障がい者制度改革推進会議 第33回(H23.6.27) 資料2-2
部会作業チーム報告(2)
3.施策体系
【訪問系作業チーム報告】
Ⅰ はじめに-主な検討範囲と検討経過-
当チームの検討範囲としては、施策体系チーム共通の【D-1-1】【D-1-2】に加え、【D-2】生活実態に即した介助支援等実態に即した介助支援等の全項目、並びに【D-3-1】が検討範囲であった。
総じて、障害者権利条約・第19条に示されている「障害者の地域で生活する権利」を具現化していくために、パーソナルアシスタンスの実現を含めて、現行の訪問系サービスに関連した事項を取り扱った。
当チームの特色として、実際に訪問系サービスを利用して地域生活をしている障害当事者やその家族、並びに支援者等で構成されている点があげられる。そうした特性をふまえて、座長・副座長から構成員にテーマを割り振った上で発題をしてもらう形で検討を進めた。さらに、その中で、構成員以外からヒアリングが必要な項目について参考人からのヒアリングも行った。ヒアリング項目は下記の通りである。
●構成員からのヒアリング
①障害者の地域自立生活とパーソナル・アシスタント・サービスの意義、②見守り支援、③医療的ケアを含む支援、④シームレスな支援、⑤移動支援と行動援護
●参考人からのヒアリング
①学校における介護・医療的ケア、②精神障害者のホームヘルプサービの現状と課題、③知的障害者の移動と生活支援の実際
※なお、参考人に対する謝金や交通費等の支給はなく、全くの手弁当という条件下での実施となった。そのような条件にもかかわらず、ヒアリングに快く応じて頂いた参考人の皆様に、心よりお礼を申し上げたい。
これらのヒアリングを通しながら、座長・副座長作成の論点項目にそって構成員で検討を進めた。
Ⅱ 結論とその説明
1.重度訪問介護の発展的継承による「パーソナルアシスタンス制度」の確立【D-1-1】【D-1-2】【D-2-1】【D-2-3】【D-2-4】【D-2-5】
1)「パーソナルアシスタンス制度」確立の方向性
結論 ○「パーソナルアシスタンス制度」の確立に向けて、現行の重度訪問介護を改革し、充実発展させる。
障害者権利条約第19条において地域自立生活のために不可欠な援助として位置づけられている「パーソナルアシスタンス」とは、「いわゆるホームヘルプサービスなどのケアワークのオルタナティブとして、1970年代以降の自立生活運動を中心とする障害当事者運動のなかで求められ、…(中略)…基本的には①利用者による介護者の募集、②利用者と介護者の雇用計画、③利用者の指示に従った介護、④公費による介護費用の提供といったことが前提とされるものである。」(岡部耕典「障害者自立支援法とケアの自律」p.104)
日本におけるパーソナルアシスタンス制度は、1974年に創設された東京都重度脳性麻痺者介護人派遣事業や1975年に開始された生活保護他人介護加算特別基準適用を利用する公的介護保障運動を嚆矢とする。それが自立生活運動における「介助」として継承され、自立生活センターという「当事者主体のサービス提供組織」が既存の市町村ホームヘルプサービス事業等を活用しつつパーソナルアシスタンスを提供するしくみが1990年代以降全国に拡大していったのである。
これらの延長に、2003年開始の支援費制度における「日常生活支援」の全国制度化があり、障害者自立支援法における「重度訪問介護」があることを忘れてはならない。こういった歴史的・制度的経緯を踏まえ、障害者総合福祉法(仮称)における「パーソナルアシスタンス」の確立は重度訪問介護の発展的継承にあることをまず確認しておく必要がある。
2)「対象者」の拡大
結論 ○対象者は「重度の肢体不自由者」に限定されるべきではない。
ただし、現行の障害者自立支援法における重度訪問介護の対象者は、「重度の肢体不自由者であって常時介護を要する障害者」(第5条2)、具体的には、脳性まひ、頸椎損傷、筋ジストロフィ等による四肢麻痺があり、障害程度区分4以上の障害者に限定されている。
障害の社会モデルを前提とする障害者権利条約及び「谷間のない制度」をめざす総合福祉法(仮称)の趣旨を踏まえれば、このようなインペアメントの種別と医学モデルに基づく利用制限は不適切といえる。
「身体介護、家事援助、日常生活に生じる様々な介護の事態に対応するための見守り等の支援及び外出介護などが、比較的長時間にわたり、総合的かつ断続的に提供されるような支援」(2007年2月厚生労働省事務連絡)を難病/高次脳機能障害/盲ろう者等を含む「日常生活全般に常時の支援を要する」(同)すべての障害者に対して利用可能としなくてはならない。
特に、①重度自閉/知的障害者等で行動障害が激しい②中軽度知的//発達/精神障害であっても「触法行為」に通じかねない行為やトラブルが絶えない等の理由で、これまで入所施設や病院からの「地域移行」が困難とされてきた人たちが、地域生活を継続するためには、常時の「見守り支援」を欠かすことはできない。また、現行制度においては重度訪問介護の対象となっていない児童についても、少なくとも介護に欠ける場合や将来親元からの自立を目指す場合には対象とされるべきである。
3)パーソナルアシスタンスの基本条件と利用制限の撤廃
結論
○パーソナルアシスタンスとは、①利用者の主導(含む・支援を受けての主導)、②個別の関係性、③包括性と継続性を前提とする生活支援である。
○重度訪問介護の利用に関する利用範囲の制限をなくし、支給量の範囲内で通勤・通学・入院時・1日の範囲を越える外出・運転介助にも利用できるようにすべきである。
新たなパーソナルアシスタンス制度の在り方については、①「個々の障害者が自己選択、自己決定し行おうとすることをサポートする人がパーソナルアシスタント」「保護し、管理するのではなく、支援する」「当事者本人に主体性がある」「(非当事者・専門家の相談援助ではなく)当事者のピアカウンセラー」(以上【D-2-1】に関する構成員からの発題10月26日報告)、②「見守り」「手伝ってもらう」「いっしょに」「どっかに行くとき、キップを買うとき、わかりやすくしてくれる人」「むずかしい話があったらそばで支援者に教えてもらいたい」(以上【D-2-3】に関する構成員からの発題10月26日報告)、③「通勤中や勤務中での介護」「通学中や学校内での介護」「通院時」「入院時」…「ヘルパー制度が別建てとなっているのは不都合」「自分の体にあった特殊な介護方法に熟練したヘルパー」(以上【D-3-1】に関する構成員からの発題10月26日報告)などの見解が、実際にパーソナルアシスタンスを利用している当事者委員より表明されている。
すなわち、重度訪問介護の発展的改革にあたっては、①利用者の主導(ヘルパーや事業所ではなく利用者がイニシアティブをもつ支援)、②個別の関係性(事業所が派遣する不特定の者が行う介護ではなく利用者の信任を得た特定の者が行う支援)、③包括性と継続性(援助の体系によって分割・断続的に提供される介護ではなく利用者の生活と一体になって継続的に提供される支援)が確保される必要がある。また、現行のような代理受領のしくみを前提としつつこれらの基本要件を担保するためには、サービスの提供やコーディネートにおいて、「利用者主体のサービス提供組織」(副座長11月19日報告より)を積極的に位置づけ活用することが重要である。
また、包括性と継続性といった点から、現行の「通年長期」や「一日の範囲で用務を終えるもの」「社会通年上適切でない外出を除く」、運転介助等の制限が大きな問題となっている。
こうした制限をなくし、支給量の範囲内で通勤・通学・入院時・障害者の自家用車等の運転時・宿泊外出等にも利用できるようにすべきである。(6.シームレスな支援と他分野との役割分担・財源調整の項参照)
2.「他の者」との平等な社会参加の確保と移動支援の個別給付化【D-2-2】
結論
○視覚障害者・児のみならず他の障害者・児の移動支援も基本的に個別給付として、国の財政責任を明確にすべきである。
○個別給付化を行うに当たっては、「他の者と平等」な参加ができるよう、対象者・利用目的(通所や通学や入院・入所者等の外出を含む)・支給決定量や方法・ヘルパー研修等、先進的な自治体の取り組みをふまえて柔軟にできるようにすべきである。
○当面、地域生活支援事業の中の移動支援部分のみ別枠で、国1/2・都道府県1/4の補助金精算という仕組みにする等、国・都道府県の財政支援を強化すべきである。
○車を使っての移動介護は不可欠な場合があり、報酬の対象とする。
知的障害者等の地域での自立生活や移動支援に取り組んでいる支援者から、参考人ヒアリングを行った。その中で、ガイドヘルプについて、「本人は自らの世界を拡げ、外出にとどまらず生活全体の家族からの自立を展望するようになりました。また、その姿をみた家族も入所施設しか将来展望を見出していなかったことを見直す契機とすることもできました。いわば移動介護は社会参加を行いながら、「自立の一歩」の意味合いの意義をもってきた」と、その意義が確認された。
「地域生活支援事業への国の不十分な補助金で地方自治体の自己負担は増大し、その結果移動支援の時間数や支給対象の絞込みや様々な利用制限が行われてもいるし、市町村格差は拡大」したとの自治体の調査結果とともに、地域生活支援事業化に伴う問題点が指摘された。
こうした点をふまえて、今後、移動支援を個別給付とし国の財政責任を明確にすべきである。ただし、その際、「他の者と平等」に社会に参加できるよう、柔軟な利用ができるように、以下のような仕組みとすべきであるとの指摘があった。
①対象は「必要とする人」に拡げる、②通学・通所支援、入院時の支援ができることを明確にする、また、自立生活に向けた体験時利用も可とする、③個々人の必要に応じて支給すべきで、一律の上限を設けるべきではない、④支給方法は自治体にまかせる(月をまたいでの支給決定など)、⑤ヘルパー要件については、当事者を講師とすることを組み込んだ簡易な研修を最低限の必須研修とする等。
いずれにせよ、当面、予算措置を行い、地域生活支援事業の中の移動支援部分のみ別枠で、国1/2・都道府県1/4の補助金精算という仕組みにする等、国・都道府県の財政支援の強化が必要である。
また、車を使っての移動について、現在、ヘルパーが運転する時間は報酬算定外となっていることについて、障害者所有の自家用車等は運送法上に合法であるので対象にするべきとの提起も、作業チーム構成員からあった。
3.現行の居宅介護(身体介護・家事援助)、並びに行動援護の改善【D-1-1】【D-2-2】
結論
○重度訪問介護の充実・発展によるパーソナルアシスタンス制度の確立の一方、組み合わせ型の支援として居宅介護や行動援護も改善をしていくべきである。
○居宅介護(身体介護・家事援助)においても、各障害特性やニーズをふまえた柔軟な利用ができ、評価される仕組みにすべきである。
○行動援護は、サービス利用に当たっての段取り的役割を評価し、居宅介護などと組み合わせて家族同居やグループホーム・ケアホームでの生活にも積極的に活用可能とするべきである。
精神障害者のホームヘルプに関する研究プロジェクトに携わった研究者より参考人ヒアリングを行ったが、「自立支援法下では、精神障害者へのホームヘルプの大半が家事援助に切り換えられ混乱が生じている」との問題指摘があった。精神障害者のホームヘルプの支援内容の実態から、「単なる家事援助ではなく、見守りも含めた、利用者の精神的安定のための配慮や適切な対応を行なっていることが評価される必要がある」との提言があった。また、利用者の症状の波による「急なキャンセル」にも、玄関先での待機や安否確認等が評価されるべきである。
また行動援護については、構成員より「移動介護を個別給付に位置づける際、特別な配慮の元での支援を必要とする方へ本人の行動を適切に援護していく専門性を提供する支援」とされた。加えて、「特別な配慮に含まれている専門性は、子育て、保育、教育、専門療育、地域活動、就労といったあらゆる場面で活かされる必要がある」と、その意義と、障害児の段階から利用できる支援としての重要性も提起された。特に、具体的なサービス利用場面までに至る、事前の見通しや段取りの部分での役割が期待される。そうした点から、家族同居やGH・CH等での生活の時に、居宅介護等と組み合わせて活用し、その後パーソナルアシスタンスの活用に移行していくこと等が想定されるとの提起もあった。
4.見守りや安心確保も含めた人的サポートの必要性【D-1-1】【D-2-3】
結論
○現行の重度訪問介護を知的障害者や精神障害者等にも拡大する際には、家事援助・身体介護・移動支援的対応だけでなく、金銭やサービス利用の支援、さらには、見守りも含めた利用者の精神的安定のための配慮や適切な対応等が提供される便宜の内容として位置づけられるべきである。(資料)
○重度訪問介護だけでなく、居宅介護等においても、利用者の症状の波による「急なキャンセル」や玄関先での待機や安否確認等の障害特性をふまえた柔軟な見守り対応が評価される仕組みが必要である。
知的障害者の当事者委員からは、「現状では認められないので、見守りが少ない。家の掃除、電球の取り替え、家電の故障、家の扉の修繕、家の足りないものの買い物、家の回りの掃除、大家さんなどに謝る場合、など介護者がいるといないで大分違う」といった具体的な実例を踏まえ、「見守り支援」の重要性が提起された。また、「行動援護相当の重度の知的障害者に加えて中軽度の人も見守りが必要な人が少なくない」ことも指摘されている。知的障害者の地域生活においては、「①排泄、入浴、着替え、服薬等の身体介護」「②買い物、食事、洗濯、掃除、整理整頓等の家事援助」「③買い物や外食、余暇活動等の移動支援」とあわせて、「④上記①~③を含めた見守り支援」が必要である。
また、精神障害者のホームヘルプに関するヒアリングにおいても、実際に提供されている「サービスの内容としては、『家事全般』『生活環境の整備』に留まらない生活スキルの獲得、困りごとの解消、社会参加の促進、権利擁護等、『家事援助』ではくくりきれない様々なことを行われており、他機関・他サービスでなかなか提供しにくい内容も含む貴重なもの」であることが確認されている。
さらに、個別の介助支援において見守りも含めた支援の充実を前提にして(その代替としてではなく)、ピアカウンセリングや自立生活体験、障害者本人のエンパワメントや自己決定のプロセス(支援をうけた自己決定)等の充実の必要性、並びにヘルパーによる支援との連携も提起されている。
5.地域における医療的ケアの確保【D-2-4】
結論
○「パーソナルな関係性の中で、個別性を重視して、特定の者に対して行う地域生活に必要な医療的ケア(吸引等の他に、カニューレ交換・導尿・摘便・呼吸器操作などを含む)」が、本人や家族が行うのと同等な、「生活支援行為」として、居宅や学校、移動中など、地域生活のあらゆる場面で確保されるべきである。
○一方で入院が必要な場合には、慣れた介護者(ヘルパー)によってサポートが得られるようにして、必要な医療を得ながら、地域生活が継続できるようにしていくことが必要である。
○なお、上記の論点に関する議論や資料を、現在進められている「介護職員によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会」等にも提供し、調整を図る必要性がある。
※さらに、医療的ケアに関する検討を、第2期の医療と障害児チームで検討してもらえるよう提案する(Ⅲ おわりに参照)
自ら医療的ケアを受けながら地域生活をしている作業チーム構成メンバーから、「介護職員によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会では議論にされていないが、医療行為と日常生活の支援である医療的ケアを分ける必要がある」との指摘がなされた。その上で、「①日常生活の支援としての医療的ケアは、医療行為をヘルパーが行うということではなく、普通であれば本人や家族が行うことをヘルパーが本人に代わり行っているということである。②シームレスな支援であるパーソナルアシスタンスの中で医療的ケアができるようにするためには、よく知っている介助者が無理なく医療的ケアができる仕組みにする必要がある」との提起がなされた。
学校における医療的ケアについて取り組んでいる学校関係者からの参考人ヒアリングでは、特別支援学校、通常学校それぞれでの課題について報告がなされた上で、上記の「介護職員による…」検討会で、それまでの研究会での「この報告書に書かれていない行為は全て禁止であるというような反対解釈をされるべきではない」とされていた了解事項が正しく引き継がれておらず調整が必要との指摘があった。
両方のヒアリングから共通して言えることは、「パーソナルな関係性の中で、個別性を重視して、特定の者に対して行う医療的ケア」が、本人や家族が行うのと同等な「生活支援行為」として確保されるべきであるということである。
また、一方で入院が必要な場合には、慣れた介護者(ヘルパー)によってサポートが得られるようにして、必要な医療を得ながら、地域生活が継続できるようにしていくことが必要である。
6.シームレスな支援と他分野との役割分担・財源調整【D-3-1】
○どんなに障害が重度であっても、地域の中で「他の者」と平等に学び、働き、生活し、余暇を過ごすことができるような制度が必要である。
○例えば、重度訪問介護等において支給量の範囲で「通勤・勤務中、通学・授業中、通院・入院中、1日を超える外出、通年かつ長期にわたる外出、自動車運転中」をサービス利用の対象に位置づけるべきである。
○シームレスな支援を確保するために、障害者雇用納付金や介護保険、教育など関連分野の財源を調整する仕組みの検討が必要である。
日本における介護制度では、通勤・勤務中、通学・学校内、入院中等の介護が対象外となり、並びに「一日の範囲内の用務」を超える泊まりがけの外出も原則認められていない状況にある。そのことが、障害者の地域生活と様々な分野・場面における参加制約の大きな要因となっている。
「他の者との平等」の視点からどんなに障害が重度であっても、地域の中で「他の者」と同じ生活を営み、共に育ち、学び、「他の者」と同じ職場で仕事をこなし、「他の者」と同様に余暇を過ごすことができるような制度が必要である。
そのためには、例えば、重度訪問介護等において支給量の範囲内で「通勤・勤務中、通学・授業中、通院・入院中、1日の範囲を超える外出、通年かつ長期にわたる外出、自動車運転中(道路運送法違反にならない障害者の自家用車等の場合)」をサービス利用の対象に位置づけるべきである。当面、現在の「通年長期」や「一日の範囲で用務を終えるもの」「社会通年上適切でない外出を除く」といった制限を早急に取り除き、また入院中の利用も認められるようにすべきである。
その際、シームレスな支援を確保するために、障害者雇用納付金や介護保険、教育など関連分野の財源との調整をする仕組みも必要である。
7.パーソナルアシスタンスと資格等のあり方【D-2-1】他
結論
○資格等については、第2期の報酬・人材確保チームで検討が行われることになるが、特に、パーソナルアシスタンスをめぐる資格等について、以下の点をふまえた検討がなされるべきである。
○パーソナルアシスタンスの資格については、従事する者の入り口を幅広く取り、OJTを基本にした研修プログラムとすることや、OJTを基本にすることから同行研修期間中の報酬等も検討される必要がある。
○外形的な資格ではなくて、実際に障害者の介護に入った実経験時間等の評価方法等の検討も必要である。
○居宅介護、行動援護等に関しても、よりOJT的な研修を重視する方向で見直しがなされるべきである。
1.で「パーソナルアシスタンス」制度の確立に向けた重度訪問介護の発展的改革の内実として、①利用者の主導(含・支援を受けての主導)、②個別の関係性、③包括性と継続性の3点をあげた。
これまでの研修は、主に事業者が不特定多数の者を対象に派遣を行う際に一定の「質」を担保することを主眼にされている。それに対し、パーソナルアシスタンスで求められる「質」は、その利用者の主導性の下、個別の関係性の中で、個別性の強い支援に対応できるかが主眼となる。当然、研修のあり方は、この点をふまえたものでなければならない。
パーソナルアシスタンスの資格については、現在の重度訪問介護研修よりも従事する者の入り口を幅広く取り、OJTを基本にした研修とする必要がある。また、慣れたヘルパーとの同行訪問研修期間が、他の類型よりも長期間に及ぶことから、同行研修も評価される必要がある。
また、居宅介護や行動援護等に関するヒアリングでも、これらの研修について、OJT的な研修が重視されるべきであるとの提起がなされた。
8.支援(サービス)体系のあり方や名称、その他【D-1-2】
結論
○現行の介護給付、訓練等給付、地域生活支援事業とのサービス体系は根本的にあらためて、障害者の生活構造の中で果たす機能や役割にそって整理される必要がある。
○「介護給付」の中には居宅介護や重度訪問介護等のいわゆる訪問系サービス、生活介護等の日中活動支援、共同介護等の居住支援等が混在しており、整理が必要である。また、その名称も介護保険の「介護保険給付」との混同がされやすく、見直しが必要である。
○現行の訪問系サービスを「個別生活支援」として再編し、その下に①個別包括支援=重度訪問介護を充実・発展させた類型、②居宅介護=身体介護、家事援助、③移動介護(社会参加や余暇支援を含む)=移動支援、行動援護、同行援護、といった類型を位置づけて整理・発展させる。
○グループホーム・ケアホームを居住支援の一形態として位置づけ、グループホーム・ケアホーム利用者が居宅介護等を併給できるようにすべきである。
今後の支援体系について、障害者権利条約をふまえ障害当事者主体(自律・自己決定)のもと、地域生活が可能(施設・病院から地域自立生活への移行を含む)となるような支援体系として構築する必要がある。
また、現行の「介護給付」「訓練等給付」「地域生活支援事業」といった体系は、「介護保険との統合」を視野においたものと言わざるをえない。そのため、例えば、重度訪問介護や居宅介護等の個別ケア的な支援、生活介護等の日中活動的な支援、ケアホーム等の居住支援等が「介護給付」の下に一括りになっており、障害者の生活構造の中での機能や役割からの整理とは異なっている。さらには、「介護給付」という名称も、そのニードと支援実態を適切に表しているとは言い難い上に、介護保険の「介護保険給付」との混同も生みかねない。2010年の障害者自立支援法訴訟団との基本合意文書においても「国(厚労省)は…現行の介護保険制度との統合を前提とはせず」と明記されている点からも、その名称も含めて、サービス体系の大幅な見直しが必要である。
また、支援体系の見直しの中で、グループホーム・ケアホームは多様な住まい方支援の一つとして位置づけなおすならば、他の在宅障害者と同様に居宅介護・行動援護等を併給できるようにすべきである。そのことにより、ケアホーム等から単身生活への移行準備につながるという効果が得られる。
Ⅲ おわりに
以上のように、障害者の地域生活の権利を具現化していく支援として、パーソナルアシスタンスを含めた現訪問系サービスのあり方の見直しを行ってきた。ただ、その地域生活の権利を実現していくために、以下のような点について第二期チームの中での検討をお願いしたい。
①24時間の支援を含む長時間利用者の市町村負担の低減のための財政調整、国・都道府県の財政責任強化と国庫負担基準廃止も含めた見直し
重度訪問介護の発展類型である個別包括支援は、長時間の支援が確保されるように、長時間部分の市町村負担(現状25%)の低減のための市町村間の財政調整、国・都道府県の財政責任の強化の仕組み、並びに現行の国庫負担基準について廃止も含めた見直しが必要である。
②人材確保ができるような報酬単価とOJTを重視した資格や研修
