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シンポジウム 「もっと知ろう、デイジー教科書を!」
日時:2013年02月03日(10:30~16:00)
場所:戸山サンライズ 大研修室
 

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障がい者制度改革推進会議 第3回(H22.2.15) 資料2

雇用に関する意見一覧

一般就労

福祉的就労

シームレスな支援

雇用の創出

その他

○一般就労

1.適用範囲(手帳制度の問題点)についてどう考えるか

【大谷委員】
障害者雇用促進法第2条に障がい者の定義規定があるが、割当雇用の対象と なるのは同条2~5の障がい者である。これは医学的モデルを基本とするもの で、WHOが改訂した国際障害者分類(ICF)に沿っていない。同法の定義 は硬直的できわめて限定的なものとなっている。したがって同法の適用をうけ る障がい者もきわめて限定的であり、これを権利条約も定める社会モデルとす るべきである。
また障害者雇用促進法の大前提として、障がいのある人は差別されることな く働く権利があることが明記されるべきである。第1 条目的は、権利主体であ ることが明記されていず、措置の客体としてしか位置付けられていない。

【大濱委員】
三障害に限らず、難病や発達障害、高次脳機能障害なども幅広く適用するべ きだと考えます。
手帳制度のない障害種別の障害者が、雇用率を計算する対象になるかどうか を判定するのは難しい問題ですが、現在でも知的障害者については判定機関に よる判定という方法があるので、実現は可能だと考えます。
いずれにせよ、専門部会で難病などの当事者と一緒に議論すべき課題だと考 えます。

【尾上委員】

<適用範囲とする障害者は、改正障害者基本法に基づく>

  • 「障害者権利条約」(以下、権利条約)に基づき見直される「障害者基本法」(以 下、基本法)においては、谷間を生み出さない障害者の定義を定めることか ら、改正基本法に定める障害者を適用範囲とすることが適当である。

<手帳制度の問題点>

  • 現行の手帳制度に適応しない谷間の障害者が存在することから、手帳の交付 を受けている障害者のみを障害者雇用施策の適用範囲とすることは不適当で ある。
  • また、手帳制度による障害の等級や重度の基準は、限定的な機能障害及び医 学モデルに基づく認定であることは不適当である。

【勝又委員】
廃止して、利用者に必要な支援が行き渡るようなアセスメント方法を代わり に導入すべき。
精神障がい者の精神保健福祉手帳の取得率が低いのは、スティグマだけでは なく、それを持っていても支援や税制上の優遇などに、他の手帳ほど役に立た ないという理由もあるときく。手帳の種類や有無が他の社会制度に資格要件と して使われるときに差別が生じる危険性がある。

【門川委員】
→ 従来の画一的な障害認定のあり方の再検討とも連動し、身体障害者手帳 のあり方も議論されるべきである。
手帳に医学的診断を記すことも支援等の給付の資格証明として必要な面はあ るものの、より重要なことは、生活上どういう困難があり、どういう支援ニー ズがあるかに重点をおいた「証明」のしかたを検討することである。
たとえば、「盲ろう」(deafblindness)について言えば、盲ろう者の手帳には、 「視覚障害」と「聴覚障害」についての医学的診断結果とそれに基づく障害等 級などが、それぞれ別個に記載されている。だが、現実にはこの二つの障害の 組み合わせは、まったく独自の特殊なニーズを生じさせるものである。
実際、このような状態の認識を背景に、「障害者の権利条約」では「盲ろう」 のカテゴリーが独立して記載されている。また、IDA(国際障害同盟)の構 成団体にも、視覚障害、聴覚障害の団体とは独立して盲ろう者の団体が加盟し ているが、これは「盲ろう」という状態によって生じるニーズが他の障害とは まったく異質である現実を背景としている。
こうしたことを踏まえて身体障害者手帳のあり方について考えるならば、障 害を医学的検査数値として記載する方式ではなく、実際のニーズを基にした記 載方法を今後検討すべきではないか。

【川﨑委員】
障害者の範囲は、身体、知的、精神の三障害者と発達障害者、難病のある人、 高次脳機能障害者を適用とする。現行では、三障害は手帳保持者、他のものは 医師の診断書等を必要としているが、いまある三障害の手帳は廃止し、これら を一元化し、すべての対象者に共有する手帳、カードなどが必要ではないか。

【佐藤委員】
障害者権利条約、ILO159 号条約に沿って、職業上の支援を要するすべての障 害者が対象とされるべきである。
その際、従来とられてきた「機能障害の厳密な評価」はあまり意味がない。
障害者雇用施策であるので「機能障害・疾患」の確認は必要だが、「一般的に職 業生活で必要とされる活動の困難」や、例えば「求職活動をしているが半年以 上就職できずにいる」などの「参加の困難」を重視して支援対象とするなどの 検討が必要である。
なお、「雇用差別禁止」方策の対象となる障害者と、職業リハビリテーション の対象となる障害者、保護雇用(賃金補填)の対象となる障害者、雇用率制度の 対象となる障害者の範囲や定義はそれぞれ異なるので、注意を要する。

【関口委員】
適用範囲が狭い。そもそも、精神では働く人に手帳制度は普及しているとは 思えない。理由は欠格条項が多いのと、分かれば会社をクビになることが多い からである。一般社会の差別・偏見が根強い。手帳制度を存続させるなら、メ リットがもっと必要である。逆に手帳制度を廃止して、必要なニーズを勘案し て積極的差別是正措置をこうずるという考え方があってもよい。要は、社会へ の参加にあたってのバリアを配慮することである。

【竹下委員】
手帳制度は給付を前提とする制度であって、障害のある人の認定や障害者 雇用の基礎として位置づけるべきではない。
(1)福祉サービスのうち、金銭給付等を目的とする制度において手帳制度が 必要となることは理解できるが、障害のある人の就労促進やそのための合理 的配慮を考える場合、手帳制度は不要である。かえって、合理的配慮の内容 や範囲を限定したり、手帳の交付を受けていない障害のある人への合理的配 慮の実施を妨げる結果にもなりかねない。
(2)割当雇用制度と手帳との関係は今後さらに検討を要する問題である。割 当雇用制度を「アファーマドアクション」として位置づけ、今後も存続させ るとすれば、その場合の障害のある人の範囲や定義が問題となりうるからで ある。

【中島委員】
「障害」は、障害者雇用促進法第2条の「障害者」が有するその「障害」お よび発達障害者支援法第2条の発達障害とすべきと考える。

【中西委員】
手帳制度を根拠としている現状の障害の範囲の全面的な見直しを行うべきで ある。同時に、重度障害者の定義及び範囲の見直しを進めるべきである。
身体障害者手帳は医療モデルに基づき障害を認定しているが、結果として難 病者をはじめとする者が「障害者」として認定されなくなっている。そのため、 そうした人たちは就労支援施策が必要であるにもかかわらず対象となっていな い。

【長瀬委員】
現在の手帳制度は、労働面の障害を必ずしも反映していないため、当該制度 の目的にあったものにする必要がある。

【久松委員】
社会モデルにたって、障害のある人全ての就労支援が必要である。

【松井委員】
障害者雇用促進法が対象とする障害者は、「障害があるため、長期にわたり、 職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」(第 2 条)と規定されていることからも、機能障害をベースとする現在の障害者福祉 法に基づく障害者手帳で対象者を判断することは適切ではない。障害の種別や 程度を問わず、基本的には職業生活上の困難度に注目した(適用範囲の)判断 が可能になるような仕組みを整備する必要がある。このことに関連して、1994 年6 月に現・高齢・障害者雇用支援機構・障害者職業総合センターから出され た研究報告書「職業的困難度からみた障害者問題」では、「機能・形態障害、能 力障害、社会的ハンディキャップ等をすべて含め、しかも、関係者の意見を踏 まえた総合的判定を行い、職業上の障害者、重度障害者を判定することは十分 可能である」とされている。

【森委員】
手帳制度=現行の手帳制度は医学モデルに依拠して、重度・軽度等の整理を 行っているが、社会モデル的観点を導入する立場からは、障害者が「いかなる 『場面』(=環境)において、どのような「支援」が必要とされるか、その「支 援」の大きさ(質・量的な観点からみた)を考慮して決めるべきである。

2.障害の種別による制度的格差についてどう考えるか

【大濱委員】
格差を是正すべきだと考えます。

  • 重度精神障害者のダブルカウント(ダブルカウント制度を残す場合)
  • 重度ではない身体障害のある短時間労働者の0.5 人カウント
  • 重度ではない知的障害のある短時間労働者の0.5 人カウント
  • 重度精神障害のある短時間労働者の1.0 人カウント(ダブルカウント制度を残す場合)

【尾上委員】

<障害種別による制度的格差の早急な是正を>

  • 精神障害者、難病患者及び発達障害者など障害者雇用率の算定に含められて いない、あるいは身体障害者、知的障害者と比べて不合理な格差がつけられて いる状況があり、1.の適用範囲の問題とあわせて、制度的格差を早急に是正 すべきである。

<障害に応じた必要な配慮を確保する>

  • 雇用分野においては、障害の種別の制度の現状比較ではなく、障害者が、そ の障害等により雇用の場面において必要とされる「合理的配慮」の内容とそ れを確保するための法制度と予算措置の検討を進めることが必要である。

【勝又委員】
その実態について知識が無いので回答できない。具体的にどのようなことが あるのか知りたい。

【門川委員】
→ 格差は是正されるべきである。
また、従来の障害種別に含まれていない境界領域の障害者や発達障害、難病 なども障害のカテゴリーに含めつつ、制度上の格差が生じないようすべきで ある。

【川﨑委員】
障害者雇用率制度には格差がある。現行では雇用義務は身体と知的障害者で ある。精神(発達障害も含む)、難病、高次脳機能障害者も雇用義務化するべき である。

【佐藤委員】
ILO 条約違反に関する日本からの訴えに対するILO の報告で「・・日本政府に 対し、現在は身体及び知的障害者に限定している雇用率制度が、その他の障害 者の雇用機会に与える影響について調査することを要請するものである。」など の問題提起がなされている。(全国福祉保育労働組合、「障害者雇用に関する申 し立てに関するILO からの報告と見解」
http://fukuho-e.net/fukuho.org/modules/bulletin/, last visited 8 September 2009)
雇用、特に障害者雇用率制度における対象範囲の不平等な設定は、福祉、年 金、教育などの分野に比べてとりわけ深刻な事態を生み出す。1.8%という 枠が決まっているので、対象とならない障害者を解雇して対象者を雇用するこ とも起きかねないからである。現に就職面接の最後の段階で障害者手帳がない ことが分かって不採用になった例もある。上記ILOの懸念はこの点をよく調 べるようにと求めたものである。
わが国の障害者雇用施策は主に
① 障害者雇用促進法による雇用率制度とそれを支える納付金制度(各種助成金 を含む)、
② 雇用保険制度による特定求職者雇用開発助成金等の制度、
③ 職業能力開発促進法による職業訓練、
④ 職業安定法等による相談支援(ハローワーク、地域障害者職業センター、障 害者就業・生活支援センターなど)、
の4つといえる。
A 「障害者手帳のある身体障害者・知的障害者」はこれらすべての対象と なる。ただし知的障害者は身体障害者に比べて平均賃金が半額程度など実 質的な格差は大きい。身体障害者内部でも種別の実質格差は大きい。
B 「障害者手帳のある精神障害者」も雇えば雇用率にカウントされるので Aと同様の扱いを受けるが、①の雇用率制度では事業主の雇用義務の対象 となっておらず、そのため法定雇用率の算定基礎にならず、職安による雇 用率達成指導においても差が付けられる。
C 「障害者手帳のない難病患者、発達障害者、高次脳機能障害者など」は ④の相談は受けられ、③の職業訓練も訓練校との相談によって受けられる ことが多い。しかし②の特定求職者雇用開発助成金の対象ではなく、よう やく難病者と発達障害者を対象とした雇用開発助成金モデル事業が2009 年 度に始まった。なお発達障害者については①の助成金の中の職場適応援助 者(ジョブコーチ)助成金の対象にもなる。日本の障害者雇用の中核は① であり、そこにカウントされないことによる不利益は大きい。無理して働 いて病気を悪化させる例も見られる。
以上のような疾患・機能障害の種類による格差とともに、障害の程度が機能 障害で判断される点なども問題である。

【関口委員】
障害種別による制度的格差は単なる歴史的産物。本来不要である。これは、 最も差別されてきた精神障害者にとって積極的差別是正措置となりうる。
参考意見:1,2について精神障害者も適用されるべきであるが、今現在通院 中の労働者はあまたいるのでその人たちをカウントする、手帳を取らせるとい う圧力をかけると直ちに雇用率達成になってしまいます。精神障害者を対象と する場合は雇用率を10倍(100倍??)以上にしないと他障害をはじき出 すことになりそうと心配しますし、そもそも障害者と自ら自己規定していない 人に手帳を取らせる動きもあるようです。 全国「精神病」者集団 山本真理

