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障がい者制度改革推進会議

DINFのお知らせ

シンポジウム 「もっと知ろう、デイジー教科書を!」
日時:2013年02月03日(10:30~16:00)
場所:戸山サンライズ 大研修室
 

Enjoy Daisy 読めるって楽しい!

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マルチメディアDAISYのCD-ROM付き絵本『赤いハイヒール』発売中

障がい者制度改革推進会議
第19 回(H22.9.6) 資料6

ユニバーサルデザインに関する意見一覧

  1. ユニバーサルデザインに対する基本的考え方
  2. ユニバーサルデザインが求められる対象、適用範囲
  3. 当事者参画・意見の反映
  4. 行政による支援
  5. その他

第19回障がい者制度改革推進会議 意見提出書式

障害者基本法 各則(論点表、議論が不足している分野)

ユニバーサルデザイン

1、ユニバーサルデザインに対する基本的考え方

(1)ユニバーサルデザインは、障害者の権利条約でも規定されているところ であるが、ユニバーサルデザインという考え方の意義と効用をどう考えるか

【大濱委員】

 基本理念としては良いが、ユニバーサルという幅広い定義のために障害者が 絶対的にあるいは緊急に必要とするような特定の場で、支障をきたすような新 たな問題が発生している。

【小川委員】

 障害のある人もない人も、さまざまな製品、環境、計画、サービスなどが等 しく使用できるよう設計することは、インクルーシブな社会の実現に効用があ り、障害者施策にこの考え方を取り入れることに大きな意義がある。

 ただし条約の規定にもあるとおり、万人が利用できる設計は考えにくいため、 一人一人のニーズに応じた調整や変更、必要な支援や機器等の使用を併せて担 保すべきである。ユニバーサルデザインのみでは、一人一人の障害者にアクセ シビリティを必ずしも確保できない。

【尾上委員】

 さまざまな製品、環境、計画、サービスなどが障害者も当初から等しく使用 できるよう設計することは、インクルーシブな社会の実現に効用があり、さら に、今後の超高齢化社会の日本においてはよりいっそう重要性をます。

 ただ、(3)にある通り、ユニバーサルデザインを基本としつつも、多様な 特性に対応できるような補完が必要である。

【川﨑委員】

 障害に特化せず、年齢、性別、国籍、言語、職業などを問わずすべての人が 使用することができるユニバーサルデザインは、今後の国際協力を進めるにあ たり必要なことで、開発、促進されることは意義のあることと思う。

【佐藤委員】

 「ユニバーサルデザイン」は「第2条定義」で、定義される重要な考え方で ある。権利条約が強調する「アクセス」「アクセシビリティ」(前文、第3条: 一般原則、第9条:アクセシビリティなど)の保障にむけて、位置づけられる べき概念である。

 しかし、注意しなければならないことは、「調整又は特別な設計を必要とする ことなしに」という考え方は、障害に特化した支援機器、支援技術を排除する ものではなく、それらの併用により「ユニバーサルデザイン」を促進するもの であるということである。

 「アクセシビリティ」の保障のためには、「合理的配慮」も「積極的差別是正 措置」も必要であるように、「ユニバーサルデザイン」も「バリアフリー」も、 対象とする分野、製品、サービスごとの特質に合わせて柔軟に適用することが 必要である。したがって、ともに重要な概念として位置づけなければならない。

【新谷委員】

 機能障害に対応して存在する種々の障壁に、個々的に対処するバリアフリー の考えを乗り越え、どのような人でも公平にかつ容易に利用可能することが出 来る製品・建物・空間のデザインという視点を生み出したのは、ユニバーサル デザインの功績と評価できる。共生社会の理念の一つとして、障害のメインス トリーム化、市民化を進める具体的な指導理念として内容を深化させていく必 要がある。

【関口委員】

 ユニバーサルデザインは、積極的是正措置、合理的配慮、障害に基づく差別 のどの概念にも属さない独立した定義によるものであるが、 障害者が社会の中で排除されるひとつの理由として、出来事のスムーズな進行を妨 げてしまうというようなことがあるとするなら、バリアフリー社会とは誰もが有能で いられる社会をつくることで統合を実現しようとするアプローチです。障害を吸収す るインターフェイスを社会のなかに普及させることによって誰もが有能でいられる 社会をめざすのがバリアフリー社会です。これは能力主義を相対化するというよりは、 能力主義の現代的なバージョンなのではないか、という考え方も可能なのです。(中 略)できない人をできる人にするというアプローチなのですから、従来の能力主義と は質的に大きく異なるわけですが、基本的な理念としては能力主義の枠を超えるもの ではないということです(石川, 2000:39-40)。