自立支援法施行以降、ヘルパーの人材確保は困難を究めた。未だに重度訪問介護を提供できる事業所がない自治体もある。人材確保ができる報酬単価の設定と、パーソナルアシスタンスの特性をふまえたOJTを重視した資格や研修の検討が必要である。また、現行の重度訪問介護は、パーソナルアシスタント化で単価が下げないことが必要である。さらに、重度訪問介護(8時間を基本とした単価設定)を短時間で区切って利用するように強要する市町村も後を絶たないため、連続8時間以上の利用を原則とし、それ以下の1回あたり短時間のサービスの場合は身体介護等と同じ単価にすることが必要である。
③本人や家族が行うのと同等な「生活支援行為」として医療的ケア確保
先述の通り、「パーソナルな関係性の中で、個別性を重視して、特定の者に対して行う医療的ケア」は、例えば、施設職員が入居者に対して行うそれとは相当異なった特質を持つ。そうした点をふまえた検討がなされるとともに、他部局で行われている検討会等との調整を図るようにするべきである。また、学校等での医療的ケア確保の検討も必要である。
④「介護保険優先」原則の見直しに関連して
どの支援を使うかを本人が選択できるようにすべきであり、例えば、介護保険からの給付金額相当を重度訪問介護に利用できるようにするなどが検討されるべきである。少なくとも地域生活の継続が損なわれることのないよう、それまで使っていた支援が使えない、支給量が減らされるといったことが生じないようにすべきである。
資料 パーソナルアシスタンスにおける「見守り」支援
従来より「支援のための待機状態」である「狭義の見守り」(※1)のみが焦点化されその是非が議論される傾向があるが、知的障害者等を中心に実際に地域で支援を受けつつ自立した生活を送るためには自律支援の便宜の内容を包括的に提供する「広義の見守り」(※2)を必要とする障害者が多く存在する。重度訪問介護の対象拡大に際してはこのような「広義の見守り」も提供する便宜の内容に含むサービス概念の拡張及びその必要性を勘案しうる支給決定の在り方が必須であり、障害者権利条約が求める「支援を受けた意志決定」の確保及び推進会議第二次意見における「自己決定の権利とその保障」の観点からも要請されることを確認しておきたい。
自立支援と自律支援の便宜の内容
類型 | 便宜の内容 |
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自立支援 |
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自律支援※2 |
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総合福祉部会第5回参考資料1-2=岡部耕典(2010)『ポスト障害者自立支援法の福祉政策』明石書店p.118を一部修正
訪問系作業チーム報告に対して寄せられた主な意見
●パーソナルアシスタンスは、介助一般をさすと考えるので、現行の介護給付および地域支援事業の移動すべてをさすのではないか。
●移動中の介護で、通院については診察時間待ち時間や、会議中の「待機」等、屋内でも認められるべきではないか。
●「見守り支援」が「見張り支援」になることのないようにすべきである。社会的生活体験を奪われているがためにたとえばごみ出しや夜間に騒音を出すなどで近所とトラブルは、「地域生活水先案内人」としてヘルパーが活動することで解決できるのではないか。
●体調の変化によるキャンセル対応や待機などは、精神障害者以外の障害者も含めて必要としている。そのことが分かる表現とする必要があるのではないか。
●精神障害者にとっては必要なときに必要に応じて派遣されるヘルパーが必要。「待機型介助類型」を新たに精神障害者への介助類型として創設することか重要ではないか。(常勤のヘルパーが待機しており、オンコールで駆けつけてくれる等)
●精神障害者の地域移行を進めるためにも入院中のヘルパー派遣ができるようにすべきではないか。(精神病院入院中から地域のヘルパーが使えて、地域生活に慣れていくことが重要)
●社会資源の不足、人材の質量ともに不足している中で、アウトリーチ的に、重層的にそれら人材への技術支援ができるようにする必要があるのではないか。
●いろいろな給付が統括的な方向で整理されていくことについては賛成。その中に、難病患者の居宅生活支援事業等も念頭においた統括について検討が必要ではないか。
●現行の訪問系サービスに関する新しい名称について「個別生活支援」だと訪問系以外の支援にもよく似た名前があるので、違いが分かるような名称の検討が必要ではないか。
●パーソナルアシスタンスの名称について、本人主導・本人中心というイメージが出るように、「本人中心介助」がよいのではないか。
●都道府県の財政支援強化について他チームとの検討結果とすり合わせる必要があるのではないか。
【訪問系作業チーム報告要約】
Ⅰ はじめに-主な検討範囲と検討経過-
当チームの検討範囲としては、施策体系チーム共通の【D-1-1】【D-1-2】に加え、【D-2】生活実態に即した介助支援等実態に即した介助支援等の全項目、並びに【D-3-1】が検討範囲であった。作業チーム構成員に加えて、参考人からヒアリングを行いながら検討した。
Ⅱ 結論とその説明
1.重度訪問介護の発展的継承による「パーソナルアシスタンス制度」の確立【D-1-1】【D-1-2】【D-2-1】【D-2-3】【D-2-4】【D-2-5】
1)「パーソナルアシスタンス制度」確立の方向性
○「パーソナルアシスタンス制度」の確立に向けて、現行の重度訪問介護を改革し、充実発展させる。
2)「対象者」の拡大
○対象者は「重度の肢体不自由者」に限定されるべきではない。
3)パーソナルアシスタンスの基本条件と利用制限の撤廃
○パーソナルアシスタンスとは、①利用者の主導(含む・支援を受けての主導)、②個別の関係性、③包括性と継続性を前提とする生活支援である。
○重度訪問介護の利用に関する利用範囲の制限をなくし、支給量の範囲内で通勤・通学・入院時・1日の範囲を越える外出・運転介助にも利用できるようにすべきである。
2.「他の者」との平等な社会参加の確保と移動支援の個別給付化【D-2-2】
○視覚障害者・児のみならず他の障害者・児の移動支援も基本的に個別給付として、国の財政責任を明確にすべきである。
○個別給付化を行うに当たっては、「他の者と平等」な参加ができるよう、対象者・利用目的(通所や通学や入院・入所者等の外出を含む)・支給決定量や方法・ヘルパー研修等、先進的な自治体の取り組みをふまえて柔軟にできるようにすべきである。
○当面、地域生活支援事業の中の移動支援部分のみ別枠で、国1/2・都道府県1/4の補助金清算という仕組みにする等、国・都道府県の財政支援を強化すべきである。
○車を使っての移動介護は不可欠な場合があり、報酬の対象とする。
3.現行の居宅介護(身体介護・家事援助)、並びに行動援護の改善【D-1-1】【D-2-2】
○重度訪問介護の充実・発展によるパーソナルアシスタンス制度の確立の一方、組み合わせ型の支援として居宅介護や行動援護も改善をしていくべきである。
○居宅介護(身体介護・家事援助)においても、各障害特性やニーズをふまえた柔軟な利用ができ、評価される仕組みにすべきである。
○行動援護は、サービス利用に当たっての段取り的役割を評価し、居宅介護などと組み合わせて家族同居やGH・CHでの生活にも積極的に活用可能とするべきである。
4.見守りや安心確保も含めた人的サポートの必要性【D-1-1】【D-2-3】
○現行の重度訪問介護を知的障害者や精神障害者等にも拡大する際には、家事援助・身体介護・移動支援的対応だけでなく、金銭やサービス利用の支援、さらには、見守りも含めた利用者の精神的安定のための配慮や適切な対応等が提供される便宜の内容として位置づけられるべきである。
○重度訪問介護だけでなく、居宅介護等においても、利用者の症状の波による「急なキャンセル」や玄関先での待機や安否確認等の障害特性をふまえた柔軟な見守り対応が評価される仕組みが必要である。
5.地域における医療的ケアの確保【D-2-4】
○「パーソナルな関係性の中で、個別性を重視して、特定の者に対して行う地域生活に必要な医療的ケア(吸引等の他に、カニューレ交換・導尿・摘便・呼吸器操作などを含む)」が、本人や家族が行うのと同等な、「生活支援行為」として、居宅や学校、移動中など、地域生活のあらゆる場面で確保されるべきである。
○一方で入院が必要な場合には、慣れた介護者(ヘルパー)によってサポートが得られるようにして、必要な医療を得ながら、地域生活が継続できるようにしていくことが必要である。
○なお、上記の論点に関する議論や資料を、現在進められている「介護職員によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会」等にも提供し、調整を図る必要性がある。
※さらに、医療的ケアに関する検討を、第2期の医療と障害児チームで検討してもらえるよう提案する(Ⅲ おわりに参照)
6.シームレスな支援と他分野との役割分担・財源調整【D-3-1】
○どんなに障害が重度であっても、地域の中で「他の者」と平等に学び、働き、生活し、余暇を過ごすことができるような制度が必要である。
○例えば、重度訪問介護等において支給量の範囲で「通勤・勤務中、通学・授業中、通院・入院中、1日を超える外出、通年かつ長期にわたる外出、自動車運転中」をサービス利用の対象に位置づけるべきである。
○シームレスな支援を確保するために、障害者雇用納付金や介護保険、教育など関連分野の財源を調整する仕組みの検討が必要である。
7.パーソナルアシスタンスと資格等のあり方【D-2-1】他
○資格等については、第2期の報酬・人材確保チームで検討が行われることになるが、特に、パーソナルアシスタンスをめぐる資格等について、以下の点をふまえた検討がなされるべきである。
○パーソナルアシスタンスの資格については、従事する者の入り口を幅広く取り、OJTを基本にした研修プログラムとすることや、OJTを基本にすることから同行研修期間中の報酬等も検討される必要がある。
○外形的な資格ではなくて、実際に障害者の介護に入った実経験時間等の評価方法等の検討も必要である。
○居宅介護、行動援護等に関しても、よりOJT的な研修を重視する方向で見直しがなされるべきである。
8.支援(サービス)体系のあり方や名称、その他【D-1-2】
○現行の介護給付、自立支援給付、地域生活支援事業とのサービス体系は根本的にあらためて、障害者の生活構造の中で果たす機能や役割にそって整理される必要がある。
○「介護給付」の中には居宅介護や重度訪問介護等のいわゆる訪問系サービス、生活介護等の日中活動支援、共同介護等の居住支援等が混在しており、整理が必要である。また、その名称も介護保険の「介護保険給付」との混同がされやすく、見直しが必要である。
○現行の訪問系サービスを「個別生活支援」として再編し、その下に①個別包括支援=重度訪問介護を充実・発展させた類型、②居宅介護=身体介護、家事援助、③移動介護(社会参加や余暇支援を含む)=移動支援、行動援護、同行援護、といった類型を位置づけて整理・発展させる。
○GH・CHを居住支援の一形態として位置づけ、GH・CH利用者が居宅介護等を併給できるようにすべきである。
Ⅲ おわりに-第二期チームでの検討課題について※【】はチーム名
①24時間の支援を含む長時間利用者の市町村負担の低減のための財政調整、国・都道府県の財政責任強化と国庫負担基準廃止も含めた見直し【地域生活資源整備】
②人材確保ができるような報酬単価とOJTを重視した資格や研修【報酬単価・人材確保】
③本人や家族が行うのと同等な「生活支援行為」として医療的ケア確保【医療チーム、障害児】
④「介護保険優先」原則の見直しに関連して【地域生活資源整備他】
「日中活動とGH・CH、住まい方支援」作業チーム報告
平成23年1月25日
(目次)
1.日中活動
(1)発達障害、高次脳機能障害、難病、軽度知的障害などのある人たちへの必要な福祉サービスについて
(2)現行の介護給付、訓練等給付と地域生活支援事業という区分について
(3)自立訓練(機能訓練・生活訓練)、生活介護等の日中活動系支援体系のあり方について
(4)療養介護等の重症心身障害児・者への支援について
(5)地域活動支援センター、日中一時支援、短期入所について
(6)定員の緩和等について
(7)日中活動への通所保障について
2.グループホーム・ケアホーム
(1)グループホーム・ケアホームの制度について
①グループホーム等の意義について
②グループホーム・ケアホームの区分と設置基準等のあり方について
③グループホーム等の生活支援機能のあり方について
(2)グループホーム等の設置促進について
(3)民間住宅の活用促進のための建築基準法の見直しについて
3.住まい方支援
(1)地域での住まいの確保(居住サポート事業)等について
(2)一般住宅やグループホーム等への家賃補助等について
(3)公営住宅の利用促進について
<作業チームのメンバー>
座長 大久保常明 社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会常務理事
副座長 光増 昌久 障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会副代表
小野 浩 きょうされん常任理事
清水 明彦 西宮市社会福祉協議会障害者生活支援グループ グループ長
奈良崎真弓 ステージ編集委員
平野 方紹 日本社会事業大学准教授
1.日中活動
(1)発達障害、高次脳機能障害、難病、軽度知的障害などのある人たちへの必要な福祉サービスについて
はじめに
これまでの福祉サービスは、対象に発達障害、高次脳機能障害、難病、軽度知的障害などのある人たちなどを特に想定していないと考えられる。先ずは、それらの人たちの福祉ニーズを把握することが前提であるが、現行の福祉サービスの状況を踏まえ、想定される今後の求められる福祉サービスについて検討した。
結論とその説明
(結論1)
現行の福祉サービスでは、居宅介護(ホームヘルプ)や通院介助、移動支援などのサービスの利用が考えられる。特に重要な福祉サービスとして、相談支援(アウトリーチや見守り等を含む)の拡充が必要と考える。また、障害の特性に応じた生活訓練(訪問型を含む)や就労支援や居場所(たまり場)の提供などが必要と考えられる。
(結論1-説明1)
先ずは、個々人のニーズを把握するうえで、身近な相談支援体制が何よりも大切となるが、これらの人たちの多くが家族との同居など在宅の場合が想定される。また、現行の日中活動サービスの継続的かつ定期的な利用も想定されるが、さほど多くないと思われる。
(結論1-説明2)
家族を含めた相談支援(訪問相談、見守り、環境調整などを含む。)が重要と考えられる。つまり、福祉サービスに繋げることを中心とした相談支援だけではなく、暮しを支える幅広い厚みのある相談支援体制を構築していく必要がある。
(結論1-説明3)
難病の人たちには、通院介助や移動支援、居宅介護などとともに医療・リハビリテーションと福祉サービスの連携が必要である。発達障害、軽度知的障害のある人については、障害特性に配慮したソーシャルスキルトレーニング(訪問型含む)、就労支援や利用しやすい居場所(たまり場)の提供が考えられる。
おわりに
現状の相談支援事業は財政基盤が脆弱であり、かつ、その役割や機能が未整理な状況もみられ、今後それらをどのように整理、拡充していくかという課題がある。
なお、知的障害や発達障害のある人たちに対する生活訓練は、福祉の分野だけでの対応ではなく、特別支援学校卒業者を対象とした専修科というかたちなど、教育の分野での対応も検討する必要があると考える。
(2)現行の介護給付、訓練等給付と地域生活支援事業という区分について
はじめに
国として、障害福祉における介護保険の活用という方向性がないなかで、これまでの給付体系を見直すとともに国と地方自治体の機能等を改めて検討した。
結論とその説明
(結論1)
介護給付と訓練等給付を分ける必要性はなく、総合福祉法(仮称)においては、個別給付を一本化することが適当である。
(結論2)
総合福祉法(仮称)においても、現行の地域生活支援事業のような市町村の裁量に配慮した仕組みを設ける必要はあると考えられる。ただし、その仕組みや福祉サービスについては再検討する必要がある。
(結論1-説明1)
介護保険の活用という前提がない今、介護給付と訓練等給付に分ける必要はない。
(結論2-説明1)
地域生活支援事業のような市町村の創意工夫、裁量で可能となる事業の仕組みは、残しておく必要はある。しかし、大きな地域格差が出ている現状から、全ての自治体で一定水準の事業ができるような財政面を含めた新たな仕組みが必要と考えられる。
(結論2-説明2)
現行の地域生活支援事業においては、個別給付に移行すべきものや個別給付に馴染まないものなどがある。総合福祉法(仮称)でそれらを再検討することが必要である。
おわりに
地方自治体の裁量による事業は、一方で地域格差が危惧される。全ての自治体で一定水準の事業ができるような財政面を含めた新たな仕組みの検討が必要と考えられる。
また、個別給付と地域生活支援事業の組み合わせやそれらに対する地方自治体独自の上乗せなど、国と地方自治体がその役割と機能を発揮し、地域福祉が推進されるような仕組みが期待される。
(3)自立訓練(機能訓練・生活訓練)、生活介護等の日中活動系支援体系のあり方について
はじめに
現行の日中活動サービスの体系は複雑で、現実に提供されるサービス内容も利用者のニーズの必ずしも対応できてないのではないかとの課題が見受けられる。それらを踏まえ、今後の日中活動サービスならびにその体系のあり方に視点を当てた。
結論とその説明
(結論1)
日中活動サービスのひとつとして、現行の「自立訓練」的な支援内容も必要である。ただし、それぞれの障害種別から求める機能は様々であり、そのサービス内容については再検討が必要と考えられる。なお、標準利用期限の設定については、利用者個々人の状況に応じたものとするべきで、見直す必要があると考えられる。
(結論2)
日中活動サービスは、障害者のより身近な地域で必要なサービスが提供されることが求められる。また、その内容は、従来の創作・趣味活動、自立訓練、生産活動などとともに、居場所の提供なども含み広くとらえる必要がある。
また、医療的ケアを必要とする人には、看護師を手厚く配置するなどの対応が必要であるとともに、視覚、聴覚障害のある人たちなどが日中活動サービスを利用する場合は、通訳・介助員を付ける必要がある。
(結論3)
現行の日中活動サービスの事業体系は複雑であり、就労系は別として、生活介護、自立訓練等は、例えば、デイアクティビティセンター(仮称)としてまとめ、個別のニーズに応じた日中活動プログラムを提供するよう、よりシンプルな体系にする必要があると考えられる。
一方、個別のニーズに応じた日中活動プログラムの提供を一定水準保障するための専門家や職員の配置、設備等を確保するための基準と計画行政の観点から、一定の事業体系(サービス体系)を設定する必要性も考えられる。
(結論1-説明1)
「自立訓練」の必要性について特に異論はみられない。実態として、特別支援学校の新卒者には、すぐに就労継続支援B型には行けないので、「自立訓練」を受けている人が多いと思われる。
(結論1-説明2)
日中活動サービスは個別給付であり、利用契約や個別プログラムが機能し、それを基本とすれば、標準利用期間の設定は不要と考えられる。なお、訓練的なサービスは有期限であることに留意する必要がある。
(結論2-説明1)
就労を中心とした現行制度には問題があり、働けないまでも、障害者の社会参加のありかたの多様性を認める必要がある。就労せずとも地域の中で自尊心をもって自らの役割を果たしていける環境を確保することが重要であり、社会参加、居場所機能や文化芸術活動などについても、しっかりと日中活動サービスに位置付けることが重要と考える。
(結論2-説明2)
医療的ケアを必要とする人も様々な日中活動サービスを求める場合があり、それらの人を受け入れる場合は、看護師を手厚く配置したり、訪問看護との連携が必要である。視覚、聴覚障害のある人たちなどが日中活動サービスを利用する場合は、通訳・介助員を付ける必要がある。
(結論3-説明1)
利用者の立場からは、同じようなサービスであれば、一本化してくれた方が分かりやすい。また、現行の日中活動サービスの体系が複雑であり、シンプルなサービス体系にする必要があるとの意見が多い。個別給付の利点を活かして、個々人の必要に応じたサービスに基づいた支給決定に対して、事業所がそれに応じたサービスを提供するというシンプルな仕組みが必要ではないか。
(結論3-説明2)
就労系は別として、生活介護、自立訓練等は、デイアクティビティセンター(仮称)としてまとめ、個別の要望(個別支援計画)で日中活動のプログラム提供をするよう、多様な要望に応えられるようにすることが考えられる。
(結論3-説明3)
日中活動支援は簡素化を図り、重度や高齢、疾病等を有する人たちを主たる対象とする生活支援型と中軽度者や就業希望者、離職者を主たる対象とした生産活動型とし、二つの事業を多機能的に運営することも可能とする体系が考えられる。
(結論3-説明4)
支給決定されたサービスについて、それが適切に提供される体制を確保するため、最低基準の設定が必要となる。様々な事業を一つにまとめることはできないのではないか。また、タイプを分けるからこそ自治体は計画的に施設を整備し、公費を支出することができる。いずれにしても、日中活動サービスという大きな括りの中で、サービスメニュー(事業体系と標準化されたプログラム)は設定することになると思われる。
おわりに
現行の日中活動サービスにおける報酬体系により、事業者が報酬額に着目したサービスを展開し、利用者のニーズと異なるサービスを利用せざるを得ない現状がある。利用者が身近な地域で、必要とする様々なサービスを利用できるような報酬体系を検討する必要がある。
(4)療養介護等の重症心身障害児・者への支援について
はじめに
重症心身障害児・者への支援については、特に医療と福祉の連携が重要であり、現状の課題を踏まえ、今後の方向性を検討した。
結論とその説明
(結論1)
重症心身障害児・者の通園・通所サービスの法定化が必要である。また、現行の療養介護事業は入所医療施設のみに限定せず、通所の医療施設にも認める必要がある。一方、現行の生活介護の通所サービスを利用する場合は、医療的ニーズに配慮して、看護師を手厚く配置するなど職員配置等の支援体制が必要である。
(結論2)
重症心身障害児が成人となった場合、別の法律体系のもと成人としての人権に配慮した、年齢相応の日常生活を支援する必要がある。ただし、その際、医療を含む支援体制の著しい変化は避けるべきであり、継続的に一貫した支援体制が確保できるような仕組みが必要である。
(結論1-説明1)
親の人たちは、どんなに障害が重くても、できる限り地域で共に暮らしたいと願っているが、最近、特に濃厚な医療的ケアを必要とする超重症児といわれる人たちが増加の傾向にあり、通所、通園が困難な実態がある。このため医療型の通所の整備が要請されている。一方、生活介護事業など福祉型の通所にあっても、重症心身障害児・者が利用するものについては、看護師の複数配置を必須要件とする必要がある。
(結論1-説明2)
重症心身障害児者通園・通所の法定化が必要である。現行の療養介護は、医療入所施設(病院)の入所だけに認められ、通所には認められていないという問題がある。現行の療養介護は入所医療施設のみに限定せず、通所の医療施設にも認めるべきである。また、重症心身障害者は、単なる生活介護による支援となった場合、心身機能の退行やQOLの低下、環境の変化による生命の危険なども危惧され、それらに配慮した職員配置等の支援体制が必要である。
(結論1-説明3)
重症心身障害の人にとって、生活介護は、単に介護を受けているというものではなく、自己実現に向けた支援体系を考える必要がある。
