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障がい者制度改革推進会議 第35回(H23.9.26) 資料1-Ⅲ

Ⅲ 関連する他の法律や分野との関係

Ⅲ-1 医療

医療合同作業チームでは、障害者の医療をめぐる現状を踏まえつつ、障害者は保護の対象ではなく権利の主体であるとの考えに立ち、障害当事者の経験に即した視点から、諸課題への解決策につながるよう、制度の在り方につき検討を行った。(第1期(平成22(2010)年10月~12月)には精神医療を中心に、第2期(平成23(2011)年1月~6月)には、障害の種別を問わず、障害者の生活を支える地域医療を主題として検討)

【表題】「地域における障害者の生活を支える医療」の実現に向けた理念と制度基盤の構築

【結論】

○ 障害者が地域で暮らし社会参加できるようにするためには、適切な医療の提供が不可欠である。医療は、福祉サービス及び保健サービスとの有機的連携を確保しながら提供される必要があるという、障害者総合福祉法の理念は医療保健の分野にかかる法律においても確立されるべきである。

○ また、包括的なサービス提供の基盤となるものとして、個々の障害者に対する相談支援の際、当該障害者の福祉・保健・医療にわたるニーズに合った総合的な相談支援が自己決定への支援と一体的に提供されることが必要である。このような本人の希望を踏まえた総合的な支援が障害者総合福祉法のみならず、医療保健の分野にかかる法律においても実施できるよう、制度基盤の構築が有機的連携の下になされなければならない。

【説明】

障害者に対する医療は、疾病に対する治療を提供する医療(医学モデルに基づく医療)とは在るべき姿を異にする。医学モデルではなく個々の障害者の生活の状況を基盤として、日常生活を支える不可欠のサービスとして、医療が、保健、福祉、生活支援のサービスと有機的連携を確保しつつ提供されることが重要である。このような観点から、障害者に対する地域医療をさらに向上発展させていくための理念と制度基盤の構築が、障害者総合福祉法のみならず医療法、地域保健法等の関係法令のもとでも必要である。

【表題】 障害者の医療費公費負担制度の見直し

【結論】

○ 障害者の医療費公費負担制度の見直しに際しては、現行の自立支援医療制度のみならず、特定疾患治療研究事業、小児慢性特定疾患治療研究事業、高額療養費制度、都道府県の重度心身障害児者医療費助成制度等を総合的に検討の対象とする必要がある。

【説明】

地域で生活する障害者は、障害の種類にもよるが、外来等により反復継続して医療を受ける必要がある場合が多く、その経済的負担は本人の負担能力に比して過重となりやすい。また、必要な医療が適時的確に受けられるようにすることは障害の重度化を予防する観点からも重要であり、経済的負担の過重感からこれが妨げられることがあってはならない。こうした観点から、自立支援医療のみならず、様々な医療費公費負担制度に基づき講じられている負担軽減の仕組みを総合的に検討していく必要がある。

難病等の慢性疾患患者の多くは長期にわたる医療費に加えて、遠方の専門医療機関への通院交通費等の経済的負担が重く、緊急な対応が必要である。

【表題】医療的ケアの担い手の確保

【結論】

○ 重度の障害者の地域生活を支援するため、日常的に必要となる医療的ケアの担い手を増やしていく必要があり、介護職員等に関する法令上の規定の整備や医療関連職種に関する法令との調整が必要である。

○ また、障害者の高齢化に伴い、医療的ケアを必要とする人が増えることからも、その担い手を増やしていく必要がある。

○ その際、介護職員等が不特定多数の対象者へ当該医療的ケアを行う場合(入所施設でのケア等)と、担い手が個別的に特定の対象者へ特定のケアを行う場合(学校や在宅でのケア等)を区別し、それぞれに相応した柔軟な実施体制の整備が図られるべき。

【説明】

平成23(2011)年の社会福祉士法及び介護福祉士法の改正により、平成24(2012)年度から、たんの吸引と経管栄養について、看護師等だけでなく、一定の研修を受けた介護職員等も行うことができるようになった。

研修受講の便宜を図りつつ、これらの医療的ケアを担う介護職員等を増やしていくとともに、医療的ケアを日常的に必要とするより多くの障害者が地域で円滑に生活を送れるよう介護職員等が実施できる医療的ケアの範囲をさらに拡大することも検討する必要がある。

【表題】重度身体障害児者、重症心身障害児者の医療と地域生活

【結論】

○ 重度身体障害児者や重症心身障害児者にとっては、障害者総合福祉法による長時間介助サービスと相まって、地域生活を送るうえでのニーズに即した医療サービスが身近なところで受けられる体制と、日常的な医療的ケアが日頃介助している介助者によって行いうる体制を構築することが必要である。同時に、ショートステイも含めた施設への入院・入所機能の確保も重要である。

