次,設問項目や調査方法などが異なり単純には比較はできないが,3.0%とは,各校が緊急に対応する必要のある発達障害のある児童の数だと考える。

一斉授業を乱すことなく,著しく学習が遅れることもなく,対人関係にも目立ったトラブルがない発達障害のある児童についてはこの調査には挙がらなかったと考える。

また、特別支援学級を設置している学校と未設置校との違いを見ると,設置校の方が,学校規模に関係なく発達障害のある児童が在籍する割合が高い状況が伺えた。

さらに,8割の学校で1~19名の発達障害のある児童が在籍している状況である。

(2)医師により「発達障害」と診断された児童数

医師により「発達障害」と診断された児童は,8864名中2599名(29.3%)であった。昨年度と比較すると276名増加しているが,比率では1.8ポイントの減少となった。特別支援教育が始まり3年目を迎え,発達障害への認識が広がりを見せているが,医療機関の数が増えていない現状が感じられる。

(3)個別の教育支援計画の策定状況について

児童数では,8864名中2011名(22.7%)の策定に留まっていることがわかった。

2 通常の学級に在籍する発達障害のある児童への教育的支援について

(1)発達障害のある児童の指導で困っていること

授業に参加できない、学習について行けないが575校(74.1%)、「友達とのトラブが絶えない」が508校(65.5%)。「その児童の行動が原因となり学級の授業に支が生じている」が480校(61.9%)。「集団行動ができず,指導ができない」が401校(51.7%)。とそれぞれ増加傾向で,発達障害のある児童への対応は,これまでも学校の支援体制の確立や介助員等の人的配置等が年次的に進められてきているが,今回の調査の結果から,より一層の推進が求められているといえる。

(2)発達障害のある児童に対する通常の学級での対応

「学級担任の個別的な配慮」が最も多く6,262件(57.3%),「介助員,指導員補助」1,588件(14.5%),「個別の指導の時間を取る」1,091件(10.0%),「特別支援学級の担当者が指導」691件(6.3%),「別の教員が付き添う」492件(3.9%),となっていた。

学級担任が個別的な配慮を行っている内容は、「休み時間や放課後に個別指導」が503校(71.6%)と最も多く,次いで,「教材を個に応じて作成,指導」が,342校(48.6%),「個に応じた家庭学習を準備」が243校(34.6%)の順であった。

発達障害のある児童が在籍し,日々個別的な配慮をしている学級担任の多くが時間を確保して個別に対応しようとしていたり,教材を工夫したりして個に応じたきめの細やかな指導を実施している実態から,学級担任の負担が増していることがわかった。

(2)個別指導(取り出し指導)の指導者について

個別指導の時間を確保している学校は353校あり,そのうち,加配教員が行っている学校が115校(32.6%)と最も多く,次いで指導補助員・介助員等が指導となっている。

また,校長49校(13.9%),教頭69校(19.5%)が指導にあたっていると回答しており,昨年度と比較してみると共に増加している。各小学校では対象児童の増加により,依然として人員不足の状況が続いており,一層その対応に苦慮していることが伺える。学校運営全体に責任をもつ管理職がやむを得ず対応している現状があり,こうした事態が拡大していくことで,本来業務に支障を生じ,学校全体の教育活動が低下することが懸念されることから,人的措置の一層の改善が必要である。

3 通常の学級に在籍する発達障害のある児童への教育を推進する上での困難点

(1)困難を感じていること

発達障害のある児童への指導内容や方法がわからない「指導上の困難」307校(39.6%)が,今学校現場の一番困っていることで、次いで、指導できる人材がいない「指導体制の困難」287校(37.0%)であった。この二つが群を抜いていた。

(2)困難を解決するための対応

「指導できる教員の増配置」への要望が566校(73.0%)で一番多く、次いで,「指導補助員,介助員,学生支援等の配置」432校(55.7%)であった。如何に多くの学校で,発達障害のある児童への対応に,教員や支援員等の増配置を強く望んでいるかが明らかになった。このように,人の配置を望む傾向は,それぞれの割合に多少の変化はあるものの昨年度と同様であった。

4 就学相談について

「入学後も継続的な就学相談が必要な児童」の人数も2,820人で,昨年度より526名増加していた。

「入学後も継続的な就学相談が必要な児童の対応として、「定期的に保護者との面談を継続」が420校(64.9%),「校内委員会に定期的に報告し指導計画の作成・実施・評価を行う」が335校(51.7%)で,保護者の理解・啓発とともに児童の実態に合わせた指導の努力がなされている。また,「特別支援学級への在籍又は,『通級による指導』による支援」と「補助員,介助員,支援員等を配置」が319校(49.3%)となって昨年度より増加していることや「巡回相談等の専門家に定期的に診断を受け指導実施」が265校(40.9%)からも指導の努力がうかがえる。これらの努力の成果は「適切な支援の為の就学先変更について保護者の理解が得られない」が昨年度と比較して226校から193校と減少していることに表れている。

就学相談が必要な児童への適切な対応のためには,発達状況に合わせた専門的指導が児童の成長につながることを保護者が理解することと,幼稚園・保育園・小学校がその指導体制を整えて取り組むことが必要だと考える。

障がい者制度改革検討における教育分野に対する意見

全国コーディネーター研究会
会長 野村 東助(東京学芸大学名誉教授)