(結論2-説明1)
重症心身障害児者(以下「重症児者」という)は、18歳に達したからといって、年齢で区分し、別体系の療養介護に移行させ、かつ,係る職員やかかわり方まで変えてしまうということは、重症児者にとって、著しい環境の変化となり、生命の危機にさらされることになる。成人になり、法律体系が変わることになっても、職員配置基準を児童福祉法と同じくし、法律体系を超えて一貫した支援体制を可能にする必要がある。なお、一貫した支援体制の中で、成人には成人としての人権に配慮し、その年齢に相応の日常生活の支援を行うよう配慮する必要がある。
(結論2-説明2)
現在の療養介護は入院を前提としている日中活動であるが、重症心身障害児が18歳になって成人期の日中活動サービスに移行する場合の事業体制と支援体制は一体的に運営できる配慮が必要である。事業体系は児童と18歳以上は分けても、一体的に運営することも可能ではないか。
おわりに
現行の療養介護は、医療と福祉との報酬の差がかなり大きく、実際、事業があっても事業を受ける医院や病院がないため、重い障害のある人の行き場がないというような現実があるとの指摘があった。
また、現行の重症心身障害児・者通園事業を補助事業から個別給付にする場合は、利用者が少ない地域では、経済的に運営が困難になることが想定されるとの意見もあり、報酬体系の課題として検討が必要である。
(5)地域活動支援センター、日中一時支援、短期入所について
はじめに
地域活動支援センター、日中一時支援、短期入所については、地域生活において必要に応じて利用するなど、柔軟な日中サービスとして考えられるが、それらの実際の利用実態や課題を踏まえ、今後のあり方を検討した。
結論とその説明
(結論1)
地域活動支援センターについては、地域によってそのサービス内容は様々な実態があり、日中活動サービスの個別給付に馴染む場合や相談やたまり場的な内容のものもある。今後、それらの機能を整理し、どのように制度の中で位置付けるか検討が必要と考えられる。
(結論2)
日中一時支援については、全国どこでも使えるようにするためには、現行の日中一時支援は、従来の短期入所の日中利用(個別給付)のように個別給付に戻す必要がある。
(結論3)
現行の日中一時支援を廃止し、かつての短期入所の日中利用(個別給付)を設ける必要がある。また、その日中利用はサービス間の隙間を埋めるためにもタイムケア型を検討する必要がある。また、短期入所についても医療的ケアを必要とする人に配慮する必要がある。
なお、現行の医療型の短期入所では、日中利用後の短期入所の報酬設定がないので、日中活動を欠席して短期入所を使うなどの不便さが出てきている。児童・18歳以上と同じような制度設計にすることが必要である。
(結論1-説明1)
地域活動支援センターはデイアクティビティーセンターに整理する方がよい。定員も、社会福祉法を考えると10名であればよい。特に、精神障害や知的障害では、居場所機能の評価と再構築は大きな地域課題である。
(結論1-説明2)
制度の谷間の障害者をどうするか。例えば、難病患者に障害が発現した際、一定期間利用することができるような制度はどう考えるか。
(結論1-説明3)
地域生活支援事業は、個別給付に馴染まないものもあるので、それはそれで残さなくてはいけない。また、地方に行けば行くほど人が集まらない。5名でも事業を展開することができるような仕組みが必要である。気楽に利用でき、たまり場的に利用することができる場所が望ましい。例えば、相談支援事業者に厚みを持たせて、たまり場になり、ワンストップの相談も行い、サービスに繋げるバイアスにもなる機能がほしい。地方では、相談やたまり場をまとめてやるような形は、特に精神の分野では広がっている。小規模多機能的なところを残さなければ、地方ではやっていけない。
(結論1-説明4)
現行の地域活動支援センターは、地方や都市など地域によって、その機能は多様な実態があるように思われるところから、それらの機能を整理して、今後の制度の中での位置づけを検討する必要がある。
(結論2-説明1)
日中一時支援事業は地域生活支援事業の選択事業であり、実施していない市町村があるようである。また、助成金や報酬が少ないため受託する事業所が少なくなったり、事業を停止する事業者がみられる。事業者がないとの理由で実施していない市町村も多いようである。全国どこでも使えるようにするためには、現行の日中一時支援は、従来の短期入所の日中利用(個別給付)のように個別給付に戻すべきでないか。
(結論3-説明1)
現行の日中一時支援を廃止し、かつての短期入所の日中利用(個別給付)を設ける必要がある。また、その日中利用はサービス間の隙間を埋めるためにもタイムケア型としてはどうか。また、短期入所についても医療的ケアを必要とする人に配慮した条件整備が必要である。
(結論3-説明2)
タイムケアサービスは恒常的でないので自治体もプランを作れない。もしやるなら、イギリスのようにチケット制にして、例えば30時間分渡す形にすれば自治体も対応できる。支援量を定量化していかないと基盤整備も進まない。
(結論3-説明3)
児童・18歳以上の短期入所の報酬改訂時(平成21年4月)日中活動を利用した後の短期入所の新しい単価ができて、それまでの混乱は整理された。一方医療型の短期入所では、日中利用後の短期入所の報酬設定がないので、日中活動を欠席して短期入所を使うなどの不便さが出てきている。児童・18歳以上と同じような制度設計にすることが必要である。
おわりに
現行の地域活動支援センターについては、一方で運営費(報酬)の問題が指摘され、財政的な支援の仕組みが課題として適されている。また、短期入所については、通所サービスに短期入所を併設するとともに、グループホーム等にも同様に併設すべきで、地域で生活する精神障害者が休息等の目的で気軽にそれらを利用できることにより、地域生活の継続がより可能となるとの意見があった。これらの日中のサービスについては、特に、必要なとき、いつでも利用できるという視点にたって整備していくことが求められる。
なお、短期「入所」という表現が、施設への「入所」を連想させ、違和感があるので検討を望む声があった。
(6)定員の緩和等について
はじめに
現在の日中活動サービス体系における定員の要件は、特に、人口の少ない過疎地などで大きな課題となっている。身近な地域での重要な日中活動の場として利用されてきている小規模事業所等の意義を踏まえ検討した。
結論とその説明
(結論1)
10名に満たない日中活動サービスの事業所は、全国の過疎地等に存在し続けている状況があり、5名でも事業を展開できる何らかの仕組みが必要である。一方、重症心身障害児・者通園事業B型は1日5名の基準で運営しているが、これらの事業への今後の対応についても十分に配慮する必要がある。
(結論1-説明1)
地方に行けば行くほど人が集まらない。5名でも事業を展開することができるような仕組みが必要である。また、気楽に利用でき、たまり場的に利用することができる場所が望ましい。
(結論1-説明2)
現在の重症心身障害児・者通園事業B型は1日5名の基準で運営している。地方や利用者が少ない地域で、この通園事業が個別給付なった場合は、運営が困難になる可能性がある。十分な配慮が必要である。
(7)日中活動への通所保障について
はじめに
日中活動サービスを利用する際、通所に係る送迎の支援は不可欠となっている。それに対する福祉サービスとしての位置づけが定かではなく、財政的支援も不十分な現状がある。それらを踏まえ検討した。
結論とその説明
(結論1)
日中活動サービスを利用するには移動支援(送迎)が不可欠であり、その費用について、報酬上評価する仕組みが必要と考えられる。
なお、報酬の算定にあたっては、移動支援(送迎)の支援内容を再検討するとともに、公共交通機関等の利用による通所者の扱いを併せて検討する必要がある。
(結論1-説明1)
日中活動サービスを利用するには送迎は必要である。送迎が必要な人には送迎を機能としてもたせる事業体系とする必要がある。また、医療的ケアを必要とする人の送迎には看護師の添乗も必要になる。現行の生活介護には送迎経費も含まれているとの解釈があるが、他の通所事業には送迎経費は含まれていない。基金事業で300万円の補助が実施されているが、実績に応じて報酬に含まれるような制度にする必要がある。
(結論1-説明2)
送迎について、声かけや見守りを含めた支援として位置づけるのか、単なる移動手段として位置づけるのかという議論がある。また、一方、通所の際の移動支援の利用や交通費の支給を求める意見がある。
2.グループホーム・ケアホーム
(1)グループホーム・ケアホームの制度について
はじめに
グループホームが、地域の住まいとして提起されて20年余りが経過する。入居者も約6万人に達し、今後、地域生活移行を推進するうえで、グループホームはさらに普及していくことが考えられるが、その設置基準等や支援機能について、種々の課題も見受けられる。これらを踏まえ、もう一度原点に立って、地域の住まいとしてのグループホーム制度のあり方等を検討した。
①グループホーム等の意義について
結論とその説明
(結論1)
グループホーム等での支援は、地域生活における居住空間確保と基本的な生活支援、家事支援、夜間支援などともに入居者一人ひとりに必要なパーソナルな支援の両方が重なったものと考えられる。一人ひとりがよりその人らしさを発揮できる状況を生み出し、住民として暮らしていくための住まい方支援のひとつといえる。
なお、グループホーム等については、「特定の生活様式を義務づけられない」ためにも、地域生活移行においてそれらを唯一のものとするのではなく、自分で自分の暮らしを選ぶ、選択肢の一つと考える必要がある。
(結論1-説明1)
地域社会で自立生活をすすめるための共同住居(家)という原点に立った制度構築をしなければならない。グループホーム等での支援は、居住空間確保及び基本的な生活支援、家事支援、夜間支援などと一人ひとりに必要なパーソナルな支援の両方が重なったものとして考えるべきである。一人ひとりがよりその人らしさを発揮できる状況を生み出し、住民として暮らしていくことが大切である。
(結論1-説明2)
利用者がグループでお互いに刺激しあって、助け合っていくこともグループホームの理念ではないか。住む場所をただ提供するというだけではなく、仲間で助け合っていくために、どうやって支援していくかという議論も重要と思われる。
(結論1-説明3)
「特定の生活様式を義務づけられない」ためにも、地域移行においてグループホーム等を唯一のものとしてはならない。また、終の棲家として位置づけるのではなく、将来的に一般住宅での暮らしをめざすためのステップとして位置づける必要もある。権利条約にいう、誰とどこで暮らすか自分で選択できる、ということを踏まえて、グループホーム等は自分で自分の暮らしを選ぶ、選択肢の一つだと考える必要がある。
②グループホーム・ケアホームの区分と設置基準等のあり方について
結論とその説明
(結論1)
現行のグルーホーム、ケアホームの区分は、グルーホームに一本化することが妥当である。定員規模については、グルーホームの本来的趣旨である家庭的な環境として、4~5人の規模を原則とする必要がある。また、同一敷地内のとらえ方など再検討する必要もあると考える。
(結論1-説明1)
グルーホーム、ケアホームの事業名は、介護給付と訓練等給付で分けたが、実態からしてもグループホームで統一すべきである。
(結論1-説明2)
知的障害の人が仲間と生活し、仲間と関係性を持ってやっていくということは、視野に入る人数の限界があると思う。まとまるのは4から5人ではないか。生活の場なので家庭に近い規模にすべき。
(結論1-説明3)
定員が7人以上はグループホームの枠組みから外して、新しい体系として整理してはどうか。住居定員が2人から可能になって、利用する人の暮らし方の多様性ができてきて評価できる。適正な入居者定員は4~5人として、緊急枠などや体験入居用を含め1住居6名の定員を最大としてはどうか。一方、大規模化を抑制する一方、地域の事情も勘案した検討が必要と考える。なお、重度障害者等が入居するグループホームについては、夜間支援体制の観点から、規模について一定の配慮が必要となるかもしれない。
(結論1-説明4)
現在、地域によってグループホーム等の設置基準に関しては、解釈の格差があり、同一敷地内で複数かつ入居者数が20人、30人となっている例もでてきた。設置に関しては、都市計画的な見方もとりながら検討する必要性がある。障害のある人が1ヶ所の地域で多数住むことはどうなのか、普通の暮らしはどのようなものなのか、地域の住宅政策も含めて検討が必要である。特に、既存の施設を使って運営する場合、2ユニット(10人を2棟)、都道府県知事が認めれば3ユニットまで可能な現行の考え方は見直す必要がある。
③グループホーム等の生活支援体制のあり方について
結論とその説明
(結論1)
現在、入居者の高齢化が進む一方、重度の障害や様々なニーズのある人たちの入居も増加することが想定されるなかで、グルーホーム等で提供する標準的サービスと入居者一人ひとりが必要に応じて利用するサービスとの関係を検討、整理し、居宅介護等の訪問系サービスの活用を含めた生活支援体制を確保する必要がある。
一方、高齢化等により日中活動サービスに通うことが困難であったり、必要としない入居者の日中支援のあり方を検討する必要がある。
(結論1-説明1)
今後、高齢、重度・重複障害、医療的ケアや行動障害など様々なニーズのある人たちの利用が多くなることが想定され、介助等個別支援を必要とするそれらの人たちに対して、一般住宅と居宅介護等を活用することで、地域での自立生活が可能となる。また、それらの人たちも利用できるようハード面での整備を推進するとともに、職員の夜間常駐、休日の日中支援、医療的ケアの実施が可能となるよう、報酬、運営基準、人員配置の見直しを図る必要がある。
(結論1-説明2)
例えば、ALSや筋ジスなど人工呼吸療法に対応し、医療と連携のとれるグループホームのニーズが高まっている。海外の例では、訪問看護師とヘルパーの支援を受けて地域で生活できるようになっている。呼吸器装着の重度障害者であってもグループホームは選択肢のひとつとなりえる。
(結論1-説明3)
知的障害のある人たちにおいても重度訪問介護等を活用し、パーソナルアシスタントなど支援付き自立生活(サポーテッドリビング)も一般化されるべきである。日中活動に行かないときは、本人の支援計画に基づいて、重度訪問介護を利用できるようにする必要がある。
(結論1-説明4)
特に、医療的な援助も日常的に必要とする超重症・準超重症の重症心身障害児者に対するグループホーム等における日常的支援については慎重に検討し、環境条件が確保される必要がある。
(結論1-説明5)
アルコール等依存症の場合など家事援助以上の支援が必要な人たちがいるため、パーソナルアシスタント等による支援を組み合わせられるようにする必要がある。
(結論1-説明5)
グループホーム、ケアホームで居宅介護を使えない場合、福祉ホームだと居宅介護の利用が可能なので、必要との意見も多い。
(結論1-説明6)
グループホーム等において、服薬を含めた健康管理の支援、金銭管理の支援、夜間・早朝時間帯の支援は必要不可欠であり、グループホーム等でこれらの部分をどこまで担うのか整理する必要がある。
(結論1-説明7)
グループホーム等の支援として全てを入れ込んでしまうと、かえって利用しにくくなる。最低限のものはそこに備わっていて、それ以外のパーソナルなものはオプションで、多様なサービスを利用できるようにすることの方が良いのではないか。食事や掃除などの家事という基本部分をベースに、あとは自分の希望で選べるような仕組みが考えられる。グループホームに住みながら、本人がパーソナルアシスタンスなどの支援を活用するなどにより、一人ひとりの暮しの質が向上することになる。
(結論1-説明8)
グループホーム等の入居者個々人が必要とする支援サービスは、外から提供するか、グループホーム等の事業所から提供するのかは、入居者が選択できることでよいのではないか。
(結論1-説明9)
現状の職員体制は、短期間の非常勤によって支えられており、多様な個別ニーズに対応できていない。職員体制の整備が必要である。特に、夜間支援体制の強化が急務の課題である。支援が必要な全ての住居に夜間世話人(夜間支援員)を配置する必要がある。
(結論1-説明10)
グループホーム等のサービス管理責任者は入居者30人に1名の配置である。利用者の意向に基づく個別支援計画の策定と提供管理、評価・検証、関係機関との連携、自立支援協議会に参加し社会資源開発へ繋げる等、広範囲な業務を担う一方で、入居者の地域生活経験に伴う生活ニーズも多様化するが普通である。専従可能な報酬単価の見直しと、サービス管理責任者の研修を強化する必要が生じている。
(結論1-説明11)
入居者が高齢化し、日中活動サービスを利用することが困難となった場合、入居者によっては日中活動サービスを希望しない場合や必要としない場合もあるが、現行のグループホーム等は夕方から朝までの支援を原則としており、それらの人たちへの支援体制を確保するため、日中の支援もできるようにする必要がある。
おわりに
グループホームの本来の家庭的な規模での運営を可能とするとともに、夜間も職員を配置するため、また、高齢、重度・重複障害、医療的ケアや行動障害など様々なニーズのある人たちへの一定水準の支援体制を確保するためには、そのための報酬体系の実現が必要となる。一方、今後、パーソナルな訪問系サービスを積極的に活用していくうえで、それらの報酬体系や国庫補助基準の取扱いも課題になる。報酬体系の検討にあたって配慮を求めたい。
なお、設置基準における、いわゆる「一つ屋根の下」と「共有スペース」の取扱いと支援体制について、ニーズの実態を踏まえ、柔軟な対応を含め検討する必要があると思われる。
(2)グループホーム等の設置促進について
はじめに
グループホーム等の設置促進のための福祉施策について検討した。
結論とその説明
(結論1)
グループホーム等の設置を促進するうえで、国庫補助での整備費の積極的な確保が重要である。また、重度の障害や様々なニーズのある入居者への支援も想定し、安定的運営に係る報酬額が必要である。
(結論2)
グループホーム等を建設する際の地域住民への理解促進について、事業者にのみに委ねる仕組みを見直し、行政と事業者が連携・協力する仕組みとする必要がある。
(結論1-説明1)
地域生活移行を促進する上で、グループホームの住居を確保する国庫補助による整備促進が必要である。また、報酬単価が低く、人材確保や事業運営に困難があり、グループホーム、ケアホーム単独では経営が成り立たない現状があるため、積極的に整備を推進するための予算確保が必要である。
(結論1-説明2)
重度の障害者(「重症心身障害者を含む」)でも生活可能なグループホーム制度の確立が必要である。そのためハード面での整備を推進するための公的な整備費の充実が更に必要である。また、夜間を含めた支援体制の充実が求められる。
(結論2-説明1)
グループホームを建設する場合、借家で借りる場合も含めて地域住民の反対が全国各地で起きており、なかには建設を断念する場合もある。一方、建設に当たって地域住民の理解を求めることについて、もっぱら事業者に委ねている現状がある。障害者計画や障害福祉計画並びに公費支給の主体である地方自治体が、責務として事業者と連携・協力して住民の理解促進を図る必要がある。
おわりに
グループホーム等の設置促進にあたっては、特に、整備費や報酬単価という公的費用負担の課題が大きい。障害福祉関係予算の確保と関連して今後の検討に期待したい。
(3)民間住宅の活用促進のための建築基準法の見直し
はじめに
グループホーム等の設置促進にあたって、現行の建築基準法が大きな壁となっている。そこで、同法に着目し検討した。
結論とその説明
(結論1)
グループホーム・ケアホームの民間住宅の活用促進にあたっては、建築基準法の規制を緩和し、一般住居として取り扱う必要がある。
(結論1-説明1)
グループホーム等の民間住宅の活用に際し、全国的に建築基準法が大きな問題となっている。現状では寄宿舎への用途変更が強いられ、厳しい基準が適用され、防火壁などの工事を行わなければならないことになる。それによって、民間住宅の活用が困難となり、地域の重要な住まいとなっているグループホーム等の整備が進まない事態となっている。
(結論1-説明2)
現行の建築基準法は、そもそも、現在のグループホームという住居形態を想定していないと考えられる。グループホームは、地域社会で住民としての普通の住まいを提供し、入居者に必要な人的支援等を行うことを基本としたものと考えられる。従って、特別な住居ではなく、一般住居に暮らすことが共生社会のひとつのかたちと考える。
おわりに
障害者の住宅施策は、国土交通省の障害福祉施策と連携した取り組みなくして進展は望めない。法令の改正も視野に入れた国土交通省と厚生労働省の積極的な連携・協力を望みたい。
3.住まい方支援
(1)地域での住まいの確保(居住サポート事業)等について
はじめに
居住サポート事業は住宅の確保等において重要なサービスとされてきたが、その実態を踏まえ、今後のすまいの確保等への支援のあり方について検討した。
結論とその説明
(結論1)
現行の居住サポート事業の支援内容の重要性は認められるが、相談支援事業との関連を含めた位置付けや実施状況などを再検証し、今後の事業の制度上の位置づけを検討する必要がある。
(結論1-説明1)
居住サポート事業は、障害者が「地域で生活する権利」を実質化するための事業として重要な役割を果たすものである。この事業に加えて、日常生活の支援、ニーズの随時の聞き取りの他、地域住民と障害者との交流をはかる役割を担うことが望ましい。
(結論1-説明2)
一定の成果はあり今後も必要である。官民共同で地域連携の場を作り情報収集や活動が広がったことにより成果が認められた。必要なのは住宅探しを行う人材確保で、委託費は一律ではなく、必要状態、人口、障害者数などによってランクを考えるべきである。
(結論1-説明3)
現行制度では居住サポート事業者を受託する事業者が少なく、住宅部門との連携も不十分であり、実施市町村も多くない。福祉分門だけではなく、住宅部門と連携した形の実効性のある居住サポートの仕組みが必要である。また、グループホーム等から単身生活に移行する場合も事業対象とする必要がある。居住サポートの拡充によって、グループホーム等以外の第3の地域生活の道が広がっていく。そのためにも重要な事業である。
(結論1-説明4)
居住サポート事業は必要な機能であるが、制度が未熟で一人仕事になる地域が多く、業務として成熟していない。グループホームのバックアップ機能等とのリンクする仕組みを検討する必要がある。
(結論1-説明5)
相談支援事業の付帯事業的な位置づけとなっており、機能や役割が不明瞭であるとともに、相談事業本体を圧迫している面もある。また、本事業における支援が、住居の確保や緊急時対応など限定的な場面に限られているが、地域での安心できる暮らしを継続的にサポートするような、訪問型の生活サポート事業として機能強化し、独立して運営可能な事業とすることを望みたい。相談支援の範疇でなく、義務的施策として明記し、義務的経費負担とする必要がある。
(結論1-説明6)
居住サポート事業の位置付けが弱いので、独立させるべきである。地域移行に於いて賃貸住宅を考える場合、公的な保証人機構と連動した必要な事業である。また、事業が機能するには、あんしん賃貸住宅の登録が不可欠であるが、その部分が未整備のままである。緊急時に対応可能な安心できる地域生活拠点機能を事業者そのものに付加する必要がある。
(結論1-説明7)
居住サポート事業は必須化されるべきとは考えるが、何より必要なのは24時間365日の待機介助であり、居住サポート事業は予算も貧しく対象者期間も限られていることが問題である。
