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第28回障がい者制度改革推進会議(H22.12.13) 大谷恭子委員提出資料

教育(実施・検討にあたっての留意点)
文科省・別紙2-1についての意見書

2010年12月13日
大谷 恭子

1、「現行制度が原則分離別学の仕組みになっている」という指摘はあたらないということについて

(結論)現行制度は原則分離別学であり、例外的に統合されている。これについては、特特委員会においても確認され、別紙2-1(2枚目)においても記載されている。文科省が挙げる理由は、いずれも制度が分離別学になっていることを否定するものではなく、かえってそれを裏付けるものである。

①平成18年の学校教育法改正により、通常の学級を含め、小・中学校等の特別支援教育を推進することを明確に規定するとともに、

上記は、従来普通学級に就学していた発達障害のある子に対する特別支援を主に想定したものであり、これによって、従来は特別支援学校・学級にいた子が普通学級で支援を受けられるようになったわけではない。

②就学手続についても、平成14年度より認定就学制度を導入し、

認定就学制度は、本来は特別支援学校に行くべき子なのだが、学校がバリアフリーになっている等一定の条件のもとに例外的に普通学校に行くことができることを「認定制度」として制度化したものである。まさに原則が分離だからこその制度である。

③平成19年度より障害のある子どもの就学先の決定に際する保護者の意見の聴取の義務付けを行う

保護者の意見聴取はインクルーシブ教育制度からの要請ではなく、養育・監護責任者としての保護者の権能および適正手続きからの要請である。

平成21年5月1日現在において、就学基準に該当する子どもの約3割が実際には小学校に就学しているという現状に鑑みれば、

3割の子どもが、すべて認定就学でない事は文部科学省のデータからも明らかである(平成17年の認定就学者は、131人。小学校入学者は、352 人。)
就学基準に該当せず、しかも認定就学でもない子は、多くは保護者の強い希望によって、保護者の負担のもとに普通学校に就学している。この子たちは現行法制度上明確に位置づけられていないがゆえに、支援の制度的・法的保障がない。この子らを制度的に位置付け、支援する必要がある。これができないのは就学基準に該当する子は原則分離別学にするとの制度があるからである。よって決して就学基準に該当しない子の3割が小学校に在籍していたとしても、この子どもの支援を法的に位置付けていない現行制度は、これをもってインクルーシブの方向性だということはできない。

2、特特委の方向性について

これについては、すでに11月15日推進会議で意見を提出済みであるが、以下補足する。

(インクルーシブ教育システム構築に向けての特別支援教育の方向性について)
○インクルーシブ教育システム(包容する教育制度)の理念とそれに向かっていく方向性に賛成。

インクルーシブ教育システムの理念と方向性だけではなく、制度的保障をどのように作っ ていくかが問われている。

○インクルーシブ教育システムにおいては、同じ場で共に学ぶことを追求するととも

インクルーシブ教育システムとは、同じ場で共に学ぶことを「追求する」のではなく「保障する」のである。

特別な教育的ニーズのある児童生徒に対して、その時点で教育的ニーズに最も的確にこたえる指導を提供できる多様で柔軟な仕組みを整備することが重要。子どもの学習権を保障する観点から、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある「多様な学びの場」を用意しておくことが必要。

必要なことは、多様な学びの「場」ではなく、普通学級での「多様な学びの保障」であり、そのための多様な「支援」である。支援を場で分ける必要性はない。

○財源負担も含めた国民的合意を図りながら、大きな枠組みを改善する中で、「共に育ち、共に学ぶ」体制を求めていくべきである。

「大きな枠組みを改善する」ことがもとめられていることは異論がない。この枠組みの改善こそが、学籍一元化であり、一元化したうえで個別の支援を保障し、「共に育ち、共に学ぶ」体制に改善するべきである。

(就学相談・就学先決定の在り方について)
○一人一人の教育的ニーズを保障する就学先を決定するため、また、本人・保護者、学校、教育委員会が円滑に合意形成を図るため、障害のある子どもの教育相談・支援を乳幼児期を含め早期から行うことが必要。

早期相談、支援は、早期の段階から一人一人の子どもが地域の構成員として認められ、地域で育つために保障されるのであって、「教育的ニーズの保障する就学先を決定するため」や「合意形成を図るため」ではない。