という石川の主張からも、ユニバーサルデザインの意義と効用が「できる」よ うになるということ、そしてそれは、「できる」ことにすぎないということを、 確認しておいた方がいい。

 ただ、ユニバーサルデザインとバリアフリーの違いは、公共性にあると思う ので、ユニバーサルデザインの理念である、「多様な人間が共に」という新し い公共を、進められていくことが望ましいと思う。

【中西委員】

 今までは障害者にとって使いやすい環境をつくるために先ず便宜性が第一義 とされ、デザインにまでは関心がいかないことが多かった。しかし障害者に使 いやすい仕様がユニバーサル・デザインと命名されるようになって、デザイナ ーの関心を集めるようになり、見た目の美しさなどのデザイン性が向上したこ とは喜ばしい。また同時に、障害者にとって使いやすいデザインは、障害のな い人にとっても便利な商品となっていると宣伝することで、障害問題のメイン ストリーミング化に役立っている。

 しかしながら、ユニーバーサルデザインという言葉で障壁の解消を意味して しまうと、どのような問題点を解決することでユニバーサルデザインが達成で きるかという過程が省略されてしまい、これが皆に使い勝手がいいデザインで あるいく結果にのみ焦点が当たり、国民の障害に対する関心を弱める結果ともなる。

【久松委員】

 日本では、バリアフリー設備の概念の延長として、施設・設備の設計におい て、様々な人が使うことを考慮して設計したときに「ユニバーサルデザイン(UD) 対応」をうたうことが多く、予算化しやすいハード面の整備だけに終始しソフ ト面を考慮しないケースが目立つ。そういう意味で、ユニバーサルデザイン(UD) の理念を正確に捉えている人(自治体)はまだ少ないと考える。また、逆に「ユ ニバーサルデザイン(UD)」を「全ての人に対応する」「誰も暮らしやすい」 と言いながらも、特定の障害を持つ人や重度の障害者にとり「障壁(バリア)」 になったりすることがある。

 視覚障害者・聴覚障害者等も含めて全ての人が自在にアクセスし、あたりま えに使えるためには施設・設備の使い易さの改善だけではなく、情報・サービ ス・運用まで一貫した設計が必要であることをきちんと基本概念として定義す る必要がある。

 例えば、障がい者制度改革推進法案(第171 回国会提出)第10 条の条文から は施設設備以外にソフト面の整備が必要ということは読み取りにくいと感じる。

【松井委員】

 障害者や高齢者などが地域社会において、できるだけ当たり前の生活ができ るようインクルーシブで、アクセシブルな社会づくりをすすめるうえで、ユニ バーサルデザインは意義がある。また、権利条約でも言及されているように、 ユニバーサルデザインを採用することで、最小限度の費用などで障害者や高齢 者などのニーズに配慮した社会的環境整備が可能となろう。

【森委員】

 ユニバーサルデザインを規定されたことについては、インクルーシブ社会の 実現を図る上でも、その意義と効用は大きい。

(2)障害やそれに基づくニーズの多様性や差異の尊重という要請との関係をどう捉えるか

【大濱委員】

 (1)とも関連するが、例えば脊損の場合、通常、便意や尿意が判らない。 自律神経の過反射により冷や汗を掻く、痙性(痙攣)等により身体異常を確認 することが多い。この場合、その直後の短時間の内に失禁すると言う合図であ ることが多い。従って、外出時にこのような状況が発生した場合、すぐに障害 者用トイレが必要となる。

 しかし、最近はユニバーサルトイレであるために、授乳や幼児のおむつ交換 の場等ともなっているために、障害者用トイレが使えなくて失禁した事例が報 告されている。駐車場でも同様の問題がより深刻化している。

 (結論)
障害者用トイレや障害者用駐車場については、ユニバーサル化するに当たって は、ユニバーサルトイレや駐車マスを大幅に増やすことが必要である。今後は、 高齢者が激増し、歩けるが足腰が弱くなっている、痛みがある等で車椅子使用 高齢者がより増加することが予測される。

