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日時:2013年02月03日(10:30~16:00)
場所:戸山サンライズ 大研修室
 

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障がい者制度改革推進会議 第35回(H23.9.26) 資料1 はじめに

はじめに

■ 総合福祉部会の背景と経過

平成21(2009)年12月、障害者の権利に関する条約(以下、「障害者権利条約」という)の締結に必要な国内法の整備を始めとする障害者に係る制度の集中的な改革を目的として「障がい者制度改革推進本部」が設置され、この下で、障害者施策の推進に関する意見をまとめる「障がい者制度改革推進会議」(以下「推進会議」という)が発足しました。

このことは、障害者権利条約の基本精神である「私たち抜きに私たちのことを決めるな!」(Nothing about us without us!)を踏まえた政策立案作業の開始を意味します。

平成22(2010)年4月には、この推進会議の下に、障害者、障害者の家族、事業者、自治体首長、学識経験者等、55名からなる「障がい者制度改革推進会議総合福祉部会」(以下「総合福祉部会」という)が設けられました。

さらには、平成22(2010)年6月29日、政府は閣議決定を行い、推進会議の「第一次意見」を最大限に尊重し「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」を定めました。その中で、とくに「『障害者総合福祉法』(仮称)の制定」に関しては、

「応益負担を原則とする現行の障害者自立支援法(平成17年法律第123号)を廃止し、制度の谷間のない支援の提供、個々のニーズに基づいた地域生活支援体系の整備等を内容とする「障害者総合福祉法」(仮称)の制定に向け、第一次意見に沿って必要な検討を行い、平成24年常会への法案提出、25年8月までの施行を目指す。」

と定められました。

こうして総合福祉部会は障害者総合福祉法の制定に向けた検討という使命を背負って18回の検討を重ねてきました。

第1回~3回(平成22(2010)年4月~6月)では「障がい者総合福祉法(仮称)制定までの間において当面必要な対策について」の議論を行い、「利用者負担の見直し」などを含む「当面の課題」の要望書をまとめました。

第4回~7回(6月~9月)では、9分野30項目91点の「論点」を整理し、それに沿って議論し共通理解を図りました。

第8回~15回(10月~平成23(2011)年6月)では、複数の作業チームに分かれて議論・検討を行いました。これらの作業チームに参加した構成員の精力的な検討の成果は「部会作業チーム報告・合同作業チーム報告」としてまとめられています。なお各チーム報告に対して、厚生労働省からのコメントが出されています。

第16回~18回(7月~8月)では、これまでの議論を踏まえ、「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」(以下「骨格提言」)に向けて議論をまとめる作業を行いました。

■ 骨格提言の基礎となった2つの指針

総合福祉部会の55人の立場や意見は多様ですが、次の2つの文書を前提として検討作業を行ってきました。それは、平成18(2006)年に国連が採択した「障害者権利条約」、そして、平成22(2010)年1月に国(厚生労働省)と障害者自立支援法訴訟原告ら(71名)との間で結ばれた「基本合意文書」です。

これらの文書は、総合福祉部会が、障害者総合福祉法の骨格をまとめるに際し、基本的な方向を指し示すなど重要な役割を果たしました。

(1)障害者権利条約

この条約は、すべての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、及び確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進することなどを目的としています。

とくに、第5条(平等及び差別されないこと)において、合理的配慮の確保が求められています。

また、第19条では、「すべての障害者が他の者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を認める」とし、

「(a) 障害者が、他の者と平等に、居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること並びに特定の居住施設で生活する義務を負わないこと。」

「(b) 地域社会における生活及び地域社会への受入れを支援し、並びに地域社会からの孤立及び隔離を防止するために必要な在宅サービス、居住サービスその他の地域社会支援サービス(人的支援[personalassistance]を含む。)を障害者が利用することができること。」

を締約国は確保するとしています。

このように条約は、保護の客体とされた障害者を権利の主体へと転換し、インクルーシブな共生社会を創造することをめざしています。

(2)「基本合意文書」

この文書では、

「国(厚生労働省)は、速やかに応益負担(定率負担)制度を廃止し、遅くとも平成25年8月までに、障害者自立支援法を廃止し新たな総合的な福祉法制を実施する。そこにおいては、障害福祉施策の充実は、憲法等に基づく障害者の基本的人権の行使を支援するものであることを基本とする。」

