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シンポジウム 「もっと知ろう、デイジー教科書を!」
日時:2013年02月03日(10:30~16:00)
場所:戸山サンライズ 大研修室
 

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追加資料1
門川委員提出

第2回障害者制度改革推進会議参考資料(2010/02/02)

社会福祉法人全国盲ろう者協会 門川紳一郎

1.はじめに

 「障害者基本法」(以下、「基本法」 2004年6月4日改正 法律第80号)の改正にあたり、障害者の権利条約との整合性を取る必要がある。現行の基本法はあくまでも「理念法」として位置づけられているが、この理念の部分においても十分とは言えない点がある。
 以下、理念法としての基本法に明らかに抜け落ちていると思われる「障害者の権利 理念」について、主に「労働」と「コミュニケーション・情報保障」について述べると共に、個別の各条項において修正を加えるべきと考える部分について記す。

2.コミュニケーションの保障および情報を知る権利の保障

 基本法にはコミュニケーションや情報の保障についての理念がない。とりわけこれは、盲ろう者や聴覚障害者にとってきわめて重大な問題である。
手話は言語として「障害者権利条約」において明記された。また、条約第21条では「表現及び意見の自由並びに情報へのアクセス」が明記されている。
コミュニケーションや情報へのアクセスは、聴覚障害者や盲ろう者には生きていく上で最低限保障されなければならないものであり、基本法第3条の基本的理念として盛り込まれるべきである。

3.基本法の各条項についての意見

(定義)
第2条 この法律において「障害者」とは、身体障害、知的障害又は精神障害(以下「障害」と総称する。)があるため、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう。

  • ここで述べられている定義で除外される盲ろう者のように人口の少ない障害者や難病者が出てくるおそれがある。「継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者」とあるが、実際は医学的診断のみに依拠して交付される障害者手帳の保持者に限定されている。障害者手帳自体のありかたやその交付基準を再検討すると共に、手帳の有無や障害等級ではなく、生活上の困難やニーズを基準に障害を定義していく方向性が重要である。(例)実際に日常生活や社会生活に制限が生じていても、視野障害が認定されないケースがある。
  • 「継続的」とあるが、「一時的」に障害を持った人も含めるべきではないか。
  • 日常生活と社会生活に加え、経済活動も含めるべきである。

(国及び地方公共団体の責務)
第4条 国及び地方公共団体は、障害者の権利の擁護及び障害者に対する差別の防止を図りつつ障害者の自立及び社会参加を支援すること等により、障害者の福祉を増進する責務を有する。

  • 差別の防止を「図る」のではなく、保障すべきである。
  • 障害者が不利益を被ったり、差別を受けたりした時の救済の責務も有する。

(国民の責務)
第6条 国民は、社会連帯の理念に基づき、障害者の福祉の増進に協力するよう努めなければならない。

2 国民は、社会連帯の理念に基づき、障害者の人権が尊重され、障害者が差別されることなく、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加することができる社会の実現に寄与するよう努めなければならない。

  • 国民の責務も必要であるが、国民という個人レベルで十分なのか。民間や企業なども責務があるはずである。
  • 「努める」とあるが、努力のレベルでよいのか。

(障害者週間)
第7条
3 国及び地方公共団体は、障害者週間の趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めなければならない。

  • 既存の形骸化したキャンペーンではなく、当事者のニーズを取り入れ、たとえば、当事者主導のキャンペーンを奨励すべきである。

(施策の基本方針)
第8条
2 障害者の福祉に関する施策を講ずるに当たつては、障害者の自主性が十分に尊重され、かつ、障害者が、可能な限り、地域において自立した日常生活を営むことができるよう配慮されなければならない。

可能な限りの配慮ではなく、障害のない人と同等で均等な権利と機会を保障すべきである。
(例)ガイドヘルパーや盲ろう者向け通訳介助者の派遣は、「日常生活」の範囲内という制限がある。日常生活のみならず、通学や通勤なども含め広く社会生活が保障されるべきである。

