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場所:戸山サンライズ 大研修室
 

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障がい者制度改革推進会議 第35回(H23.9.26) 資料1-Ⅱ

Ⅱ 障害者総合福祉法の制定と実施への道程

Ⅱ-1 障害者自立支援法の事業体系への移行問題

【表題】障害者自立支援法の事業体系への移行問題

【結論】

○ 障害者自立支援法に基づく事業への移行期限終了後も、一定の要件の下で、従前の運営費の10割を保障するなどの支援策を継続する。

【説明】

障害者自立支援法以前の体系から障害者自立支援法の事業に移行することで、経営努力にもかかわらず大きく減収となる事業所は、移行期限である平成24年3月まで移行できない上に、移行後の運営に大きな不安を抱えている。また、移行を予定していた事業所の中には、東日本大震災や福島原子力発電所事故の影響で、期限内の移行が不可能になったところもある。

こうしたことを踏まえ、現行の事業運営安定化事業による10割保障を移行期間終了後も継続し、移行可能となるようにすべきである。

Ⅱ-2 障害者総合福祉法の制定及び実施までに行うべき課題

【表題】市町村及び都道府県の意見

【結論】

○ 障害者総合福祉法の制定及び実施に当たっては、市町村及び都道府県の意見を踏まえること。

【説明】

今後、障害者総合福祉法を制定及び実施するに当たっては、制度の実施主体である市町村及び都道府県の意見を踏まえ、十分な調整を行うことが必要である。

【表題】利用者負担

【結論】

○ 応能負担でも低所得者には軽減策をとり、利用者負担を原則無償にする。

○ 障害者総合福祉法実施以前にも自立支援医療における低所得者の全額公費負担を実現する。
※ 障害者の医療費公費負担制度の見直しについてはⅢを参照のこと。

○ 障害福祉サービス、補装具、自立支援医療、地域生活支援事業、介護保険の利用者負担を合算し過大な負担とならないようにする。

○ 所得区分の認定においては利用者本人を基本とし配偶者を含めないこと。

【説明】

所得保障がなされない中で低所得者には過度な利用者負担を課すべきでない。つなぎ法では応能負担になるが、障害者総合福祉法ができるまで、低所得者には応能負担の軽減策を講じ、現在のように無償になるような配慮が必要である。

また、自立支援医療の負担については、「基本合意文書」の「四 利用者負担における当面の措置」において、「なお、自立支援医療に係る利用者負担の措置については、当面の重要な課題とする。」とされていることを踏まえた検討が求められている。

利用者負担の合算では、障害福祉サービス、補装具、自立支援医療、地域生活支援事業、介護保険の利用者負担を合算し、軽減できるようにする。

【表題】地域での自立した暮らしのための支援の充実

【結論】

○ 障害程度区分に連動する国庫負担基準を支給決定量の上限としてはならないことについて自治体に徹底させる。国庫負担基準を超える分の国から市町村への財政支援を行う。

○ 地域生活支援事業の地域格差の解消の為に予算を確保する。

○ 移動支援の個別給付化、重度訪問介護の知的・精神障害者、障害児への対象拡大を行う。

【説明】

障害者総合福祉法への移行に向けて、平成24年4月1日から可能な施策は実施する。必要な支援の量が障害程度区分に連動する国庫負担基準を超える場合、相談支援とケアプランを検証した上で支給できるように、国が市町村に財政支援を行う。

移動支援、日中一時支援等は地域生活支援事業ではなく、個別給付にする。

【表題】報酬構造の見直し、加算の整理と報酬改訂

【結論】

○ 各種の加算を整理し、可能なものは基本報酬に組み入れていく。

【説明】

複雑な加算制度を基本報酬に組み入れることで、事務処理を簡素化していく事が必要である。但し、人的な支援を手厚く実施していく場合や看護師、理学療法士、作業療法士、臨床心理士、等の専門職を加配した場合などの配置加算は考慮する。

【表題】福祉・介護人材処遇改善事業助成金

【結論】

○ 福祉・介護人材処遇改善事業助成金は基本報酬に組み込む。

【説明】

福祉・介護人材処遇改善事業助成金は、福祉・介護人材の処遇改善に取り組む事業者に対して、平成23年度末までの間、職員(常勤換算)1人当たり月額平均1.5万円を交付するものであるが、対象職員が限定されていること、諸手続きが複雑であること等の問題点がある。こうした点を解消する観点から、基本報酬に組み入れて事業所全体の賃金の底上げを図る。なお、現政権のマニフェストでは、「介護労働者の賃金を月4万円程度引き上げます」としており、引き続き、取り組みを強める。