(結論1-説明8)
居住サポート事業に24時間の見守りを課していることは不合理であり、これは介助サービスで保障されるべきサービスである。また、公的保証人を獲得するために多額の自己負担を必要とすることは非現実的であり、一方、住宅改造をする費用補填は低額なため、住宅はほとんどない。
(結論1-説明9)
障害者の地域における生活を支えるためには、夜間や緊急時に対応が可能な拠点機能としての「地域生活拠点センター」の新設、整備が不可欠である。
(結論1-説明10)
高齢者分野における「シルバーハウジングプロジェクト」(公営住宅に福祉目的住宅設置のうえ、支援サポーターによる巡回支援が実施されている)の障害者バージョンを作り、居住サポート事業との連結をはかる必要もある。
おわりに
住宅の確保等の支援については、そのサービスを切り分けるというより、地域生活支援の一環として位置づけ、機能強化を図れるような仕組みを期待する意見が多かった。また、賃貸契約書などが本人に分かりやすい契約書となるように工夫してほしいとの要望があった。
(2)一般住宅やグループホーム等への家賃補助等について
はじめに
地域での住まいとして、グループホーム等や公共住宅、民間住宅の活用が益々求められるなか、特に、主たる収入を障害基礎年金と福祉的就労の工賃などに依存する人たちにとって、その家賃は重い負担となっている。また、それらの住宅の確保に向けた様々な施策が必要と考えられる。それらの視点から検討を行った。
結論とその説明
(結論1)
地域での住宅問題の解決のためには、グループホーム等や公共住宅、民間住宅の賃貸などにおいて、障害者の受け入れを拡大していくことが必要である。そのために、厚生労働省と国土交通省等の関係省庁が密接に連携した住宅施策を講じていく必要があり、一方で家賃補助、住宅手当などによる経済的支援策が重要と考える。
(結論2)
民間住宅の障害者の受け入れを拡大のために、一般住宅の行政による借り上げや一定以上の規模を有する新築集合住宅に対して、障害を持つ人に配慮された住戸の義務付けとその際の公的助成などが考えられる。
(結論3)
事業体に対する税制の優遇(不動産取得税、固定資産税、都市計画税等の減額もしくは免除)を設ける必要がある。また、住居提供者に対する経済的支援策や優遇策を講じる必要がある。
(結論1-説明1)
障害者の所得保障が不十分であるという理由のみで安易に住宅問題を考えるのではなく、国民全体の住宅施策の中で障害のある人の住宅問題も位置づけ考える必要がある。都市計画の中に、障害者住宅の整備目標を組み込むべきであり、公営住宅、民間住宅、行政における都市計画の3つの観点から総合的に進める必要がある。また、住まいの確保について、自立支援協議会のようなシステムを作り、連携して取り組む必要がある。
(結論1-説明2)
日本の厳しい住宅事情の中で既存住宅の活用だけでなく、障害者が生活しやすい住宅建設が可能となる様な積極的な支援策が必要である。
(結論1-説明3)
「高齢者の居住の安定の確保に関する法律」と同様に、法制度でしっかり位置づけたうえで、障害者向けの住宅が地域内で確保されるような方策を推進していく必要がある。また、国交省が取り組んでいる高齢者専用賃貸住宅制度のような仕組みの賃貸物件制度を推進できないか。
(結論1-説明4)
家賃補助的な施策が早急に必要との意見が多く出ている。民間住居への入居促進のため、家賃補助や住宅手当の創設が望ましい。生活保護と同様に、障害者の基礎年金に住宅手当が上積みされるべきではないか。
(結論1-説明5)
住宅手当の創設、保証人制度の充実、住宅改修費の支援等とともに、居住支援協議会の必置規定化等、一般住宅の確保をめぐる課題を早急に解決すべきである。
(結論1-説明6)
住宅手当とした場合、広く国民を対象とした手当制度や生活保護制度における住宅扶助などとの関係を整理する必要がある。また、住宅手当は、住宅を必要とする人とそうでない人がいるので、ニーズとかみ合うかという問題がある。障害年金をすぐに引き上げることができれば良いが、それぞれの住宅の状況を踏まえると一律に年金の手当とするのはどうか。家賃に応じて住宅手当を支給するのが現実的であるし、社会の理解も得られやすい。
(結論1-説明7)
入所施設における補足給付と同額の2万5千円相当の金額を家賃などの補助に当てることが可能な仕組みを作る。また、家を借り上げる際に必要な保証人を自立支援協議会などの仕組みを活用して自治体ごとに確保できるようにする必要がある。
(結論2-説明1)
公営障害者住宅の新設が優先されるべきであるが、一般住宅の行政による借り上げによる確保を検討すべきである。その場合、建設時から行政が借り上げを保障し、改造の補助など誘導策をとる必要がある。家賃についても、補填する仕組みが必要である。また、一定以上の規模を有する新築集合住宅に対して、障害を持つ人に配慮された住戸を義務付け、それに対して、一定割合の公的助成を行うことが考えられる。
(結論3-説明1)
事業体に対する税制の優遇(不動産取得税、固定資産税、都市計画税等の減額もしくは免除)を設ける必要がある。また、障害特性に応じた建築構造のための助成金をさらに拡充する必要がある。一方、民間の土地や住宅提供者については、固定資産税などの税制優遇策を講じる必要があとともに、住宅改造と現状回復工事への助成制度が必要である。
おわりに
家賃補助の議論において、障害者の所得保障の仕組みを見直すことが先決ではないかという意見もあった。
また、トライアル入居(法人契約アパートの試験入居を経て、その居住実績により個人契約への切り替え促進)の制度化なども必要との意見とともに、大家への「障害者・高齢者を入居拒否しない」などの条件付けの廃止を望む声もあった。
(3)公営住宅の利用促進について
はじめに
現状では、住宅の確保において、公営住宅は重要な社会資源のひとつであり、その視点から検討した。
結論とその説明
(結論1)
地域での住まいの確保において、社会資源としての公営住宅の活用が望まれるが、地域間格差が顕著であり、優先枠の拡大に向けた何らかの仕組みが必要である。なお、一方で、公営住宅に偏重することなく、民間の賃貸住宅への入居も進めていく施策を講じる必要がある。
(結論1-説明1)
公営住宅は低家賃であり、住まいとしての重要な社会資源といえる。公営住宅を使いやすくするように自治体を指導していくことが必要である。また、バリアフリー化した公営住宅を拡充して、障害特性をも考慮する住宅提供の仕組みをつくり、優先的に提供されることが望ましい。
(結論1-説明2)
公営住宅については、バリアフリー住居やグループホームなどの優先枠を拡大するため、それを制度化する必要がある。
(結論1-説明3)
知的障害者は単身でも公営住宅に申し込みができるようになったが、単身用の公営住宅は空きが少ないので実際には入居できない人が多い。
(結論1-説明4)
1つの公営住宅の建物に障害者が集まるのは、問題はないか。特化した居住の形はいかがなものか。市民との混在/混住がインクリュージョンの要ではないか。権利条約の「他のものとの平等」の理念にからすれば、公営住宅よりは民間の賃貸住宅を借りやすくする施策が重要といえる。民間の賃貸住宅への入居を進めながら、不十分な場合には、暫定的な措置として公営住宅への入居優先枠を拡大することが考えられる。
(結論1-説明5)
特定の住居形態に、特定の人々が集住する問題は残るが、障害のある人が公営住宅を選択する上では入居しやすくする政策は必要である。
(結論1-説明6)
公営の障害者住宅の新設は急務であり、公営住宅の建築前に、障害のある人がいる家庭などを対象に公募をかけて、ユニバーサルデザインを施した一戸建てなども創出していく必要があると考える。
おわりに
公営住宅の利用促進にあたっては、省庁をまたいだ住宅施策であるとともに、国と地方自治体の連携が重要であり、それらを踏まえた取り組みを望みたい。
「日中活動とGH・CH、住まい方支援」作業チーム報告(補足)
平成23年2月15日
1.日中活動
(1)現行の介護給付、訓練等給付と地域生活支援事業という区分について
(結論1・結論2-補足説明)
ここで使用する個別給付という表現は、給付方式の呼称であるとともに、国庫負担金(義務的経費)としての意義があることを踏まえる必要がある。
(3)自立訓練(機能訓練・生活訓練)、生活介護等の日中活動系支援体系のあり方について
(結論2-補足説明)
通訳・介助員をつける必要があるのは「視覚、聴覚障害のある人たちなど」という表現より、例えば、「移動やコミュニケーションに障害のある人たちなど」とする方が適切である。
(4)療養介護等の重症心身障害児・者への支援について
(結論1-補足説明)
平成22年に児童福祉法が改正され、重症心身障害児の通園事業は医療型児童発達支援に替わる予定となったが、これらを利用する18歳以上の重症心身障害者の行く先は不明確である。医療職を手厚くした生活介護にするか、新たな医療的ケアを伴う通所福祉施設を制度化するなどの検討が必要である。
(結論2-補足説明)
児童期から成人期において一貫した支援体制は必要であるが、制度としての法体系での一本化は不適切である。18歳未満の重症心身障害児は他の障害児と同様に在宅を中心とし、入所する時は、有期間・有目的の医療型障害児入所施設を基本とすべきである。18歳未満の重症心身障害児が、療養型施設に新たに入所することとならない体系が必要である。
(5)地域活動支援センター、日中一時支援、短期入所について
(結論3-補足説明)
精神障害者にとっては、短期入所は新たな社会的入院を生み出さないため、強制入院防止のためにも最も重要な資源である。しかし、現行では精神障害者を受け入れる短期入所施設がほとんどなく、支給決定を受けても利用できない現状がある。
2.グループホーム・ケアホーム
(1)グループホーム・ケアホームの制度について
②グループホーム・ケアホームの区分と設置基準等のあり方について
(結論1-補足説明1)
精神障害者にとって転居は大きな負担となる。サテライト型グループホームを認めていくことにより、グループホームの支援が不要となっても、そのまま同じアパートに住み続けることが可能となる。
(結論1-補足説明2)
現行の福祉ホームをグループホーム制度のなかで位置づけるか(個別給付)、地域生活支援事業(市町村事業)で存続させるか、小規模化の課題と併せて検討する必要がある。
「日中活動とGH・CH、住まい方支援」作業チーム報告(要約)
平成23年1月25日
1.日中活動
(1)発達障害、高次脳機能障害、難病、軽度知的障害などのある人たちへの必要な福祉サービスについて
居宅介護や通院介助、移動支援などとともに、特に、相談支援(アウトリーチ等含む)の拡充が必要。また、障害特性に応じた生活訓練(訪問型を含む)、就労支援や居場所の提供などが必要。
(2)現行の介護給付、訓練等給付と地域生活支援事業という区分について
個別給付として一本化することが適当。また、現行の地域生活支援事業のような市町村の裁量に配慮した仕組みを設けることが必要。ただし、その仕組みや福祉サービスについては再検討が必要。
(3)自立訓練(機能訓練・生活訓練)、生活介護等の日中活動系支援体系のあり方について
現行の「自立訓練」的な支援内容も必要。標準利用期限の設定は、個々人の状況に応じたものとするべき。日中活動サービスは、従来の創作・趣味活動、自立訓練、生産活動とともに、居場所の提供なども含み広くとらえることが必要。また、医療的ケアを必要な人には、看護師を手厚く配置。視覚、聴覚障害のある人たちには、通訳・介助員を付けることが必要。
支援体系は、例えば、デイアクティビティセンター(仮称)とし、そこで個別のニーズに応じたプログラムを提供する、よりシンプルな体系にすることが必要。一方、個別のニーズに応じたプログラムの提供を一定水準保障する職員の配置等を確保するための基準と計画行政の観点から一定の事業体系(サービス体系)の設定も考慮。
(4)療養介護等の重症心身障害児・者への支援について
通園・通所サービスの法定化が必要。現行の療養介護事業は通所の医療施設にも認めることが必要。また、現行の生活介護を利用する場合、看護師を手厚く配置するなどの支援体制が必要。一方、成人となった場合、成人としての人権に配慮した、年齢相応の日常生活を支援することが必要。その際、医療を含む支援体制が継続的に一貫して確保できるような仕組みが必要。
(5)地域活動支援センター、日中一時支援、短期入所について
地域活動支援センターは様々な実態があり、個別給付に馴染む場合や相談やたまり場的な内容のものもある。今後、それらの機能を整理し、どのように制度の中で位置付けるか検討が必要。日中一時支援は、全国どこでも使えるようにするため、短期入所の日中利用(個別給付)に戻すことが必要。短期入所の日中利用はサービス間の隙間を埋めるためにタイムケア型を検討することが必要。
また、短期入所についても医療的ケアを必要とする人への配慮が必要。なお、現行の医療型の短期入所では、日中利用後の短期入所の報酬設定がなく、児童・18歳以上と同じような制度設計にすることが必要。
(6)定員の緩和等について
過疎地等の事業所が5名でも事業を展開できる何らかの仕組みが必要。一方、重症心身障害児・者通園事業B型への今後の対応についても十分に配慮することが必要。
(7)日中活動への通所保障について
日中活動への移動支援(送迎)は不可欠。その費用を報酬上評価する仕組みが必要。なお、報酬の算定にあたっては、移動支援(送迎)の支援内容を再検討するとともに、公共交通機関等による通所者の扱いを併せて検討することが必要。
2.グループホーム・ケアホーム
(1)グループホーム・ケアホームの制度について
①グループホーム等の意義について
グループホーム等での支援は、地域生活における居住空間確保と基本的な生活支援等と一人ひとりに必要なパーソナルな支援の両方が重なったもの。その人らしさを発揮できる状況を生み出し、住民として暮らしていくための住まい方支援のひとつ。なお、「特定の生活様式を義務づけられない」ためにも、それらを唯一のものとせず、自分で自分の暮らしを選ぶ、選択肢の一つと考えることが必要。
②グループホーム・ケアホームの区分と設置基準等のあり方について
グルーホームに一本化することが妥当。定員規模は家庭的な環境として4~5人の規模を原則とすることが必要。また、同一敷地内のとらえ方など再検討することも必要。
③グループホーム等の生活支援体制のあり方について
グルーホーム等で提供する標準的サービスと一人ひとりが必要に応じて利用するサービスとの関係を検討・整理し、居宅介護等の訪問系サービスの活用を含めた生活支援体制を確保することが必要。一方、高齢化等により日中活動サービスに通うことが困難又はそれを必要としない人の日中支援のあり方を検討することも必要。
(2)グループホーム等の設置促進について
国庫補助での整備費の積極的な確保が重要。また、重度の障害や様々なニーズのある人への支援も想定し、安定的運営に係る報酬額が必要。一方、建設する際の地域住民への理解促進について、事業者にのみに委ねる仕組みを見直し、行政と事業者が連携・協力する仕組みとすることが必要。
(3)民間住宅の活用促進のための建築基準法の見直し
民間住宅の活用促進のため、建築基準法の規制を緩和し、一般住居として取り扱うことが必要。
3.住まい方支援
(1)地域での住まいの確保(居住サポート事業)等について
現行の居住サポート事業の重要性は認められるが、相談支援事業との関連を含めた位置付けや実施状況などを再検証し、今後の事業の制度上の位置づけを検討することが必要。
(2)一般住宅やグループホーム等への家賃補助等について
公共住宅、民間住宅等の賃貸などにおいて、障害者の受け入れを拡大していくため、厚生労働省と国土交通省等の関係省庁が密接に連携した住宅施策を講じていくことが必要。一方で家賃補助、住宅手当などによる経済的支援策が重要。また、民間住宅の受け入れを拡大のため、行政による借り上げや一定以上の規模の新築集合住宅に対して、障害者に配慮された住戸の義務付けとその公的助成などを考慮することが必要。
また、事業体に対する税制の優遇(不動産取得税、固定資産税、都市計画税等の減額もしくは免除)を設けることや住居提供者に対する経済的支援策や優遇策を講じることが必要。
(3)公営住宅の利用促進について
優先枠の拡大に向けた何らかの仕組みが必要。一方で、公営住宅に偏重することなく、民間の賃貸住宅への入居も進めていく施策を講じることも必要。
施策体系~地域生活支援事業の見直しと自治体の役割報告書
Ⅰ.はじめに
当作業チームでは、これまで支援の狭間にいた人たちに必要な福祉サービス(D-1-1)や、また、現行の介護給付、訓練等給付と地域生活支援事業の区分、総合福祉法での支援体系のあり方や生活構造やニードに基づいた支援体系という観点を念頭に、D-1-5地域生活支援事業、D-1-6コミュニケーション支援事業及びF-1地域生活支援整備のための措置、F-2自立支援協議会を検討の範囲とし、障害者総合福祉法(仮称)におけるサービス体系及び自治体の役割のあるべき姿について、地域生活の権利(障害者権利条約第19条)の保障を念頭に整理した。
第1回(10月13日)では、サービス体系(現行の給付区分等)、地域生活支援事業(当該事業の仕組み)、コミュニケーション支援事業(聴覚障害者、盲ろう者、視覚障害者、知的障害者等を含む)、移動支援事業(ガイドヘルプ等の仕組み等、労働行政や教育行政との枠割分担)、日常生活用具の給付等事業、地域生活の資源整備(障害福祉計画を含む)、自立支援協議会、自治体の役割について、現状と課題、あるべき姿について検討を行った。
第2回目(11月19日)は、前回の報告と議論を受け、①個人への支援(小さなケア)と自治体の基盤整備(大きなケア)を一体的に結びつけるための方策、②地域移行や訪問支援・日中活動支援・コミュニケーション支援・移動支援を含む社会参加活動支援・居住支援を効果的に進めるためのあるべき自治体の役割の検討、③地域生活支援事業という枠組みの捉え直し、④残された論点に関する4つの点をベースに、ⅰ.数値目標を定めて自治体レベルで整備すべき緊急かつ重要な地域生活の基盤や相談支援体制や地域自立支援協議会の関わり、ⅱ.中長期的な障害の理解・普及啓発に関する自治体の役割、ⅲ.コミュニケーション支援及び移動支援の個別給付化における制度設計やその範囲、ⅴ.地域生活支援事業の見直しと自治体の役割に関して議論されていない重要な課題について検討を行った。
そして、これまでの検討を踏まえ、第3回(12月7日)では、当該作業チームの意見取りまとめに向けた作業と、障害者総合福祉法(仮称)における地域生活支援事業の見直しと自治体の役割やあるべき姿とその方向性を整理した。
Ⅱ.結論
1.コミュニケーション支援の確立(盲ろう者通訳介助含む)について
(論点D-1-2、D-1-5、D-1-6、D-3-1)
結論
コミュニケーション支援については、支援を必要とする障害者に対し、社会生活の中で対応すべき必要な基準を設け、義務的経費で無料とする。特に、盲ろう者のコミュニケーション支援に関しては、移動介助を含めた運用を求める。そして、上記支援の基盤整備のうえに、さらに教育・雇用・人権などの観点から必要な支援のあり方については、当該分野の法律で保障する事や将来的な立法も含めて検討する。このように、段階的に支援の量を拡大していく必要があるのではないか。
2.移動支援の自立支援給付化(個別給付化)について
(論点D-1-2、D-1-5、D-2-2、D-3-1)
結論
移動に関しては、介護給付である「重度訪問介護」「行動援護」と地域生活支援事業の「移動支援」でわかれている。だが、「歩く」「動く」は「話す」「聞く」「見る」と同様、基本的権利の保障であり、自治体の裁量には馴染まないものであり、自立支援給付化が求められる。ただその際、教育・雇用などの場面での移動支援は、当該分野の法律で保障する事も求められる。これらの制度の重複、市町村格差や、使いにくい現状については、福祉の範囲で具体的にどこまで対応すべきか、も含めて、第2期作業チームで具体的に検討する。
● 上記1と2に関しては、今後検討の上で立法化が予定されている差別禁止法の中で、合理的配慮とは何か、を定めた上で、総合福祉法の中でカバー出来ない(福祉以外の立法がカバーすべき)部分について、規定すべきである。
3.地域活動支援センター事業の再編成について
(論点D-1-2、D-1-5)
結論
地域活動支援センター事業の内容については、就労の面と日中活動の場の面があり、就労部会および第2期での議論を踏まえた上で、地域生活支援事業に残すものと、他事業との体系の統合の中で自立支援給付にするものとに分ける。なお、小規模作業所については、新体系に移行できない作業所があることに鑑み、第2期作業チームで問題点の検証とともに、具体的に検討する。
4.相談支援事業(成年後見制度及び居住サポートを含む)について
(論点D-1-5)
結論
医療・福祉・保健など各分野が連携したトータルな支援を行うためには、相談支援の充実が必要であり、市町村の相談支援機能を強化するとともに、障害者の人生をトータルにサポートするような支援の仕組みが必要である。
相談支援事業本体については、選択と決定・相談支援プロセスの作業チームの協議結果に委ねるべきである。
5.福祉ホーム及び居住サポートについて
(論点D-1-2、D-1-5)
結論
福祉ホームについては、居住機能に応じたサービス体系のあり方を考えれば、居住支援の一部としてグループホーム(GH)・ケアホーム(CH)と同じ位置づけで自立支援給付化するとともに、公営住宅、民間賃貸住宅等の活用も含めた障害者の居住の場の確保という観点から整理をするべきである。
6.補装具と日常生活用具のあり方について
(論点D-1-7)
結論
日常生活用具給付等事業は補装具と同様に自立支援給付とすべきである。
7.権利擁護の仕組み(成年後見制度など)について
(論点D-1-5)
結論
権利擁護の仕組みについては、障害者が必要とする支援を受けながら自己決定を行えることが、最も大切にされる分野であり、成年後見制度そのものを含めた一体的な内容として議論されるべき部分である。今後上程が予定される障害者虐待防止法や障害者差別禁止法でカバーすべき部分と、自治体が主体的に担う部分の役割分担については、第2期作業チームで検討すべき内容であるが、障がい者制度改革推進会議においても議論をする必要がある。
8.地域生活のサポートにおける自治体の役割(障害の理解と普及啓発を含む)について
(論点F-1-1、F-1-2、F-1-3、F-2-3)
結論
緊急かつ重要な地域における社会資源整備は、地域生活のサポートにおける自治体の重要な役割である。具体的には、住まい、相談支援、労働・日中活動支援、コミュニケーション支援等について、総合福祉法制定時から数年間で何らかの数値目標を作り、モニタリングする仕組みをつくる。その具体的な内容は第2期作業チームで検討する。
それと同時に、障害の問題についての理解を深める広義の普及啓発についても、例えば鳥取県で取り組んでいる“あいサポート運動”(※)等のような社会全体の意識を高めつつ、中長期的な戦略として、自治体施策の中に盛り込む。普及啓発は、一方的なものでは効果が薄い。学校教育の段階からの繰り返しの啓発が必要であり、高齢者支援など他の福祉分野と連携した普及啓発が必要である。
(※)あいサポート運動とは、地域の理解が不可欠という考えをもとに、障害のある人が、地域の一員としていきいきと暮らしていくため、国民に広く、障害の特性や障害のある人への配慮の仕方などを知っていいただき実践していただく運動。一般市民、さまざまな障害者団体や県内外の民間企業等が“あいサポーター”として参加協力し、暮らしやすい地域社会作りのために運動を繰り広げている。平成21年より実施。
