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障がい者制度改革推進会議

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シンポジウム 「もっと知ろう、デイジー教科書を!」
日時:2013年02月03日(10:30~16:00)
場所:戸山サンライズ 大研修室
 

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障がい者制度改革推進会議
第19回(H22.9.6) 資料1

障害者基本法(総則関係部分)意見一覧

大久保委員提出意見

大谷委員提出意見

大濱委員提出意見

小川委員提出意見

尾上委員提出意見

門川委員提出意見

北野委員提出意見

清原委員提出意見

佐藤委員提出意見

新谷委員提出意見

関口委員提出意見

竹下委員提出意見

土本委員提出意見

中西委員提出意見

長瀬委員提出意見

久松委員提出意見

松井委員提出意見

森委員提出意見

第19回障がい者制度改革推進会議 意見提出書式
障害者基本法(総則関係部分)

【大久保委員】

1.基本法総則として盛り込むべき事項

○現行の(目的)第1条で、最終的な目的を「もって障害者の福祉を増進する」 としているが、障害者に対する「福祉」中心のこれまでの視点から、自立(自 律)と社会参加など「他の者との平等を基礎とした権利の実現」を踏まえた 表現とすることが適当と考える。

○(定義)第2条については、障害者権利条約に規定されている障害及び障害 者の定義と範囲を十分に考慮し、見直しをする必要があると考える。

○障害者権利条約に規定されている「差別」並びに「合理的配慮」を盛り込み、 その考え方(定義)を明らかにする必要があると考える。

○差別禁止を明示するため、現行の(基本的理念)第3条から切り離し、独立 した(差別禁止)の条文を設ける必要があると考える。

○差別禁止の条文に関連し、新たに、差別禁止のための法律を整備することと、 差別に対する救済制度を設けることについて盛り込む必要があると考える。

○虐待からの保護・救済並びに虐待の防止等について、新たに盛り込む必要が あると考える。また、そのための法律を整備することも盛り込んでおく必要があると考える。

○障害者権利条約では、障害のある女性と障害のある児童についても条文を設 けており、これらを盛り込むことについて検討する必要があると考える。

○現行の(施策の基本方針)第8条では、「自主性が十分に尊重され、可能なか ぎり、地域において自立した日常生活を営むことができるよう」とあるが、 全面的に見直し、「選択の機会をもって地域社会で生活する権利」を盛り込む 必要があると考える。

○現行の(障害者週間)第7条、(障害者基本計画等)第9条は、具体的施策に 関係する事項であるとともに、中央障害者施策推進協議会の取り扱いについては、 今後の本推進会議やモニタリング機関との関連を含め議論が必要であり、 「第1章 総則」になじまない内容と考える。

2.上記事項についての基本的な考え方

○先ず、障害者基本法は、障害者に対する施策全般を総合的に推進し、国の方 向性を示す上で重要な法律と考える。また、障害者権利条約の締結に向けた 国内法制の見直しと整備にあたって、今般の障害者基本法の改正はその試金 石ともいえ、重要な意味があると考える。

○「差別」、「合理的配慮」のより詳細な定義や解釈や差別の救済制度そのもの については、今後、検討する差別禁止の法制に規定することが考えられる。

○(障害者基本計画等)第9条は「総則」になじまないとしたが、特に、中央 障害者施策推進協議会、地方障害者施策推進協議会の機能や障害者基本計画 並びに障害者計画の取り扱いなどについては、今後の本推進会議やモニタリ ング機関との関連も含め十分な検討が必要と考える。

【大谷委員】

1.基本法総則として盛り込むべき事項

 全体の章建てを以下の内容とし、それをふまえ総則に盛り込むべき事項は 以下の内容だと思います。

前文

第1章 総則

1(目的)

2(定義)

(1)障害(者)

(2)差別

(3)合理的配慮

(4)言語および情報伝達手段

(5)障害者を受容する(インクルーシブ)社会

3(基本理念)

(1)人権(自己決定を含む)の享有主体および尊厳の確認

(2)差別の禁止、法の下の平等、機会均等

(3)地域で暮らす権利の保障と障害者を受容する社会の構築

(4)自ら選択する言語およびコミュニケーション手段の利用

4(障害のある女性に対する配慮)

5(障害のある子どもに対する配慮)

6(国際協力)

7(国の責務)

8(地方公共団体の責務)

9(事業者の責務)

10(国民の責務)

11(法制上の措置等)

第2章 障害者の権利および福祉に関する基本的施策

(地域社会において自立した生活を営む権利)

(移動・居住の自由の保障)

(表現の自由・知る権利・プライバシーの権利の保障―言語・情報アクセスを含む)

(家庭および家族の尊重)

(教育)

(労働・雇用)

(医療・療育・健康)

(所得保障)

(司法)

(政治参加)

(文化活動等)

第3章 障害者基本計画等

(障害者基本計画策定義務)

(施策・基本計画への当事者意見の反映)

(年次報告)

(実態調査等)

(国民の理解等)

第4章 施策および基本計画の推進・監視等

(障害者施策推進・監視委員会の設置)等

2.上記事項についての基本的な考え方

 上記を踏まえ、前文および総則各条項に関する基本的な意見は以下の通り です。

 なお、わが国の基本法の内、人権・権利にかかわる基本法は教育基本法、 男女共同参画社会基本法、環境基本法、犯罪被害者等基本法、消費者基本法 などがありますので、これらも参考にしたいと思います。

(前文)

 前文は、法制定の経緯および方向性を明らかにし、法制定者の強い意志を 公にすることで法の目的の実現を図ろうとするものです。上記基本法の内、 前文があるのは教育基本法、男女共同参画社会基本法、犯罪被害者等基本法 です。教育基本法は戦後直後教育の抜本的改正が必要であったことから設け られ、男女共同参画社会基本法は、それまでの根深い女性差別を払拭した男 女共同参画社会という新しい概念をもった社会の構築を提唱するために設け られ、犯罪被害者等基本法は、従来国の施策としては顧みられることが少な かった犯罪被害者等に対し、国としても取り組むことを宣言するために設け られたものです。

 障害者基本法は、権利条約の批准を見据え、障害者の権利と福祉について、 社会全体のありようを変革しようというものです。よってこれを端的に表現 し、法解釈の指針を明記し、加えて法制定者の強い意志を明らかにすること は不可欠です。

 因みに各法の前文を比較するために貼り付けます。

教育基本法

 教育基本法(昭和二十二年法律第二十五号)の全部を改正する。我々日 本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に 発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願 うものである。我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、 真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた 人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す 教育を推進する。ここに、我々は、日本国憲法 の精神にのっとり、我が国 の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を 制定する。

男女共同参画社会基本法

 我が国においては、日本国憲法に個人の尊重と法の下の平等がうたわれ、 男女平等の実現に向けた様々な取組が、国際社会における取組とも連動し つつ、着実に進められてきたが、なお一層の努力が必要とされている。

 一方、少子高齢化の進展、国内経済活動の成熟化等我が国の社会経済情 勢の急速な変化に対応していく上で、男女が、互いにその人権を尊重しつ つ責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮 することができる男女共同参画社会の実現は、緊要な課題となっている。 このような状況にかんがみ、男女共同参画社会の実現を二十一世紀の我 が国社会を決定する最重要課題と位置付け、社会のあらゆる分野において、 男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の推進を図っていくことが重 要である。

 ここに、男女共同参画社会の形成についての基本理念を明らかにしてそ の方向を示し、将来に向かって国、地方公共団体及び国民の男女共同参画 社会の形成に関する取組を総合的かつ計画的に推進するため、この法律を 制定する。