○就学基準に該当する障害のある子どもは、特別支援学校に原則就学するという従来の就学先決定の仕組みを改め、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、専門家の意見等を踏まえた総合的な観点から就学先を決定する仕組みとすることが適当。その際、本人・保護者に対し十分情報提供をしつつ、本人・保護者の意見を最大限尊重し、本人・保護者と教育委員会、学校等が教育的ニーズと必要な支援について合意形成を図り、最終的には市町村教育委員会が決定。

これは、現行制度を改めると言いながら、現行制度のままである(既述)。問題は原則を分離別学のままとするのか、統合を原則とするかである。学籍を一元化し、個別支援計画の中で個別のニーズをどのように保障するかを、本人・保護者、教育委員会、学校等が協議するべきである。そして協議がどうしてもととのわず個別支援が策定できない場合の救済策として、調整委員会が設けられうべきである。

3、障害者基本法教育条項の文言について

(結論)「障害の状態に応じ、十分な教育が受けられるようにする」(14 条1項)を「同じ場で共に学び、障害の状態に応じた十分な支援が受けられる」に変更するべきである。

・「障害の状態に応じ、十分な教育が受けられるようにする」という現行の規定は、インクルーシブな教育制度と矛盾するものではなく、表現を改める必要はない。中教審においても、インクルーシブ教育システムにおいては、同じ場で共に学ぶことを追求するとともに・・・

インクルーシブ教育は、同じ場で共に学ぶことが原則である。どの子も分け隔てなく教育を受ける権利を有しているのであり、この権利を実現するために障害の状態に応じた支援が保障されなければならない。「同じ場で学ぶことを追求する」との表現が中教審においても取り上げられることは一歩前進ではあるが、これをどのように制度的に保障するかが明確ではない。この趣旨を基本法に明記することが必要である。そのためには従来の分離別学の根拠ともなっていた基本法の文言を改めるべきである。

4、就学先の決定を保護者に全面的に委ねることについて

(結論)就学先の決定を保護者に全面的に委ねると子どもの学習権を保障することが難しくなる可能性があるとして具体的に4つの場合を例示しているが、いずれも理由がなく、これを理由に保護者の決定権を否定することは不適切である。

- 就学前健診の受診や個別の教育支援計画の作成を認めないために障害の状態や教育上のニーズの把握・対応が不可能な場合など、保護者の障害受容が得られない場合

現行原則分離別学制度のもとでは就学基準により特別支援学校に就学すべき子の保護者が普通学校への就学を求めると、障害受容がされていないと評価されがちであった。家族や地域のなかで普通に暮らす一人の子どもとして育てたいと願う保護者が、現行制度のなかでは分離別学を強制されかねない就学時健診や個別教育支援計画の作成を拒否することがあるのであって、これは決して障害受容がされていないことではない。

- 重度の障害等により障害のある子どもが日常的に必要とする医療的ケア等の提供が学校において物理的に困難な場合

医療的ケアをどのように保障するべきかの問題であり、これを理由に保護者の決定権を疑問視されることではない。

- 行動・情緒面の障害等により、他の子どもに重大な危害等が及ぶ恐れが強い場合

障害等により他の子どもに重大な危害が及ぶ恐れが強い場合には、教育委員会が就学先を決定するということであるが、この場合の「危害が及ぶ恐れ」は何をどのような根拠で判断するのか不明であり、このような曖昧な基準で障害のある子を障害のない子どもから分離することは、重大な人権侵害となる恐れがある。

- 保護者の子どもに対する虐待が疑われる場合

虐待が疑われる場合はそのこと自体において子どもは保護されるべきである。かような例外的場合を想定して一般的な就学先の決定権を論ずるべきではない。もちろん特別支援学校への就学を拒否することが虐待(ネグレクト)であるとの趣旨であるならば、論外である。

5、合理的配慮の具体的内容について

(結論)合理的配慮が保障されないことは差別であると障害者権利条約第3 条には記載さ れている。「不釣り合いな又は過重な負担を課さないもの」との定義は、国によっては公 教育においては相容れるものではないとされており、合理的配慮の欠如が普通学級に就学 できない要件にされてはならない。
 合理的配慮の具体的内容については、障害種別もさることながら、個別性が高いことに 留意する必要がある。合理的配慮等を決める過程において、障害をもつ人及び保護者の意 向は必ず尊重されなければならない。学校関係者、本人・保護者や支援者、第三者を交え た協議調整の場を整備する必要がある。(別紙「インクルーシブ教育と合理的配慮」参照)