障がい者制度改革推進会議委員及び関係者の皆さまにおかれましては、熱心な議論、検討いただいておりますことに感謝申し上げます。

本研究会として、教育の分野につきまして、意見を取りまとめ、保護者の意見も合わせてお伝えいたします。ぜひ、現場の関係者の声、発達障害の専門家の声として、取り上げていただきますようお願いいたします。

【要望事項】

1. インクルーシブを二つの権利(①環境調整と②個々の能力を最大限引き出す)から充実させて下さい。ここでは、特に、②について意見を述べます。

(1)障害のある子ども達には、個々のニーズに応じた通級指導教室や固定の特別支援学級、特別支援学校などの多様な支援の場が充実することが必要です。また、そのためのバランスのとれた予算配分が必要です。

(2)障害のある子ども達のニーズを正しく把握して、その子にとって最善の就学の場・支援の内容を考えるために、医療や教育の関係者の知見を集めて生かす制度にすることが必要です。

2. 十分に当事者や保護者、教育関係者・専門家の意見を収集し、現実的な教育現場を想定した慎重な討議を心から望みます。

全国コーディネーター研究会とは、通常の学級に学ぶLD,ADHD,高機能自閉症等の「発達障害」のある子どもたち・保護者の理解と支援を深めることを目的に研究活動をして参りました。特別支援教育の核となる特別支援教育コーディネーターを中心に、校長・教頭・教務主任・生活指導主任・養護教諭・通級指導教室担任・特別支援学級担任・特別支援学校担任・スクールカウンセラー・特別支援教育支援員・行政・心理・NPO等々、様々な立場と多様な職種の方々で構成されています。

「障がい者制度改革推進会議」委員
及び関係各位

全国コーディネーター研究会
会長 野村 東助(東京学芸大学名誉教授)

1 真のインクルーシブを求めて

本研究会は、通常の学級に学ぶLD,ADHD,高機能自閉症等の「発達障害」のある子どもたちの理解と支援を深めることを目的に研究活動をして参りました。特別支援教育の法制化以前の平成16 年秋に、東京コーディネーター研究会を立ち上げ、東京都教育委員会の予め指定した研究団体にもなりました。研究実績を積みながら、平成21年夏には、全国組織として、全国コーディネーター研究会を出発させています。

私どもの全国コーディネーター研究会には、特別支援教育の核となる特別支援教育コーディネーターを中心に、校長・教頭・教務主任・生活指導主任・養護教諭・通級担任・特別支援学級担任・特別支援学校担任・スクールカウンセラー・特別支援員・行政・心理・NPO等々、様々な立場と多様な職種の方々が集まってきています。

中心としてきた研究内容は次の3点です。

  • ①「障害特性」のより深い理解、
  • ②「指導方法」の工夫と開発、
  • ③効果的な「連携」の在り方

通常の学級に学ぶ「発達障害」の子ども達と保護者の方々は、孤立し、日々苦闘しています。そして、教育に携わる人たちや周囲の人たちのもう少しの理解を、もう少しの指導の工夫を、温かな言葉かけを求めています。私たちの願いと目指すことは、ただ一つ。「発達障害」のある子ども達、そして、全ての子ども達に、「笑顔」が増えていくことです。

私たちはインクルーシブな教育を、教育現場で、日々、実践的に創り出していくことに取り組んできたと自負しています。

2 子どもたちの笑顔を増やしていくためには

私たちの実践と研究活動の中で見えてきたものがあります。それは、子ども達の笑顔は、「個」が輝くことと、「共に生きる」集団づくり・考え方づくりの双方にあるということです。

後者の、障害のある子ども達を含めて学校づくり・学級づくりをしていくことの大切さは、議論の余地のないことです。それは、通常の子にとっても、障害のある子にとっても必要なことであり、学校はもちろん、社会全体の意識改革と努力が大切になります。こうした環境がつくられることは、子どもたちや保護者の重要な権利です。

一方、忘れてはならないのは、障害のある子ども達が、その子その子の障害特性をもっているということ、そのために一人一人のニーズの違いに応じた専門的できめ細かな支援を行う多様な支援の場を必要としていることです。子ども達は、やがて社会に巣立っていきます。どの子にも、社会に出て自分らしく幸せに生きていく力を育てることは、社会全体の責任です。多様な支援の場が子ども達のために活用される制度、それによる専門的な支援の充実が、インクルージョンの基盤になっていかなければなりません。

子ども達も保護者も、ニーズに応じた十分な指導・支援を求める最重要な権利を有しています。この権利が、本当の意味で守られることを切に望みます。

3 インクルーシブを二つの権利から充実を

『全ての子の在籍を通常の学級に』ということは、目指す理念の一つとして重要なことであり、意義のあることだと考えます。障害のある子ども達を囲む全ての教師や子どもたち、そして保護者を含む全ての大人たちの心の中に、目指す方向として定着させていかなければならない事柄であり理念であるとも、強く感じています。

しかし、この理念だけが突出し、障害のある子ども達を正しく理解する努力や知恵を合わせて最善の支援ができる場を見つけていく努力をおろそかにしてはいけないと考えます。また、子ども達のニーズに応じた支援が行える多様な支援の場を整備し充実させることも、欠かしてはならないことです。広く意見を集め、特別支援教育を支える多くの条件を十分に検討して、障害のある子ども達一人一人が「個」を輝かせることのできる、現実的な条件整備を計画的に検討する必要があります。

例えば、現在、教育の場では、障害のある子ども達への支援の場として、通常の学級の校内支援、通級指導、固定の特別支援学級、特別支援学校が選択肢となっています。この体制は、十分とはいえないものの、長年の「障害児教育」の中で工夫され、改善と充実が図られてきた有効な制度です。