【尾上委員】

 公共建築物や交通機関等の共通の基準・認識の確認と個別ニードに基づく配 慮を確保する。

【佐藤委員】

 権利条約第2条で書かれているように、障害にもとづくニーズの要請を排除 するものではない。積極的な差別是正措置は必要である。

【新谷委員】

 ユニバーサルデザインは「障害の有無、年齢、性別、国籍、人種等にかかわ らず、多様な人々が気持ちよく使えるようにあらかじめ都市や生活環境を計画 する考え方」を謳っている。「多様性や差異の尊重」は、他の多くの「多様性 や差異」と共存・緊張関係を前提としており、一個の「多様性や差異の尊重」 の優越を意味しない。ユニバーサルデザインの主張は、可能な限りの「多様性 や差異」を取り込み、「どんな人でも公平に使える」ことを指向していると理 解する。

【中西委員】

 ユニバーサル・デザインは、障害者に個別のニーズが存在し、その解消は社 会の責任であるとの観点をあいまにする危険をはらんでいる。皆が住みよい社 会を作るために何がバリアー(障壁)であり、どのようにアクセシビリティを 向上させるかは国民全員で考えねばならない問題である。

 ユニバーサル・デザインという言葉の響きはよいが、皆に使いやすくされた ちう結果を強調するのであれば、この用語の多様は避けるべきである。

【久松委員】

 障害やそれに基づくニーズの多様性や差異というのは、異なる人間がそれら を認め合うところから理解は始まる。その理解を容易にし、障害・差異に対す る違和感をなくしていくことがユニバーサルデザイン(UD)である。

 いわば、ユニバーサルデザイン(UD)は「尊重」を超えた「自然さ」を提供 するものである。

【松井委員】

 ユニバーサルデザインは、必ずしも画一性を追及するものではなく、ベース となる部分を共通化することである。そのうえで個々の障害者や高齢者などの 多様なニーズに対応した改造や調整を行うことが意図されている。したがって、 ユニバーサルデザインの追及と多様性や差異の尊重は、本来矛盾するものでは ないが、矛盾が生じないような配慮や工夫は常に求められよう。

【森委員】

 障害者の権利条約第2 条(定義)に「『ユニバーサルデザイン』は、特定の範 囲の障害のある人向けの機能を備えた補装具〔補助器具〕が必要とされる場合には、 これを排除するものではない。」とあるように、障害やそれに基づくニーズの多様性や 差異の尊重に基づく製品や補装具の開発や使用を妨げるものではない。

(3)ユニバーサルデザインとバリアフリー(障壁の除去)、もしくはアクセ シビリティ(利用可能性)との関係をどう考えるか

【尾上委員】

 ユニバーサルデザインを基本としつつも、それぞれは両立するものであり、 相互補完で整備すべきものである。何よりも重要なのは、開発や製造・実施段 階、そして、できあがった物やサービスに対する評価など全ての段階に障害当 事者が参画し、スパイラルアップし、様々な要素を取り入れながらアクセシビ リティの向上を図っていくいく仕組みである。

 (例、路面バスのノンステップ化と観光バスへのリフト導入や車内放送・表示等)

【川﨑委員】

 バリアフリーからユニバーサルデザインへと展開されてきていることは、障 害の有無にかかわらず、すべての人にアクセシビリティが確保され、社会参加 を促進させていくものと考える。

【佐藤委員】

 (1)で述べたように、「アクセシビリティ」の権利の保障のためには、 「合理的配慮」も「積極的差別是正措置」も必要であるように、「ユニバーサルデザイン」 も「バリアフリー」もともに重要な概念として位置づけなければならない。 誰もが利用する製品、サービス、とりわけ公共的なものではよりユニバーサルデザインが強調され、 個人で使用するものや個別性の高いものでは、「バリアフリー」 の概念に基づいた是正措置が重要な場合もあり、柔軟な適用が求められる。

【新谷委員】

 バリアフリーはユニバーサルデザインを進めていくうえでの重要な構成要素 である。黄色の点字ブロックはバリアフリーデザインだが、車いすの人にとっ ては障壁となる面があり、車いす通行部分と点字ブロックが共存できるような 歩道デザインンを追求するのがユニバーサルデザインの視点と考える。また、 アクセシビリティは単なる「利用可能性」にとどまらず、

  • 使う上で自由度が高いこと
  • 使い方が簡単で、すぐに分かること
  • 必要な情報がすぐに分かること
  • うっかりミスが危険につながらないこと
  • 身体への負担がかかりづらいこと(弱い力でも使えること)
  • 接近や利用するための十分な大きさと空間を確保することと云った、
  • ユニバーサルデザインの考えと重なる部分が多く、ユニバーサルデザインの重要な構成要素と理解する。