【表題】通所サービス等利用促進事業の交付金

【結論】

○ 通所サービス等利用促進事業の交付金は報酬に組み込む。

【説明】

日中活動支援を利用するには送迎は必要である。また、医療的ケアを必要とする人の送迎には看護師の添乗も必要になる。現行の生活介護には送迎経費も含まれているとの解釈があるが、他の通所事業には送迎経費は含まれていない。送迎を行う事業所への通所サービス等利用促進事業の交付金は、実績に応じて報酬に含まれるようにする。

【表題】障害者総合福祉法の策定及び実施のための調査等

【結論】

○ 地域生活移行に向けた施設入所者、入院患者への実態調査等を実施する。

○ 新たな支給決定の仕組みのための試行事業や研究等を実施する。

【説明】

既に厚生労働科学研究費、総合福祉推進事業等で先行研究や試行調査が行われているが、加えて障害者総合福祉法の策定及び実施に関する調査等のための予算確保を行う。

障害程度区分に代わる新たな支給決定の仕組みの開発及び実施に関しては、試行事業による検証等、十分な準備を経るべきであり、またその過程は当事者、家族、事業者に的確に情報提供されなければならない。国は、そのために必要な予算を確保する。

障害者総合福祉法の骨格や内容について、当事者向けの分かりやすい資料を作成する必要がある。作成に当たっては、当事者の意見・助言を受ける。

Ⅱ-3 障害者総合福祉法の円滑な実施

【表題】障害者総合福祉法を補完する基金事業

【結論】

○ 障害者総合福祉法を円滑に推進し、その実効性を高めるために必要な事業であって、報酬体系に組み込むことが困難なものについては新たに基金を創設し、基金事業として実施する。

【説明】

現行の基金事業の成果を検証するとともにその位置付けを見直し、障害者総合福祉法を補完する上で有効な事業は、継続あるいは創設する。

例えば、施設、病院からの地域生活移行や、親元からの地域生活移行を推進するための基盤整備事業は重要である。具体的には、入所施設定員や精神科病院の病床数の削減を伴って地域生活への定着を支援する事業や、入所施設を事業転換して地域生活を支援する先駆的な事業所への支援などが考えられる。利用者個人に対しては、現行の「地域移行支度経費支援事業」(入所、精神科病院から地域生活への移行を促進するため、地域での生活において必要となる物品の購入について、一人当たり3万円の支援)のような事業が考えられる。

【表題】障害者総合福祉法の体系への移行を支援するための基金事業等

【結論】

○ 障害者自立支援法に基づく事業体系から障害者総合福祉法に基づく支援体系への移行を円滑に推進するために十分な経過措置期間を設けるとともに、利用者と事業者双方を支援する基金事業を設ける。

○ 都道府県が実施する基金事業と市町村が実施する基金事業を設ける。

○ 基金事業の期間は2段階とする。

①法成立時から法施行時まで
②法施行時から5年間

【説明】

障害者自立支援法への移行に関しては様々な基金事業が実施され一定の成果があったが、基金事業のメニューの選択は都道府県に任せたため、都道府県格差が生じた。こうした点を踏まえ、障害者総合福祉法の支援体系への移行に当たっては、基盤整備のような全国共通の事業は格差が出ないようにする。

この基金事業は、都道府県、市町村及び事業所が障害者総合福祉法への移行を円滑に行うことを支援するためのものであり、その領域は市町村の体制整備も含む自治体支援、就労支援、相談支援、権利擁護、人材養成・研修等の幅広い分野にわたる。

この基金事業は①法成立時から法施行時まで、②法施行時から5年間の二期に分けて実施する。

Ⅱ-4 財政のあり方

(1) 障害福祉予算

【表題】積算の根拠となるデータの把握

【結論】

○ 国は、従来の障害者の定義にとらわれずに、公的支援を必要とするとするすべての障害者の実数、生活実態(世帯状況、就業状況、収入、障害に伴う支出等)、市区町村ごとの障害関連の社会資源の実態を把握し、予算措置に必要な基礎データを把握すべきである。

【説明】

本来であれば、障害者総合福祉法についての骨格提言にあたり、あわせて財政面の積算(予算規模の推計)を行なうべきかも知れない。しかし、そのためには基礎的なデータが余りにも不足している。例えば、知的障害者やいわゆる谷間の状態に置かれている障害者の実数(知的障害者については、国際比較などからみて発表されている数値を疑問視する見解が少なくない)、障害者の生活実態(世帯状況、就業状況、収入、障害に伴う支出等)、また市区町村ごとの障害関連の社会資源の実態(事業種類別の設置数等)などについても正確な数値は公表されていない。したがって、国は、障害に関連した予算措置に必要な基礎データを把握すべきである。