【説明】

障害が重度であっても、地域で生活できるよう支援を講じていくことが重要である。このためには、長時間介助サービスの提供と相まって、日常的な医療の提供が確保されること、また、生命と生活のセーフティネットとしての施設機能が確保されることが重要であり、そのような体制を充実させるための関係法令の整備が必要となる。

【表題】難病等のある障害者の医療と地域生活

【結論】

○ 難病その他の希少疾患等のある障害者にとっては、身近なところで専門性のある医療を受けることができる体制及び医療を受けながら働き続けることのできる就労環境が求められ、このための法令の整備が必要である。

○ 難病等について検討する会を設置するものとする。

【説明】

難病等のある障害者について、概念整理を進める必要があるが、難治性慢性疾患のある人も含むよう幅広くとらえ、それらの人に対しては障害者総合福祉法にもとづく生活支援が講じられるとともに、医療及び就労分野の法令において、医療を受けながら地域生活、特に働き続けることができる環境の整備について規定していくことが必要である。

新たに設置する難病等について検討する会においては、上記項目をはじめ、特定疾患治療研究事業の対象疾患や難治性疾患の研究のあり方、小児慢性特定疾患のキャリーオーバーの検討、「長期高額医療の高額療養費の見直し」等の議論を踏まえつつ、検討を行うものとする。

【表題】精神障害者の医療と地域生活

【結論】

○ 精神障害者にとっては、障害者総合福祉法において、安心して地域社会で自立した生活を送るための生活支援や相談支援が求められるが、医療の分野においては福祉サービスと連携しつつ、地域の身近なところで必要な通院医療や訪問診療を受けられる体制が求められる。なお、総合病院における精神科の設置が求められる。

○ 精神障害者が調子を崩したとき、家族との関係が一時的に悪化したとき等に、入所・入院ではなく精神障害者自身の選択及び医学的判断で利用可能なドロップインセンター(自立訓練等の提供とともに、安心して駆け込み、身をおける居場所としての機能も併せ持つシェルター)として、必要時にすぐに使えるレスパイトやショートステイが必要である。その際、障害程度区分に依らず使える仕組みとすることが必要である。

【説明】

地域移行、支給決定、相談支援の項におけるセンターの機能は、この項とも密接に関係する。(※ なお、人権保障の観点からの社会的入院の解消、地域移行等については、別項で記述する。)

【表題】発達障害者の医療と地域生活

【結論】

○ 発達障害者にとって、地域で生活できるためには、障害者総合福祉法に基づく生活支援とともに、身近なところで専門的な治療を受けられる体制の確立・整備が求められる。

【説明】

特に、発達障害の診断・治療に係る指針等を普及させ、これらを担う能力を十分に備えた医師等の医療従事者を増やすことにより、医療の質を上げる(不必要な投薬を避け、適切な支援を提供する)体制の確立・整備が求められる。

【表題】精神障害者に係る非自発的入院や入院中の行動制限

【結論】

○ 関係する法律(精神保健福祉法、医療法等)を抜本的に見直し、以下の事項を盛り込むべきである。

  • 精神障害者が地域社会で自立(自律)した生活を営むことができるよう、権利の保障を踏まえた規定を整備することにより、いわゆる社会的入院を解消すること
  • 非自発的な入院や入院中の行動制限については、人権制約を伴うものであることから、本人の意に反した又は本人の意思を確認することができない状況下での適正な手続に係る規定とともに、医療内容に踏み込んだ人権保障の観点から第三者機関による監視及び個人救済を含む適切な運用がなされることを担保する規定を整備すること
  • その際、第三者機関の必要経費は、国庫が負担すること

【説明】

精神科病院への入院や医療の提供は、原則、本人の自由な意思に基づいて行われるべきであり、これは自己決定権という基本的人権の一つである。やむを得ず非自発的入院や入院中の行動制限が行われる場合においては、この基本的人権の手続的な保障としての障害のない人との平等を基礎とした実効性のある適正手続が確保されるよう法制度の整備が必要である。

【表題】 入院中の精神障害者の権利擁護

【結論】

○ 精神科病院における権利擁護については、障害者総合福祉法における第三者の訪問による権利擁護制度と連携協力する観点から、精神保健福祉法の見直しの課題として、入院中の精神障害者も含む精神科病院における権利擁護を定着させるための制度(例えばオンブズパーソン制度)を位置づける必要がある。