以上

2010年8月30日

インクルーシブ教育と合理的配慮(概要版)
―普通学級における合理的配慮事例―

障害者権利条約批准・インクルーシブ教育推進ネットワーク

1、普通学級での合理的配慮を考えるために(前提)

(1)インクルーシブな教育制度の確立

 教育行政(国・地方自治体)は障害をもつ個人が、自身の住んでいる地域社会の教育機関(学校教育だけでなく、幼児教育、社会教育等、あらゆる年齢層の教育)で、一人の市民として、当たり前に学べるよう法改正をはじめとする条件整備をしなければなりません。学籍簿を一元化し、障害の有無に関わらず必要な配慮と支援を受けながら自身の住んでいる地域の教育機関で学ぶことができるように保障されるべきです。

(2)障害をもつ一人ひとりに保障される合理的配慮

 条約では、地域の普通小中高等学校で、教育を受けるための合理的配慮を保障しており、個人の権利を保障し、差別を是正するための必要な変更や調整(合理的配慮)が行われないのは差別であるということになります。  合理的配慮は、障害をもつ個人が必要な変更や調整を要求できるところに大きな特徴があります。個人が合理的配慮を求めることができるのは、同じ地域や制度で学んでいたとしても、その個人の環境やニーズとの相互関係によって必要な合理的配慮が異なるからです。また、合理的配慮の提供は、条件整備が不十分であっても、設置者はまぬがれるものではありません。  合理的配慮等を決める過程において、障害をもつ人及び保護者の意向は必ず尊重されなければなりません。障害をもつ人にとっては、合理的配慮等は学びの保障のために非常に重要な事項になります。したがって、自身の思いや考えを表明できるように、その過程において支援を受けることも重要です。

(3)必要な支援

 権利条約は、合理的配慮に加えて、「有効な教育を保障するための必要な支援を提供する〔第2条(d)項〕」としています。この必要な支援については、普通学級の中でも当然保障されるべきで す。  合理的配慮と必要な支援は、条文では分けて規定されていますが、障害をもつ個人からは不可分なものとみるべきではないでしょうか。合理的配慮を要求する過程において、障害をもつ個人にとって何を合理的配慮とするか、あるいは、何を必要な支援とするのかを区別することは意味をもたないからです。通常学級で保障される合理的配慮と必要な支援を一体的なものとして扱うことになります。

(4)フルインクルージョンを目指す個別支援措置

 条約の第2条(e)項では、「個別支援措置は、完全なインクルージョン(Full Inclusion)を目標に」し、「学業や社会性を最大限に伸ばす環境のなかで提供される」としています。したがって、行政による個別支援措置は、インクルージョンをより完全にすることを目標にすること、その指向性を明確にしています。例えば、特別支援教室・学校で障害をもつ個人が学んでいる場合であっても、学業の保障だけではなく社会性の発達をも最大限に伸ばすよう支援を講じなければならないのです。
 この条文で規定している個別支援措置は、現行の教育制度では特別支援教育そのものを意味しています。特別支援学級や学校の教育は、現在提供されている教育内容からの変更(フルインクルージョンを目標とすること)が迫られていることになるのは、条約に照らし合わせると明らかです。

 以上のように、(1)インクルーシブな教育制度の確立、(2)障害をもつ一人ひとりに保障される合理的配慮、(3)必要な支援、(4)フルインクルージョンを目指す個別支援措置 の4つを同時に整備することが条約批准にあたっては重要となります。また、この制度構築にむけては、日本の国内法改正は必須です。

2、合理的配慮・必要な支援及び条件整備の具体例

(1)全ての障害に共通なこと

①障害の種類にかかわらず共通する合理的配慮、必要な支援

  • 教育課程について:画一的なカリキュラムの変更。全員が参加できる教授方法の工夫・見直し。
  • 担任一人に負担が集中しないような人的な確保:副担任 ティーム・ティーチング
  • 試験方法や評価の見直し・変更

②障害の種類にかかわらず共通する条件整備

  • 学級規模の少人数化
  • 学習指導要領の大綱化、各学校ごとに教育課程を自主編成し、教員が授業を創意工夫できる時間的・精神的余裕をもてるようにする

(2) 視覚障害者

①視覚障害者への合理的配慮、必要な支援

  • 点字教科書・点字教材
  • 拡大図書・拡大文字による副教材・資料、拡大読書器
  • アクセシブルな電子教科書
  • パソコン・点字プリンター・音声読み上げ等、支援ツールの利用
  • 音声による説明・対面朗読(「その」「あの」等指示語を使わないなどの配慮)
  • 触ってわかる地球儀や地図、漢字習得の点による漢字表示などの触覚副教材
  • 体育・生活科などの実技教科における授業指導の配慮
  • 盲ろう、盲と知的障害などの重複障害の場合の意思疎通の通訳者・アテンダント
  • 通学等の移動支援