【竹下委員】
(1)障害のある人の一般就労においては、障害者雇用等促進法の適用との関 係で、障害別、程度別による差別的取扱いが行われてきた。当初は身体障害者 のみを対象とし、次いで知的障害者をその対象範囲に加え、最後に精神障害者 をもカウントするようになったし、重度障害者についてはダブルカウントとい う取扱いがそれである。その結果、一方では雇用納付金を免れる目的で障害の ある人の雇用を考える企業があり、他方で生産性や配慮事項の軽重によって雇 用が左右されてきている。
(2)今後は障害の種別や程度にかかわらず、障害のある人の雇用に対し、援 助がなされるべきであることは言うまでもない。仮に、割当雇用制度及びそれ に伴う雇用納付金制度を存続させるとすれば、種類や程度に関わりなく負担が 課せられ、他方で実施された合理的配慮の内容に応じて弾力的に補助金の額が 算定される方式が開発されるべきである。
(3)障害の種別や程度による雇用や就労の場面での差別をなくすためには、 以下の諸点が検討・研究されるべきである。
ア 当該障害者のために実施された合理的配慮の内容、程度に応じた補助金 の支給、雇用納付金の額、あるいは税額控除
イ 当該障害者の生産性にとらわれない最低賃金の適用とそのための補助金 の支給
ウ 障害の特性に応じた労働能力の開発と障害の特性に応じた労働内容の開 発
エ 雇用主の偏見を取り除くための啓発

【堂本委員】
障害の種別、子ども、高齢者など、制度の都合で谷間や格差ができることは ないようにすべきです。しかし、人によって、その特性や必要な支援も変わっ てくるわけですから、一人ひとりの可能性を活かすためには、そうした特性の 違いを無視して何でも制度を一緒にするべきという乱暴な議論にはならないよ うにする必要があります。
千葉県でも、子ども、障害者、高齢者など対象者横断的な施策展開を図ると いう「健康福祉千葉方式」を提唱しましたが、これは、「あらゆる対象者に同じ サービスを提供する」という考え方とは対極のものでした。あくまで、制度の 都合により必要な支援を受けられない人が出ないように、できるだけ制度をシ ンプルなものにしたり、地域のサービスの拠点を共用化した上で、その人一人 ひとりのニーズに応じて必要なサービスを選べるようにする、「オーダーメイド の福祉」を目指すものでした。

【中西委員】
精神障害者、難病患者及び発達障害者など障害者雇用率の算定に含められて いない、あるいは身体障害者、知的障害者と比べて不合理な格差がつけられて いる人たちがいる。
雇用率算定の対象として平等に取り扱うことは当然であるが、雇用に係る特 定求職者雇用助成金等においても、他の障害者と同様に支援施策の対象とする べきである。

【長瀬委員】
労働面での障害に関する障害の種別による格差はなくす必要がある。

【久松委員】
聴覚障害者の就労支援に直接関わる人的支援については、職業安定所に設置 されている手話協力員制度しかない。しかも手話協力員の稼働時間が絶対的に 短く聴覚障害者への就労支援が十分出来ない。重複障害者にも対応できるよう に手話コミュニケーション等に堪能な職員を職業安定所に配置し職場定着にか かる相談支援機能を強化する必要がある。また、聴覚障害者情報提供施設に、 聴覚障害者を専門に就労支援していくジョブコーチを配置する制度が必要であ る。
企業に対しては、障害者介助等助成金による手話通訳者配置の助成制度があ るが、支給範囲、上限の撤廃等期間の見直し、聴覚障害をもつ従業員のコミュ ニケーション保障のため手話通訳士を雇用する場合の助成制度創設が必要であ る。

【松井委員】
現在のところ障害者雇用促進法に基づく雇用率制度の対象となっているのは、 身体障害者、知的障害者および精神障害者であるが、精神障害者の雇用につい てはまだ義務化されていないことから、身体障害者や知的障害者とくらべ、対 応は立ち遅れている。その他の障害者についてはその対象外とされていること から雇用状況すらデータがないため、明らかではない。
障害の種別で雇用状況に格差(たとえば、身体障害者のなかでも視覚障害者 の雇用はその他の身体障害者と比べ、進んでいない。)があることは事実である が、前述したように、機能障害をベースとした障害種別というよりも、むしろ 職業生活上の困難度の程度による雇用状況の格差に注目し、その格差の是正を はかるべく施策の展開が必要と思われる。
(障害の種別による制度的格差を是正するため、障害種別で雇用率を設定す ることも考えられるが、あらゆる障害を対象としてそうした雇用率を設定する ことはほとんど不可能であり、現実的とはいえない。)

【森委員】

  • 身体障害の中でも、視覚障害者の雇用に関しては遅々として進んでいない状 況があり、この是正策を考慮することが望まれる。
  • 精神障害者に関しては、施策の対応が不十分であり、企業等だけではなく、 職業生活を支える居住の場としての地域の中で受け止めること解決策も考慮 すべきである。また、発達障害等に総称される新しい障害者概念で捉えられ る人たちに対しての施策の充実も必要性がある。

3.現行法定雇用率制度の問題点(雇用率、ダブルカウント制度、特例子会社、 雇用納付金制度等)についてどう考えるか

【大谷委員】
(1)雇用率
同じ割当雇用制度を採用するフランス5%、ドイツ6%と比べても極めて 低く、この数値を高めるべきである。
(2)ダブルカウントと除外率制度
低い法定雇用率1.8%を実質的に更に低率にするものである。
(3)特例子会社
本来の障がい者雇用ではない。特に、障がいのある人だけを別空間に集め るような実態が一部に存するが、それはインクルーシブの観点からも容認で きない。
(4)雇用納付金制度
法は雇用率の対象となる労働者を「常時雇用する労働者」と明記している(43条)。 この文言の素直な解釈としては正規雇用をさすことは明らかである。 ところが厚生労働省は「常時雇用する労働者」は6ヵ月、1ヵ月、 あるいは日々雇用する労働者でも1年以上雇用する労働者と見込まれる者は「常時雇用する労働者」と認めている。 その結果、障がいをもった労働者はその多くが非正規雇用という不安定な地位におかれ、これをもって雇用している とされて納付金を免除され、企業名の公表という社会的制裁からも免れているのは問題である。
(5)助成金
障害者雇用促進法は障がい者雇用による経済的負担について、 事業主相互が分かち合うという考えに基づいており、すべては事業主中心に構成されている。 したがって例えば視覚障がい者がパソコンの音声変換ソフトの購入を希望しても、また、 介助者を希望しても、自らその助成申請を行うことはできず、 あくまでも事業主しかできない仕組みとなっている。

【大濱委員】
法定雇用率については、当面の措置として、精神障害者を基礎数に算入して 再計算するべきだと考えます。ただし、大幅な上昇が見込まれるため、段階的 な引き上げが必要だと思います。
また、新たに適用されることになった障害種別のなかでも、患者数の統計が整 備されているものから順番に算入して法定雇用率を設定するべきだと考えます。
ダブルカウント制度については、実際に重度障害者の雇用者数が伸びている ように、有効な積極的差別是正措置であると考えます。しかし、その一方で、 実際に雇用される人数を減らしてしまうことにもなります。よって、重度障害 者の対象範囲を再検討することが必要だと考えます。
特例子会社については、インクルーシブでないという問題はあるものの、障 害者雇用に対する有効な方策であるとの意見もあります。よって、少なくとも 雇用形態、親会社への配置転換、昇進などの人事制度について、親会社の従業 者との比較で障害者を差別することを明確に禁止するべきだと考えます。
雇用納付金制度については、金額を引き上げると同時に、雇用率未達成企業 に対する制裁を強化するべきだと考えます(たとえば官公需の入札制限など)。
また、中小企業における障害者雇用を促進するために、従業員数300 人以下の 企業に対する報奨金を大幅に引き上げるべきだと考えます。

【尾上委員】
<雇用率の見直し>

  • 雇用率制度自体は、国連における特別委員会での議論等を踏まえ、積極的是 正措置と考えることが適当であると思うが、障害者雇用率の算定にあたって の障害者数(対象とする障害者の範囲等)や、設定されている雇用率の妥当 性については、あらためて検証することが必要である。

<ダブルカウント制度の廃止>

  • ダブルカウントは、重度障害者の雇用促進のために効果的な制度であると、 厚生労働省は、主張し続けているが、ここで定義されている重度障害者は、「1 の<手帳制度の問題点>」にも記載のとおり、職業的判定や社会モデルとし ての視点からではなく医学的判定に基づく機能障害の状態により認定されて いるため、権利条約の理念に相反する。
  • また、ダブルカウントは、重度障害者の雇用を支援するための課題や問題の 本質を避けている制度でもある。
  • 重度障害者の雇用は、「2の<障害に応じた必要な配慮を確保すること>」及 びこの後の「シームレスな支援」に記載のとおり、その障害によって必要と される配慮(情報保障及び介助や移動支援等)を採用試験及び採用後におい ても確保しなければ促進することはできない。
  • こうした理由にくわえ、ダブルカウントは、法定雇用率において、1人の障 害者を2人と計算することに対する障害当事者の反発もあること及び、本来、 2人の障害者を雇用しなければならないのに1人のみの雇用とすることは、 障害者雇用の拡大としてとらえた場合、消極的措置と指摘できる。
  • 以上の理由から、障害者雇用の積極的施策を採用し、ダブルカウントは廃止 することが適当である。

<特例子会社の検証>

  • 権利条約では、障害者を区別することを禁止していることから、原則的には、 障害の有無によって職場を分離することは差別とされる。
  • しかし、特例子会社を設置している会社によっては、障害者の労働環境等を 考慮していることを理由としている場合もある。
  • こうした現状から、設置会社と特例子会社の現状を調査し、インクルーシブ な労働環境の確保という点から、その廃止も含めた根本的な見直しが必要で ある。

<納付金制度の見直しと新たな財源の確保>

  • 現行の納付金制度は、法定雇用率に達しない企業に課せられており、それを 財源として障害者を雇用した企業に対する助成事業の財源としている。
  • これは、すべての企業が法定雇用率を達成した場合、障害者雇用にともない 現在実施している助成事業の財源がなくなることも同時に意味する。
  • このような法定雇用率の未達成を前提とした障害者雇用促進施策という矛盾 した現状を改善するために、現在の納付金制度を活用しつつも、すべての企 業が法定雇用率を達成した状況を想定した財源の確保に関する検討が必要と される。
  • また、現行の納付金額は最低賃金の水準に比べて低く、障害者雇用に積極的 なインセンティブが働かないという点からも問題であり見直しが必要である。
  • なお、障害者雇用にともなう助成事業について、職場介助者や社宅制度等が 有期限化されている等の点についても、合理的配慮の確保という点から、そ の恒久化も含めた見直しが必要である。

<公務部門への範囲拡大>

  • 現行制度では、地方自治体、教育委員会等の公務部門は、納付金の対象外で あり、障害者の雇用状況については、すべて公開されていることから事実上、 公表制度の対象外となっている。
  • しかし、多くの教育委員会においては、法定雇用率の未達成が継続されてき ている。
  • そして、多くの自治体においては、点字試験の実施等、障害者が必要とする 配慮を提供しないとともに、「介助者なしで職務を遂行できる」、「口頭面接に 対応できる」ことを受験資格としている。
  • また、現在、自治体で雇用されている障害者も、自治体の財政状況等によっ て会議や研修会における手話通訳の保障等の労働環境に格差が生じている。
  • こうした状況から、原則として、公務部門においても民間企業と同様の措置 (納付金及び助成事業の適用)を講じることが必要である。
  • なお、具体的な適用内容については、別途、検討することが必要である。

【勝又委員】
公的セクターの雇用率はもっと上げるべき。ダブルカウント制度の弊害が障 がい者の雇用にどのくらいの影響を与えているかを見極めたうえでの議論が必 要。特例子会社は、ソーシャルファームとして位置付けられ発展する可能性が あると思うが今のままでは限界がある。

【川﨑委員】
雇用率:法定雇用率を上げ(ドイツは5%)、すべての障害種別を雇用義務化と する。
ダブルカウント制度:短時間労働は精神障害者のニーズであるが、カウントを 一人を0.5人とすることは、事業主側が社会保険料を免れることに利用され る懸念もある。
特例子会社:現状では身体、知的の雇用が多く、精神障害の雇用は少ない。精 神障害者の積極的雇用拡大を図ってほしい。 雇用納付金制度:障害者に身近な雇用の場である中小企業における障害者雇用 の促進のためにこの制度がさらに活用されることを望む。

【佐藤委員】
主に能力・生活機能ではなく障害を見る雇用率制度にはメリットもデメリッ トもあり、主に障害ではなく能力・生活機能を見る雇用差別禁止アプローチに もメリットとデメリットがある。それぞれの長所を生かす両者の併用は重要で ある。雇用率制度は重度障害者の雇用を企業間の連帯で進めようというもので あり、差別禁止アプローチは各企業の責任で雇用を進めようというものである。
これらに加えて、政府がより役割を発揮して行う保護雇用・賃金補填によって、 企業負担を軽減するとともに、部分的にでも残っている障害者の労働能力を最 大限に発揮できるのではないか。雇用率・差別禁止・保護雇用の「三輪車」が 今後の日本に障害者雇用政策の基本として望まれる姿ではないか。あるいはそ れに「職業能力開発(職リハ)」を加えた「四輪車」。
ダブルカウントや0.5 カウントには異論もあるが、雇用率制度は現実に非常 に重要な役割を果たしており、今後も必要とされる。雇用率制度の対象をより 広げてゆく必要を考慮すると、職業上の困難度の高い人と低い人との格差、精 神障害者などフルタイム就労にすぐには就きにくい人々の短時間就労を応援す る必要、などから、これらのカウントは今後も必要であろう。
問題は、ダブルカウントで見かけ上数値をかせぎ、実人数の障害者雇用の停 滞を隠す傾向であり、ダブルカウントの対象が機能障害で判断される不公正さ である。これらの改善が必要とされる。

