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障がい者制度改革推進会議 第28回(H22.12.13) 資料3

第二次意見(素案2)

目次

はじめに

Ⅰ 障害者基本法の改正について

1 障害者基本法改正の趣旨・目的

2 総則関係

1)目的

2)定義

3)基本理念

4)差別の禁止

5)障害のある女性

6)国及び地方公共団体の責務

7)国民の理解・責務

8)国際的協調

9)障害者週間

10)施策の基本方針

11)その他

3 基本的施策関係

1)地域生活

2)労働及び雇用

3)教育

4)健康、医療

5)障害原因の予防

6)精神障害者に係る地域移行の促進と医療における適正手続の確保

7)障害のある子ども

8)相談等

9)住宅

10)ユニバーサルデザイン

11)公共的施設のバリアフリー化、並びに交通・移動の確保

12)情報アクセス・コミュニケーション保障

13)文化・スポーツ

14)所得保障

15)政治参加

16)司法手続

17)国際協力

4 推進体制

1)組織

2)所掌事務

Ⅱ 「障害」の表記

第二次意見(素案2)

はじめに

(第一次意見後の流れ)

 本年1 月から始まった「障がい者制度改革推進会議」(以下、「推進会議」とする)は、12 月●日現在で●回目を数えている。
 「第一次意見」(障害者制度改革の推進のための基本的方向)は、第14 回推進会議(6月7日)でまとめられ、閣議決定(「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」6月29日付)されて以降、推進会議においては、次の取組が行われている。

 「第一次意見」において横断的課題の第一に位置付けられている障害者基本法の抜本改正は、本年末を目途に作成予定の「第二次意見」の内容を踏まえて、平成23 年の常会に法案を提出することになっている。
 「第一次意見」後の推進会議においては、「第二次意見」の策定に向けて、追加的な個別分野の事項として「住宅」「文化・スポーツ」「ユニバーサルデザイン」「障害の予防」について、省庁ヒアリングを実施して議論を行ってきた。
 また、基本法改正の議論においては、総則・各則・推進体制ごとに、事務局が提出した条文の規定ぶりイメージをもとに議論を行ってきた。

 横断的課題の第二に位置づけられている差別禁止法の制定については、11 月に1 回目の「差別禁止部会」が開催され、今後は検討項目を整理して、平成25 年の常会に法案が提出できるよう本格的な取組を行うことになっている。

 第三の横断的課題である障害者総合福祉法(仮称)について検討を行う「総合福祉部会」は、現在、同法の重要なテーマ(項目及び論点)ごとに九つの作業チームを設置して、10 月から検討作業を行っている。その中では、「第一次意見」で個別分野の課題として位置付けられ、検討項目及び論点が総合福祉法の範囲を超えている「就労」「医療」「障害児支援」は、推進会議の委員との合同作業チームを設けて障害者基本法改正に盛り込む事項の取りまとめも含めて検討を行っている。
 「総合福祉部会」では、平成23年8月には部会としての意見を取りまとめ、平成24 年の常会に法案提出を行い、平成25年8月の施行を目指している。

 「第一次意見」をもとに、各地で「地域フォーラム」が14 ヶ所(11月末現在)で開催され、毎回100人~500人の参加者が集まり、障がい者制度改革推進会議の意義と一連の取組について、各地で大きな注目と期待がもたれている。
 今後、「地域フォーラム」は、平成23 年2 月までに合計19 か所で開催する予定になっている。

(障害者基本法制定の経緯)

 現行の障害者基本法は、国内の障害者関係の各個別法及び施策の基本的な理念、方針及び推進体制を包括的に定めているが、現在、国内外の情況の変化によって大きな転換期を迎えている。

 戦後の障害者施策は、1940年代の終わりから60年代にかけて、身体障害者福祉法や精神薄弱者(当時の表記)福祉法、精神衛生法にみられる「特別法」、又は社会福祉事業法や児童福祉法を始め、医療・教育・職業訓練及び雇用促進・年金・住宅・交通等に関連する個別法の中で分散して限定的に取り上げられ、その基本的考え方は、障害者を「対策」の対象とすることにとどまっていた。
 このような現状に対して、関係者から障害者対策に総合性と一貫性が欠けており、行政機関相互の連絡調整の必要性が指摘された。また高度経済成長から取り残されていく障害者への無関心な社会の実態が、障害者団体や関係者から強く指摘され、根本的な対策を求める声が高まっていた。
 こうした背景のもとで、「心身障害者対策基本法」(昭和45(1970)年)が制定されたが、法律名称に表れているように、障害者を「対策」の対象とすることに変化はなかった。

 「国連・障害者の十年」(1983年~92年)の展開と国際的潮流を踏まえ、「心身障害者対策基本法」を大幅に改正した障害者基本法(平成5(1993)年制定)は、当初、主に三つの側面を有していた。
 一つは、それまでの障害者の自力更生と社会復帰、優生思想を背景とした障害の予防と早期発見、障害の克服等を基調とした「心身障害者対策基本法」をノーマライゼーション理念に基づいて改編していくという点である。もう一つは、「国連・障害者の十年」とノーマライゼーション理念の提唱による国内の「障害者対策に関する長期行動計画」(昭和58(1983)年~平成4(1992)年)の策定と実施による経過と実績を踏まえて、当時の障害者施策の到達点を基本法によって事後的に確認するという意味があった。さらに、三つ目は障害者基本法の成立によって、ようやく精神障害者が法的に障害者として位置づけられたのであった。

 その後、10年を経て平成16(2004)年に改正された障害者基本法は、1990年代のアメリカ、イギリスなどにおける障害者差別禁止法の実現や障害者への差別を禁止する法制化を求める国連・社会権規約委員会による日本政府への勧告(平成12(2000)年)等の国際的動向と国内の地域社会における障害者の生活保障を求める多様な取組に影響を受け、次の新設条文が追加された。

  • 「基本的理念」(第3 条3 項)に差別禁止事由、「国及び地方公共団体の責務」(第4 条)に「差別の防止」が規定された。
  • 「施策の基本方針」(第8 条2 項)に、「可能な限り、地域において自立した日常生活を営むことができるよう配慮されなければならない。」という規定が盛り込まれた。

 これまでの障害者基本法にかかわる主な経過を振り返ってみると、内外の動向に少なからず影響を受けてきたことが明らかになっている。
 現在、障害者権利条約(以下、「条約」とする)の国連採択(平成18(2006)年)を契機に、条約の批准に向けて、条約が要請する障害者の権利を実現する枠組みと水準に見合う国内の障害者制度改革をどのように行うかという点において、障害者基本法は、関係個別法の上位法として障害者制度改革の要の役割を果たすことが要請されている。
 今般の障害者基本法の改正は、条約を批准し、条約の規定を遵守するために必要な国内の制度改革全体の理念と施策の基本方針の要に位置し、今後の障害者施策の方向に大きな影響を与えるものとして、極めて重要かつ大きな意義があるということができる。

Ⅰ 障害者基本法の改正について

1 障害者基本法改正の趣旨・目的

 障害者は、古今東西いかなる社会であれ、普遍的に存在している。社会には、子ども、青年、壮年、高齢者が存在するように、障害者も社会の普遍的な構成員として存在する。

 しかし、障害者が社会の対等な一員として地域社会で暮らすには、いまだに大きな社会的障壁が待ち構えている。たとえば、交通機関、建築物等における物理的な障壁、欠格条項をはじめとする法律制度の障壁、点字、文字情報、手話通訳等による情報保障の欠如における文化・情報面の障壁、障害者を庇護されるべき存在としてとらえたり、障害者を外観だけで判断する等の意識上の障壁などである。

 我が国の障害者施策は、特に戦後から本格的に講じられるようになり、その結果、大きな発展を遂げてきたともいえる。ところが、これまでの障害者施策は、障害者をいわゆる健常者と対比して、心身の機能に障害をかかえ、能力的に劣っているものと把握し、障害者が遭遇するさまざまな困難の原因を個人の心身の状態に求める考え方を起点として、体系化されてきたものである。障害者が受ける制限の原因を障害の存在に求めている現行基本法の障害者の定義ひとつをとってもそれは明らかなところである。

 しかし、人類社会はしだいに社会との関係において障害を考察するようになり、ついには、障害が個人の機能障害と社会参加を妨げる社会的障壁との相互作用によって発生するものであるとの認識に達した。そしてこうした認識の変化は、障害者を保護の客体として扱ってきたこれまでの社会の対応に反省を促して、自己責任・家族依存から社会的支援としての地域社会での生活支援を拡大するとともに、障害に基づく差別を撤廃し、社会は障害者を権利の主体者として扱うべきであるとする根拠をもたらした。

 現行基本法は、先に述べた経緯をたどり、国際社会の影響や国内の状況を反映し発展してきたものであり、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本的理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めるものとなっている。

 しかしながら、いまだ多くの障害者が施設や精神科病院での暮らしを余儀なくされ、地域社会における生活も多くの困難を抱えるだけでなく差別や虐待も後を絶たない現状にあり、国際障害者年以来叫ばれてきたノーマライゼーションや完全参加と平等は、いまだ遠い夢でしかない。

 かような状況において、基本法が単に既存の施策のリストに終わることなく、真に障害者施策をリードしていくためには、いくつかの条件が必要である。

 すなわちそれは、第1には、障害に基づく差異を否定的な評価の対象としてではなく人間の多様性の一つとして尊重し、相互に分け隔てられることなく個性と人格を認め合うインクルーシブな社会の構築を基本法の目的に組み込むことであり、第2には、基本法が依って立つ障害概念を転換したうえで、差別禁止も含め、障害者に認められるべき基本的な人権を確認し、各種施策が人権確保のために国や地方公共団体の責務を定めるものであるとの位置付けを与えることであり、第3には、障害者に関連する政策決定過程に障害者が参画する重要性に鑑みて、障害者に関する施策の実施状況を監視する権能を担う機関を創設することである。

 以上の改正の趣旨・目的を踏まえ、改正基本法には前文を規定すべきである。

 推進会議は、かかる観点から、基本法の抜本改正に向けて精力的な議論を重ね、ここにその成果を第二次意見として示す。

2 総則関係

1)目的

(推進会議の認識)

【基本的人権の享有主体性の確認】

 障害者を保護の客体であるとする見方から、すべての基本的人権の享有主体であるとの見方へ、考え方の根本を転換することが障害者権利条約の理念であり、今後の障害者施策の基本となるべきである。したがって、かかる観点から、障害者権利条約を締結することを目指して、障害者基本法の目的の見直しが行われるべきである。

【格差の除去と平等の権利の保障】

 障害者は、障害に基づく日常生活上及び社会生活上の様々な制限や制約を受けている。また障害者の中でも、制度の対象になる障害とならない障害があるなど、制度内にも障害の種別・程度による格差(*)1といえるものが存在する 。こうした現状を改善し、すべての障害者に障害のない者と平等の権利を保障することができるよう、基本法の見直しが行われるべきである。

【インクルーシブ社会の構築】

 すべての障害者が国民から分け隔てられることなく、社会の一員として受け入れ、合理的配慮や必要な支援の充足を通じて、障害の有無に関わらず地域社会で共に自立した生活を営むことが確保されたインクルーシブ社会を実現することが日本の目指すべき社会であることを明記し、そのための国及び地方公共団体の責務を明らかにするよう、障害者基本法の見直しが行われるべきである。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • すべての障害者が基本的人権の享有主体であること及び、この権利の実現のためには自立と社会参加を保障するための支援が必要であること。
  • 障害のない者との格差、及び障害者間の種別・程度による制度間格差を なくし、すべての障害者に障害のない者と平等の権利を保障すること。

(実施・検討に当たっての留意点)

①「障害者間の種別・程度による制度間格差をなくし」とされているが、障害の種別によって、必要となる支援は当然異なるものであり、また、障害の程度によって、必要となる支援の内容や量は異なるべきものである。支援の必要な程度に応じて、それぞれの方に最も適切な支援を行っていくという考え方が必要と考えられる。

(厚生労働省)

  • 障害の有無にかかわらず、何人も分け隔てられることのない、インクルーシブな社会が日本の目指すべき社会であること及び、国はこの社会の形成に向けて合理的配慮や必要な支援が充足されるよう、政策を実施する責務があること。
  • 現行基本法の第1 条(目的)は、本意見書「Ⅰ-1.障害者基本法改正の趣旨・目的」の観点を踏まえて修正し、「福祉を増進する」という表記は用いないこと。

(実施・検討に当たっての留意点)

②「「福祉を増進する」という表記は用いないこと」とされているが、「福祉」の語は、児童福祉、高齢者福祉、社会福祉などの用例とともに、国民の福祉という用いられ方もするものであり、障害者について、「福祉」の語を用いるべきではないと結論づける場合には、広く国民的な議論が必要と考えられる。

(厚生労働省)

以上すべての点について
→ 御意見を踏まえ、どのような規定の仕方がありうるか検討してまいりたい。

(内閣府)

1 (*)「障害の種別・程度による格差」
障害者に対する各種生活支援は、障害種別・程度を判断基準とした医学モデル的な観点からではなく、生活の実態に基づくニーズを基礎とする社会モデル的な観点から、その必要性が判断されるべきであるところ、障害の種別や程度のみで、その必要性が判断され、その結果、不合理な格差が制度的に発生している場合を以下、「障害の種別・程度による格差」と表現する。

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

2)定義

(推進会議の認識)

 これまでは、個人の心身の機能の損傷と、様々な社会生活における不利や困難としての障害を同一視したり、障害を個人に内在する属性としてとらえ障害の克服を個人の適応努力に任されたりするなど、障害の軽減や除去のために医学的な働きかけ(治療、訓練)を優先する医学モデルが社会に浸透していた。
 しかし、障害者の社会参加の制限や制約の原因が障害者個人にあるのではなく、機能障害(インペアメント)と社会との関係によって生じるものであるという「社会モデル」に立つ障害者権利条約を踏まえるとき、基本法の改正に当たり、障害の定義に「社会モデル」的観点を反映させることが、障害者に関連する日本の施策の制度改革と国民全体の意識変革にとって極めて重要なことであり、そのことは、他の法律での定義にも反映されるべきものである。
 また、制度の谷間を生まないためには、あらゆる障害が「障害」の定義に入るよう幅広く捉えることが必要である。
 さらには、現行の基本法上の「継続的に」という文言との関係で、「周期的」又は「断続的」に発生する日常生活又は社会生活上の制限を受ける人を排除しないようにすることも重要である。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 障害の定義は、制度に基づく支援を必要としながらもその対象から除外される障害者、いわゆる「制度の谷間」を生まない包括的なものとし、個人の心身の機能の損傷と社会との関係において社会的不利益を発生するという視点を明らかにし、さらに、周期的に変調する状態なども含みうるものとすること。

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 御意見を踏まえ、どのような規定の仕方がありうるか検討してまいりたい。

(内閣府)

  • 「個人の機能の損傷」にどのようなものが当たるか、「社会との関係において社会的不利益を発生する」とは具体的にどのようなものか、「周期的に変調する状態など」とはどのような状態かが明らかにされないと、国民にとって、誰が障害者に当たり、誰が障害者ではないかが分からない。
  • 個別の施策毎に、「障害者」の定義や施策の対象者の範囲が異なりうることも留意されるべきである。

(厚生労働省)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

3)基本理念

(推進会議の認識)

【基本的人権の享有主体】

 法の目的でも述べたように、すべて障害者は、基本的人権の享有主体であり、障害者権利条約の理念である、「障害者を保護の客体から権利の主体へ」という考え方の転換を基本理念にも反映すべきである。

【地域社会における生活の実現】

 障害者権利条約は「すべての障害者が他の者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を認め」ている。すなわち、全ての障害者が分け隔てられることなく、障害のない人と対等な構成員として位置づけられ、合理的配慮や必要な支援の充足を通じて、障害の有無にかかわらず地域で共に生活することが確保されたインクルーシブ社会を実現することが求められている。このため、締約国は、この権利が完全に享受され、地域社会が完全に受け入れるために必要な措置等を講ずることが求められている。
 具体的には、居住地を選択し、どこで誰と生活するかを選択する機会を有することや、特定の生活様式の生活を義務づけられないこと。また、地域社会における生活や地域社会への受入れを支援することや、地域社会からの孤立及び隔離を防止するために必要な在宅サービス、居住サービスなどの地域生活支援サービス(パーソナル・アシスタンスを含む)を障害者が利用できるようにすること。一般住民向けの地域生活支援サービス及び設備が、障害者にとって障害のない者と平等に利用可能であり、かつ、障害者のニーズに対応していることである。
 日本においては、施設や精神科病院で多数の障害者が暮らしており、地域社会で生活しようとしても地域生活の社会資源が不足している現状にあり、また、現に地域社会で暮らしている障害者も、その日常生活や社会生活に多くの困難に囲まれている現状がある。
 このような現状を変えるために、基本法において、特定の生活様式で生活するよう強いられることなく、地域社会で生活する権利を確認し、その実現に向けた施策の具体化のための措置を取るべき旨を規定すべきである。

【自己決定の権利とその保障】

 すべての障害者は、障害のない者と平等に自己選択と自己決定の権利を有する。
 しかし、自己決定にあたって、必要な社会的体験の機会がなかったり、支援する立場にある者から選択肢が示されないなど、十分な情報を含む判断材料が提供されないことや、独力で決定することだけが自己決定とされ、支援の必要性が軽視されたり、必要な支援を提供もせずに、本人が決めたことだからとして責任を転嫁されることなどもある。
 自己決定にあたっては、自己の意思決定過程において十分な情報提供を含む必要とする支援を受け、かつ他からの不当な影響を受けることなく、自らの意思に基づく選択に従って行われるべきである。

【言語・コミュニケーションの保障】

 日常生活及び社会生活において、多くの障害者が必要な言語又はコミュニケーション手段を使用することに多くの困難を経験しているが、その問題の深刻さが省みられることは少なかった。しかしながら、今日の情報化社会において、改めて、コミュニケーションに困難を経験している障害者が障害のない者と等しく人権が保障されるよう、言語には音声言語及び手話等の非音声言語が含まれることを確認するとともに、情報に等しくアクセスでき、その情報の意味を等しく理解することのできる必要な言語又はコミュニケーション手段が保障されるべきである。
 コミュニケーションを保障するための必要な手段には、言語、言語を起点とする音声・筆談・点字・文字表示・わかりやすい言葉・拡大文字・指文字、また実物や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達、手話・要約筆記・指点字・触手話・手書き文字・朗読などの通訳者や説明者等の人的支援、補聴援助システムその他の情報支援技術を利用した補助代替的手段を含む。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 現行法の規定に加えて、障害者が基本的人権の享有主体であることを確認すること。

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 御意見を踏まえ、どのような規定の仕方がありうるか検討してまいりたい。

(内閣府)

  • 基本的人権については憲法により平等に明らかにされているものと考えられるが、障害者についてのみ、「障害者が基本的人権の享有主体であることを確認する」ことにより、どのような法的効果が生じるのかを明らかにしておく必要がある。

(厚生労働省)

