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日時:2013年02月03日(10:30~16:00)
場所:戸山サンライズ 大研修室
 

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障害の予防に関する意見一覧

  1. 障害の予防に対する基本的考え方
  2. 障害の予防と早期発見、早期治療
  3. 難病に関して
  4. 現行障害者基本法
  5. その他

障がい者制度改革推進会議
第19 回(H22.9.6) 資料5

第19回障がい者制度改革推進会議 意見提出書式

障害者基本法 各則(論点表、議論が不足している分野)

障害の予防

1、障害の予防に対する基本的考え方

(1)障害の予防について、どう考えるか(権利条約では障害の悪化、または 二次障害として触れている:第 25 条(b))

【小川委員】

 現行障害者基本法「障害の予防に関する基本的施策」(第三章のタイトル及び 第23 条1と2)の「障害の予防」については、障害はあってはならず、治療し なければならないものという否定的な障害観が色濃く反映されているため、基 本的に削除する。

 新たに「保健サービス」を第2章の第12 条(医療、介護等)に合体し、主体 者である障害者の判断と選択によって利用できる施策を行うことを明示する。

 二次障害については、その軽減等は補装具など生活全般に関わる問題であり、 医療に関しては現行法12 条2 にすでに含まれていると考える。

【尾上委員】

 現行の障害者基本法「障害の予防に関する基本的施策」(第3章のタイトル 及び第23 条1と2)の「障害の予防」については、障害はあってはならず、治 療しなければならないものという障害観が色濃く反映されている。

 障害者基本法の前身である心身障害者対策基本法(1970 年)は、第一章総則 に続いて、次のような「第二章 心身障害の発生の予防に関する基本的施策」 がおかれていた。

【心身障害者対策基本法(1970 年)第二章】

第二章 心身障害の発生の予防に関する基本的施策

 第九条 国及び地方公共団体は、心身障害の発生の原因及びその予防に関する 調査研究を促進しなければならない。

 (2)国及び地方公共団体は、心身障害の発生の予防のため、必要な知識の 普及、母子保健対策の強化、心身障害の原因となる傷病の早期発見及び早期治 療の推進その他必要な施策を講じなければならない。

 現行、障害者基本法の第三章二三条の(1)、(2)が、この条文をほとんど踏襲 していることは明らかである。

 そして、1970 年の心身障害者対策基本法成立以降、自治体レベルでは「不幸 な子どもの生まれない県民運動」といった、「障害=不幸」と決めつけた上で、

 障害者を「あってはならない存在」とみなす行政主導の啓発や取り組みが繰り 広げられた歴史的事実がある。

障害者基本法では、「発生予防」が「予防」に、そして、基本施策の先頭に 位置する第二章から、後の第三章に移しかえられたというものの、その基本的 な条文は変わっていない。その上で、障害者基本法の制定の際に、難病に関す る施策が、 二十二条の(3)としてつけ加えられ、現行の条文の構成となっ た。

 この章の誕生の秘密と経過をふりかえるならば、現行の第3 章は基本的に削 除が求められることは明らかであろう。(ただし、現行二十二条-3)の残した 方などについては、次項を参照)

【川﨑委員】

 精神障害の場合、環境の調整、早期発見、適切な医療、保健のサービスの提 供により、障害の悪化を防ぐこともできる。障害の悪化については常に障がい 者の生活状態、生活環境を見守り、迅速にサービスを提供する体制が必要であ る。

【佐藤委員】

 「障害の予防」における「障害」の意味は何か不明であり、答えに窮する。

 障害者権利条約は、障害とは平等な社会参加の困難と定義している。したが って「障害の予防」とは、平等な社会参加の損なう可能性のある要素をあらか じめ除去する活動であり、障害者差別をなくすことや環境のバリアを除去する 取り組みなどを意味する。「障害の予防」とは「参加の促進」とほぼ同義である。 これは誰も否定しない。

 RI(国際リハビリテーション協会)などでは、3つのレベルでの障害の予防 という議論をしてきた。機能障害の予防、活動障害の予防、参加障害の予防で ある。ここではICF の障害の概念を活用している。