障がいのある子ども達が通常の学級に籍を置き、生活と学習の多くをそこで行うことで得られるものは多いと考えます。そのことは、必要な人的配置や予算を含め、「推進会議」の席で具体的に検討が深められていることと理解しています。

そこで、ここでは、通常の学級以外の専門的な支援の場の必要性を中心に、2つの点について、私たちが教育の現場で見てきている事実を基に意見を記し、検討事項に含めて頂けるようお願いしたいと思います。

① 障害のある子ども達には、通級指導教室や固定の特別支援学級、特別支援学校などの多様な支援の場が充実することが必要です。また、そのためのバランスのとれた予算配分が必要です。

ご存じのように、特別支援学校・学級、通級指導教室は年々保護者の希望・子ども達のニーズが高まり、入学(級)人数は増え続けています。このニーズと保護者の求めを無視するわけにはいきません。

特別支援教育の全体を見通して、本当に必要とされている支援の場のそれぞれが充実を図っていける予算の配分が必要です。通級指導教室、特別支援学級、特別支援学校等の人員配置、学校・学級設置・施設整備への予算配分が阻害されない、特別支援教育全体を充実させる提案をお願いしたいと思います。

また、教育というのは、「計画的」「意図的」な営みです。そのため「教育課程」をもとに指導し、評価し、次に改善と充実を図っていきます。

特別支援学校の副籍による地域小中学校との交流が行われていますが、通常の子ども達の理解を深めやすいように、特別支援学校の子どもたちの負担にならないようにと、双方の教育効果を考慮して行われています。副籍事業の成果をあげている特別支援学校のコーディネーターは、互いの教育課程を損なわない交流にこそ効果があると経験を語っています。

特別支援学級と通常の学級の交流・共同学習も、拡充しようと努力することが当たり前になってきています。それに伴って、特別支援学級と通常の学級の相互の理解が深まり広がってきていることは喜ばしいことだと思っています。

交流・共同学習を一層広げることは、これからも全ての教師・全ての学校の課題ですが、同時に、実質的な教育効果の評価として考える必要があります。例えば、特別支援学級の子ども達が、通常の学級の朝の会・終わりの会に参加することが多く行われています。通常の学級の朝の会・終わりの会に遅れずに参加するためには、授業の時間を削って特別支援学級での朝の会と終わりの会を別に行います。毎日20分ずつ授業の時間を削り、200日の授業日を過ごすとすると、単純な計算で年間100時間ほどの授業時間が使われることになります。これは、高学年の算数の年間授業時数の半分を大きく越える時間数です。通常の学級の朝の会や終わりの会では、特別支援学級で多くの時間を過ごす子ども達にとって自分の生活に関わりの薄い連絡や話し合いが中心になります。子どもの状態によっては、授業時間数が少なくなるだけでなく、主体的に話し合いに参加しようとする意欲の育ちをかえって妨げてしまうことも危惧されます。通常の学級の朝の会や終わりの会に参加することが必要な子もいれば、貴重な自立活動の時間を削られてしまうと訴える保護者も実際にいるのです。

一人一人の教育的効果の正確な評価をしないまま、インクルーシブな在り方だけを追求していけば、子ども達が本当に必要な支援を受ける機会を小さくしてしまい、十分な成長をかえって妨げてしまうこともあります。

特別支援教育は、こうした多くの支援の場が最も効果的に働くシステムとしなければなりません。どうすることがどんな成果につながるのか、十分な検討と評価をして、本当に子ども達の幸せにつながる制度を考えて頂きたいと思います。

推進会議の検討を拙速に行えば混乱は必至であり、子どもたちが本当に必要としている特別支援教育の充実と発展がかえって阻害される恐れもあります。多くのしわ寄せが障害のある子や通常の学級に学ぶ全ての子ども達に及べば、せっかく浸透し始めた特別支援教育・インクルージョンへの理解をも損ないかねません。

それぞれの場面で子ども達の実際を見ている医療や教育の現場、当事者や保護者から広く意見を収集し、冷静にプラスとマイナスを評価した上で十分に論議を尽くして意見をまとめて頂きたいと願っています。

② 障害のある子ども達のニーズを正しく把握して、その子にとって最善の就学の場・支援の内容を考えるために、医療や教育の関係者の知見を集めて生かす制度にすることが必要です。

就学の決定は、成長をあらゆる条件から予測することであり、大変難しいものです。子ども達も保護者も、相談に携わる者にとっても、つらいこともあり、重いものがあります。それゆえにこそ、まだ自分の決定の意志が薄い子どもを抱えた保護者の迷いをそのままにしていてよいわけはありません。保護者だけに決定の重さを背負わせ、委ねることなど、あってはならないことです。相談の過程で保護者の希望を最大限に受け止めていくことはもちろんのことです。何よりも大切なことは、子ども達が大きなぶれがなく、すくすくと必要な支援を受けて笑顔で育っていくことにあります。

そのために、一つは、医療や教育に関わる人たちの知見をできる限り集める形で、二つには、客観的な基準を基に、温かみのある就学相談が、全ての子ども達を対象に行われる必要があります。