【関口委員】
障害の定義を社会モデルにした上で再考すべき。また、納付金が低い。現段 階では積極的差別是正のために一定の役割を果たしているが、特例子会社につ いては、障害者のみを囲い込む側面があるので、本社への移動を含めて一般人 と同じ職場で働くのが望ましい。分離は差別という意味で特例子会社は原則的 には撤廃すべきものである。なお、精神については、欠格条項の撤廃が不可欠。

【竹下委員】
現行障害者雇用促進法は抜本的な見直しが必要である。

(1)障害の種別による適用を撤廃すること
障害の種類や程度にかかわらず、合理的配慮を必要とする就労者をすべ て障害者雇用促進法の対象とすべきである。そのうえで、合理的配慮の実 施内容に応じた援助や優遇制度を開発すべきである。
(2)重度障害者に対するダブルカウントは廃止すべきである
ダブルカウントは重度障害者の人格ないし尊厳を否定ないし傷つけるも のである。合理的配慮の実施内容に応じた援助等を考えることによって、 最重度の障害者に対するダブルカウントは不必要になる。
(3)特例子会社制度は大企業等に対する優遇制度であり、一般就労の促進と は言えない。
特例子会社を作ることによって、大企業の職場から障害のある人を排除 する結果となってしまうし、障害のある人を特定の事業所に集中させる結 果は、ノーマライゼーション、メインストリーミング、ユニバーサルデザ インにも矛盾した制度である。かつての「イコールバットセパレート」と 本質は変わらない。
(4)割当雇用制度は過渡的なものとして位置づけるべきである。
割当雇用は、当分は「アファーマドアクション」として位置づけ、企業 に対し、障害者雇用を意識的に促進させるための制度として位置づけ、一 定の時点で合理的配慮義務違反を差別的取扱いとして設定させることによ って、割当雇用制度を不要(無用)なものとして廃止すべきである。

【土本委員】
【雇用率】札幌市や北海道の職員について、身体のぼしゅうはあるが、知的や 精神のぼしゅうはない。こうぎしたら「どんなしごとをさせていいかわからな いから」という。
それなのに、企業にもっと障がい者をやといなさいと言っているのはおかしい。

【堂本委員】
現実に障がいのある方の雇用を増やしていくために、どのような手法が有効 なのか、ということについては、事業主の人たちも含めて大いに議論する必要 があります。
事業主の人たちが、障がいについて理解が不十分だということであれば、行 政も一緒になって、理解を助ける努力をしなければなりません。千葉県知事時 代は、県庁自身も変わらなければならないと、業務の仕方から見直して障がい 者雇用を進めました。例えば、これまでの職員の業務を一旦分解してみて、コ ピーを取る、書類を届けるといった業務を複数の職員の分を集めると、知的障 がいのある方に向いた一人分の仕事ができあがるのです。これは現場職員の挑 戦でもありました。具体化してみると、軌道にのり、他県や中央官庁も含めて 広がりをみせています。現実を理想に近づけていくために、どのような道を歩 んでいくのか、皆で知恵を出し合わなければいけません。

【中島委員】
○障害者雇用率制度は積極的差別是正措置と位置付けて維持するべき。
○法定雇用率のダブルカウントについては、障害当事者の受け止め方を重視す べきとの意見や重度障害者の雇用促進に寄与しているとの見解および障害の 定義の見直しが必要であるとの指摘など、様々な意見があるため、引き続き検 討する。
○特例子会社については、障害者を分離することが差別的取り扱いにあたると の指摘もあるが、障害者の雇用促進に寄与している面も大きく、当面、積極的 差別是正措置の一つと位置づけるべきと考える。
○合理的配慮措置の規定の実効性を確保するため、障害者雇用調整金および各 種助成金の拡充をはかるなど、障害者雇用納付金制度を見直すことも必要と考 える。

【中西委員】
障害者雇用率の算定式の分子として適用される障害者の範囲及び「失業して いる障害者の数」の数値根拠を見直すべきである。
「失業している障害者」とは就労への意欲があるにもかかわらず職に就いて いない障害者を指す。しかし、就労をしようとしてもできない社会環境などが あるために、障害を持たない者に比べて就労への意欲がそもそも削がれてしま っている。結果、雇用率が低く設定されてしまっている。その点を考慮した雇 用率を設定するべきである。

【長瀬委員】
法定雇用率制度については、障害者の権利条約第27 条1 項(b)の「積極的 差別是正措置」として位置づけられる。たとえば、東京大学をはじめとする国 立大学法人における障害者全般、特に知的障害者の雇用促進、職域拡大は、障 害者雇用促進法に基づく、法定雇用率制度による法的雇用義務抜きには残念な がらあり得なかったのが実情である。
他方、現行の雇用率制度には課題が多い。同制度については、全国福祉保育 労働組合が日本障害者協議会と協力して、ILO(国際労働機構)の「職業リハビ リテーション及び雇用(障害者)に関する条約」(159 号条約)について提出し た申し立て書(2007 年8 月)にあるように、ダブルカウントしないで算出され た本当の意味の「実雇用率」の政府による公表が実態把握には欠かせない。
ダブルカウント制度がいわゆる「重度障害者」(必ずしも、「労働に関する障 害が重度な人」ではない)の雇用促進という効果があるという研究結果も出て いるため、ダブルカウント制度が実際に果たしている政策的役割を正確に把握 することがまず必要である。そのためにも、ダブルカウントしない実際に雇用 されている正確な障害者数の把握が欠かせない。労働に関する障害の重い人の 雇用促進政策としてのダブルカウント制度の政策的効果を検証することが重要 である。

【久松委員】
障害者雇用促進法は、事業主のための法律となっている。障害者の労働の権 利を障害のない人と同等に実現するための保障法に見直していく必要がある。
雇用率の設定は欧州と比べてかなり低く設定してあるにも関わらず、法定雇 用率を達成できない企業が多いことが問題である。また、実雇用率の表示につ いては、現在、身体障害者、知的障害者、精神障害者の三部門に分けられてい るが、障害者それぞれの特性に応じた就労支援及び職場改善を図る為に、身体 障害者部門を細分化にして、肢体障害者、視覚障害者、聴覚障害者、内部障害 者とそれぞれの雇用率がわかるようにデータ表示するべきである。
ダブルカウント制度は廃止、特例子会社制度は抜本的な見直しの方向で検討 すべきである。
雇用納付金制度は、罰則の強化を図り、何度も奨励しても障害者雇用の拡大 を図らない企業に対しては刑事罰の対象とすることを検討すべきである。

【松井委員】
(1)雇用率制度について
現行の雇用率制度の基本的な課題は、同様の制度をもつフランス(6%)や ドイツ(5%)などとくらべ、法的雇用率が1.8%(民間企業)~2.1%(公的機 関)ときわめて低く設定されているにもかかわらず、一部の企業(常用労働者 数1000 人規模以上の企業)を除き、全体としてはいまだそれが達成されていな いということである。それにくわえ、質としての雇用(良質な労働条件など) の確保は、同制度では担保されていないことである。
同制度を障害者雇用の質量の両方の確保が可能な仕組みに転換する必要があ る。質を確保するためにも労働条件などについての不服申し立てと救済措置が できるような仕組みの整備が求められる。
なお、ドイツやフランスには、企業や公的機関が福祉工場や授産施設などに 仕事を発注したり、それらの施設で製作される製品やサービスを購入する場合、 その発注額や購入額に応じて実雇用率の一部にカウントする(いわゆる見なし 雇用制度)がある。これは、福祉工場や授産施設などが必要とする仕事を安定 的に確保するうえで、有効な制度と思われるが、法定雇用率が1.8%~2.1%と 極めて低いわが国の現行の雇用率制度下でこうした見なし雇用を制度化するこ とは、企業や公的機関での障害者雇用をさらにすすめるうえでは、必ずしも得 策ではないと思われる。
(2)ダブルカウント制度について
同制度は重度障害者の雇用を確保するために有効な制度とされる。現行の手 帳に基づき重度とされる障害者の雇用は、他の障害者以上に伸びていることは データで明らかにされているが、それらの重度障害者が、職業生活上の困難度 の高いものであるかどうかは明らかではない。したがって、職業生活上の困難 度の高い障害者の雇用をすすめるには、ダブルカウント制度よりもむしろ個々 の職業的重度障害者に対して適切な「合理的配慮」できるよう、企業に対して、 必要に応じて、財政的および技術的支援を積極的に提供するほうがより効果的 と思われる。
(3)特例子会社について
特例子会社制度を活用することで、大企業などが法定雇用率をクリア―する 例が増えるなど、実雇用率を高める上で特例子会社は一定の役割を果たしてい ることは事実である。しかし、特例子会社で障害者を集中的に雇用するだけで、 親企業本体での障害者雇用につながらなかったり、あるいは親企業と特例子会 社で障害従業員の労働条件が異なるということは、望ましい状況ではない。特 例子会社での障害者雇用の取り組み経験が親会社のそれに反映されるような仕 組み、つまり親会社での障害者雇用とリンクした形で展開される仕組みが整備 されるべきであろう。
(4)雇用納付金制度について
現行の雇用納付金は、未達成の実雇用率の水準に関係なく、一律に不足数1 人あたり月額5万円となっているが、今後「合理的配慮」の義務化などへの対 応を考えると、この額の妥当性について再検証が必要であろう。また、ドイツ などの納付金制度で採用されているように、実雇用率が一定水準以下の企業に ついては納付金を増額する(たとえば、実雇用率0.9%未満の場合には、不足数 1人当たり15万円、1.2%未満の場合には10 万円)といったこともあわせて 検討されてよい。
雇用率制度とも関連するが、ドイツなどで制度化されているような、企業や 公的機関が福祉工場や授産施設などに仕事を発注したり、それらでつくられる 製品や提供されるサービスを購入した場合、その額に応じて納付金の減額措置 も検討に値するが、こうした制度を実現化するには、現行の法定雇用率のあり 方の見直しが必要である。

【森委員】

  • 雇用率について
    差別の積極的是正措置制度として認識している。わが国の法定雇用率の算定 の基礎は、一般の常用労働者との均衡を失しない方式で算定されているので、 雇用率制度を採用している国々(特に欧州諸国)より低いことが指摘さていると ころであるとともに、未達成企業がまだ依然として多い現状がある。
  • 納付金制度について
    現行の雇用納付金額の算定は、ある一定の算式をもとに行われているもので あるが、最低賃金額程度に設定し、「雇用する」か、または「雇用した際に支払 う最低賃金」のどちらかを選択することを制度化する必要がある。
  • ダブルカウントについて
    雇用に困難度の高い重度障害者の雇用を促進するために機能している面があ るが、現在の重度者の概念を職業的観点からの見直しが必要であろう。(上掲1. 参照)
  • 特例子会社について
    特例子会社の設置数(平成20 年4 月234 ヶ所)は、近年増加傾向にある。一部 の人からは、障害者だけを集める雇用形態は問題があるのではとの指摘もある。

4.職場における合理的配慮の実現プロセスと異議申立についてどう考えるか

【大谷委員】
合理的配慮を行うことは事業主の義務であるが、一方障害のある人の働く権 利を保障することは国の責務でもある。よって国及び地方公共団体に障壁除去 等の責務を課すべきである。
また合理的配慮の内容は多岐にわたる。この内容をすべて法定することはで きないのであるから、個々人にふさわしい内容を確定するために別途委員会を 設けて確定するべきである。この委員会で異議申し立ても扱うかどうかの所轄 事務の範囲およびその規模等については、各分野ごとの権利調整委員会を設け るかどうかの問題とともにこれから審議されなければならない。
ちなみに、日弁連の差別禁止法では以下の内容を提言しているので、これも 参考にしていただきたい。

第3 労働

1 労働する権利

何人も、障がいを理由として、いかなる差別を受けることなく、労働する権利を有し、 機会を保障されるものとする。

2 合理的配慮義務

(1) 事業主は、次の義務を負う。

① 労働契約を締結し又は変更するにあたり、障がいのある人が労働契約の内容 を理解することを容易にするため、適切な情報伝達方法により説明すること。
② 労働条件又は就業環境が障がいのある人に対して相当の不利益を及ぼしてい る場合において、その不利益を除去するために対策を講じること。
③ 職場において障がいに対する偏見又は障がいのある人に対するいじめが存在 する場合において、これを除去するための対策を講じること。
④ その他、障がいのある人の労働する権利を実質的に保障するために必要な合 理的配慮を行うこと。