 「活動障害の予防」は、たとえば失明者が歩行できるように歩行訓練などを 提供することで、これも誰も否定しない。

 「機能障害の予防」は、たとえば統合失調症の人への「思考の障害」を起こ さないための薬物療法である。

 次のような指摘もある。「妊娠出産を契機として発症しやすい関節リウマチだ が、若い夫婦には特効薬(生物学的製剤)は高くて、結局は重度心身障害者に なってから医療費助成制度を利用して治療を受ける場合がある。症状は軽くな るが障害は残ったままとなる。今では障害を予防する手段があるにもかかわら ず制度的・人為的に障害者を生んでしまう。」

 これら3レベルの障害、その基礎となる3つのレベルの人間の生活機能とい う理解が必要である。そしてこれら3レベルの生活機能の障害を(環境のバリ アとともに)生み出す可能性のある「健康状態」(病気やけがなど)の「予防」 という活動もある。ここには、労働安全衛生、交通安全対策、成人病予防や健 康増進、食生活改善、喫煙・飲酒対策、スポーツ事故防止、妊娠中や周産期の 健康管理(未熟児対策など)などがある。

 本論点では、これらの何を「障害の予防」として尋ねているのか不明である。 おそらく、3レベルの障害に「健康状態」を加えた4つのすべてのレベルにつ いての予防を尋ねているものと思われる。しかし、これらすべてのレベルにお ける予防はすべて、そうした事態に直面した場合の当事者が希望し最大限の支 援を求めているものであって、必要なものである。

 すでに永続的な障害(健康状態または機能障害)を持つこととなった人にと って、「障害の予防」は意味がない。現実の問題として受け入れざるを得ない事 実なのに、その予防が強調されることは、自分の存在をことさら否定的に描か れることを意味する。健康状態または機能障害とともに継続的に(長期にわた って)付き合って生きてゆこう、健康状態または機能障害をもちつつも活発に 社会参加しよう、とする障害者の足を引っ張るものといえる。

 従って、障害者権利条約同様、すでに障害者として中・長期的に生きてゆく こととなった人の権利保障を主目的とした障害者基本法においては、健康状態 または機能障害という意味での「障害」の予防は規定する必要はないのではな いか。

 ただし障害者を含めて全国民にとって、病気や機能障害を予防することは重 要なことであり、障害者基本法から「障害の予防」を削除する理由について、 国民の間での誤解を生まないようにしなければならない。つまり推進会議は、 障害(健康状態や機能障害)の予防が一般的に意味のないことだとはいってお らず、すでに障害を持つことになった人が前を向いて社会参加を考える際には 意味のないことだと言っているにすぎない、と理解をしてもらう必要がある。

 さらに、障害者基本法に「障害の予防」という規定があることによって、具 体的な効果がこれまでに見られたのか、それをなくすことによってマイナスの 影響が考えられるのかどうか、十分な吟味が必要とされる。

【新谷委員】

 「障害の予防」と云う表現には、障害に対する否定的な評価が含まれている ので採用しない。障害は医学的側面からだけではなく、環境・障壁との相互作 用の側面からも定義されることから、「障害の原因」も「特定病因」に求める 医療的理解から脱却し、心理的・社会的・環境的原因に視野を広める必要があ る。障害者基本法の第9条、23条にある「障害の予防」の表現は権利条約の 表現に従って、「健康及びリハビリテーション」に改める。

【関口委員】

 障害の予防とは、障害はないにこしたことはないと捉える傾向がある。

 障害の予防そのものが障害はあってはならないという差別に基づく考え方で あり、原則認められない。

 二次障害の予防については社会的条件整備、介助の保障などなどの環境要因 の改善が必要である。

シンガー(Singer)の理論:
 歩いたり、見たり聞いたりできること、苦痛や不快をある程度感じないでいられること、 効果的な形で意志疎通できること、これらはすべて、ほとんどどのような社会状況でも、 真の利益(Genuine benefits)である。これを認めるからといって、これらの能力をすべ て欠いている人々がその障害を克服し驚くべき豊かさと多様さを持った生活を送ることが ありうるということを否定することにはならない(Singer, 1993:54=1999:65)。

 つまり、健常者を標準に設計された(障害者がいることを想定していない社 会)という前提を問わないで結論を出すことは正しくない。仮に障害のある状 況、ない状況を選択できたとしても、その人は、選択がなされる場となる社会 を選択できるわけではないが障害のある人生を選択することはありえる。