【関口委員】

 厳密に定義別けされるべきであるが、バリアフリーやアクセシビリティーを 兼ね備えたユニバーサルデザインが存在することもありうるし、ユニバーサル デザインは障害者及び健常者双方が使えるものである。

【中西委員】

 障害者施策の実施においては、アクセシビリティの向上が中心となる。ニー ズを満たす際にバリアとなるものが除去され、アクセシビリティは向上する。 それは厳密な意味で言うと万人にとってのバリア・フリーではない。重度障害 者のバリアの解消に努めた場合のほうがより多くの人にとってバリア・フリー となる。バリアを除去する手段がITC、自助具、ユニバーサル・デザインなど の技術的手段である。

 一般には、障害者に限定せず、あらゆる年齢、性別、能力、文化、民族、言 語の人が利用できるものをいうようであるが、やはり障害の有無を利用の可能 性の判断基準に置かないかぎり、ユニバーサル・デザインとはいえないはずで ある。

【久松委員】

 「多様性や差異の尊重」と「共用設計」は相容れない思想ではない。もちろ ん「共用設計」においては、全てのニーズに完全に対応できるものではなく、 何らかの妥協・線引きが必要になることも理解できる。 権利条約第二条に特定の障害者のための支援装置、言い換えるとバリアフリ ー化装置も必要ということが書かれているので、共用品・専用品両方を組み合 わせることによって、始めてユニバーサルデザイン(UD)社会を実現できると いうことを国内条文に盛りこんで、専用品に対する支援・助成も共用品と同様 に進めることが必要である。

 情報源・ニーズ対処窓口等へのアクセスをあらゆる人に同等に与えるアクセ シビリティが基本にあり、これを実現するためにユニバーサルデザインで対応 し、フォローしきれない部分をバリアフリーでカバーし、あらゆる人が使いや すいようにユーザビリティを考慮する、という包含関係が成立するものと考え る。

 バリアフリーであるが、ユニバーサルデザイン(UD)でない一例として、駅 の階段を利用できない車いすの人のためにエスカレーターに電動の昇降機を取 り付けた例がある。これは自分で操作できない上、多くの駅を利用する乗客の 視線にさらされる問題がある。それを解消するためエレベーターの設置が進ん だ。ユニバーサルデザイン(UD)は、移動や情報のバリアフリーと移動や情報 へのアクセシビリティがセットになることが必要である。

【松井委員】

 ユニバーサルデザインは、すべての人にとっての使いやすさを追及したもの であり、バリアフリーやアクセシビリティは、障害者や高齢者などの特定のグ ループのニーズに配慮したものである。障害者や高齢者などにとって住みやす い社会づくりをすすめるうえで、両者は補完関係にあるといえる。

【森委員】

 特定の障壁を解消するという視点があるバリアフリーでは、特定の障害のあ る人のためという視点が大きく、そのための費用対効果などが議論され、特定 の集団のために財源を使いすぎるという議論になる場合も多い。しかし、年齢 や障害の有無に関わらず、はじめから出来るだけ多くの人が利用可能であるユ ニバーサルデザインでは、すべての市民、すべての国民に対する誰にとっても 必要な製品やシステムの整備と考えられ、説明も容易で、消費者や利用者がす べての市民であるために製造コストや利用コストも低く抑えられる傾向にある。

 ただし、この議論は前項に記したようにユニバーサルデザインの活用が障害 やそれに基づくニーズの多様性に基づく福祉機器や製品の開発を妨げるもので ないことについて十分に配慮する必要がある。

2、ユニバーサルデザインが求められる対象、適用範囲

(1)ユニバーサルデザインの対象範囲についてどう考えるか

【小川委員】

 生活のあらゆる分野にこの考え方が導入されるべきである。 ただし、個々の障害種別や、一人一人のニーズに配慮した設計も必要であり、 これを排除してはならない。

【尾上委員】

 原則として対象範囲を限定しない。

【佐藤委員】

 権利条約第4条「一般的義務」にあるように「物品、サービス、設備・施設」 など生活のあらゆる分野を対象とする。

【新谷委員】

 製品、建物・設備、道路・交通機関、都市機能などの目に見えるものから、 インターネット、ATM や公共サービス・システムなどの市民生活の全般にかかわる。

【関口委員】

 駅等での分かりやすい表示などもユニバーサルデザインといえる。

 韓国の地下鉄でも、ロンドンの地下鉄でも困った事はないが、日本の駅はと ても使いづらいという仲間がいる。広告が多すぎる。時間帯により出発ホーム が替わるなど。認知や情報の取捨選択に困難がある人にとって使いやすい駅は 一般人にも使いやすい筈。