【説明】

精神科病院の入院者については、現行の精神保健福祉法においては精神医療審査会があるが、現状では種々の問題を有しており、機能していない。そのため、入院中の精神障害者も含む精神科病院における権利擁護を定着させるための制度(例えばオンブズパーソン制度)が必要になっている。大阪府では、精神科病院に市民が訪問し、利用者の声をもとに処遇や療養環境の向上を目指す精神医療オンブズマンが制度(現在の療養環境サポーター活動)として取り組まれている。

【表題】精神障害者に対する精神医療の質の向上

【結論】

○ 精神障害者の入院ニーズを精査し、国並びに都道府県は精神科病床の削減計画を立て、入院に代わる地域医療の体制を構築することが必要である。

○ 医師や看護師等の精神医療に充てる人員の標準並びに診療報酬を一般医療より少なく設定している現行の基準を改め、適正な病床数と必要な人員を配置し、精神医療の質を向上するための根拠となる規定を設ける必要がある。

【説明】

推定で7万人と言われている、いわゆる「社会的入院」を解消するためには、入院に代わる地域医療の体制の構築は不可欠であり、これは地域移行、資源整備の項における計画とも密接に関連する。

精神医療の提供に当たっては、一般医療と同様、インフォームドコンセントを得るという原則を徹底するとともに、身体拘束や閉鎖空間での処遇等の行動制限を極小化するべきであり、そのためにも、地域医療の体制の構築と精神医療の質を向上するための根拠となる規定を設けることが必要である。

【表題】保護者制度

【結論】

○ 保護者制度の問題点を解消するために、扶養義務者等に代わる人権擁護制度の確立を検討すべきである。

【説明】

医療保護入院に係る同意を含む「保護者制度」の問題点を解消するために、自らの判断と選択による医療の利用が保障されるべきことを確認するとともに、非自発的入院に関し、障害者権利条約の求める人権擁護の観点から新たな仕組みを検討し、その仕組みの導入に伴い保護者制度は廃止する。

【表題】障害を理由とした医療提供の拒否の禁止

【結論】

○ 障害者、特に精神障害者の身体疾患合併症に対しては、一般病院において入院治療は可能であるにもかかわらず、実際の医療現場では障害者、特に精神障害者であるとの理由で身体的治療を拒否されることが多い。よって、全ての障害者を対象とした「障害を理由とした医療提供の拒否」を禁止するよう制度を改正し、医療法施行規則第10条3項についても廃止を検討する。

【説明】

精神障害者が精神疾患を持ちながら地域で生活するには、一般病院を含め身近なところで通院や往診などを受診できることが重要となる。特に身体疾患合併症に対しては「障害を理由とした医療提供の拒否」はあってはならず、このことは精神障害者にのみならず障害者全般に関わる重要課題である。その際、精神疾患の治療の場を他疾患と同様に一般医療の中に組み込み精神科医療へのアクセスをよくすることは、再発予防や早期発見につながるため医療法施行規則第10条3項についても廃止の検討が必要である。

【表題】障害者に対する歯科保健・歯科医療の充実

【結論】

○ 障害者、特にアテトーゼや行動障害を伴う障害者に対し、身近なところで歯科保健サービス及び歯科医療を提供する体制の整備・充実のため、院内で治療できるよう、物的設備の整備支援、歯科医師等に対する障害に関する研修、訪問治療等につき、医療法等の関連法令の規定の見直しが必要である。

【説明】

障害者にとって、歯科治療を円滑に受けることが困難な状況が依然として存在する。歯科医療及び予防は、障害者にとって、健康保持、学習発達(特に障害児)、生活機能の回復向上に重要であり、現状の改善が不可欠である。

Ⅲ-2 障害児

障害児合同作業チームは「障害者制度改革の推進のための基本的な方向性について」(平成22(2010)年6月29日閣議決定)で示された次の2点について、論点整理をした。

  • 地域の身近なところで提供されるべき障害児やその保護者に対する相談支援と療育等の在り方について
  • 障害児への支援が、利用しやすい形で提供されるための具体的方策について

1.児童福祉法関係

【表題】 権利擁護

【結論】

○ 障害児を含むすべての子どもの基本的権利を保障する仕組みの創設が望まれることから、児童福祉法でオンブズパーソンを制度化するよう、現行法に基づく権利擁護システムの検証を引き続き進め、社会保障審議会児童部会に検討の場を設け、制度の在り方について検討を進めるべきである。