 第一に、人はなにもないところではなく既に存在する世界に生まれ、そこで過ごし始め る。それは「健常」の方が多数派で、便利で、よいことになっている世界である。第二に、 自らの方もどちらかであり、たいていは初期値に「健常」がセットされていて、それが通 常のモードになる。その人は、すでにその「健常」の世界をしばらく生きることになる。 その場から選択可能であるとして、その人は既にその世界に慣れているから、そこから降 りるのは面倒だし、こわい。障害と健常とどちらも可能であり選択できるとして、その人 はそこで健常の方を選択するだろう。しかしその選択がなされる場自体をその人は選んで いない。

 では、障害があることを初期値とし、その上で実際に両方から選べるならどうか。ただ し、環境として既に存在する社会の方は健常者用の、健常者的社会ではある。だからある いは別の理由で。障害をなくした方がよいと思う場合はあるだろう。ただ初期値がしばら く続きそれに慣れるのはここでも同じだから、(中略)なくさない方が選択されることもあ るかもしれない(立岩, 2004:64)。

 手を貸さなくてはならない時、それはその周囲の人にとってたしかに負担である。誰か がどこかに行きたい時、その人自身の力で移動しないのなら、誰か他の人が力を出さない とならない。本人でなければそれを行うのはまわりの人だから、本人ができ、その本人に やってもらった方がまわりの人は楽である。障害があることが本人にとってよいかわるい かは定まらない(立岩, 2004:66)。

 つまり、それぞれの障害者によって、異なる選択が想定できるわけだから、 障害の予防が基本法の施策に入れられることは、それぞれの障害者の意見を包 括しうるものではないので、予防それそのものは基本法の施策に入れるべきで はないと考える。

【中西委員】

 障害の予防は、障害の発生予防、障害の除去に関する医療の問題であると考 えられる。途上国の障害者法においては、わが国の障害者基本法がその手本と なったのではないかと考えられるが、障害の予防が項目として含まれている。

 しかし障害者基本法を政府は権利を推進する法律として海外に紹介している 以上、医療モデルに基づいた項目は除くべきである。

 ちなみに米国においては、Birth Defects Prevention Act of 1998(先天的 欠損予防法)が存在し、先天性欠損症に関する利用できるデータの収集と分析 して、先天性欠損症の防止の応用疫学的研究のために、地域のセンターの運営、 市民教育を内容としている。

【長瀬委員】

 まず、1970 年の心身障害者対策基本法制定の際の故橋本龍太郎氏、1993 年の 同法の障害者基本法への改正時の八代英太氏、堀利和氏をはじめ、障害者を含 む多くの先人、先輩の尽力によって、現在の推進会議の取り組みに至る道筋が 歴史的に築かれてきたことに心からの敬意を表したい。

 その上で、1970 年の心身障害者対策基本法がその目的として第1 条で「心身 障害の発生の予防」を掲げた経緯から、現在の障害者基本法にも障害の予防と いう項目が残っていることについて、障害者の権利条約の批准に向けた取り組 みという観点から検討すると、障害(インペアメント)の予防は障害者基本法 には不要と考える。それは、障害者基本法はあくまで障害者自身を人権の主体 とするという前提からである。障害者の権利条約で言えば、第3 条(一般原則) の(d)「差異の尊重、並びに人間の多様性の一環として及び人類の一員としての 障害のある人の受容」も参考となる。

【森委員】

 現行の障害者基本法第3章のタイトルおよび第23条1と2)の「障害の予 防」については、障害はあってはならず、治療しなければならないものという 否定的な障害観が色濃く反映されているため、基本的に削除し、新たに「保健 サービス」を、現行法第2章の第12条(医療、介護等)に合体、もしくは下 記(2)2のとおり、「リハビリテーション」の中に規定するなど検討する必 要があると考える。

(2)仮に、障害の予防自体を削除する場合、障害の予防にかわるべきものと して、どのような項目立てが考えられるか、また「障害の原因」の予防につい ては障害者施策ではなく一般公衆衛生の中で考えるべき課題だとするかどう か
(なお、障害の予防という項目立てをやめる場合、項目の分類の仕方として、 障害者の権利条約では、健康とリハビリテーションは別の条項で規定されてい る。
他方、現行障害者基本法は、医療、介護、リハビリテーションについて、一括 して規定されているが、このような括り方でいいのか、後記3の難病などをど こに入れるべきかも念頭に置いて、議論されたい)