【中西委員】

 高齢化社会に向けて、企業にとってメリットがある概念として多くのところ で使われている。そのため、言葉が一人歩きをし、ユニバーサルデザインの乱 用が危惧される。

 ユニバーサル・デザインの大原則である「どんな人にも平等に使える」とい う状況を考えてみると、シャンプーのふたや、ゆびスポットボトルなどはユニ バーサル・デザインの範疇とできる。しかし、ホームドアが設置されているプ ラット・ホームが電車の床より低い位置にあるなど大げさなデザインになれば なるほど総合的な観点を欠き、ユニバーサル・デザインと呼べない事態が起こ っている。

 「誰にでも使える」のではなく「かなり多くの人に使いやすい」状態をバリ アフリーと認めていいのか、疑問である。

【久松委員】

 人間社会が構成するもの全てが対象になる。 官公庁の場合、全官公庁の全事業が対象になる必要がある。とりわけ、ユニ バーサルデザイン(UD)を推進する立場にある政府・官公庁においては、官公 庁が調達する機器、設備、建設全てにユニバーサルデザイン(UD)配慮を義務 付けるべきである。

【松井委員】

 障害者権利条約第2 条の定義で規定されているように、ユニバーサルデザイ ンの対象範囲には、環境や製品等のハードウェアーだけでなく、サービスや計 画などのソフトウェアーも含まれると思われる。

【森委員】

 ユニバーサルデザインの対象範囲は、個別的な製品のみならず、交通システ ム、環境システムやまちづくりなどすべての人が使用するものであると考えら れる。

(2)製品、環境、計画及びサービスの設計とは、どのようなものを指すのか

【小川委員】

 個人、法人(団体)、公共的なものを含む、生活のあらゆる分野のハード、 ソフト双方を含む設計である。そのように広くとらえるべきである。

【尾上委員】

製品とはテレビやコンピューター、日常生活に使用する器具、あるいはまち づくり等の用途に使用されるパーツ等、環境とは公共交通機関や住宅等、計画 とは行政計画等、サービスとは、案内、注文等の人々の生活にかかわるものが 例示される。

 いずれにせよ、生活のあらゆる場面の、ハード・ソフト両面に渡る広範な範 囲を対象とするべきである。

【新谷委員】

 製品であれば携帯電話のバイブレーション機能、都市環境であれば誰もが歩 きやすいように電柱を地下に埋設した道路、ピクトグラムを活用した案内板な ど、建物・日常用品であれば自動ドア、多目的トイレやシャンプー容器のギザ ギザなど、サービスであれば「簡易筆談器」常備の受付カウンターなど。

【中西委員】

 日常品でのデザインは分かりやすい例である。

 障害者が多く利用するIT 関連機器、家電、公共交通機関、公共建築物でもユ ニバーサル・デザインが言われているが、そういっていいのか疑問を感じる例 もおおい。

 外国人や文字の分からない人を対象とする図案やサインの利用も含まれてい るが、本当に利用可とは言いがたい。

【久松委員】

 ユニバーサルデザイン(UD)は、できるだけ多くの人が使いやすいようなデ ザインを最初から志向するところに特徴がある。製品、環境、計画及びサービ スの設計は、誰もが使っても使いやすいことを志向するが、多くの場合、健常 者もしくは特定の人が対象であった。障害者を含めできるだけ多くの人が使え るよう最大公約数的な設計を行うことがユニバーサルデザイン(UD)の設計と 言える。(ユニバーサルデザイン(UD)の7原則)

 さらに、ユニバーサルデザイン(UD)の概念の一つに作りっぱなしにしない ということがある。計画・実施・実行・点検・評価・処置・改善(PDCA)のサ イクルを回して、より使いやすいものになるように点検・評価・改善(スパイ ラルアップ)を行うという点が重要であるので、ある期間毎に点検し、改善を 進めることが必要である。この考え方は、ISO 9000 やISO 14000 にも反映され ているので標準化を推進しやすくなる。