犯罪被害者等基本法

 安全で安心して暮らせる社会を実現することは、国民すべての願いであ るとともに、国の重要な責務であり、我が国においては、犯罪等を抑止す るためのたゆみない努力が重ねられてきた。

 しかしながら、近年、様々な犯罪等が跡を絶たず、それらに巻き込まれ た犯罪被害者等の多くは、これまでその権利が尊重されてきたとは言い難 いばかりか、十分な支援を受けられず、社会において孤立することを余儀 なくされてきた。さらに、犯罪等による直接的な被害にとどまらず、その 後も副次的な被害に苦しめられることも少なくなかった。

 もとより、犯罪等による被害について第一義的責任を負うのは、加害者 である。しかしながら、犯罪等を抑止し、安全で安心して暮らせる社会の 実現を図る責務を有する我々もまた、犯罪被害者等の声に耳を傾けなけれ ばならない。国民の誰もが犯罪被害者等となる可能性が高まっている今こ そ、犯罪被害者等の視点に立った施策を講じ、その権利利益の保護が図ら れる社会の実現に向けた新たな一歩を踏み出さなければならない。

 ここに、犯罪被害者等のための施策の基本理念を明らかにしてその方向 を示し、国、地方公共団体及びその他の関係機関並びに民間の団体等の連 携の下、犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進するため、 この法律を制定する。

第1章 総則

1(目的)

 18回会議に提案されたたたき台(以下たたき台という)に「国民が相互 に個性と人格を認めあう社会を実現することを目指す」「障害者の自立と社会 参加の支援等の施策を推進する」とありますが、ここに、「分離隔離されるこ となく」あるいは「分け隔てなく」と「障害者を受容する社会を形成するた めの施策を推進する」という趣旨を盛り込むことが必要です。 「個性と人格を認めあう」という抽象的なことにとどまらず、より明確に従 来見過ごされてきた「隔離と分離」を否定し、また「自立と社会参加」だけ ですと、従来「自立と社会参加」は障害者の努力によって実現すると思われ がちだったことを否定できず、より明確に、障害者を受け入れようとする社 会の変化によって実現するのだということを意識し、そのための施策を推進 することをも目的にするということを明記するべきと思います。 たとえば、大筋以下の通りです。

 この法律は、障害者は、障害のない人と等しく、すべての基本的人権の享 有主体であることを確認し、かつ、我が国社会が障害の有無にかかわらず、 国民が分け隔てなく相互に個性と人格を認め合う社会を実現することを目指 し、障害者を受容する社会を構築するための施策および障害者の自立及び社 会参加の支援等の施策を推進することを目的とする

2(定義)

(1)障害(者)

たたき台の趣旨に賛同。

(2)差別

 たたき台の趣旨に賛同。

 なお、間接差別および積極的差別是正策についても定義が必要。ただし、 差別禁止法にゆだねるのかどうかも検討すべき。

(3)合理的配慮

権利条約の定義を分かりやすく規定すべき。

(4)言語および情報伝達手段
権利条約の定義および18回会議に提起された角川委員の意見を基に規定すべき。

(5)障害者を受容する(インクルーシブ)社会

これについては権利条約に定義がなく、各国の解釈に委ねられている。 しかしこの理念は権利条約の中枢ともいうべき理念であり、 これの共通の理解なくしては各施策も旧態依然のものにとどまる恐れがある。 そこで最低限の共通認識を定義すべきである。

 ちなみに、男女共同参画社会基本法においては、「男女共同参画社会の形成」 について以下のように定義されている。
「一男女共同参画社会の形成 男女が、社会の対等な構成員として、自らの 意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、 もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受すること ができ、かつ、共に責任を担うべき社会を形成することをいう。」(男女共同 参画社会基本法2条1号)

これにならい、例えば以下のように規定する。

障害者を受容する社会とは、全ての障害者が社会の一員として受け入れら れ、合理的配慮や必要な支援の充足を通じて、障害の有無にかかわらず地域 社会で共に生活することが確保された社会のことをいう。

3(基本理念)

 わが国の基本法の法形式をみると、基本的理念で抽象的な権利を確認し、 各論においてはその基本理念の適用である各権利については個別に権利規定 を設けず、施策の内容にスライドさせている。現行障害者基本法もこれにな らい、第3条において尊厳の保障(1項)、参加の機会の保障(2項)、差別 の禁止(3項)を設け、第2章においては権利規定を設けずに施策の内容を 規定している。改正基本法においては、基本理念の規定にとどまらず、これ を受けての例えば教育、雇用などの各個別の権利の内容を、施策の方向性を 明らかにするためにも明記すべきことを提唱したいが、もし仮にこれが法形 式上なじまないというのであれば、基本理念を可能な限り具体的に規定し、 ここから各権利の内容がおのずと導き出せるような法文言を盛り込む必要が ある。

 基本理念は大きく分けて以下の4項にまとめられると思われる(内3項は 現行基本法の理念を拡大発展させたもの)。

(1)人権(自己決定を含む)の享有主体および尊厳の確認(現行基本法3 条1項を拡大発展させたもの)

 現行法3条1項は個人の尊厳が重んじられ、尊厳にふさわしい生活を保障 される権利を規定しているが、これはあまりに抽象的で、ここから各論の権 利を導き出すことは難しい。よってより具体的に、障害者が権利の主体であ ること、特に従来軽んじられてきた自己決定権をあらゆる場面において保障 されること、また虐待にさらされやすい存在であることを認識し、医療を含 めあらゆる場面においてその尊厳が保障されなければならないこと、この趣 旨が盛り込まれるべきである。またこの基本理念に、権利条約17条「個人 をそのままの状態で保護される権利」の趣旨を盛り込みたい。

 たとえば以下のとおりである。

「すべて障害者は権利の主体であることを確認し、従来必ずしも尊重されて こなかった自らのことを自己の意思によって決定し、かつ虐待にさらされや すい存在であることを認識し、虐待の防止を含めその尊厳が保障され、身体 的および精神的な特徴を保持したままの状態で保護される権利を有する。」

(2)差別の禁止、法の下の平等、機会均等(現行基本法3条3項を拡大発 展させたもの)

 現行法3条3項は、2004年基本法改正によって加入されたものである が、当時から差別の定義もなくその不十分であることが指摘されていた。よ って改正基本法にあっては、差別を定義し、加えて権利条約の基本理念を盛 り込んだ規定とするべきである。すなわち、法の下の平等を確認し(権利条 約12条)、何人も障害を理由に差別や不利益を課せられないこと(権利条約 2条の定義および第3条(b)一般原則)、さらに機会の均等(同 (e))を盛 り込むべきである。

 たとえば以下のとおりである。

「すべて障害者は、法の下に平等であり、障害を理由に差別および不利益を 課せられることなく、社会、経済、文化その他あらゆる活動に参加する機会 が保障されなければならない。」

(3)地域で暮らす権利の保障と障害者を受容する社会の構築(現行基本法 3条2項を拡大発展させたもの)

 現行基本法3条2項は、全て障害者は社会を構成する一員としてあらゆる 活動に参加する機会を保障することを規定しているが、これでは不十分であ る。権利条約が明記し、かつ従来のわが国の法体系に明記されていないもの が、地域で暮らす権利であり、かつ特定の生活様式を強制されない権利であ り、それを実現するために社会が合理的配慮を提供する義務を負い、社会が 変化することによって社会が障害者を受け入れて行くというインクルーシブ という理念である。わが国の根深い施設依存を脱却するためには、これを可 能な限り具体性をもった規定として基本理念に明記する必要がある。 ところで個別の権利を踏まえ、社会の在り方を基本理念として提起してい る基本法に男女共同参画社会基本法と環境基本法がある。以下参考までに該 当条文を貼り付ける。

