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竹下委員提出資料

意 見 書

障がい者制度改革推進会議 御中

2010年2月5日
障害者自立支援法訴訟全国弁護団

テーマ「障害者基本法について」その1

提出のタイミングが遅れて申し訳ありません。

 1 障害者自立支援法違憲訴訟における、障害者基本法に関する政府(旧政権)答弁 障害者自立支援法違憲訴訟において、大津地方裁判所での平成21年4月16日付被告第 1準備書面を皮切りに、各地の地裁において、被告国及び自治体は、障害者基本法の法規範 性について、概略、次のように主張している事実をよくご確認下さい。


法が障害者基本法と抵触するものでないこと
(1)原告らの主張
 原告らは,「障害者が, 障害に起因する不利益に関して公的支援を受けるための権利行使 に関して障害者から利用者負担を徴収することが障害者基本法第3条1項、障害者の社会参 加権(同法第3条2項)の侵害であり、障害を理由とした権利侵害の禁止条項(同法第3条3 項)違反でもあり、同法8条2項の『障害者の自主性が十分に尊重され,かつ障害者が,可能 な限り,地域において自立した日常生活を営むことができるよう配慮されなければならな い。』という障害者への自立生活配慮義務にも違反し,同法第12条3項の『地方公共団体は, 障害者がその年齢及び障害の状態に応じ,医療,介護,生活支援その他自立のための適切な支 援を受けられるよう必要な施策を講じなければならない。』という自治体の障害者に対する公 的支援義務にも抵触し、「障害者が働くことに対して利用者負担を徴収することは,同法第1 5条1項の障害者の障害の状態に配慮した職業訓練等実施義務に違反し,同3項の障害者の 地域における作業活動の場等人の必要な助成義務に違反する。」旨を主張する。

(2)被告らの主張
 そもそも原告らが引用する障害者基本法(昭和45 年法律第84 号)はいわゆる基本法である ところ,基本法とは,特定の「分野について国の制度,政策,対策に関する基本方針を明示した もの」であり,「その規律の対象としている分野については,基本法として他の法律に優越す る性格をもち,他の法律がこれに誘導されるという関係に立」つ反面,「直接に国民の権利義 務に影響を及ぼすような規定は設けられず、訓示規定とかいわゆるプログラム規定でその大 半が構成されている」ものにすぎない。
 原告らが引用する各規定についても,同法第3条各号は,「基本的理念」との見出しからも 明らかなように,「権利」との文言が用いられていても,それは,「障害者」が有する抽象的 な「理念的権利」にすぎず,司法的救済の対象となる具体的権利ということはできず,同法8 条や同法12条も「施策の基本方針」や「障害者の福祉に関する基本的施策」であり,基本法 を受けた法律によって施策が具体化されることが予定されているものである。


2 「基本法」の法規範性を否定することは法の支配、法治国家の否定であること
 ここで応益負担論争をしようという意図はありません。
国が「基本法」の法規範性を否定している事実を確認しておくこと、このような主張を許 さない法規を確立しなくてはならないことを確認しておくことが肝要だという指摘です。

 基本法の存在を法的に否定しようという姿勢は、基本法とはその更に基本法である憲法の 実現を図る法である以上、国の憲法遵守義務にも違背する法治国家を否定する主張です。  基本法違反を理由とする違法性の認定については、東京都立七生養護学校(当時)事件に 関する東京地方裁判所平成21年3月12日判決(平成17年(ワ)第9325号、同第2 2422号損害賠償等請求事件)が参考になります。
 同判決は、東京都議会議員らが、本件養護学校に赴いて保健室に保管されていた性教育用 教材を視察し、教材や性教育の内容に関して保健室にいた教員らを批判するなどした行為が、 旧教育基本法(平成18年法律第120号による廃止前の教育基本法(昭和22年法律第2 5号))10条1項にいう「不当な支配」に当たり、それゆえ、同視察に同行した東京都教育 委員会の職員らには、このような都議会議員らによる「不当な支配」から本件養護学校の個々 の教員を保護する義務があったものと判断し、同教育委員会職員らの不作為による当該保護 義務の違反があったことから、国家賠償法上の違法を認定しています。
 同判決は、「地方公共団体は、…学校の教員を同法10条1項にいう「不当な支配」から保 護するよう配慮すべき義務を負っている…教育委員会及び…事務局の職員は、…前記義務を全 うすべき職務上の義務を負っている…」と判示しています。
 つまり、同判決は、旧教育基本法の目的・趣旨に従って、同法10条1項に基づいて、地 方公共団体に対して具体的な配慮義務があることを認定したうえで、同教育委員会職員に義 務違反があったという判断をしています。
 すなわち、旧教育基本法10条1項にいう「不当な支配」から保護するよう配慮すべき義 務すなわち配慮されるべき教育における市民の権利は、抽象的な「理念的権利」ではなく、 司法救済の対象となる具体的権利であると判示しています。
 国(旧政権)の障害者基本法に関するあのような答弁が許されるならば、教育基本法改正 論争も障害者基本法改正論争も全く意味がありません。
 法規範性のない法律など抽象的掛け声に過ぎず、法的存在意義が薄弱という他ありません。

3 旧来の国の主張の問題点=権利性の完全否定
政府(旧政権下)答弁
訓示規定とかいわゆるプログラム規定でその大半が構成」
「同法第3条各号は「基本的理念」との見出しからも明らかなように「権利」との文言が 用いられていてもそれは「障害者」が有する抽象的な「理念的権利」にすぎず,司法的救済の 対象となる具体的権利ということはできず」

4 基本法第3条は憲法の基本的人権規定の具体化であること
 基本法3条は次の条項です。

(基本的理念)
第三条 1項 すべて障害者は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される 権利を有する。
2 すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加 する機会が与えられる。
3 何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為を してはならない。

障害者基本法第3条1項は憲法第13条及び第25条を、
第2項は憲法第25条を、
第3項は憲法第14条をそれぞれ具体化した法規です。

 憲法第13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する 国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重 を必要とする。」は障害者基本法よりも、「抽象的な法規」ですが、最高裁判例上、個人の人 格権等の具体的権利を司法上保障する直接的裁判規範性が認められています。
 より抽象的であるはずの憲法条項に裁判規範性が肯定されている以上、その下位法規の裁 判規範性を否定することは法論理破綻というべきです。
 少なくとも、現在の政府が平成22年1月7日付基本合意書において、
 自立支援法が「障害者の人間としての尊厳を深く傷つけたことに対し、原告らをはじめと する障害者及びその家族に心から反省の意を表明するとともに、この反省を踏まえ、今後の 施策の立案・実施に当たる。」と確認している以上、自立支援法が憲法第13条、障害者基本 法第3条1項に反したことを認めて政府が反省しているものと弁護団は理解しています。

5 基本法の法規範性の否定答弁を許さない法規を
 今回の改革推進会議における新法制定においては、上記のような暴論を二度と繰り返させ ない、そのような主張を完全に封じる法律条項にしておく必要があります。

「 障がい児者権利保障法第三条 (障がい児者の基本的人権保障)
 1項 すべての障がい児者は、憲法第13条に基づく基本的人権である本法に基づく裁 判規範性を有する具体的権利として、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生 活が保障される具体的権利が保障される。」
本書ではここまでにしておきますが、今後、同様の見地からの提言を続けてまいりますの で基本合意書の趣旨に基づき、しっかりとご対応を宜しくお願いします。

以上