例えば、通常の学級の授業で、障害のある子どもの一人に担任以外の一人の教員がついたとしても、教育課程がニーズに沿っていなければ、全体の授業の中で支援できることには限りがあります。障害のある子ども達が効率的・効果的に学習に取り組み、達成感や充実感をもち、自信と意欲を深めていくためには、子ども達の特性に応じて学習課題を選び、子ども達の特性に応じた時間と指導方法が選べる特別な支援の場が必要です。通常の学級の授業の中では、せっかく持っている力を発揮できずに、育つ可能性を小さくしてしまうことも、自信や意欲を低めてしまうこともあり得るのです。

特別支援学級など、自分らしさを十分発揮できる場を得られたことで、進んで学習や活動に取り組んでいく主体的で意欲的な学習者・生活者に育っていく子どもたちは少なくありません。運動会を参観していた特別支援学級の子どもの保護者から、「家の子を見つけるのにこんなに苦労したことはありません。通常の子どもたちと一緒に、最初から最後まで当たり前のように自分の役割を果たしていました。」「やはり、毎日のきめ細かな指導の積み上げでこうなったんだとよく分かりました。」と嬉しそうに報告を受けるようなことも、特別支援学級では日常的にあることです。

こうした支援の場を、今後どう効果的に、繋げていくのかが課題です。交流共同学習、通級指導教室と通常学級の指導の連続性、そして、通常の学級の授業の在り方など、課題を明確にして、一歩一歩地道に、現実的・実際的に研究していく必要があります。

就学相談は、障害のある子ども達にとって必要なことであり、子ども達自身が持っている権利だと考えたいと思います。

就学の場・支援の内容の判断は、保護者だけに委ねるのでなく、十分に知恵を集めて行う過程が必要です。もちろん保護者の意見は尊重しなくてはいけません。もし、就学相談の場の判断と、最終的な保護者の選択が異なった場合でも、就学相談の場で検討された具体的な支援の知恵を学校などに伝えて生かしていくことができると考えます。

4 現実感覚で、慎重な討議を望みます

真のインクルーシブを、私たち全国コーディネーター研究会は望んでいます。子ども達の明日の笑顔や保護者の安心に繋がるインクルーシブをです。そのためには、障害のある子どもたちだからこそ、理解されるのに難しさがある子どもたちだからこそ、十分な当事者や保護者、教育関係者・専門家の意見収集、そして現実的な教育現場を想定しての討議を心から望みます。

本意見を取りまとめるにあたり、多くの教職員やスクールカウンセラー等の支援者とともに、障害のある子どもを持つ保護者から意見いただきましたので、その一部を合わせてまとめといたします。

委員の各先生方、関係各位のみなさまのご検討を、どうぞよろしくお願い申しあげます。

(文責)副会長:森 秀一郎 事務局長:黒川 君江

「障がい者制度改革推進会議」委員
及び関係各位

渡辺(保護者)

私は、現在24歳の娘を持つ母親です。娘には、発達障がいがあり、2歳のころより地域の教育センターでの教育指導(18歳まで)、そして小学校5年時より小学校卒業まで、区内に初めて導入された通級学級で週に2回程度の特別支援教育を受けました。

それまでは、在籍校の通常学級のみの教育で、担任の先生はじめ、周りの先生方にもそれなりの配慮を頂きながら、親の私も通常学級での学習内容のフォローを家庭で行うなど、その時点の環境で可能な限り教育的支援を行っておりました。当時の、専門的分野のアドバイスは主に、教育センターの心理士の先生で、正直申しまして、子供を育てる上で大きなウエイトがありました。しかしながら、通常学級の先生方は「特別支援教育」が必要な子供についての知識や理解がまだまだ十分であるとはいえない方が多かったと思います。

前述の通り、短い期間でしたが、娘は通級学級で専門の知識と技能を持った先生より、個別の指導を受けることが出来、IQの伸び、通常学級でも授業を少しずつ集中して受けられるようになるなど、明確な成果を得ることが出来ました。

このように、子供の障害も、また個性も様々であり、その指導のあり方も一様ではありません。子供をゆっくり観察し、見極めながら、まだまだ脳が柔らかい、成長の著しい時期に適切な教育指導を行うことが大事なのではないかとこれまでの経験から感じている次第です。

「インクルーシブな教育」の理念は、とても大事なものだと思います。様々な考えがあるかと思いますが、平易な表現で言えば、「あなたは、コレ、出来なくてもいいんだよ!出来なくても差別しないよ」という環境より、「少しでも出来るようにしよう!!がんばってトレーニングしようね!」という方がよいと私は思います。これは、24年間の実感です。

もとより、実際の教育の現場は、子供の個性が様々なように一様ではありません。関係各位の皆様におかれましては、もう少し議論を展開され、多様な意見に耳を傾けていただければ幸いです。

「障がい者制度改革推進会議」委員
及び関係各位

伊東(保護者)

私は、障害名がつかないけれど、「発達障害」であろうといわれている小学6年生の娘をもつ母親です。大阪にいた幼児期、自分の子の障害は認められませんでした。保育園の授業風景を、たまたま目にしたとき、娘は、みんなが取り組んでいるハサミで切る工作を見向きもせず、廊下に出ていました。ショックでした。

思い悩みつつ、東京に転居してきました。幼稚園の園長先生は、硬い表情の私に、「できる限りのことをしましょう」とおっしゃってくださいました。私の気持ちも少しずつほぐれてきました。親の、『人への信頼感』は、子どもにも通じていくものでしょうか、娘も友達と関わることが増えました。入学とともに、その学校に通級指導教室ができたことは、何よりの幸せでした。思い切って障害をオープンにして、通級の申し込みをしました。私にとっては、本当に清水の舞台から飛び降りる以上の決断でした。でも、それが、救われる一歩でした。