男女共同参画社会基本法

 第4条(社会における制度又は慣行についての配慮)

 男女共同参画社会の形成に当たっては、社会における制度又は慣行が、 性別による固定的な役割分担等を反映して、男女の社会における活動の 選択に対して中立でない影響を及ぼすことにより、男女共同参画社会の 形成を阻害する要因となるおそれがあることにかんがみ、社会における 制度又は慣行が男女の社会における活動の選択に対して及ぼす影響をで きる限り中立なものとするように配慮されなければならない。

 第6条(家庭生活のおける活動と他の活動の両立)

 男女共同参画社会の形成は、家族を構成する男女が、相互の協力と社 会の支援の下に、子の養育、家族の介護その他の家庭生活における活動 について家族の一員としての役割を円滑に果たし、かつ、当該活動以外 の活動を行うことができるようにすることを旨として、行われなければ ならない。

環境基本法

 第4条(環境の負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築等)

 環境の保全は、社会経済活動その他の活動による環境への負荷をでき る限り低減することその他の環境の保全に関する行動がすべての者の公 平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われるようになることによっ て、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な 経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築され ることを旨とし、及び科学的知見の充実の下に環境の保全上の支障が未 然に防がれることを旨として、行われなければならない。

 これらにならい、第1次意見の、2、基礎的な課題における改革の方向性の 1)「地域で暮らす権利の保障とインクルーシブな社会の構築」(8ページ)の 項を法文化するべきである。

 たとえば以下のとおりである。

(4)自ら選択する言語およびコミュニケーション手段の利用

4(障害のある女性に対する配慮)
権利条約第6条の趣旨を反映した規定を設けるべき。

5(障害のある子どもに対する配慮)
権利条約第7条および一般原則(h)の趣旨を反映した規定を設けるべき。

6(国際協力)
 権利条約第32条を反映した規定を設けるべき。 因みに、男女共同参画社会基本法第7条で国際協調を規定し、環境基本法 では節を設けて「地球環境保全等に関する国際協力等」(第6節)を規定し、 消費者基本法21条も「国際的な連携の確保」を規定している。

7(国の責務)

8(地方公共団体の責務)

9(事業者等の責務)
 合理的配慮義務は国及び公共団体の責務だけではなく、雇用等における事 業者および教育における学校設置者にも課せられる義務である。よって国民 一般とは別に事業者等の義務を規定するべきである。
 なお、環境基本法および消費者基本法は事業者の責務を規定している。

10(国民の責務)

11(法制上の措置等)
現行基本法10条を維持するべきである。

【大濱委員】

1.基本法総則として盛り込むべき事項

 最重度の障害がある者に対する配慮 (定義)最重度の障害者とは、自立した生活を営む上で一日24時間、1人以 上の介護者(家族会護を含む)を常に要する者。

 2.上記事項についての基本的な考え方

 すべての分野で最重度の障害者が、他の障害者と平等な扱いを受けることが できる権利を明文化すべきである。このことを基本とすることで、あらゆる障 害者が社会の一員として、当然の権利行使ができる社会環境の構築が可能とな る。

 障害が重度であればあるほど、自立した生活を希望しても自立できない、交 通機関へのアクセス、司法へのアクセス等あらゆる生活場面で差別的な扱いを 受けている。このように最重度の障害者は、いわゆる状態の良い障害者に比べ 想定外的な存在とされている現状がある。マイノリティの中でもさらにマイノ リティの存在として最重度の障害者に関する権利を、法に「最重度の障害者に 対する配慮」として、下記項目を明記記入すべきである。

1)最重度の障害者でも自立した生活を行う権利と行政の責任を明確化

【理由】

 市町村の財政状況に依存せざるを得ない現行制度は地域格差が大きい。介護 制度の予算が不足する地域では、本人が自立を望んでも自立生活が困難な状況 となり本人の望まない施設に入所せざるを得ない現状である。このような現状 を改善する必要がある。
 (注)現行の法では「可能なかぎり、地域において自立した生活を」になってい る。この「可能な限り」は免罪符となり本人が望まないのに施設入所があるの も現実である。(現行法8条2 )

2)最重度の障害者が自立生活を行う権利行使にあたって国・都道府県・市町 村の責務を明確化。

【理由】

 行政の責務は現行法4条に盛り込まれているが、これをさらに明確化する。

 自立生活を行う権利行使に当たっては、国・都道府県・市町村の財政負担の あり方も含め責務を明確化にする必要がある。最重度の障害者の場合は、財政 負担が大きくならざるを得ない。このような現実を配慮し、最重度の障害者の 場合、国が50%程度を負担するなど抜本的な財政支援の在り方を含め、国の 責務と、都道府県・市町村の責務をより明確に位置づける必要がある。

参考:

(国及び地方公共団体の責務)
第四条 国及び地方公共団体は、障害者の権利の擁護及び障害者に対する差別 の防止を図りつつ障害者の自立及び社会参加を支援すること等により、障害者 の福祉を増進する責務を有する。

3)最重度の障害者でも安心して医療を受けられる権利を明確化。

【理由】

 入院時に慣れた介護者を連れて入院できない制度であるため(一部市町村で は条件付きで、あるいは地域生活事業で認められているが)最重度の障害者は、 安易に医師の診察を受けられないと言う現実問題がある。例えば、肺炎等でも 自宅で療養せざるを得ない現状がある。従って、本来入院が必要な場合には、 最重度の障害者の場合はその障害状況を熟知し、緊急対応できる慣れた介護者 が常に同行している必要がある。

4)最重度の障害者の場合、自立のための必要に準じて介護者による医療的ケ アを受けられる権利を明確化。

【理由】

 たんの吸引、経管栄養その他いわゆるグレーゾーンの医療類似行為は、ホー ムドクター等の許可のもとで、自立のための必要なケアを慣れた介護者に委ね ることが必要であると同時に安全でもある。

※補足説明
最近起こった事例

 A 市の海で事故のため四肢麻痺。夫婦で住んでいたA 市で暮らしたいと本人 は希望。生活上の収入面のでも奥さんは共稼ぎで従来どおり働きたい。従って、 日中の介護が15~16時間必要と市に申し込むが8時間以上は無理との回答。 一方、病院は6ヵ月経過したので、施設に入るように強要に近いかたちで施設へ入所。

 施設入所中に、専門職(介護者でない)が膀胱ロウのカテーテル交換を失敗 し膀胱ロウを閉鎖。現在、留置カテーテル。本人は、リハビリを強く希望して おりリハビリ専門病院へ移転し、再度、膀胱ロウの手術を予定。

1.基本法総則として盛り込むべき事項

 障害のある児童に対する配慮

2.上記事項についての基本的な考え方

 障害のある児童への配慮は、現行基本法で教育に関して、14条と付帯決議 にインクルーシブな教育へ向けて交流、環境への取り組みが国等の責務として 謳われている。

 しかし、障害があるがゆえに、教育分野における差別的な状況、家族が介護 することが当然、あたかかも障害児を産んだことは親の責務でありその介護も 当然であるかのような環境下に、両親が置かれている社会的な風潮等これらの 状況は根底から改善の必要がある。

 一方、重度の障害児(コミニケーションができない等)へのいじめ、虐待等 は、本人が訴えることができない現実を配慮すると、相当数の多くの事実が表 面化していないと推定される。

 従って、親への充分な支援とモニタリングを明確化すると同時に教育、虐待 等幅広い分野で障害児が、他の児童と同様に平等に扱われる権利を明文化する ことが必要。

 (教育)

第十四条 国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢、能力及び障害の状態 に応じ、十分な教育が受けられるようにするため、教育の内容及び方法の改善 及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、障害者の教育に関する調査及び研究並びに学校施 設の整備を促進しなければならない。
3 国及び地方公共団体は、障害のある児童及び生徒と障害のない児童及び生 徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによつて、その相互理解を促進 しなければならない。