  • 地域社会で生活する権利を確認するとともに、その実現に向けた施策の具体化のための措置を取ること。

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 我が国においては、憲法で基本的人権が保障され、その下でこれを具体化する権利義務が個別法に規定されている。
 これを前提として、基本法において「地域社会で生活する権利」という抽象的な規定の仕方が適切かどうか、また障害者の地域生活については現在総合福祉部会で検討が進められているところであるので、場合によっては、基本法において障害者の地域生活を実現するための施策の方向性を規定し、具体的な権利については総合福祉法(仮称)の中で規定することが望ましいか等の観点も含め、現行国内法制との整合性にも配慮しつつ、慎重に検討する必要がある。

(内閣府)

  • 障害者が必要とする支援を受けながら、自己決定を行えることが保障されること。

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 御意見を踏まえ、どのような規定の仕方がありうるか検討してまいりたい。

(内閣府)

  • 手話等の言語性を確認するとともに、必要な言語の使用及びコミュニケーション手段の利用が保障されること。

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 手話等が言語であることを規定することによって、どのような法的な効果があるのかといった観点も含め、どのような規定の仕方がありうるか検討してまいりたい。

(内閣府)

  • 「手話等の言語性を確認する」とされているが、具体的にどのような意味であり、どのような法的効果が生じるのかを明らかにしておく必要がある。

(厚生労働省)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

4)差別の禁止

(推進会議の認識)

【差別の禁止】

 障害者に対する差別が存在することは、内閣府の調査だけでなく、地方公共団体における差別禁止条例制定のプロセスでも明らかにされているところである。
 そもそも、障害の有無にかかわらず、何人も法の下に平等であるはずであり、障害に基づいて政治的、経済的、社会的、文化的、市民的関係を含むあらゆる分野において差別されることがあってはならず、また、あらゆる活動への機会が均等に保障されなければならない。

【法の下の平等と差別の禁止】

 そのためには、まず、基本法においても、法の下の平等の下で差別が禁止されるべきものであって、何人も障害に基づく差別を受けない権利を有することを確認し、さらに差別の定義などの基本的事項を規定することが必要である。

【差別の定義】

 基本法における差別の定義としては、障害者の権利条約の定義を踏まえ、あらゆる区別、排除又は制限が不利益な結果をもたらす目的を有する場合はもとより、行為者の主観的意図にかかわらず、不利益な効果が発生する場合も含むものであること、さらには、相手方に均衡を失した又は過度の負担を課すものではないにもかかわらず、特定の場合において、障害のない人と等しく機会の均等を確保するための必要かつ適当な変更及び調整である合理的配慮を提供しない場合も含むものであるべきである。

【差別禁止法制の整備】

 また、差別を実効的に禁止するには、障害に基づくあらゆる分野の差別を禁止し、権利の侵害から救済を図る機関を規定する法律が別途制定されなければならないが、この差別禁止法の制定が基本法の抜本改正ののちに予定されているため、まずは、基本法において差別禁止法制の整備に向けた規定を置くべきである。

【複合差別に対する認識と対応】

 さらに、障害に基づく差別の問題において、被害を受けた人自身が相談したり、権利主張すること自体が困難であり、社会的に潜在化していることを考慮すると、啓発、相談、研修などの分野において、差別の問題が考慮されるべき重要事項であることの確認がなされるべきであり、なかでも、障害のある女性や子ども、重度障害のある人が複合的又は加重的な差別を受けているという視点、及びその状況に配慮した対応が、基本法の定めるあらゆる施策分野に提供されなければならない。

【実態の調査と事例収集】

 これらのためにも、国は、障害に基づく差別に該当するおそれのある事例の収集、整理、及び提供を行い、実態を明らかにしたうえで障害に基づく差別を防止するための普及啓発を図るべきである。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 法の下の平等のもとで障害に基づく差別が禁止されること。

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 御意見を踏まえ、どのような規定の仕方がありうるか検討してまいりたい。

(内閣府)

  • 差別の定義において、直接差別のみならず、間接差別も含むものとし、さらに合理的配慮を提供しない場合も差別であることを明らかにすること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 合的配慮を提供しない場合も差別である」とあるが,障害者権利条約においては,差別には「合理的配慮の否定(第2条)」を含むと規定されている。したがって,障害者権利条約の規定を正確に反映させるのであれば,「合理的配慮を提供しない場合」を「合理的配慮の否定」に修正することが適当である。

(外務省)

  • 国民に義務を課す規定となることから、「直接差別」、「間接差別」、「合理的配慮」、「複合差別」といった語の意味を明らかにするとともに、国民に求める差別の禁止とはどのようなものかを明らかにする必要がある。
     また、合理的配慮について、障害者権利条約において「均衡を失した又は過度の負担を課さない」とされていることも踏まえる必要がある。

(厚生労働省)

  • 障害者権利条約を踏まえて、合理的配慮の定義を設けること。

以上の2点について

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 御意見を踏まえ、どのような規定の仕方がありうるか検討してまいりたい。なお、直接差別、間接差別及び合理的配慮の具体的な定義や内容については、今後差別禁止部会において検討していただく必要がある。

  • 「合的配慮を提供しない場合も差別である」とあるが,障害者権利条約においては,差別には「合理的配慮の否定(第2条)」を含むと規定されている。したがって,障害者権利条約の規定を正確に反映させるのであれば,「合理的配慮を提供しない場合」を「合理的配慮の否定」に修正することが適当である。
  • 障害に基づく差別を禁止する法制度を整備すること。

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 現行法第10 条においては、障害者基本法の目的を達成するために必要な法制上の措置を講じなければならないこととされており、これに基づき、推進会議や差別禁止部会における検討を踏まえつつ差別禁止法制を整備することとなる。

(内閣府)

  • 障害者にかかる啓発、相談、研修等の分野において、差別問題、特に複合差別についての視点を踏まえて施策が行われること。
  • 差別の実態を明らかにし、その防止に向けた理解の普及啓発を図るため、国は事例の収集、整理、及び提供を行うこと。

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 御意見を踏まえ、どのような規定の仕方がありうるか検討してまいりたい。

(内閣府)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

5)障害のある女性

(推進会議の認識)

 日本が女性差別撤廃条約を批准して以降、同条約の国内実施においては、障害のある女性についても、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のいかなる分野においても、性の違いに基づくあらゆる差別を受けることなく、すべての人権及び基本的自由を享有することが求められている。
 障害者は、障害のない人と比較し、日常生活又は社会生活上多くの社会的障壁に囲まれ、様々な領域で不利益な状態を強いられている。
 なかでも、障害のある女性は、性の違いに基づく差別、障害に基づく差別、という二重の差別をうけている。
 例えば障害のある女性の場合、母子生活支援施設の入所者に占める障害のある母親は16.4%(4,092人の内671人、平成18年)となっている。(*)2これは、総人口に占める全国の障害者の割合(6%前後)と比較した場合、極めて高い数字となっている。
 このように障害のある女性は、社会で複合差別を受けており、これまでの障害者施策には、障害者の中でもっとも差別を受けるリスクの高い女性が置かれている差別的実態を問題にする視点が欠落していたと言わざるを得ない。
 さらに、かつて国際会議で採択された指針(「びわこミレニアム・フレームワーク」及び、「びわこプラスファイブ(2007)」)において障害のある女性のエンパワーメントが採択されたにもかかわらず、効果的な施策はおこなわれなかったという反省もある。

 以上の事実を深刻に受け止め、基本法には、男女共同参画社会基本法の趣旨も踏まえ、次の観点を盛り込むべきである。

  • 日本が女子差別撤廃条約を批准したことを政策に反映すべく、国及び地方公共団体は、障害のある女性が、性の違いに基づくあらゆる区別、排除又は制限を受けることなく、すべての人権及び基本的自由を享受する権利を行使できるようあらゆる施策を講ずること。
  • 国及び地方公共団体は、障害のある女性が、家庭の内外で暴力の犠牲になりやすい存在であること、すべての女性が当然享受できるはずの性と生殖の権利を認められなかった過去の歴史等、不当に取り扱われてきた事実を受け止め、障害のある女性の性と生殖に係る人権が、侵されないよう、最大限の注意をはらわなければならないこと。
  • 国及び地方公共団体は、障害のある女性が複合的な差別を受けていることを施策上の重要課題に位置付け、障害のある女性の完全な発展、地位の向上、及びエンパワーメントの確保に必要な措置を講ずること。
  • 基本的施策において示される各領域の施策は、障害のある女性の権利を確保することを考え方の基本として踏まえつつ実施されること。

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 御意見を障害者基本法にどのように反映させていくことができるか検討してまいりたい。

(内閣府)

2 男女共同参画会議 監視・影響調査専門調査会資料「新たな経済社会の潮流の中で生活困難を抱える男女について」(平成21 年11 月26 日)図表46。元データ:社会福祉法人全国社会福祉協議会 全国母子生活支援協議会「平成18年度全国母子生活支援施設実態調査」(平成19年3月)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

6)国及び地方公共団体の責務

(推進会議の認識)

【障害者の権利を保障する責務】

 国及び地方公共団体は、あらゆる人権の享有主体であるすべての障害者が地域社会で自立した生活を営むことができるよう、その権利を保障する責務を有すると同時に、身体障害や知的障害が対象となる障害者雇用義務や地方自治体の医療費助成制度などが精神障害には適用されないなど障害の種別・程度により福祉・医療施策に制度的格差がある現状を改める責務を有している。障害者基本法の改正に当たり、この点を明らかにするべきである。

【差別を禁止する措置を取る責務】

 国及び地方公共団体は、障害に基づくあらゆる差別を禁止するための措置を講ずる責務を有している。また、国及び地方公共団体は障害者への合理的配慮義務を有すると同時に、事業者、企業、学校設置者など合理的配慮を行うべき者に対し、財政的、技術的な支援を行う責務を有している。

【インクルーシブ社会の構築】

 国及び地方公共団体はあらゆる差別や偏見をなくし、障害者の置かれている状況についての国民の理解を広げ、障害のある人が障害のない者と平等に地域社会で自立した生活を営むことができるインクルーシブな社会を構築する責務を有している。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 国及び地方公共団体は、障害者が地域社会で自立した生活を営む権利を保障し、並びに障害者間の制度的格差をなくすための措置を講ずる責務を有すること。

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 我が国においては、憲法で基本的人権が保障され、その下でこれを具体化する権利義務が個別法に規定されている。
 これを前提として、基本法において「地域社会で生活する権利」という抽象的な規定の仕方が適切かどうか、また障害者の地域生活については現在総合福祉部会で検討が進められているところであるので、場合によっては、基本法において障害者の地域生活を実現するための施策の方向性を規定し、具体的な権利については総合福祉法(仮称)の中で規定することが望ましいか等の観点も含め、現行国内法制との整合性にも配慮しつつ、慎重に検討する必要がある。

(内閣府)

  • 「障害者間の制度的格差をなくすための措置」について
    ⇒ 総則「1)目的」の①で示したとおり

(厚生労働省)

  • 国及び地方公共団体は、障害に基づくあらゆる差別を禁止するための措置を講ずる責務を有すること。

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 御意見を踏まえ、どのような規定の仕方がありうるか検討してまいりたい。

(内閣府)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

7)国民の理解・責務

(推進会議の認識)

【障害者を含むすべての人の責務】

 「国民は、社会連帯の理念に基づき、障害者の福祉の増進に協力するよう努めなければならない」との現行規定は、国民から障害者を切り分け、障害者を一方的に保護するべき対象とみなしているとの誤解を与えかねない。そこで、障害者も障害のない人も対等であるという前提のもとに相互に協力するという観点に立って、現行の規定は改められるべきである。

【具体的な意識啓発】

 インクルーシブな社会の構築には、障害者の人権や障害そのものについて、障害者を含むすべての人の理解を得る必要があるが、そのためには、障害及び障害者の理解を促進する一般的規定を設けるだけではなく、社会全体の意識向上に資する具体的な取組を規定するべきである。そのために、例えば、障害者が社会参加することによって、社会的役割を果たしている好事例を収集し、社会へ発信することで障害者の権利促進を図ることも必要である。

【事業者等の責務】

 特に、雇用主である事業者、学校の設置者等が障害者の権利を理解、促進する責務があることを明らかにすることが必要である。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 障害者を含むすべての人が、障害と障害者に関する理解の上で、相互に権利を尊重する責務があることを確認するとともに、障害者は保護されるべき対象であるとの誤解を受けかねない「障害者の福祉の増進に協力するよう」との表現は避けること。

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 御意見を踏まえ、どのような規定の仕方がありうるか検討してまいりたい。

(内閣府)

  • 「障害者の福祉の増進に協力するよう」について
    ⇒ 総則「1)目的」の②で示したとおり

(厚生労働省)

  • 事業者等の責務を明らかにすること。

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 国民の責務とは別に、事業者特有の責務として総則に規定すべものがあるか、また、各則における事業者の責務に関する規定との整合性といった観点も含め、どのような規定の仕方がありうるか検討してまいりたい。なお、事業者の具体的な責務については、個別分野(雇用、公共的施設のバリアフリー、情報利用のバリアフリー)において具体的に規定されているところ。
 また、合理的配慮の実施主体としての事業者の責務の具体的内容については、今後差別禁止部会において検討していただく必要がある。

(内閣府)

  • 「事業者等の責務を明らかにする」とあるが、具体的に、事業者等が何 を行う責務があるのかを明らかにしておく必要がある。
  • 総則「4)差別の禁止」で示したとおり、障害者権利条約において、合 理的配慮について「均衡を失した又は過度の負担を課さない」とされていることも踏まえる必要がある。

(厚生労働省)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

8)国際的協調

(推進会議の認識)

 昭和56(1981)年の「国際障害者年」、昭和57(1982)年の「障害者に関する世界行動計画」の実施を求めた「国連障害者の十年」(1983-1992)、第1次・第2 次アジア太平洋障害者の十年(1993-2002、2003-2012)といった国際的な流れのもと、「完全参加と平等」「ノーマライゼーション」といった国際的理念を取り入れ、国内に普及さるよう取り組みを行ってきた。
 このような経緯を踏まえ、基本法において、今後も、障害者の権利の確保、尊厳の尊重を目的とする障害者権利条約を生み出した国際的な潮流を踏まえ、国際的協調のもとで国内施策を進めることを確認すべきである。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 障害者の尊厳に資する観点から国際的協調のもとで障害者施策が進められること。

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 御意見を踏まえ、どのような規定の仕方がありうるか検討してまいりたい。

(内閣府)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

9)障害者週間

(推進会議の認識)

 障害者週間を設けることには大きな意義があり、今後とも精力的に展開すべきであるが、現状の障害者週間に関しては、以下の点について考慮すべきである。

  • 「障害者の福祉」という現行規定の表現は、障害者の権利条約を踏まえて、再考すべきであり、例えば、「障害者の権利と尊厳の確保及び促進」という言葉に変えるべきである。
  • 「積極的に参加する意欲を高める」という現行規定の表現は、個人の意欲の無さに問題があるかのような書き振りであるので、自由意思であらゆる分野の活動に参加できる環境の促進という観点から表現を見直すべきである。
  • 現行の障害者週間は国民への周知が少ない。効果的に事業を展開して、障害(者)をより多くの国民が理解する機会とすべきである。例えば、障害者の文化あるいはスポーツの分野について、さらに力を入れるべきである。
  • 12月3日から9日までが現行の障害者週間であるが、障害者の権利条約が国連で採択された12月13日を障害者週間に含めて、同条約についての啓発という視点を取り入れたものにすべきであるとの意見もある。他方、12月3日は国連が定めた国際障害者デーであり、国際協調を強調するのであれば、12月3日を障害者の日として、その日に啓発を集中すべきという意見もある。ただ、障害者の日であった12月9日は、国連で障害者の権利宣言が採択された日であることもあり、これらを踏まえ、今後検討すべき課題である。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 障害者週間の目的を表わすにあたって「障害者の福祉」や「積極的に参加する意欲を高める」といった表現をさけ、社会の在り方の問題を踏まえて、より一層の社会参加を図るといったことが理解できるような表現とすること。

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 御意見を踏まえ、どのような規定の仕方がありうるか検討してまいりたい。

(内閣府)

  • 「「障害者の福祉」といった表現を避け」について
    ⇒ 総則「1)目的」の③で示したとおり

(厚生労働省)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

10)施策の基本方針

(推進会議の認識)

 施策の基本方針を考える前提として、「第一次意見」の基本的考え方として示された。
 ①障害者が「権利の主体」としての社会の一員であること
 ②「差別」のない社会づくり
 ③「社会モデル」的観点からの新たな位置付け
 ④「地域生活」を可能とする支援
 ⑤「共生社会」の実現
 を確認する必要があるとともに、改正が予定されている新たな「目的」や「基本的理念」等との整合性を確保することが重要である。とくに「社会モデル」的観点から新たな指針が示されるべきであり、障害のある女性などに対する複合的差別による格差や障害種別による制度的な格差に着目し、障害者の生活実態を踏まえること、さらに「地域生活」を可能とする支援に向けた施策であることが、方針の基本的な要素として組み込まれるべきである。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 障害者に関する施策は、障害者の自立及び社会参加を困難にする社会的な要因を除去する観点から、障害者の性別、年齢、障害の状態及び生活の実態に応じて、関係機関の効果的な連携のもとで、総合的に策定され、実施されること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 「「社会モデル」的視点から何が必要な支援であるかの判断がなされるべき」とあるが、具体的に、関係者やすべての国民が、どのような判断をすべきなのかが分かるようにするべきである。
  • 「制度的な格差」について
    ⇒ 総則「1)目的」の②で示したとおり
  • 「切れ目のない支援」とあるが、すべての障害者が、24時間にわたって連続して切れ目のない支援を受けている訳ではない。例えば1日のある時間帯だけ支援を受ける、あるいは1週間のうちある日だけ支援を受ける障害者も多い。したがって、「切れ目のない支援」という語については、誤解を生まないような表現に改めるべきである。

(厚生労働省)

  • 障害者に関する施策は、障害の特性や状態に必要な配慮をしながらも障害者の選択した生活形態や環境において必要な支援が受けられるよう「社会モデル」的視点の判断がなされるべきである。
  • したがって、障害の種別・程度の違いにより、支援が受けられないなどの制度的な格差が生ずることのないよう実施される必要があるとともに、障害者の選択と自己決定(支援された自己決定を含む)が十分に尊重され、障害者が地域において、制度の谷間を生むことがなく切れ目のない支援を受けながら自立した地域生活を営む権利が保障されるものでなければならないこと。
  • 障害者に関する施策は、その施策の策定と実施のプロセスに可能な限り障害者その他の関係者が参画して意見を述べ、当該意見が尊重されること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 「障害者の意見の尊重」とあるが、例えば、障害者の方と障害のない方の利害が対立するような場合に、障害者の意見が一方的に尊重されると基本法たる法に規定することは適当ではない。「可能な限り尊重」や「尊重されるよう配慮」のような表現の方が国民の理解を得やすいのではないか。

(厚生労働省)

  • 障害者に関する施策は、障害者の生活実態に関する調査を一般国民と比較可能な形で行い、これを踏まえて策定され、実施されること。

以上すべての点について、

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 御意見を踏まえ、どのような規定の仕方がありうるか検討してまいりたい。