【松井委員】

 すべての人にとって利用しやすい条件整備を意図したものであり、障害者や 高齢者などの特定のニーズを充足させるためのものについては、別途対応する 必要がある。

【森委員】

 すべての人にとって、あらゆる分野にわたるハードおよび情報等を含むソフ トの両面を視野に設計を目指すべきである。

(3)知的財産権(特に著作権)による利用制限がある場合、ユニバーサルデ ザインの観点からどう考えるか

【小川委員】

 知的財産権(特に著作権)については、障害者の情報利用のために、これま で個々の障害に応じた著作権の制限がなされてきたが、個別の制限規定は、必 ずその対象から漏れる障害者が出てくるので、限界がある。障害者が情報を利 用することを権利ととらえ、著作物の「公正利用」を含む、ユニバーサルな観 点からの著作物利用を確保する制度設計が必要である。

 もちろん、いわゆるバリアフリー出版や、放送番組や映像などのバリアフリ ー化(手話・字幕・解説等の付与)を強く促す施策も必要である。

【尾上委員】

 障害者が情報を利用する・アクセスできるようにすることを権利として位置 づけ、障害に基づく制限を緩和し、障害のない人と同様の機会保障となるもの は、著作物を利用可能とする仕組みとする必要がある。

 また、バリアフリーな出版物、映画等の製作が進んでいくような支援策の検 討もあわせて展開していくことが求められる。

【新谷委員】

 ユニバーサルデザインを進めるために、知的財産の利用が不可避であれば、 該当する著作権利用料を製品・サービスのコストに適切に算入して、「どんな 人でも公平に使える」環境を整えるべきである。情報の「フェアーユーズ」と は次元が異なると理解する。

【中西委員】

 知的財産は守られるべきであるが、障害者が利用する場合には基準を緩めて できるだけ多くの人がアクセスできるべきである。

【久松委員】

 知的財産権は製品、サービスとして利用・実施促進を図ることによってその 権利が活かされることが本来の趣旨である。利用されない、あるいは利用制限 を受けることは本来の趣旨に反する。知的財産権を尊重し守りながら消費者や 利用者の利便性を追求してきた規格標準化の考えは、ユニバーサルデザイン (UD)にも適用できる。また、著作物については、著作物にアクセスできない 障害のある人に限定することで著作権の権利行使を制限することは必要である。

 情報を表示する方式(インターフェイス)の場合は、著作権、意匠権や特許 権との関係が問われるが、情報アクセシビリティを義務付けることで利用制限 の問題を解消できるものと考える。

【森委員】

 知的財産権(特に著作権)によって、製品やシステムが高価なものになって しまうということではユニバーサルデザインとしての価値が極めて小さいもの になる。ユニバーサルデザインの製品やシステムを安価で提供しつつも、その 更なる充実に向けた開発や制作への権利としての知的財産権(特に著作権)の 行使にとどめ、多くの人が使用することによって更なる改良、さらなる販路の 拡大につながるというメリットを企業が意識するような価値観の在り方を一般 化する必要がある。

 また、障害者の情報利用に関係する著作権の制限は、ある程度緩和されてき てはいるが、完全なものではない。この問題の解決のためには、障害者権利条 約第30条3項で述べられているように、著作権者の保護の観点と障害者の情 報を利用する権利の保障、そしてユニバーサルデザインの観点からの適切な措 置が必要と考える。

3、当事者参画・意見の反映

(1)企業等がユニバーサルデザインの商品等を開発する際に、当事者参画や 意見の反映が、どの段階で、また、どういう仕組みで確保されるべきか

【小川委員】

 ユニバーサルデザインは、商品設計のあり方や方向性の根本に関わるもので あり、その設計の初めの段階から、設計作業への当事者参加やモニターなどに よる意見の反映が確保されるべきである。

 また、個々の商品設計等はもとより、とりわけ、商品設計等の規格やガイド ラインが作成される場合は、必ずその作成作業に当事者が参加する仕組みが必 要である。

【尾上委員】

 可能な限り企画・開発段階の当初から、その後も、すべての各検討段階にお いて実施することが望ましい。また、出来上がったものを実際に利用して評価 し、フィードバックしていく仕組みが必要である。