(2) (1)で事業主が講じるべき対策の具体的内容は、次に掲げるものの他、障がいの ある人の権利委員会が別に規則で定めるものとする。

① 施設の改造
② 障がいのある人が担当する任務の一部の他者への割当て
③ 現存する欠員を補充するための異動
④ 勤務時間の変更
⑤ 他の作業場への変更
⑥ リハビリテーション又は医療的手当のため勤務時間内に離脱すること
⑦ 職能技術を習得する機会の提供又はこれについての配慮
⑧ 備品・設備の取得又は改造
⑨ 指導マニュアル又は参考資料の変更
⑩ 試験又は評価過程の改善
⑪ 朗読者、手話・要約筆記・指文字その他の方法による通訳者等の援助者の配置
⑫ ジョブコーチ等の援助者の配置
⑬ 指導・監督の充実

4 適用除外

(1) 2は、事業主において著しい困難又は出費がある場合は、適用しない。 (2) 3(1)②及び④は、次の場合、適用しない。
イ 事業主が2の対策を講じても、当該障がいのある人がその職務の本質的部分 を遂行することができない場合
ロ 事業主が2の対策を講じることに著しい困難又は出費があり、かつ、これを 講じなければその職務の本質的部分を遂行することができない場合
(3) (1)(2)に規定する事由の具体的内容は、障がいのある人の権利委員会が別に規則 で定めるものとする。
(4) (1)及び(2)ロの「著しい困難又は出費」の有無は、具体的な根拠及び資料に基づ き、事業主の財務状況、被用者の人数、負担すべき費用、被る不利益の内容及び 程度その他事業主側の事情、並びに障がいのある人の被る不利益の内容及び程度 を総合的に考慮して判断されなければならない。
13 国および地方公共団体の障壁除去等の責務
国及び地方公共団体は、障がいのある人が差別を受けることなく労働できるようにす るため、物理的障壁等の除去、援助器具の開発、通訳者及びジョブコーチ等の育成、拡 充及び派遣制度の確立、情報提供のための施設設置・制度拡充等の責務を有する。

第12 実施機関

1 障がいのある人の権利委員会の設置及び所轄事務
(1) 内閣府に、この法律の適正な実施を任務とする障がいのある人の権利委員会(以下 「本委員会」という。)を設置するものとする。
(2) 本委員会は、次に掲げる事務を行うものとする。
① 規則の制定
② 解釈指針及び実務指針の策定
③ 立法及び行政に関する提言
④ 実施状況の調査
⑤ 国民に対する広報及び啓発
⑥ 公務に携わる者に対する教育及び指導
⑦ 相談
⑧ 差別を受けたものが行う裁判手続又は救済機関での手続に必要とされる弁護士 その他の適切な補助者の斡旋、その他の援助
⑨ その他この法律を実施するために必要な事務

【大濱委員】
既存の労働審判委員会の活用や、権利条約におけるモニタリング機関の創設 と同時に、障害者職業生活相談員を見直して、障害当事者が相談を受ける側に 回り、事業主側と協議する、当事者主体の制度に改めるべきだと考えます。

【尾上委員】
<「合理的配慮」の内容とガイドライン(具体的事例等)の作成>

  • 「合理的配慮」とは、採用、職場、職務遂行等において、障害者が、障害のな い人々と同様に雇用を確保するために行われる「必要かつ適当な変更及び調 整」であり、障害者の個別・具体的なニーズに配慮するためのものである。
  • また、変更及び調整を行う者に対して「均衡を失した又は過度の負担」を課 すものではないが、障害者が必要とする「合理的配慮」を提供しないことは、 差別とされる。
  • そして、労働・雇用における「合理的配慮」の内容は、障害者の求めに応じ て、労働者代表委員会または当該障害者と事業主との協議・調整による決定 を基本とし、可能な限り短期間に当該事案の解決をはかる必要がある。
  • 以上の内容に基づき、具体的な「雇用における合理的配慮に関するガイドラ イン」等を、別途、作成することが必要である。
  • 併せて、「合理的配慮」を確保するための国として法制度と予算措置等を検討 することが必要である。
  • なお、「合理的配慮」を提供しないことを障害者に対する雇用差別であること を明記した裁判規範となる「障害者差別禁止法」の制定は、必要不可欠であ る。

<事業主の責務>

  • 「障害をもつ労働者」(以下、障害労働者)の請求に対して、過度な負担が生 じる場合を除いて、採用時及び採用後において「合理的配慮」を提供しなけ ればならない。
  • 障害労働者が必要とする「合理的配慮」を拒否することは、差別であり、「合 理的配慮」を求めたことを理由として不利益な扱いをすることも差別となる。

<労働組合の責務>

  • 労働組合は、障害を理由として加入を拒んではならない。
  • また、障害のない組合員と同様の権利・義務を保障しなければならない。

<意義申立の仕組み>

  • 事業主は、職場内で障害労働者の職場環境に関する問題を解決できる仕組み を確保する。
  • 職場内で解決できない場合は、「行政救済」(都道府県労働局紛争調整委員会 による調停)、「通常民事訴訟」および「労働審判制度」等の司法救済による ものとする。
  • 障害労働者は、「合理的配慮」の内容と義務違反の事実を提示する。
  • 事業主は、「合理的配慮」を提供しなかった措置の正当性を立証する。

<過度な負担の定義>

  • 企業の経営状況、業種、規模等に応じて個別に判断される。
  • 事業主が説明責任を負う。
  • 国として実施する助成事業等に関する検討と見直し・拡充が必要である。
  • なお、過度な負担の基準についての検討も必要である。

<職務評価>

  • 職務の評価に当たっては、障害の状況を十分に勘案し、障害による不利益な 評価をしないための具体的なガイドライン等の検討が必要である。
  • また、障害労働者が、職務評価に対する不服申立の手続きと評価の妥当性に ついての審査機関の設置に関する検討が必要である。

<中途障害者>

  • 雇用主は、労働者が中途障害をもったことを理由に解雇を禁止することが必 要である。
  • また、当該労働者に対して、職場復帰に向けた対応(治療・リハビリ期間の 確保、職場環境の改善等)をすることが必要である。
  • そして、職場復帰にあたっては、原職復帰を原則とし、本人の希望する配慮 を提供することが必要である。
  • なお、本人の希望する配慮の提供がされても原職復帰が困難な場合等は、職 務を変更し、雇用の継続に努めることが必要である。

【勝又委員】
雇用主のみならず労働組合を含む被用者において、どのような場合「合理的 配慮」が不可欠でそれが無いことが差別にあたるという認識をもたせる教育・ 研修が必要。当事者を中心とするNPO にその教育・研修プログラムを作成させ 企業や事業所への派遣により、ある一定期間(たとえば3 年間のパイロットス タディ)実施してそのせいかを監視評価する。
異議申し立てでは、裁判以前に問題解決を調整し職場環境を改善するのに役 立つ仕組みが必要。司法にゆだねることですべてが解決するわけではない。 異議申立を改善につなげることが重要。

【門川委員】
→ 職場における合理的配慮の実現のためには、一方で差別禁止法などの法的 規制を整備して事業主の合理的配慮の実施を促進するとともに、他方では合理 的配慮実現を後押しする公的財政援助が拡充されるべきである。
また、合理的配慮には、施設・設備や支援機器の整備などのハード面での合 理的配慮と人的サポートを含めたソフト面での合理的配慮が想定される。この うち、人的支援の保障がとりわけ立ち後れていると考える。
また、たとえば通勤時の移動介助が福祉施策では認められないなど、既存の 福祉施策と就労支援が縦割り状態にある問題を解消すべきである。

【川﨑委員】
合理的配慮は企業と利用者である障害者とで決められるもので、その実現に は「過度な負担」の問題もある。当事者同士の解決が望まれるが、第三者機関 を設置し、異議申し立てができるようにする。

【佐藤委員】
雇用において、何が障害者差別か、何が合理的配慮か、何が「重過ぎる負担」 か、関係者の間での共通理解の形成を急ぐべきであろう。そのために、経済団 体(事業主団体)、労働組合、障害者団体、行政や関連学会などが共同で、2008 年度に内閣府がJDF の協力で行った大規模な実態調査(障害者に対する障害を 理由とする差別事例等の調査)で寄せられた事例の検討を行い、また諸外国で の法制度とその効果の検証などを行うべきである。

【新谷委員】
(1)コミュニケーションに課題を持つ聴覚障害者の場合は、就労後の労働環 境の問題が非常に重大です。就労した後十分なコミュニケーション支援が得ら れず、転職・離職・昇進差別など多くの問題に直面しています。聴覚障害者の 労働実態を調査し、就労後の差別事例、業務遂行に困難な事例を集積し、就労 場面での「合理的配慮」の類型化、ガイドライン作成を進めてください。又、 会社では男女差別やセクハラについての教育はかなりな普及が見られますが、 「障害者についての意識向上」の社内教育はほとんど見られません。2 月2 日の 会議で提起した障害者権利条約第8 条「意識向上」の適用場面です。また、障 害者が職場での問題を相談できる部門を企業内に設置することを義務付けて下 さい。
(2)雇用者側の「合理的配慮」義務に対応した行政側の就労時施策として「障 害者雇用割当制度」、またそれに基づく「障害者雇用納付金制度」がありますが、 就業・労働場面では「障害者介助等助成金」を雇用者側の「合理的配慮」を補 完するものとして明確に位置づけることが必要と考えます。因みに聴覚障害の 場合、現在の「障害者介助等助成金」は「手話通訳担当者の委嘱助成金」しか 明文化されておらず、要約筆記者の派遣など手話を理解の出来ない中途失聴・ 難聴者への配慮がありません。「障害者介助等助成金」制度は、障害者の就業時 に必要な支援・配慮(例えば会議などでの要約筆記者の準備)に対応して整備・ 拡充すべきです。
(3)就業に当たっての「合理的配慮」には、人的支援に止まらず、会議室で の磁気ループの設置、自席での拡声機能のある電話機、テレビ電話の設置など 補聴援助システムの整備を図ってください。
(4)就業場面での「合理的配慮」は、必要なタイミングを外しては意味があ りません。コミュニケーション支援に当たっては事後救済ではなく、即時的救 済が可能となる施策を講じてください。

【関口委員】
異議申し立て等についての第3者機関を作る必要がある。そもそも、気楽に 話せないという問題が精神にはある。

補足意見・資料
PSW が職親を探し出し就労したが、職親(こんにゃく製造業)は低賃金労働力が目的で、 仕事は劣悪でとても耐えられず離職、手帳制度など問題外です。
「障害者」に対する「合理的配慮」など問題外、いわゆる「健常者」も自分の仕事で 精いっぱいで、「障害者」に気を使う、声をかける余裕もないのが現実です(郵便局の例)。
同じ職場に複数の「障害者」が雇われていたら、互いに話し合う(理解しあう)ことも できるんではないでしょうか。
この項目では無いかも知れませんが、私たち「精神障害者」のかなり多くの人が通勤時 に困難(例 ラッシュに弱い、方向が解らない等)を感じています、こんな場合なんらか の介助が必要です。
私達作業所憩いの場つぶすな全国連絡会の中のNPO法人ほっととうがらしは1996 年に手帳制度の問題点について各手帳制度の成立過程から問題点を考えました。手帳制度 の始まりは1950年身体障害者福祉法施行と同時にできたものです。そこには「身体障 害者手帳は身体障害者福祉の措置の前提となるものである」とあります。ところが知的障 害者については1960年当時精神薄弱者福祉法施行時に手帳は作られませんでした。1 973年療育手帳制度ができました。精神障害者に至っては1995年に精神保健福祉手 帳の制度ができたばかりです。
制度的格差は歴然としており、例えば1952年国鉄「身体障害者旅客運賃割引規則」に おいてその対象は現在身体と知的のみです。それだけでなく私達が調べただけでも、8つ 以上の福祉サービス格差があることが判明しています。そして手帳制度を根拠としていな い福祉サービスのほうがより平等な福祉サービス制度となっていることも判明しています。 20年以上このサービス体系の基本は変わっていません。
これは例えば精神障害者が手帳を受けると欠格条項が明確になってしまうことの一つの証 明でもあると思います。

【竹下委員】
合理的配慮の内容は一義的には決まらないし、普遍的な基準というものが存 在するわけではない。社会の進歩や生産性の向上、技術の進歩とコストの低廉 化、国等による支援との組み合わせ、障害の特性や個人のニーズとの関連性な どから常にその内容は変化していくものと思う。
(1)合理的配慮の考え方についての学習
国や産業界による学習とともに個々の事業所ごとでの学習や当該障害者 にとっての合理的配慮に関する学習が実施されなければならない。
(2)障害別による合理的配慮のモデルの提示
できるだけ障害の種別ごとに個別化された、あるいは特性に応じた合理 的配慮事項をマニュアル化し、あるいは先進的・先駆的なモデルを提示す べきである。その際、そうしたマニュアルやモデルは、動機付けや実施内 容の検討指標に過ぎないことを明確にし、あくまでも個別的な合理的配慮 内容が実施されなければならないことも明記することが必要である。
(3)合理的配慮の内容につき、労使間の協議の場が設定されるべきである。
そして、労働者(障害者)の要求が受け入れられない場合には、その要求 の合理性、妥当性、実現可能性を審査、判断するための第三者機関(異議 申立機関)が設置されるべきである。第三者機関は、地域別か産業別に設 置し、労使、有識者などによって構成されることが望ましい。第三者機関 による裁定に従わない企業(事業所)に対しては、何らかの不利益処分を 前提とした改善命令制度が必要である。