(内閣府)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

11)その他

(推進会議の認識)

【障害者基本計画等】

 国及び地方公共団体は、障害者に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより障害者基本法の目的を達成するため、障害者及び関係者の参画を得て、障害者のための施策に関する基本的な計画を策定するべきである。

【法制上の措置等】

 国は、障害者基本法の目的を達成するために、差別禁止法制を含む必要な法制上、及び財政上の措置を講ずるべきである。

【年次報告】

 政府は、障害者の置かれた状況、及び障害者のために講じた施策の概況に関する報告書を、毎年、国会に提出するべきである。

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 御意見を踏まえ、どのような規定の仕方がありうるか検討してまいりたい。

(内閣府)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

3 基本的施策関係

1)地域生活

(推進会議の認識)

 基本理念で述べたとおり、基本法において地域社会で生活する権利を確認し、その実現に向けた財政上の措置も含めた施策の具体化のための措置を取るべき旨を規定することが求められるが、権利の実現に向けた地域生活支援について、以下の諸点が基本事項として議論された。

【支援の対象】

 支援を必要とする障害者に制度の谷間を作らないようにすべきである。具体的には、障害者手帳の有無にかかわらず、対象として明確でなかった発達障害、高次脳機能障害、難病やてんかん等により支援の必要な状態にある人、乳幼児の段階でいまだ障害が確定しえないが支援の必要な状態にある子どもなども支援の対象から除外されたり、申請の段階で締め出されたりすることがないようにすべきである。

【家族支援】

 障害者がその生活を施設や病院から地域へ移行しようとしても、地域で生活する上での社会資源が不足していることや精神障害者の保護者制度などの制度の存在によって、家族に依存せざるをえず、その家族の大きな負担が地域移行を困難ならしめている。このような現状を改めるには、家族や家庭に対する支援が必要である。

【支給決定の仕組み】

 必要とする支援の内容と程度の判断は、ADL(日常生活動作)等を中心とした医学モデルに基づく障害程度区分に法定のサービスを連動させるというシステムによって、本来必要な障害の種類や程度に応じた支援が制限または限定されることなく、障害者の選択した生活形態や環境において「社会モデル」的視点から何が必要な支援であるかの判断がなされるべきであり、本人の意思を前提とした協議と調整のプロセスが用意されるべきである。

【支援の内容とあり方】

 障害者に対する支援は、自立に向けた支援である以上、一般就労や教育の場面など、社会一般で通常行われている社会生活全般にわたって支援が提供されるべきであり、サービスメニューもそれに即したものであることが求められるとともに、社会参加や日常生活の場面が切り替わっても切れ目のない形で提供されることが求められる。
 たとえば、高齢障害者が65歳で自立支援法から介護保険へ移行する際に、従来受けていた支援のレベルの低下を招かないような制度の改善が必要である。また、就労が困難な障害者に対しては、創作・趣味活動、自立訓練、生産活動、居場所の提供などを提供する場が整備される必要がある。

【地域移行】

 いかなる障害者も通常の生活形態が保障されるべきであり、家庭から分離され、見も知らぬ他人との共同生活を強いられ、地域社会における社会的体験の機会を奪われるいわれはない。障害者に対する支援は、本来、通常の生活形態を前提として組み立てられるべきである。
 しかしながら、地域社会で生活する選択肢が用意されないまま、今も多くの障害者が施設や病院で長年にわたって生活している。
 したがって、施設や病院から地域への移行が進められなければならないが、地域移行に当たっては、介助や見守り、医療サービスなど、施設や病院の中で行われている諸機能を通常の生活形態、若しくは、よりそれに近い少人数のグループホームやケアホームでの生活を前提とした形に過渡的に転換し、滞在型(常時支援型)の24時間介助を含む地域移行のための選択肢を用意しなければならない。
 また、地域移行に当たっては、国は一定の年次目標を掲げて取り組むべきであり、その年次目標の実現のため、受け入れ先となる住居(グループホーム、ケアホーム、公営住宅、民間住宅の借り上げ等)の計画的整備が必要である。

【利用者負担】

 支援を受ける際の費用に関して、応益負担の原則は廃止し、仮に負担が求められる場合であっても本人の所得を基礎とした応能負担を原則とするべきである。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 障害者の生活を支える支援は、障害者手帳の有無にかかわらず、支援を必要とするあらゆる障害者に提供されること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 「障害者の生活を支える支援」とは、具体的にどのような分野における支援であるのかを明らかにしておく必要がある。
  • 「障害者手帳の有無にかかわらず、支援を必要とするあらゆる障害者」については、総則「1)目的」の①で示したとおりである。

(厚生労働省)

  • 支援の支給決定に当たっては、本人の選択しようとする生活に困難をもたらす障壁を除去するために必要な支援を本人との協議調整を経る仕組みとすること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 「支援の支給決定に当たっては、本人の選択しようとする生活に困難をもたらす障壁を除去するために必要な支援を本人との協議調整を経る仕組みとすること」については、
    • 現在総合福祉部会で支給決定の仕組みにつき議論されており、今後さらに、障害者総合福祉法案の検討過程において検討されるべきものであること
    • そもそも協議調整の具体的な仕組み(支給決定の公平性、透明性及び客観性を担保する仕組みなど)について課題が多く、実際に実現可能かどうか検討される必要があることから、現時点で「協議調整を経る仕組みとする」という一定の結論を示すべきではない。

(厚生労働省)

  • 支援は、従来の福祉施策の分野にとどまらず、学校、職場、その他社会参加の分野においても適切な形で、しかも、切れ目のない形で提供されること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 「切れ目のない形で提供されること」については、総則「10)施策の基本方針」の③で示したとおりである。
  • 誰がどのような「支援」を行うのかを明らかにしておく必要がある。
    また、「支援」には合理的配慮も含まれるかどうかを明らかにしておく必要がある。

(厚生労働省)

  • 地域移行に向けて、通常の生活形態である自宅や賃貸住宅における生活支援や24時間介助、過渡的にはグループホームやケアホームなどの地域社会における生活を可能とする支援体制が確保されること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 「24時間介助」とあるが、支援の内容については、障害の状態や生活環境などを踏まえて個々に必要性が判断されるべきものであり、「必要に応じた24時間の介助」のような表現とすべきである。
  • 「過渡的には、グループホームやケアホーム」とあるが、グループホームやケアホームは障害のある方の多様な住まいの場の一つの形態であり、必ずしも過渡的なものと言えないのではないか。過渡的なものであるかどうかについては、高齢者福祉等の他の制度との関係も含め、十分に議論される必要がある。

(厚生労働省)

  • 障害者の地域における生活を実現するために家族支援を行うこと
  • 障害者の地域移行を計画的に進めることとし、そのための住居の整備を計画的に推進する。

(実施・検討に当たっての留意点)

①平成3年以降に新たに整備される公営住宅については、整備基準において、バリアフリー対応構造を標準仕様としている。

②また、地方公共団体が実施する公営住宅の整備事業やストック改善事業について、国は社会資本整備総合交付金による支援を行っているところ。

上記のとおり、本件については既に必要な措置を講じているところであり、引き続き、その取組みや支援を実施する。

(実施時期・検討期間)

交付金事業については、平成17 年度から実施(平成17 年度~21 年度:地域住宅交付金、平成22 年度:社会資本整備総合交付金)。平成23 年度予算において概算要求を行っているところ。

※平成16年以前においても、補助金事業として公営住宅の整備事業等を支援。

(国土交通省)

  • 利用者負担に関して、仮に負担が求められる場合でも本人の所得を基礎とした応能負担を原則とすること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 総合福祉部会で利用者負担の仕組みにつき議論することとされており、今後さらに、障害者総合福祉法案の検討過程において検討されるべきものであることから、現時点で「本人の所得を基礎とした応能負担を原則とする」という一定の結論を示べきではない。
  • 「本人の所得を基礎とした応能負担」とあるが、他の社会保障制度との関係や民法の扶助義務との関係、障害児についても保護者ではなく障害児本人の所得を基礎とすることの問題を踏まえれば、「本人の所得」のみを勘案する仕組みとすることは困難である。
  • 本年6月に閣議決定した財政運営戦略では「ペイアズユーゴー」原則が定められており、具体的な制度の実施に当たっては財源確保の観点も併せて検討しなければならない点に留意が必要である。

(厚生労働省)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

2)労働及び雇用

(推進会議の認識)

【労働施策と福祉施策の一体的展開による労働の権利の保障】

 一般就労において、障害者の就業率や賃金などの労働条件は、障害のない者と比べかなり劣悪である。一方、福祉的就労においては労働の実態があるにもかかわらず、多くの障害者が一般労働法規の対象外とされ、通常の労働条件を確保する展望もない状況に置かれている。こうした現状を改善するためには、現在は分立している労働施策と福祉施策を一体的に展開できる仕組みを創設し、必要な支援によって労働能力が十分に発揮され、働くことを希望する障害者が可能な限り働く場から排除されることなく一般労働法規の対象となるようにすべきである。これにより、労働者としての権利が保障され、公正かつ良好な労働条件、安全かつ健康的な作業条件、人権侵害を含む苦情に対する救済制度の下で、障害者が安心して働くことができるようにする必要がある。併せて、生計を維持するための賃金補填などによって所得が保障されるよう、適切な措置が講じられるべきである。

【合理的配慮等の提供による雇用及び労働の質の向上】

 障害の種類、程度にかかわらず、働くことを希望するすべての障害者が差別されることなく障害のない者と平等に就職、職の維持や昇進、復職などができるよう、職場において事業所から適切な合理的配慮が行われる必要がある。
 また、労働能力を向上させるために必要な支援(職業生活を維持、向上するための人的、物的及び経済的支援や生活支援、通勤を含む移動支援、コミュニケーション支援を含む。)が行われることが必要であり、これにより、障害者の雇用及び労働における処遇や技能の向上を図るべきである。

【雇用義務の対象拡大と職業的困難さに基づく障害程度の認定】

 現在は、障害者雇用義務の対象は身体障害者と知的障害者に限定されているが、その対象を、精神障害者を含むあらゆる種類の障害者に拡大するべきである。また、障害者雇用にかかる障害程度の認定は、機能障害ではなく職業的困難さに基づいて行うべきである。

【一般の職業紹介サービス等の利用】

 障害者が障害のない者と平等に労働及び雇用に参加できるようニーズに応じた適切な職業紹介サービス等の提供を確保するには、限られた特定の機関で提供される障害者を対象とした特別な職業紹介サービス等だけではなく、身近にある一般市民を対象とした通常の職業紹介サービス等が障害者にとってインクルーシブでアクセシブルでなければならない。また、生涯にわたりキャリア形成の機会が確保されなければならない。

【多様な就業の場の創出及び必要な仕事の確保】

 障害者が自由に選択し、又は納得できる労働につけるよう、企業や公共機関での雇用に加え、自営・起業、社会的事業所や協同組合での就業、並びに在宅就労等を含む、多様な就業の場が創出されると共に、そこで就業する障害者が生計を立てうる適切な仕事を安定確保するための仕組みが整備されなければならない。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 労働施策と福祉施策を一体的に展開することにより、可能なかぎり障害者が障害のない者と平等に一般労働法規の適用が受けられるようにするとともに、生計の維持可能な賃金の確保などのために必要な支援を受けられるようにすること。

(実施・検討に当たっての留意点)

(別紙3-1参照)

(厚生労働省)

  • 働く場での合理的配慮及び必要な支援として、障害に応じた職場環境と 労働条件の整備、ジョブコーチ等の人的支援の配置、コミュニケーション支援などの支援を受けられるようにすることにより、障害者が障害のない者と平等に雇用され、働くことができるようにすること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 別紙3-2(1)~(3)及び3.基本的施策関係の2)に加え、「合理的配慮及び必要な支援として、障害に応じた職場環境と労働条件の整備、ジョブコーチ等の人的支援の配置、コミュニケーション支援などの支援」について、何が合理的配慮であり、何が必要な支援に該当するのか、また、それぞれの言葉の具体的な内容やその実施手段、実施主体などについて、実現可能性も踏まえ、具体的に明らかにしておく必要がある。
  • 「障害者が障害のない者と平等に雇用され」る状態は、どのような状態であるのかを明らかにしておく必要がある。
    誰が「平等に雇用され、働くことができる環境、条件」を整備し、またそのような環境や条件はどのようなものであるのかを明らかにしておく必要がある。

(厚生労働省)

  • 障害者の休職、昇進及び復職に関し必要な措置を講ずること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 「障害者の休職、昇進及び復職に関し必要な措置」とはどのような措置であり、誰が講じるものなのかを明らかにしておく必要がある。
  • 総則「7)国民の理解・責務」の③で示したとおり、「均衡を失した又は過度の負担を課さない」とされていることも踏まえる必要がある。

(厚生労働省)

  • 障害者雇用義務の対象を知的障害、身体障害から、他のあらゆる障害に拡大すると共に、職業上の困難さに着目した障害認定を行うために必要な措置を講じること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 「あらゆる障害」の定義が明らかではないが、雇用義務の対象範囲については、民間企業に義務を課すものであり、法的安定性、公平性が確保される必要があることに留意が必要である。
  • また、「職業上の困難さに着目した障害認定」の定義及び具体的方法が明らかでないが、あらゆる業種・職種が存在する中で、雇用義務の対象となる範囲を決定する認定であることから、法的安定性、公平性が確保される必要があることに留意が必要である。

(厚生労働省)

  • 障害者が障害のない者と平等に、職業紹介等のサービスを利用できるようにすること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 【一般の職業紹介サービス等の利用】における記載を想定していると思われるが、当該項目に記載されている「生涯学習を含めたキャリア形成支援」の趣旨を明らかにする必要がある。
  • 現在も、障害者が一般の方と同様の職業紹介サービス等を受けることは妨げられていないため、具体的にどのような点において、平等に職業紹介サービス等を利用できるようにすべきかを明らかにする必要がある。

(厚生労働省)

  • 障害者に対し、障害のない者と平等に多様な就業の場が整備され、また生計を立てうる適切な仕事が安定的に確保されること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 「障害のない者と平等に多様な就業の場が整備」とは具体的にどのような措置であり、誰がその措置を講じるのかを明らかにしておく必要がある。
  • 「生計を立てうる適切な仕事」とは具体的にどのような仕事を指すのか、また、「安定的に確保される」とは、どのような状態を指し、そのためにどのような措置を講じるのかを明らかにしておく必要がある。

(厚生労働省)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

3)教育

(推進会議の認識)

 日本における障害者に対する公教育は特別支援教育によって行われており、法制度として就学先決定にあたっては、基準に該当する障害のある子どもは特別支援学校に就学する原則分離別学の仕組みになっている。障害者権利条約は、障害のある子どもとない子どもが共に教育を受けるインクルーシブ教育制度の構築を求めており、こうした観点から、現状を改善するために以下を実施することが必要である。

【インクルーシブな教育制度の構築】

 人間の多様性を尊重しつつ、精神的・身体的な能力を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加するとの目的の下、障害者が差別を受けることなく、障害のない人と共に生活し、共に学ぶ教育(インクルーシブ教育)を実現することは、互いの多様性を認め合い、尊重する土壌を形成し、障害者のみならず、障害のない人にとっても生きる力を育むことにつながる。
 また、義務教育だけでなく、就学前の教育、高校や大学における教育、就労に向けた職業教育や能力開発のための技術教育、生涯教育等についても、教育の機会均等が保障されなければならない。

【地域における就学と合理的配慮の確保】

 障害のある子どもは、障害のない子どもと同様に地域の小・中学校に就学し、かつ通常の学級に在籍することを原則とし、本人・保護者が望む場合に加え、ろう者、難聴者又は盲ろう者にとって最も適切な言語やコミュニケーションの環境を必要とする場合には、特別支援学校に就学し、又は特別支援学級に在籍することができる制度へと改めるべきである。
 したがって、「障害の状態に応じ、十分な教育が受けられるようにする」という現行の規定は、障害の種類と程度によって就学先が決定されることを許容し、インクルーシブな教育制度と矛盾する恐れがあるため改められるべきである。
 障害のある子どもが小・中学校等(とりわけ通常の学級)に就学した場合に、合理的配慮が提供されなければならない。当該学校の設置者は、追加的な教職員配置や施設・設備の整備等の条件整備を行うために計画的に必要な措置を講ずるべきである。

【学校教育における多様なコミュニケーション手段の保障】

 手話・点字・補聴援助・要約筆記等による教育、発達障害、知的障害等の子どもの特性に応じた教育を実現するため、ろう者を含む手話に通じた教員や視覚障害者を含む点字に通じた教員、手話通訳者、要約筆記者等の確保や、教員の専門性向上に必要な措置を講ずるべきである。
 さらに、教育現場において、一人ひとりのニーズに基づき、あらゆる障害の特性に応じたコミュニケーション手段を確保するため、教育方法の工夫・改善等必要な措置を講ずるべきである。

【交流及び共同学習】

 交流及び共同学習には、様々な形態がある。例えば、特別支援学校と小・中学校等の間で行う学校間交流、特別支援学級と通常学級との学校内での交流、居住地の学校で行う居住地校交流、地域の人々との地域交流等があり、それぞれ、直接一緒に活動する直接交流と、手紙やビデオテープの交換等を介して行う間接交流がある。
 しかし、学校間交流は年に数回であることが多く、直接交流が可能となっても移動の際に親が付き添いを求められるなど等、多くの課題がある。交流及び共同学習は分けられた教育環境が前提となるため、原則分離の教育のままでは障害者権利条約で規定しているインクルーシブ教育は実現しない。地域社会の一員となる教育の在り方という観点から見直されるべきである。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 障害のある子どもは、他の子どもと等しく教育を受ける権利を有し、その権利を実現するためにインクルーシブな教育制度を構築すること。

(実施・検討に当たっての留意点)

(別紙2-1参照)

(文部科学省)

  • 「障害の状態に応じ、十分な教育が受けられるようにする」という現行の規定は、障害の種類と程度によって就学先が決定されることを許容し、インクルーシブな教育制度と矛盾する恐れがあるため表現を改めること。

(実施・検討に当たっての留意点)

(別紙2-1参照)

(文部科学省)

  • 障害のある子どもとない子どもが、同じ場で共に学ぶことができることを原則とするとともに、本人・保護者が望む場合に加えて、最も適切な言語やコミュニケーションを習得するために特別支援学校・学級を選択できるようにすること。

(実施・検討に当たっての留意点)

(別紙2-1参照)

(文部科学省)

  • 本人・保護者の意に反して、地域社会での学びの機会を奪われることのないようにすること。

(実施・検討に当たっての留意点)

(別紙2-1参照)

(文部科学省)

  • 学校設置者は、当該障害者に必要な合理的配慮を提供することはもとより、追加的な教職員の配置や施設・設備の整備等の条件整備を行うために計画的に必要な措置を講ずること。

(実施・検討に当たっての留意点)

(別紙2-1参照)

(文部科学省)