【川﨑委員】

 商品等の開発計画から、商品化まで当事者が参加して、必要な意見、アドヴ ァイスは行うべきである。

【佐藤委員】

 企業等の開発においては、基本的に企業の努力に任されるものと考えるが、 公共調達においては一定の基準を設けて、当事者が参加し意見を述べる機会を 保障した開発プロセスを支援し、優先的に調達することが必要である。一般に は、商品等の開発のできるだけ早い段階から当事者の参画を得たデザイン、人 間中心設計プロセス(ISO 9241-210)の考え方が取り入られるべきである。

【新谷委員】

 ユニバーサルデザインは、開発・生産事業者の自由な発想の基に自主的に進 められるのが原則と考える。当事者参加はユニバーサルデザインの本質から来 る要請で、開発・生産事業者がユニバーサルデザインの理念を真摯に追求すれ ば、どの段階(企画、設計、製造、品質評価、アフターサービスなど)で当事 者参画を求めるか、個々の製品、環境、計画、サービスによって自ら一定の回 答が出てくると考える。

【中西委員】

 デザイン完成後に障害者に使い勝手に関して意見を聞くのではなく、 商品開発の企画の段階から意見を求めるべきである。

【久松委員】

  • 設計着手前での当事者参画が必須。設計に着手してからでは手遅れとなる場合も多い。
  • PDCA サイクルを回す際の各段階において以下のような関与が必要と考える。
P:Plan(計画)
従来の実績や将来の予測などをもとにして計画を作成する。
<利用者・当事者の参画が必要>
D:Do(実施・実行)
計画に沿って設計・製造・業務を行う。
<利用者・当事者の意見を集める>
C:Check(点検・評価)
製造結果や業務の実施が計画に沿っているかどうかを確認する。
<利用者・当事者にアドバイスを必要に応じて求める>
A:Act(処置・改善)
実施が計画に沿っていない部分を調べて処置をする。
<利用者・当事者を交えた議論が必要>
  • 発注者・設計者等がユニバーサルデザイン(UD)に関して学習する場を設ける。
  • 学習段階では当事者との交流が「ちがいの気づき」に最も大きな効果がある。 当事者をどうやって呼ぶか(アクセスするか)の全国区市レベルのデータベース(DB)が必要。
  • ただし、ニーズ調査・把握については個々の当事者の意見だけでは不充分である。 出来るだけ多くの多様なニーズを洗い出すためには「不便さデータベース」等の更なる整備が必要。

【松井委員】

 企業秘密などとの関連でオープンな形での当事者参加は困難と思われるが、 製品化まえの試作品段階で、とくにその製品の影響を受けると思われる当事者 等を対象としたトライアル使用やヒアリングなどが実施されることが望まれる。

【森委員】

 企業などは、障害特性や年齢に応じた製品の使いにくさ、環境や交通システ ムの使いにくさや暮らしにくさなどについて、当事者や当事者団体のニーズを 積極的に把握することに努める必要がある。また、当事者や当事者団体も積極 的に企業とのコミュニケーションを図る必要があるとともに、共同開発という 仕組みを考えることも大変重要な視点と思われる。

4、行政による支援

(1)ユニバーサルデザインの普及に向けて行政の取り組むべき課題としてど のようなものが考えられるか

【小川委員】

 ユニバーサルデザインは、すべての人が住みやすい社会の実現につながるという観点を広く国民に啓発すること。

 また、生活のあらゆる分野でユニバーサルデザインが普及するよう推奨し、 そのための研究開発を進めるとともに、そのための制度や規格等を設けること。

 さらに、研究開発や、制度や規格の作成には、当事者が参加する仕組みを設けること。

【尾上委員】

 当事者団体及び関係企業等との連携に基づく広報、基準・ガイドラインの検討と作成及び具体的な実施 (施策及び自治体等の施設に反映)。さらに、基準・ガイドラインに実効力をもたせるために、 法的強制力を持たせ、少なくとも公的部門や公共事業や助成金事業を契約している民間企業での発注 に当たっては義務づけるものとすることが必要である。 (いくら良い基準がつくられても、効力がなければ普及しない)

【川﨑委員】

 開発、研究のための財政の確保。

【佐藤委員】

 調達仕様におけるユニバーサルデザインの促進を通じて、 企業のユニバーサルデザインへのとりくみを促進する。また、そのための法制化をすすめる。

【新谷委員】

 ユニバーサルデザインを普及させる施策の階層としては

  1. 市場のニーズに従った事業体の自主的判断、自主的努力に委ねる
  2. 事業体の開発・生産・販売に行政が支援する
  3. 国・自治体が開発に当たって一定の指針、規範を設けるが考えられる。