場になれない娘のニーズをよく理解して、入学式の予行練習をしてくださいました。「次は名前を呼ばれるのよ、ハイって言ってね。」と手を優しく握りながら教えてくださいました。通級の個別学習室の勉強は、娘に自信を付けてくれる場でした。3~4人の友達との遊びや体育の学習は、人と関わることの苦手な子に目を見張る成長をもたらしました。でも、高学年になると、学習も友達関係もより難しくなります。学校に行けない状態もありました。自分の部屋で、髪の毛を切り刻む姿も見られました。そんなとき、通常の学級担任と連れだって、通級の先生が毎日のように家庭訪問をしてくださいました。笑顔が戻ったとき、親の私が泣き顔になりました。

通常の学級にいても、それだけでは成長を促すことにはなりませんでした。ニーズに応じた場が必要でした。そのことははっきりと言えます。今、中学の進路を特別支援学級にしようか、通常プラス通級にしょうか、迷っています。でも、迷うことのできる、選択肢があることに感謝もしています。地方はまだまだ選択肢が少ないです。

この子達のニーズは様々です。包み込む温かさももちろん、多様な受け皿をつくり、専門的な指導をこそお願いしたいと思います。本当のところ、私たち親の望むのは、将来の自立にあります。今、障害手帳の取得を真剣に考えています。

長文を失礼しました。予算の厳しい折りから、私のこの気持ちをお伝えしましたので、十分な検討をしていただきたいと思います。

「障がい者制度改革推進会議」委員
及び関係各位

烏田(保護者)

11才六年生の息子は、やや知的遅れを伴う自閉症です。5年生のときに通常の学級から支援級(固定の特別支援学級)に移りました。今、支援級への進路変更は、大正解だったと思っています。

通常の学級に入学し、勉強に、集団行動にと、学校とも通級教室とも連携し、親子で一生懸命の日々を過ごしました。しかし、3年、4年と勉強がより抽象的な事柄が多くなり、健常の子どもたちの心の発達との差異が広がるにつれ、親として考え込むことが増えました。宿泊学習の際、引率の先生方に、「生活面で何一つ手がかからないばかりか、とてもしっかりとしていた」と報告を受けた時、「よし、それなら、支援級を選んでもよい」と決意しました。

息子は、高機能、アスペルガー症候群と違い、知的な部分が弱いところはあります。しかし、息子のこの幼さは、悪い事ばかりではなく、人を馬鹿すること、悪口や打算的に物事を考える思考をもたないよさがあります。このよさをそこなわないで、よりしっかりとした社会人に育てようと思いました。

この長所を生かすには、普通級では厳しいのです。ゆったりとした時間の中で伸びていく、子供時代が健常児より長い子なのです。足の不自由な子どもに九秒代で走れというのと同じです。でも、人間は、学習する動物だと思います。習得には時間がかかっても、毎日同じ練習を積み重ねると、機敏に動けるようになるんです。野球の大好きな息子は、今、背走しながら、フライをとったりいきいきと活躍しています。見事な空間認知!そんなことが出来るようになったのは、本人の楽しさと意欲をそこなわない日常があるからです。知的遅れを伴うわが子の学習の場は、せかさないのがポイントなのだとつくづく思いました。それが、息子のニーズに合ったカリキュラムなのです。

支援級で自信を付け、水泳において、短距離走において、絵画においてはと、秀でる子供さんが結構います。支援級は、人の手もあり、連絡もきめ細やかです。幼稚園より手厚いかもしれません。自信がつくと、下級生の世話も積極的にします。役割も責任をもって果たします。

休み時間には、通常級から遊びにきます。よく見ていると、通常級で何かにつまずいている子が来ることが多いのに気付きます。子どもは自分に似ている仲間を探し、安らぐことができる居場所を求めているのだと感じます。

健常者からみた平等感と障害者からみた心地よさは、違うのかもしれません。レインボーマンのラストシーンのように。

このことを、よくよくご考慮の上、審議を尽くし、よりよい制度づくりをしていただければ幸いです。

「障がい者制度改革推進会議」委員
及び関係各位

杉田(保護者)

小学校6年生のわが子は、アスペルガー症候群と診断されています。発達障がいの子とその親にとって最も不幸なことは、情報量が少ないために「孤立」してしまうことです。

乳幼児期から「何か違う」「どこかおかしい」と悩みつつ、脳に起因する障がいの複雑さゆえ、的確な情報になかなかたどり着くことができず、診断を受けるまでインターネットや本をむさぼるように調べました。難しい言葉を使う一方で、他の園児が簡単に理解できる指示や注意がなかなか通じないわが子を周囲も理解できず、育て方やしつけが悪いと誤解されるときは、孤独で、私がいなくなればと思うことさえありました。

就学相談を経て、通級指導教室にたどり着いたとき、何よりもありがたかったのは、専門的な教師による的確なアドバイスと、教室の保護者達による情報交換でした。文字情報でない、血の通う情報に出会えました。

私たちの子育ては、迷いと悩みの連続です。私たちは、確かな情報と相談者を心の底から求めています。区切り区切りの就学相談は、たとえ自分の意に沿わない意見であろうとも、公正な立場から客観的な資料や情報を頂くことができる貴重な機会です。