附帯決議

五、障害のある児童・生徒とその保護者の意思及びニーズを尊重しつつ、障害 のある児童・生徒と障害のない児童・生徒が共に育ち学ぶ教育を受けることの できる環境整備を行うこと。

【小川委員】

1.基本法総則として盛り込むべき事項

(1)新たに定義すべき事項
① 障害に基づく差別
② 合理的配慮
③ 差別の積極的是正措置

(2)4.基本的理念及び障害者施策の基本方針に盛り込むべきもの
① 個人をそのままの状態で尊重すること
② 地域生活を営む権利
③ 言語及びコミュニケーションに関する権利

2.上記事項についての基本的な考え方 (1)新たに定義すべき事項

① 障害に基づく差別

 第18 回推進会議資料2-1「これまでの議論を踏まえた障害者基本法 の改正検討事項について(総則関係部分)【たたき台】」等では、「障 害を理由とする差別」となっているが、障害者権利条約の規定に沿って 「障害に基づく差別」としたほうがよいと思われる。条約交渉過程の議 論も取り入れやすい。

② 合理的配慮

 「障害に基く差別の定義など、どの条項に入れ込むかについては検討 が必要であるが、国際人権法上の新たな概念として、新たな基本法でも きちんと定義すべきである

③ 差別の積極的是正措置

 合理的配慮と同様、どの条文に規定するかは検討が必要であるが、障 害者施策とおおいに関連する部分であり、差別の積極的是正措置が差別 とならない旨、障害者権利条約第4条に基き、規定すべきである。

(2)4.基本的理念及び障害者施策の基本方針に盛り込むべきもの

① 個人をそのままの状態で尊重すること

 条約上の「法的能力」の規定を担保する条文が必要である。権利条約の 第12条~14条(法的能力の行使や、恣意的に自由を奪われないこと等) の規定を包括するものとして、権利条約17条(「個人をそのままの状態 で・・・」が設置されたことにかんがみ、基本法として同17条に沿った 条項の新設が必要である。

② 地域生活を営む権利

 「4.基本的理念及び障害者施策の基本方針の(4)自ら選択する地域にお ける生活の実現」と同趣旨になると思われるが、権利としての規定をきち んと行うべき、ということで、書き入れた。 ③ 言語及びコミュニケーションに関する権利 「4.基本的理念及び障害者施策の基本方針」の(3)では、「自ら選択する 言語及びコミュニケーション手段の利用」となっているが、これでは、言 語規定が明確でなくなる可能性もある。すくなくとも、手話と非音声言語 に関して、「言語」としての何らかの規定は必要となる。

【尾上委員】

1.目的規定等の見直し

【盛り込むべき事項】

  • 障害のない人と平等な社会参加や生活を実現するための人権施策であることを明示。
  • 障害者施策は、障害者が障害を理由として社会参加や生活が制限、制約及び差別されることなく、 障害の無い者と同様の社会参加や生活を実現するための人権施策であることを目的規定に盛り込む。

【基本的な考え方】

  • 現行の障害者基本法は、その第一条に「…もつて障害者の福祉を増進する ことを目的とする」と、障害者の人権を確保・促進していくための施策とい う点からはきわめて不十分である。
  • 障害者基本法以降、障害者の自立と社会参加がうたわれるようになってき たが、現実には、自治体、雇用者及び交通事業主等によりその社会参加等が、 制限、制約を受けてきた歴史的事実があるため。

2.「障害者」の定義の見直し

【盛り込むべき事項】

 「障害者とは、身体的障害、知的障害又は精神的障害(以下「障害」と総称 する。)があるため、種々の障壁と相互に作用することにより、社会に完全か つ効果的に参加することに制限を受ける者を含む」との規定を盛り込む。

【基本的な考え方】

  • 条約第1条の「障害〔ディスアビリティ〕のある人には、長期の身体的、 精神的、知的又は感覚的な機能障害〔インペアメント〕のある人を含む。こ れらの機能障害は、種々の障壁と相互に作用することにより、機能障害のあ る人が他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを 妨げることがある」との規定を最大限活かす必要がある。
  • 第一次意見書にも「社会モデル的観点からの新たな位置付け」「障害の定義」 等が明記されているから
  • 障害者基本法の制定時(1993 年)から発達障害や高次脳機能障害、 難病等をはじめとして、環境上の要因によって生活上の制限を受ける状態を障害の範囲に含めること、 長年の懸案であることから

3-(1)障害を理由とする差別の定義に盛り込むべきもの

【盛り込むべき事項】

  • 合理的配慮を提供しないことに加えて、「直接差別」及び「間接差別」についての記載

【基本的な考え方】

  • 条約の第2条では「障害に基づく差別には、合理的配慮を行わないことを含むあらゆる形態の差別を含む」とあり、 あらゆる形態の差別ということを明確化するため。 また、障害者の実生活においても合理的配慮の拒否以外にも、「直接差別」及び「間接差別」を受けている現状があるため。

4-(2)自己決定に基づく社会参加

【盛り込むべき事項】

  • この項目だけに限らないが、「自己決定」に関して、「自己決定のプロセスへの支援」の重要性をふまえて、 「支援付きの自己決定も含むこと」を明示する。

【基本的な考え方】

  • 長年の施設入所・社会的入院によるセルフネグレクトや、エンパワメントを得る機会がなかったために、 自己決定を困難にされてきている状況があるから。

4-(3)自ら選択する言語及びコミュニケーション手段の利用

【盛り込むべき事項】

  • 手話の言語性を明記するとともに、この項目を、「自ら選択する言語及びコ ミュニケーション手段の権利」とする。
  • また、音声及び言語障害のためコミュニケーションを確保するうえでトー キングエイドや人的支援等が必要な場合も含める。

【基本的な考え方】

  • 条約第2条の「言語とは、音声言語、手話及び他の形態の非音声言語等を いう」をふまえた規定が必要だから。
  • 音声及び言語障害のためにコミュニケーションの確保が困難な多くの重度 障害者が地域生活を実現している一方、そのために入院等において生活上の 制限や制約を受けている現状があるため。

4-(4)自ら選択する地域における生活の実現

【盛り込むべき事項】

  • 「地域での生活の権利」ということを明示する。
  • また、「地域での生活」には、日常生活だけではなく、「地域で共に学ぶ」、 「地域で共に働く」ことも含めた社会生活全般に渡ることが分かるような規定にする。

【基本的な考え方】

  • 条約第19 条では、「障害のあるすべての人」の「他の者と平等の選択の自由を有しつつ地域社会で生活する平等の権利」 を明確にしていること、並びに推進会議の第一次意見書にも、 「地域で暮らす権利の保障とインクルーシブな社会の構築」が明記されているから。
  • 就学及び就労に際して必要な支援が無いために「就労できない。」、「地域の学校に就学できない。」 現状があるため。そして、そのことが「地域での日常生活」の実現も困難にしているから。

4-(7)施策の策定及び実施への当事者意見の反映

【盛り込むべき事項】

  • 意見の反映状況に関する公表規定を明示する。また、公表にあたっては、 意見内容以外にも、具体的に意見反映をした施策や、反映できなかった理由等も含める。

【基本的な考え方】

  • 当事者意見を聞くだけではなく、具体的な施策に反映させる仕組みを確保するため。

【門川委員】

1.基本法総則として盛り込むべき事項

1.目的規定等の見直し

2.上記事項についての基本的な考え方

 現行の「障害者基本法」で定められている「障害者」は、ともすれば「障害のある成人」という感があり、 「障害のある子ども」も等しくこの法律の範疇にあるのかがわかりにくい。 基本法は、障害のある子どもから成人まで、全ての年齢層を対象にしているのであれば、 「目的」の中に、このことを明記するべきであると考える。