9.障害福祉計画と地域自立支援協議会、個別支援計画の連動(社会資源の整備を含む)について
(論点F-1-4、F-2-1、F-2-2、F-2-3、F-5-1)
結論
地域自立支援協議会が実態的により機能が発揮できるようにするためには、法的位置づけを明確にするとともに、委員の公募方式の採用や、障害当事者が参画できる形態を重視すること、また運営支援に関する研修等も求められる。同協議会の設置の規模や形態については、実質的な運営ができるように、自治体に裁量をもたせる。
内容に関しては、その地域における解決困難事例に取り組む中で、地域生活が実現可能となるための各種社会資源の開発の役割や、障害福祉計画へとつなげる役割として位置づける。また、数値目標のモニタリングの問題は、施策推進協議会との役割分担も含め、障がい者制度改革推進会議で議論すべきである。ただ、上記の役割を果たすための方法については、市町村の実情によって一定の幅があってよい。
また、都道府県は、市町村の障害福祉計画を取りまとめるだけでなく、広域的・専門的支援の見地から、市町村の地域自立支援協議会の運営の助言や情報提供、障害福祉計画と地域自立支援協議会、個別支援計画の連動を手助けするための人材育成支援などにも取り組む。
10.広域的・専門的支援にかかわる都道府県の役割について
(論点F-1-1、F-1-2、F-1-3、F-5-1)
結論
相談支援専門員、手話通訳者、盲ろう者の支援員(通訳を含む)市町村の実務担当者等の人材育成等、市町村が単独ではできないことについて、都道府県が主体的な広域調整・専門的な支援を行うべきである。また、視覚障害・聴覚障害・盲ろう・重度重複障害や重心障害・発達障害・高次脳機能障害・難病など、障害の困難性に伴う専門的な知識及び技術を要する支援あるいは相対的に数が少ない障害に対応する支援(広域的センター等)について都道府県の果たすべき広域的・専門的支援とは何か、も具体的に規定する。
11.地域生活移行(社会的入院・入所を防ぐための整備)について
(論点F-1-2、F-1-3、F-5-1)
結論
地域生活を希望するどんなに重い障害のある人も地域生活が出来るような支援システムを創ることによって、社会的入院・入所や新規の入院・入所を減らすためには、自治体にはこれまで以上に大きな役割が求められている。自治体は、障害福祉計画などで地域生活支援を促進する計画を立て、それを着実に実行すべきである。その内容は、第2期作業チームで具体的に検討する。
Ⅲ.理由
現行の自立支援給付(介護給付、訓練等給付)と地域生活支援事業との区分からみた場合、地域生活支援事業については、障害者自立支援法上の様々な矛盾が特に詰まっている事業であると言える。
移動支援とコミュニケーション支援の二つの事業に関しては、本来「話す」「聞く」「見る」「歩く」「動く」という基本的権利の保障であり、自治体の裁量には馴染まないものでありながら、現状では自治体が個別に判断する事を求められている。そのことによる自治体間格差も深刻な問題である。また、日常生活用具給付等事業は、自立支援給付である補装具との明確な定義上の違いも不明瞭である。自立支援法施行前後における国家財政の制約が強く働き、結果として今後サービス支給の伸びが予測されそうな上記の各種支援が、自立支援給付化されなかった、とも考えることができる。附言すれば、これらのサービスは、障害者の地域生活支援に不可欠であり、かつ今までその権利性が十分に認められてこなかった支援類型である。
地域生活支援事業は、できるだけ自立支援給付・義務的経費化し、自治体の裁量として残す方がよいものは残すという方向にする。但し、自立支援給付・義務的経費化した内容については、その提供する支援内容に応じて、応益負担の原則は廃止し、仮に負担が求め得られる場合であっても、定率負担とすることなく、また本人の所得を基礎とするということが言え、これらの問題を解消するためには、地域生活支援事業の抜本的な見直しが求められている。
Ⅳ.おわりに
1.他の作業チームへの検討要望(意見書提出済み)
(1)移動支援にかかる訪問系チーム及び就労チームへの議論の要望
移動支援の範囲については、日常生活や社会生活における様々な場面への支援が必要とされるところだが、教育や労働(通学・通勤)における移動支援については、教育あるいは労働との一体的な保障という観点から検討することが必要と思われる。
(2)地域活動支援センターの再編成にかかる就労チームへの議論の要望
地域活動支援センターの再編成の検討については、自立支援給付化も含めて検討していかなければならないと考えるところだが、現在の地域活動支援センターの事業体系には、就労にかかわることも多く、当チームだけの検討では不十分であると思われ、就労チームでも検討する必要があると思われる。
(3)家族支援にかかる障害児チームへの議論の要望
地域生活のためのサポートについては、基礎自治体の役割の見直しも求められるところだが、特に、障害のある子どもをもったことを受容するための家族への支援については、十分に支援できる機能がほとんどないといった現状があり、家族支援の検討にあたっては、障害児チームでも検討する必要があると思われる。
2.推進会議への検討要望(意見書提出済み)
(1)障害の理解に関する普及啓発については、「障害者基本法」改正の検討を進める中において重要な事項と理解しており、このことについて、議論が必要と思われる。
(2)「障害者基本法」に基づく障害者施策推進協議会と地域自立支援協議会では、多くの自治体で役割や人選が重複している現状がみられることから、この2つの協議会の棲み分けや役割分担、整理に関する議論が必要と思われる。
(3)地域自立支援協議会については、法的な位置づけを定めた上で、その地域における解決困難事例に取り組む中で、障害福祉計画へとつなげる役割として位置づけることが必要であり、また、数値目標のモニタリングの問題については、施策推進協議会との役割分担も含め、議論が必要と思われる。但し、上記の役割を果たすための方法については、市町村の実情によって一定の幅があってよい。
3.第2期作業チームへの申し送り
(1)コミュニケーション・移動支援については、労働行政や教育行政との関係性を十分に検討する必要があるが、制度上の重複、市町村格差や制度の利用のしづらさに関しては、福祉の範囲で具体的にどこまで対応するべきかも含め、具体的に検討する必要がある。
(2)地域活動支援センターの事業内容並びにいわゆる小規模作業所のうち、新体系に移行できない作業所の問題点の検証を含め、具体的な検討を要する。
(3)権利擁護の仕組みそのものに加え、障害者差別禁止法や障害者虐待防止法でカバーすべき部分と自治体が自主的に担う役割について、障がい者制度改革推進会議での議論はもとより、作業チームとして、さらに検討することが必要である。
(4)地域自立支援協議会の設置については、自治体の実情(実態)を理解した上で、運営主体や手段等をどうするのか、検討をさらに重ねる必要がある。
(5)地域生活移行(社会的入院・入所を防ぐための整備)の結論で示したように、自治体が障害福祉計画等で地域生活支援を促進する計画を立て、着実に実行すべきと考えるが、障がい者制度改革推進会議「第二次意見」では、地域生活移行について“国は一定の年次目標を揚げて取り組むべきであり、その年次目標の実現のため受入先となる居住等の計画的整備が必要”とされたところであり、具体的な内容については検討を要する。
以上
「地域生活支援事業の見直しと自治体の役割」報告書【補足版】
○これまで当作業チームにおいて検討の論点としてあがらなかった事項で、かつ第2期作業チームで問題点の検証と具体的な検討を要すると思われる「地域生活支援事業の見直しと自治体の役割報告書」に対する主な意見は、以下のとおり。
1.コミュニケーション支援の確立」について、その支援の対象者の範囲に、重篤な難病患者でコミュニケーションができない人たちを対象にすることを含めていただきたい。
2.地域活動支援センター事業の再編成」について、地域活動支援センターは、利用者の利便性に鑑み、人口比ではなく面積に合わせた整備が必要と考える。また、財政的支援と要件緩和を含めた小規模な地域活動支援センターを増やす必要がある。
3.「7.権利擁護の仕組み」について、知的や発達障害の人たちに対する「権利擁護」への理解が充分ではないことからも、「権利」について議論し、明確にしていく必要があると思う。施策も消極的権利擁護の施策と積極的権利擁護の施策や支援を分けて考えていく必要があると思う。入所施設については、積極的な意味での入所機能を明確化していくなど抜本的に変える必要があると思う。
4.「9.障害福祉計画と地域自立支援協議会、個別支援計画の連動」について、
①24時間など長時間介護の障害者や、長時間利用者を自立支援している障害者団体等も、原則として参加させることによって、当事者主導の自立支援協議会を確立するべきである。
②委員の公募方式がいいのだが、障害当事者の参画を重視というのではなく義務付けとした方がいいのではないか。
以上
【訂正版】
2011年1月25日
地域生活支援事業の見直しと自治体の役割 報告(概要)
(1)コミュニケーション支援の確立(盲ろう者通訳介助含む)
社会生活の中で対応すべき必要な基準を設け、義務的経費で無料に。特に、盲ろう者のコミュニケーション支援は移動介助と一体的に運用。
(2)移動支援の自立支援給付化(個別給付化)
「重度訪問介護」「行動援護」「移動支援」を自立支援給付に位置づける。
*(1)(2)とも、福祉の範囲で対応すべき範囲は、第2期で具体的に検討。
(3)地域活動支援センター事業の再編成
地域生活支援事業に残すものと、他事業との体系の統合の中で自立支援給付にするものに区分。小規模作業所については、就労部会・第2期での検討課題に。
(4)相談支援事業(成年後見制度及び居住サポート含む)
医療・福祉・保健等各分野が連携した支援が行えるための市町村における相談支援機能の充実を図る。
(5)福祉ホーム及び居住サポート
福祉ホームは自立支援給付とするとともに、公営住宅、民間賃貸住宅等の活用を含め、居住の確保の点から整理。
(6)補装具と日常生活用具のあり方
日常生活用具は、補装具と同様に自立支援給付に。
(7)権利擁護の仕組み(成年後見制度等)
権利擁護の仕組みについては、成年後見制度を含め一体的な内容として検討。
(8)地域生活のサポートにおける自治体の役割(障害の理解と普及啓発含む)
数値目標やモニタリングの仕組みをつくり、その具体的な内容は、第2期で検討。また、障害に対する理解啓発のための普及活動や学校教育の段階からの啓発、他の福祉分野と連携した普及啓発も必要。
(9)障害福祉計画と地域自立支援協議会、個別支援計画の連動
地域自立支援協議会を地域生活の実現のために各種社会資源の開発や、障害福祉計画へつなげる役割として位置づけ、委員についても公募方式の採用や、障害当事者の参画を重視。
(10)広域的・専門的支援にかかわる都道府県の役割
都道府県は、相談支援専門員、障害の困難性に伴う専門的な知識及び技術を要する支援や相対的に数が少ない障害に対応する支援、また行政担当者等の人材育成等、広域調整・専門的なことについて主体的に支援。
(11)地域生活移行
自治体が積極的な役割を果たす必要があり、第2期で具体的に検討。
「地域移行」部会作業チーム報告書
【作業チームのメンバー】
座長 大久保常明 社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会常務理事
副座長 三田 優子 大阪府立大学准教授
伊澤 雄一 特定非営利活動法人全国精神障害者地域生活支援協議会代表
岡部 耕典 早稲田大学准教授
小田島栄一 ピープルファースト東久留米代表
河﨑 建人 社団法人日本精神科病院協会副会長
清水 明彦 西宮市社会福祉協議会障害者生活支援グループ グループ長
中原 強 財団法人日本知的障害者福祉協会会長
山本 真理 全国「精神病」者集団
1.地域移行の支援、並びにその法定化
(1)「地域移行」とは何か
(結論1)
「地域移行」のもつ意味は、単に住まいを施設や病院から移すことではなく、障害者個々人が市民として、自ら選んだ住まいで安心して、自分らしい暮らしを実現することである。
障害があっても本来、誰もが地域で暮らしを営む存在であり、一生を施設や病院で過ごすことは普通ではない。当然、すべての障害者が、障害の程度や状況、支援の量等に関わらず、地域で暮らす権利をもつ存在と捉え、地域移行の対象となる。
(結論2)
「地域移行」の具体的場面は、住まいを施設や病院から地域に移すことのみではなく、家族との同居から独立し、自分の住まいを設けることも含み捉える必要がある。
(結論3)
地域移行の中心課題は、障害者であるために地域で生活することを困難にしてしまう社会の資源・環境の不足の問題である。
(結論4)
常時の医療的ケアが必要、「強度行動障害」がある、地域でトラブルを起こしがち等々の理由でこれまで「もっとも地域移行が困難」とされてきた障害のある人たちを地域移行の対象者から除外してはならない。
(結論1-説明)
地域移行とは、ただ施設や病院から住まいを移すということではない。障害者も市民であるから、市民としての権利、すなわち個々人が自分の住みたいところで、自分が選んだ自分の暮らしを展開することの第一歩が地域移行である。障害があっても本来、誰もが地域で暮らしを営む存在であり、一生を施設や病院で過ごすことは普通ではない。施設や病院において、入所者・入院者が利用しやすい自己決定と自己選択を支える権利擁護システムが整えられていることが地域移行推進の条件である。
(結論2-説明)
これまでのように在宅での家族の介護等に依存し、限界となって入所・入院に至る流れを断ち切る、家族への依存(負担)からの解放もまた地域移行である。従って、地域で生活継続が困難になって、入所・入院に至ってしまう人を地域で支援できる仕組みを作ることは、地域移行の取り組みの一部である。
(結論3-説明1)
施設や病院に不必要に入らない、また、再入所・入院しないための取り組みを含めて、地域移行の促進とする。地域移行の中心課題は、障害者であるために地域で生活し続けることを困難にしてしまう社会の資源・環境の不足の問題である。
(結論3-説明2)
障害者が地域生活を送る上で求められる社会の資源・環境は、福祉サービスはもちろんのこと、住宅政策、所得保障、権利を守る仕組みなどとなる。また、地域移行の推進には、障害者であっても地域でその人らしく生きる存在(「地域で暮らす権利がある生活の主体者」)であることを、住民が理解するための取り組みを行うことが重要である。
(結論4-説明)
「もっとも地域移行が困難」とされてきた人たちが「市民として、自ら選んだ住まいで安心して、自分らしい暮らしを実現する」ための支援が必要である。権利条約第19条において自立生活のために必要な地域支援として強調されているパーソナルアシスタンスとして、例えば、重度訪問介護の知的障害者や精神障害者への対象拡大が考えられる。
(2)「特定の生活様式を義務づけられないこと」を確保するうえでの課題と地域移行の法定化について
(結論1)
「特定の生活様式を義務づけられないこと」を確保するうえで、入所者・入院者が住みたいところを選ぶ、自分の暮らしを展開するなど、障害者本人の意志や希望、選択が尊重される支援の仕組みと選択肢を作ることが早急に必要である。
これは地域で生活する障害者についても同様で、家族の状況や支援不足から障害者が希望しない環境におかれることや、大人数の住まい等の環境におかれていることも含まれる。
(結論2)
地域移行を進めるためには、障害者が、障害の程度や状況に係わらず地域社会で暮らすための基盤整備が最重要課題である。施設の入所定員や病院の病床数の減を法定化は、それを前提としたものでなければならない。そうでないと、家族の不安や負担を強いる危険性と混乱を招きかねないことになる。
とりわけ重要となる福祉サービス基盤の整備と住まいの確保を積極的に進めるためには、総合福祉法(仮称)とは別に、例えば、時限立法として、「障害者の地域移行を促進するための基盤整備に関する法律」の制定が望まれる。少なくとも、国としての「地域基盤整備○ヵ年戦略」(仮称)を策定する必要があると考える。
(結論3)
総合福祉法(仮称)に盛り込む内容として、現行法の事業所指定における障害者支援施設への総量規制的なものは、一定の歯止めとして必要と考えられる。また、グループホーム等の指定事業所の設置促進にあたっては、地域住民との調整に対して、行政の一定の責任を明文化する必要がある。
(結論1-説明)
本来は誰もが地域で暮らしを営む存在であり、障害者が一生を施設や病院で過ごすことは普通ではない。入所者・入院者が住みたいところを選ぶ、自分の暮らしを展開するなど、障害者本人の意志や希望、選択が尊重される支援の仕組みと選択肢を作ることが早急に必要である。これは地域で生活する障害者についても同様で、家族の状況や支援不足から障害者が希望しない環境におかれることや、大人数の住まい等で普通の暮らしとは言えない環境におかれていることも含むものとする。
なお、権利条約19条の実現のためには、どこに暮らすか、誰とどう暮らすかなど、障害者本人が望む生活を実現するための権利擁護システムの整備が重要である。
(結論2-説明1)
地域移行の促進にあたって、地方における地域基盤整備や財政等の格差とともに、国と地方の財政負担構造など課題があるなかで、単に、施設の入所定員や病院の病床数の減を法定化することは、家族の不安や負担を強いる危険性と混乱を招きかねない。
(結論2-説明2)
地域移行の法定化は、地域移行に特化したものではなく、誰もが暮らせるための地域資源・支援システムが整備されることが前提である。時限立法などで、集中的に地域生活資源を整備することが有効である。
(3)入所施設や病院からの地域移行に関して具体的な期限や数値目標、プログラムなどについて
(結論1)
退所・退院に向けた具体的な期限や数値目標は、それだけでは入所者・入院者の回転ドア現象を招きかねない。期限や数値目標は、地域での資源整備計画にこそ必要である。特に、入所者・入院者が、どのようなニーズがあって入所・入院しているのか、定期的にそのニーズを把握し、社会的入所・入院の軽減を図らなければならない。
(結論2)
地域移行のプログラムは、入所者・入院者が自ら選ぶことを前提とし、入所者・入院者の権利擁護システムが同時に整備されるべきである。また、プログラムに入所者・入院者が合わせ、一定のプログラムを経なければ地域移行できないものではなく、個々人の状況に合わせ作成することが必要である。
特に長期入所者・入院者は、それまでの環境が本人に大きな影響を与えている場合があり、本人の状況を踏まえた個別のプログラムが必要である。なお、プログラムは、その目的からも、施設や病院の職員だけで遂行するのではなく、個人ごとに外部者が関わりながら進める仕組みが必要である。
(結論3)
地域移行を推進する上で、プログラムの対象は、入所者・入院者に限らず、施設・病院の職員にも必要であり、専門性を活かした地域生活支援への視点の転換が必要と思われる。
(結論1-説明)
退所・退院に向けた取り組みは重要だが、その具体的な期限や数値目標は、それだけでは入所者・入院者の回転ドア現象を招きかねない。期限や数値目標は、地域での資源整備計画にこそ必要であり、両者が整合性をもって連動する必要がある。
もちろん、入所者・入院者が、どのようなニーズがあって入所・入院しているのか、定期的にそのニーズを図る必要があり、社会的入所・入院の軽減を目指さなければならない。その際、施設・病院関係者だけでなく、外部者(地域支援者、ピア、自立支援協議会、市民などさまざまな立場の者)が参加できる仕組みを作ることは、安易な入所・入院を避けるためにも重要である。
自治体の障害福祉計画等で掲げられた地域移行者目標数値に関しては、地域支援サービス整備の目標数値とともに一定の達成義務は必要だが、施設や病院から住まいを移行しただけで終るものではないため、地域での生活実態の把握や支援状況の検証を移行後も行なうべきである。
(結論2-説明)
地域移行のプログラムは、障害者の意志や決定を確認し、それを実現するためのものであり、入所者・入院者が自ら選ぶことを基本としたものである。従って、入所者・入院者の権利擁護システムが同時に整備されるべきである。また、ステップ型のプログラムに入所者・入院者が合わせ、一定のプログラムを経なければ地域移行できないものではなく、個別に作成されたものが必要である。
なお、長期入所者・入院者への対応は重要な課題である。特に、それらの人たちは、地域での生活がイメージできにくい。さらにあきらめや無気力から、自分の意見を表明するのに時間がかかるなどの施設症に陥っている人には、特に本人の思いに寄り添った個別のプログラムが必要である。その目的からも、施設や病院の職員だけで遂行するプログラムではなく、個人ごとに外部者が関わりながら進める仕組みが必要である。現行の「地域移行支援事業」の実績ならびに評価を通じて、それを制度として昇華させていくことも必要と考える。
(結論3-説明)
施設・病院の職員がその専門性を地域支援に活かしていくことも、地域移行を推進していく上で求められることになる。その際には、職員にも一定の移行プログラムが必要である。支援のあり方について、視点の転換が必要と思われるからである。
(4)地域移行を進めるためのピアサポートや自立体験プログラムなどについて
(結論1)
ピアのもつ力は大きく、重要な人的資源である。入所者・入院者の意志や希望を聴くコミュニケーション過程での支援力やノウハウは有効である。安価な支援としてピアサポートをとらえるのではなく、ピアを地域移行推進のための重要な人的資源と位置づけ、その育成と報酬等に係る財源を確保すべきである。
(結論2)
地域移行に向けた体験プログラムには、さまざまな選択肢が必要で、施設・病院と地域支援者等の連携のもとで進めるべきである。そのプログラムには、まず施設・病院から外出したり、地域での生活を楽しむ体験をするなどしながら、自分の地域生活をイメージする期間も必要であり、そのため、地域の福祉サービスも利用できる仕組みが必要である。なお、経済的に困難な入所者・入院者にはその費用を助成する仕組みが不可欠である。
(結論1-説明)
ピアのもつ力は大きく、重要な人的資源である。入所者・入院者の意志や希望を聴くコミュニケーション過程で、ピアならではの支援力やノウハウは有効である。たとえば、長期入所者・入院者は、地域での生活がイメージできにくい。さらに自らの希望を表明することができない、あきらめてしまっているなどの施設症に陥っている人には、本人の思いに寄り添った個別のプログラムが必要で、その働きかけにはピアサポートの協力が重要である。
また、地域移行の過程で、本人の意志を無視したり、支援側のプランを押し付けたりしないよう、入所者・入院者に対して個別に、権利擁護サポーターなどが配置されるのも有効で、そのサポーターをピアが担うこともあり得る。この場合、権利擁護サポーターの独立性が重要となる。
いずれにしても、安価な支援としてピアサポートをとらえるのではなく、ピアを地域移行推進のための重要な人的資源と位置づけ、ピアサポーターの育成ならびに地域移行支援活動に対する至当な報酬等の財源を確保すべきである。
(結論2-説明)
地域移行に向けた体験プログラムには、さまざまな選択肢が必要で、施設・病院と地域支援者等の連携のもとで進めるべきである。その体験プログラムには、まず施設・病院から外出したり、地域での生活を楽しむ体験をするなどしながら、自分の地域生活をイメージする期間も必要である。そのため、地域の移動支援等の福祉サービスを利用できる仕組みが必要である。また、蓄えもなく、経済的に困難な入所者・入院者にはその費用を助成する仕組みが不可欠である。
(5)長期入院・入所の結果、保証人を確保できず地域移行が出来ない人への対応としての公的保証人制度について