(障害者基本計画等)
第9条 政府は、障害者の福祉に関する施策及び障害の予防に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、障害者のための施策に関する基本的な計画(以下「障害者基本計画」という。)を策定しなければならない。

障害者基本計画等の策定には障害当事者が関わることが不可欠である。たんに「意見を聞く」ためのオブザーバーとしてではなく、実質的な発言権と決定権を持った立場での参画を保障すべきである。

(医療・介護等)
第12条
4 国及び地方公共団体は、第1項及び前項に規定する施策を講ずるために必要な専門的技術職員その他の専門的知識又は技能を有する職員を育成するよう努めなければならない。

職員には障害当事者も含めること。

5 国及び地方公共団体は、福祉用具及び身体障害者補助犬の給付又は貸与その他障害者が日常生活を営むのに必要な施策を講じなければならない。

補装具・日常生活用具等の給付条件の緩和と財政的な措置を講じる。
(例)視覚障害者や盲ろう者が歩行中、通行人が白杖を蹴って折ったとしても、無償の給付はされない。

(教育)
第14条 国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢、能力及び障害の状態に応じ、十分な教育が受けられるようにするため、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。

障害児の親などの学校選択権を実質的に保障すべきである。

(雇用の促進等)
第16条 国及び地方公共団体は、障害者の雇用を促進するため、障害者に適した職種又は職域について障害者の優先雇用の施策を講じなければならない。

障害を持つ人が希望する職業に就けること。そのために、リハビリテーションが必要であれば、国及び地方公共団体がリハビリテーションを保障すること。企業が障害を持つ人への環境整備ができない場合、国及び地方公共団体がそれを補償すること。

(住宅の確保)
第17条 国及び地方公共団体は、障害者の生活の安定を図るため、障害者のための住宅を確保し、及び障害者の日常生活に適するような住宅の整備を促進するよう必要な施策を講じなければならない。

都道府県営・市営住宅への優先入居。一般の住宅であっても、障害を持つ人が改造を希望する場合、国及び地方公共団体が保障すること。

(公共的施設のバリアフリー化)
第18条 国及び地方公共団体は、障害者の利用の便宜を図ることによつて障害者の自立及び社会参加を支援するため、自ら設置する官公庁施設、交通施設その他の公共的施設について、障害者が円滑に利用できるような施設の構造及び設備の整備等の計画的推進を図らなければならない。

図るではなく、義務である。

(情報の利用におけるバリアフリー化)
第19条
2 国及び地方公共団体は、行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進に当たつては、障害者の利用の便宜が図られるよう特に配慮しなければならない。《追加》平16法0803 電気通信及び放送その他の情報の提供に係る役務の提供並びに電子計算機及びその関連装置その他情報通信機器の製造等を行う事業者は、社会連帯の理念に基づき、当該役務の提供又は当該機器の製造等に当たつては、障害者の利用の便宜を図るよう努めなければならない。

  • 配慮・努めるではなく、義務である。
  • 機器の利用が難しい障害者には、人的サービスなどを保障すること。

(相談等)
第20条 国及び地方公共団体は、障害者に関する相談業務、成年後見制度その他の障害者の権利利益の保護等のための施策又は制度が、適切に行われ又は広く利用されるようにしなければならない。

相談事業等には当事者が積極的に参画できるようにすべきである。

(文化的諸条件の整備等)
第22条 国及び地方公共団体は、障害者の文化的意欲を満たし、若しくは障害者に文化的意欲を起こさせ、又は障害者が自主的かつ積極的にレクリエーションの活動をし、若しくはスポーツを行うことができるようにするため、施設、設備その他の諸条件の整備、文化、スポーツ等に関する活動の助成その他必要な施策を講じなければならない。

「障害者に文化的意欲を起こさせ」の表現は不適切である。 障害を持つ人が他の人と同じく文化活動・レクリエーション・スポーツに参画できるよう保障すること。

(地方障害者施策推進協議会)
第26条 都道府県(地方自治法第252条の19第1項の指定都市(以下「指定都市」という。)を含む。以下同じ。)に、地方障害者施策推進協議会を置く。