 障害のある子供は、「差別」、「教育」、「言語とコミュニケーション」等の分野において、 法の保護の対象となる。

1.基本法総則として盛り込むべき事項

4.基本的理念及び障害者施策の基本方針

(2)自己決定に基づく社会参加

2.上記事項についての基本的な考え方

 「自己決定」を可能とするには、一人一人にアクセシブルな方法で情報が共 有、保障され、そして自らの意志の表現が尊重され、円滑に行える「自己選択」 の過程が保障されるべきと考える。何をもって「決定」とするのか、その「意 志決定」の手段となる「自己選択」の権利が保障されなければならない。

 例えば、「教育」に関していえば「インクルーシブ教育」、あるいは「特別支援教育」のどちらを選択し、 決定するのかは当事者であることから、「自己選択」は「自己決定」の前提として必要な権利である。

【北野委員】

1.基本法総則として盛り込むべき事項

 第1次意見書の第2の4の基づき「自ら選択した地域において自立した生活を営む権利と、 その実現のために必要な諸支援を実施する国と自治体の義務」を明確に表記すること

2.上記事項についての基本的な考え方

 これは、障害者権利条約の第19条の求めるところであり、また我が国の憲 法が保障する基本的人権でもある。

 例えば、現行障害者基本法第3条の2「すべて障害者は、社会を構成する一 員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えら れる。」は、2重の意味で問題である。

 まず、それは与えられるものではなく、第1次意見書の第2の4の基づき「自 ら選択した地域において自立した生活を営む権利」として存在する。

 さらに、それが権利として成立するためには、社会参加・参画に必要な支援 を、国や自治体が保障しなければ、それは成立しない。

 それゆえに、例えば、障害者基本法第3条2は、「すべて障害者は、社会を構 成する一員として、あらゆる分野に参加する権利と、必要な支援が保障される。」 といった表記が求められる。

1.基本法総則として盛り込むべき事項

 現行基本法第6条「国民は、社会連帯の理念に基づき、障害者の福祉の増進に 協力するよう努めなければならない。」という表記を、
 「障害の有無にかかわらず、すべての国民は、社会連帯の理念に基づき相互に その理解を深め、人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の 実現に寄与する。」に改める。

2.上記事項についての基本的な考え方

 なぜ表記を改めるべきかというと、現行表記では、「国民が協力する」わけだ から、障害者は協力されてしまうのかと、つまり障害者を国民に入れていない というふうに読めてしまう可能性が大きいからである。

 障害者も同じ市民として、「相互に理解と支援を創造する連帯の主体」である ということを明確にしなければ、「他の市民との平等を基本として」構想された 障害者権利条約の批准の第1関門である障害者基本法が、受動的で恩恵を受け る障害者像を温存する危険がある。

 幸い、現行「障害者自立支援法」等に、先進的な表記が存在するので、それ を活かしたい。

【清原委員】

1.基本法総則として盛り込むべき事項

 5.国民の責務 (追加)

2.上記事項についての基本的な考え方

 日本社会が、障がいの有無にかかわらず国民が相互に個性と人格を認めあ う社会を実現するためには、地域社会における障がい者と様々な関係者との 連携や「協働」による「共助」の関係の構築が欠かせない。

 このようなあり方を明確にするためには、国や自治体の責務のみでなく、 現行の「障害者基本法」第6 条の「国民の責務」のような内容を、総則にお いて規定することが重要であると考える。

 そこで、基本法総則にける「1.目的規定等の見直し」として、上記の趣 旨の内容を付加するとともに、このことの重要性に鑑み、「国民の責務」とし て別に規定することが望ましいと考える。

【佐藤委員】

1.基本法総則として盛り込むべき事項

 「4.基本的理念及び障害者施策の基本方針」

 とくに、(1)すべての基本的人権の享有主体

2.上記事項についての基本的な考え方

 上記は憲法、権利条約などに照らして当然の規定である。

 ここに、あるいは独立した理念条文として、「障害者がその権利を尊重され る社会は、障害のない人にとっても安心できる社会であって、個人の間の差異 が尊重されすべての人が生き生きと社会参加できる社会である」という内容を 加える。

 障害者基本法、その下の各種法制度が「障害者のためのもの」という単純な理解にとどまる限り、 障害者制度改革は大きな改善を期待できない。日本社会はどうあるべきか、この社会は障害のある人をどう理解し、 障害のある人に何を期待するのか、という明確なメッセージが必要である。

1.基本法総則として盛り込むべき事項

 「4.基本的理念及び障害者施策の基本方針」
のなかに、「家族依存からの脱却」

2.上記事項についての基本的な考え方

 障害者権利条約全文の(x)は、「・・・・、障害のある人の権利の完全かつ平等な享有に家族が 貢献することを可能とするために必要な保護及び援助を受けるべきであることを確信し、・・・」 としている。

 しかるに推進会議「第一次意見書」が指摘するように、「福祉・医療・教育などの社会権の実現は、 依然として自己責任や家族依存の色彩を強く残し、質的にも量的にも不十分である。」 (p2)という現状にある。

 このため「第一次意見書」では、「すべての障害者が家族への依存から脱却し、 自ら選択した地域において自立した生活を営む権利を有することを確認するとともに、 その実現のために24 時間介助等を含む支援制度の構築を目指す。」 (p7。4.「地域生活」を可能とするための支援)としている。

 問題は、家族との同居を希望し選択する障害者への支援が弱く、家族依存の 政策となっており、このため障害者本人も家族も負担が重く、地域移行が進ま ず、無理な地域移行が無理心中の増加をもたらしかねない状況にあることであ る。したがって十分な本人への支援によって「家族依存からの脱却」が必要と される。なお、「十分な本人支援」がなされてもなお、「家族支援」も必要とさ れる。障害児の親がどう障害のある子と接したらよいかの支援などである。

1.基本法総則として盛り込むべき事項

「(6)生活の実態に応じた施策の実施」を
「(6)生活の実態に基づく施策の策定と評価」とする。

2.上記事項についての基本的な考え方

必要とされることをより正確に見出しにしたもの。

1.基本法総則として盛り込むべき事項

 (7)施策の策定及び実施への当事者意見の反映

2.上記事項についての基本的な考え方

 この面での取り組みの遅れている部分、すなわち地方自治体や支援提供機関 での参加、知的障害・精神障害・発達障害・慢性疾患に伴う障害などのある人 の参加を強めるべきである。また意見の反映方法の例示(策定委員会、アンケ ート調査など)も必要である。

 意見を反映しやすいように、障害当事者団体や家族の団体の結成と運営への 国・自治体からの支援も(総則または個別条項で)掲げることが望まれる。

【新谷委員】

基本法総則として盛り込むべき事項

●前文(追加)
「基本的な考え方」

 国連障害者権利条約の国際的発効という世界的潮流を受けて、障害当事者の 参画のもとに行う法改正であることから、「日本国憲法の理念に則り、国連障害 者権利条約を誠実に履行するために、障害者基本法を改正する」、と云った趣旨 を盛り込んだ前文を設ける。

1.目的規定等の見直し

「基本的な考え方」

 障害者は障害者施策の権利主体であることを踏まえ、法の目的が国連障害者 権利条約の規定を尊重し、障害者の権利の実現を図るものであることを明記す る。(権利性の明文化)