【説明】

子どもは、児童福祉法に規定されている理念を踏まえ、ひとしく愛護されなければならないことはもとより、権利の主体とされなければならない。

障害の有無や程度にかかわらずすべての子どものための権利擁護の仕組みを市町村に設けるために、オンブズパーソンを、国連の児童の権利に関する委員会の勧告(CRC/C/JPN/CO/3, 2010.6.)を踏まえ、児童福祉法での制度化を目指して検討の場を設けるべきである。

障害児は、契約当事者が保護者であり、特に、施設への入所については家庭生活を奪われることにもなるため、子どもの視点から最善の利益を保障できる権利擁護の仕組みが必要である。既に自治体で取組まれている先行事例等もあることから、社会保障審議会児童部会で検討を進め、オンブズパーソンの制度化を図るべきである。

【表題】早期支援

【結論】

○ 母子保健法に基づく障害の早期発見を、保健指導や医療の保障にとどまらず、障害児が地域の子どもとしての育ちを保障されるよう、児童福祉法の子育て支援事業と連携し実施するべきである。

○ 健康診査等による要支援児に対しては、家庭への訪問・巡回等、家庭での育児支援や児童一般施策の活用を基本的な在り方とし、児童及び保護者の意思に基づいて、児童発達支援センター、医療機関及び入所施設等を活用できるよう児童福祉法に定める必要がある。

【説明】

母子保健法は、学校保健安全法、児童福祉法等に基づく事業と協調するよう規定されているが、現状は、障害の発見から療育や特別支援教育へと「特別な支援過程」につながるだけのことが多い。障害の発見を地域の子育て支援、さらに地域の学校への就学につなぐことの出来る制度設計が必要である。

【表題】障害を理由に制限されない一般児童施策

【結論】

○ 児童福祉法の保育所の入所要件には、障害を理由に利用を制限する規定がないことを踏まえ、今後の「総合施設(仮称)」及び「こども園給付(仮称)」の制度化において、障害児の入園が拒否されないように応諾義務を課す必要がある。また、必要な支援が確保されるよう、必要な規定を児童福祉法、「総合施設法(仮称)」及び「こども園給付(仮称)」に係る新法に設ける必要がある。

○ 障害児が、児童福祉法の放課後児童クラブへの参加を希望する場合には、障害を理由に拒否されるべきではない。また、指導員の加配や医療的ケアを必要とする子どもには看護師の配置や移動支援等、必要な支援が講じられるべきである。

【説明】

児童一般施策と障害児施策の両方があることによって、障害児が児童一般施策を利用しにくい、あるいは利用できないということがないようにするべきである。

子ども・子育て新システムの「子ども・子育て会議(仮称)」や「新システム事業計画(仮称)」等も、上記の理念の下に検討が進められるよう障害児、家族及び支援者が参画し、障害を理由に利用が拒否されないよう、かつ、必要な支援が確保されるよう児童福祉法、「総合施設法(仮称)」及び「こども園給付(仮称)」が制度化されるべきである。

放課後児童クラブについても、同様に整備されるべきである。

【表題】療育

【結論】

○ 障害者基本法の「可能な限りその身近な場所において療育その他これに関連する支援を受けられるようにするため」の規定を踏まえ、児童福祉法の療育の規定を整理するべきである。

○ 地域社会の身近な場所において専門性の高い療育(障害児に対する発達支援、育児支援、相談支援及び医療的支援)を利用できるように、児童福祉法の見直しを行う必要がある。

【説明】

障害児の個々の特性を踏まえた専門性の高い療育を身近な地域で得られるようにすべきである。児童福祉法に「療育の指導等」が規定されているが、規定の仕方が狭いため、地域社会の身近な場所で、思春期までの継続した療育が利用できるように整理すべきである。

【表題】通所による支援

【結論】

○ 児童発達支援センターは、地域の障害児を受け入れ、専門的療育を行うのみならず、積極的に地域に出向いて、家庭や児童クラブ等で障害児支援を行うことができるよう児童福祉法の必要な見直しを行うことが必要である。

○ 地域における障害児支援の機能強化を促進するために、保育所等訪問支援事業、巡回支援専門員整備事業及び障害児等療育支援事業の拡充を図るとともに、障害児支援の専門性を相互に提供し合えるようにするべきである。そのために、保育所等訪問支援事業の対象に児童発達支援事業および同センターも加えることが求められる。

○ 児童発達支援センターは、様々なニーズのある障害児に対応できる職員配置基準が必要であるため、保育士及び児童指導員に加え、看護師や療法士等の専門職を適正に配置できるようにする。