【土本委員】
1.その他(仲間たちのこえから)
(1)しごとがない。
(2)さいていちんぎんいかで、はたらかせるのをやめてほしい。
(3)こようほけん、しゃかいほけんにちゃんといれてほしい。
(4)しんきゅうをしてほしい。
(5)会社がとうさんして、ほうりだされた。
(6)しょうがいのある仲間たちが、ろうどうくみあいにはいれるように支援 してほしい。
(7)ろうどうもさぎょうしょもこんなんである人びとであっても地域でいき る権利はある。働く権利もだいじですが、地域からはいじょされている仲間た ちのことを考えてほしい。

【堂本委員】
千葉県で作った「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条 例」では、「合理的な配慮の欠如」も差別と位置付けているが、「不利益取扱い」 と異なり、必要とされる配慮は状況に応じて千差万別であり、具体的な例示は 示せなかった。その代わり、第三者的な立場の人が「差別を受けたとする障害 者」と「差別をしたとされる企業」の間に立って、双方の事情を聴き、適切な アドバイスや解決に向けた提案を行う仕組みとした。個別事案の解決に当たっ ては、合理的配慮を欠いた企業も、障害のある人の思いやその置かれた状況を 理解し、自らの行為の問題点を認識・納得し、環境を改善することが望ましい と考えたからである。
何らかの異議申立の仕組みを作るとしても、「訴える、罰する」ではなく「理 解を広げていく」という哲学で制度化することが、望ましい。

【中島委員】
○事業主は、障害を持つ労働者の請求に対して、過度の負担が生ずる場合を除 いて、合理的配慮措置を提供しなければならないこととする。労働者が求めた 合理的配慮を拒否することは、差別的取り扱いとする。合理的配慮を求めたこ とを理由とした不利益取り扱いも禁止する。
○差別禁止規定及び合理的配慮の提供義務については、職場の集団的労使関係 において履行が確保されることが重要だが、職場で解決できない場合の、実効 性ある紛争解決の仕組みが必要である。そのため、①通常民事訴訟および労働 審判制度等の司法救済、および②行政救済(都道府県労働局紛争調整委員会に よる調停)を予定し、関連規定を整備する。

【中西委員】
合理的配慮を実現していくに際し企業に求められるものは、障害労働者に一 方的に配慮を提供することではなく、協議・調整を障害労働者と行ったうえで 可能な配慮を開発していくことである。同時に、就労する障害者にとっても自 ら必要なものを提案できる環境を整えていく必要がある。また、この協議・調 整を円滑に進める上で就労支援者を法的に位置づけ、調整を行わせることも必 要ではないか。

【久松委員】
聴覚障害者における職場での合理的配慮は、例えば、手話通訳者の設置、派 遣、及び、文字表示・IT機器・カラーランプ・振動による伝達機器等の視覚 による情報保障の義務付けが挙げられる。職場の聴覚障害当事者の求める言 語・コミュニケーション手段・情報を保障するにあたり、過度の負担を理由に 制約されることがないよう必要な助成制度を整備する必要がある。
異議申し立てについては、障害者差別禁止法における権利擁護、不服申し立 てに関する救済機関において対応すべきと考える。

【松井委員】
職場における合理的配慮の提供が法的に義務化されるべきであるが、その実 効性を担保するには「合理的配慮」について十分な理解や協力がえられるよう、 企業や公的機関関係者の対して研修などを実施するとともに、企業や公的機関 が個々の障害者に対して合理的配慮を提供するにあたって適切な財政的、技術 的支援がうけられるような仕組みを整備することもきわめて重要である。
また、どのような合理的配慮が必要かについては、個々の障害従業員が企業 や公的機関に自ら(あるいは支援者などを通して)要求する必要があることか ら、それらの障害者などが要求しやすいような職場環境の整備(その要求を適 切にサポートしたり、要求が認められなかった場合、異議申し立てをサポート できる職場内の仕組みを含む。)が求められる。そして職場内で異議申し立てが 解決しない場合には、労働審判制度など外部の救済・調整機関を通じて迅速に 救済が受けられるような仕組みも整備される必要がある。

【森委員】
現行の法制度では「障害者職業生活相談員」制度や「職場定着推進チーム」 制度などが設けられている。これらの制度の権限強化・機能強化等を通じて、 合理的配慮に対する異議申立ての第一段階とするとともに、新しく、障害者を 構成員に加えた「合理的配慮に関する申立委員会」(仮称)のような問題処理に 関して、企業に実行を要求し実現させるための組織を新たに創設する必要があ る。訴訟等に至る前の段階として、関係者(企業・職場・労働者・障害者等 )の 合意形成を作り上げ、修復的解決を行うことが望まれると考える。

○福祉的就労

1.労働者性と労働法規の適用についてどう考えるか

【大谷委員】
権利条約および従来からのILO の勧告に沿い、福祉的就労の場で働いている 人を労働者として位置づけ、最低賃金および労働安全衛生法等の労働法規を適 用するべきである。
特に福祉的就労の場における著しく低い工賃及び劣悪な労働環境が多くの人 権侵害事例として長く見のがされているので、この点については早急にとり組 むべきである。
さらに教育の場においても、それぞれが労働の権利の主体であることを自覚 できるよう配慮されなければならない。現在、とくに特別支援学校が就労のた めの職業・訓練教育の場になっている実態があるが、技能訓練ではなくまた福 祉の客体でもなく、労働者としての権利を行使しうる主体を育てる教育が不可 欠である。

【尾上委員】
<多様な働き方を権利として確立する>
基本視点として、従来の一般雇用と福祉的就労の二元的縦割り制度を根本か ら見直し、障害者の多様な働き方を権利として確立することが必要である。

<労働者性と労働法規を適用するために>

  • 就労継続支援A型事業、労働者性の高い就労継続支援B型事業、福祉工場等 は、福祉的就労という位置づけをやめ労働行政の所管とし、<○雇用の創出1 >にも記載しているが、社会的事業所の法制化の中で、労働法規(最低賃金も) の適用等の検討を進めることが必要である。

<社会とのつながりを確保する>

  • 障害者が福祉的就労の場のみに囲われることなく、一般就労の場と同じく、 社会や人との関係づくりを確保することが必要である。
  • また、利用者を主体とする視点に基づく自己実現や社会貢献を進めることも 必要である。

<多様な実態をふまえた検討が必要>

  • 労働者性と労働法規を適用することは、労務の提供とその提供にともない対 価が発生することから、そこには生産性や経済的効率性が求められる。
  • しかし、現行の就労継続支援B型事業については、労働者制の高いところも ある一方、重度心身障害者の受入や、利用者の「社会参加」または利用者自 身のペースやリズムによる「働く」場となっているところもある。
  • また、労働者制と労働法規の適用については、今後の障害者の労働分野にお ける政策体系を打ち出した上で、多様な実態をふまえた上で検討される必要 がある。
  • 以上を踏まえ、一般的就労の多様な展開、社会的事業所の法制化等を前提と して、労働法規の適用を考えていくことが必要である。
  • なお、福祉的就労の在り方は、福祉的就労の現場状況の把握と支援者を含む 当事者の声に基づき検討することが必要である。

【勝又委員】
収入を得る活動は平等に扱われるべき。
同一価値労働同一賃金の原則を徹底すべき。

【門川委員】
→ 重度の障害などで、生産性が低く最低賃金法の適用除外となる場合でも、 職場の一員として認められ、その人に合った社会保障や各種支援が提供される べきである。

【川﨑委員】
福祉的就労は訓練の場として位置付けられており、利用者は労働者性がない とされているが、多くの精神障害者には実質的に就労の場となっており、労働 法が適用対象とされるべきである。

【北野委員】
A.シームレスな支援 1.一般就労と福祉的就労の制度間格差とサービスの 断絶の問題についてどう考えるか に包摂

【佐藤委員】
「福祉的就労」の課題は、「ILO159号条約違反に関する申し立て書への 報告」76項目「機会及び待遇の均等の条約の原則に注目し、…授産施設にお ける障害者がおこなう作業を妥当な範囲で労働法の範囲内に収めることは極め て重要であろうと思われる、と結論する」というILO の指摘をふまえた改善が もとめられ、ILO99号勧告による保護雇用制度を、雇用と福祉の連結によ り発展拡充していく方向性が採られるべきである。
雇用法と福祉法の連結実施によって労働者としての権利と所得を保障してい く視点が不可欠である。(二分法モデルから対角線モデルへの移行)
そのため、新しい雇用制度と福祉制度は、独自の法体系を確立しつつも、そ の運用にあたっては、すべての障害のある人が本人の選択に応じて、雇用と福 祉の法制度による保障と支援利用を可能とすることが必要である。
また、「働くことを選択・決定する権利」の保障とともに、「働かないことを 選択・決定する権利」の保障も必要である。

(きょうされん政策調査検討素案)

【関口委員】
たとえ保護的就労であっても労働法規の準用と労働者性を確保の担保が必要。 ex. 組合を作ろうとして作業所から排除された仲間がいる。

【竹下委員】
(1)福祉的就労という概念は廃止すべきである。福祉的就労という概念は、 障害のある人の社会参加としての労働(働く)を否定するものであり、とき には労働基準法の適用を排斥することによって事業所の違法行為を誘発させ、 障害者を労働者保護制度から排除することにつながっている。
(2)これまでの福祉的就労と呼ばれた場面においても、労働基準法、労災保 険法、雇用保険法、厚生年金保険法等の法規を適用すべきである。
かつて、「特別権力関係」という概念で人権を制限する法理が妥当していた が、現時点ではそうした法理は否定され、個々の権力関係ごとに人権制限の 妥当性、合理性が審査されるようになっている。それと同じように、仮に「福 祉的就労」としての位置づけを残すのであれば、一律に生産性の低い労働関 係をくくり、障害のある人の労働者性を否定したり、労働法規の適用を排除 するのではなく、適用が可能ないし妥当なものについては個別的に判断し、 適用すべきである。
(3)ただし、「就労」としての位置づけができないか困難である日中活動(創 作活動などの社会参加活動)が存在することについては否定するものではな い。そうした活動は「就労」としてとらえるのではなく、あくまでも福祉サ ービスとして支援していくことが必要である。

【土本委員】
働くことが中心であれば、福祉的就労となるが、働くことが中心でなければ、 活動センター。
わたしたちは、地域活動センターと考えている。
(自己実現支援、よろず相談、日常生活支援、金銭管理支援、行政手続き支援、 病院との連絡調整支援などなど)

【中西委員】
現在の制度は、福祉的就労の場における障害者は労働者としての諸権利が保た れていない点からみて問題である。
福祉的就労の場においても実態として「労働」をしているにも関わらず、「工 賃」という名の低賃金に留めおかれ、さらに、費用負担も課されている。

【久松委員】
労働者性と労働法規の適用を積極的に検討すべきである。福祉的就労は、「生 きている」こと、「生きていく」ことのための労働として、一般就労とは異なる 位置づけで積極的に定義する必要がある。障害者が支援を受けながら「働く場」 として就労継続支援B型事業は不可欠である。

【松井委員】
就労継続支援事業(非雇用型)や授産施設などで一定期間以上にわたって就 労する障害者についても、原則として労働者性を認め、労働法(少なくとも労 働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法および労働者災害補償保険法など)の 保護が受けられるようにすべきである。
現在のところ福祉工場を除き、授産施設などで就労する障害者については、 労働法による保護の対象外となっているため、最低賃金法が適用されず、きわ めて低い工賃にとどまっており、しかもその妥当性をチェックする機能も働い ていない。また就労中に事故にあってもきわめて低い補償しか受けられないの が、実情である。
こうした授産施設などで就労する障害者のきわめて劣悪な労働条件などを改 善すべくここ数十年にわたって繰り返し様々な提案がなされてきている。それ らの提案などを十分踏まえ、いまこそこの問題解決に向けて国として正面から 取り組むべきと考える。

【森委員】
労働及び労働法規等に関しては憲法27 条を根拠に定めているので、「障害者 の雇用の促進等に関する法律」は「職業安定法」の特別法的なものとして制定 されたものであると解する。従って、現在の福祉的就労の根拠は「身体障害者 福祉法」等にあり、現在では「障害者自立支援法」に根拠を持つといえる。
従って、福祉的就労の実態が労働法規の適用すべき内容を持つものであれば、 就労するものに労働者性を、適用法規としては労働法規の適用も考慮すること が必要となろう。

2.最低賃金と賃金補填についてどう考えるか

【大谷委員】
福祉的就労の場においても最低賃金を国もしくは地方公共団体が補てんして でも保障するべきである。
その具体的な方法については、雇用と福祉を統合させてになう部署を厚労省 の中に創設し、その方策をすすめるべきである。