【小川委員】

 現行法第3 章と第23 条1と2の廃止とともに、現行第12 条(医療、介護等) を、タイトルを「医療、保健等」とする。当分野においても権利の主体として の規定を明確にするため、例えば今後も精査が必要であるが以下のような改正 条文も考えられる(リハビリテーションの規定も含め、この条文案はあくまで も参考であり、今後、JDF としても精査する)。現行法23 条の難病に関する規 定は基本的に改正12 条(医療、保健等)に組み込む(内容の精査は必要)。

医療、保健等
障害者は、心身の体調を自らの意思で良好に保ち、自らの望む日常生活 と社会参加を果たすために、医療、保健及びリハビリテーション(以下「医 療等」と称す)を障害者の判断と選択によって利用できる権利を有する。
国及び地方公共団体は、障害者が生活機能を回復し、取得し、又は維 持するために必要な医療等の提供を行うよう必要な施策を講じなければな らない。
国及び地方公共団体は、前項に規定する医療等の研究、開発及び普及 を促進しなければならない。
国及び地方公共団体は、難病等の予防及び治療が困難であることにか んがみ、難病等の調査及び研究を推進するとともに、難病等があるため継 続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者に対する施策をきめ 細かく推進するよう努めなければならない。
国及び地方公共団体は、障害者がその年齢及び障害の状態に応じ、医 療等その他自立のための適切な支援を受けられるよう必要な施策を講じな ければならない。
6 国及び地方公共団体は、第一項から前項までに規定する施策を講ずる ために必要な専門的技術職員その他の専門的知識又は技能を有する職員を 育成するよう必要な施策を講じなければならない。
現行法5と変更なし
現行法6と変更なし

【尾上委員】

 まず、現行二十二条-(3)に関しては、新たに「保健サービスへのアクセス」 または「保健サービスの利用」を設け、主体者である障害者の判断と選択によ ってアクセスし利用できる施策を行うことを明記することが必要である。

 さらにポリオや脳性マヒ等から生じる二次障害や脊髄損傷者の褥瘡等は、医 療や介護、そして、補装具や福祉機器の利用等もあわせた総合的な取り組みが 必要であり、それらの各々の施策の充実が求められる。

 現行法では十二条 医療・介護等と一括りになっており、各々の施策の充実 という点から考えた時に不十分である。

【佐藤委員】

 医療、介護、リハビリテーションは、相当異なる支援なので、独立させるべ きである。

【新谷委員】

 一般公衆衛生に関する議論が疾患のみならず心理的・社会的・環境的要因も 含むものであるなら、「障害の原因」について一般公衆衛生の中で論じること も可能であるが、広範囲な施策議論の中で「障害」が周辺化される恐れがある。 「一般公衆衛生の施策においては、障害の原因の予防を検討する」明文規定を 障害者基本法に置き、また施策検討での障害当事者、障害を専門とする医療関 係者などの参加の仕組みを構築するが必要である。

【関口委員】

 早期発見と適切な援助及び二次障害の予防は、権利条約でも挙げられている ので必要と考える。

 医療、介護、リハビリテーションという括り方そのものに問題があるため、 「医療」「介助」「リハビリテーション及びハビリテーション」とそれぞれを 独立条項にし、(主体性を考慮し)介護ではなく介助、リハビリテーションに 加えてハビリテーション(ピアサポートを含む)とし、条約の基準を満たすべ きである。

【中西委員】

 障害者の権利条約が作られた前の考え方では、1981 年の国際障害者年、その 後の障害者に関する世界行動計画、基準規則などすべてにおいて、障害予防、 リハビリテーション、機会の均等化が障害に関する基本的要素であった。

 医療、介護(介助)、リハビリテーションは関連していて、障害を持つ者の 生活の中で区別して扱うことが困難である場合があることは事実である。しか し一方では、基本法で『障害予防』として1 章を設けることは、障害者は病人 であるとする医療モデルの考え方を強化するおそれがある。