  • インクルーシブな教育の原則を踏まえ、子ども同士のつながりを障害のない子どもと同程度にするように交流及び共同学習の実施方法を見直すこと。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 「インクルーシブな教育の原則を踏まえ、子ども同士のつながりを障害のない子どもと同程度にするように交流及び共同学習の実施方法を見直すこと。」の具体的内容が不明である。
  • 交流及び共同学習は、障害のある子どもと障害のない子どもが相互理解を深めることを目的としている。中央教育審議会においても、交流及び共同学習を進める必要があるという方向で議論が進められており、このような議論も踏まえつつ、地域や学校の実態に応じて実施することが必要であると考える。

(文部科学省)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

4)健康、医療

(推進会議の認識)

 障害者権利条約の考え方を踏まえ、すべての障害者が可能な限り最高水準の健康を享受し、その尊厳にふさわしい生活を営むことができるよう、障害に基づく差別なしに必要な医療が自らの選択によって受けられるようにすべきであり、医療提供に当たっては、人権の尊重が徹底されなければならない。
 こうした医療の提供は、地域生活を支援する必要なサービスの提供と相互に連携してなされなければならない。
 同時に、先端医療分野で障害原因の軽減や根本治癒が再生医療として可能となりつつある現状を踏まえ、この分野においても希少疾患として障害者が取り残されることがないように、必要な措置が実施されるべきである。

【地域生活を可能とする医療の提供】

 障害者が安心して地域社会で生活を営むことができるためには、まずは、障害に基づく医療拒否等の差別が禁止されなければならない。
 また、医療及び医療的ケアの必要性が高い重症心身障害者等が地域社会での日常生活を営むためには、医療及び医療的ケア(たん吸引、経管栄養等)が日常生活、社会生活の場において円滑に提供されなければならず、そのための体制確保が必須である。
 さらには、日常生活における医療的ケアが、介助者等にも開放されるなど、地域生活のために必要な行為として制度的に保障されるべきである。

【難病、その他希少疾患等に対する適切なサービス提供及び調査研究の推進】

 難病、その他希少疾患等(以下、「難病等」という。)については、本人、家族や周囲の者はもとより、医療関係者においても適切かつ十分な理解がなされておらず、これらの難病等に対して早期になすべき対応に遅れが出たり、適切な医療が提供されなかったり、地域社会で生活するうえで必要となる生活支援のためのサービスがない場合もある。
 そこで、これらの難病等により支援の必要な状態にある人に対して、医療面での対応として、身近なところで専門性のある医療サービスを受けることができる環境整備を進めるとともに、地域社会で生活するうえでの困難に対して、その生活を支援するためのサービスが提供されなければならない。
 さらに、障害の原因となるこれらの難病等の予防や治療に関する調査及び研究を推進することが必要である。

【人権尊重の観点からの精神医療の体制整備】

 精神医療のニーズを十分に精査し、必要最低限かつ適正な数の病床数への削減を行い、急性期・重症患者等への医療の充実を図るとともに、入院を要しない精神障害者への地域での医療提供体制を確保する。その際には、人権への理解を含め高い資質を備えた者による医療サービス提供体制が確保されなければならない。
 入院及び隔離拘束の際の保護者に替わる公的機関の責任が明記されなければならない。
 さらに、苦情処理、権利擁護などを行う第三者機関による新たな監視システムが必要である。
 今後、これまでの施設収容に偏った施策を転換し、人権擁護に基づいた地域に根差した精神医療体制を構築すべきである。また、精神障害者及び家族に対して、病状及び治療方針などの情報が十分に提供されなければならない。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 十分な説明を受けた上で、自由な意思に基づく同意・選択によって障害に基づく差別なしに必要な医療が受けられること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 医療法及び医師法において、次のとおり規定されている。
    • 医療法上、医師等の医療の担い手は、医療を提供するにあたり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならないとされている。
      (※医療法(昭和23年法律第205号)第1条の4第2項に規定)
    • また、医師法上、医師は、正当な理由がなければ、患者からの診療の求めを拒んではならないこととされている。
      (※医師法(昭和23年法律第201号)第19条第1項に規定)

(厚生労働省)

  • 医療及び医療的ケアの必要性が高い重症心身障害者等が地域社会で自立した生活を営むことができるよう、日常生活、社会生活の場において訪問医療等の必要な医療や生活支援サービスが提供されること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 「医療的ケア」、「訪問医療等」、「生活支援サービス」については、「全体について」の(1)で示したとおり、言葉の意味を明確にすることが必要である。

(厚生労働省)

  • 日常生活における医療的ケアが、介助者等によっても行える体制の整備がなされること。難病その他の疾患等により支援の必要な状態にある人には、身近なところで専門性のある医療が提供されるとともに、地域社会で自立した生活を営むために必要なサービスが提供されること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 「日常生活における医療的ケアが、介助者等によっても行える体制の整備がなされること」については、介助者等が行える医行為の範囲に関して、利用者の安全の確保等の観点から、別途慎重な議論を行う必要がある。
  • 難病患者への保健、医療、福祉、生活の質(QOL)の向上については、 地方自治体向け補助金として「難病特別対策推進事業」(下記(1)~(4))を 設け、地域における難病対策の支援・推進を図っている。
    • (1)難病相談・支援センター事業(難病患者・家族に対する相談支援)
    • (2)重傷難病患者入院施設確保事業(医療施設等の整備)
    • (3)難病患者地域支援対策推進事業(地域における保健医療福祉の充実・連携)
    • (4)難病患者等居宅生活支援事業(QOLの向上を目指した福祉施策の推進)

(厚生労働省)

  • 障害原因の軽減や根本治癒についての再生医療に関する研究開発の推進が図れるよう必要な措置をとること。
  • 難病等についての調査研究の推進がなされること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 難病に関する調査研究については、厚生労働科学研究費補助金において「難治性疾患克服研究事業」を実施し、研究の推進を図っている。

(厚生労働省)

  • 人権尊重の観点を踏まえた適切な精神医療の体制整備が図られること。

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

5)障害原因の予防

(推進会議の認識)

 「障害の予防」という表現には、「障害はあってはならず、治療しなければならないもの」という否定的な障害観が反映されている反面、障害の悪化を防ぐことや、健康維持と適切な保健サービスの提供という観点から、疾病等の早期発見、早期治療を含む予防の必要性を読みとることも可能である。
 このようにこれまでの早期発見、早期治療による「障害の予防」にかかわる施策の背景として、①優生思想に基づく障害を否定する考え方、②健康維持と予防医学の観点から障害の原因となる傷病の発生予防や早期発見及び早期治療を推進する考え方、③障害の原因となる難病等の予防及び治療に関する調査及び研究を推進する考えがあり、「障害の予防」という言葉をめぐって関係者の間で見解の相違が生じていたものと思われる。
 早期発見及び早期治療が優生思想や否定的な障害観に基づいて行われることなく、誰もが適切な保健・医療サービスを安心して受けられるようにしていかなければならない。

【「障害の予防」に対する基本的考え方】

 そこで、障害の原因となる傷病や疾病に対する予防対策は、障害者施策としてではなく、一般公衆衛生施策の中で行われていることから、「障害は不幸である」といった差別や偏見を与えかねない「障害の予防」という表現は避けるべきである。
 必要な情報提供の下で快適な生活を送るための健康の増進に不可欠な条件整備の一環として、疾病等の発生原因解明のための基礎研究、治療法の開発・改善に係る臨床研究に対して積極的な対策を講ずるべきである。

【予防と支援】

 どのような障害があっても地域社会の中で育ち、学び、生活し、働くといった地域生活を実現していくためにも、障害の原因となる疾病等が早期発見されることによって、それ以前の生活が脅かされることなく、他の者と同じ地域社会で生活を送りながら、早期の段階から医療を含めた必要な支援を得ることができる体制づくりが重要である。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 「障害の予防」という表現は使用しないこと。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 「障害の予防」という表現は使用しないこと」とあるが、障害の原因となるものについて予防するという観点は必要ではないか。

(厚生労働省)

  • 障害の原因となる疾病に対する予防対策は、一般公衆衛生施策の中で位置付けられて行われること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 「一般公衆衛生施策の中で位置付けられて行われること」とあるが、どのような意味かを明らかにする必要がある。
    例えば、精神疾患の予防については、精神保健の施策の中で行われているが、精神保健は一般公衆衛生施策に含まれるのか。

(厚生労働省)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

6)精神障害者に係る地域移行の促進と医療における適正手続の確保

(推進会議の認識)

 障害者施策のなかでも、従来の精神障害者施策においては、保護と収容に重きが置かれてきたことを背景として、いわゆる「社会的入院」患者が推定で7万人いると言われる状況が存続している。
 また、精神障害者の非自発的入院に関する現行制度は、措置入院、医療保護入院等の入院形態や「保護者制度」も含め、自由を剥奪することなく本人の自己決定権を尊重すべきであることや家族の負担の軽減等の観点から大きな問題を含んでいる。
 精神障害者施策をめぐるこうした諸課題の解決には、退院促進や地域生活支援のサービスが有機的に連携して提供され、社会的入院を解消して地域社会で生活できるよう現状からの具体的かつ速やかな移行の仕組みが構築されなければならない。
 同時に、自らの選択により医療を受けることが基本であることを再確認し、制度上の問題を多く含んでいる現行の精神保健福祉法及び医療観察法については、その廃止を含め抜本的に見直し、非自発的な医療が提供される場合には適正な手続が確保されるようにする必要がある。

【社会的入院の解消】

 精神障害者が長期間にわたり病院の閉鎖された空間での生活を強いられる制度設計がなされてきたことを踏まえ、国の責務として、精神障害者が地域社会での自立した生活へと移行することを支援し、地域社会へのインクルージョンを実現していくことが喫緊の課題となっていることに鑑み、以下の施策を展開していくことが必要である。

  • 精神障害者及び家族への地域生活支援に関する十分な情報の提供。
  • 精神医療は、地域に根差した医療体制を基本とすること。地域支援を含む不安や困難に対する常時利用可能な相談支援を24 時間365 日提供可能な体制の整備。

 この仕組みを構築するにあたっては、地域社会で生活を営むことを基本としてサービスが提供されなければならない。

【非自発的医療に係る人権尊重の観点からの適正手続の確保等】

 精神障害者に係る非自発的な入院や医療上の処遇については、人権の尊重を徹底する観点から、適正な手続を確保することが不可欠である。特に、以下の点が重要である。

  • 非自発的な入院、隔離拘束等が行われる場合に、障害者権利条約を踏まえ、人権尊重の観点から、自らの判断と選択による医療の利用が基本であることに鑑み、非自発的な(本人の意に反した又は本人の意思を確認することができない状態における)入院の際の他の者との平等に基づく具体的な適正手続の在り方を明確化するとともに、第三者機関による監視等を含め、現行制度を大幅に見直し新たな仕組みを構築すること。
  • 医療保護入院に係る同意を含む現行の「保護者制度」を抜本的に見直すことが必要である。すなわち、現行の医療保護入院制度を廃止し、公的機関がその役割を適切に果たすよう新たな仕組みを構築すること。
  • 精神疾患を有する者の、急性期・重症患者等入院ニーズを精査した上での必要精神病床数を算出し、それを超えて現存する精神病床については、国の責務で削減を行い、それに代わる地域での医療体制を構築すること。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • すべての精神障害者は、原則として病院への隔離・収容を受けることなく、地域社会において必要な支援を受けながら自立した生活を営む権利があること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 「隔離・収容」という言葉は適正ではないのではないか。現在も、医療の必要性や法に基づく適正な手続により入院医療が行われているところである。

(厚生労働省)

  • 自らの判断と選択による精神医療の利用が基本であるとともに、例外的に非自発的な医療が行われる場合には、厳密で適正な手続きが確保されること。

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

7)障害のある子ども

(推進会議の認識)

【障害のある子どもの他の子どもとの平等の確保】

 障害のある子どもに対しては、一般の児童施策において取り組まれるべきであり、障害のない子どもと等しく、すべての権利が保障されるべきである。生命、生存、及び成長の権利が保障されると共に、医療、福祉、教育について、同年齢の子どもと同じ権利が保障されるべきである。子ども期においては、特に、遊びや余暇について、同年齢の子どもと同等に楽しむことができるよう、障害に基づいて不利益な取扱いが生じないようにしなければならない。

【障害のある子どもにとっての最善の利益】

 障害のある子どもにかかわる判断や決定においては、最善の利益が考慮されなければならない。その際に、障害のある子どもの父母、又は親権者が第一義的責任と権限をもち、障害のない子どもと同じように尊厳と成長が保障されるよう、基本的人権が保障されなければならない。

【障害のある子どもの意見表明をする権利】

 障害のある子どもは、障害及び年齢に適した支援を活用しつつ、自己にかかわる事柄について自由に意見を表明する権利をもち、その表明された意見が障害のない子どもの意見と同等に、すべての関係者において、考慮されなければならない。意見表明における意見には、明示された意見のほか、子どもの意思や感情の動きを含めるべきであり、国及び地方公共団体は、意見表明権を保障するため、それらを的確に読み取ることができる体制や環境を整備しなければならい。

【障害のある子ども及び家族への支援】

 乳幼児期の障害のある子どもについては、早期に適切な支援を得られなければ後に障害をもつ可能性が高い子どもを含め、機能障害の存在が確定できない段階から継続的で、「養護している他の者の資力を考慮して可能な限り無償」の支援が子どもとその家族に対して講じられるべきである。
 家族への支援では、障害のある子どもが家族の一員として尊重されるように提供されるべきであるが、家族による養育が困難な場合であっても、親族や家族に代わるような代替的な監護を提供する環境が保障されるべきであり、障害に基づいて家族や地域社会から隔離されないように配慮されなければならない。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 障害のある子どもは、障害のない子どもと等しく、すべての権利が保障されること。
  • 障害のある子どもに対しては、一般の児童施策において取り組まれ、個人に必要な合理的配慮と必要な支援を講ずること。
  • 障害のある子どもは、意見を表明するための支援を受けつつ、自己にかかわる事項について意見を表明する権利があり、表明された意見はすべての関係者によって考慮されること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 「意見を表明する権利」については、一般児童福祉法制には規定がないが、障害児についてのみ法令に規定することが適当か。全ての子どもに共通するものとして、児童福祉法制全体の中で議論する必要があるのではないか。
     なお、「関係者によって考慮されること」については、障害者の権利に関する条約第7条において、「障害のある児童の意見は、他の児童と平等に、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮される」とされていることも踏まえる必要がある。

(厚生労働省)

  • 障害のある子どもにかかわる判断や決定について、第一次的責任と権限を有する保護者及び親権者は、障害児が表明した意見を最大限尊重して、その判断をなすべきであること。
  • 障害に基づいて家族や地域社会から隔離されたり、不利益な取り扱い受けずに、一人の子どもとして尊重されるよう、障害のある子ども及びその家族に対する支援を講ずること。

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

8)相談等

(推進会議の認識)

 障害者にとって、乳幼時やその後の人生の節目において、また医療、就労等を含む生活の様々な分野に関し相談できる体制があることが重要である。しかし、どこに、どのような相談機関があるのかを探すことからはじめなければならず、ようやく相談が始まっても高圧的な対応をされたり、必要なコミュニケーション手段がないばかりに必要な情報を得られずに放置されてしまう等の経験をもつ障害者は多い。

【身近な地域での相談等】

 そこで、まず、地域の身近な場所で、いつでも対応できる相談の体制づくりが求められる。相談機関相互の連携だけでなく、専門的知見を有する障害者団体による支援、様々な相談を受け止め、相談分野を限定しないいわゆるワン・ストップ・ステーションを含め障害者の権利を擁護し、本人中心の支援を行い、相談内容を解決できる相談体制が必要である。

【相談におけるコミュニケーションの確保】

 相談において、手話、点字、筆談、要約筆記、指点字等をはじめ、知的障害・発達障害においても、一人ひとりに対応したコミュニケーション手段を活用するなど、多様なコミュニケーション手段を求めに応じて確保すべきである。

【障害当事者による相談活動】

 障害当事者が、障害者自身の尊厳を回復し、自己の権利を理解し、自己決定できるよう、障害当事者が相談活動を担ういわゆるピア・カウンセリングを相談等に積極的に活用し、促進する必要がある。また、地域での自立生活体験等の機会を提供し、地域生活のイメージを具体化する等のエンパワーメント支援ができるようにする必要がある。

【相談者の研修】

 相談を効果的に実施するためには、相談業務にかかわる者の資質が大きく問われる。
 そこで、まず、障害を正しく理解でき、適切に相談業務が担えるよう、研修を充実するべきである。
 また、障害者が尊厳を回復し、権利を主張できるよう、相談を担う者の知識や技能を高めることが求められる。
 さらに、障害者に対する差別に関する知識、障害のある女性、子ども、重度障害者が複合的な差別を受ける立場にあることについての理解等、人権について研修が実施されるべきである。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 障害者が利用しやすい身近な場で、いつでも相談を利用できる体制を整備し、相談の場面では、障害者の求めに応じ必要なコミュニケーション手段を提供すること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • コミュニケーション手段の提供については、障害者の相談は福祉分野の相談に限らず、すべての場面で行われるものであり、コミュニケーション手段の保障は福祉的支援として行われるものに限定されるものではないことに留意すべきである。

(厚生労働省)

  • 障害者自身が相談業務を担う機会を増やすために必要な措置を講じること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 「障害者自身が相談業務を担う機会を増やすために必要な措置を講じること」とあるが、障害者自身が担うものに限らず、障害者の相談の充実を図っていくことが必要であり、また、障害者が誰から相談を受けるかは、障害者自身の選択によるものであることから、障害者自身が担うもののみについて、記述することは均衡を欠く。
     また、相談「業務」に限らず相談を行う機会を増やす必要があることから、「相談業務」は「相談」とすべき。

(厚生労働省)

  • 相談業務を担う者に対し、障害についての知識、障害者に対する差別に関する知識、障害のある女性、子ども、重度障害者が複合的な差別を受ける立場にあることについての理解等、人権について研修を行うこと。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 法務省の人権擁護機関においては,人権侵害の被害者の相談などに適切に対処するため,人権擁護事務を担当する法務局職員及び人権擁護委員に対し,各種研修を実施するなど,必要な措置を講じている。

(厚生労働省)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

9)住宅

(推進会議の認識)

 日本ではいまだに多くの障害者が施設や精神科病院での暮らしを余儀なくされている。また地域社会で暮らす障害者にとっても、住居の確保にさまざまな困難を抱えている。
 そこで、国又は地方公共団体は、特定の生活様式を強いられることなく、何処で、誰と住むかについての選択ができる障害者の地域社会で暮らす権利を促進するため、下記の諸点を含む計画的な住宅の確保のための措置を取るべきである。

【公営住宅利用における課題】

 障害者にとって利用しやすい公営住宅の提供は、不十分である上に、障害に配慮したアクセシブルな住宅の提供は、限られている。市街地から離れた場所に建設される公営住宅は、公共交通機関等を利用しにくい場合、社会参加が制限される。公営住宅法施行令には重度障害者の単身入居について一定の条件を附したいわゆる「相対的欠格条項」があり、単身入居が制限されている。