【大濱委員】
権利条約では「あらゆる形態の雇用」を謳っていますが、労働法規や最低賃 金の適用によって就労支援事業が実施不可能になってしまっては、元も子もな くなってしまうので、慎重に検討すべきだと考えます。

【尾上委員】
<障害を理由にした最低賃金減額特例の見直しを>
改正最低賃金法において、最低賃金適用除外が減額特例と変更されたが、そ の減額申請要件の一つに「精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者」 と障害について直接言及している。この内容は、条約に抵触すると考えられる ため、見直しが必要である。

<賃金補填か所得保障かの検討が必要>

  • 労働者制と労働法規に基づかない多様な「働く場」としての位置づけと、そ れにともなう工賃収入としてとらえた場合には、最低賃金に達しない差額を 賃金補填として保障することが考えられる。
  • 一方、利用者の障害の状況等により「社会参加の場」としての位置づけでと らえた場合は、賃金補填ではなく、年金の拡充や社会手当の拡充・創設等に よる、所得保障としての対応も考えられる。
  • いずれにせよ、個別事業者のみの負担だけにならないような最低賃金分の生 活保障策の検討が必要である。

【勝又委員】
最低賃金はすべての労働において定められ認められるべきだとは思うが、そ の順守が障がい者の雇用の増加の障壁となっているのなら、就労の機会の増加 を妨げない仕組みに変えるべき。
社会保障給付における所得保障である年金や手当と就労収入との調整を行い 障がい者の就労意欲を阻害しないものに変更すべき。

【門川委員】
→ 現行の最低賃金法の下で、すべての障害者に同法を機械的に適用すること には無理があるだろう。
最低賃金法の機械的適用ではなく、適用範囲の拡大や条件の緩和を目指しつ つ、賃金の公的補填制度(「保護雇用」的取り組み)が構想されるべきである。

【川﨑委員】
福祉的就労にも最低賃金は保障されるべきである。

【北野委員】
A.シームレスな支援 1.一般就労と福祉的就労の制度間格差とサービス の断絶の問題についてどう考えるか に包摂

【佐藤委員】
最低賃金法の適用除外は重度障害者の一般雇用を推進するために維持すべき である。ただし、不当な搾取を防止するために審査とモニターをより厳密に行 いたい。
賃金補填(別名、保護雇用または補助金雇用)は雇用差別禁止とともに、障 害者雇用制度改革の2つの柱であり、きわめて重要である。
最低賃金の適応除外を受ける障害者は、最低賃金に足りない分(以上)の賃 金補填を受けて、給料と補填を合わせて生活できるだけの賃金を得るべきであ る。

【関口委員】
本来最低賃金以上が当たり前。保護的就労の場合には、所得補償としての賃金 補填を導入すべきである。

【竹下委員】
これまでに福祉的就労として位置づけられた作業(または労働)については、 可能な限りにおいて一般就労と区別することなく労働法規を適用し、かつ最賃 法についても除外することなく適用すべきである。ただ、その場合、合理的配 慮義務を履行しても最賃を超える賃金を支払うための生産性が確保されない場 合には、ヨーロッパにおける「保護雇用制度」に準じて賃金補填を行うのか、 それとも生産性に応じた賃金体系を開発することが必要である。

【中島委員】
法定最低賃金は基本的には授産施設等(就労継続支援事業非雇用(B)型) も含めて障害者にも適用すべきと考えるが、「減額特例」については、障害者雇 用の進捗状況を踏まえつつ、賃金補填制度の創設も含めて引き続き検討する。

【中西委員】
最低賃金との格差を埋めるための賃金補填制度等を導入するべきである。ま た、一般雇用においても最低賃金適用除外の撤廃を図るべきである。
最低賃金適用除外がないと、障害者の生産性から見て就労がかえって阻まれ るという意見もあるが、そもそも最低賃金は労働者の権利として守られるべき ものであるから、最低賃金を適用しないことで就労できるということ自体が矛 盾している。

【久松委員】
障害者の就労の拡大を図るためには、就労環境の整備(採用側の変化)が必 要であり、現状の雇用促進法(雇用率)に加えた新たな基準を検討し、最低賃 金法の適用除外を外し、賃金補填制度の導入を図ることが望ましい。

【松井委員】
授産施設などで就労する障害者についても、基本的にはひととしての尊厳に ふさわしい地域での生活ができるよう、最低賃金あるいはそれ以上の賃金を得 られるようにすることが望ましい。しかし、現在の授産施設などが、自助努力 でそこで就労する障害者に最低賃金保障をすることは現実的に困難である。し たがって授産施設などでの賃金が最低賃金に満たないものについては、何らか の形での公的所得保障(障害基礎年金や賃金補填など)により、地域で生活が できるようにする方策が検討されるべきであろう。
もっとも授産施設などで就労する障害者の賃金レベルを高めるには、付加価 値が高い良質の仕事の安定的確保に向けての授産施設などの経営努力とその努 力を支援する仕組み(たとえば、授産施設などが企業や公的機関から仕事を確 保できるよう、雇用率制度や納付金制度とリンクさせるための法改正や、地域 レベルで授産施設などが仕事を共同開発できるような支援システムの構築など も一方策)も整備する必要がある。

【森委員】
自立して地域生活を送るためには、地域住民と同等な生活水準を維持するこ とが必要となるので、福祉的就労での所得に関しても、最低賃金同等の水準が 要求される。福祉的就労からの所得が最低賃金に達していない場合には、賃金 補填を行い、最低賃金同等額の支給をすることが必要である。

3.就労支援事業のあるべき姿にどう考えるか

【大谷委員】
就労は障がいのある人の生活全般にかかわることであり、就労支援と生活支 援を切り離して考えるべきではない。特に現在相談業務すら切り離されている 就労支援センター(地方公共団体の設置により地域で運営する就労支援センタ ーおよび国の事業としての障がい者就業・生活支援センター等)の機能を強化 しつつ、相談業務も含め、包括的に就労から生活全般にわたる支援ができるよ うにするべきである。

【尾上委員】
<雇用を維持・継続するための支援の充実が必要>

  • 就労に向けた支援は、就労後も継続し、就労してから発生する問題への対応 を支援することにより雇用の安定及び継続につながることが期待できる。
  • また、就労後に発生する問題から、障害者の雇用継続に必要な「合理的配慮」 の内容や「職場環境」の整備等に関する具体的事例を把握し、活用することも期待できる。

<福祉ではなく労働施策として実施>

  • 権利条約のインクルーシブの理念に基づき、就労支援事業は、福祉施策では なく、労働施策として実施することが必要である。
  • 併せて、労働行政において実施されている一般の職業訓練と同様の事業とす ることが必要である。

【勝又委員】
支援をうける者に対応したきめの細かい支援事業であるべき。

【門川委員】
→ 従来の会社・事業所等への通勤を前提とした就労概念をより広くとらえ なおして、在宅就労の促進、さらには自営の仕事の促進に関わる支援について も構想されるべきである。

【川﨑委員】
精神障害者の就労で課題は、就労継続、定着が困難なことである。日常生活 のしづらさを抱えている精神障害者には、職場だけの支援ではなく、帰宅して からの生活面の支援が必要で、障害者就業・生活支援センターの役割の強化が 必要と考える。

【北野委員】
A.シームレスな支援 1.一般就労と福祉的就労の制度間格差とサービス の断絶の問題についてどう考えるか に包摂

【関口委員】
申請に基づく訓練を可能な限り無償で供与すべきである。ジョブコーチも必 要に応じて配置すべき。とりわけ、精神では、その後の相談支援やアドボケイ トの存在が重要。当面、障害者雇用促進法は必要だが多様性を尊重した働く障 害者のメインストリーミングが望まれる。

【竹下委員】
(1)合理的配慮義務の実施
合理的配慮を実現するためには、企業による努力の範囲を明確にし、国 や公益団体からの支援を組み合わせることが必要である。
(2)職場適応体制の確立
当該障害者ごとに就労支援を具体化し、職場定着を図るためのチームを 編成する。
(3)地域別または産業別に障害者雇用に関する協議会を創設する 合理的配慮の実施内容の検討、企業間における連携、行政機関をも交え た支援の検討などを行う。

【中島委員】
障がいの有無、種類および程度にかかわらず、障がい者が差別されることな く働ける社会の実現に向け、「福祉から雇用へ」の取り組みを進める。また、雇 用、福祉、教育の各行政機関が国および地域レベルで連携し、ハローワークを 核とした地域のネットワーク、企業に対するサポート等を重視した就労支援策 を行う。

【久松委員】
一般企業に就職してさまざまな要因により離職した障害者が再就職に取り組 む期間に福祉(支援)サービスを利用できるしくみを検討する。福祉の分野、 労働の分野、教育の分野との連携のしくみを構築する。

【松井委員】
現行の法制度では、障害者雇用促進法に基づく就労支援事業と障害者自立支 援法に基づく就労支援事業は、分立しており、連携が図られているとはいえ、 十分ではない。これらの就労支援事業を一体的かつ効果的に展開するには、両 制度を統合または融合することが求められる。
両制度を統合することで、両制度が現在もつ人的・経済的資源の有効活用が はかられるとともに、両制度が分立しているための矛盾(たとえば、障害者雇 用促進法に基づく就労支援は無料で提供されるのに対し、自立支援法に基づく 就労支援は、原則として利用料の一部負担があるなど。)が解消されることにも なる。

【森委員】
再三指摘しているところであるが、就労支援事業の利用者から利用料を徴収 することは、同じ障害者が職業能力開発の訓練を受ける場合に職業能力開発訓 練手当を支給されることと相反するのではないか。従って就労支援事業の利用 料は最低限でも無料にすべきである。

4.一般就労における就労支援(通勤支援、身体介護、ジョブコーチ)につい てどう考えるか

【大谷委員】
障がいのある人本人にとって必要な支援を保障するべきである。先述のごと く、合理的配慮は事業者の義務であるがそれと同時にこれを実現することは国 及び公共団体の責務でもある。
たとえば、現在通勤支援が障がいのある人の自立にとっては最大限配慮され なければならないにもかかわらず「継続的に同じ場所への移動は対象外とする」 との実施要綱によって、多くの自治体で移動支援の対象外とされ、制度的に保 障されていない。これについても総合福祉法において保障するべきである。

【大濱委員】
前述のとおり、総合福祉法でのパーソナル・アシスタンス制度で対応するべ きだと考えます。

【尾上委員】
<障害に応じた通勤手段の確保>

  • 現在の一般就労では、障害のない労働者の状況に基づき通勤手当制度がつく られているため、障害労働者が必要とする通勤方法(自家用車、福祉移送サ ービス、介護タクシー、移動支援等)も保障する内容に見直すことが必要で ある。
  • 見直しにあたっては、まず、国及び地方自治体等の公務部門において民間の モデルとなるように先行して実施することが効果的である。

<人的サポート体制の確保>

  • 現在の障害者雇用及び福祉施策では、保障されていない、障害者が必要とす るガイドヘルパー、手話・文字通訳者、介助者等を確保するための法制度の 改善または、創設が必要である。

<採用試験における合理的配慮の確保>

  • 「○一般就労の3の<公務部門への範囲拡大>」と重複するが、採用試験の実 施にあたっては、点字・音声パソコン・拡大文字・照明・手話通訳・文字通 訳(パソコン文字・要約筆記・筆記)・機器の活用及び会場のバリアフリー等、 障害者が受験するために必要とする配慮を確保することが必要である。
  • なお、採用試験で実施した「合理的配慮」は、採用後も確保することが必要 である。

参考 <公務部門における障害者採用試験の現状>
地方自治体の障害者採用試験における受験資格は、各自治体の人事採用に関 するホームページ等から確認できるが、多くの自治体では、その受験要件とし て「活字印刷文による出題や口頭による試験に対応できる者」、「自力通勤及び 介助者なしで職務遂行が可能な者」及び「身体障害者」に限定している。

【勝又委員】
ダイレクトペイメントの導入を行い、より多くの障がい者に一般就労を可能 にすべき。

【門川委員】
→ 一般就労を円滑にするため、これらの取り組みがなされるべきである。
とりわけ通勤支援は、既存の福祉施策では対応困難である点を改善すべきで ある。ただし、既存の福祉施策では支援提供の時間数がわずかであるため、日々 の通勤に利用するには利用可能時間数の増大も不可欠である。
また、一般社会や企業への意識啓発に力を入れ、企業にとっても障害者にと っても円滑な就労ができるように必要な支援を提供する。一方、障害者個人に 過度の努力や環境適応を強要するような「障害者努力主義」に陥らぬよう留意 すべきであり、職場で必要な人的支援や物的支援(各種支援機器類の整備など) を提供すべきであり、そのための公的助成を拡充する。
なお、障害者が職場において支援を求めても、昇進に影響しないよう配慮さ れるべきである。

(例)視覚障害者向けガイドヘルパーや盲ろう者向け通訳・介助者は、経済 的活動には派遣が認められていないが、条件を緩和し、通勤や職場内でのサポ ート、自営業の支援にも利用できるようにする。

【川﨑委員】
ジョブコーチ:仕事の支援のほかに、精神障害者は対人関係がうまくいかな いことが多く、またそれを言い表すことも苦手である。精神障害の特性を理解 し、本当に必要なことを支援できるジョブコーチの育成を願う。