親の選択権はありがたいですが、私たちにだけ任せないでください。障がいをできるだけ認めたくないという感情から情報を避けてしまい、子どもによいことを選んだつもりでも、必要な支援が子どもに届かない恐れもあります。進路はとりわけ大きな選択です。地域の教育委員会が、私たちの選択を客観的な立場からバックアップしてください。

私たち親自身も、今、支援会議などに勇気をふるって参加するようになりました。私たちは、専門家の皆様と同等の参画者であればいいです。保護者の意向を重視するということで、他の地域では、就学相談を簡略化したり、ないに等しい状態になったりということも聞きます。それは、私たちを「権利」の名の下に再び「孤立」させることです。

私たち親は、温かで、情報の量と質が充実した就学相談を望みます。そして、的確な判断力と指導力、複雑な障がい特性を理解できる高度な「専門性」を備えた優秀な人材が特別支援教育の現場には必要です。

障がい者制度改革推進会議の委員及び関係各位の皆様、必要な情報と支援が私たちに的確に届くよう、この意見にもご配慮くださいますよう、よろしくお願いいたします。

「障がい者制度改革推進会議」委員
及び関係各位

初鹿野(保護者)

息子は、様々な医療にかかっても、「貴方のお子さんは○○ですよ」とはっきり言われることがありませんでした。そのころの専門家といわれる方でも、診断がむずかしい微妙なところにいたのだと思います。

幼児期、小学校低学年の時期、お友達とのトラブルが絶えませんでした。注意されたことに反発で応えることが多く、家庭でも、学校でも、自分の居場所をなかなか作れずにいました。専門機関はありましたが、遠くであったり、高価であったりでした。通級ができ、やっと息子は「貴方のありのままでいいのよ」という、大きな理解者を得ました。私たち親も、安心のよりどころになりました。集団の中での関わり方を、一つ一つ教え、友達遊びが楽しくなって、週1回の通級を心待ちにするようになりました。中学の固定の特別支援学級、商業教育に力を入れる特別支援学校の高等部に進路を決め、現在に至るのも、この経験が親も子も大きいのです。彼のとげとげしくなりがちな目を和らげる場と、一つ一つ生きる力を身につけていく指導の大切さを痛感したからです。

インクルージョンは素晴らしい理想です。障害のある子の親ならば、望まないはずはありません。でも、子どもにとって役立つものが提供されるのか、否かで、私たち親は判断をいたします。実感から言えば、場の平等はその中の、ごく一部です。

インクルージョンは、教育だけでは解決できません。むしろ、出口にある就労の幅を広げてくださる方が、親子も、学校も、救われることが多いと思います。私たちの息子のような子だけでなく、さまざまな障害のある子に、障害にあった教育施設、職業指導の場所へしっかり予算を付けて、特別支援教育を発展充実させてください。お願いします。

障がい者制度改革推進会議における協議に対する意見(レジュメ)

障がい者制度改革推進会議
議長 小川 榮一殿

全国特別支援教育推進連盟
理事長 三浦 和

全国特別支援学校長会 全国特別支援学級設置学校長協会 全国盲学校PTA連合会 全国聾学校PTA連合会 全国特別支援学校知的障害教育校PTA連合会 全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会 全国病弱虚弱教育学校PTA連合会 全日本手をつなぐ育成会 日本肢体不自由児協会 全国肢体不自由児・者父母の会連合会 全国重症心身障害児(者)を守る会 全国視覚障害児(者)父母の会 全国聴覚障害者親の会連合会 ふうあの会(全国病弱・障害児の教育推進連合会) 日本てんかん協会 日本自閉症協会 日本筋ジストロフィー協会 全国ことばを育む会 全国難聴児を持つ親の会 全国心臓病の子どもを守る会 全国LD親の会(加盟21団体)

1. 準ずる教育について

* 障害の状態などにより、小学校、中学校と全く「同じ」にはできないため、幅のある表記が望ましい、したがって現行のままで良い。

2. 学籍の一元化について

* 保護者の選択権に委ね通学している学校と籍のある学校が個々に違うことになるとすれば、それは特別支援学校の存続の危機である。

3. 就学先の決定について

* 選択権は保障されるべきである、しかし、保護者の判断だけに委ねない協議の場も必要である。

4. 特別支援学校・特別支援学級の存続について

* 廃止には反対、障害のある子どもたちには条件整備のされた学校・学級が必要です。

5. 特別支援学校の寄宿舎について

* 障害によっては家庭だけでは適切なしつけや生活力を身につけることが難しい。

6. コミュニケーションについて

* 障害に応じた様々なコミュニケーション手段を早期から身につける必要があり、特別支援学校の役割は大きい。

7. 職業教育と進路指導

* 盲学校、聾学校を含む特別支援学校などの教育に期待するところが大きく、更なる専門性の向上を望む。

障がい者制度改革推進会議における協議に対する主な意見

障がい者制度改革推進会議
議長 小川 榮一殿

全国特別支援教育推進連盟
理事長 三浦 和

会議の委員に障害者が選ばれていることは評価しますが、意志表示ができる人に限られ、意志表示が明確にできない人・その保護者が選ばれていないことが不本意です。今後のまとめには、意志表示が明確でない人の思いや願いを必ず加えてくださることを強く要求します。

私たちは性急な教育改革を望んでいません。どのような目的で誰のために改革をしようとしているのかわかりません。障害のある子どもたちが、安心・安全に学校生活が送れる環境を望んでいます。安全・安心な環境で、心穏やかな学校生活を送れるのは、小学校・中学校の通常の学級ではなく、障害の状態に応じた環境を設定してある盲学校、聾学校を含む特別支援学校・特別支援学級です。