「(障害者自立支援法、とくに応益負担制度などが)障害者の人間としての尊厳を深く傷つけたことに対し、・・心から反省の意を表明する」

「・・新たな福祉制度の構築に当たっては、現行の介護保険制度との統合を前提とはせず・・」

「今後の障害福祉施策を、障害のある当事者が社会の対等な一員として安心して暮らすことのできるものとするために最善を尽くす」

などが確認され、利用者負担、支給決定、報酬支払い方式、「障害」の範囲、予算増などについて原告らの指摘を踏まえてしっかり検討するとしています。

■ 障害者総合福祉法がめざすべき6つのポイント

本骨格提言は以上の経過と指針の下に、次の6つの目標を障害者総合福祉法に求めました。

【1】障害のない市民との平等と公平

障害者と障害のない人の生活水準や暮らしぶりを比べるとき、そこには大きな隔たりがあります。障害は誰にでも起こりうるという前提に立ち、障害があっても市民として尊重され、誇りを持って社会に参加するためには、平等性と公平性の確保が何よりの条件となります。障害者総合福祉法がこれを裏打ちし、障害者にとって、そして障害のない市民にとっても新たな社会の到来を実感できるものとします。

【2】谷間や空白の解消

障害の種類によっては、障害者福祉施策を受けられない人がたくさんいます。いわゆる制度の谷間に置かれている人たちです。また制度間の空白は、学齢期での学校生活と放課後、卒業後と就労、退院後と地域での生活、働く場と住まい、家庭での子育てや親の介助、消費生活など、いろいろな場面で発生しています。障害の種別間の谷間や制度間の空白の解消を図っていきます。

【3】格差の是正

障害者のための住まいや働く場、人による支えなどの環境は、地方自治体の財政事情などによって、質量ともに大きく異なっています。また、障害種別間の制度水準についても大きな隔たりがあります。どこに暮らしを築いても一定の水準の支援を受けられるよう、地方自治体間の限度を超え合理性を欠くような格差についての是正をめざします。

【4】放置できない社会問題の解決

世界でノーマライゼーションが進むなか、わが国では依然として多くの精神障害者が「社会的入院」を続け、知的や重複の障害者等が地域での支援不足による長期施設入所を余儀なくされています。また、公的サービスの一定の広がりにもかかわらず障害者への介助の大部分を家族に依存している状況が続いています。これらを解決するために地域での支援体制を確立するとともに、効果的な地域移行プログラムを実施します。

【5】本人のニーズにあった支援サービス

障害の種類や程度、年齢、性別等によって、個々のニーズや支援の水準は一様ではありません。個々の障害とニーズが尊重されるような新たな支援サービスの決定システムを開発していきます。また、支援サービスを決定するときに、本人の希望や意思が表明でき、それが尊重される仕組みにします。

【6】安定した予算の確保

制度を実質化させていくためには財政面の裏打ちが絶対的な条件となります。現在の国・地方の財政状況はきわめて深刻であるため、障害者福祉予算を確保するためには、給付・負担の透明性、納得性、優先順位を明らかにしながら、財源確保について広く国民からの共感を得ることは不可欠です。

障害者福祉予算の水準を考えていくうえでの重要な指標となるのが、国際的な比較です。この際に、経済協力開発機構(OECD)各国の社会保障給付体系のなかにおける障害者福祉の位置づけの相違を丁寧に検証し、また高齢化などの要因を考慮した上での国民負担率など、財政状況の比較も行わなければなりません。当面の課題としては、OECD加盟国における平均並みを確保することです。これによって、現状よりはるかに安定した財政基盤を図ることができます。

■ 改革への新しい一歩として

わが国の障害者福祉もすでに長い歴史を有しておりますが、障害者を同じ人格を有する人と捉えるよりも、保護が必要な無力な存在、社会のお荷物、治安の対象とすべき危険な存在などと受けとめる考え方が依然として根強く残っています。

わが国の社会が、障害の有無にかかわらず、個人として尊重され、真の意味で社会の一員として暮らせる共生社会に至るには、まだまだ遠い道のりであるかもしれません。

そのような中で総合福祉部会に参集した私たちは、障害者本人をはじめ、障害者に関わる様々な立場から、違いを認めあいながらも、それでも共通する思いをここにまとめました。ここに示された改革の完成には時間を要するかも知れません。協議・調整による支給決定や就労系事業等、試行事業の必要な事項もあります。

また、本骨格提言に基づく法の策定、実施にあたっては、さらに市町村及び都道府県をはじめとする幅広い関係者の意見を踏まえることが必要です。

私たちのこうした思いが、国民や世論の理解と共感を得て、それが政治を突き動かし、障害者一人ひとりが自身の存在の価値を実感し、様々な人と共に支えあいながら生きていくことの喜びを分かち合える社会への一歩になることを信じて、ここに骨格提言をまとめました。

今、新法への一歩を踏み出すことが必要です。

平成23(2011)年8月30日
障がい者制度改革推進会議総合福祉部会