【北野委員】
A.シームレスな支援 1.一般就労と福祉的就労の制度間格差とサービス の断絶の問題についてどう考えるか に包摂

【関口委員】
まず、人間としての権利(移動の自由、不可欠な身体介護等)と配慮の部分 を切り分ける必要がある。権利の部分は無条件に支給し、配慮の部分について は、過度の負担(本人の月収の数倍に上る等)はお互いに話し合って決めるべ きである。
精神については、どのような支援が必要か研究開発が望まれる。

【竹下委員】
(1)一般就労における通勤については、独自の通勤介助制度を設けることが 必要である。そして、通勤介助を実施する機関(社会福祉法人、NPO、その他) に対し、企業、国及び自治体などからの支援を行うことによって、通勤介助 が安定的に実施できるようにする。
(2)職場における身体介助については、合理的配慮の内容として行うのか、 福祉サービスとして行うべきかについては検討を要する。通勤介助と同様に 福祉的制度として支援制度を創設することが検討されるべきである。
(3)ジョブコーチは前述の3の(2)において記述したことと重ねて考える ことでよいのではないか。すなわち、障害者ごとに支援チームを編成し、そ のチームをサポートする制度として位置づけることが有用ではないか。

【土本委員】
(1)ようご学校のしんろの先生は、しゅうしょくしてから3年間は年に1回 ようすをみにくるようだけど、そのあとはだれもこない。
(2)ジョブコーチは、はじめの数ヶ月しか使えない。
(3)しゅうしょくしたあとの支援がうけられないため、だれにもそうだんで きず、ぎゃくたいやけんりしんがいをうけても、がまんしてはたらいている仲 間がいる。
(4)ろうどうきじゅんかんとくしょのやくわりやせきにんをはっきりさせて、 仲間たちのはたらくけんりがまもられているか、もっとはいりょして、ちゃん としらべることです。
(5)とくに、いますぐやってほしいことは、すみこみではたらいている仲間 たちのちょうさです。
「サングループ」「水戸パッケージ」「大橋製作所」「三丁目食堂」等の事件 で同じことは、すみこみではたらいていたことです。

【中島委員】
○すべてのハローワークにおいて、手話通訳、要約筆記者、視覚障がい者に対 する支援者を2名以上配置するなど、障がい者の就労支援体制を拡充する。
○301 人以上の企業は、ジョブコーチを1名以上配置する。
○障害者就業・生活支援センターは、早急に全障害保健福祉圏域に設置すると ともに、職員やジョブコーチなど10 人程度配置する。また、障がい者の就労 支援を担う人材の育成・確保・定着に向けた財政支援を行う。

【中西委員】
就労支援策のニーズは、恒常的なものであるため、支援する期間を制限すべ きではない。また、雇用主以外に障害者個人も支援の対象とする必要がある。 今の就労支援策は基本的に障害者を雇用した雇用主を対象とし、その期間も 限定されているが、結果としてその支援が当該障害労働者の継続及び安定的な 雇用につながらない場合も指摘されている。

【長瀬委員】
ジョブコーチは知的障害者の場合に、米国では合理的配慮として位置づけら れていることを考慮すると、就労支援であるのみならず、その欠如が差別とみ なされる。

【久松委員】
労働における合理的配慮を行う必要がある。障害者権利条約の第27条の規 定に沿って様々な就労支援を行うべきである。

【松井委員】
現在のところ障害者雇用促進法による就労支援制度と障害者自立支援法によ るものが分立しているため、個々の障害者のニーズに応じて、両制度を総合的、 相互補完的に活用できるようになっていない。いまのところ通勤支援はいずれ の制度も活用できず、また障害者雇用促進法の納付金制度に基づく、職場での 身体介護やジョブコーチは、期限が限られている。「合理的配慮」提供の義務化 にも関連して、両制度の見直しが必要である。

【森委員】
いずれも現行の制度の中で実現しているものもあるが、利用状況が多様であ り、問題点に関しても実効性が上がっているか調べる必要がある。

○シームレスな支援

1.一般就労と福祉的就労の制度間格差とサービスの断絶の問題についてどう考えるか

【大谷委員】
一般就労の定着支援をすると同時に就労移行支援についても充実させるべき である。現在の就労移行支援を職業訓練と位置付け、その間雇用対策法並びに 職業能力開発促進法で一般に保障されている訓練手当と同等のものを保障する べきである。

【大濱委員】
民間企業側の担当者(障害者職業生活相談員など)と就労支援事業の担当者 の連携にとどまらず、民間企業、就労支援事業、ハローワーク、障害者生活・ 就業支援センターの間で人材交流(お互いに担当者が出向)を促進するのが有 効だと思います。

【尾上委員】
<障害者のニードに基づくサービス確保>

  • 現在の障害福祉サービスは、経済活動とされる雇用に利用することはできな い。
  • また、障害者雇用施策においては、障害者が必要とする介助サービス等を利 用することはできない。
  • しかし、障害者が日常生活で必要とする介助等の福祉サービスがなければ、 職務遂行以前に、そうした障害者が職場に長時間滞在すること自体が不可能 である。
  • こうした現実を改善しなければ全身性等の重度障害者の雇用の確保は、困難 である。
  • 以上の理由から、制度の見直しが必要である。
  • なお、見直しにあたっては、福祉施策のサービス利用の範囲拡大とするか、 同じく雇用施策として拡充するかは、別途、検討することが必要である。

【勝又委員】
「制度間格差」の事例を明らかにし、その格差が生じている原因とその格差 の結果、どのような弊害が出ているかを確認する必要がある。
制度や法律の分立によって問題を抱えているのは障がい者に限ったことでは なく、高齢者・女性・児童・外国籍の人等様々な対象についても共通点がある と思う。人を中心とした制度への改革が必要。

【門川委員】
→ 過度の断絶が生じないようにすべきである。
一般就労を支援するとともに、福祉的就労の条件整備も進めるべきである。一 般就労と福祉的就労には本来価値的な相違はなく、いずれも「仕事」として尊 重されるべきであり、福祉的就労が軽視されてはならない。

【川﨑委員】
障害者権利条約第27条「あらゆる形態の雇用にかかわるすべての事項(募 集、採用及び雇用の条件、雇用の継続、昇進並びに安全かつ健康的な作業条件 を含む)に関し、障害を理由とする差別を禁止すること」に則り、障害者雇用 促進法の雇用施策と障害者自立支援法の福祉施策は、再編されるべきである。

【北野委員】
A.一般就労と福祉的就労との格差が大きすぎ、かなりの障害者がその間で、 どちらにも大きな不満を抱いている可能性が高い。
私が障害者計画の委員長をしていた、大阪府箕面市と滋賀県では、「障害者事業 所制度」「社会的事業所制度」という形で、従来の事業者への補助金だけでなく、 障害者従業員に賃金補填を行うことによって、一般雇用契約を結び、最低賃金 以上を確保している。
つまり、社会活動(支援) ― 社会的就労(支援)―
―般就労(支援)の切れ目のない3類型を、障害者本人の選択を基本として構 築している。
働きたい、働く意欲のある人は、基本的に社会的就労か一般就労を目指し、 それを望まない人は、社会活動(支援)において本人の希望する社会参加・活 動を行う。その中には今すぐには働きたくないが、将来は働きたいということ で、職リハや職訓に近いものも含まれるかもしれない。
社会的事業所の展開は、EUのソーシャル・ファームやソーシャル・エンタ ープライズの典型的なケースであり、今後わが国が展開すべき、且つ展開可能 性の極めて高い、そして多くのニーズを満たしうる、さらには社会的使命を果 たしうる事業である。

【佐藤委員】
「シームレスな支援」という場合、制度・政策のシステムに関するものと、個々 の障害者への継続的な支援に関するものとが想像される。前者は、労働の能力 や希望に基づいて作業活動、福祉的就労・保護雇用、一般就労など多様な段階 の就労の場を配置することであって、後者は学校から職場へ、福祉制度から雇 用へ、それらの移行の前の準備から後のフォローまでのながれを行政的縦割り の弊害をなくして支援するマネージメントに関することである。どちらも重要 だが、ここでは前者について触れたい。
わが国が批准しているILO 第159 号条約ならびに,関連する第99 号勧告,第 168 号勧告に基づけば,障害の程度に関わらず就労を希望しているすべての障害 者は失業者と認識すべきであり,一般雇用対策として必要な就労支援が行われ, 就労という社会参加から排除されないようにすること。多くの障害者を「福祉的 就労」(就労継続支援B 型や地域活動支援センター、小規模作業所など)に、つ まり一般雇用対策の外においている現状を改めるべきである。これらの障害者 が職安登録するだけでも法定雇用率が大幅に上昇する。
保護雇用(社会雇用)の眼目は、労働能力の不足部分を公的な賃金補填で補い、 最低賃金を超える賃金を受けられるようにすることと考える。雇用の場所を福 祉工場のような主として障害者が雇用される場所とするか、通常の一般企業で の就労とするか、その場合に障害者が小グループで就労するかなど、いろいろ な形態があり得る。日本では重度障害者多数雇用事業や就労継続事業A 型がこ れに近いが、賃金補填を本格的に考えるべきであろう。
雇用保険制度の「特定求職者雇用開発助成金」は、障害者を雇用した事業主 に1 年ないし1 年半の間補助金を支給する制度で、効果を挙げているのもであ るが、期間が限られている。そこで神奈川県と県内の多くの市町村では、「特開 金」終了後に期限を設けずに月額3万円、4万円などの補助金を事業主に支給 している。ヨーロッパの多くの国の政策としてなされている賃金補填(補助金 雇用)を、日本で国に先駆けて自治体が始めている姿であり、その効果測定を 行って検討すべきである。

【関口委員】
最低賃金を所得補償と考えれば、補填はサービスではなく権利である。2つの 就労形態が自由に選べ、体調や希望により容易に移動できることが重要である。 参考意見:福祉的就労という概念を根本から変えるべきであり、いまある作業 所の多くはむしろ就労の場というより地域生活で障害者の交流の場、エンパワ ーメント、セルフアドボカシー活動あるいは障害者運動の場として位置づけな おす必要があると考えます。 全国「精神病」者集団 山本真理

【竹下委員】
前述したとおり、福祉的就労という概念は放棄すべきであるから、一般就労 と福祉的就労という断絶は生じない。また、これまで福祉的就労として位置づ けられてきた労働(作業)については、合理性のある労働法規を適用していく ことになるから、シームレスな体系が作ることができることになる。

【久松委員】
福祉の分野、労働の分野、教育の分野との連携のしくみを構築し、制度間格 差の解消とサービスの提供の一元化を図る必要がある。入所施設と福祉的施設 が一体となっている施設は、交通不便な場所にあることが多く、一般就労を目 指した実習をする際、通勤手段の確保が大きな課題となっている。福祉的就労 から一般就労を目指す施策が必要である。

【松井委員】
現行のところ一般就労およびその支援については、障害者雇用促進法、そし て福祉的就労およびその支援は、障害者自立支援法に基づき、分立して提供さ れているため、福祉的就労に従事している障害者は労働法による保護が受けら れないばかりか、就労に対して利用料の一部負担まで求められるなど、国際的 にもきわめて異常な状況になっている。こうした状況を解決するには、両制度 を統合または融合するための制度の見直しが求められる。

【森委員】
「労働力提供に対する対価」として「企業での雇用」は「賃金」であり、「福 祉関連施設での作業」は「工賃」であるといわれているが、このことに関して は再検討が必要である。

○雇用の創出

1.社会的事業所の法制度化についてどう考えるか

【大谷委員】
賛成であり、これを法制度化するべきである。
これについては先取り的実践がされているので、これらを参考に制度化する べきである。

【尾上委員】
<法制化し新たな障害者を含むインクルーシブな雇用の場を創出する>

  • 欧米の社会的事業所は、いくつかの形態に分けられるが、基本的には、「一般 就労と福祉就労以外の第3の就労の場」、「障害の有無に関わりなく、誰もが 対等に共に働く場」として位置づけ、その設置を促進する。
  • 日本においても、滋賀県や大阪・箕面市など先進的な自治体においては、社 会的事業所制度を実施しており、障害のある者とない者が共に働く、より重 度の障害者の労働への参画を進める施策として大きな効果をもたらしている。
  • また、労働者性と労働法規を適用する一方、民間企業と比較して競争力が十 分でないことから、ハート購入法の優先適用と公的資金による助成対象とす ることが必要である。
  • なお、社会的事業所のあり方及び法制度については、更なる調査・検討が必 要である。

<福祉的就労の場から社会的事業所へ>

  • 現在、地方自治体が独自に障害者雇用を進めるための事業所は、もちろん、 福祉的就労の場とされている就労継続支援A型事業や福祉工場も社会的事業 所として位置づけることができるかもしれない。

