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日時:2013年02月03日(10:30~16:00)
場所:戸山サンライズ 大研修室
 

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大久保委員提出資料

自立支援法・総合福祉法に関する意見(第三回障がい者制度改革推進会議)

社会福祉法人 全日本手をつなぐ育成会
常務理事 大久保常明

○地域社会で生活する権利
1.権利規定を明文化する必要性についてどう考えるか

 「障害者基本法」の改正内容との関連で議論される必要があると考える。
2.自立の概念についてどう考えるか
 広義な意味では、日常生活や職業生活に困難があっても、自己決定・自己選択をもって 「自立(自律)」と考える。
 一方、知的障害のある人たちにおいて(発達障害のある人たちを含めて)、基本的生活習 慣、社会的生活・活動、コミュニケーション・対人関係などに困難さや課題が見受けられ、 その援助とその改善に向けた支援が行われてきている。また、現在、自己決定・自己選択 に向けた支援と援助の在り方が課題となっていると思われる。
 これらの支援は、通常、発達支援あるいは自立支援と言われ、知的障害のある人たちの 自己実現に資するものであり、エンパワメントでもある。この根底には、知的障害の軽重 にかかわらず、誰もが発達する可能性があるという「発達保障」の考え方がある。
 なお、知的障害のある人の中には、自らの思いや意思を表現したり訴えたりすることが 困難な人や行動上に大きな課題のある人もいる。これらの人の自立(自己決定と自己選択) への支援は、様々な支援スタッフの連携によって可能となる。知的障害のある人たちへの 支援にあたっては、その専門性と暮らしを支える支援のネットワークが重要と考える。

○障害の定義、適用範囲
1.障害の範囲についてどう考えるか

 「活動」や「参加」が制約・制限されている状態を「障害」とする考え方から、難病等 も含まれるとの見方が妥当と思われる。しかし、実際の制度の中で、その基準や有効な福 祉サービスの内容など課題もあると考える。
 現行の自立支援法は、発達障害や高次脳機能障害、肝機能障害(身体障害に追加)も対 象となるが、身体障害、精神障害、知的障害を対象に想定され、また、それぞれの法律や 医療との関係などを踏まえているものと思われる。
 制度の谷間の難病等の障害者を新たに福祉サービスの対象とする場合、その基準は当然、 恣意的なものでなく、一定の客観的な基準は必要になると考える。
 また、現在、支援の必要な谷間の「難病」のある人に対して、現行の難病対策の拡充で なく、自立支援法での対応の必要性については議論を要するのではないか。
 なお、総合福祉法(仮称)の検討にあたっては、他の法律や制度との整理を含め、広く 難病等の障害者を念頭に置いた議論が必要と考える。

○法定サービスメニュー 1.現行規定にない社会モデルの視点に立ったサービスメニューは必要か
2.自立支援給付と地域生活支援事業の区分けは必要なのか

 地域生活支援事業に地域間格差が顕著であるが、中央集権から地方分権(地域福祉)を 推進するうえで、基本的には自立支援給付と地域生活支援事業を分けることは必要であると考える。
 地域生活支援事業を自立支援給付(義務的経費)とすることは、確かに地方自治体の取 組みを促進する一定の効果はあるが、かつてのように中央が作った既製品を地方が利用者や事業者に押し付ける状況になるのではないか。地域福祉はその地域が主体的に創意工夫のもと進めていくものと考える。よって、統合補助金である地域生活支援事業の意義はるものと考える。
 なお、地域生活支援事業においても全国的に一定水準を確保すべき、「移動支援」、「コミュニケーション支援」、「日常生活用具」についての個別給付化は賛成である。