②視覚障害者に対する条件整備

  • 点字教科書、点字教材、拡大図書、拡大文字、電子書籍等のデジタル教科書・副教材・資料を作成するツールと人的保障
  • デジタル化対応のための法整備(教科書・副教材制作会社からのテキストデータ提供を法的に義務付ける)
  • 対面朗読、音訳者、アテンダントの育成→現状ボランティアがほとんど。各地のボランティア団体や視聴覚センターの資源をどう教育委員会・各学校とむすびつけるのか制度整備が急務。
  • 拡大読書器、点字ディスプレイ、印刷物の音声・点字変換出力機器等の補助機器の貸与等
  • 校舎内要所への点字ブロック等の設置

(3)聴覚障害者

①聴覚障害者への合理的配慮、必要な支援

  • 手話通訳、PC要約筆記、ノートテイク
  • 音声教材への字幕、文字説明
  • 授業・行事等での音声情報を補う視覚情報・文字説明(PC要約筆記によるスクリーン字幕や端末での表示)
  • 磁気ループなどの補聴設備
  • 音楽・英語のヒヤリング授業等への配慮

②聴覚障害者に対する条件整備

  • 手話通訳、PC要約筆記、ノートテイク等の人材養成・派遣制度
  • 通訳者・筆記者等がすべて介在するのではなく、授業や行事のなかで子ども同士・教師と当該の子どもが意思疎通できるよう、ひらがな・漢字を覚えながら手話も教えるなどの工夫ができるよう、授業プログラムの改変、人的保障をする。

(4)盲ろう者

①盲ろう者への合理的配慮・必要な支援

  • 指点字・触手話など、その人のニーズにあったコミュニケーション保障
  • その人の状態・ニーズに応じて、視覚・聴覚に関する情報保障(1、2)に順ずる
  • 触ってわかる地球儀や地図、漢字習得の点による漢字表示などの触覚副教材
  • 体育・生活科などの実技教科における授業指導の配慮
  • パソコン等の支援ツールの利用
  • 音楽・英語のヒヤリング授業等への配慮
  • 通学等の移動支援

②盲ろう者に対する条件整備

  • 指点字、触手話の通訳者の養成
  • 盲ろう者へのパソコン等、ITツール指導者の養成
  • その他、視覚・聴覚に関する条件整備(1.2)に順ずる

(5)肢体不自由者・車いす利用者

①肢体不自由・車いす利用者への合理的配慮、必要な支援

  • 介助員等の人的配慮
  • アクセシブルな電子教科書
  • パソコン等支援ツールの利用
  • 体育・生活科などの実技教科における授業指導、運動会等での競技参加の仕方の配慮
  • 教室移動等の時間的配慮
  • 試験時間の延長、試験方法の変更・工夫(代筆・読み上げ・PC利用・記述式から選択式へ変更等)
  • 通学等の移動支援

②肢体不自由・車いす利用者に対する条件整備

  • 学校設備のバリアフリー化(段差の解消、エレベーター、車いすで利用できるトイレ・水道他の設備)
  • 介助員派遣制度と介助員養成

(6) 知的障害・情緒障害

①知的障害・情緒障害への合理的配慮、必要な支援

  • 介助員等の人的配慮
  • 画一的なカリキュラムの変更。同一教材で共に学ぶための指導方法の工夫
  • 試験の方法、評価方法の変更(授業への参加・関心度を評価等)
  • アクセシブルな電子教科書

②知的障害・情緒障害に対する条件整備

  • 学習指導要領の大綱化、各学校ごとに教育課程を自主編成し、教員が授業を創意工夫できる時間的・精神的余裕をもてるようにする
  • 介助員派遣制度と介助員養成

(7) 医療的ケアを必要とする人

①医療的ケアを必要とする人への合理的配慮、必要な支援

  • 医療的ケアをする介助者(パーソナルアシスタント)等の人的配慮
  • 通学に関する移動支援

②医療的ケアを必要とする人に対する条件整備

  • 主治医・看護師(医療機関)との連携体制
  • 医療的ケアに関する理解を進める講習
  • 医療的ケアに必要な設備の整備

*介助員等の人的配慮については、建物・設備や支援ツールの整備以上に必要とされる配慮に個人差が大きく、また支援を与える側のスキル・個人的な考え方によっても違ってくる(一言で言えば相性の問題がある)ので、別添資料に、介助員についての考え方、ガイドラインを整理した。(概要版省略)