【勝又委員】
その効果と費用について、試行を行い見極めるべき。すぐに法制化すること は早計である。

【門川委員】
→ 社会的事業所が福祉的就労の場であるなら、法的に就労の場として位置づ けるべきである。

【北野委員】
A.シームレスな支援 1.一般就労と福祉的就労の制度間格差とサービス の断絶の問題についてどう考えるか に包摂

【関口委員】
税制上の優遇措置等検討課題は多いが法制化はすべきである。ただし一般企 業における障害者雇用の一般雇用へのインクルージョンが先決である。

【竹下委員】
労働の多様化が進み、その結果としてこれまで「ボランティア活動」として 位置づけられていたり、「公益的事業」として位置づけられてきたものについて も、NPO の事業参入により、すでに社会的事業所は存在していると見ることもで きる。今後はNPO によるさらなる事業化がどこまで望めるか、あるいはどのよ うな事業化が妥当であるかの議論が必要であって、現時点では新たな法制化に よって混乱を持ち込むのではなく、NPO による取組、発展を促すべきではないか。

【中西委員】
障害者のみならず、一般労働市場で働くことに困難がある人びとが労働者と して労働市場に参加することを促進するためにも、法制化を進めていくべきで ある。
障害者に関して言えば、現行制度は福祉的就労を「卒業」して一般雇用を目 指すという、一種「上下関係」に基づいた流れを想定して作られている。障害 者の雇用機会を創出するためには、一般雇用や現行の福祉的就労とは異なる、 社会的事業所のような形態も必要ではないか。

【松井委員】
現在授産施設等で就労する障害者で、一般就労への移行が困難な者に対して、 一般就労にかわる出口を提供する試みとして、国内でのすでに箕面市や滋賀県 で社会的雇用としての障害者事業所(社会的事業所)が市や県の単独事業とし て制度化され、その有効性を実証するなど、それなりの成果をあげてきている。
また、イタリアなどの社会的協同組合などを参考に、「協同労働の協同組合法」 制定に向けての動きや、英国などの取り組みを参考に、ソーシャルファーム設 立に向けての動きなどもみられる。
社会的事業所などの制度化は、一般就労か福祉的就労かの二者択一でなく、 就労を通して社会参加を希望する障害者に対して第三の選択肢を提供するもの として、きわめて意義がある。
社会的雇用制度の創設により、仮に10 万人の非就労障害者が就労にシフトす ると年間430 億円の社会的コスト削減につながるという試算もある。(箕面市提 供の資料による。)

【森委員】
社会的事業所については内容に関して不案内であるためコメントは差し控え ます。

2.いわゆるハート購入法についてどう考えるか

【大谷委員】
賛成であり、これを法制度化するべきである。
障害者雇用促進法は雇用率の低さと納付金制度によって、障がいのある人の 雇用の創出には限定的な役割しか果たしていない。暫定的優遇措置の一環とし て制度化するべきであり、このことによって社会的事業所に仕事をまわし、障 がいのある人の雇用創出をすすめるべきである。

【大濱委員】
早急に立法化するべきだと考えます。

【尾上委員】
<法制化し障害者の所得と雇用の場を拡充する>

  • 現行の福祉的就労の場は、一般企業に比較して競争力が弱いため、積極的是 正措置として実施することが必要と思われる。
  • また、実施にあたっては、現行の福祉的就労の場、上記の社会的事業所、多 数の障害者を雇用している中小企業とすることが適当と思われる。

【勝又委員】
その効果と費用について、試行を行い見極めるべき。すぐに法制化すること は早計である。

【門川委員】
→ 障害者は就労の機会が極めて制限されているので、市役所などの公的機関 から作業所等に仕事の発注があることは基本的に望ましい。
しかし、仕事の発注においては障害者のニーズを考慮し、働くことへの支援 も忘れられてはならない。またそうした発注が過度になった場合、障害者の労 働条件が悪化しないよう配慮すべきである。

【川﨑委員】
賛成である。更なる雇用拡大に向けて活用されたい。

【佐藤委員】
非常に重要である。一定の範囲で、発注額に応じた納付金減額などのインセ ンテイブをもうけたい。

【関口委員】
名称が分かりにくい。推進すべきだが、市場価格を下回っては意味がないし、 障害者への理解のうえで、一般企業も積極的に参画すべきである。これは、企 業の社会的責任である。

【竹下委員】
ハート購入法は、割当雇用制度が過渡的に残存している段階や福祉的就労を 残している場合に意味がある制度であり、一般就労が徹底されれば不必要とな るのではないか。

【中島委員】
○障がい者の就労支援施設等への助成拡充、製品の販路拡大支援を行うととも に、これらの施設等からの物品等の調達を行政機関等、一定規模以上の事業所 に対して義務づける。
○障害者雇用率制度の実効性をあげるため、公的部門との取引については、雇 用義務を履行している企業のみを対象とすることも検討すべきである。

【久松委員】
国や自治体が、障害者就労施設の受注拡大を図るための措置を講ずることの 責務を課し、調達受注状況の公表を義務付ける必要がある。また、法律を機能 させるには、現行の職員配置では困難であり、働く支援を行いつつ、営業活動 ができる職員の配置が必要である。

【松井委員】
授産施設などがそこで就労する障害者のため、適切な仕事を安定的に確保で きるよう支援することを意図したものとして、評価できる。ただし、同法の対 象となるのは、国、地方公共団体および独立行政法人などの公的機関であり、 それも努力義務にとどまっている。
授産施設等が、適切な仕事をより安定的に確保できるようにするには、公的 機関に加え、民間企業などもその対象とすべきであろう。民間企業をその対象 とするには、公的機関が民間企業から製品やサービスを購入する場合、その製 品やサービスの一部について授産施設などに発注することを入札の条件とする ことが考えられる。

【森委員】
基本的には賛成するが、障害者雇用の充実のためにも、一日も早く創設され ることを望む。

○ その他

【大濱委員】
障害者雇用納付金に基づく助成金のうち、パーソナル・アシスタンス制度に 入らないものについては、企業の合理的配慮の実施を担保する制度として、女 性金額の引き上げや支給期限の撤廃などを行う必要があると考えます。

【尾上委員】
<障害者雇用の施策の推進は、国の責務において実施>

  • 障害者自立支援法(以下、自立支援法)の大きな反省点であり、その改善す べき課題のひとつは、自治体の財政状況等による地域間格差であった。
  • 障害者雇用に関する諸課題。特に「合理的配慮」の内容と確保は、基本的に 地域の独自性や特性に基づくものではない。
  • 自立支援法では、こうした反省に基づき、地方自治体が実施主体であった移 動支援等を現政権は、障害当事者及び支援者の声に基づき、国が実施主体と なる介護給付に変更することを公約とした。
  • したがって、障害者雇用に関する各課題を改善するための責務は、障害者の 労働の権利保障と地域間格差を生み出さない視点から、原則として地方自治 体ではなく国の責務(予算措置を含む)で実施することが必要不可欠である。
  • なお、以上の原則に基づきながらも、地方自治体が主体的に障害者雇用を促 進するために実施することが必要な分野・課題については、別途、検討する ことが必要である。

<専門部会の設置について>

  • 以上の内容に関する各種調査・検討を実施し、法制度等を整備するための「雇 用・労働」に関する専門部会の設置が必要である。
  • 専門部会の構成は、上記の各課題に係る当事者及び関係者による構成とする ことが必要である。
  • 専門部会では、従来の労働行政・福祉行政等の横断的な検討が必要となる項 目が含まれており、この部会で検討した内容が、それぞれの関係部局や審議 会において尊重される必要がある。

【佐藤委員】
新体系事業及び旧体系の授産施設における利用料負担はILO第159号 条約や第99号、第168号勧告からして、すべて無料とすべきである。 0か100かだけではなく、生活費の半分を賃金で、半分を年金(半額年金) でなど、多様な障害者の体力・健康・労働能力を最大限活かし、不足する部分 を年金や賃金補填で公的に補う制度が求められる。所得保障と雇用政策の連携 が必要とされる。

【新谷委員】
採用試験、面接試験の際に応募者の希望に従った情報保障を採用者側にて準 備することを義務付けてください。又、採用可否判定においてその情報保障の 利用を不利益な判定材料としないで下さい。

【竹下委員】
(1)障害者雇用等促進法の下で助成金や奨励金が支給されてきたが、現場で は障害者が食い物にされ、補助金目的に利用されてきている現実がある。たと えば、補助金が3年間支給されている場合、3年の経過によって障害者が解雇 されたり、障害者に最賃以下の賃金しか支給せずに補助金を受領することによ って利益を図っている事例が少なくないからである。そうした弊害を取り除く ためには、恒久的・普遍的な支援制度が必要である。障害者差別禁止法(仮称) が制定された時点で、割当雇用制度を基本とする同法は過渡的なものとして位 置づけられ、将来的には廃止すべきではなかろうか。
なお、イギリスにおいて、差別禁止法(DDA)が制定され、割当雇用制度が廃 止されたことによって、軽度の障害者が多数雇用され、重度の障害者(筆者が 知り得たのは視覚障害者)の雇用が低下したという事実もあり、差別禁止法と 割当雇用制度の調整は難しい問題を含んでいると思われる。
(2)就労問題の中で、常に見落とされているのは障害のある人の自営業に対 する支援である。とりわけ、視覚障害者の場合、鍼灸マッサージという職業を 自宅で開業している者が少なくない。そうした自営による就労者に対しても適 正な援助が考えられなければ、障害者の就労に対する十分な支援制度とは言え ない。

【土本委員】
自立支援法ができるまえから、かいごほけんとのとうごうに反対してきた。 こうれいしゃがつぎつぎに施設におくられた。
とうごうされたら、しょうがいのある仲間たちは、病院や入所施設からでられ なくなる。
いま、ちいきでくらしている仲間は、いまいじょうにちいきのサービスがうけ られなくなる。
仲間たちは、みまもりやこえかけがひつような人もおおく、それがないために こまたり、ひがいにあっている。
入所施設でくらしたけいけんをもち、グループホームや一人ぐらしをした人た ちは、みんな施設にはもどりたくないといっている。
それはなぜか。
入所施設には、自由がないからという。
自分のおかねなのに自由にもたせないで、ジュース一本もかえずにいる人もい る。
外出も年に2回しかないところもある。
毎日かんりされたにっかですごしている。
みんなおなじごはんをたべている。
あさおきるじかんもねるじかんもみんないっしょ。
職員のゆうことをきかないとならない。
ある施設では、かかえこみもある。外にださないでいる。
職員はけいたいをもっているのに、そこを利用している仲間たちはけいたいも もたせないでいる。
しっぱいをすることで、まなぶこともある。
お金のこともしっぱいをしながらと思います。
施設では、子供あつかいもされている。
せまいへやにもとじこめられている。
かんりは、ぎゃくたいや人権しんがいにつながる。

【堂本委員】
障がいのある人の雇用に取り組んでみて気づかされたのは、障がいの有無に かかわらず、人の持てる力を発揮してもらい、人を活かすために環境を変えた り、仕事の手順を見直すということは、どの組織にとっても、必要なことだと いうことである。
事業主の方々にも、障がいのある方の雇用は、職場に多様性をもたらし、一 人ひとりを活かす道を広げるという、広がりと奥行きのあるものなのだという ことを理解し取り組んでもらえば、少子化が進む中、いずれやってくる人手不 足の時に慌てないで済むと気づいてもらえると考える。

【中西委員】
雇用は、就労施策だけでは達成されない。障害者の就労の機会を広げるため にも、地域におけるインクルーシブ教育の実現や高等教育の保障、就労を希望 する職に求められるスキルを身につけるための環境の確保を図ることが重要で ある。

【長瀬委員】
2008 年4 月に厚生労働省高齢・障害者雇用対策部長が発足させた「労働・雇 用分野における障害者権利条約の対応の在り方に関する研究会」が2009 年7 月 に出した「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応について(中間整 理)」をもとに、厚生労働省労働政策審議会障害者雇用分科会が2009 年7 月か ら、障害者の権利条約への対応について議論を重ねている。同研究会と同分科 会の議論の成果を本推進会議の議論でも活かすために、ヒアリングや専門部会 などでの活用を提案する。
障害者の就業率が下がり続けた、1990 年の米国障害者法(ADA)の経験に学び、 不可欠な差別禁止(合理的配慮の義務付け)に加えて、積極的差別是正措置と しての雇用率の引き続いての活用を提案する。

【久松委員】
当面、障害者雇用促進法を障害者雇用保障法に改称し、障害者雇用の拡大施 策の進展を見ながら、労働契約法、労働基準法に組み入れていくことを検討す る必要がある。
自立支援法には目標工賃達成加算があるが、高齢者の利用の場合、工賃アッ プが困難であることから、65歳以上の利用者の工賃実績を算定から除外する ことが必要である。

【遠藤オブザーバー】
障害者雇用については、公益委員、使用者委員、労働者委員、障害者団体推 薦の委員の四者構成からなる労働政策審議会障害者雇用分科会の場で、様々な 課題について審議が行われている。今後とも障害者雇用の課題等については、 障害者雇用分科会の議論に委ね、その結論を最大限尊重していこことが求めら れる。
労働政策は、企業経営だけではなく、健常者を含めた全労働者の生活と密接 に関わってくることから、その決定にあたっては、職場実態を熟知している労 使が十分に関与することにより、職場での大きな混乱を減らし、法令遵守の徹 底が図りやすくなると考える。