3.法定メニューの障害者の生活構造に沿った再編成とシンプル化についてどう考えるか
 サービス類型のシンプル化は必要であり、可能と考える。
訓練等給付と介護給付によりグループホームとケアホームに分かれるなど、その必要性 には疑問がある。
 そもそも、介護給付は介護保険の活用を意図したものと思われ、介護保険の活用を将来 的にも排除するものであれば、自立支援給付として一本化し、よりシンプルなサービス体系は可能と考える。
 また、現在、「多機能型」など、利用者のニーズに応じた仕組みにはなってきたが、平均障害程度区分による報酬単価を設けたことにより個別給付の意義が失われた感があった。その平均障害程度区分を廃止し、その障害程度に応じた個別給付が行われるようになったことによって、理屈上は、様々な事業所での柔軟な受け入れが可能となる。当然、それらに応じたサービスの質を確保するうえで、職員配置基準や専門性などをどうするかという課題はある。

4.自己決定支援の必要性についてどう考えるか
 知的障害のある人たちにとって、自己決定支援が重要と考える。ひとつはケアマネジメ ントを含めた相談支援であり、もうひとつは成年後見制度などの活用である。
 日常生活上のことから契約行為などでの自己決定への支援体制は、知的障害のある人の 権利擁護と深く関係しており、その体制整備が求められている。
 ついては、地域における相談支援体制の整備に向けた相談支援事業所の拡充が必要であ る。一方、成年後見制度が活用が進められているなか、経済的理由からか後見人等の約7割を家族が占めるなど課題も多く、後見費用の個別給付化の検討も必要と考える。

○支給決定プロセス
1.ニーズ把握の基本的視点をどこに置くか
(例えば、本人の障害の状況、本人の自己決定・選択、置かれた環境、及びそれらの相互関係)

 知的障害分野にあっては、健康や環境、基本的生活習慣、活動、参加、コミュニケーシ ョン・人間関係の状況、行動上の課題などとともに、家族の意向、本人の意思により、ニーズを把握する。
 特に、基本的生活習慣、活動、参加、コミュニケーション・人間関係の状況、行動上の 課題などは、標準化された尺度によって評価される必要があると考える。つまり、どこに暮らしても一定水準の支援が受けられる必要があるからである。
 また、ニーズ把握においては、ニーズは変化するものであり、一定期間ごとにモニタリ ングする必要があるが、これは、提供する支援の質を再評価することでもある。
2.障害程度区分の廃止とそれに代わる協議・調整による支給決定プロセスのための体制構築についてどう考えるか
 現行の障害程度区分には多くの問題があり、抜本的見直しに向けた廃止は同感であるが、知的障害の障害特性や活動、参加も含めた支援ニーズを反映した尺度としての「障害程度(支援)区分」は必要と考える。
 その理由は、客観的な基準による支給量の標準化は、全国の受給者の支援サービスを一定水準と確保するとともに給付の公平性を確保できることになるからである。
 また、支給決定に至る過程で、知的障害分野においては、現在の利用者の置かれている状況や利用者の意向を踏まえたケアマネジメントが重要と考える。
 知的障害のある人たちは、自ら各種サービスの利用の仕方を判断したり、単一サービス の利用であっても、その適否や変更の必要性、新たなニーズの発生などを自ら判断し、調整することが難しい場合があり、これらの補うケアマネジメント体制は、知的障害のある人たちにとって欠くことのできないものである。なお、ケアマネジメントを担う相談支援事業所の独立性と公平性、専門性が重要であることは言うまでもない。

3.セルフマネジメント・本人中心計画と相談支援機関、ピアカウンセリング・ピアサポートの役割についてどう考えるか
 既述したとおり、知的障害のある人たちにとって、支給決定プロセスにおいては、セル フマネジメントというよりケアマネジメントを中心として考えたい。

4.不服の場合の異議申立手続きについてどう考えるか

○地域移行
1.重度障害者の24時間介護体制の構築についてどう考えるか

 本項の検討にあたり、重症心身障害や強度行動障害のある人の24 時間の医療的ケアを含 む支援体制についても検討する必要がある。この場合の支援は、日常生活の介護にとどまらず、QOL(生活の質)に配慮した様々な支援が必要となる。
2.地域移行プログラムの法定化と期限の設定についてどう考えるか
 現在の入所施設利用者がより多く地域生活に移行していくことが望みたい。
 一方、相当数の退所者がみられるなか、新たな入所者も数多くあるという現状がある。
先ず、この現状を分析し、地域生活移行に向けた効果的な施策を検討することが肝要と考える。
3.地域移行支援策の法定化についてどう考えるか
 地域生活移行支援にあたって、障害の重い人たちの地域生活を視野に入れながら、地域 におけるサービス基盤や支援体制の在り方を検討するとともに、それらの計画的な整備に向け、財政的な裏付けをもったロードマップを策定することが必要と考える。これらを踏まえ、入所施設の廃止についての法定化が可能と考える。