障害当事者が関わること。オブザーバーとしてではなく、発言権と決定権を有すること。

 

平成22年1月18日

厚生労働大臣
 長 妻 昭 様
総務大臣
 原 口 一 博 様

全国盲ろう者団体連絡協議会
会長 大杉 勝則

謹啓
 平素は障害者の福祉向上に多大なご尽力を賜りまして、誠にありがとうございます。 私達、全国盲ろう者団体連絡協議会(以下、連絡会と略します)は、1991年の社会 福祉法人全国盲ろう者協会発足後、全国各地に設立された「盲ろう者友の会」等の盲ろう 者の地域団体を統括する全国的盲ろう者の当事者団体です。現在、全国47都道府県の内、44の都道府県においてこれら地域の盲ろう者団体が設立されるまでになりました。 連絡会は2006年の発足以来、全国から寄せられる盲ろう者の声を集約し、全国盲ろ う者協会と連携しながら、毎年厚生労働省等に盲ろう者の生活の質の向上を求めて要望を行ってまいりました。
 この度、政権が代わったことを受け、これまでの要望事項をまとめ、改めて要望いたします。
 連絡会は発足して、まだ歴史の浅い小さな団体ですが、全国の盲ろう者一人一人の切実な願いを代表しております。今後とも、我が国の盲ろう者の福祉の増進に向け、どうかお力添えをいただきますよう、お願いいたします。

謹白

 

1 盲ろう者の独自のニーズや特性を踏まえ、盲ろうという障害を独立した障害種別として法令上明確に位置づけてください。

2 盲ろう者に対する包括的な支援事業が安定して継続されるよう取り計らってください。

3 アメリカにあるヘレンケラーナショナルセンターのような施設を国内に設置し、盲ろう者福祉における総合的リハビリテーションセンターとして、教育、職業訓練、就職支援、自立生活訓練などを行ってください。

4 「特別障害者手当」の支給の可否の認定において、視力障害と視野障害を同等に取り扱ってください。また、身体障害者手帳に記載される「視覚障害」「聴覚障害」の等級区分に加え、「盲ろう」の障害種別、等級区分を新設してください。

5 「盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業」の地域間格差を解消し、盲ろう者のニーズに即した同事業の大幅な拡充をはかってください。

6 点字や拡大文字等によるアクセシブルなATM(現金預け払い機)の開発と普及をはかってください。

7 地上デジタル放送を盲ろう者が自力で視聴できるように取り計らってください。

8 書籍のテキストデータ提供に関する条件を緩和してください。

9 個人情報保護法に関する条件の緩和をはかってください。

 以上の9項目について要望致します。

 

(要望の理由)

1.2008年5月に発効した「国連障害者の権利条約」第24条「教育」3(C)において、「盲ろう”Deafblind”」という文言が明記されています。これは、「盲ろう(児・者)」が他の障害種別と同様に、独立した独自の障害種別として認知されたことを意味しています。「盲ろう教育」の分野においては、盲ろうに特化した専門性の向上が急務となっています。教育の分野だけでなく、他の分野においても同様のことが言えます。
 例えば、2006年度より障害者自立支援法にもとづく都道府県の地域生活支援事業として位置づけられている「盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業」は、2009年4月よりすべての都道府県で実施されるようになる等、一部の福祉施策においては盲ろう独自の制度がすでに存在していますが、その一方、障害者自立支援法等では、「盲ろう」という障害の法的位置づけが明確にされていないために、「障害程度区分」の認定において、軽度の障害とみなされ、大きな不利益を被るなどの問題が生じています。
 さらに、当事者の国際組織である「世界盲ろう者連盟(WorldFederation of theDeafblind WFDb)」が発足して8 年が経過しました。WFDb は、「障害者の権利条約」の草案の段階から提言と交渉を重ねて来ました。また、同連盟は国連が公認する国際的な障害者組織のネットワークである「国際障害同盟」(International DisabilityAlliance, IDA)を構成する六つの障害種別(視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、精神障害、知的障害、盲ろう)に関する国際組織の一つに含まれております。このように 同連盟の存在やIDA を構成していること自体に象徴されていますように、「盲ろう」を独立した障害種別として認定することは、現在国際的に認められた取り扱いだと言えます。