(結論)
保証人がいないために住居が確保できない入所者・入院者にとって、公的保証人制度は必要であり、自治体が保証人となるべきである。
なお、住居確保以外の場合、公的とは言っても、機械的に担うのではなく、地域支援の一部として位置づけ、障害者の生活状況を知る人が担う保証人制度が望ましい。
(結論-説明)
保証人が不在のために住居が確保できない入所者・入院者にとって、公的保証人制度は必要である。住居の確保のためには自治体が保証すべきである。
住居確保以外にも保証人が求められる場合は、公的とは言っても、全く関わりのない第三者が機械的に担うのではなく、さまざまな地域支援の一部として位置づけ、障害者の生活状況を知る人が担う保証人制度が望ましい。
ただし、その際には、保証人が障害者の生活管理として、生活に何らかのコントロールを与えることがないよう、障害者が不服を申し立てられるような仕組みが同時に必要である。
(6)地域移行をする人に必要な財源が給付されるような仕組みについて
(結論)
地域移行に伴い、経済的な支援が必要な入所者・入院者については、例えば新居への入居時等にかかる費用等を支援する仕組みは重要である。これは、在宅から一人暮らし、グループホーム等に移行する障害者についても同様である。
(結論-説明)
地域移行に伴い、経済的な支援が必要な入所者・入院者については、例えば新居への入居時等にかかる費用等を支援することは、移行促進を図るためには重要である。
ただし、在宅から一人暮らし、グループホーム等に移行する障害者についても同様の仕組みが必要であるので、地域生活支援サービスのひとつとして位置づけないと、施設・入院を経た地域生活モデルが出来上がってしまう恐れがある。
(7)地域移行における入所施設や病院の役割、機能について
(結論1)
入所施設や病院と地域生活を単純に対立軸とし、その役割、機能を論ずることは妥当ではなく、また、現実的ではないと考える。特に、濃密な医療ニーズが継続的にある人たちに係わる議論は、拙速に結論を求めることのないよう、充分な議論が必要である。
(結論2)
入所施設や病院は、入所・入院の長期化を避けるための「個別支援計画」を充実させるとともに、セイフティネットとしての入所・入院ニーズに対応できる本来の専門的な支援機能を提供する一方、地域生活に向けた支援を強化すべきである。
(結論1-説明)
入所施設や病院は、地域で暮らす障害のある人たちが何らかの理由で地域生活に耐えられない状況に陥った時に、必要に応じて利用する社会資源であり、専門的知識と技術をもった支援(病院の場合は必要な治療)や環境を提供する社会資源である。
(結論2-説明1)
入所・入院の長期化を避けるために、施設・病院で支援の計画を作成する際には、入所時・入院時から相談支援機関等と連携した「退所・退院を目標にした個別支援計画」とする。また、セイフティネットとしての入所・入院ニーズを支援に結びつけるために、本来の専門的な支援を提供する一方、地域生活に向けた支援を開始すべきである。
(結論2-説明2)
地域に家族支援、緊急一時支援、高齢障害者支援、強度行動障害や地域との摩擦を起こしやすい人たちへの支援、地域医療等が地域に用意されることが必要であるが、施設や病院が、地域の支援機関と十分に連携できる体制を整えることも専門機関としての役割である。
(結論2-説明3)
障害が重い人であっても、基本として、その人の「人生」が施設や病院の中のみで完結することはあってはならない。地域でその人らしい暮らしを送るための専門的支援に向けた、職員の研修や意識改革は必須である。
(結論2-説明4)
地域移行において施設や病院に期待される役割には、入所・入院のあり方、入所・入院環境などの見直しも含まれる。適正な手続きによる施設・病院への入所・入院であることは、地域移行推進と関係する重要要件である。その上で、施設や病院は、質の高い専門的支援・医療を提供する機関としての機能強化が求められるべきである。
(結論2-説明5)
施設や病院への入所・入院の必要性を見極める場が必要である。例えば、精神科病院への休息入院にみられるように、生活場面から離れてゆっくり静かに休める環境があれば入院せずに済む人が少なくない。ショートステイやレスパイトサービスにバリエーションをもたせ、精神障害者が気軽に使えるものにすることで入院が必ずしも必要でなくなる人もいる。
また、重症・重度障害者についても、地域で医療的ケアが身近に受けられる場があり、それが家庭的なサイズである場合の方が安定した体調を維持できることも少なくない。
このように、入所施設や医療施設でなければならないのかどうか、定期的にそのニーズを図りながら個別支援計画を更新することが必要である。
いずれの場合でも、入所者・入院者が利用しやすい権利擁護システムが不可欠であるが、重度者であっても本人の意志を聞きながら進めることが重要である。
(結論2-説明6)
精神科医療は入院中心ではなく、地域での生活支援と連携をし、地域の中で精神医療を提供する存在へと転換を図るべきである。地域移行を推進するうえでも、適正な手続きによる入院のあり方の検討も求められる。
2.社会的入院等の解消
(1)多くの社会的入院を抱える精神科病床や入所施設からの大規模な地域移行を進めるための特別なプロジェクトについて
(結論)
地域での支援サービスを重層的に構築することが肝要であるので、国が特別プロジェクトとして予算を確保することが重要である。例えば、「地域基盤整備○○カ年戦略」のように、一定期間集中的に国が主導し取り組むことが考えられる。
(結論-説明)
社会的入所・入院の解消がこれまでも進んでこなかったのは、国の施策と地域資源の貧しさや所得保障の不備、国民の意識、それゆえ家族の介護等に依存してきたこと、そして、地域で暮す権利を障害者本人にも伝えられなかったことなどが理由といえる。また、現在は地域で暮らしていても、地域で生活し続けられなくなると、施設や病院をセイフティネットとして頼らざるを得ない。
なによりも、地域での支援サービスを重層的にすることが肝要であるので、国の責任として特別プロジェクトとしての予算を確保することが重要である。
例えば、「地域基盤整備○○カ年戦略」のように、一定期間集中的に国が主導し取り組むことである。同時に、障害者であっても地域でその人らしく生きる存在(「地域で暮らす権利がある生活の主体者」)であることを、住民が理解するための取り組みとしての特別なアクションが必要である。また、特区制度を設け、住民を巻きこんで地域性を活かした取り組みも有効である。
(2)現実に存続する「施設待機者」「再入院・入所」問題への取り組みについて
(結論1)
施設待機者は、全てが真に施設入所の必要な者とは言えない。障害福祉計画等で、単純に施設待機者数を施設設置の根拠とすることは妥当ではない。待機者は、さまざまな福祉サービス利用の待機者であるとの視点に立ち、具体的な地域基盤の整備を進めることが必要である。
(結論2)
再入所・再入院についても、障害者本人の問題としてのみ捉えるのではなく、地域支援の不足・不備からくるものとして検証し、再び地域移行にむけて支援を行うことが必要である。
(結論1-説明)
施設待機者は、地域における支援の貧しさから生まれてくるもので、すべての人が真に施設入所の必要な者とは言えない。また、待機者としてカウントされた障害者の、施設に頼らざるを得ないそのニーズは分析されてはいない。待機者はさまざまな福祉サービス利用の待機者である。よって、施設待機者が施設ニーズとして取り上げられる根拠はない。
よって、障害福祉計画等で施設待機者数を施設設置の基準にしない。なぜ入所者が生まれるのかを分析し、そこに重点的に支援をつくることが都道府県・市町村の役割である。施設待機者を掲げる自治体は、施設待機者に対して実態調査を実施し、真のニーズを把握するとともに、地域生活の継続希望者に対しては、速やかに取組むべき課題として、改善計画を策定すべきである。
(3)「施設待機者」「再入院・入所」者への実態調査とそれらのニーズ把握の具体的な取り組みについて
(結論)
在宅調査とともに入所者・入院者実態調査も重要である。施設に求める機能、地域での支援の現状や課題等を把握する必要がある。その際には、障害の程度や状況に関わらず、障害者本人への聴き取りを行うことが重要である。
特に、全国的な調査として、地域性や地域間格差の把握が重要であり、国としての、地域支援のあり方に関わる貴重なデータとなり、地域移行に向けた取り組みの根拠となる。
(結論-説明)
在宅調査を行い、施設機能に求めるもの、地域での支援の現状や課題等を聴き取ることが必要である。その際には、障害の程度や状況に関わらず、障害者本人への聴き取りを行うことが重要である。
同時に、入所者・入院者実態調査も重要で、なぜ入所・入院に至ったのか、入所者・入院者の希望は何か、どのような退所・退院阻害要因があるのかを、分析することを国主導で行う。
全国的な把握、地域性の把握が、地域支援のあり方に関わる貴重なデータであり、地域移行に向けた取り組みの根拠となる。
(4)上記の調査を具体的な施策に活かすためのシステムについて
(結論)
上記の調査結果を踏まえ、「地域基盤整備○○カ年戦略」(仮称)などを策定し、一定期間集中的に国が主導し取り組むことが必要となる。また、上記の調査を国の定期的な調査として位置づけることで、具体的な施策を検証し、効果的な施策を講じていくことが可能となる。
(5)スウェーデンでは1990年代初頭の改革で一定期間以上の社会的入院・入所の費用は市町村が持つような制度設計にしたため、社会資源の開発が一挙に進んだ。我が国における同様の強力なインセンティブを持った政策の必要性とその内容について
(結論)
何らかの政策的な仕組みは必要ではあるが、民間施設や民間病院に依存してきた我が国では、同様の取り組みは難しい面がある。
しかしながら、障害福祉計画等の立案者である市町村・都道府県、特に事業者指定者である立場からも、社会資源開発のための戦略をその計画に盛り込むことは必要である。さらに国は、社会資源開発を、省庁を超えた広域事業として位置づけ推進することが求められる。いずれにしても、地域支援における予算の大幅な増など、地域資源を飛躍的に増加することが強力なインセンティブになる。
「地域移行」部会作業チーム報告書の概要
1.地域移行の支援、並びにその法定化
(1)「地域移行」とは何か
「地域移行」のもつ意味は、単に住まいを施設や病院から移すことではなく、障害者個々人が市民として、自ら選んだ住まいで安心して、自分らしい暮らしを実現することである。当然、すべての障害者が、障害の程度や状況、支援の量等に関わらず、地域移行の対象となる。なお、「地域移行」は、住まいを施設や病院から地域に移すことのみではなく、家族との同居から独立し、自分の住まいを設けることも含み捉える必要がある。
(2)「特定の生活様式を義務づけられないこと」を確保するうえでの課題と地域移行の法定化について
障害者本人の意志や希望、選択が尊重される支援の仕組みと選択肢を作ることが早急に必要である。これは地域で生活する障害者についても同様である。地域移行を進めるためには、地域社会で暮らすための基盤整備が最重要課題である。入所定員や病床数の減を法定化は、それを前提としたものでなければならない。さもないと、家族の不安や負担を強いる危険性と混乱を招きかねない。基盤整備を積極的に進めるためには、例えば、時限立法として、「障害者の地域移行を促進するための基盤整備に関する法律」の制定が望まれる。少なくとも、国としての「地域基盤整備○ヵ年戦略」(仮称)を策定する必要がある。
(3)入所施設や病院からの地域移行に関して具体的な期限や数値目標、プログラムなどについて
期限や数値目標は、退所・退院に向けたものだけではなく、地域での資源整備計画にこそ必要である。特に、入所者・入院者に対して定期的にそのニーズを把握し、社会的入所・入院の軽減を図らなければならない。地域移行のプログラムは、入所者・入院者が自ら選ぶことを前提とし、個々人の状況に合わせ作成することが重要である。プログラムは施設や病院の職員だけではなく、外部者が関わりながら進める仕組みが必要である。
(4)地域移行を進めるためのピアサポートや自立体験プログラムなどについて
ピアサポートを地域移行推進のための重要な人的資源と位置づける必要がある。地域移行に向けた体験プログラムにはさまざまな選択肢が必要で、施設・病院と地域支援者等の連携のもとで進めるべきである。地域での体験に際して、地域の福祉サービスも利用でき、経済的に困難な人にはその費用を助成する仕組みが不可欠である。
(5)保証人を確保できず地域移行が出来ない人への対応としての公的保証人制度について
公的保証人制度は必要であり、自治体が保証人となるべきである。住居確保以外の場合は、地域支援の一部として位置づける制度が望ましい。
(6)地域移行をする人に必要な財源が給付されるような仕組みについて
経済的な支援が必要な人については、新居への入居時等にかかる費用等を支援する仕組みは重要である。これは、在宅から一人暮らし、グループホーム等に移行する障害者についても同様である。
(7)地域移行における入所施設や病院の役割、機能について
入所施設や病院と地域生活を単純に対立軸とし、その役割、機能を論ずることは妥当ではなく、また、現実的ではない。特に、濃密な医療ニーズが継続的にある人たちについては、充分な議論が必要である。入所・入院の長期化を避けるために、「個別支援計画」を充実させるとともに、セイフティネットとしてのニーズに対応できる専門的な支援機能を提供する一方、地域生活に向けた支援を強化すべきである。
2.社会的入院等の解消
(1)精神科病床や入所施設からの大規模な地域移行を進めるための特別なプロジェクトについて
国が特別プロジェクトとして予算を確保することが重要である。例えば、「地域基盤整備○○カ年戦略」のように、一定期間集中的に国が主導し取り組むことが考えられる。
(2)現実に存続する「施設待機者」「再入院・入所」問題への取り組みについて
施設待機者は、さまざまな福祉サービス利用の待機者であるとの視点に立ち、具体的な地域基盤の整備を進めることが必要である。再入所・再入院についても、地域支援の不足・不備からくるものとして検証し、再び地域移行にむけて支援を行うことが必要である。
(3)「施設待機者」「再入院・入所」者への実態調査とそれらのニーズ把握の具体的な取り組みについて
在宅調査とともに入所者・入院者実態調査も重要である。施設に求める機能、地域での支援の現状や課題等を把握する必要がある。その際には、障害者本人への聴き取りを行うことが重要である。特に、全国的な調査として、地域性や地域間格差の把握が重要であり、国としての地域移行に向けた取り組みの根拠となる。
(4)上記の調査を具体的な施策に活かすためのシステムについて
調査結果を踏まえ、「地域基盤整備○○カ年戦略」(仮称)などを策定し、一定期間集中的に国が主導し取り組むことが必要となる。また、上記の調査を国の定期的な調査として位置づけることで、具体的な施策を検証し、効果的な施策を講じていくことが可能となる。
(5)スウェーデンと同様に、我が国における強力なインセンティブを持った政策の必要性とその内容について
民間施設や民間病院に依存してきた我が国では、同様の取り組みは難しい面がある。市町村・都道府県が社会資源開発のための戦略を障害福祉計画等に盛り込み、国は、社会資源開発を、省庁を超えた広域事業として位置づけ推進することが求められる。地域支援の予算の大幅な増など、地域資源を飛躍的に増加することが強力なインセンティブになる。
「地域生活の資源整備」部会作業チーム報告書
Ⅰ.はじめに
当チームが担当した論点においては、“地域生活の基盤とは何か”、また、“その範囲などをどのように考えるか”といったことを根底にした協議検討が求められることから、はじめにチーム内で話合い、共通理解したなかで、第1期部会作業チームの訪問系チーム及び地域生活支援事業の見直しと自治体の役割チームの報告書を前提に検討を行った。
第1回目の検討では、地域生活の基盤整備(主にサービス内容)として、「長時間介助等の保証」(F-3)やコミュニケーション・移動支援における制度の利用のしづらさや市町村格差、地域活動支援センターの事業内容等に関する現状と課題、あるべき姿を論点として協議した。
また、第2回目は、財源調整、国と地方の役割、ナショナルミニマム(国の果たすべき最低限の保障水準)として、「義務的経費化と国庫負担基準」(F-4)や「国と地方の役割」(F-5)のほか、障害者自立支援法における地域生活移行や地域生活支援のための方策や、自立支援協議会の仕組み、地域活動支援センター(小規模作業所)のあり方等について協議した。
そして、第3回目では、地域生活の資源整備や自治体の役割の論点と特に関係が深いモニタリングや権利擁護(D-6-2、D―6-3、I-3-3、I-3-4)を検討の論点に加えるとともに、これまでの検討をまとめ、当チームの見解として報告することとした。
Ⅱ.結論
1.市町村や圏域単位での「満たされないニーズ」の把握や社会資源の創出方法について
(F-3-1)
結論
社会資源の創出につなげるために、地域のネットワークづくりは重層的に構築すべきである。またニーズを見つけて、サービスにつなげる方法、財源の仕組み、地域のネットワークの構築が論点であると考える。
そのためにも、当事者団体が参画した地域自立支援協議会の活性化も重要である。例えば、当事者団体からの情報提供を受けながら、サービスが届いていない人を把握して、必要なサービスがどのようなものなのか、を把握する必要がある。さらに地域自立支援協議会に、市町村への提言といった機能をもたせること等や、また、権利条約でいわれているモニタリング(日常的な評価と点検)機能の必要性等について検討することも重要である。(結論12も参照)
2.24時間介護サービス等も含めた長時間介護が必要な人への市町村や圏域単位での支援体制について
(F-3-2)
結論
どんなに重い障害がある人でも、障害者権利条約第19条の「他の者と平等な選択の自由を有しつつ地域社会で生活する平等な権利」を実現することが求められる。長時間介護も、その人の障害特性やニーズ、医療的ケアの必要度等に応じて、日中の介護のみが必要な人から、24時間のパーソナル・アシスタンス(※)が必要な人まで、必要とされる介護内容は様々である。ただ、どんなに重い障害がある人でも、またどこに住んでいても、地域社会で暮らす権利が満たされる為に必要な支援量は提供されるべきである。
上記を満たし、各人のニーズに応じた支援が適切に届けられるために、財源を確保して支援することが必要である。(結論5,6参照)
※パーソナル・アシスタンスとは、障害者あるいはその代弁者が決めた介助者が、障害者側で決めた時間や介助内容・方法に応じて介助が提供される当事者主導、個別的、包括的・継続的な支援のこと。
3.コミュニケーション・移動支援における、福祉以外の領域との関係性や市町村格差について
結論
移動支援・コミュニケーション支援は、第一期の「地域生活支援事業の見直しと自治体の役割」作業チームで検討された結果である、「地域生活支援事業ではなく自立支援給付・義務的経費化すべきである」、とする報告書内容を尊重すべきである。
移動支援については、通勤・通学などにおけるシームレスな(継ぎ目のない)支援が求められる。またコミュニケーション支援については、失語症や記憶障害などの重い言語障害のある人に対しても、必要な支援が検討されるべきである。
コミュニケーション・移動支援は、企業や学校等で「合理的配慮」として提供できる部分と、総合福祉法の中で担う部分について、上記を前提とした上で検討すべきである。
また盲ろう者は、各人に合った支援方法に習熟した支援者が移動支援とコミュニケーション支援を一体的に提供する制度を必要としている。そこで、パーソナル・アシスタンス制度を参考に、現在は地域生活支援事業である通訳・介助員派遣事業を拡充して、自立支援給付の性格を併せ持たせる方向で、この制度のあり方を検討するべきである。
4.地域活動支援センターの事業内容や小規模作業所について
結論
現状の小規模作業所は、ニーズの谷間を埋める機能やセーフティーネット機能を果たしてきた。これらの機能は地域毎の特性もあり、個別給付化になじみにくいものもある。そのため、小規模作業所の多様な実態をふまえて地域活動支援センターに発展的・安定的に集約し、設置要件の緩和を行い一元化する方向としてはどうか。利用者定員やその内容については、都道府県や市町村にその設置基準の裁量を持たせる等の工夫も必要。また、新体系移行や他の日中活動との整理については、就労の合同作業チームの結論も踏まえ、総合的に判断すべきである。
結論
前提として、地域移行者と地域生活をする重度者では、負担と支給決定のあり方を変えるべきである。施設・病院から地域移行する人や親元から独立して別市町村で暮らす障害者については、出身自治体(施設・病院所在地の自治体)が一定年度の財政負担(恒久的かどうかは検討)をした上で、居住自治体(地域移行後に居住する自治体)での支給決定をすることも検討してはどうか。また地域生活する重度者について、現行の国庫負担率以上は国負担を原則とする。ただ、そのことが無理な場合、例えば都道府県での基金化も含め市町村負担を大幅に引き下げる対応を考えるべきである。(理由を参照)
6.国庫負担基準が事実上のサービスの上限になっている現状の評価と問題解決について
(F―4-1)
結論
はじめに予算ありき、ではなく、まずは障害者のニーズを中心に検討すべきである。そのニーズを積み上げる形で、必要な支給決定がなされる必要がある。現状では国庫負担基準という形で実質的な予算上限を設定しているため、少なからぬ自治体が、国庫負担基準を事実上のサービス上限としている。総合福祉法においては、障害者の実態とニーズに合わせ、「地域で暮らす権利」を保障するための財源を確保すべきである。そのための方策は、上記の「国庫負担基準について」のまとめを参照。また、インクルーシブな(障害を理由に排除されることのない)社会への復興・新生に向け、入所・入院施設への投入財源を、地域資源へ組み替えすることも検討すべきである。
7.自治体が地域生活移行や地域生活支援を促進する為の具体的な方策について
(F-5-1)
結論
地域生活移行は、まず本人の意向に基づいた計画である必要がある。その上で、住まい、就労も含めた日中活動の場の確保、在宅サービスの充実、緊急時対応の整備などもバランスよく検討される必要がある。そのために、移行支援の拠点作りも必要不可欠である。これらの事を、地域自立支援協議会などで協議し、国の計画の人口割り案分数ではなく、地域の実情に応じたボトムアップ(現場の当事者のニーズから積み上げる)の障害福祉計画として、実行に向けた現実的計画を作成すべきである。
8.地域の実情や特色にあったサービス提供を、地域生活の権利を担保するためのナショナルミニマムのあり方について
(F-5-2)
結論
どのような地域で生活しても、地域生活の権利として最低限の保障がされるべきサービスについて示されるとともに、サービスを提供する社会資源と財源を確保する社会システムを構築すべきである。
9.自立支援協議会における当事者参画について
結論
自立支援協議会は、都道府県および市町村の協議会の設置の義務付けおよび重度障害者も含めた様々な障害当事者・保護者の参画義務付けを明記する。地域自立支援協議会は、障害福祉計画の策定に実質的に関与することを法で規定する。都道府県自立支援協議会には、盲ろうや難病等のマイノリティ(絶対数が少ない)障害者の参画保障と、地域自立支援協議会や市町村への広域的・専門的な情報提供と助言や市町村障害者福祉計画策定の支援機能が求められる。
10.権利擁護を推進していくためにはどのような体制が必要か?また相談支援やエンパワメントの事業化についてどう考えるか?