○利用者負担
1.応益負担の廃止についてどう考えるか

 応益負担の廃止は妥当と考える。
なお、応能負担の場合、負担上限をどのように考えるかという課題はある。
2.負担の有無についてどのような原則と考え方をとるのか
 「食費・光熱費」はいわゆるホテルコスト(どこでどのような暮らしをしてもかかる費 用)といえる。「権利の主体としての障害者」への方向のなかで、しっかりとした所得保障を背景に市民としてあるいは消費者として、一般市民と同様にかかる費用については、払えるえるものは払うという方向を目指すべきではないかと考える。
 なお、食費のうち、栄養管理や調理等に係る費用は福祉サービスと位置づけるべきであ ると考える。

3.新基準の設定についてどう考えるか

○医療支援
1.医療支援の在り方についてどう考えるか

 知的障害のある人たちは、特に、高齢者は一般に比べ罹病率が高いとの統計もある。従 って、重度障害者医療費補助は自治体によって異なるが、国の制度として拡充する必要があると考える。
2.負担問題についてどう考えるか

○その他
1.現行の障害程度区分に基づく国庫負担基準の問題についてどう考えるか

2.障害者の地域生活のための財政負担の強化についてどう考えるか

3.地域間格差をどのようになくしていくのか
 国による財政負担の問題だけでなく、地域の行政や住民による地域づくりの視点もある。
例えば、地域自立支援協議会の活性化なども重要と考える。

*その他の事項(育成会として提起したい事項)
○日額制と月額制について

 障害福祉サービスに係る報酬の日額制が導入されたことにより、通所系サービスの利用者が、日によってサービスを選択することができることや入所施設やグループホーム利用者の帰省時等に他のサービスを利用できるという、様々な暮らし方が可能となる仕組みとなった。現在、複数のサービスを利用する人たちが少ないという現状があるが、それは、サービス基盤や相談支援、ケアマネジメント体制が地域に整備されてないことが大きな要因と考える。
 一方、事業者の収入の問題と日額制を安易に結びつけるべきではなく、先ずは、報酬単価そのものに注目するべきであり、収入の問題と日額制を分けて考える必要があると考える。
 よって、日額制は、利用者の選択権を保障し、生活の質を向上させる仕組みであり、報酬は日額制を基本とする必要があると考える。

○当面の問題を解消するための現行法の改正について
総合福祉法の検討をしていく一方で、当面の課題を確実に解消するため、次のとおり現行法を改正する必要があると考える。

  • 福祉サービスに要する費用の利用者負担は応能負担とする。
  • グループホーム・ケアホームは、地域での欠かすことができない暮らしの場となっており、現在、重い負担となっている家賃等について、その負担を軽減する助成制度を創設する。
  • 地域生活において重要な移動支援を個別給付とする。
  • 障害種別にかかわらず身近な障害児施設を利用できるようにするとともに、障害児施設等の発達支援の専門スタッフが保育所等を訪問し、支援する仕組みを作る。また、放課後等デイサービス事業を制度化する。
  • 市町村での相談支援センターの設置を促進し、地域で不足する相談支援体制を強化するとともに、サービス利用計画案(ケアマネジメント)を支給決定に反映できる仕組みを作る。また、自立支援協議会を法定化し、サービスの調整やサービス基盤の整備を推進する。

○障害児支援について
 障害児支援について今後議論するうえで、厚労省において開催された「障害児支援のあ り方に関する検討会」(家族、支援者、有識者等が参画)において、各施設や事業の根拠を「児童福祉法」に位置付けることを基本とすべきとの方向性が示されていることを踏まえる必要があると考える。