【表題】財政についての基本的な視点

【結論】

○ 障害関連の財政規模については、OECD加盟国の平均値並みの水準を確保すること。

○ 財政における地域間格差の是正を図り、その調整の仕組みを設けること。

○ 財政設計にあたっては、一般施策での予算化を追求すること。

○ 障害者施策の推進と経済効果等の関連を客観的に推し量ること。

【説明】

積算作業の前提として、また制定後の障害者総合福祉法がより実質的で効力のある法律となるために、財政面でとくに留意すべき4つの視点がある。

1.障害関連の財政規模については、OECD加盟国の平均値並みの水準を確保すること。

障害者福祉の予算水準のあり方を考える上で、参考になるのがOECD諸国との比較である。

地域生活をささえる支援サービスの予算規模(障害者に対する現物給付。ほぼ障害者自立支援法によるサービス費用に相当)について、OECD諸国の対GDP比平均を計算したところ、0.392%(小数点第4位を四捨五入)であった(OECD SOCX2010。平成19(2007)年データ。34カ国のうち、データなしのアメリカ・カナダを除く32カ国を集計)。

ところが、日本は0.198%(1兆1138億円に相当)であり、OECD諸国のなかで第18位であった。これを平均値並み(GDPの0.392%)に引きあげるには、GDP比0.193%(約1兆857億円)の増額が必要であり、総計で現在の約2倍に当たる2兆2,051億円となる。また10位(0.520%)以内では約2.6倍に当たる2兆9,251億円となる。(平成19(2007)年の日本のGDP総額は562兆5,200億円)。

以上のデータから見ても、日本の障害者福祉予算の水準は、OECD諸国に比して極めて低水準であり、少なくともこれをOECD加盟国の平均値並みの水準に引き上げることが求められるが、その際、支出・給付面と国民負担率等の負担面を合わせて総合的に検討を行うべきである。

2.財政における地域間格差の是正を図り、その調整の仕組みを設けること。

障害者が障害のない人と分け隔てられることのない平等な地域生活を営むためには、市区町村を中心とする地方自治体において、最低限の社会資源を確保できるだけの財政力の担保が必要である。財政力に大きな開きがあるなか、現行の国庫負担基準については、結果的に施策水準の自治体間格差を助長するものとなり(基準を超えることに対応できる自治体とそうでない自治体との格差が顕在化)、また社会資源の地域偏在も目に余るものがある。

国は、ナショナルミニマムの保障という観点から都道府県並びに市町村が実質的に地域主権を発揮し、その責務を果たせるだけの財源を安定的に確保するとともに、財政の調整を図る仕組みを設けるべきである。

3.財政設計にあたっては、一般施策での予算化を追求すること。

従来、障害者に対する財政は、いわゆる特別枠の設定という形でこれが進められてきた。例えば、障害者自立支援法に伴う予算に関しては、自立支援医療から障害児関連施策、福祉的就労等に至るまで、そのすべてが障害者自立支援法関連予算という枠組みで編成されている。特別枠の膨張は予算獲得の戦略上、決して有利な条件とは言えず、他方、ユニバーサル政策の潮流からみても障害者の福祉施策に関する予算を特別の枠で設定することは好ましい形とは言い難い。

医療、障害児、住宅、就労に関連する施策の予算については、できる限り国民一般の施策に参入することを追求すべきである。

4.障害者施策の推進と経済効果等の関連を客観的に推し量ること。

障害者の福祉施策関連予算については、決して一方的な消費だけではなく、高齢者や子どもの支援策と合わせて、それ自体が地域の経済効果に波及するという見解が示されつつある。企業以上に全国規模で満遍なく設置の可能性が大きい事業所は障害者等の事業所であり、いわゆる雇用創出の観点からだけでも有効性が期待される。

また、経済面の波及効果だけではなく、偏見や無理解が根深い障害分野にあって、障害関連の事業所の存在そのものが地域住民に対する啓発効果や教育効果をもたらすことになろう。障害分野への財政支出は、地域のあり方や社会のあり方にもポジティブな影響をもたらすのだということを押さえるべきである。なお、これらに関する記述は、すでに厚生労働白書(平成22(2010)年版、156頁)においてもなされている。