そして、私たちは盲学校、聾学校を含む特別支援学校・特別支援学級を選択し、わが子にふさわしい教育が受けられ、自立し、社会参加ができることを願っています。

決して、小学校、中学校に籍がないことを差別であるとは思っていません。したがって学籍の一元化には反対です。

また、障害のある子どもとない子どもとがいつも一緒にいることが機会均等であること、平等であることとは考えていません。同じ場所にいなくても障害に応じた適時適切な教育が受けられることが、機会均等、平等であると考えています。

そのため特別支援教育をさらに充実し、子どものニーズに応じた教育を行うことが良いと考えています。

特別支援学校の施設・設備をより良く整備し、教育の専門性を今のレベルより高いものにするなど条件整備をさらに進める必要はありますが、盲学校、聾学校を含む特別支援学校・特別支援学級をなくしてしまうことには断固反対します。

なぜなら、わが子が安全で安心して通える、生活のできる場、学校が奪われてしますからです。昭和54年(1979)の養護学校教育の義務制以前の状態には戻してほしくありません。学校へ行けないみじめさは、再度味わいたくありません。

医療的ケアが必要な子ども、移動が自分でできない子どもなど小学校・中学校の通常の学級の中では、とても学習や生活ができない子どもたちがたくさんいることを考慮して、協議がなされているとは思えません。医療的ケアが必要な子どもを通常の学級でどのようにしようとしているのか、生命の保障があるのか疑問がいくつもあります。

そして、音、光、臭い、人の圧迫感など私たちとは感覚の受け止め方が違う感覚が過敏な子どもたちがたくさんいます。この子どもたちを小学校、中学校で無理やり生活させることは、その場から逃げ出したりストレスを溜めたりすることに繋がり、二次障害をおこす心配があります。

また、障害の種類や状態に応じたコミュニケーションの手段を獲得していくためには盲学校、聾学校を含む特別支援学校などの教育に期待するところが大きく、外部の専門家と連携した更なる専門性の向上を望んでいます。これらのことは小学校・中学校の通常の学級では、とても望める状況にはありません。

職業教育、進路指導についても、盲学校、聾学校を含む特別支援学校にいて生徒一人一人の適性に応じた指導、支援が常時行われています。このことについても盲学校、聾学校を含む特別支援学校に代わるものはありません。

≪各団体からの主な意見≫

1. 準ずる教育について

  • 私たちは「準ずる」とは原則として、同一ということを基本に受け止めている。
    しかし、子どもの障害の状態や特性等を十分考慮することが大切であると考えている。
    例えば、視覚障害の子どものボール運動や理科の実験・観察、聴覚障害や言語障害の子どもの音楽や歌唱、肢体不自由の子どもの体育の実技、家庭科の実習などがあげられる。
    また、LD(学習障害)の子どもの書き取りや筆算や暗記などに配慮することである。ADHD(注意欠陥多動性障害)、自閉症の子どもに対しては話して伝えるだけでなく、メモや絵など視覚による手段を活用することなどの配慮が必要であると思う。
  • 子ども達の習得には工夫と合理的な配慮が必要である、40人クラスの普通教育では習得が難しいため、その力に応じた指導が必要であり、差別ではない、習得方法の工夫である。
  • 盲学校では体育でもフロアバレー・盲人野球・ゴールボール・サウンドテニス等、盲学校独自のものがあり視力障害を持つ生徒が、小学校、中学校の中で教育を受けるのはとても困難である。

2. 学籍の一元化について

  • 学籍は通学している学校にあることを望む。
  • 保護者の選択権に委ね通学している学校と籍のある学校が個々に違うことになるとすれば、それは特別支援学校の存続の危機である。
  • 聾学校の存続が望ましいため一元化には反対である。

3. 就学先の決定について

  • 選択権は保障されるべきである。
  • 保護者の希望だけに委ねない協議の場が必要であり、障害のある子どもの成長に必要な指導、支援の場が欠かすことができない。長期にわたる綿密な教育相談、就学相談が必要である。
  • 先ず、教育を受ける権利の主体は、児童自身にあると考えるが、そのうえで、どのような教育を受けるかを保護者の選択権にすべて委ねることには議論が必要である。
  • 適切な就学先の選定にあたっては、地域の医療、福祉等の関係機関や連携も含め、子ども一人ひとりのニーズに応じた個別の教育支援計画に基づいてなされるべきであると考える。
    ついては、現在の就学先決定手続きの中に個別の教育支援計画を明確に位置づけ、機能させる必要があり、その個別の教育支援計画は、市町村教育委員会が関係機関ならびに保護者の意見を踏まえ、作成する必要があると考える。特にその計画に基づいた支援体制の確保や就学先の選定に際しては、都道府県教育委員会との連携を図る一方、保護者の十分な理解とともに保護者の意向を最大限尊重する必要があると考える。