2.現在、我が国において、盲ろう者が利用できる福祉制度、支援事業は非常に限られています。とりわけ、盲ろう者の社会参加、就労支援、及び、日常生活支援においては、他の障害分野に大きく遅れをとっています。盲ろう者の社会参加、就労、日常生活等の充実を図り、安定した支援体制づくりに取り組んでいただきたいと思います。 特に、盲ろう者の命を左右する緊急時における支援体制を国と政府主導で早急に確立し てください。

3.我が国においては、盲ろう者を専門に扱うリハビリテーション機関が整備されていません。米国などを参考に、盲ろう者のリハビリテーション機関の設置をお願いします。

4.現在、特別障害者手当の対象となる障害の範囲の中には視野障害が入っていません。 視野障害も重度の視力障害と同様に扱われるべきであり、障害程度区分の見直しを要望するものです。
 また、要望事項1とも関連し、障害者手帳の「盲ろう」障害種別の新設を要望するものです。

5.盲ろう者の独自のニーズを踏まえた福祉施策の中核をなすものは、通訳・介助員による支援です。
 この支援を提供する「盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業」は、2000 年度に試行事業として始まり、2006年度から障害者自立支援法の都道府県地域生活支援事業として位置づけられました。そして、2009年度には全都道府県で実施されるにいたりました。
 しかしながら、事業を利用するにあたり、地域間格差をはじめ、多くの問題が浮き彫りになってきています。次にかかげる3点はとくに深刻な問題だと全国の関係者から指摘されています。こうした問題に対応するため、必要十分な事業予算の配分をお願いすると に、事業の実施・運用面での適切な対応をもぜひお願いいたします。

1)盲ろう者のニーズに対して通訳・介助サポートの利用可能時間数が少ないです。
2)利用可能な内容が不適切に限定されています。
3)通訳・介助員への謝金単価がその支援内容の困難度や専門性に対してきわめて低いです。

この他、支援者の待遇の問題などとも関わって次のような問題も深刻です。

4)通訳・介助員全体の人数が不足しています。
5)特に男性の通訳・介助員がきわめて少ないです。そのため、男性の盲ろう者にとっては、トイレや浴場の利用など異性による支援が受けられない場面で大変困っています。 6)通訳・介助員がその支援活動の一環で自家用車を利用することが制限されています。
 6)についてさらに補足説明しますと、派遣事業では自家用車の使用を認めていない県があります。しかしながら、公共交通機関の整備が遅れているような山間地等では自家用車の利用の必要性が非常に高くなります。都市部においても、高齢などのため、移動が困難な盲ろう者には自家用車の利用が不可欠です。自家用車の利用について、柔軟に対応していただけますようご検討下さい。

6.現在、盲ろう者が点字を用い、自力で操作できるATM は日本郵政グループの点字ディスプレイ付きATM しかありません。銀行やコンビニ等に設置されているATM は音声ガイドやタッチパネル式のため、盲ろう者が使うことはできません。わずかに視力が残る弱視者であっても、タッチパネル方式の画面は非常に使い勝手が悪く、不便な操作を強いられています。ATM は現金等の管理という日常生活に直結するものであり、点字ディスプレイを付ける、画面を見やすくするという配慮は大変重要であるため、早急に改善していただくようお願いします。