【表題】障害者福祉予算の漸進的な拡充

【結論】

○ 障害者福祉予算の拡充が必要である。

○ 予算の引き上げに際しては、障害者総合福祉法の施行に伴うサービス利用対象者の増加状況と福祉サービスの拡充を踏まえ、目標達成年次を定めて漸次的に推進する。

【説明】

我が国は世界的にも突出した財政赤字を抱え、大震災からの復興・再生にも多額の費用が必要とされている。さらに、世界でも類を見ない少子高齢化社会を迎えている。当然、それを支える年金、医療、福祉等の社会保障制度のあり方とその財源確保は、我が国にとって大きな課題となっている。

障害者施策に係る制度並びに予算の問題は、これらと切り離して検討することは困難である。

したがって、障害者施策への予算配分の強化については、国民の理解を得る取り組みが重要と考える。特に、現行の障害者施策における質的充実に係る大幅な予算の拡充を求める場合は、医療や年金、福祉等を含めた社会保障全般との関連のなかでの取組みによって、漸進的に進めていくことが適当である。

(2) 支援ガイドラインに基づく協議調整による支給決定の実現可能性

【表題】支援ガイドラインに基づく協議調整による支給決定の実現可能性

【結論】

○ 支援ガイドラインに基づく協議調整による支給決定は、財政的にも実現可能である。

【説明】

支援ガイドラインに基づく協議調整モデルにおける費用につき、全国に先駆けて、平成15年度支援費制度の時点でガイドライン(*)に基づく支給決定方式を採用した二つの自治体(A市、B市。この内、A市は重症心身障害児者の地域生活モデルをガイドラインに組み込んでいる)の予算措置から見ても、支援ガイドラインに基づく協議調整による支給決定は、財政的にも実現可能である。

両市のガイドラインは、行政と障害者・家族、支援関係者の合議の下で策定されるため、これに基づく協議調整を経て支給決定された支援内容は、障害者本人や家族の満足度も高い。そのため、本骨格提言では障害者自立支援法の障害程度区分に代わる新たな支給決定の仕組みとしてこれに着目し、「支援ガイドライン」に基づく協議調整による支給決定を提案している(「Ⅰ-3選択と決定(支給決定)」参照)。

A市、B市における人口に占める手帳所持者の割合は、A市は4.01%、B市は6.21%である(全国平均は5.07%)。手帳所持者のうち区分認定を受けた者の割合は、全国平均3.68%に対して、A市は9.36%、B市は14.59%といずれもかなり高い。にもかかわらず、平成21年度の資料によれば、A市は障害福祉サービスに関する財政支出が全国平均の1.03倍、B市は1.15倍とほぼ全国平均にとどまっている。

さらに重度障害者の地域生活支援の一つの指標となる重度訪問介護についてみると、A市は全国平均の3倍、B市は7.5倍の利用者がおり、A市の障害福祉サービス費全体の19.5%、B市の障害福祉サービス費全体の19%を占めており、重度訪問介護の利用が、全国平均の数倍となっている。それにもかかわらず、総費用が全国平均程度にとどまっているのは、A市・B市ともに、訪問系サービスの利用が全国平均を超えている一方、単価の高い旧施設入所系サービスの利用が少ないことがデータ分析からは推察される。

支援ガイドラインに基づく協議調整モデルでは費用が青天井になるので障害程度区分は必要だという主張があるが、A市では、支援費の開始に合わせてガイドラインをホームページ等に公表したこともあり、初期には利用者の増加がみられたが、次第にガイドラインに基づく協議調整が有効に機能して、総利用量は平準化している。

現在の漸増分は、他自治体からの移動などによるものと思われる。

すべての自治体が、一定以上の支援ガイドラインに基づく協議調整を行うようになれば、徐々にその問題も減少すると思われる。

以上の通り、公開されている限定された資料から見てもA市やB市の支援ガイドラインに基づく協議調整は、アメリカ・カナダ・イギリス・スウェーデン等税方式でサービス支給決定を行っている国々で一般的であるだけでなく、わが国においても実行可能で、それほど多額の費用を要することなく、かつ区分認定にかかる費用も負担等も省略できるものと考えられる。

さらに、このモデルは地域移行の促進と地域生活の充実に寄与すると考えられ、障害者権利条約の批准の方向性にも合致するものと思われる。

(なお、本稿で用いたデータは、国民健康保険団体連合会にデータが上がる障害福祉サービス費の比較のみで、自立支援医療、補装具、地域生活支援事業、市の補助事業や、生活保護の介護扶助の利用等については検討されていない。)