 このような状況を改善するため、以下を実施すべきである。

  • 公営住宅が地域生活を可能にし、地域移行を促進するための基盤の一つとしての役割を果たし得るものであることから、バリアフリーの観点から障害に配慮した公営住宅の数を増やすだけでなく、ユニバーサルデザインの観点から、すべての建物が障害者や高齢者が利用できる公営住宅の整備を計画的に取り組む。特に、障害者の単身者用の公営住宅の整備を促進する。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 平成3年以降に新たに整備される公営住宅については、整備基準において、バリアフリー対応構造を標準仕様としている。
  • また、地方公共団体が実施する公営住宅の整備事業やストック改善事業について、国は社会資本整備総合交付金による支援を行っているところ。

上記のとおり、本件については既に必要な措置を講じているところであり、引き続き、その取組みや支援を実施する。

(実施時期・検討期間)

  • 交付金事業については、平成17年度から実施(平成17年度~21年度:地域住宅交付金、平成22年度:社会資本整備総合交付金)。平成23年度予算において概算要求を行っているところ。

※平成16年以前においても、補助金事業として公営住宅の整備事業等を支援。

  • 公営住宅の申し込みに当たり、常時介助が必要な障害者であっても入居資格に条件を付されることなく、単身で入居申込みができる制度にする。

【国土交通省】

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 公営住宅の入居資格である同居親族要件(公営住宅法第23条第1項第1号、公営住宅法施行令第6条第1項)については、地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案において、廃止されることとなっている。

(実施時期・検討期間)

  • 法律案を第174回国会提出、現在継続審議中。

(国土交通省)

【民間賃貸住宅利用における課題】

 障害者が民間賃貸住宅を利用する際に、申込者又は同居予定者が障害者であること、バリア(障壁)を除去するための改造が必要であること、退出時の原状回復が困難であること等を理由に、入居拒否される等のトラブルが生じている。

 このような状況を改善するため、以下を実施すべきである。

  • 障害者の利用しやすい民間住宅の建築を促進するため、バリアフリー化が進んだ良質な住宅建設に対し、補助金や金利優遇措置等を講ずるとともに、バリアフリー改修工事に係る費用助成等の施策も促進する。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 社会資本整備総合交付金により、地方公共団体による民間住宅のバリアフリー改修補助事業について、支援を行っているところ。
  • バリアフリー改修促進税制による支援

(実施時期・検討期間)

  • 平成17年度から実施(平成17年度~21年度:地域住宅交付金、平成22年度:社会資本整備総合交付金)。平成23年度予算において概算要求を行っているところ。
  • 平成19年度から実施。

(国土交通省)

  • 公的な家賃債務保証制度は、基本約定締結の対象戸数に比べ保証引受件数が少ないことから、利用者に対する制度の周知を図るとともに、利用しやすい仕組みづくりの在り方を検討し、より利用しやすい債務保証制度となるように必要な措置を講ずる。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 家主1件当たり基本約定を1件締結する必要のある現行手続きを見直し、事務手続きを簡素化することを検討する。その際、基本約定の締結について、家主に対して保証制度の内容について理解を求めるための措置を講じることが必要となる。
  • また、平成21年7月に、(財)高齢者住宅財団の「家賃債務保証業務規程」を変更し、従来の債務保証の対象が障がいの程度の高い世帯に限られていたところ、障がいの程度が低い障がい者世帯も対象に追加している。これにより、民間賃貸住宅への入居のニーズが相対的に高い世帯層も保証の対象となっており、こうした制度の変更等を含め、引き続き周知を図っていく。

(実施時期・検討期間)

  • 平成23年度に(財)高齢者住宅財団の家賃債務保証業務規程を変更して、制度を円滑に利用するための見直しを実施。
  • 平成23年度以降、引き続き周知を実施。

(国土交通省)

  • 住宅セーフティネット法に基づき居住支援協議会(地方公共団体や関係事業者、居住支援団体等で構成)を組織することができるが、有効に活用されていない実態を踏まえ、必要な支援を講ずる。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 居住支援協議会の活用に当たっては、住宅確保要配慮者の居住の安定確保を目的に組織される居住支援協議会の立ち上げや活動を支援する事業を実施しているところ。

(実施時期・検討期間)

  • 平成22年度から実施。平成23年度予算において概算要求を行っているところ。

(国土交通省)

  • 民間賃貸住宅への円滑な入居を促進するとともに、賃貸契約の申込み拒絶等、民間賃貸住宅の利用に当たり生じる問題において、差別問題が発生しないよう当面対応可能な必要な措置を取りつつ、その解決の仕組みの在り方について、差別禁止部会での議論を踏まえ、引き続き推進会議においても検討を進める。

【国土交通省】

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 民間賃貸住宅市場において入居制限が行われている等を踏まえ、住宅確保要配慮者の居住の安定確保を目的に組織される居住支援協議会の立ち上げや活動を支援する事業を実施しているところ。

(実施時期・検討期間)

  • 平成22年度から実施。平成23年度予算において概算要求を行っているところ。

(国土交通省)

【グループホーム、ケアホームに関する課題】

 グループホーム、ケアホームは、施設からの地域移行や保護者に依存した生活から自立するための多様な住まいの一つの形態としての役割を担っている。
 しかしながら、グループホーム等の建設に当たり、周辺住民からの反対がおき、中断されることがある。障害者が入居する時に限って、地方自治体によっては法律上の根拠がないにもかかわらず事業の実施主体に地域住民から建設の了解を取るように求める場合もあり、これについては障害者に対してだけ特別な条件を課すものではないかとの指摘もある。グループホーム等を建設するに際して、建築基準法や消防法の規制に対応できず、建築を断念せざるを得ない場合もある。
 さらには、利用者に対して、居宅支援サービスの利用ができるようにすべきとの要望がある。

 このような観点から、以下を実施すべきである。

  • 公営住宅をグループホーム等として利用が進むよう必要な措置を講ずる。

【国土交通省】

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 公営住宅をグループホーム等として利用する措置については、障害者が地域で暮らせる社会の実現に向けて有効性が認められることから、公営住宅法第45条においてその使用が認められているところである。
  • また、公営住宅をグループホーム等として利用するための改良工事費については、社会資本整備総合交付金事業による補助対象としているところ。
  • 更に、その利用促進については、「公営住宅のグループホーム事業への活用に関するマニュアルについて」(平成21年5月19日付け国住備第167号)において、公営住宅の同事業へのより一層の活用が図られるような措置を講じているところ。

 上記のとおり、本件については既に必要な措置が講じているところであり、引き続き、その取組みや支援を実施する。

(実施時期・検討期間)

  • 交付金事業については、平成17年度から実施(平成17年度~21年度:地域住宅交付金、平成22年度:社会資本整備総合交付金)。平成23年度予算において概算要求を行っているところ。

(国土交通省)

  • グループホーム等における支援の在り方について、居宅支援サービス等も含め、居住者のニーズに応じた多様な支援が可能となるよう、引き続き総合福祉部会で検討する。

(実施・検討に当たっての留意点)

グループホーム・ケアホームにおいて既に居宅支援サービスが行われており、これに加えて別の事業者から居宅支援サービスの提供を受けることとした場合、

  • サービスの提供に係る責任の所在が不明確となり、必要かつ十分なサービスが提供できないおそれや、事故発生時に十分な対応がなされないおそれがある
  • サービスを二重で受けることとなり、公費負担も二重払いとなってしまうといった問題があるので、「居宅支援サービス等を含め」は削除すべきである。

(実施時期・検討期間)

  • グループホーム等のあり方については、現在、総合福祉部会で検討中であり、来年8月に新法の骨格提言を行うと承知している。

(厚生労働省)

  • グループホーム等の建設に当たって、建築基準法や消防法の基準を満たす上で必要となる設備等に対する必要な支援を講ずるとともに、既存の集合住宅等を利用した棟を一にしない形のグループホーム等の形態について、総合福祉部会における議論も踏まえつつ必要な措置を講ずる。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 前段のグループホーム等に関する建築基準法や消防法の基準を満たすための改修等については、現行の国庫補助制度において既に措置済である。
  • 建築基準法や消防法の規制がグループホーム等の建設抑制にならないよう必要な措置について検討すべきである。
  • 後段のグループホーム等の形態については、総合福祉部会で検討されているところであり、「既存の集合住宅等を利用した棟を一にしない形のグループホーム等の形態について」の必要な措置を講ずることを前提とした表現は適当ではない。

(実施時期・検討期間)

  • 建築基準法や消防法の基準を満たすための改修等については、既に措置済である。
  • グループホーム等のあり方については、現在、総合福祉部会で検討中であり、来年8月に新法の骨格提言を行うと承知している。

(厚生労働省)

  • グループホーム等の建設に際し、地域住民との間に生じたトラブルについては、差別禁止部会における議論も踏まえつつ、紛争を調整する仕組みの構築等必要な措置を講ずる。

【厚生労働省】

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 事後的に地域住民との紛争を調整する仕組みを構築するよりも、事前に紛争が生じないよう地域住民の障害への理解を深める施策を重点的に実施することが重要と考えるため、以下のとおり表現を改めるべきである。
    「グループホーム等の建設に際し、地域住民との間に生じたトラブルへの対応については、差別禁止部会における議論も踏まえつつ検討する。」

(実施時期・検討期間)

内閣府に置かれた差別禁止部会における議論を踏まえ、今後、検討する。

(厚生労働省)

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 障害者の地域社会での生活を可能とするため、公営住宅施策においては、障害者の地域移行を促進し、また重度の障害者も含め、障害者の居住に適した住宅の提供という観点から計画的に整備し、民間住宅政策においては、民間賃貸住宅への入居の円滑化を促進するとともに、居住可能な住宅建設や容易に利用するうえで必要となる支援の措置を取るという観点から、総合的な住宅施策をとること。

(政府に求める今後の取組に関する意見)

○(P)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

10)ユニバーサルデザイン

(推進会議の認識)

 私たちの日常生活や社会生活は、障害者には利用できない商品やサービス、様々な社会環境に囲まれていると言っても過言ではない。
 例えば、視覚障害のある人が、買い物やレストランに行くために、お金を引き出そうとしても、銀行のATMのタッチパネルを使えないし、駅の券売機も同じように使えない。ドラッグストアで風邪薬を買っても効能書きは点訳化されておらず、同時に買った胃薬も似たような容器であれば、風邪薬との違いも分からない。レストランに入ってもメニューはいちいち店員に全部読んでもらわなければ、中身が分からない。図書館で調べ物をしようとしても、点訳されている本は、ほんのわずかしかない。また、多機能トイレは誰にとっても使いやすいものになっている反面、その分利用者が増え、本当に必要な人が必要 な時に使えなくなっているのではないかという指摘もある。
 このように、障害者は日常生活において様々な不自由を感じていることから、障害者があらゆる分野において社会から分け隔てられることなく、日常生活や社会生活を営むことができるように、ユニバーサルデザインの普及が不可欠である。
 そして、調整又は特別な設計を必要とすることなく、最大限可能な範囲ですべての人が使用することのできるというユニバーサルデザインの考え方が、単に製品だけでなく、広く、環境、計画及びサービスの設計などについても、同じくなされなければならない。
 そのためには、ユニバーサルデザインに基づく製品、環境、計画及びサービスの設計がなされるための、研究開発における具体的な指針やガイドラインの策定、財政的支援、計画的普及のための措置を含む体制の整備を図ることが必要である。
 さらに、ユニバーサルデザインの普及とともに、障害者の補装具など、そもそも特定のニーズに応じることが求められるものや、障害者の日常生活や社会生活にとって障壁となるものを除去するためのバリアフリーのための措置も、同時に講じられなければならない。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 製品、環境、計画及びサービスの設計などに当たっては、可能な限りすべての人が利用できるようにするというユニバーサルデザインの理念が、施策に反映されるようにすること。
  • その際には、可能な限り障害当事者が参画し、その意見を踏まえたものとすること。
  • 同時に、特定のニーズに応じ、または、生活上の障壁となるものを除去するための支援機器の普及、技術開発について、必要な措置を講ずること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 国際ルールであるISO/IEC Guide71をもとに制定したJIS Z 8071(高齢者及び障がいのある人々のニーズに対応した規格作成配慮指針)において、「アクセシブルデザイン(狭義のユニバーサルデザイン)」という概念を定義しており、その概念に基づいて、現在、包装容器の識別、消費生活用製品の凸記号表示、触知案内図など約30のJIS(日本工業規格)を制定している。
  • 新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」という)において、福祉用具の実用化研究を行う民間企業等に公募を行い、高齢者や障害のある人等の生活の質の向上を目的として優れた創意工夫ある研究開発に対して補助(2/3以内)を行っている。

(経済産業省)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

11)公共的施設のバリアフリー化、並びに交通・移動の確保

(推進会議の認識)

 障害者が、必要に応じて、公共的施設、交通機関等を円滑に利用できるようにすることは、あらゆる権利行使の前提であり、障害者の日常生活又は社会生活を営むうえで欠かすことのできない切実な課題である。

【国及び地方公共団体の責務と地域間格差の解消】

 公共的施設のバリアフリーにおいては、一定の進展はみられるものの、地方においては、バリアフリー新法の対象となる規模以上の建築物や施設等が大都市よりも少ないため、結果として地方における整備が進んでいない現状がある。
 今後の交通基本法の法案内容を視野に入れながらも、バリアフリー新法には責務の主体として「国」、「地方公共団体」及び「公共的施設を設置する事業者」が明記されていることに留意し、地方における公共施設や交通機関等のバリアフリー整備の遅れを解消することが必要である。そして、地域間格差の解消のため、整備対象施設の更なる範囲の拡大も含めた効果的な方策が実施されなければならない。

【交通計画又は市町村の基本構想策定に必要な視点】

 現在、検討されている交通基本法との関連を踏まえ、国及び地方公共団体による交通計画の策定やバリアフリー新法に基づく市町村の移動等円滑化基本構想の作成・改定にあたっては、利用や移動が困難な障害者の参画を図り、その意見を尊重することが必要である。

【合理的配慮の位置づけ】

 国は、公共的施設、交通機関等のバリアフリー化における最低基準を示して基盤整備を行っているところであるが、その最低基準による基盤整備をしてもなお、障害者の障害特性等によって利用や移動に制約が残る個別的事案が生じた場合には、事業者が合理的配慮の提供を適切に行うことができるよう、国及び地方公共団体は、必要な技術的又は財政的支援を講ずることが必要である。
 また、公共的施設や交通機関等の利用や移動における差別事案の解決の在り方については、差別禁止部会での議論を踏まえ、引き続き推進会議においても検討を進める。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 国及び地方公共団体は、地域間格差の実情を踏まえ、切れ目のない交通手段も確保するという観点から、地方における公共施設や交通機関等のバリアフリー整備の促進をより一層計画的に推進すること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • バリアフリー化の計画的推進は、現行の障害者基本法において既に規定済みと認識。
  • バリアフリー新法に基づく基本方針に定める移動等円滑化の目標は、限られた財源で最大の整備効果を得るために全国一律の基準で定めているものであり、大都市部、地方部ともに、全体として更に整備が進むよう、可能な限り対象施設の範囲を拡大することを検討しているところである。
  • 各地域における交通手段の連続性の確保については、地域の実情に基づき、バリアフリー新法に基づく移動等円滑化基本構想において措置することが可能である。

(国土交通省)

  • 国及び地方公共団体における公共的施設、交通機関等の整備に関する計画の策定にあたっては、障害者の参画と意見を尊重し、当事者のニーズを適切に踏まえたものとすること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 国については、バリアフリー新法第4条において、高齢者・障害者等と協力して、その意見を反映させるために必要な措置を講じた上で、移動等円滑化の促進のための施策の内容について、適時に、かつ、適切な方法により検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるよう努めなければならない旨規定されている。
  • 地方公共団体については、同法第5条において国の施策に準じて必要な措置を講ずるよう努めなければならない旨、また、市町村については、同法第25条において移動等円滑化基本構想を作成しようとするときは高齢者・障害者等の意見を反映させるために必要な措置を講ずる旨、さらに同法26条において基本構想の作成等に関して高齢者・障害者等を含む協議会を組織できる旨、協議会において協議が調った事項についてはその結果を尊重しなければならない旨等が規定されている。
  • 以上により、障害者の参画等については制度的に措置されており、殊更、障害者基本法において屋上屋を重ねるような措置を講ずる必要はないと認識。

(国土交通省)

  • 国及び地方公共団体は、合理的配慮を確保するために必要な施策を実施すること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 「合理的配慮」に関しては、新たな概念であり、社会的影響が非常に大きいものと考えられるが、現段階において、その具体的内容について政府全体における議論は何ら進展しておらず、共有認識も確立されていないにも関わらず、障害者基本法の各施策分野において拙速に規定を置くことは妥当性を欠き、不適当と認識。仮に何らかの規定を置くとしても、総則における規定とすべき。

(国土交通省)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

12)情報アクセス・コミュニケーション保障

(推進会議の認識)

 基本理念で述べたように、日常生活及び社会生活において、多くの障害者が必要な言語又はコミュニケーション手段を使用することに困難を経験しているが、その問題の深刻さが省みられることは少なかった。それ故に、コミュニケーションに困難を抱える障害者が障害のない者と等しく人権が保障されるために必要な措置が講じられなければならない。

【必要とする言語及び多様なコミュニケーション手段の利用】

 国及び地方公共団体は、すべての障害者に情報へのアクセスとコミュニケーションを権利として保障するため、障害者が必要とする言語の使用及びコミュニケーション手段の利用を可能にする支援の確保やそれにかかわる人材の養成等、必要な措置を講ずるべきである。
 また、国及び地方公共団体は、情報通信技術を含む支援技術において、電気通信及び放送その他の情報の提供に係る役務の提供並びに電子計算機及びその関連装置その他情報通信機器の製造等を行う事業者が、この製品・サービスを提供するにあたって、障害者に障害のない人と平等に情報へのアクセスとコミュニケーション手段を提供できるよう、必要な措置を講じるべきである。

【災害時の情報と必要な支援の提供】

 国及び地方公共団体は、自然災害や人為による災害が発生したときには、通常の生活に重大な支障が生じる、又は生命に危険が及ぶあらゆる現象に関する情報と、これらの支障や影響を回避するための情報を障害者に提供しなければならない(発生場所、規模、内容、今後の動向、避難ルート、避難場所、避難先で得られる情報保障の内容(手話通訳者の有無等)、医療や配給等の情報、交通情報など)。
 また、こうした情報を一方的に伝えるだけではなく、災害時に障害者と連絡を取り、必要な支援を把握、提供しなければならない。

【情報提供における障害者の参加】

 電気通信及び放送その他の情報の提供に係る役務の提供並びにコンピューターなどの情報通信機器の製造等を行う事業者は、役務の提供並びに機器の製造等のプロセスにおいて障害者の意見を聴取する機会を設け、もって障害者の利用の便宜を図るべきである。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 障害者は、すべての人権及び基本的自由を完全に享有することを可能とするため、必要な情報及びコミュニケーション手段が保障される権利を有する。
  • 国及び地方公共団体は、障害者が情報にアクセスし、必要とするコミュニケーション手段を使用することができるよう、必要な施策を講ずること。
  • 国及び地方公共団体は、災害時において、障害の特性に対応した伝達手段による緊急連絡等の必要な支援を障害者に提供及び相互に連絡できるよう必要な施策を講ずること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 災害の発生場所、規模、内容、今後の動向、避難ルート、避難場所、避難先で得られる情報保障の内容(手話通訳者の有無等)、医療や配給等の情報、交通情報などの情報提供は、実際の災害が発生した場合には第一義的には地方公共団体において行われることとなるから、担当省庁及び地方公共団体の意見を聞くべきと考える。