7.盲ろう者の情報へのリソースとアクセスは非常に限られています。テレビ・ラジオ・新聞・インターネットなど一般の情報媒体から既存の方法で情報を入手することはほぼ不可能です。しかし、地上デジタル放送の技術を活かせば、盲ろう者も地上デジタル放送を点字ディスプレイなどで視聴できるようになります。そのためには、地上デジタル放送に関する審議会等の重要な研究会に、盲ろう当事者の代表が参画できるように保障されることが必要です。地上デジタル放送の本格実施後であっても、継続して研究が重ねられ、盲ろう者も他の障害者や健常者と同様にテレビの視聴ができるようになることを、私たちは切に願っております。

8.盲ろう者が一般の活字媒体(墨字)を読む場合、点字や拡大文字(画面や文字の調整を含む)に変換しなければ読めない人が大半です。そのため、盲ろう者の読書環境を改善するために、一般に発売されている書籍のテキストデータの入手が容易になるようにして下さい。テキストデータであれば、パソコンやその他の点字携帯端末等を活用することにより、点字データに変換したり、自分の見やすい拡大文字に変換したりして、盲ろう者も読書を楽しむことができます。しかし、最近では著作権の問題を理由としてテキストデータの頒布に消極的な出版社も出てきています。また、テキスト以外のデータ形式、とりわけインターネットの電子書店が提供しているようなデータ形式が増えており、これらは点字形式への変換ができず、点字での読書が困難です。

9.個人情報保護法の施行後、様々な制約が加わり、電話をかけることができない盲ろう者には大変大きな弊害が生じています。例えば、銀行のキャッシュカードを紛失してしまい、銀行等へ通訳・介助者が本人に通訳しながら電話をしても、本人でないという理由から電話による対応を拒否されるというケースがよくみられます。盲ろう者本人による通訳・介助者を介しての電話にも対応していただけますよう、ご検討ください。


(「ノーマライゼーション」2010年1月号)

福祉の量的、質的保障を
福島 智
社会福祉法人全国盲ろう者協会理事

 目と耳の両方に障害を併せ持つ「盲ろう者」にとってもっとも深刻な困難は情報を入手し、発信する手段が著しく制限されていることであり、移動の自由がほとんどないことである。目の機能と耳の機能を補い周囲の情報を伝えるためには「通訳」が必要であり、移動の自由を保障するためには「介助」が必要である。私たちはこれらのサポートを提供する人を「通訳・介助者」と呼んで聴覚障害者のための「手話通訳者」や視覚障害者のための「ガイド・ヘルパー」の制度と区別をしてきた。そして、平成21 年4 月から、ようやく障害者自立支援法の下で、都道府県の行う地域生活支援事業としての「盲ろう者向け通訳・介助者」派遣事業が全都道府県で実施される体制が出来上がった。これによって、盲ろう者にも何日に1回かは人と会話をし、自分の手で直接商品に触って買い物ができ、テレビやラジオを通じて流れ出るニュースの何10 分の1かは手に入れることができるようになったのである。
 ところが、多くの道府県がたとえば1年間に240時間以内というような派遣時間の制限を設けている。つまり、「盲ろう者」の場合は、多くの県において1日40 分くらいしか「人間としての当たり前な生活」が許されていない。言ってみれば「名目ばかりの制度の谷間」で犠牲を余儀なくされている存在なのである。 原因は地域任せの「地域生活支援事業」にある。福祉は原則地域でという考え方は良い にしても、資金が圧倒的に量的に不足しているのである。それだけでなく地方自治体にとって、ただでさえ乏しい予算の配分先は既存の団体が優先される傾向があり、私どものような新顔の団体が入り込む余地は極めて少ない。したがって、制度はできても中に入れるものが作れない。
 「盲ろう者向け通訳・介助員派遣制度」に関しては、幸い現在のところはどの都道府県でも「応益負担」の対象から免れているが、これとても法的にきちんと守られているわけではないし、「応益負担」が「応能負担」に変わったところで、「負担」に変わりはない。
問題は「ただ人と会話をする」ために、なぜ「負担」というお金を支払わなければなら ないのかということだ。民主党にお願いしたいのは、福祉を商品化することなく、人間の尊厳というものに対する量的、質的保障をきちんと手当てしていただきたいということである。

(ふくしまさとし)