(*)A市、B市においてこれまで採用されてきたガイドラインを本稿では一括して「ガイドライン」と記す。このガイドラインに着目して、本骨格提言で提案しているものを「支援ガイドライン」と呼ぶことにする。

(3) 長時間介助等の地域生活支援のための財源措置

【表題】長時間介助等の地域生活支援のための財源措置

【結論】

○ 国は、長時間介助に必要な財源を確保する。

○ 地域移行者や地域生活をする重度者に関する支援サービスに関して、他の支援サービスの場合における負担と支給決定のあり方とは、異なる仕組みを導入する。

○ 国は、地方自治体が、国庫負担基準を事実上のサービスの上限としない仕組みを財源的に担保するとともに、地方公共団体の財源負担に対する十分な地方財政措置を講じる。

【説明】

どんなに重度の障害者であっても、障害者権利条約第19条の「他の者と平等な選択の自由を有しつつ地域社会で生活する平等な権利」を実現することが求められる。長時間介助も、その人の障害特性やニーズ、医療的ケアの必要度等に応じて、日中の介助のみが必要な人から、24時間のパーソナルアシスタンスが必要な人まで、必要とされる介助内容は様々である。ただ、どんなに重度の障害者でも、またどこに住んでいても、地域社会で暮らす権利が満たされる為に必要な支援量は提供されるべきである。上記を満たし、各人のニーズに応じた支援が適切に届けられるために、財源を確保して支援することが必要である。

地域移行者の中には、出身自治体と居住自治体が分かれているケースが少なくない。住民票がある住所では地域生活が出来なかったため、入所施設や病院に長期間、社会的に入院・入所している、という住民票住所と実際の居住地が異なるケースなどである。こういう人が地域移行した場合、移行先が住所地となるため、施設や病院に近い自治体、あるいは重度者の地域移行を先進的に進めてきた自治体は、過剰な負担を強いられる可能性がある。これが、地域移行を阻害する要因の一つでもある。

そこで、施設・病院から地域移行する人や親元から独立して別市町村で暮らす障害者については、出身自治体が一定年度の財政負担(恒久的かどうかは検討)をした上で、居住自治体での支給決定をすることも検討してはどうか。例えば、入所施設や病院への入院・入所者の地域生活移行等を促進するため、居住地と出身地で費用を負担してはどうか。(下図参照)

図 費用負担

国 50.0%
都道府県 25.0%
居住地の市町村 25.0%
国 50.0%
都道府県 25.0%
出身地の市町村 12.5%
居住地の市町村 12.5%

ただし、入所施設やグループホーム、ケアホーム利用者の自立支援給付についての現行の居住地特例は当面継続しつつ課題を整理し、施設・病院等から地域移行する人等の扱いと併せて、そのあり方を慎重に検討することが必要である。

また、現状では国庫負担基準という形で実質的な予算上限を設定しているため、少なからぬ自治体が、国庫負担基準を事実上のサービス上限としている。はじめに予算ありき、ではなく、まずは障害者のニーズを中心に検討すべきである。そのニーズを積み上げる形で、必要な支給決定がなされる必要がある。障害者総合福祉法においては、障害者の実態とニーズに合わせ、「地域で暮らす権利」を保障するための財源を確保すべきである。

したがって、国庫負担基準については次のような考え方が考慮されるべきである。

(1) 地域で生活をする重度の障害者について、現行の国庫負担基準以上の負担は国の負担とすることを原則とする。ただ、そのことが無理な場合、例えば都道府県での基金化も含め市町村負担を大幅に引き下げる対応を考えるべきである。

(2) ホームヘルプについては、8時間を超える支給決定をする場合は、8時間を超える部分の市町村負担は5%程度に下げ、都道府県が45%を負担し、8時間以内の支給決定をする場合および8時間以上の支給決定の場合の8時間分については、市町村負担を26%とし、都道府県負担の1%を確保して使うようにする案を提示した。(下図参照)

なお、ホームヘルプにかかる国の負担割合は現行5割であるが、地域格差なく、必要とされるサービス提供が保障されるためには、現行以上の国の負担割合を検討すべきである。

図 負担割合

1日8時間以下の訪問系サービス
市町村26%
都道府県24%
国50%
1日8時間以上の訪問系サービス
市町村5%
都道府県45%
国50%

上記の図で8時間を境にしている理由は、重度訪問介護の区分6の国庫負担基準が約40万円で、月212時間程度の単価となり、1日当たり7時間超であることから、8時間を境にしている。