2.「障害者」の定義の見直し

「基本的な考え方」

  • 「障害者とは身体的、精神的、知的、感覚的な機能障害などにより、その時々 の社会的環境において、日常生活又は社会生活において一定期間相当な制限を 受ける者をいう」と云ったように、権利条約の規定に従い「感覚的な機能障害」 を入れる。
  • 「一定期間」の縛りを入れることで、一時的な疾病・けがを除外する。
  • 新たの障害(発達する概念)、難病などを包摂する文言を工夫する。

3.障害を理由とする差別の禁止

(1)障害を理由とする差別の定義

「基本的な考え方」

  • 直接差別、間接差別、合理的配慮の欠如に加え、補助者・保護者への差別、 補助犬に対する虐待を加える。
  • 虐待については、「障害者虐待防止法(仮称)によるものとする」といった規 定を設ける。

(2)差別事例の収集、公表

「基本的な考え方」

  • 権利条約第8 条の規定をうけた独立条項「障害に関する意識向上」を設け、 その一部とする。

4.基本的理念及び障害者施策の基本方針
(1)すべての基本的人権の享有主体
(2)自己決定に基づく社会参加
(3)自ら選択する言語及びコミュニケーション手段の利用

「基本的な考え方」

  • 「言語」は独立した条項で定義する。
  • 「言語」を音声言語、手話及びその他の非音声言語とするなら、 「自ら選択する言語の利用」は障害者分野を離れ、市民レベルの問題である。 基本施策として入れるのは、障害が原因で十全なコミュニケーションが困難な障害者の 「自ら選択するコミュニケーション手段の利用」と考える。

(4)自ら選択する地域における生活の実現
(5)障害のある女性に対する配慮

「基本的な考え方」

  • 「障害のある子ども」を追加するか独立した項目を設ける。

(6)生活の実態に応じた施策の実施
(7)施策の策定及び実施への当事者意見の反映

「基本的な考え方」

  • 「国及び地方公共団体は、障害者に関する施策の策定、実施においては、 障害者・障害者団体の参画を保障しなければならない」との規定を設ける。

(8)調査・統計の実施(追加)

「基本的な考え方」

  • 国及び地方公共団体は、障害者に関する定期的・継続的な実態調 査・統計を実施し、障害者に関する施策の策定、実施は、一般国民 と比較可能な障害者の生活実態調査に基づいて行わなければなら ない、と云った趣旨の規定を設ける。

5.法制上の措置(追加)

  • 現行法10 条の規定を改正し、「国は、この法律の目的を達成するため、 必要な関係法令の制定又は改正を行わなければならない。また、必要な財政 上の措置を講じなければならない」の文言にする。

「基本的な考え方」

 障害者基本法は、国民の責務など理念的な規定と、行政各部の施策を調整 統合する実体的な規定をもつべきである。

6.(追加)国際的協調

「基本的な考え方」

 人権問題、障害者問題の普遍性を踏まえ、障害に関する規定・施策が国際的基準に整合したものであると同時に、 国際的基準の普遍化に寄与・貢献するものであることを明記する。

7.(追加)障害者相談・支援部門の設置

「基本的な考え方」

 国・地方自治体に障害者相談・支援部門の設置を義務つける。医療機関、 民間事業体にも同様な部門設置を義務つける。

【関口委員】

1.基本法総則として盛り込むべき事項
一 目的規定等の見直し

  • この法律は、障害者権利条約の批准をうけ、障害者権利条約に基づき、
  • 障害者の権利(削除:障害者の自立及び社会参加の支援等)のための施策に関し、基本的理念を定め、
  • 及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、
  • 障害者の権利(削除:自立及び社会参加の支援等)のための施策の基本となる事項を定めること等により、
  • 障害者の権利(削除:自立及び社会参加の支援等)のための施策を総合的かつ計画的に推進し、
  • もつて障害者の権利(削除:福祉)を保障(削除:増進)することを目的とする。

二 「障害者」の定義の見直し

障害者を定義する必要はなく、障害の定義にとどめるべきではないか。
仮にするならば、
この法律において「障害者」とは、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制 限を受ける者をいう。
といった具合には、身体、精神、知的という区別を取り払うべきである。勿論、 発達障害、難病、高次脳機能障害などの個別規定も設けず、これらを障害者と みなせるような規定が望ましい。

三 障害を理由とする差別の禁止

現行の差別禁止規定では不十分であり、立法措置をとること、その責任ある省 庁を明確にすることが必要。
(1)障害を理由とする差別の定義
私人間においては、直接差別、間接差別、合理的配慮の欠如でいいと思うが、 基本法として国、地方公共団体等に適用されるべきは、もう少し、違うものが あっていいように思う。
(2)差別事例の収集、公表
差別事例を収集、公表すること自体には賛成するが、 個別具体的な事例によっては、その都度、検討していく必要がある。

4.基本的理念及び障害者施策の基本方針

(1)すべての基本的人権の享有主体

たとえば、精神障害者に対する強制入院を、医療だから人権だなどと言う意味 不明な解釈がまかり通ることがないようにすべきである。

(2)自己決定に基づく社会参加

たとえば、精神保健福祉法の強制入院は、本人の意思に反して強制的に入院さ せるという意味ではなく、本人の同意を要件の中に入れていない(同意の有無 にかかわらず)という意味の解釈だそうだが、自己決定を要件化するなどして 絶対化しなければ、相対的に自己決定の有無にかかわらず強行され、結果的に 自己決定権を剥奪される可能性がある。「自己決定によらなければ」といった具 合の言い回し等で、自己決定権を絶対化するよう、文言と書きぶりに注意しな ければならない。

(4)自ら選択する地域における生活の実現

この場合の地域とは、あらゆる生活様式のことであり、特定の生活様式を押し つけられないことを担保できる文言で規定すべきである。

(5)障害のある女性に対する配慮

(6)生活の実態に応じた施策の実施

(7)施策の策定及び実施への当事者意見の反映

 責任ある省庁を明確にし、また、条約に基づき、各障害者団体の代表者がプ ロセスに参加していない政策については、一切、無効とすべきと考える。

2.上記事項についての基本的な考え方

障害者という書きぶりにする場合には、精神障害者は精神疾患の種別、様態 を問わずにあらゆる場合に精神障害者である事を確認しなければならない。す なわち、急性期は患者であり精神障害者ではないという解釈の余地を残しては ならない。

 人権とは、人身の自由やそのままでいる権利をはじめとする自由権、住居不 可侵権にはじまるプライバシーの権利、を含み、何人においても絶対的なもの である事の確認が必要である。例えば医療は人権侵害を伴うものであり、医師 は手術する場合に傷害罪を免責されるだけである。緊急手術を除けば、インフ ォームドコンセントは不可欠の条件であり、緊急事態とは即座に手当しなけれ ば、命を失う怖れのある場合であり、自傷他害の怖れ、の怖れとは質的に異な ることに留意すべきである。その人権を担保するのが障害者基本法であるべき だ。

 パターナリズムによる強制を生んできた背景には、障害者の尊厳を無視して 1人前の人間とみなさないという発想がある。その発想に賛成するものが99 で反対するものが1であったとしても、人間を人間として扱えというのは絶対 的な命題であり、多数決や専門家の意見で決まる問題ではない。

【竹下委員】

1.基本法総則として盛り込むべき事項

 目的規定等の見直し

2.上記事項についての基本的な考え方

(1)障害者福祉の目的は、障害のある人が「人たるに値する」または 「人並みに暮らすことのできる」社会を実現するためのものでなければならない。

(2)本基本法は、障害者福祉の施策を推進するための理念を示すとともに、 本基本法に定める原則や権利は司法審査において判断基準となるものである。

1.基本法総則として盛り込むべき事項

 「障害者」の定義の見直し

2.上記事項についての基本的な考え方

(1)たとえ短期間といえども傷害のために不利益が継続する場合には、障害 の範囲に含まれる。

(2)傷害が固定せず、将来において回復の可能性が不透明な場合もまた障害 の範囲に含まれる。

1.基本法総則として盛り込むべき事項

障害を理由とする差別の禁止

(1)障害を理由とする差別の定義

2.上記事項についての基本的な考え方

差別(不利益取扱いや合理的配慮義務違反にとどまらず、区別されることによる不利益を含む) が当該当事者の意識ないし意図とは無関係に発生した場合においても、ここでいう「差別」に該当する。