(内閣府)

  • 現在、「国家公安委員会・警察庁防災業務計画」において、都道府県警察は、防災訓練の実施、防災知識の普及並びに災害発生時における被災状況、避難措置及び交通規制等に係る情報の伝達について、高齢者、障害者、外国人等災害時要援護者に十分配慮するものとされているほか、避難誘導に当たっても、高齢者及び障害者について可能な限り車両等を活用して避難誘導を行うなど、十分配慮するものとされている。また、緊急交通路の確保については、障害者を区別することなく、人命の安全、被害の拡大防止、災害応急対策の的確かつ円滑な実施等に配意して行うものとされている。
  • 各自治体においても障害者を含む災害時要援護者リストが作成され、警察を含む関係機関において共有することによりこうした対応を可能とする枠組みが構築されている。

(警察庁)

  • 建物内で火災が発生した場合の警報については、消防法令において当該建物の関係者に音による警報が義務付けられているのみであり、また、個人の住宅においても、現在広く普及している火災警報器は、音のみによる警報となっている。そのため、聴覚障害者に対応した火災警報設備等の普及推進方策について検討する必要がある。
    → 平成22 年度より総務省消防庁において検討しており、今年度中に報告をとりまとめる予定。
  • 障害者への支援については、「災害時要援護者避難支援ガイドライン(H18.3)」において、行政側の情報伝達体制の整備、及び障害者の特性に配慮した情報伝達手段の確保の取り組みを進める必要性について指摘している。

(総務省消防庁)

  • 災害時等の情報提供については、施設等のバリアフリー化の一環として、視覚及び聴覚を通じた情報提供を行うよう誘導案内設備の整備をガイドラインに位置付け、整備を促進しているところ。

(国土交通省)

  • 国及び地方公共団体は、事業者が障害者に障害のない人と同等の情報を提供できるよう、必要な施策を講ずること。

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

13)文化・スポーツ

(推進会議の認識)

 自由にスポーツ・文化に参加し、これに貢献し、又は楽しむこと、そして、レクリエーション・余暇等を楽しむことは、障害の有無にかかわらず、すべての人の権利である。しかしながら、障害者はその機会へのアクセスを欠き、排除されることもある。また、文化やスポーツは贅沢なものであり、障害者の享受には制限があっても仕方がない、というような社会的通念もあるが、これらは変えていかなければならない。
 現行の基本法には「障害者の文化的意欲を満たし、若しくは障害者に文化的意欲を起こさせ」とあるが、障害者は文化的意欲が乏しいという想定で支援しなければならないとも受け取られかねない表現になっている。むしろ、障害者が文化・スポーツ等に参加、貢献する主体であることを前提とした表現に改めるべきである。

【文化等について】

 障害者が文化、余暇、レクリエーション等を享受しようとする場合に、物理的バリアのため施設やその機会を利用できない、映画の字幕など情報保障の欠如のために文化作品等を鑑賞できない、文化施設等までの交通アクセスが整備されていない等の実態があるため、障害のある人が障害のない人と同等に文化、余暇、レクリエーション等を享受できるようにする必要がある。また、障害者が芸術・文化活動等創造的な分野で活動ができるような支援や環境整備も必要である。

 このような観点から、以下を実施すべきである。

  • 美術館や博物館における字幕や音声解説の普及、鑑賞しやすい展示方法の改善や劇場での補聴援助システム等の整備などとともに、国内の文化的に重要な記念物及び遺跡、歴史的建造物への障害者のアクセスについて、どのような不都合が生じているかについての実態を把握し、可能な限り障害者の利用への配慮を行うなど、鑑賞しやすい環境整備が行われるように必要な支援を行う。

【文部科学省・関係省庁】

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 博物館法第8条に定める「公立博物館の設置及び運営上の望ましい基準」(告示)(平成15年)において、設置者に対し、博物館に障害者等の利用の促進を図るため必要な施設及び設備を備えるよう努めるよう促している。また、本告示については、近く改正を行う方向で検討しているところであり、その中で障害者が鑑賞しやすい環境の整備についても十分に留意して参りたい。

(実施時期・検討期間)

  • 上記告示の改正については、本年度内を目途に検討中。

(文部科学省)

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 文化庁においては、美術館・博物館に対して、字幕や音声解説の普及という施設整備支援ではなく、観覧へのソフト面の支援を実施。
  • 文化財の性質・所在・周辺環境は個々に異なることから、統一的な調査ではなく、現状の文化財の価値を損なわない範囲でアクセスが容易となるよう、個々の文化財ごとにアクセスの改善を図っていくことが適切。

(実施時期・検討期間)

  • 美術館・博物館の観覧や、国内の文化的に重要な記念物及び遺跡、歴史的建造物への障害者のアクセスについて、可能な限り障害者の利用への配慮を行うなど、鑑賞しやすい環境整備が行われるよう支援に努めており、事例の収集を含めて今後とも引き続き必要な支援に努める。

(文化庁)

  • 第一次意見における情報バリアフリーの一環として、映画、DVDへの字幕付与等について、障害のある人に対する情報保障が行われるように必要な環境整備を図る。

【関係省庁】

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 映画、DVDへの字幕付与については、既に業界団体や民間企業が連携してNPO法人メディアアクセスサポートセンターを立ち上げており、同団体において「聴覚障害者用字幕」「視覚障害者用音声ガイド」などの制作、普及といった必要な措置が講じられている。

(実施時期・検討期間)

  • 現時点では実施・検討について時期は未定だが、具体的な方策が判明次第、検討を始めることとしたい。

(経済産業省)

【スポーツについて】

 障害者がスポーツを楽しもうとする場合に、物理的バリアのため施設を利用できない、精神障害を理由に施設の利用が拒否される、車椅子利用であるために一般の市民マラソン大会への参加を拒否される等の実態がある。
 たとえば、スポーツへの参加資格が問われない場合、又は参加資格が必要ではあるが参加資格を満たす場合において、障害に基づいて参加が拒否されたり、合理的配慮の提供が当該競技の本質を害することがないにもかかわらず提供されないことで、参加ができないなどの差別があってはならない。
 また、国際レベルの大会に出場できるアスリートであっても海外等で長期の遠征に行く際に費用の問題や職場の理解を得られないなどのために、競技を断念せざるを得ないこともある。
 しかしながら、障害の有無に関わらず、スポーツに参加する機会は平等に与えられるべきであり、障害のある人も障害のない人も共にスポーツを観戦したり、参加できるようにしなければならない。

 このような観点から、以下を実施すべきである。

  • 国又は地方公共団体は、障害者が差別なく、スポーツに参加できる機会を有することができるように、官民の施設整備やスポーツ大会等の運営に当たってバリアフリーの整備及び、合理的配慮の確保が行われるようにするなど、必要な環境整備を行い、障害者スポーツの振興を図る。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 文部科学省では、スポーツ振興を進めるに当たって、基本的に障害を持った方とそうでない方の区別をせず、広くスポーツ振興策として取組を進めている。今後10 年間のスポーツ施策の方向性をとりまとめた「スポーツ立国戦略」を本年8 月にとりまとめているが、その中でも、スポーツに触れることができるようにするための機会の整備や指導者に育成についても盛り込んでいる。
     なお、戦略には、特に、パラリンピアンの利用も含めたナショナルトレーニングセンターの在り方の検討、パラリンピックなどの競技性の高い障害者スポーツについての連携強化などについて、個別事項として盛り込んでいる。また、関係省庁との連絡会議を新設し、障害者スポーツも含めた総合的なスポーツ振興施策の実施を図ることとしている。

(文部科学省)

  • 一般の公立体育館等のバリアフリー化や備品の整備などの予算措置を講じている。

(実施時期・検討期間)

  • 上記のとおり、現在すでに実施しているところである。

(厚生労働省)

  • 国又は地方公共団体は、特に競技性の高い障害者スポーツについては、競技スポーツとしての一般への周知・理解を広め、これを育成するために必要な措置を講ずる。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 総合国際競技大会指定強化事業などの予算措置を講じている。

(実施時期・検討期間)

  • 上記のとおり、現在すでに実施しているところである。

(厚生労働省)

  • 国又は地方公共団体は、障害者がスポーツに触れる機会を増やし、スポーツを行う障害者の裾野を広げるために、障害者スポーツの指導者の育成等必要な措置を講ずる。

【文部科学省・厚生労働省】

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 各種スポーツ・レクリエーション教室の開催及び指導員の養成などの予算措置を講じている。

(実施時期・検討期間)

  • 上記のとおり、現在すでに実施しているところである。

(厚生労働省)

【スポーツ・文化等のいずれにもかかわる点について】

 障害者が障害のない人と同等にスポーツに参加したり、観戦を楽しんだり、又は、文化活動に参加したり、文化等を享受するためには、そもそもこれらの機会にアクセスできなければならない。

 このような観点から、以下を実施すべきである。

  • 移動支援、身体介助、コミュニケーション支援などの福祉的支援は障害者がスポーツ・文化等を享受するために不可欠であることから、平成23 年末を目途に総合福祉部会において進められている福祉的支援の在り方の検討に当たっては、こうした観点も踏まえた検討を行う。

【厚生労働省】

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 支援の確保等は施策分野ごとにそれぞれ必要な支援を検討すべき問題であり、また、運営者等による合理的配慮も行われるべきであり、すべて福祉的な支援として行われなければならないという認識は誤りである。総合福祉部会では福祉的支援の在り方全般の検討が行われているのであって、文化・スポーツに限定した支援について第二次意見に盛り込むことは不適当であり、削除すべきである。

(厚生労働省)

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 障害者は、文化、スポーツ、レクレーション、余暇に参加し、これに貢献し、これらを楽しむ権利があることを確認すること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • これらの参加を促進し支援していくことは必要と考えられるが、「権利」とは、具体的にどのような権利なのか、障害のない者の場合との関係も含めて整理が必要である。

(厚生労働省)

  • 障害者は文化的意欲が乏しいので意欲を喚起させなければならないとの誤解を招きかねない現行の「障害者に文化的意欲を起こさせ」という表現は用いないこととし、障害者が文化を創造し、貢献する主体であることを前提にした表現を用いること。

(政府に求める今後の取組に関する意見)

○(P)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

14)所得保障

(推進会議の認識)

 人の生活を賄う所得は一般的には就労による所得と年金や手当などに大きく依存している。
 しかし、障害者の場合、就労に関しては、障害者雇用促進法に基づく一般就労における法定雇用率自体が全体として達成されたこともなく、働く希望を有している障害者に法制度自体が応えられていない現状がある。
 また、障害者自立支援法に基づく、就労継続支援B型において得られる工賃も月額平均1万3千円程度である。
 さらに、障害基礎年金は、長年の労働による財産の蓄積が期待できないにもかかわらず、保険方式を原則とする年金制度においては例外的地位なるがゆえに、老齢基礎年金を基本とした給付設計となっており、障害者の生活実態を踏まえた住宅にかかる費用や障害ゆえに追加的に必要な費用を補填できる内容とはなっていない。
 このような社会保障制度のなかにあって、障害者の所得水準は総合的に極めて低い状態に置かれている。例えば、20~65歳未満の障害者は、福祉的就労を含む「仕事あり」の比率においてさえ、全就労者が77.1%に対して、障害者は58.5%にとどまっている。さらに、就労収入を含む総年間収入においても、障害者単身世帯においては、男性が約174万円女性が92万円と、全就労者の収入と比較して、男性が42.5%女性が33.9%と、著しく低い水準にとどまっている(*)3
 障害者も含めてすべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するところ、以上の状況からみると障害者が単身で暮らそうとしても、日常生活に必要な所得を就労や年金によることが困難な状況に置かれていることは明白であり、逆に言えば、家族に依存するか、公的扶助に依拠した生活又は施設や病院で暮らさざるを得ない状況にあることがわかる。

【公的年金制度改革における検討】

 第一次意見にあるように、多くの障害者が国民一般の所得水準に達していない現状を踏まえ、障害者が障害のない者と同等に地域社会で自立した生活を営むことができるよう政府において平成25 年常会に法案提出を予定している新たな年金制度創設に向けた議論と併せて、障害者が地域社会において自立した生活を営むために必要な所得保障の在り方について、給付水準と負担、並びに稼働所得との調整の在り方を含めて検討を行うべきである。
 基本法においては、地域社会で生活するに足りる所得保障の一環として、稼働所得とリンクした年金施策が取り組まれるべき旨を反映すべきである。

【無年金障害者の所得保障】

 同じく、第一次意見にあるように、国民年金制度の発展過程において生じた特別な事情等により、障害基礎年金の支給対象から除外されている無年金障害者( 20 歳以前の初診日認定ができない者、国籍条項撤廃時( 1982(昭和57)年)に20 歳以上の在日外国人障害者等)が、現在多数存在している。
 このような現状を受けて、学生無年金障害者等を福祉的措置によって救済するために設けられた「特別障害給付金」の給付対象範囲の拡大を含め、無年金障害者の困窮状態の改善を図る措置を早急に講ずるべきである。
 基本法においては、地域社会で生活するに足りる所得保障の一環として、無年金障害者の救済を含みうる形で、手当などの施策が取り組まれるよう反映されねばならない。

【経済的負担等の軽減】

 住宅にかかる費用や障害ゆえに追加的に必要な費用等に関して、国及び地方公共団体は、障害者の地域社会で生活する権利を促進し、その自立を支援するために、障害者及び障害者を介助する親族等の経済的負担の軽減を図らねばならない。
 その中でも大きな問題として提起された障害福祉サービスにおける利用者負担の問題は、自立支援医療も含めて、応益負担を廃止することを前提に、総合福祉部会の議論を踏まえて、利用にかかる負担の在り方を引き続き検討しなければならない。
 また、現行の経済的負担の軽減を図るための税制上の措置については、その有効性を検討するべきである。
 公共交通機関や公共的施設の利用料等の減免については、距離等の制限を見直して日常生活に有効に機能するよう是正に努める。
 さらに、これらの軽減措置において、障害種別・程度を判断基準とした医学モデル的な観点からではなく、生活の実態に基づくニーズを判断基準とする社会モデル的な観点から、その必要性が判断されるべきであり、不合理な格差はなくさなければならない。
 したがって、基本法においては、国及び地方公共団体は、障害者の自立支援の観点から、障害の種別・程度にかかわりなく、障害者が置かれたその生活実態に基づいて、障害者及び障害者を介助する親族の経済的負担の軽減を図るため、有効な税制上の措置、日常的に必要な公共交通機関や公共的施設の利用料等の減免だけでなく、日常生活又は社会生活上必要な住宅にかかる費用や障害ゆえに追加的に必要な費用に関しても軽減措置を図るべき旨を反映すべきである。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 地域社会で生活するに足りる所得保障の一環として、稼働所得とリンクした年金施策が行われること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 「障害者制度改革の基本的な方向について」(平成22年6月29日閣議決定)においては、「障害者が地域において自立した生活を営むために必要な所得保障の在り方について、給付水準と負担の在り方も含め、平成25 年常会への法案提出を予定している公的年金制度の抜本的見直しと併せて検討し、平成24 年内を目途にその結論を得る」こととされており、「稼働所得とリンクした年金施策」の意味は必ずしも明らかではないが、新たな年金制度における稼働所得の扱いについては、今後、こうした議論の中で検討されることとなる。
  • 加えて、「14)所得保障」の「推進会議の認識」に関して、次の点に留意すべきである。
  • 「障害基礎年金は、長年の労働による財産の蓄積が期待できないにもかかわらず、保険方式を原則とする年金制度においては例外的地位なるがゆえに」とあるが、現行の基礎年金は障害基礎年金も含め、社会保険方式をとっており、また、障害基礎年金は保険料納付要件を満たす限り、保険料を納めた期間の長さに関わらず、老齢基礎年金の満額以上の給付を行うものである。

(厚生労働省)

  • 地域社会で生活するに足りる所得保障の一環として、無年金障害者の救済を含みうる形で、現行規定の手当などの施策が行われること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 「地域生活で生活するに足りる所得保障の一環として、無年金障害者の救済を含みうる形で、現行規定の手当などの施策が行われること」の意味するところが不明である。
     なお、本年6月の閣議決定においては、「特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律(平成16年法律第166号)の附則において、給付金の支給対象とならなかった在日外国人障害者等に対する福祉的措置の検討規定が設けられており、この法律附則の検討規定に基づき、立法府その他の関係者の議論を踏まえつつ検討する」とされているところである。

(厚生労働省)

  • 国及び地方公共団体は、障害者の自立支援の観点から、障害の種別・程度にかかわりなく障害者の置かれた生活実態に基づいて、障害者及び障害者を介助する親族の経済的負担の軽減を図るため、有効な税制上の措置、住宅にかかる費用や障害ゆえに追加的に必要な費用等に関して軽減措置を講ずること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 「障害の種別・程度にかかわりなく」については、総則「1)目的」の①で示したとおりである。

(厚生労働省)

3 『障害者生活実態調査』(勝又幸子他2008「障害者の所得保障と自立支援施策に関する調査研究」土屋葉(2008)障害者の自立支援に向けた生活実態把握の重要性‐「障害者生活実態調査」の結果から-季刊社会保障研究Vol.44 No.2

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

15)政治参加

(推進会議の認識)

 政治参加の問題は、投票行為、障害のある議員の議会活動、障害者の政治活動への参加、議会や政治に関する情報保障、公的活動への参加等、幅広い分野に及び、多くの課題を抱えている。たとえば、成年被後見人は、公職選挙法における欠格条項により選挙権・被選挙権を奪われ、国や地方公共団体の関連する審議会や検討会への参画にあたって、障害の特性やニーズによる合理的配慮が行われないことによって、公的活動への参加の機会が奪われるなど、政治参加にかかわる障害に基づく制限や排除、又は欠格条項の問題は、障害に基づく差別の問題として、今後、差別禁止部会での議論を踏まえ、引き続き推進会議において検討を進めることが必要である。
 選挙等に関する情報提供や投票行為にかかる環境整備については、点字及び音声による選挙公報等の発行が十分になされていないことや、政見放送において字幕、手話の付与が十分にはなされていない等、障害者が情報を得ることが困難な状況がある。また、重度の在宅障害者等が対象になる郵便投票が「自筆」を条件としていることや投票所までの又は投票所内のアクセスや必要な配慮の確保など、多くの不備が指摘されている。

【選挙等に関する情報提供と投票のための必要な体制の整備】

 国及び地方公共団体は、法律の定めるところにより行われる選挙、国民審査又は投票において、障害者が障害者でない者と同等に容易に必要な情報が提供され、投票することができる条件整備が必要である。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 障害者の選挙権及び被選挙権を障害のない人と平等に保障するために、障害の種別や特性に応じた必要な施策を講ずること。
  • 選挙等に関する情報の提供と投票を容易にする観点から、障害の特性に配慮した必要な体制を整備すること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 成年被後見人に係る欠格条項規定については、成年被後見人が「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」(民法第7条)と定義されていることにより設けられている制度であることから、成年被後見人制度全体について検討を経たうえで、議論がなされることが必要である。
  • 選挙等に関する情報の提供と投票の方法等の選挙権及び被選挙権の行使に関する事柄については、選挙の公正かつ適正な実施の確保や他の制度との整合性に配慮することが必要である。