(D-6-2)
結論
相談支援には、具体的なサービスにつなげるものと、障害当事者のエンパワメント(障害当事者のあきらめさせられた、我慢させられた想いや願いを大切にし、生きる力、自らがコントロールする力を獲得すること)や権利擁護につながるものの、二種類がある。この二つを満たすためには、相談支援の拠点として、寄り添う当事者が中心となったものと、専門的知識を有する支援者によるもの、そして実施責任を持つ行政の3つの主体による相談支援体制が、それぞれに必要である。
また身近な市町村レベル、だけでなく、専門的相談やマイノリティ(絶対数が少ない)障害者への対応などは都道府県内で広域的、かつ、関連当事者団体が蓄積しているノウハウ等の活用に配慮する。
さらに、権利の形成や獲得支援に関しては、鳥取県・島根県で進められている「あいサポート運動」(※)のような、地域社会への普及啓発の活動も不可欠である。
(※)あいサポート運動とは、地域の理解が不可欠という考えをもとに、障害のある人が、地域の一員としていきいきと暮らしていくため、国民に広く、障害の特性や障害のある人への配慮の仕方などを知っていいただき実践していただく運動。一般市民、さまざまな障害者団体や県内外の民間企業等が“あいサポーター”として参加協力し、暮らしやすい地域社会作りのために運動を繰り広げている。平成21年より実施。
11.サービスの質の確保等のための苦情解決と第三者評価の仕組みについて
(D-6-3)
結論
地域生活の資源整備や重点的な基盤整備があり、選べるだけの選択肢が地域に存在し、その上で苦情解決や第三者評価の仕組み作りが重要になる。基盤整備(量的な確保)が進まない中での質の確保はあり得ない。また苦情という形で問題化する以前の段階での、障害当事者とその関係者からの話をじっくり聞く、事前相談や寄り添い型の相談支援の仕組みが必要である。
上記を満たした上で、それでも改善されない、あるいは実際に起こってしまった苦情については、実態として権利保障する為の苦情解決に向けた対応機関が必要である。
12.モニタリング機関や不服審査・苦情解決・権利擁護機関の必要性について
(I-3-3、I-3-4)
結論
この法の実施に関して、この法律に基づく形ではなく、障害者基本法の改正案で示された障害者政策委員会に、総合福祉法のモニタリングも求める事とする。一方、この法の支給決定やサービス内容に関しての不服申立機関は必要である。
個に起因する、ミクロレベル(個人)の不服審査や権利擁護に関しては、結論10でも示したように、相談支援との連携に基づく対応が必要である。また、市町村や都道府県レベルの不服申立機関への手続きのハードルを低くする為、相談支援に不服申立の支援等が出来る事も求められる。
メゾ-マクロレベル(市町村や圏域など)における、障害者総合福祉法の実施状況や障害福祉計画に関しては、市町村や都道府県に設置される審議会その他の合議制の機関でモニタリングを行う。その際、個別ケースではない地域課題の問題について、障害当事者や相談支援機関が上記モニタリング機関に課題提起をすることが出来る事とする。
モニタリングされた内容は、都道府県および地域の自立支援協議会に向けて伝えられる。都道府県および地域自立支援協議会では、障害福祉計画の進行管理や次期計画の作成などにおいて、モニタリング内容も踏まえた内容を検討し、整備水準を高める事とする。
13.障害者差別禁止法(仮称)や障害者虐待防止法(仮称)でカバーすべき部分と自治体が自主的に担う役割について
結論
司法救済などの事後救済に関しては、自治体に裁量を付与せず、全国一律の規準での救済が望ましい。一方、日常的な権利擁護課題(権利形成・獲得側面)については、市町村の裁量が担保される方がよい。
入所施設や精神科病院の入所・入院者、また在宅生活においても自身の意向を伝えにくい(エンパワメントされていない)障害者に関しては、第三者が本人の意向をくみ取る支援の仕組みが必要である。相談支援機関の訪問等による関わりだけでなく、第三者による施設・病院訪問であるオンブズパーソン制度(※)の創設なども求められる。
国レベルでの障害者差別禁止法や虐待防止法の制定は必要不可欠である。だが、自治体レベルでも、差別禁止の意識啓発や斡旋・調整など、上記法律を実体的に機能させる為の、また差別として現れる前に問題を解決するため、今後、市町村や都道府県単位の条例(例:千葉県やさいたま市)が車の両輪として、設置されることが求められる。
(※)オンブズパーソン制度とは、元々スウェーデンで始まった、行政に対する苦情処理と監察を行う第三者機関制度のこと。福祉領域でも施設での権利侵害等に対する独自の調査と改善を求める機関として機能している。我が国の福祉分野においても、障害者・高齢者の入所施設を第三者の市民が訪問し、利用者の声を聞く中で施設処遇の改善を目的とした施設オンブズマンが各地に作られている。また、精神科病院に市民が訪問し、利用者の声をもとに処遇や療養環境の向上を目指す精神医療オンブズマンは、大阪府の制度として位置づけられた(現在の療養環境サポーター活動)。
Ⅲ.理由
地域生活の基盤整備の定義と、その範囲について当チームでは次のように考えた。
地域生活支援とは、家族支援、入所施設・精神科病院での支援という「二者択一」ではない、第三の選択肢である。その際、障害者権利条約第19条の「他の者と平等な選択の自由を有しつつ地域社会で生活する平等な権利」を前提に考える。また当事者の意見に基づく支援、自立(支援を受けての自立を含む)して暮らすための支援、生活の質を高める支援を保障する中で、他の者と平等を実現する。上記を実現するために、抽象的理念に留まらず、目標を定めて基盤整備を着実に進めることが重要である。
また、国庫負担基準については、次のような考え方を提起した。
24時間の支給決定については、25%の市町村負担が出来なくて、支給決定できないところがたくさんある。そこで、ホームヘルプについて、8時間を超える支給決定をする場合は、市町村負担は5%程度に下げ、都道府県が45%を負担し、8時間以内の支給決定をする場合は、市町村負担を26%とし、都道府県負担の1%を確保して使うようにする案を提示した。(下図参照)
市町村26%
都道府県24%
国50%
1日8時間以下の訪問系サービス
市町村5%
都道府県45%
国50%
1日8時間以上の訪問系サービス
上記の図で8時間を境にしている理由は、重度訪問介護の区分6の国庫負担基準が約40万円で、月212時間程度の単価となり、1日当たり7時間超であることから、8時間を境にしている。
また入所施設や精神病院への入院・入所者の地域生活移行等を促進するため、例えば居住地と出身地(施設・病院所在地)で費用を分担するような方式が考えられないか。(下図参照)
居住地の市町村 25.0% 都道府県 25.0% 国 50.0% |
→ | 居住地の市町村 12.5% 出身地の市町村 12.5% 都道府県 25.0% 国 50.0% |
Ⅳ.おわりに
総合福祉部会は、障害者権利条約を起点にしていると理解しており、従来の福祉サービスを受ける主体から権利を行使する主体へと180度の転換がなされて画期的な手法で議論が進められている。
しかし、サービス提供の現場である市町村の実態は、今もって、従来の延長線上で対応するのに汲々とした状況にあり、国民の理解等といっても進んでいない状況である。
他の者と平等な選択の自由を有しつつ地域社会で生活する平等な権利が、社会一般の常識として浸透するために、どのような取組みを図っていく必要があるのかを、障害関係者だけでなく自治体や民間等を含めて、さらに議論を深めていくことが必要である。
総合福祉部会が新法の提言を行う、2011年8月末以後、例えば障がい者制度改革推進会議が行ったタウンミーティングを各地で行うなど、新法の理念やその内容について、広く国民理解を求める普及啓発活動が求められる。また、報告書本文でも触れた、鳥取県・島根県の「あいサポート運動」などの、障害者への理解を求め、差別禁止の意識啓発をする取り組みを、全国的に進めていくべきである。
「地域生活の資源整備」部会作業チーム報告書の概要
1.市町村や圏域単位での「満たされないニーズ」の把握や社会資源の創出
社会資源の創出やニーズの発掘のために、地域自立支援協議会の活性化(当事者団体の参画、市町村への提言、モニタリング(日常的な評価と点検)機能を持たせる等)が重要。
2.24時間介護サービス等長時間介護が必要な人への市町村や圏域単位での支援体制
どんなに重い障害がある人でも、またどこに住んでいても、地域社会で暮らす権利が満たされるために必要な支援量は提供されるべきであり、そのための財源確保が重要。
3.コミュニケーション・移動支援におけるシームレスな支援と格差の解消
通勤・通学などにおけるシームレスな(継ぎ目のない)移動支援、失語症や記憶障害などの重い言語障害のある人に対してのコミュニケーション支援、盲ろう者へのパーソナル・アシスタンス制度を参考にした支援のあり方を検討するべきである。
4.地域活動支援センターの事業内容や小規模作業所について
小規模作業所はその多様な実態をふまえて地域活動支援センターに発展的・安定的に集約し、設置要件の緩和を行い一元化する一方、定員・内容については、自治体に裁量を持たせる等の工夫も必要。
5.国庫負担基準について
施設・病院から地域移行する人や親元から独立して別市町村で暮らす障害者については、出身自治体が一定年度の財政負担をした上で、居住自治体が支給決定することも検討を要する。また地域生活する重度者について、現行の国庫負担基準以上は国負担を原則とし、無理な場合でも、例えば、都道府県での基金化も含め市町村負担を大幅に引き下げる対応を考えるべき。
6.国庫負担基準の評価と問題解決について
現状は、国庫負担基準が自治体の実質的なサービスの上限となっている実態がある。必要なサービス提供のためには、はじめに予算ありきではなく、まずは障害者のニーズを中心に検討し、「地域で暮らす権利」を保障するための財源を確保すべきである。また、インクルーシブな社会への復興・新生に向け、入所・入院施設への投入財源を、地域資源へ組み替えすることも検討すべき。
7.自治体が地域生活移行や地域生活支援を促進するための具体的な方策について
本人の意向に基づいた計画、住まいや日中活動の場の確保、在宅サービスの充実、緊急時対応の整備、移行支援の拠点作りが必要不可欠。上記を、地域自立支援協議会で協議し、地域の実情に応じた障害福祉計画として、実行に向けた現実的計画を作成すべき。
8.地域生活の権利を担保するためのナショナルミニマムのあり方について
どのような地域で生活しても、地域生活の権利の保障がされるための最低限度のサービス水準について示すとともに、財源を確保する社会システムを構築すべき。
9.自立支援協議会における当事者参画について
重度障害者も含めた様々な障害当事者や家族などの参画義務付けを明記。地域自立支援協議会は障害福祉計画の策定に実質的に関与することを、また、都道府県自立支援協議会は絶対数が少ない障害者の参画保障と広域的・専門的な情報提供と助言役割を果たすこと、が重要。
10.権利擁護を推進していくための相談支援やエンパワメントの事業化について
相談支援には、具体的なサービスにつなげるものと、障害当事者のエンパワメントや権利擁護につながるものの二種類がある。相談支援の拠点として、寄り添う当事者、専門的知識を有する支援者、行政の3つの主体による相談支援体制が必要。また専門的相談や絶対数が少ない障害者への対応などは広域的に行うことや、鳥取県・島根県の「あいサポート運動」のような、地域社会への普及啓発の活動も不可欠。
11.サービスの質の確保等のための苦情解決と第三者評価の仕組みについて
基盤整備(量的な確保)が進まない中での質の確保はあり得ない。また苦情という形で問題化する以前の段階での、障害当事者とその関係者からの話をじっくり聞く、事前相談や寄り添い型の相談支援の仕組みが必要である。その上で、実際に起こってしまった苦情については、実態として権利保障するための苦情解決に向けた対応機関が必要。
12.モニタリング機関や不服審査・苦情解決・権利擁護機関の必要性について
不服審査や権利擁護に関しては、相談支援との連携や不服申立の支援等が求められる。障害福祉計画に関しては、都道府県、市町村単位(審議会その他の合議制の機関)でのモニタリングが必要。地域課題について、障害当事者や相談支援機関が上記モニタリング機関に課題提起をすることが出来る事とする。
13.障害者差別禁止法や障害者虐待防止法でカバーすべき部分と自治体が担う役割
入所・入院者、また自身の意向を伝えにくい障害者に関しては、第三者が本人の意向をくみ取る支援の仕組み(相談支援機関の訪問やオンブズパーソン制度の創設)も必要。また差別禁止の意識啓発や斡旋・調整を目的とした自治体レベルの条例制定も大切。
「利用者 負担 」部会 作業 チーム 報告書
はじめに-検討 の範囲 と検討 視点
そのうえで、
結論 とその説明
1.
(1)
(2)
また
なお「ある
2.
(1)
(2)
そのため
2010
●
所得階層 | 月額負担上限 | 厚労省調査(101市町村)2006年6月 | |
---|---|---|---|
在宅 | グループホーム | ||
課税世帯 | 37,200円 | 52.2% | 7.7% |
低所得2 | 24,600円 | 22.0% | 42.1% |
低所得1 | 15,000円 | 12.3% | 30.6% |
生活保護 | 0円 | 13.5% | 19.6% |
●
所得階層 | 「特別対策」 | 「緊急措置」 | 「緊急措置」見直し | ||
---|---|---|---|---|---|
負担上限 | 2007年11月 | 負担上限 | 2008年7月 | 2009年7月 | |
人数(%) | 人数(%) | 人数(%) | |||
課税世帯 | 37,200円 | 39,796(8.9) | 37,200円 | 13,616(2.0) | 10,276(2.0) |
9,300円 | 97,569(21.8) | 9,300円 | 51,586(10.9) | 59,315(11.5) | |
4,600円 | |||||
低所得2 | 24,600円 | 266,761(59.5) ※ |
24,600円 | 361,780(76.2) ※ |
393,458(75.9) ※ |
6,150円 | 3,000円 | ||||
3,750円 | 1,500円 | ||||
低所得1 | 15,000円 | 15,000円 | |||
3,750円 | 1,500円 | ||||
生活保護 | 0円 | 43,765(9.8) | 0円 | 47,905(10.1) | 54,839(10.6) |
合計 | 447,891(100) | 474,887(100) | 517,888(100) |
※
●
所得階層 | 「特別対策」 | 「緊急措置」 | 「緊急措置」 見直し |
|||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
負担上限 | 2008年4月 | 負担上限 | 2008年7月 | 2009年4月 | 2009年7月 | |||||
人数 | % | 人数 | % | 人数 | % | 人数 | % | |||
課税世帯 | 37,200円 | 9,578 | 38.0 | 37,200円 | 3,793 | 15.1 | 4,143 | 12.8 | 2,813 | 8.5 |
9,300円 | 4,923 | 19.5 | 9,300円 | 748 | 10.5 | 1,017 | 10.8 | 1,498 | 25.3 | |
4,600円 | 1,896 | 2,518 | 3,586 | |||||||
低所得2 | 24,600円 | 1,582 | 6.3 | 24,600円 | 1,927 | 7.7 | 2,570 | 7.9 | 739 | 2.2 |
6,150円 | 1,962 | 14.4 | 3,000円 | 3,775 | 35.5 | 4,414 | 34.9 | 5,513 | 40.9 | |
3,750円 | 1,654 | 1,500円 | 5,176 | 6,922 | 8,059 | |||||
低所得1 | 15,000円 | 487 | 1.9 | 15,000円 | 475 | 1.9 | 903 | 2.8 | 280 | 0.8 |
3,750円 | 1,197 | 4.7 | 1,500円 | 3,415 | 13.6 | 4,661 | 14.4 | 5,231 | 15.7 | |
生保 | 0円 | 3,825 | 15.2 | 0円 | 3,961 | 15.7 | 5,318 | 16.4 | 5,514 | 16.6 |
合計 | 25,208 | 100.0 | 25,166 | 100.0 | 32,466 | 100.0 | 33,233 | 100.0 |
3.
(1)
(2)
まず
グループホーム、ケアホームの
なおガイドヘルパー
4.
(1)
①
②コミュニケーションのための
③
④
⑤
⑥
(2)
①の
②のコミュニケーションには
③の
④
⑤
⑥
おわりに
その
「利用者 負担 」部会 作業 チーム 報告書 の概要
1.応益 負担 の問題点
2.負担 軽減 策 の効果 と問題点
3.食費 、高熱水費 、送迎 利用料 等 の実費 負担 のあり方 と問題点
なおガイドヘルパー
4.自立 支援法 ならびに応益 負担 廃止後 の負担 のあり方
おわりに
その
「報酬や人材確保等」部会作業チーム報告書
第一章 はじめに(主な検討範囲・検討の視点)
一 主な検討範囲 このチームの検討範囲は次のとおり。
論点①「報酬支払全般」 論点②「月払い、日払い」 論点③人材確保策 論点④サービス体系のあり方 論点⑤資格要件のシンプル化とあり方 論点⑥事務量増大の解消策 論点⑦労働条件・賃金水準の確保策と法制度化すべき事項 論点⑧報酬・人材確保についてその他の論点・意見
二 検討の視点
障害福祉分野における報酬と人材は、この国の障害者の尊厳の水準と直結しているという問題意識を持ち、今すぐ対応するべき救急課題、5年~10年程度で確実に達成するべき中期的課題、将来展望を見据えた長期ビジョンの3点に分けて、理想を目指しながら地に着いた提言とするべきという共有認識に立った意見とした。
第二章 結論とその理由(論点表の論点、その他の論点の検討)
論点①「報酬支払全般」
[結論]福祉職棒給表の法定化
民間事業所を含め、障害福祉に従事する者の給与を国家公務員の「福祉職棒給表」(「一般職の職員の給与に関する法律」第6条第1項9号・別表第9参照)と同一の報酬水準(2007年で年収約615万円)の報酬が支払われるものと総合福祉法で規定する。
[理由]権利条約は地域で自立した生活を権利として認めている。OECD平均4分の1レベルの障害福祉予算水準では、地域での自立生活は営めず、職員は疲弊し、人権保障を遂行する人材は確保出来ない。上記結論は、今回の障害者福祉改革での至上命題である。
論点②「月払い、日払い」
[結論]両論に理由があり、それを発展的に統一した視点に立つことが肝要。個別給付の意義を活かし、日割りの弊害と指摘される点を是正する仕組み。施設系事業について、「利用者個別給付報酬」と「施設運営報酬」に大別する。チーム提言6頁~9頁。
[理由]事業の安定化を図りつつ、相談支援体制を充分に尽くして利用者の施設囲い込みとならないように当事者の権利を保障しながら、本人の選択権を保障する。具体論は後記。
論点③人材確保策
[結論]上記の「福祉職棒給表」の給与確保が第一。社会保険、厚生年金、子育て支援策の完備・充実など労働環境整備。事業者同士、隣接分野における人材の相互異動・流動体制。福祉系学校や資格取得のカリキュラム等のOJTを重視する抜本改正。福祉分野を核として支える人材を養成することが重要であり、福祉専門職の育成。一般市民が福祉分野に流れてくる、人材登用の間口を広げるための仕組み。中間管理職にゆとりを与える仕組み。スウェーデンの「労働者手帳制度」をヒントとし「福祉労働者手帳」制度を作り、労働を評価して、他の職場に移ってもランクが落ちない仕組み。その際の評価は利用者本人の評価を基本としながら、経営者サイドの評価も酌み入れる。
論点④サービス体系のあり方
[結論]及び[理由]他チーム及び後記当チーム提言全般参照。
論点⑤資格要件のシンプル化とあり方
[結論1]人材の登用は資格に限定されず、間口は広く取る。
資格がなくとも働くことができ、当事者の立場に立った支援実績を積めば報酬上も評価される仕組みとする。
[結論1の理由]資格がなければこの分野に入れないという人材登用制限として機能してはならない。資格がなければ、適切な支援実績があれば報酬がアップする仕組み。
[結論2]当事者の立場に立つ地域移行を実現するため「相談支援専門員」制度を創設する。
その場合の前提条件は次のものである。
①現行国家試験には障害者に様々な障壁があり受験におけるバリアフリーを徹底する。
②既存のピアカウセラーが可能な限り資格を取得できるルートを確保する。
③現行の社会福祉士、介護保険のケアマネージャー等の福祉専門職には当事者の立場に立った支援に欠けた面があり、新制度においては、資格取得に至るまで及び取得後の養成過程において、当事者の気持ちを理解するための現場研修を中心とする等、内容を徹底的に検討する。
④支援計画を考え、策定するのはあくまで当事者自身の自己決定であり、それを行政と対峙しても実現していくことを職務義務とし、職務に忠実ゆえに行政から干渉を受けないように資格の独立性を保障する。
⑤既存の「社会福祉士」、「精神保健福祉士」等を発展的に統合していく方向とする。
⑥当事者を過半数とする資格検討委員会を作り、制度の実態が当事者の自立支援に即したものかを5年間程度検証し、当該資格が真に当事者支援の内容を伴う水準に達することが確認できた段階で、これを初めて公式な国家資格とする。
そして、そのようなプロセスを経て、いずれ、
【この資格者が当事者の立場に立って、支給決定における一定の裁量権限を有するようになる方向を目指す。】
[結論2の理由]当チームは、単純に資格をシンプルにすればよいという考えは取らない。障害当事者の生活と人権を保障するためには支援者が生きがいと誇りをもって展望を持てる職業とすることが大切である。適切な支援が行われるために、当事者の視点に立った優秀な人材が育つことが必要であり、とりわけ、相談支援専門職の育成が焦眉の課題。ソーシャルワークや当事者中心の立場に立つ障害学をきちんと学んだ人を育てる。
論点⑥事務量増大の解消策
[結論1]現在の複雑な報酬加算制度を、基本報酬に組み入れる。
[結論1の理由]加算報酬請求をしなくても安定した事業が成立する仕組み。
[結論2]利用者負担制度の見直し。
[結論2の理由]応益負担と日割りで事務量が増えたのは明らかで、抜本見直しが必要。=利用者負担作業チーム担当
[結論3]事業規模に応じた事務職員の配置と報酬付与
[結論3の理由]現在は、現場支援職員や管理職が事務を担当しており、現場での支援の力が事務仕事により阻害されている。
[結論4]障害報酬請求事務職を報酬付きで配置
[結論4の理由]医療事務職のような請求事務職員配置が不可欠。
論点⑦労働条件・賃金水準の確保策と法制度化すべき事項
[結論1]論点①のとおり。
論点⑧報酬・人材確保についてのその他の論点・意見
以下に記載。
第三章 チーム提言書
第一 総論
一 基本理念 障害者の基本的人権(平等権・生存権・個人の尊厳・幸福追求権)保障の対価としての報酬と人材
障害福祉の人材とは憲法に基づく障害者の平等権等の基本的人権保障を実践する人材に他ならない。真に障害者の基本的人権保障を担う人権感覚溢れた人びとが障害者と共にインクルーシブな社会を構築するために、活力ある良質な人材が確保されることが障害福祉を成立させる不可欠な前提条件となる。すなわち「報酬」の本質は基本的人権保障の対価であり、障害福祉の報酬水準とは障害者の人権の価値評価、尊厳の水準と連動している。障害福祉を実践する人材が枯渇し自らや家族の生活の維持さえ危ぶまれるような状況であればこの国が障害者の人間としての基本的価値を蔑んでいることを意味する。