 対象となる製品・環境・計画・サービスによって、どのような施策レベルが 適切かは異なるが、都市の交通計画、環境計画などの政策統合を必要とする場 面では行政の役割は非常に大きい。

【関口委員】

 一つ一つの苦情を丹念に拾う窓口を設けるべき。

【中西委員】

 ユニバーサル・デザインの普及ではなく、行政はアクセシビリティの向上に 先ず取り組むべきである。

【久松委員】

  • ユニバーサルデザイン(UD)専門家の育成、特に当事者専門家の育成が必要。 大学等での当事者研究者の育成がインクルーシブ社会の形成に大きく寄与する
  • 当事者団体への定期的なヒアリング
  • 当事者参画や誰でもが容易にできる(パブリックコメント等)意見提出の仕組みの構築
  • 不便さDB、事例DB、当事者アクセス方法DB 等の整備
  • ユニバーサリデザイン(UD)マーク製品・サービスへの助成・普及・宣伝
  • バリアフリー(専用品)への助成・普及・宣伝
  • 官公庁調達備品・設備・施設全てにユニバーサルデザイン(UD)対応を義務付け
  • 小学校、中学校、高等学校、大学等へのユニバーサルデザイン(UD)の教育「問題の事例」
  • 現在、日本工業規格(JIS)でアクセシビリティ関連(X-8341)の改定作業が行われているが、 国際規格(ITU-T F.790)に含まれていた電話リレーサービスが製品等のハードウェアのみを対象とする JIS になじまないという理由で本文から削除(付属書には記載)されるという事例が出ている。

 電話リレーサービスは聴覚障害者の社会参加を促進する上でも不可欠なもの であるのに法的な不備から規格化がなされていないという意味でユニバーサル デザイン(UD)の普及を著しく阻害するものである。国際動向にあわせ、日本 工業規格も電話リレーサービス等のサービスを含められるよう、早急な法的整 備に向けた取り組みが必要である。

【松井委員】

 ユニバーサルデザインの普及に向けてISO などによる国際的な取組みが見ら れるが、たとえば、米国への輸出製品には、米国の法律に準拠した対応がなさ れているにもかかわらず、国内で販売される製品についても同様な対応の必要 性は認められながら、そうした対応がなされていないなどがまま見られる。国 内外を問わず、コンシューマーの利便性や利益を配慮したユニバーサルデザイ ンの普及を積極的に奨励するための税制上の優遇措置や優先購入などが考えら れよう。

【森委員】

 障害特性や年齢に応じた製品の使いにくさ、環境や交通システムの使いにく さや暮らしにくさなどについて、当事者や当事者団体のニーズを積極的に把握 することに努める責任が行政にある。そして、行政は、当事者や当事者団体と ともに使いやすいものやシステムについての提言を行い、その開発に適切な補 助や援助を行うなど、当事者、開発・製造業者と一体となった活用の促進を図 ることが必要であると思う。

5、その他

【佐藤委員】

 同じ障害名であっても、生活上の困難ポイントは多様である。利用条件や場 所にも左右される。したがって、隅々までのニーズを付加する商品やサービス が求められるわけではない。

 ユニバーサルデザインは、たとえばボーリングで言えば、比較的誰しもが倒 しやすいピンをどう効率よく倒すかであり、どうしても倒れずに残るピンには、 別途、確実に細やかに倒す方法が必要とされる。その切り分けの明確化は、産 業界、福祉分野の製品等の開発を楽にし、供給段階でも、給付事業などへの国 民的理解を高めると思われる。

 そのためにも、製品及びサービスの開発における当事者ニーズの把握は、設 計の早い段階から行うことが望ましい。 ユニバーサルデザインは量販商品(サービス)となるべきなので、当事者団 体のヒアリングなどの一部の選抜的意見だけではなく、障害のない人も含めた、 あらゆるさまざまな意見が必要である。

 たとえば、福祉機器展など展示会や支援センターなどで、多くの機器、サー ビスに実際にふれて自由に意見を話せる場がきわめて重要であろう。

 また、各事業者の視点だけでなく、第三者的な視点からニーズを把握する公 的なしくみが確保され、社会サービスや人的支援との関連など、寄せられたニ ーズを、トータルに実現するための、当事者と専門家で検討しあう場も必要で あろう。