4. 特別支援学校・特別支援学級の存続と条件整備について

  • 特別支援学校の廃止に反対である。
  • 日本独自のインクルーシブ教育を構築することを強く望む。
  • 特別支援教育は整備、発展途中であることから、廃校とせず充実と整備を希望する。
  • 特別支援教育の存在意義はとても大きく、特別支援学校としての教育の充実を希望する。
  • 重い障害を持っていても子どもたちは教育によって、生きる力をもつ、そのための特別支援教育は保護者の願いである。
  • 条件整備のうち聴覚障害教育を受けるのに必要な最低限の施設・設備は確保して欲しい。
  • 聴覚障害教育の専門性を確保するための条件整備が必要である。
  • 特別支援学校としての教育の充実をお願いしたい、視力に障害を持つ生徒が、小学校、中学校の中で教育を受けるのはとても困難だからである。
  • 盲学校が特別支援学校としてセンター的機能を担い、専門性をもった経験豊かな教員が、普通学校でのインクルーシブな教育に繋げていけると思う。
  • 病弱特別支援学校では多様な病気をもった子が増えている、そのため、医療に精通した人材育成を図ってほしい。
  • 病院の中で、教育を受ける環境整備を国レベルで確立してほしい。
  • 総ての特別支援学校(病弱教育部門)に高等部を設置してほしい。
  • 特別支援学校では、根気よく児童生徒に寄り添い、身辺自立をはじめ体力や体調管理、食育、人間関係や進路指導では現場実習を繰返し、これから彼らが歩むべき道に必要なキャリア力を身につけることができます。
    さらなる教員の資質向上と専門的な指導の充実、知的障害・自閉症等の児童生徒が安心して活動できる施設整備の充実を望む。

5. 特別支援学校の寄宿舎について

  • 障害児を強制的に親から離し施設等へ措置する場合とは違う。学齢期に家庭から分離しにくい障害のある子ども達が親から離れて宿泊等の経験ができ、自立への大きなステップになる。
  • 寄宿舎に入所することを本人も親も望んでいない場合でも、寄宿舎の指導員と目的をもって指導していくうちに依存しがちな子どもが母子分離をできたり、親も子離れする機会など、障害のある子どもの成長に有効である。
  • 聾学校には寄宿舎が必要である。

6. コミュニケーション手段の獲得について

  • 筋ジストロフィーなど障害がある子どものコミュニケーション保障に役立つパソコン学習の機会を早い段階で提供すてほしい。
  • 現在、全国の特別支援学校にパソコンが導入され、高等部ではパソコンがかなり授業に使われているが、さらに内容を充実するとともに中学部・小学部においても授業に積極的に取り入れることを研究してほしい。
  • 文字放送、電子黒板等のIT機器を活用した教育がおこなわれる条件整備を進めてほしい。
  • 聴覚障害の生徒の手話についてはコミュニケーションの手段として、大きな役割を果たすので学ぶ機会を設けることを研究してほしい。

7. 職業教育と進路指導の充実

  • 卒業後の進路先の確保、三療(あん摩・はり・灸)以外の大学、一般就労、福祉就労の新たな職場開拓がある中で、高等学校で卒業後の進路が確保できるのかという疑問がある。
  • 特別支援学校では、作業学習や将来学習などを通して、働く力、継続して取り組む力、人との関わり、金銭感覚、マナーなど、進路指導に結びつく学習を行っている。そこで身につけた力を十分に発揮できるよう生徒の障害と特性に応じて、適切な就職口を開拓しえる。就職後も、卒業後の支援で経過を追っている。ここまでできるのは盲学校、聾学校を含む特別支援学校である。
  • 特別支援学校の高等部では、1 年からインターシップや現場実習などを積み上げて少しずつ就労につなげていきます。理解に時間がかかったり、コミュニケーションに困難のある生徒の場合、「面談で自分の良いところをアピール」するなど考えられませんが、数週間でも実際に仕事をしながら見ていただけるとことで、得意なことやがんばれることを見つけていただき、就労に結び付くこともあります。
    また、一方で、職場の方にも「こんな風に支援すると理解でき、仕事もできそうだ」と伝えられることもあるかと思います。
    気がかりなのは「障害児も普通学級で」となると、「障害のための就労の場」も差別なのでしょうか?最低賃金分働くことが難しい方の場合、仕事にもつけない?一生在宅?たとえ飢え死にしない程度の手当がいただけたとしても、働く場もなく、ただ時間が過ぎるのを待つ(死ぬまで)の人生は、ありえないと思うのですが。

8. 全般的な意見

  • 教育分野の制度改革を検討する場合は、当事者団体や教育関係者を含めた部会を作り、必要な財政面の措置、リソース、人材の養成・確保等も織り込んだ検討及び制度設計を行なってほしい。
  • 親として、我が子への願いとしては、障害があろうがなかろうが、幼児期には幸せな保育の時間を、学齢期には学ぶ喜びを、そして、青年、成人期には、働く喜びや社会で(わずかでも)役立っているというプライドを持って充実した生活をと、人としての当たり前の幸せを味わって欲しいと思っています。重ねて言うと障害があってもそれ自体は不幸ではないからであう。でも、障害があるゆえに、こうした当たり前の幸せを味あわせてやれなかったら、それは、とても不幸だと思います。本校の学区域には、本人が傷つき、家庭も壊れた方がたくさんおられ、日々実感していますが、小さい頃に、適切な援助の手立てがあればと思うことも多々あります。

9. 障害種別各PTA会長連絡協議会の意見交換

  • 学校現場で、子どもたちの多様な障害の様子を実際に見て。
  • 私たち保護者の意見を聞いて。
  • 特別支援学校・特別支援学級を廃止しないで。
  • 特別支援学校を卒業後の職業教育を大事にして。
  • 人格の形成には特別支援学校が必要。
  • 障害のある子ども達には特別支援学校が必要。
  • 教育関係者とも時間をかけて議論をして。