1.基本法総則として盛り込むべき事項

基本的理念及び障害者施策の基本方針
(2)自己決定に基づく社会参加

2.上記事項についての基本的な考え方

 障害者が自己決定権を自らの利益のために適正に行使することができるよう にするための援助(情報提供や助言など)が受けられることもまた権利である。

1.基本法総則として盛り込むべき事項

基本的理念及び障害者施策の基本方針 (3)自ら選択する言語及びコミュニケーション手段の利用

2.上記事項についての基本的な考え方

 コミュニケーション及び情報処理に困難を伴う者(コミュニケーション障害 または感覚障害)は、障害のない人と等しく、すべての基本的人権の享有主体 として個人の尊厳が重んじられるためには、それぞれの選択する言語及びコミ ュニケーション手段による援助を求める権利が保障されなければならない。

1.基本法総則として盛り込むべき事項

基本的理念及び障害者施策の基本方針

(7)施策の策定及び実施への当事者意見の反映

2.上記事項についての基本的な考え方

 当事者の参画は、単に意見表明にとどまらず、政策決定への参加権を制度的 に保障するものでなければならない。

【土本委員】
きほん法に、ぜったいにはいるべきこと。

 コミュニケーションと情報保障は、ちょうかく、ろう、しかく、だけじゃな く、ちてきにも、ひつようでてきせつなコミュニケーションと情報保障がない と、ちてきでもコミュニケーションがないと、支援者につたえきれないことが あって、そのままになってしまうので、自分たちのうったえもとどかないまま になってしまい、いっぱいいっぱいになって社会の中で1人になってしまう。

 情報保障されないと、わけがわからないし、いろんな情報があって自分たち がそこからえらんできめることや、けいけん、たっせいかんもないまま、本当 にやりたいこともうばわれてしまう。 ちいきでの生活で、どんな福祉サービスがあることもしらないことは、 自分たちのいきいき・のびのび・ゆうゆうとした生活にならない。どこですむか、 だれとすむかでもそうだとおもいます。

 自分たちより、もっとこんなんをかかえている仲間たちは、いままでも、い まもコミュニケーションの支援や情報保障がない入所施設や病院で生活をして いる。その仲間たちは、とざされている施設や病院で、ひつようでてきせつな 情報がもらえないままにいる。パソコンで情報をみろといっても、むずかしい 仲間たちもいる。かんじにふりがなをふっても、いみがわからなければだめだ し、せつめいする支援者がひつようです。支援者は、こうてきにみとめられる べきです。

 コミュニケーションや情報保障をこうてきにみとめ、きほん法にきちんとか かれるべきです。

 ひつようでてきせつなガイドヘルプサービスもだいじです。 きほん法のなかみについては、ふだんつかわれてないことばでかかれてもむ ずかしくてわからないです。

 しょうがいしゃといわれて仲間たちにわかりやすくして、国民の人たちにも みてもらうことをしないとりかいをもとめても、きほん法があるとゆうことを しらないことには、りかいにもつながらないし、支援者がみてもきほん法のこ ともしらせないのはなんのためのきほん法なのか、いままで支援者もきづかな かったこともありますので、ひとつひとつかくにんをとっていかないとどんな ことかかれているか、しらないとどんなことをのせていけばいいのかもわから ない。ちてきの仲間たちは、おいていかれてしまうことがある。

 いますぐにはとむずかしいとおもいますので、すこし時間がかかることもあ るとゆことです。

【中西委員】

1. 基本法総則として盛り込むべき事項

 国際協力

2.上記事項についての基本的な考え方

 障害分野の国際協力政策は、法律で明文化されていないまま実践されてきた。 日本での実績を他の国々と分かちあうことによって、それらの国々での障害者 施策の向上に寄与するとともに、日本での施策を強化するような実例、情報を 入手できることにもなる。

 その実施においては、国際的及び地域的機関並びに市民社会(特に障害者の 組織)との連携を強化するとともに、障害者の参画による当事者による国際協 力が必要である。

1.基本法総則として盛り込むべき事項

 障害をもつ男性・女性

2.上記事項についての基本的な考え方

 すでに「たたき台」4(5)に出ているので、重複になるかもしれないが、女 性障害者の状況を文章として付け加えるだけでは不十分であることを強調した い。単に障害者とだけ文中で明記すると、つい女性障害者も同様にそこに含ま れていることが忘れられてしまう。機会均等の原則から言うと、上記を用いて ほしい。

【長瀬委員】

1.基本法総則として盛り込むべき事項

障害のある子どもに対する配慮
*関連する第1 次意見:第 3 の3 の1)の1

2.上記事項についての基本的な考え方

 障害者に関する施策の策定及び実施に当たっては、自らその権利を確保する ことに困難を抱えている状況にある、障害のある子どもに配慮しなければなら ない旨を規定。

1.基本法総則として盛り込むべき事項

国際協力の推進
*関連する第1 次意見: 第3 の3 の1)の1

2.上記事項についての基本的な考え方

 障害者の参加を通じた国際協力事業における障害者の権利の推進ならびに、 国際協力事業全般におけるアクセシビリティの確保を行わなければならない旨 を規定。

【久松委員】

1.基本法総則として盛り込むべき事項

  • 「目的」において。

「障害者権利条約の目的の達成」及び「障害者の権利促進、保護と尊厳が尊重 される社会の実現」を盛り込む。

  • 「定義」の用語の意義において。
    「障害」「障害者」「障害に基づく差別」「合理的配慮」「差別の積極的是正措置」 を盛り込む。
    さらに、「個人をそのままの状態で尊重すること」「地域生活を営む権利」「言語 及びコミュニケーションに関する権利」を新設する。
  • 「基本的理念」において。
    「活動に参加する機会」から「活動に参加する権利」に修正する。
  • 「国」及び「地方公共団体の責務」において。
    「差別を禁止する措置をとる」「障害者の権利を保障する責務」を盛り込む。
  • 「国民の責務」において。
    「障害者の権利と尊厳を確保及び促進」を盛り込む。現行法の「社会連帯の理 念に基づき」を削除する。
  • 「障害者週間」において。
    「障害者の福祉」から「障害者の権利と尊厳を確保及び促進」に変更する。
  • 「施策の基本方針」において。
    「障害者の福祉に関する施策」から「障害者に関する施策」に変更する。「障害 者の自己決定・自己選択(支援を受けた自己決定を含む)」「地域において自立 した日常生活を営む」「社会に参加する機会の確保及び促進」「施策の実施にお いて、障害者・障害者団体の参画の保障」「障害者の生活実態調査に基づいて施 策の策定、実施」を盛り込む。
  • 「障害者基本計画」において。
    「障害者の福祉に関する」から「障害者に関する」に変更する。