以上のような基本的視座のもとに、この国が障害者の基本的人権保障を実現するために不可欠な土台であり足腰としての「人材と報酬」が確立されることをめざすべきである。
二 改革の基本的方向性=自己決定権を奪われた施設生活から地域での本人主体の自立生活へ
選択権とは、当事者が望む豊富な支援施策が提供される中で、選択肢を誘導されたりすることがなく、体験的利用をしたうえで十分な情報を確保した平等な条件で、地域格差もなく選択できることが真の選択である。自己決定権は建前の上では認められていたが、実質的には限られた選択肢を強制されてきた現実がある。
権利条約19条で自立生活の権利が謳われており、障害者の地域で暮らす権利を障害基本法の中で明確に規定すべきである。OECD平均の4分の1の障害者予算を当然とする施策決定からは展望が拓けない。政治的な決定が必要である。
第二 現状の評価
一 報酬水準の劣悪さが人材確保の困難さに直結
障害関連事業における報酬制度と人材確保の課題は深刻で、報酬の劣悪さが人材の確保を困難にし、限界を超えている。法定事業における「官製ワーキングプア」である。
厚生労働省の調査によると(平成22年賃金基本統計調査・10人以上1000人未満事業所)、年間給与額は(1万以下切り捨て・円)
ホームヘルパー 285万
福祉施設介護員 298万
に対して
システムエンジニア 546万
看護師 466万
保育士 314万
高等学校教員 691万
大学教授 1111万
など他の専門職に比べて格段と劣悪な水準である。
二 疲弊する障害福祉事業所の現実
事業所を支える中核となる人材の人件費は昇級していかなければならないが、事業種別、障害程度区分、利用定員、各種加算を組み合わせた現在の報酬基準では、ベテラン職員の雇用の維持さえ難しくなり、経営的にも疲弊し、正職員の常勤雇用率が下がり、雇用期間限定の臨時・計約・パート率を大幅に増加し支援の質の低下が著しい。
三 障害福祉に人材がいなくなった原因
2003年の世界的な新自由主義の風潮の中で、福祉切り捨ての流れができ、社会福祉基礎構造改革が始まり、急速にOECD最低レベルの障害福祉予算に落ち込んだ。
高齢者や障害者になったら使い捨てという国家では、若者や子供たちは将来に対する希望が持てない。高齢者や障害者に優しい社会という国のビジョンが大切である。
1 「地域生活支援システムの不備」
現状で知的障害者の施設と精神障害者の病床を閉鎖した場合、その障害者は地域で孤立・排除される恐れが強い。地域移行を本当に実現させるためには、遠回りのようだが、地域生活支援のシステムを緊急度に応じて順次地域に作り上げていくことが不可欠である。
知的・精神障害者にとって、相談支援や見守り付き添いが必要である。しかし、それを認める重度訪問介護制度さえ、対象外である。当事者の自己選択に基づいた居住の場の選択を一般市民と同様に国は障害を持つ市民に対しても保証する義務がある。施設入所利用者に個別支援計画作成時に丁寧に地域生活の意向調査をする必要がある。
2 自立への橋渡しのシステムの欠如
現在、施設や親元からの地域生活へ移行を希望しても、地域では介助施策は利用できない。親との同居者に夜間の介助利用は許されず、日中活動に参加する者は日中の介助支援は使えない。自立に向けた体験的な自立生活支援施策が現状では欠如している。
第三 人材確保施策における基本的視点
一 障害者地域生活実現の鍵である人材確保
障害のある人の安定した地域生活ならびに医療機関等からの地域移行を実質化するためには、①労働及び雇用・日中活動の場、②居住の場、③所得保障、④人的な支え、⑤医療・保険の5つの分野が一定の水準で確保される必要があり、人的な支援体制の確保は、その基幹である。人間と人間の触れ合い、パーソナルな支援こそが改革を成功させるためのキーワードであり、そのため優良な「人材」の確保が地域生活の成立条件である。
二 公的責任転嫁禁止原則の徹底
人と人の関係を基本とする人的支援策の遂行にあっては、障害福祉の「公的責任の原則」を明確にする必要がある。「地域移行待ったなし」などの掛け声だけで、この国で根強い家族責任観念から、親を中心とする家族に責任が転嫁される危険がある。成人した障害者の生活まで家族が抱え込まざるを得ない現実の中で、「家族支援」も重要な施策の柱である。
三 支援者の確保は地域における雇用創出であること
障害分野における本格的な人的な支援策を成功させるため、大幅な人員増が必要である。労働政策の観点からは雇用創出になり、一方的な財政負担ということではない。社会福祉を志そうとする若者(学生を中心)に未来を拓き、雇用創出・失業改善に役割を果たす。
四 重層的な人的支援への変革 ネットワーク化を重視し、人材を循環させる
地域相談支援センターもGHも、他機関との連携を求めている。地域支援の組織は全て小規模であり人員にも限りがある。支援員、看護師、ケースワーカーなど必要に応じてネットワークで本人支援を行う。一団体が一人の人生を引き受けることは不可能であり、受け皿を複数用意しておくことが必要。地域生活構築のため、重層的なネットワークへの変革が必要であり、重視すべき視座は「当事者主体と当事者の権利保障」である。
第四 報酬施策における基本的方針
一 契約制度、日割り制度導入に伴う弊害に注意しながら、個別給付制度の意義も活かす
措置から契約制度への移行に伴い、措置委託費の丸投げから、一人ひとりの要支援者への個別支援のための社会保障費の支払いの集積が報酬となる転換が図られた。
障害者自立支援法施行により露骨な給付抑制政策が導入され、大幅に報酬基準が切り下げられ、障害福祉の質の低下がもたらされた。それらの弊害を解消する制度改革が急務である。しかし、措置制度に戻ることが改革の方向性ではない。すなわち、一人ひとりへの支援を意識した障害福祉の基本的あり方を基本としながら、支援の質の低下、現場を委縮させない報酬施策が実施されることが、改革の方針である。
二 複雑な報酬制度のシンプル化
事業者にとっても乱数表のような複雑なシステムは不経済極まる。利用者にとっても、一般国民にとっても、わかりやすい簡潔でシンプルな制度にしなければならない。
三 利用者に不利益をもたらさない
利用者負担、地域間格差等により、利用者に不合理な負担、不利益を被らせることは障害福祉の理念に反することであり、あってはならない。
四 障害福祉に従事する者が誇り展望をもって仕事を継続出来る水準とすること
報酬の体系と金額は、現に障害者福祉に従事する者が誇りを持って仕事に取り組み、その資質等の向上を図ることを促進するものであり、従事することを希望する者が、労働条件等の雇用環境により、断念することがない水準であることが必須である。
五 福祉労働者が希望を感じる待遇改善
休暇の保障、海外研修・留学等の国際交流や他事業所との国内交流等職員のモチベーションを高める仕組み。
第五 総合福祉部会として、あるべきモデルの提言(長期計画)
政策提言~障害者地域自立支援体制 10か年計画~
一 10か年計画 総論「障害者地域自立支援体制10ヵ年計画」の策定の必要を提言する。2013年より10ヵ年計画として策定し、施設の新規入所を減らし、地域生活移行のための包括的且つ具体的なプランとして策定する。
「どんなに重度の障害を持っても、地域で自分の望む生活が支援を受けて行えること」を実現するためには、「10ヶ年計画」を作り、各年度の達成目標を市町村レベルの積み上げ数値目標を定めて行うべきである。
現状では知的、精神障害者、重症心身障害者等に必要な地域生活相談支援センター、地域での緊急事態に備えたショートステイ、充分な医療ケアの場がほとんど存在しない。地域での受け皿を当事者主体、当事者エンパワメントの視点に立って作り上げていくことが、最短の道である。障がい者制度改革会議と総合福祉部会の意見を尊重して、「10ヵ年計画」を当事者のニーズに基づいて、早急に作るべきである。
計画の特徴1 個人の真の選択を実現するシステム
従来の計画は、公平性、透明性の名のもとに、「最低保障」の観点から作られてきた。今後は当事者の選択を実現する「地域自立生活支援システム」を構築するべきである。
計画の特徴2 当事者エンパワメントができる地域支援体制と人材育成
当事者のエンパワメントを図るためにはピアカウンセラーや相談支援が有効であり、全市町村で保障するため、当事者の視点に立った支援専門家の育成が急務である。
精神保健福祉士、社会福祉士、介護福祉士、MSW(Medical Social Worker・医療ソーシャルワーカー)、看護師、医師、ソーシャルワーカー、臨床心理士、OT(作業療法士)、PT(理学療法士)等の研修コースの中に、当事者エンパワメントの地域支援方法、地域ケアサービスの現場実習、地域医療ケアの現場実習、地域自立生活支援方法実践論、当事者主体の支援方法論、障害者の権利と福祉的支援論等の研修が必要である。
また、これらの専門職のほとんどが、医療点数にカウントされない非常勤待遇に位置づけられており、地域生活支援の実戦力となっていない現状に問題がある。医療費の中からこれらの人件費を正規雇用ベースで支給すべきである。
二 10か年計画 各論その1 人材育成
ピアカウンセラーは重要であるが障害者人口は限られており、当事者が中心となって運営を担う包括的な地域生活支援体制づくりと、当事者主体の理念を研修などで確実に身につけた障害のない専門職との「協働」が重要である。
(1)当事者組織の育成
現在の自立生活センターも知的・精神障害者の全国支援網とはなっていない。当事者の育成とシステムづくりに資金を含めた公的支援が求められる。地域格差を生じさせないために市町村ごとに、事務所運営資金、職員費用等の運営補助が必要である。現在のリソースも活用しながら、特にピアカウンセリング、自立生活プログラム等の実施が求められる。
(2)当事者中心の視点にたった専門職の育成
例
【社会福祉士】 障害者自身の主体的な地域生活を支援する視点から今以上に現場実習を取り入れる。入浴やトイレ介助などの生活を通して、頭ではなく身体で福祉を理解し、対等な人間関係を作ることが求められる。介助体験の意義付けと、相談支援のスキル獲得の目的を意識した現場実習をバランスよくカリキュラムに盛り込み、障害当事者を講師とするなど、「当事者主体」の視点に立つ支援者養成ヘと再編成する。
以上のほかにもPSW・特別支援教育専門員など、あらゆる専門職に対して、「当事者主体」の視点に立った根本的な改革が求められる。
三 10か年計画 各論その2 「地域生活移行支援センター」の設置・整備
マンツーマンによる一貫した職員体制を保障したあらゆる障害者の地域生活移行の整備
精神障害者や知的障害者にとっては、同じ職員がマンツーマンで関わり、信頼関係が確立した中でこそ、安心して相談できる。担当員が徹底的に関わり、当事者性とニーズを十分に引き出すことが必要である。地域生活移行センターには、20名程度の相談支援員を正規職員として配置する。三障害はもとより難病等を含むあらゆる障害者を総合して、継続的な地域生活を支援するために、「地域生活移行センター」を核として、24時間体制で相談に応じられる職員配置を確保する。当事者相談支援員を過半数とし、ピアカウンセラーを必須の配置とする。また、運営委員の過半数は障害者であることとし、当事者主導の体制を構築し、日常的な生活支援相談を必要とする者を対象とする。
現在入所施設事業を実施している事業者の多くが、総合福祉法施行に伴い、地域生活移行支援センター事業所に移行することが目標となる新事業体系が必要である。
第六 中期計画 その1 「報酬水準・報酬設定・報酬体系」について
新法の基本設計(新法導入~5年以内に実現すべき事項)
一[報酬水準について]=今回の改革で絶対に実現しなくてはならない目標
福祉人材の確保出来る報酬基準の設定=国家公務員と同等の年収水準
障害福祉報酬の総額が低すぎて、優れた理念を持ったリーダーも極めて低賃金な異常な実態である。優れた人材を高い報酬で待遇するという当たり前の姿になるため、国家公務員レベルの給与体系で末永く雇用できる制度構築をすることは改革の至上命題である。
「10ヵ年福祉計画」で、毎年給与上昇率を提示し、OECD平均レベルの障害者予算を組み立てながら給与水準を改善し、労働者の福祉産業離れを食い止めなければならない。
二 [報酬水準の設定のありかた]
事業者が安定して事業経営し、従事者が安心して業務に専念出来る報酬水準
具体的には、従事者の給与レベルは国家公務員給料表の「福祉職俸給表」による給与支給を確保出来る水準とすることを総合福祉法において法定化する。
これにより、障害者福祉従事者の標準的給与水準が明確になり、異動の際にも、前歴換算や評価が容易になる。共通の給料表に基づくことにより官民格差が是正できる。
福祉職給料表の導入と共に、「職員構成比想定」を設定するべき。俸給の適用級が低いままで積算されれば、経験年数の長い従事者は継続が困難となり、若い従事者を「回転」させる人事となり、利用者にとって、看過しがたい。従来、職員構成、特に「直接処遇職員」に実態と乖離した低い級・号俸を想定していたことが問題である。それでは、ベテラン職員、中間層が薄くなり、長期ビジョンに基づく経営はできない。中間層を手厚くした、「職員構成比想定」を導入し、支援の質の向上、働き続けられる職場の実現、職員が将来像を描けるシステムとする。さらに、単純な経営のバランスシートで報酬水準を設定するのではなく、それぞれの職員が求める維持可能水準を考慮して設定することが必要。
三 [報酬体系と加算制度のありかた]=「加算」抜きで安定経営出来る報酬体系
複雑な加算制度は根本的に見直し、複雑な「加算」の仕組みを駆使しなくても基本報酬に現行の加算レベルを組み込む改変が必要である。
現在の報酬は報酬本体では経営維持が困難であり、加算により初めて維持出来る。
改革の基本制度設計は、「報酬本体だけ」で求める事業水準(指定基準に定められる水準)を確保すべき。加算はあくまで、その標準的水準のオプションと位置づける。
加算に依存する報酬体系を見直し、本体のみで事業経営の維持を可能とすることが必要。
次に、報酬体系を入所施設系と在宅系に分けて検討する。
ア 入所施設型事業 報酬体系の見直し
施設(入所・通所)報酬は、規模別に設定されていが、人件費等一般管理費にスケールメリットが働くが、利用者の生活費には働かない。その見直しを図示したのが、
イ 在宅系事業 報酬体系の見直し
「通所・短期等(利用型)」と「在宅訪問型」の種別
在宅系は、施設維持のために固定経費が相当程度必要となる「通所・短期型」と訪問介護などの支援者が居宅や利用者と同行する等直接的なサービス提供に係わる「在宅訪問型」に大別した報酬体系とする。
「通所・短期型」は、基本的には入所施設系報酬体系に準じて設定する。
一方、「在宅訪問型」は、事業運営報酬が主であることから、報酬を1系統にまとめる。これを図示したのが図3 在宅訪問型事業報酬である。
ウ 採算線(レベル)の引き下げ
現行報酬額の採算レベルは、入所施設系で利用率(実利用者/利用定員)が90~95%にセットされており、収支を黒字にするために定員超過などで凌いでいる。
定員超過が恒常化すれば、支援水準が低下し、コンプライアンスと矛盾する。
こうした事態を改善するため、採算ラインを80%程度と設定する。
これにより、定員一杯となれば職員の加配やベテラン職員の確保が可能となり、事業者にも利用者にも余裕が生じ、利用者の地域移行についての取り組みも可能となる。
経営を安定させ、ゆとりをもたせることで地域移行を促進する政策へ転換する。経営者にインセンティブを与え、新たな事業展開への財源確保とモチベーションを高める。
エ 「経営実態調査による報酬見直し」を廃止する
国は経営実態調査に基づき報酬改定を行っている。しかし、多くは報酬のみが収入であり、報酬が減額されればその範囲で収支を合わせて黒字にするため、「見せかけ」の「黒字」を根拠として報酬改訂されれば、報酬は際限なく引き下がる。福祉報酬は社会保障費=ナショナルミニマムであり、自助努力の貯蓄を理由に水準を引き下げることは出来ないはず。
四 [報酬の支払い方法]
「日払いと月払い」の両論の止揚(発展的統一)
報酬の日額払か月払いか、障害福祉分野の健全な証しとして総括し、対立した関係と捉えず、統合した視点を持ち、建設的な議論に発展させることが肝要。
障害福祉を実践する担い手が事業を維持出来ない状況は、結局、障害者の生活支援、人権が安定的に保障されないことを意味し、その支障は障害者自身が被る結果となる。
障害者の幸福追求権が保障されるためには、障害のある人の支援(事業)を選択する自由(権利)と障害関連事業における固定費(人件費を中心に)の安定的な確保とを両立させることが必要である。その際、次の三点に留意すべき。
一点目は、報酬の財政規模の増額が必要条件である。現行の支出水準を固定費相当分とし、日額分が重ねられるイメージ。二点目は、契約制度は維持するとしても、市町村が障害者の支援を保障する公的責任は明確化しておくこと。三点目は、利用者負担の増加につながらないようにすること。「Aさんに就労支援が保障される」との支給決定も「個別給付決定」であり、仮に本人負担があるとしても、公から個人への費用徴収の問題とするべきで、利用者負担制度を廃止するか、少なくとも利用者負担と事業所報酬が連動する、現行の「個別給付→代理受領」の方式自体を見直し、利用と負担の連動性を断つべきである。
すなわち、個別給付制度を維持しながら、利用者負担請求業務の事業者負担も無くし、支給決定障害者の事業利用に対する事業所に対する報酬支払方式に変更するべきである。
1 利用者の選択権と事業所の安定を目指す新報酬体系
①施設系事業
報酬を「利用者個別給付報酬」(利用者への個別支援に関する費用)と「事業運営報酬」(人件費・固定経費・一般管理費)に大別する。
概ね、前者が2割、後者が8割程度。
前者を原則日払いとする。
但し、利用率80%を上回れば全額支払い、それ以下の場合は、利用実績に応じた日割り計算で事業所に支払われる。
後者を原則月払いとする。
すなわち、施設利用定員による月額を定額で支払う。
但し、施設全体の6ヶ月の平均利用率を次の6ヶ月間は掛けて月額を算出する。これにより、利用しなかった分は報酬減となるので、在宅給付との併給にも抵抗は少ない。
これを具体的に図示したのが後記別紙図4「定員30名の施設の場合」である。
ポイント 個々の利用者の利用状況に日割り(利用率)を導入するのではなく、施設全体の利用率で算定する。その適用は次の6ヶ月期に適用とする。
例外として、定員20名以下の場合は上記80%保障を90%とする。
これは、日割り論者が危惧する「事業所への定員保障」ではなく、むしろ、現実の利用実績を斟酌する日割り制度に近い発想であり、日割り論者も認める現行の9割保障に類似した現実案である。日割り論者の主張するメリットを活かしながら、月割り論者の危惧する点もクリアし、止揚する案として、総合福祉部会の統一提言となることを期待したい。
②在宅系事業 図3の在宅系報酬を前提として、日割り報酬とする。
2 障害程度区分との報酬との連動を断ち切る
障害程度区分は別チーム担当だがいずれにせよ程度区分と報酬の連動は廃止されるべき。
第七 中期計画その2 「人材育成」について (新法導入~5年以内に実現すべき事項)
1 OJT(ON The Job Training・現場体験をしながらの職業訓練)を重視し、「資格」保有は決して支援のために本質的なものではなく、支援の質の最低基準の保障と支援者の社会的評価、モチベーション維持等のための副次的な位置づけとする研修システム
人材育成の中期計画としてもOJT重視の研修システムを基本とするべき。可能な限り間口を広く取り、多くの人材の中から適した人材を探り当てる作業が不可欠。継続的な関係性の中での人間関係が基礎にあり支援が成り立つ。正規雇用関係の中で長期にわたって関係性を持てることが信頼関係を障害者と作り上げる基本である。
2 ピアカウンセラー、当事者委員登用率の法定化
当事者の気持ちにもっとも寄り添えるのは同じ障害をもつ当事者である。障害当事者を出来る限り相談支援研修に受講させ、優先的に相談支援に雇用し、障害福祉計画等の政策立案過程、自立支援協議会等において知的や精神障害者の委員登用率を法的義務化する。
第八 直ちに(旧法=障害者自立支援法でも、新法施行と同時に)緊急に修復、対応するべき、しなければならない事項(短期的課題)
1 常勤換算方式の廃止
2 併給を認めるシステム
入所、通所、在宅など体系ごとの併給の禁止を廃止し、居住の場の確保と地域生活支援の個別介助の併給を認めるべき。
3 知的、精神の方へのパーソナルな支援
知的・精神障害者にとって、個別の介助支援だけでは地域生活は維持できない。相談支援や見守り付き添いが必要だが、唯一の現行制度の重度訪問介護も対象外である。当面は、その制度の適用対象の拡大と、マンツーマンでの相談支援体制を構築することが急務。
4 体験的自立生活体験室と介助支援
親亡き後に施設に入らなくてすむように若いうちから、障害者の親元を離れての自立生活体験の場を作ることが、将来の自立生活にむけての準備期間として欠かせない。そのための場を相談支援事業所、通所作業所、短期ショートステイ、などに併設する形で設置した場合に家賃補助、職員体制、運営経費を支給し、あわせて居宅介助サービスを親元にいても自立生活体験のために使えるようなシステムをつくる。
以上
現行報酬制度
施設種別
少 多
定員規模別
見直し案
利用者個別支援報酬(定員規模による格差なし)
事業運営報酬
施設種別
少 中 多
定員規模別
利用者個別支援報酬 + 利用者支援加算
特別訓練加算
事業運営報酬 + 事業運営加算 + 事業運営調整費
資格職員加算 所在地調整、寒冷地調整
事業運営報酬(人件費・管理運営費等) (利用者サービス経費)
+
個別支援・運営加算
+
事業運営調整費
月額×全員の6月の利用日数=A%
30人×20日×6月
4~9月
A%>80%であれば全額支払い
10~3月
月額×A%(ただしA%<80%の場合)
10~3月期も同様に利用率を算定し、次の4~9月期に適用する。
「報酬や人材確保等」部会作業チーム報告書の概要
一 国家公務員の「福祉職棒給表」を新法で規定
人材確保のため従事者が未来を感じられる待遇が必要
「10ヵ年福祉計画」で毎年給与上昇率を提示し、OECD平均レベルの障害者予算を組み立てながら給与水準を改善し、労働者の福祉産業離れを食い止める。
二 複雑な「加算」は基本報酬に組み入れ、加算抜きで事業維持可能な報酬水準とする
三 「月払い・日払い」を発展解消する利用者の選択権と事業の安定を目指す新報酬体系
・在宅:日払い
・入所・通所
「利用者個別給付報酬」(利用者への個別支援に関する費用)と「事業運営報酬」(人件費・固定経費・一般管理費)に大別。
概ね、前者が2割、後者が8割程度。
前者を原則日払いとする。但し、利用率80%を上回れば全額支払い、それ以下の場合は、利用実績に応じた日割り計算で事業所に支払われる。
後者を原則月払いとする。すなわち、施設利用定員による月額を定額で支払う。
四 人材確保策
「福祉職棒給」「労働環境整備」「人材の相互異動・流動体制」「資格取得のカリキュラム等のOJTを重視する抜本改正」「人材登用の間口を広げる」「中間管理職にゆとりを与える」「福祉労働者手帳」制度。
五 当事者の立場に立つ地域移行を実現するため「相談支援専門員」制度を創設する
前提条件は次のもの
①受験のバリアフリー徹底。②既存のピアカウセラーの資格取得ルートの確保③福祉専門職の現場研修をなど内容の見直し。④資格の独立性保障。⑤既存の福祉専門職資格の発展的統合の方向。⑥当事者中心の資格検討委員会で検証の上、国家資格化の是非を検討する。→この資格者が当事者の立場に立って、支給決定における一定の裁量権限を有するようになる方向を目指す。
六 事務量増大の解消策
利用者負担制度の見直し=利用者負担作業チーム担当
事業規模に応じた事務職員の配置と報酬付与
報酬請求事務職を報酬付きで配置
七 地域移行実現のための10か年計画が必要
当事者主体に立った現場研修の徹底、「地域生活移行支援センター」を作る。
八 直ちに実施すべき事項(短期的課題)
1 常勤換算方式の廃止
2 併給を認めるシステム
入所、通所、在宅など体系ごとの併給の禁止を廃止する。
3 知的、精神の方へのパーソナルな支援
4 体験的自立生活体験室と介助支援
以上