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第28回障がい者制度改革推進会議(H22.12.13) 新谷友良委員提出資料

2010年11月30日

障がい者制度改革推進会議 議長 様

障害者放送協議会
代表 笹川 吉彦

障害者基本法における、情報にアクセスする権利の保障について

 平素より障害者の権利の推進にご尽力を賜り、心より敬意を表します。
 私たちは障害者関係団体により1998年に設立された協議会で、現在は20団体により活動しています。設立以来、放送、通信などの情報アクセスの向上に関する活動に取り組み、行政や国会議員との意見交換、提言、広報のための冊子の作成やセミナー等の開催を行っています。
 情報へのアクセスは、現代の社会生活を送るうえで不可欠であり、誰もが保障されるべき権利ですが、実際には障害者は多くの情報が利用できず、時に生命や財産にも関わる大きな困難に直面しています。
 現在、障がい者制度改革推進会議では、障害者基本法改正の議論が行われていますが、あらゆる施策の基本となるこの法律に、情報にアクセスする権利の保障が十分に盛り込まれるよう、下記の意見を申し述べます。

Ⅰ.「情報バリアフリー」に関する規定について

1.障害者を情報サービスの対象者としてのみ捉えるのではなく、情報にアクセスする権利を明確に規定していただきたい。

 障害者権利条約では、第2 条にコミュニケーションの定義が述べられたうえで、第21条においては「あらゆる形態の意思疎通(コミュニケーション)であって自ら選択するものにより、表現及び意見の自由についての権利を行使することができること」が規定されている。また推進会議第一次意見においては、「障害者も・・・表現の自由や知る権利の保障の下で、情報サービスを受ける権利を有しており、自ら必要とする言語及びコミュニケーション手段を選択できるようにするとともに、障害者が円滑に情報を利用し、その意思を表示できるようにすることが不可欠である」と述べられている。
 特に、情報を得るのみならず、自ら選択する手段等で意思表示・情報発信できることが、 コミュニケーションの保障として重要である。
 障害者基本法では、これらの権利を明記すべきであり、これに基づく形で、国、地方公共団体、事業者等の責務を規定するべきである。

2.放送へのアクセスを確保するよう明確に規定していただきたい。
また、障害当事者によるモニタリングを規定していただきたい。

 放送については、極めて公共性が高いものであり、これにアクセスできることは社会生活上不可欠である。字幕放送、解説放送、手話放送の推進が行われているが、なおアクセスできない番組は数多く、手話放送については現在の技術や規格では普及が困難とされ数値目標による指針も出されていない。  字幕、解説、手話を含む、障害者自らが選択する方法で放送を利用できるためには、放送法にアクセシビリティの規定を明確に設けること、またIP 放送においても通常の放送と同様のガイドラインを設けること、また、手話によるアクセスを直ちに保障するため、手話の補完放送を法的に位置づけることなどが必要である。  障害者基本法においては、このような観点から、放送へのアクセスを確保するよう明確に規定すべきである。また放送について、当事者参加によるモニタリングについても規定すべきである。

3.放送と通信の融合を踏まえ、通信へのアクセスを確保するよう明確に規定していただきたい。

 放送法改正案では、放送と通信の融合時代に合わせるとして、コンテンツ提供事業者と設備提供事業者に分けて免許を与える仕組みが提案されている。このような背景も踏まえ、通信へのアクセスを確保するよう明確に規定すべきである。
 電話(一般電話のほか、携帯電話、スマートフォン、IP 電話等も含む)やインターネットを含むさまざまな通信については、コミュニケーションの手段として障害者自らが選択する方法で、追加の負担なく、情報を受信・発信(意思表示)できることが求めらる。このためには、米国など諸外国の法制度も参考にしながら、情報アクセスを保障する新たな法制度を制定することも含め、当事者参加を基本とした、包括的な施策が必要である。

4.放送・通信の規格策定や機器開発、およびモニタリングへの障害当事者の参加を規定していただきたい。

 放送・通信分野においては、その方式に関する規格や機器製造に関する規格が重要な役割を果たしている。しかし、現状においては、これらの規格には、音声対応や手話・字幕の表示など情報アクセスの観点が十分に盛り込まれておらず、また規格の策定に障害当事者がかかわっていないことが多い。また規格や機器を障害当事者の立場から評価・検証する仕組みも確立されていない。障害者は、放送・通信における重要な情報発信者および受信者であり、その認識のもとに、これらの規格の策定においては障害当事者を必ず参加させるよう、基本法に規格策定、機器開発、およびそのモニタリングへの当事者の参加を規定すべきである。

Ⅱ.著作権と、情報にアクセスする権利について

1.障害ゆえに多くの著作物が利用できない実情を踏まえ、情報にアクセスする権利、文化的生活に参加する権利を明確に規定していただきたい。

 著作者の権利は大切であり守らなければならないが、同様に、障害者権利条約第21条、30条にある情報にアクセスする権利、文化的生活に参加する権利が保障されなければならない。

 今年1 月に施行した改正著作権法は、障害者が著作物を利用するための情報保障の観点から、大きな前進であり評価するものだが、なお課題が残されている。例えば、次のような課題が挙げられる。

  • 障害の種類について。例えば、ALS、脳性まひ、その他上肢の障害から、ページがめくれず通常の著作物が利用できない人などが、情報保障の対象に含まれるか必ずしも明確でない。現在のような限定列挙による権利制限規定では、著作物の利用上困難があっても、必ず対象から漏れ出る人が出る。
  • 情報保障のための複製等を行う事業者の指定についても、同様に限定列挙的な規定がなされているため、法改正でその範囲が広がったとはいえ、技術や実績があっても、この指定から漏れ出る人たちがいる。
  • 情報保障のための複製製作物に対してコピーガードやこれに代わる「表示」を求めるなど、情報保障のための活動になお負担が大きいこと。
  • 映画等の複製物を貸与する場合に補償金を支払うことについて。障害者の情報保障のために行われる場合は、公的負担とするなど、利用者や情報保障を行う者に負担が及ばないようにすべきである。

など

 このほか、インターネットや電子書籍など、新たな技術の普及が進んでいるが、総務省の平成22年度「新ICT 利活用サービス創出支援事業」に電子出版DRM/UI 仕様書が含まれるなど、障害者の情報アクセスの確保と逆行する動きもある。電子書籍などへのアクセスの確保も課題である。
 障害者が著作物を利用するための様々な配慮は、本来著作権者が自ら行うべきものであるが、これを補完するために行われている情報保障の活動に対し、著作権法が障壁とならないよう、法の整備やその運用に際して徹底すべきである。
 現在議論されている権利制限の一般規定(日本版フェアユース)を障害者の著作物利用にも適用することを含め、さらなる改善を求めたい。

以上