 障害者の権利条約に基づいて項目を整理することが、最適と考える。つまり 「障害者の保健・健康」 早期発見、療育、二次障害の予防、 平等な医療ケアの提供を服務「リハビリテーション」 ここでは ハビリテーションを含むの二つに分けてあつかうべきである。

【長瀬委員】

 健康という項目が考えられる。ただし、健康とリハビリテーションは特に別々 に規定する必要はない。

【森委員】

 障害者の権利条約前文(e)に「障害が機能障害〔インペアメント〕のある 人と態度及び環境に関する障壁との相互作用であって、機能障害のある人が他 の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げるもの から生ずること」とあるように、周囲の無理解や環境に関する障壁が問題にな るのであることを十分に認識したい。障害は社会モデルとして理解すべきこと と考える。

 現行障害者基本法で、医療、介護、リハビリテーションについて、一括して 規定されていることについては、リハビリテーションが医学的リハビリテーシ ョンのみという観点だけでなく、教育的・職業的・社会的リハビリテーション といったことについて検討してみる必要性があると思われる。したがって、障 害者権利条約の規定のとおり、第25条「健康」、第26条「リハビリテーシ ョン」に分けて規定することを検討する必要があると考える。

 また、現行の障害者基本法の第23条3項では、障害の定義に難病を加える ことができなかったことを踏まえて加えられていると考えられる。難病に関し ては、障害の定義に位置づけるべきであるので、第3項からはずすべきである。

2、障害の予防と早期発見、早期治療

(1)障害の予防と早期発見、早期治療をどのように整理するか

【小川委員】

 早期発見、早期治療は重要なことであるが、「障害の予防」を目的とするの ではなく、障害者が権利条約第17 条の規定の通り、個人が「そのままの状態で 尊重」され、自らが求めるスタイルで、基本的には地域で日常生活・社会生活 を行いあるいは継続するために、医療を受けることやリハビリテーションを行 うことを自ら(または親権者など)が決定するためのものとして位置づけられ るべきである。

【尾上委員】

 どんな障害があっても地域の中で育ち、学び、生活し、働くといった地域生 活を実現していく方向で、早期の段階から必要な支援を得ることは重要である。 その意味で、「早期発見、早期治療」ではなく、「早期インクルーシブ支援」 につながっていくべきであり、障害の予防を目的とすべきではない。

 条約第17 条の「そのままの状態で尊重」されること、19 条の「自立した生 活と地域社会へのインクルージョン」、24 条の「あらゆる段階におけるインク ルーシブな教育制度」といったことを想起し、整理することが必要である。

【川﨑委員】

 精神障がいの場合、疾病の早期発見と治療的介入、当事者およびその家族へ の必要な情報提供、適切な医療、保健のサービスの提供が障害の予防に役に立 つことが立証されている。このことから考えると、障害の予防とは、適切な見 守りと情報提供、迅速かつ有効な医療保健サービスが提供されることであると 考える。

【佐藤委員】

 かなり複雑であり、厚労省から資料を出してもらう必要があるのではないか。 法律、対象者、行政機関、支援実施機関、専門職員体制、など制度上の区分と、 全国でどのように数量的に分布しているかなど。

【新谷委員】

早期発見、早期治療は一般公衆衛生に関する議論での非常に大きな論点と考 える。「障害の原因」の調査研究と早期発見・早期治療を総合的に検討すべき である。因みに2005 年WHO は聴覚障害について、

  • 80%の聴覚障害者は中・低開発国に偏在
  • 子どもの軽中度難聴の主な原因は中耳の慢性感染
  • 予防、初期診断、健康管理で聴覚障害は半減 (2005 年聴覚障害者数WHO 推定278 百万人、世界人口比4.3%)) と報告している。

【関口委員】

 やはり、障害をないにこしたことはないという対策すべき不幸として捉える ものであるため、障害の予防を基本法の施策とすることは、反対である。

 精神疾患については早期発見早期治療が、強制を伴わない形で行われること が重要である。

 なお早期発見の試みが人権侵害とならないことも重要である。たとえば職場 でのあぶり出しなどは解雇につながりかねないおそれがあり、慎重な配慮が求 められるし、欠格条項廃止が前提となろう。