(総務省)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

16)司法手続

(推進会議の認識)

 刑事訴訟手続きや民事訴訟手続きを始めとする司法手続きにおいては、障害があるために意思表示や理解の面で制約を受けている人に対する配慮が、著しく欠けているとの指摘がある。例えば捜査段階においては、逮捕状の内容や黙秘権などについて取調べ者が一般的な説明しかしないため、障害者は何を言われているのか理解できず、有効・適切に自己防衛することができないことが多い。公訴、公判、刑の執行、拘禁施設全般にわたっても同様で、障害のある被疑者が意思表示等の面でどのような困難さをもっているかを把握、留意するという過程は全くないという指摘がある。
 民事手続においても、口頭弁論手続のみならず、尋問や証拠調べ手続き、さらには、判決等の手続きにおいても、手続き上の配慮があるとは言い難い。
 さらに、民事訴訟手続や刑事訴訟手続等における障害者のコミュニケーションの確保のために必要な人的、物理的支援に係る費用についても、障害のない人の場合と比較して不利益を負う状況にある。
 以上のような状況を踏まえ、障害者への司法手続き上の手続的適正を確保し、もってその権利を保障するための措置を講ずることが必要である。

【司法に係る手続と必要な配慮】

 国及び地方公共団体は、障害者が被疑者、被告人、受刑者等の直接の当事者の場合において、少年事件の手続き、捜査(取調べ、実況見分、逮捕等)、公判、判決、刑の執行、受刑を含む拘禁手続き、民事事件における口頭弁論、証拠調べや判決手続き等、手続き全般にわたって、障害者の特性に応じた手続き上の配慮が必要であり、そのために必要な措置を取らなければならないが、障害者が参考人、証人、裁判員、傍聴者など間接的な関わりを持つ場合においても、同様の措置が行われなければならない。

【コミュニケーション手段等の確保措置】

 国及び地方公共団体は、上記手続き上の配慮、特に障害者が必要とする適切なコミュニケーション手段等を確保するための措置を講ずると同時に、これらのコミュニケーション手段等についての情報を、障害者に告知するべきである。このコミュニケーション手段等には、手話通訳者、要約筆記者、盲ろう通訳者、知的障害者等への説明者等の立会いによる情報保障を含み、司法機関としてこれらの者への研修を行うべきである。

【司法関係者に対する研修】

 国及び地方公共団体は、司法手続きに係る関係職員(警察官及び刑務官を含む。)に対して、障害の理解及び必要とされる手続き上の配慮に関して、研修を行うべきである。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 司法手続において、障害者が必要とする手続き上の配慮、特に適切なコミュニケーション手段等を確保するための措置を講ずること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 警察では、犯罪捜査規範(昭和32 年国家公安委員会規則第2号)第168条の2において、精神又は身体に障害のある者の取調べにおける留意事項を定めるとともに、障害種別ごとに取調べを行うに当たって留意すべき事項等について随時指導を行い、適正な捜査の推進に努めている。
  • 留置施設内における障がい者に対する適切なコミュニケーション手段等 の確保については、既に手話による通訳、補聴器の使用の許可等の必要な措置が講じられている。
     また、視覚障害者は、差入れにより留置施設内で点字の書籍を閲覧することもできる。
  • 被疑者を留置施設に拘禁することについては、当該被疑者の健康状態等を総合的に勘案した上で決定されることから、障がいの程度が重い被疑者については留置施設に拘禁されない選択肢もあり得るところ、すべての留置施設に一定の設備等を設けるように義務を課すことについては、慎重な検討が必要である。

(警察庁)

(法務省)

  • 司法手続に係る関係職員(警察官及び刑務官を含む。)に対して、障害の理解及び必要とされる手続き上の配慮に関して研修を行うこと。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 警察では、警察学校や警察署等の職場において、有識者による講話、手話講習、障害者施設への訪問実習等、障害の特性や障害に配慮したコミュニケーション等への理解を深める研修を行っている。また、障害のある者の取調べに関する研修を実施している。

(警察庁)

(実施・検討に当たっての留意点)

  1. 検察庁職員に対し,これまでも各種研修において人権等に関する講義を実施してきたところであるが,ご指摘の点を踏まえ,研修内容について検討する。
  2. 刑務官に対しては,既に,矯正研修所及び同支所において,新採用職員に対する初任研修課程及び幹部要員に対する任用研修課程等に属する各種研修の中で,人権問題に関する研修科目を設け,障害者を含めた被収容者に対し,人権を配慮した処遇を適切かつ効果的に行うために必要な条約や法令等の知識及び技能の習得を図っている。
    刑務官は「司法手続に係る関係職員」に属するが,被収容者を処遇することを主な職務とする性質上,研修を実施する中で,処遇に密接に関わる「障害の理解」に係る部分と,「必要とされる手続き上の配慮」に係る部分とでは,取り扱われる比重に差が生じるものであることを承知おき願いたい。

(法務省)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

17)国際協力

(推進会議の認識)

 日本は、第1次及び第2次「アジア太平洋障害者の十年(1993-2002、2003-2012)の提唱国として、NGO等と協力しつつ、アジア太平洋における障害分野の国際協力に積極的に貢献してきており、諸外国からも高い評価を受けている。今後も国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)を中心に、更に積極的な役割を期待されている。さらに、アフリカや中南米での実績もあり、アジア太平洋地域を越えた広範な地域での活動を継続し、推進すべきである。日本は、障害分野での国際協力について、法的には直接的な規定を有していないが、障害者権利条約は国際協力の必要性をうたっており、障害分野における国際協力を促進するためには、基本法に、国際協力に関する取り組みを行う旨を盛り込む必要があるべきことを明記する必要がある。
 また、国際協力においては、障害に特化した国際協力事業だけでなく、あらゆる国際協力事業について障害者が担い手及び受益者となりうるようアクセシビリティの確保等を重視するべきである。その際、外国政府や国際機関だけでなく、NGO等、特に障害者の組織と共同して取り組むことが重要である。

 以上を踏まえ、基本法には次の観点を盛り込むべきである。

  • 障害分野における国際協力に必要な取組を行うこと。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 「国際協力」は政府開発援助以外も含む幅広い概念であるが,国際協 力においても障害者の地位の向上に資するよう今後も積極的に取り組んでいく所存である。その上で,特定の分野における国際協力について,立法措置を行わずとも実施可能な取組をあえて法制化することで,国際協力の柔軟性を損なうことのないよう,具体的な条文化については,大局的観点も踏まえながら,十分慎重に検討すべきことに留意する必要がある。この点,障害者権利条約においては「各締約国の義務に影響を及ぼすものではない(第32条2)」と規定されており、同条約は、「国際協力」について法律上の義務とすることまで求めていないと考えられる。
  • なお、参考までに、同条約の以下の規定にも留意する必要があると考えられる。
    ①「必要な取組を行う」との部分に関し,同条約においては「適当かつ効果的な措置をとる(第32条1)」と規定されている。
    ②同様に,「外国政府,国際機関又は障害者の組織を含む民間団体との連携」との部分に関しては,「国家間において並びに適当な場合には関連のある国際的及び地域的機関並びに市民社会(特に障害者の組織)と連携して(第32条1)」と規定されている。

(外務省)

  • 障害分野における国際協力は、外国政府、国際機関又は障害者の組織を含む民間団体との連携により行うこと。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 同上

(外務省)

  • 障害分野における国際協力について、その取組の担い手及び受益者として障害者が参加できるように、国際協力事業全般のバリアフリーの促進とともに、合理的配慮の提供を確保すること。

(実施・検討に当たっての留意点)

  • 同上

(外務省)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

4 推進体制

1)組織

(推進会議の認識)

【組織】

 障害者権利条約では、監視機関(モニタリング機関)について、締約国に対して、自国の法律上及び行政上の制度に従い、この条約の実施を監視するための枠組みを自国内において維持・強化・設置することなどを要請している。

(国)

 中央障害者施策推進協議会及び推進会議を発展的に改組し、障害当事者、学識経験者等で構成する審議会組織を新たに内閣府に設置すべきである。その際、当事者の意見を反映させる観点から、構成員の過半数を障害当事者とすることが必要である。

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 委員の具体的な構成に関する規定については、委員の任命権者である内閣総理大臣の人事権とのバランスを考慮しつつ、慎重に検討する必要がある。
 他方で、現行法第25 条第2項において、委員の構成については障害者の実情を踏まえた協議を行うことができるよう配慮する旨が定められており、新審議会組織の委員構成についても同規定の趣旨が引き継がれる必要があると考えている。

(内閣府)

(地方)

 各都道府県及び市町村において、実態を踏まえた実効性のある都道府県障害者計画を策定し、地方においても障害者権利条約の理念を実現していくためには、地方における施策の実施状況の監視を行う権限を新たに付与するなど、現行の地方障害者施策推進協議会の権限を強化し、当事者の意見を反映させる観点から、その構成員の過半数を障害当事者とすることが必要である。

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 委員の任命権は、地方公共団体の長にあることから、地域主権の考え方を踏まえつつ、慎重に検討する必要がある。

(内閣府)

 また、地方における障害者施策の多くは、市町村により実施されていることから、市町村においても、地方障害者施策推進協議会の権限を強化した新たな組織を必置とすべきである。

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 市町村のうち、政令指定都市においては、現行法上、地方障害者施策推進協議会が必置とされているところであるが、それ以外の市町村においても新たに審議会組織を必置とすることについては、地域主権の考え方を踏まえつつ、慎重に検討する必要がある。

(内閣府)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

2)所掌事務

(推進会議の認識)

【所掌事務】

(国)

 国に置かれる審議会組織は、障害者施策の確実な実施を図るため、以下の事務を担う必要がある。

  • 障害者基本計画策定の際の意見具申を行うこと
  • 障害者に関する基本的な政策に関する調査審議を行うこと
  • 障害者に関する施策の実施状況を監視し、必要に応じて関係各大臣に勧告を行うこと

 また、勧告が行われた場合に、関係大臣は、これに基づき講じた施策について、審議会組織に報告を行わなければならないこととすべきである。
 改革集中期間内にあっては、これらに加えて、障害者制度の集中的な改革の推進のため、必要な調査審議を行うとともに、関係大臣に意見を述べられるようにするべきである。
 また、調査審議を実効あるものとするため、関係各大臣に資料の提出や説明など必要な協力を求めることや、意見具申を行えるようにすることが必要である。
 加えて、地方における障害者施策の推進状況を的確に把握するため、地方の監視機関に対して、施策の実施状況の報告を求めることができるようにすべきである。
 上記の任務を十全に果たすため、監視等の審議に当たって、必要な情報保障を含めた委員の適正な待遇の確保や必要な事務局体制の整備をすべきである。

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 御意見を踏まえ、どのような規定の仕方がありうるか検討してまいりたい。

(内閣府)

(地方)

 地方に置かれる審議会組織は、地方における障害者施策の実施を図り、権利条約の理念を実現するため、現行の事務に加えて、以下の事務を新たに担う必要がある。

  • 施策の実施状況の監視事務を行うこと

(実施・検討に当たっての留意点)

→ 御意見を踏まえ、どのような規定の仕方がありうるか検討してまいりたい。

(内閣府)

(基本法改正に当たって政府に求める意見)

○(P)

Ⅱ 「障害」の表記

(推進会議の認識)

【作業チームの設置】

 推進会議は、「障害」の表記に関する作業チームを設置し、「障害」のほか、「障碍」、「障がい」、「チャレンジド」等の様々な見解があることを踏まえ、それぞれの表記を採用している障害者団体、地方公共団体、企業、マスメディア、学識経験者等10名から、その考え方や運用状況等についてヒアリングを行うとともに、障害団体関係者も含む一般からの意見募集を実施した。同作業チームによる報告を受けた推進会議はその報告に基づき、現時点における考え方の整理と今後の課題について検討を行い、以下のことを確認した。

【表記問題に対する結論】

 「障害」の表記については、様々な主体がそれぞれの考えに基づき、様々な表記を用いており、法令等における「障害」の表記について、見解の一致をみなかった現時点において新たに特定の表記に決定することは困難であると判断せざるを得ない。  他方で、この度の様々な関係者、有識者からのヒアリング等を通じて、これまで明らかになっていなかった検討課題や論点も浮かび上がってきており、今後「障害」の表記に関する議論を進めるに当たっては、以下の観点が必要と考えられる。

  • 「障害(者)」の表記は、障害のある当事者(家族を含む。)のアイデンティティと密接な関係があるので、当事者がどのような呼称や表記を望んでいるかに配慮すること。
  • 「障害」の表記を社会モデルの観点から検討していくに当たっては、障害者権利条約における障害者(persons with disabilities)の考え方、ICF(国際生活機能分類)の障害概念、及び障害学における表記に関する議論等との整合性に配慮すること。

 これらを踏まえ、法令等における「障害」の表記については、当面、現状の「障害」を用いることとし、今後、制度改革の集中期間内を目途に一定の結論を得ることを目指すべきである。

【今後の課題】

 今後の取り組みとして、具体的には、以下の取り組みが重要であるが、その際、障害は様々な障壁との相互作用によって生ずるものであるという障害者権利条約の考え方を念頭に置きつつ、それぞれの表記に関する考え方を国民に広く紹介し、各界各層の議論を喚起するとともに、その動向やそれぞれの表記の普及状況等を注視しながら、今後、更に推進会議においても検討を進め、意見集約を図っていく必要がある。
 なお、表現の多様性を確保する観点から自治体等が「障碍」という表記を使いやすくするべきとの意見もあり、「碍」を常用漢字に追加するよう提言することの適否について、併せて検討すべきである。

 以上を踏まえて、次のことを行うべきである。

  • 各種シンポジウムや障害者週間等の啓発事業を通じて、「障害」のそれぞれの表記に関する議論を紹介するとともに、幅広く様々な主体における議論を喚起していくこと。
  • 「障害」のそれぞれの表記の普及状況について、定期的に調査を行うなど、その把握に努めること。
  • 近年、国会においても「障碍」や「障がい」等の表記を挙げて、「障害」の表記の在り方に関する議論が度々なされており、このような動向も注視しつつ検討を進めること。

別紙1

(P75について)

  • 1 民事訴訟法においては,以下のとおり,障害を有する方が直接及び間接の参加者として効果的な役割を果たすことを容易にするため,手続上の配慮及び年齢に適した配慮がされており,適切なコミュニケーション手段等を確保するために必要な措置は既に講じられている。
    • (1) 障害を有する方が適切に訴訟追行をすることができるようにするという観点から設けられた制度
      • ア 障害等のため訴訟能力を有しないとされる場合には,法定代理人が訴訟を追行する(同法第31条本文参照)。
      • イ 訴訟能力を有する場合であっても,訴訟代理人を選任(同法第54条第1項)することにより,訴訟代理人を通じて適切な訴訟行為をすることが可能。
      • ウ 当事者本人が訴訟追行するに当たって,その障害等により十分な訴訟行為をすることができない場合には,裁判所の許可を得て,当事者のために法廷で陳述することができる「補佐人」とともに,裁判所に出頭することができる(同法第60条第1項)。
      • エ 耳が聞こえない方が当事者や証人等である場合には,裁判所や他の訴訟関係者と意思疎通を図り,自らの陳述等を十分にすることができるように,手話による通訳人を立ち会わせる,あるいは筆談によって陳述等をさせる等の措置をとることが可能(同法第154条第1項)。
    • (2) 障害の程度の如何を問わず,未成年者が不利益を被らないようにするとの観点から,原則として,未成年者は訴訟能力を有しないものとし(同法第28条),法定代理人を通じて適切な訴訟追行ができるものとして(同法第31条本文),未成年者の保護を図っている。
  • 2 刑事訴訟法は,49条で「被告人は,読むことができないとき,又は目の見えないときは,公判調書の朗読を求めることができる」とし,176条で「耳の聞こえない者又は口のきけない者に陳述をさせる場合には,通訳人に通訳をさせることができる」とするなど,障がい者に関する規定を置いており,また,以下のとおり,捜査・公判において,障害者に対し,その障害の状況や程度に応じて様々な配慮が行われ,適切な対応がなされている。
    • (1) 捜査段階においては,まず,逮捕状により被疑者を逮捕する場合,刑事訴訟法201条1項により,被疑者に逮捕状を示さなければならないが,被疑者において,目が見えない場合や,字を読むことができない場合には,逮捕状の記載内容をできる限り分かりやすく読み聞かせている。また,知的障害があるなどして意思疎通の困難な方の場合,その困難さの程度に応じて,記載内容をできる限り分かりやすく説明するなど適切な方法でコミュニケーションを図るなど,被疑者の障害の状況や程度に応じて適切な対応を取っている。
    • (2) 取調べや実況見分においては,被疑者の年齢,境遇,性格,性別等の諸事情を考慮して適切に対応しており,例えば,知的障害があるなどして意思疎通の困難な方の場合,その困難さの程度に応じて,発問をできる限り分かりやすく行うなど適切な方法でコミュニケーションを図るなどしている。また,聴覚障がい者の場合には,必要に応じて,例えば,手話通訳者による通訳を介したり,筆談を行うなどしており,被疑者の障害の状況や程度に応じて適切な対応を取っている。
    • (3) 公判段階においても,聴覚障がい者の場合,実務上手話通訳などによる陳述がなされているほか,知的障害があるなどして意思疎通の困難な方に対する質問等の場合,発問をできる限り分かりやすくするとともに,こちらの質問等を正確に理解できているか適時確認するなどして対処している。なお,公判廷における具体的な運用は,裁判所の所管事項であることから,当省として詳細に把握しているものではないことを付言する。
  • 3 傍聴者に対する措置については、憲法第82条第1項の規定の趣旨が、裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障し、ひいては裁判に対する国民の信頼を確保しようとすることにあるとされ、各人が裁判所に対して傍聴することを権利として要求できることまでを認めたものではないとされていること(平成元.3.8最高裁判所大法廷判決)、傍聴人に対する配慮は裁判所の所掌に係るものと考えられることを踏まえ、被疑者・被告人に対する措置と同様に扱うことの可否について検討する必要がある。
  • 4 刑事施設においては,以下のとおり,障害を有する方が必要とする手続上の配慮や適切なコミュニケーション手段等を確保する必要な措置が既に講じられている。
    • (1) 福祉サービス等の申請手続に対する援助などを行うため,一部を除く刑事施設に社会福祉士や精神保健福祉士を配置している。
    • (2) 性犯罪再犯防止指導においては,知的能力に制約があり,通常の指導プログラムの実施が難しい受刑者用のプログラムを整備している。
    • (3) 被収容者の補正器具の使用について,視聴覚障害のある被収容者には,自己の眼鏡,補聴器等を使用させ,必要に応じて施設が貸与又は支給するなど,障害の程度に応じて必要な補正器具を使用させることとしている。
    • (4) 受刑者には,障害の程度に応じて,当該受刑者が実施可能な刑務作業を指定するなどの配慮を講じている。
    • (5) 被収容者又は外部交通の相手方が視聴覚等に障害を有するため,手話又は点字を使用して外部交通を行う場合において,その内容を確認するために費用を要したときは,その費用は国庫の負担としている。
    • (6) 聴覚障害者については,職員が筆談により意思疎通を図るなどの配慮を講じている。