3、普通学級で学んだ経験者からの、合理的配慮に関する要望

(1)事例1 学籍一元化と教員の意識変革が合理的配慮の前提

 中学では、級友や担任教師が、お互いを知るまでに時間を要する学年はじめ、時間割のこと、準備物の連絡など学校側の配慮が欲しかったです。担任が、班の級友に協力を要請するなどしてくれたら、教育活動にもなっただろうにと思いましたが、「普通学級に居るのだから特別扱いはしません、皆と同じです。」という担任で、中3では不登校になり、不登校児童のための教室に通いました。
 普通学級で9年間を過ごして実感するのは、まずは、障害を持った子がクラスに居ても当たり前という状態になることがなにより必要だと思います。同一学籍はインクルーシブ教育には必須だということです。そして教師の意識の変革が何より重要。「集団」を同一行動をとるものと考えるか、ひとりひとり違う個性が集まっていると考えるかで、大きく違います。教師・学校が、障害児がいることでかかえる困難を、障害のせいにしがちです。具体的に何に困っているのか?と考えて欲しい。何があれば、どうあれば、その困難は解消・軽減されるか?合理的配慮とはそういうことだと思います。

(2)事例2 希望した人的配慮がなかったため骨折を繰り返し充分な移動ができなかった。

 小学校入学時に校長、教務主任などと相談し、校長から教育委員会へ学校の設備改造と、人的支援をお願いしたとのことだが、設備改造(玄関のスロープ化、水道の蛇口の増設、トイレの改造)は行われたものの、人的配慮は得られなかった。これらの改造はもちろん役に立ったが、私たちが求めたのは人的支援であり、人的援助があれば、改造がなくても学校生活を充分安心して楽しいものとなった可能性がある。易骨折性のため骨折しないよう見守りが必要であるが、その人的配慮がなかったため校内で2回、合計3箇所を骨折し、手術、入退院を繰り返さなければならなかった。頭を打てば、死亡の可能性もあるので、教育委員会へも、その危険性を指摘し、人的配慮をお願いしたが、「制度も予算もないので、おっしゃることはわかりますが、何もできないんです。」の一点ばりだった。人的援助がなかったため、休み時間は外に遊びに行くことができず、いつも一人で過ごすことになってしまったし、昼休みに週に1回でいいから2階の図書室に行かせてほしいと要望したが、その望みも叶えられなかった。

4、最後に

 「合理的配慮」や「必要な支援」は強制されるものではなく、個人の了解のもとでなされないといけません。また、現在日本で進められている特別支援教育は、「必要な支援」ではなく障害によって分けた上での「個別支援」でしかありません。権利条約との整合性を考えるのなら、個別支援もフルインクルージョンの目標に則し、社会性の発達が最大限保障されるものでなければいけません。
 「合理的配慮」に関しては、その経費との兼ね合いから「合理的」かどうかという判断がありますが、社会の成熟度や社会資源の量、護られるべき権利や自由の内容によって、その中味は可変であり、障害者の要求する権利保障の幅によって変わってきます。財源がないという理由で、合理的配慮が全て否定されるのではありません。例えばエレベーター設置の代わりに他の人的援助や物理的配慮等がなされるなど、他の人的物的財源によりその権利保障は当然行われます。要求する権利が無くなったわけではありません。
 学校という公共建物は、地域の人すべてに開かれ、ユニバーサルに使える建物であるという考え方からすれば、学校のバリアフリー化は、そこで学ぶ障害のある子ども個人にとっての利益でなく、地域社会全体の利益と捉えるべきものであり、自治体の教育予算だけで勘案すべきものではないと考えます。
 同様に、情報障害に関する合理的配慮、支援ツールは学校だけで使うものではなく、社会教育やひろく公共の資源として共有化できるものです。その意味では、盲学校やろう学校等での経験や支援ツールなどの資源を地域の学校で共有し、地域社会に広げていくことは、インクルーシブな社会づくりの基盤になるものです。

以上