 教育場面においても早期発見が、退学や自主退学への追い込みにならないこ とが重要である。

 ヘルスケアやメンタルヘルスケアが行われることに対して異論はないが、そ れは広義の予防であり、特化された予防であるべきではないので、健康増進法 等、他の一般的な法律で規定すべき問題であろう。 障害の早期発見というときに、とりわけ精神においては、不要な診断やラベ リングがおこらないように留意すべきである。障害が社会との障壁であること を考えると、本人が何らかのサービス(医療を含む)を望んだときに障害者と なることを忘れてはならない。

【中西委員】

 障害者の保健・健康の問題として扱う。 そして単に医療職によるサービスのみでなく、同じ障害の子どもを持つ親や、 同じ障害を持つもの同士のピア・サポートも重視する。

【森委員】

 過去に比べて、早期発見や早期治療の体制整備が整ってきた現状を踏まえる と明確に記すべきと考えられることからも、その検討が必要と考える。

3、難病に関して

(1)難病に関する現行法の記載について、どう考えるか

【小川委員】

 今後の精査は必要だが、すくなくとも現行法の「予防」という記載は検討が必要である。

【尾上委員】

 1.で述べた通り、現行二十二条-3)の難病に関する施策は、1993 年の障害 者基本法成立の際に、「第三章障害の予防に関する基本的施策」の付け足され る形で、設けられたものである。

 難病に関する施策は、決して「予防」だけではないし、ましてや、優生思想 的な色彩が濃い章の中に設けられるべきではないと考える。

 保健サービスへのアクセスといった形で、当事者の主体性の下に利用できる ようにすることが必要である。また、制度の谷間を生まない障害の定義を抜本 改正基本法の中に設け、医療や介護、就労に関する支援策等も利用できるよう にすべきである。

【佐藤委員】

 1993年の改正時の付帯決議が「難病による障害のある者も障害者であり きめ細かい施策を」(要旨)としていたので、2004年の改正時にはさらに一 歩進めねばならないとの政治的配慮で、こともあろうに「予防」の章に「難病」 を登場させたものと思われる。「政治的」とは、第2条の「障害者の定義」に含 ませると障害者雇用対策など実定法への影響が大きすぎる(予算が増えすぎる)、 しかしどこかに入れたい、ということ。

 第2条の「障害者の定義」に、「慢性疾患にともない生活上の支障のある者」 というような表現で「難病」を位置づける必要があると思う。「難病」という行 政用語は特定の限定的な意味があるので、基本法にはふさわしくない。

 第2条の「障害者の定義」は、精神的または身体的機能障害に伴い・・・・、 と包括的に規定したいが、日本では行政、事業者、そして当事者団体内部でも 病気と障害の理解が混乱してきているので、誤解による排除をさけるために、 「慢性疾患」を障害者の定義の一部に含める必要があるのではないかと思う。

【新谷委員】

 現行障害者基本法が明確な定義規定を置かずに、「難病等」の用語を使用し ているのは立法技術として適切であったか疑問がある。いわゆる「難病」は現 行の56疾患なり、130疾患なりにとどまらず、今後も変化すると考える。 今後検討する「障害」または「障害者」の定義は「難病」又は「難病者」を包 摂するように工夫すべきで、長期疾病(Long-standing Health Problem or Disability)と障害を統合することも検討すべきである。

【関口委員】

 難病は、独立条項にすべきである。難病者のために必要な特別な施策を講じ るということではなく、難病者は障害者であり、すべての障害者施策の対象と されること、医療費の公費負担等についてとりわけ考慮することは、難病に関 わらず、すべての障害者の共通の施策とすべきである。

【中西委員】

 難病の調査・研究は医療の分野であり、他の先天的障害等を含めて予防法を 作りその中で扱う。

 難病を障害の範疇に含め、難病を持つものは障害者としての権利を法律によ って認めるべきである。

【長瀬委員】

 制度の谷間を生まないという趣旨から、難病に起因する障害についても当然、 障害施策の対象となることを、定義等の箇所で明記することでカバーできると 考える。

【森委員】

 難病を有する人に関しては、障害者と明確に位置付けるべきである。

4、現行障害者基本法

(1)現行障害者基本法について、上記の問題点のほか、残すべき事項があれ ば指摘をお願いしたい。

委員からの提出意見なし

5、その他

委員からの提出意見なし