(法務省)

別紙2-1

(P36について)

  • 文部科学省としては、
    • ①平成18年の学校教育法改正により、通常の学級を含め、小・中学校等の 特別支援教育を推進することを明確に規定するとともに、
    • ②就学手続についても、平成14年度より認定就学制度を導入し、
    • ③平成19年度より障害のある子どもの就学先の決定に際する保護者の意見 の聴取の義務付けを行う
    など、従来よりインクルーシブな教育制度の確保に資する方向で制度改善を 行ってきたところであり、平成21年5月1日現在において、就学基準に該 当する子どもの約3割が実際には小学校に就学しているという現状に鑑みれ ば、「基準に該当する障害のある子どもは特別支援学校に就学する原則分離別 学の仕組みになっている」という指摘は当たらない。
  • 個別分野における基本的方向と今後の進め方のうち教育分野については、 現在、平成22年6月29日の閣議決定「障害者制度改革の推進のための基 本的な方向について」に従って、文部科学省において検討を行っている。具 体的には、中央教育審議会初等中等教育分科会特別支援教育の在り方に関す る特別委員会においては、以下のような方向で議論が行われているところで ある。

(インクルーシブ教育システム構築に向けての特別支援教育の方向性について)

  • ○インクルーシブ教育システム(包容する教育制度)の理念とそれに向かっていく方向性に賛成。
  • ○インクルーシブ教育システムにおいては、同じ場で共に学ぶことを追求するとともに、特別な教育的ニーズのある児童生徒に対して、その時点で教育的ニーズに最も的確にこたえる指導を提供できる多様で柔軟な仕組みを整備することが重要。子どもの学習権を保障する観点から、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある「多様な学びの場」を用意しておくことが必要。
  • ○財源負担も含めた国民的合意を図りながら、大きな枠組みを改善する中で、「共に育ち、共に学ぶ」体制を求めていくべきである。

(就学相談・就学先決定の在り方について)

  • ○一人一人の教育的ニーズを保障する就学先を決定するため、また、本人・保護者、学校、教育委員会が円滑に合意形成を図るため、障害のある子どもの教育相談・支援を乳幼児期を含め早期から行うことが必要。
  • ○就学基準に該当する障害のある子どもは、特別支援学校に原則就学するという従来の就学先決定の仕組みを改め、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、専門家の意見等を踏まえた総合的な観点から就学先を決定する仕組みとすることが適当。その際、本人・保護者に対し十分情報提供をしつつ、本人・保護者の意見を最大限尊重し、本人・保護者と教育委員会、学校等が教育的ニーズと必要な支援について合意形成を図り、最終的には市町村教育委員会が決定。本人・保護者と教育委員会、学校等の意見が一致しない場合の調整の仕組みについて、今後、検討していくことが必要。
  • ○就学先決定後も、継続的な教育相談を行うとともに、その結果に合わせて柔軟に就学先の見直しを図り適切な支援を行っていくことが適当。

(インクルーシブ教育システム構築のための人的・物的な環境整備について)

  • ○発達障害も含め、特別支援教育の更なる環境整備が必要。
  • ○合理的配慮については、今後、障害種ごとや、ソフト・ハードの両面から検討をしていくことが必要。
  • ○教育条件の整備のためには、国及び自治体の財政的な裏付けが必要である。
  • 「基本法改正に当たって政府に求める意見」については、中教審の検討状況を踏まえて記述すべき。
  • 「障害の状態に応じ、十分な教育が受けられるようにする」という現行の規定は、インクルーシブな教育制度と矛盾するものではなく、表現を改める必要はない。中教審においても、インクルーシブ教育システムにおいては、同じ場で共に学ぶことを追求するとともに、特別な教育的ニーズのある児童生徒に対して、その時点で教育的ニーズに最も的確にこたえる指導を提供できる多様で柔軟な仕組みを整備することが重要であり、子どもの学習権を保障する観点から、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある「多様な学びの場」を用意しておくことが必要との方向性が示されており、文部科学省としては、「障害の状態に応じ、十分な教育が受けられるようにする」との現行の規定は適切であると考えている。
  • また、就学先の決定を保護者に全面的に委ねることについては、例えば以下のような場合には、子どもの学習権を保障することが難しくなる可能性があり、慎重な検討が必要であると考えている。
    • 就学前健診の受診や個別の教育支援計画の作成を認めないために障害の状態や教育上のニーズの把握・対応が不可能な場合など、保護者の障害受容が得られない場合
    • 重度の障害等により障害のある子どもが日常的に必要とする医療的ケア等の提供が学校において物理的に困難な場合
    • 行動・情緒面の障害等により、他の子どもに重大な危害等が及ぶ恐れが強い場合
    • 保護者の子どもに対する虐待が疑われる場合

中教審においても、

  • ○保護者は、学校や市町村教育委員会が自分の子どもを地域で進んで受け入れてくれるという姿勢が見られないと、心を開いて就学相談をすることができない。学校や市町村教育委員会が保護者の伴走者として親身になって相談を行うことで保護者との信頼関係が生まれる。学校、市町村教育委員会は、障害のある子どもを地域で受け入れるという意識を持って就学相談・就学先決定に臨む必要がある。
  • ○保護者は、何よりもまず、子どもの健康、学習、発達、成長という観点を最優先する立場で就学相談・就学先決定に臨む必要がある。

との方向で議論が行われているところである。

  • 合理的配慮の具体的内容については現時点では「障がい者制度改革推進会議」において議論されていないと認識している。そのため、「当該障害者に必要な合理的配慮を提供すること」の具体的内容が明らかではない。また、これに加えて実施すべきものとする「追加的な教職員の配置や施設・設備の整備等の条件整備を行うために計画的に必要な措置を講ずること」との関係も明らかではない。いずれにせよ、インクルーシブ教育システムについては、理念のみならず人的・物的な環境整備とセットでの議論が必要であり、同時に現下の財政状況や人材養成の現状を踏まえた現実的な議論が必要である。教職員の人件費、施設・設備費については、義務教育費国庫負担法等により、国と都道府県等が負担していることから、国・地方を通じた財政措置を行うことが必要である。

(文部科学省)

別紙2-2

文部科学省から提出されたその他の留意点

2.総則関係全般

 「2.総則関係」全般の記述については、例えば、「7)国民の理解・責務」の「事業者等の責務を明らかにすること」など、具体的な内容が明らかではない部分については、各省庁から、現時点で「実施・検討に当たっての留意点」を示すことは困難である。

3.基本的施策関係

1)地域生活

 地域生活については、第一次意見においては、以下の記述となっており、この文面からは「学校」における支援は想定されていないように見えるが、「地域生活」の語の概念が修正されたのであれば、その内容について記述する必要があるのではないかと考える。

4.「地域生活」を可能とするための支援

 すべての障害者が家族への依存から脱却し、自ら選択した地域において自立した生活を営む権利を有することを確認するとともに、その実現のために24 時間介助等を含む支援制度の構築を目指す。制度の構築に当たっては、地域間格差が生じないよう十分に留意する。

 また、今回の第二次意見の「2.総則関係 3)基本理念」の【地域社会における生活の実現】の「具体的には」以降の記述の内容とも異なると思われる。

 以上を踏まえると、現時点で「実施・検討に当たっての留意点」を示すことは困難である。

別紙3-1

(P32について)

① 「障害者が障害のない者と平等に」という表現は、「障害者」というレッテル貼りにつながりかねないので、「障害の有無にかかわらず、全ての者が」という表現にすべきと考える。

② 現行制度でも、労務提供の形態や報酬の労務対償性及びこれらに関連する諸要素を勘案して総合的に判断し、障害の有無に関わらず実質的な使用従属性が認められる場合は、労働基準法上の「労働者」に該当する点に留意する必要がある。

③ 現在の福祉的就労に従事している障害者を労働者として整理する場合には、労働契約の締結により、就業義務及び賃金支払義務その他労働関係における権利義務関係をあらかじめ明確化することが必要である(モデル労働契約の整備等)。

④ 労働基準法上の「労働者」に該当する障害者は、労働契約上の義務を負い、その義務に違反した場合、一定の責任を負うこととなる点についても、留意する必要がある。一方、現在の福祉的就労に従事している障害者を労働者以外の者として整理する場合には、労働契約(労働者性)の実質的な要素(就労義務及び賃金支払義務)が含まれないよう、施設と障害者の法的関係(契約関係)を設定する必要がある(「工賃」といった呼称の見直し等)。

⑤ 全ての障害者が労働法規の適用を受けることは、現実的には難しいと考えられ、労働法規の適用を受けるような働き方ができないが働く意欲のある障害者に対する福祉的な就労の役割を持つ分野が引き続き必要である。

⑥ 「生計の維持可能な賃金の確保などのために必要な支援」の実施主体や具体的な内容を明らかにしておく必要があるのではないか。

 なお、「賃金」は労働の対価として使用者が労働者に支払うものとされ、最低限支払うべき額及びその支払方法(※)について最低賃金法、労働基準法においてルールが定められているが、仮に「一般労働法規」の適用を前提に、賃金補填の在り方を検討する場合には、以下のような点に留意する必要がある。

  • 国が補填する金銭を労働の対価として支払われる「賃金」と捉えてよいのかどうか。
  • また、仮に、国が使用者ではなく障害者に対して直接金銭補填することとした場合、補填した金銭は使用者が障害者に対して直接支払うものではなく、また補填額もあわせて全額を使用者から支払うものではないため、直接払い・全額払いの原則に反しないのかどうか。
  • また、仮に、最低賃金減額特例許可に基づき使用者から障害者に支払われる減額後の最低賃金額と一般の最低賃金額との差額を、国が障害者に対して直接又は間接に金銭補填することとした場合、最低賃金法に基づき最低賃金減額特例許可した国自らが、その許可した減額分を補填することとなり、整合性を担保できるのかどうか。

(※)通貨払い、直接払い、全額払い、毎月払い、一定期日払いの5原則

 さらに、賃金補填により、同一労働同一賃金の下で、職場における補填を受ける者とそうでない者との間の公平感が失われ、モラルハザードを招くおそれがあることや、事業主が合理的配慮、職場改善等により障害者の労働能力を向上させるインセンティブを減退させてしまう懸念があること、財源のあり方のほか、障害年金を含めた所得保障の観点から、障害のない労働者との均衡にも留意しつつ、総合的な検討が必要であることに留意する必要がある。

(厚生労働省)

別紙3-2

厚生労働省から提出されたその他の留意点

【全体について】

(1)言葉の意味の明確化と客観化

 基本法は、障害者施策についての基本となる法であり、行政や国民の責務等を明らかにするものであることから、それぞれの言葉の意味や条文の意図するところについて、あいまいな表現ではなく明確に規定されることが必要である。
 例えば、「すべての障害者」、「平等の権利」、「インクルーシブ」、「合理的配慮」、「社会的不利益」、「地域社会で生活する権利」、「あらゆる差別」、「制度間格差」といった言葉が何を意味しているかや、「○○等」の「等」が何を指しているかについて、共通認識が持てるように条文化されないと、具体的な施策として実施することが困難となる。

(2)具体的な実施可能性についての担保

 基本法は、障害者施策についての基本となる法であることから、ここで条文化されたものについては、具体的にどのような手段によって実現していくかについて相当程度の可能性について担保されることが必要である。
 具体的な実施可能性について担保されないまま、「○○の措置をとる」、「○○の責務を有する」、「○○を保障する」といった規定がされたとしても、これを実現することは困難である。
 また、行政の財政負担を伴うものや、事業者等の負担を伴うものついては、その負担が担えるものか、負担する側の意向を踏まえた上で、規定されることが必要である。

(3)総合福祉部会で検討中の事項や本年6月の閣議決定で示されたスケジュールに沿って検討がなされている事項についての留保

 例えば、基本的施策関係の「地域生活支援」などの記述については、総合福祉部会や推進会議との合同チームで検討されている最中のものであり、これらについて、一定の結論を示すような記述がされるべきではない。
 本年6月の閣議決定に沿って各省庁において検討することとされている事項についても同様である。
 また、福祉サービス等の具体的なあり方については、障害者総合福祉法(仮称)等の個別法で規定されるべきものである。基本法たる法に、個別法に係る具体的な内容を記述することは不適当である。

3.基本的施策関係

1)地域生活支援

 福祉サービス等の具体的なあり方については、障害者総合福祉法(仮称)等の個別法で規定されるべきものである。基本法たる法に、個別法に係る具体的な内容を記述することは不適当である。

2)労働及び雇用

  • 「全体について」(1)で示した用語に加え、「労働施策」、「福祉施策」、「一体的展開」、「労働の権利」、「社会的事業所」、「協同組合」、「あらゆる障害」、「特定の機関」等の用語の意味について、共通認識が持てるように条文化する必要がある。
  • 「全体について」(2)及び(3)に加え、「労働及び雇用」で掲げられている観点については、現在、就労合同作業チームにおいて検討しており、多くの事項について未だ結論が出ていないことに加え、労働政策審議会の審議を経る必要があることから、結論的な記述を行うことは適当ではない。

4)健康、医療

① 精神医療のあり方については、現在、「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」(平成22年6月29日閣議決定)を踏まえ、「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」において検討を開始したところであり、また、精神医療以外の医療については、合同作業チームにおいて1月以降に議論することとされている。現時点で結論的な記述を行うのは避けるべき。

② 「全体について」(3)にあるように、合同作業チームにおいて必ずしも具体的に議論されていないと思われる点が「推進会議の認識」として示されているのではないか。例えば、「病床数の削減」など、現時点で結論的な記述を行うのは避けるべき。

【人権尊重の観点からの精神医療の体制整備】

 「全体について」(3)にあるように、合同作業チームにおいて必ずしも具体的に議論されていないと思われる点が「推進会議の認識」として示されているのではないか。例えば、「病床数の削減」など、現時点で結論的な記述を行うのは避けるべき。

6)精神障害者に係る地域移行の促進と医療における適正手続の確保について

① 「4)健康、医療」の①で示したとおり、精神医療については、「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」(平成22年6月29日閣議決定)を踏まえ、「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」において検討を開始したところであり、現時点で結論的な記述を行うのは避けるべき。

② 「4)健康、医療」の②で示したとおり、推進会議の認識の中に合同作業チームで具体的に議論されていない点が盛り込まれているのではないか。例えば、「病床数の削減」など、現時点で結論的な記述を行うのは避けるべき。

③ 精神保健福祉法は、これに基づき必要な医療の提供や保健及び福祉施策が実施されているものであり、医療観察法についても、同法に基づき現に必要な医療の提供が行われている。これらの代替措置が具体的に検討されていないにもかかわらず、安易に「廃止を含め」抜本的に見直すといった方向性を打ち出すことは適当ではないと考えられ、「廃止を含め」については削除すべきである。

④ 精神障害者の入院ニーズを精査した上で、病床数のあり方を議論する必要性は理解できるものの、原案の書きぶりでは、削減目標ありきで、実行可能性に対する視点が欠けているのではないか。
 病床数の削減を行うとすれば、社会的入院の解消(認知症患者の方への対応)や、アウトリーチ体制の推進、急性期精神科救急医療などを含む精神科医療体制の構築、地域の受け皿の構築に関する施策の実施とセットであるべき。

7)障害のある子ども

 障害のある子どもに対して早期に適切な支援を行うためには、障害の「早期発見」という視点も不可欠ではないか。
 また、「推進会議の問題認識」の【障害のある子ども及び家族への支援】について、「早期に適切な支援」という部分を、「早期に発見し早期に適切な支援」に修正すべきではないか。

4.推進体制

 国における推進体制の在り方については、その所掌範囲や権限等について、関係省庁と協議し、合意を得た上で定められるべきである。
 また、「障害者に関する基本的な政策」、「障害者制度の集中的な改革」の内容、関係についても整理が必要である。

別紙4

外務省から提出されたその他の留意点

2.総則関係

1)目的(1パラ)

  • 「障害者を保護の客体であるとする見方から,すべての基本的人権の享有主体であるとの見方へ,考え方の根本を転換することが障害者権利条約の理念」とあるが,障害者権利条約にそのような規定はない。

2)定義(2パラ)

  • 「障害者の社会参加の制限や制約の原因が障害者個人にあるのではなく,機能障害(インペアメント)と社会との関係によって生じるものであるという「社会モデル」に立つ障害者権利条約」とあるが,障害者権利条約には,モデルに関する明示的規定はない。

4)差別の禁止(4パラ)

  • 「合理的配慮を提供しない場合も含む」とあるが,障害者権利条約においては,「合理的配慮の否定(第2条)」と規定されている。

6)国及び地方公共団体の責務(2パラ)

  • 「国及び地方公共団体は障害者への合理的配慮義務を有する」とあるが,これが仮に障害者権利条約に基づくのであれば,同条約においては,締約国は,「合理的配慮が提供されることを確保するためのすべての適当な措置をとる(第5条3)」と規定されている。

3.基本的施策関係

3)教育(1パラ)

  • 「障害者権利条約は,障害のある子どもとない子どもが共に教育を受けるインクルーシブ教育制度の構築を求めており」とあるが,同条約の仮訳では「インクルーシブ教育」という表現は用いられていない。

教育(9パラ)

  • 「障害者権利条約で規定しているインクルーシブ教育」とあるが,同条約の 仮訳では「インクルーシブ教育」という表現は用いられていない。

4)教育,医療(1パラ)

  • 「障害者権利条約の考え方を踏まえ,すべての障害者が可能な限り最高水準の健康を享受し」とあるが,障害者権利条約を踏まえるのであれば,障害者権利条約においては,「障害者が障害に基づく差別なしに到達可能な最高水準の健康を享受(第25 条)」と規定されている。

17)国際協力(1パラ)

  • 「障害者権利条約は国際協力の必要性をうたっており,障害分野における国際協力を促進するためには,基本法に,国際協力に関する取り組みを行う旨を盛り込む必要があるべきことを明記する必要がある」とあるが,同条約においては,「国際協力及びその促進が重要であることを認識し(第32条1)」と規定され,また「各締約国の義務に影響を及ぼすものではない(同条2)」と規定されている。

4.推進体制

1)組織(1パラ)

  • 「障害者権利条約では,監視機関(モニタリング機関)について,締約国に対して,自国の法律上及び行政上の制度に従い,この条約の実施を監視するための枠組みを自国内において維持・強化・設置することなどを要請している」とあるが,障害者権利条約においては,「締約国は,自国の法律上及び行政上の制度に従い,この条約の実施を促進し,保護し,及び監視するための枠組み(適当な場合には、一又は二以上の独立した仕組みを含む。)を自国内において維持し,強化し,指定し,又は設置する(第33条2)」と規定されている。