2.上記事項についての基本的な考え方

  • 「目的」
    法の改廃や新設のための根拠条文を担保する必要があるため、「障害者権利条約の目的を達成する」を盛り込みたい。
    「障害者の福祉」では「恩恵的な保護」の意味に解釈されるため「福祉」を削除する必要がある。
  • 「定義」
    「障害者差別禁止法」の新設を考慮して、「障害」と「障害者」の定義を設けたい。 また、「障害に基づく差別」「合理的配慮」「差別の積極的是正措置」を追加する。
    さらに、「法的能力」の規定を担保する条文、障害者権利条約の19条を踏まえて「地域生活を営む権利」の条文、 また、条約の規定を踏まえて「言語及びコミュニケーション手段に関する規定と権利に関する条文を新設する必要がある。
    なお、言語及びコミュニケーション手段に関する規定と権利に関する条文を必要とする背景は以下のとおりである。
  •  ○日本(世界)には、日本語(音声・文章)よりも自由に操ることができる 手話を主なコミュニケーション手段としている聴覚障害者(以下「ろう者」)がいる。
  •  ○ろう者は、日常生活においてコミュニケーションが必要な場面(つまりほとんどすべての場面) では手話を必要とする。特に、教育・労働・司法・選挙などの憲法が定める基本的人権の具体的な実行の場、 医療・介護などの国民向け事業の場、災害・国や自治体の広報など公的な情報提供の場、 地域生活における社会参加の場、これらのための情報入手は手話を用いたコミュニケーションが必要である。 日本語(音声・文章)だけでは情報の受信や発信が不十分であり、権利保障、サービス受給、自己決定、 社会参加を十分に果たすことができない。
  •  ○手話を言語として定義することにより、「4.基本的理念及び障害者施策の基本方針」の 「 (2)自己決定に基づく社会参加 (3)自ら選択する言語及びコミュニケーション手段の利用」と相まって、 ろう者の権利保障、社会参加保障を目指すことができる。
  • 「基本的理念」 「参加する機会」では障害者を恩恵の対象とする意味合いになるため、「参加す る権利」が妥当と考える。
  • 「国及び地方公共団体の責務」
    障害の特性やニーズを踏まえた「合理的配慮の提供」等の必要な支援を義務づ ける規定を明記する必要がある。「合理的配慮」については、教育、雇用、放送、 通信、交通等の分野に対する考えが明確になっていないため、これらの分野に ついても国や地方公共団体・事業者等が適正な措置を講じる責務を明文化する 必要がある。
  • 「国民の責務」
    「社会連帯の理念に基づき」では、社会全体で障害者を保護しようとする考え が強いので削除すべきである。「権利と尊厳を確保及び促進」を明記する必要が ある。
  • 「施策の基本方針」 障害者に関する法規・施策は、「障害者権利条約」の規定に従って制定・実施 する必要がある。 「障害者の福祉」では「恩恵的な保護」の意味に解釈されるため「福祉」を 削除する必要がある。 「障害者の自主性」の部分を障害者の権利主体の意味合いを強調するために「障 害者の自立と自己決定の保障」を明記する必要がある。 「障害者施策の策定とその評価」は、一般国民との比較可能な障害者の生活実 態調査の結果を踏まえる必要があるので、明記する必要がある。

【松井委員】

1.基本法総則として盛り込むべき事項

 前文を加えること。

2.上記事項についての基本的な考え方

 前文で、障害者基本法改正が必要な背景として、障害者権利条約の批准と履 行に向けて、国内の関連法制度の見直しおよび国内外における障害者をめぐる 動向などについて言及すること。また、障害者権利条約の目的および趣旨に沿 った障害者施策をすすめる上で、国際的な連携、協力および経験交流や情報交 換などの必要性についても触れること。

1.基本法総則として盛り込むべき事項

 たたき台の4.基本的理念及び障害者施策の基本方針(1)すべての基本的 人権の享有主体(第2 の1)で、「障害者は、障害のない人と等しく、すべての 基本的人権の享有主体として個人の尊厳が重んじられる」旨を規定するとされ るが、現行の基本法にある「その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有 する。」という表現もそのまま残すこと。

2.上記事項についての基本的な考え方

 障害者権利条約第28 条 [相当な生活水準及び社会的な保障]第1 項で、「締約 国は、障害者が、自己及びその家族の相当な生活水準についての権利並びに生 活条件の不断の改善についての権利を有することを認めるものとし、障害に基 づく差別なしにこの権利を実現することを保障し、及び促進するための適当な 措置をとる。」と規定されていることからも、「その尊厳にふさわしい生活を保 障する権利を有する。」という現行の基本法の規定を残すべきである。

1.基本法総則として盛り込むべき事

 たたき台の4.基本的理念及び障害者施策の基本方針(7)のあとに「国際 的連携および協力による施策の推進」を加えること。

2.上記事項についての基本的な考え方

 近年のわが国の障害者施策は、「国連・障害者の十年」(1983 年~1992 年)、 「アジア太平洋障害者の十年」(1993 年~2002 年)および「第2 次アジア太平 洋障害者の十年」(2003 年~2012 年)とリンクしながら展開されてきた。第2 次アジア太平洋障害者の十年後も障害者権利条約の履行などを推進するための 国際的な連携・協力の枠組みづくりに積極的に参画するためにも、障害者基本 法で国際的連携および協力による施策の推進について規定されることは、望ま しい。

【森委員】

1.基本法総則として盛り込むべき事項

① 新たにあげるべき事項

○ 前文

① 上記事項についての基本的な考え方

○ 「教育基本法」など他の基本法に比較的多く見受けられるように、「障害 者基本法」についても、抜本的改正の趣旨や理念、目的などを謳った前文 を設けたかたちについての検討をする必要があると思われる。 さらに、障害者の人権の保障と尊厳の尊重や障害者への差別のない共生 社会の実現を図るためにふさわしい法律とするならば、その名称も検討す る必要があると思われる。

② 新たにあげるべき事項

○ 言語及びコミュニケーションの手段

②上記事項についての基本的な考え方

○ 障害の特性に応じた非音声言語については、定義に入れ込むことを含め、 そのコミュニケーションにかかる権利性について規定することを検討する 必要がある。

③ 新たにあげるべき事項

○ 国及び地方公共団体の責務

③ 上記事項についての基本的な考え方

○ 障害の特性やニーズを踏まえた“合理的配慮の提供”等の必要な支援を 義務づけることを規定。特に、差別を禁止する措置において、施設事業者・ 企業などが“合理的配慮の提供”を実施することができるための財政的・ 技術的支援を含む、必要な措置を行う責務があることの明確化が必要。 合理的配慮については、教育、雇用、バリアフリーの分野に対する考え 方を明確にし、国や地方公共団体、施設事業者・企業などが適正な措置を 行う責務を規定。

④ 新たにあげるべき事項

○ 国民等の責務

④ 上記事項についての基本的な考え方

○ 社会全体で障害者を一方的に保護していこうとする考え方がイメージさ れる“社会連帯の理念”は削除した上で、国民等は、基本的理念及び差別 の禁止にのっとった社会、経済、文化その他あらゆる分野への活動の参加 が確保される社会の形成に寄与するよう努める旨を規定。

⑤ 新たにあげるべき事項

○ 法制上の措置等

⑤ 上記事項についての基本的な考え方

○ 国だけでなく地方公共団体を含め、法律の目的達成のために必要な法制 上、財政上の措置を講じる旨を明確に規定。

1.基本法総則として盛り込むべき事項

① 「1.目的規定等の見直し」に盛り込むべき事項

○ 「障害者の福祉」の標記について

① 上記事項についての基本的な考え方

○ 現状の障害者施策における「障害者福祉」という文言について、“恩恵的 な保護”の意味合いが色濃く感じられることから、その意味について、見 直しのなかで検討する必要があると思われる。

「すべて障害者は、他のものと等しく地域で暮らす権利を有し、これを確保す るための合理的配慮が保障され、かつ障害に応じた支援は一般社会生活に近い 形で提供されなければならず、一般の社会生活とは異なる生活様式を強制され るなど社会から分離もしくは排除されてはならない。」