【説明】

障害児が地域の身近な場所で、必要な支援が利用できるようにするためには、児童発達支援センター等の機能強化が必要になっている。とりわけ、人口過疎地域においては、深刻な課題である。機能強化のために、児童発達支援センターが地域に出向いて支援を行えるようにすべきである。また、これまで障害児通園施設が障害種別に分かれて培ってきた「専門性」を、他の児童発達支援センターや放課後等デイサービス事業所等に提供して相互のレベルアップを図ることに加え、福祉型センターには看護師や療法士等を、医療型センターには保育士等の必要な職員を確保して発達支援機能を向上させるべきである。

【表題】障害児入所支援

【結論】

○ 障害児の自立生活にむけて、「自立支援計画」の策定を障害児入所施設に義務付けること。その根拠規定を児童福祉法、児童福祉施設最低基準に設け、運営ガイドラインを整備するべきである。

○ 入所時、入所後であっても、地域の子どもとして意識されるよう、児童相談所等に加え、市町村も関与できるようにすべきである。

○ 地域生活への移行にあたっては、在宅生活が可能となるよう地域資源を整備し、家庭に帰れない場合でも、障害児専門の里親制度の拡充や障害児を対象とするファミリーホーム等、できるだけ家庭に近い養育環境を整備すべきである。また障害児入所施設の小規模化やユニット化を促進することが求められる。

○ 新生児集中治療室(NICU)から在宅生活への移行において、障害が発見された直後の親に対するカウンセリングや、養育指導等の移行支援を担っている医療型障害児入所施設の母子入園支援は、有効であることから、これを拡充するべきである。

○ 入所施設は、社会資源の一つとして、保育所を含む地域機関や家庭への訪問、巡回型の支援が行えるようにし、すべての障害児入所施設にショートステイ枠を増設するべきである。

【説明】

児童養護施設等に義務付けられている自立支援計画は、障害児入所施設には義務付けられていない。障害児入所施設に、児童相談所等との協議にもとづき将来の自立生活に向けた「自立支援計画」の策定を義務化するべきである。地域の子どもとして育つことができるよう、市町村も入所決定等で関与できるようにし、長期休暇等のように自宅で過ごす際に、措置で入所した子どもであっても居宅サービス等、必要なサービスを利用できるようにすべきである。

入所施設は、小規模化し、できるだけ家庭に近い環境で養育できるよう整備するべきである。そのために、地域移行が可能となるようショートステイ枠の創設やファミリーホーム等の環境整備が必要である。

【表題】地域の身近な場所での相談支援体制

【結論】

○ 相談支援は、障害が特定されない時期から、身近な地域の通いやすい場で提供されるようにすべきである。障害児に固有のサービスと児童一般施策との併行利用に当たっては、相談支援事業者でのサービス利用の手続を簡素化し、本人・保護者の同意に基づいて福祉サービスの代理申請を可能にすることなど、障害児と家族のための利便のためのワンストップ化を進めることが求められる。

○ 地域子育て支援拠点事業に、専門的な研修を受けた相談支援員を職員として配置し、障害児相談支援事業所と連携を図ることが必要である。

【説明】

相談支援は、地域の身近な場所においてワンストップ型で提供されなければならない。相談支援事業者でのサービス利用の手続の簡素化が必要である。また、障害児に関する相談に対応できる職員の養成が必要である。

【表題】ケアマネジメントと「個別支援計画」

【結論】

○ 「個別支援計画」は、障害児・家族にとって身近な地域における支援を利用しやすくするため、福祉、教育、医療等の利用するサービスを一つの計画として障害児相談支援事業所が策定するべきである。6カ月程度の適当な期間で見直され、中期・長期的な見通しをもちつつ、支援の調整、改善が図られケアマネジメントされるよう児童福祉法の必要な見直しを行うことが求められる。

○ 「個別支援計画は、必要とする支援を受けつつ、障害児が意思(自己)決定したものに基づき、策定されるべきである。個別支援計画に障害児の意見表明の欄を設け、被虐待児童の場合を除き、保護者の同意なくしては実行できない仕組みの構築が求められる。

○ 乳幼児期の「個別支援計画」は、保護者・きょうだいへの支援を含むものとして策定されるべきである。

【説明】

障害児に対するケアマネジメントは、単にサービス利用計画の策定にとどまらず福祉、教育、医療等の総合的な計画として策定され、必要な期間で見直され、サービス調整を障害児及び保護者の同意のもとに行うべきである。

その際、「地域での育ち」を促進し、きょうだい支援を含めたものとするとともに、特に乳幼児期には保護者への「育児支援」を含めるべきである。

【表題】要保護児童対策地域協議会と地域生活支援協議会の連携

【結論】

○ 児童福祉法の要保護児童対策地域協議会と障害者総合福祉法の地域生活支援協議会(子ども部会)とで検討が重なる子どもについては、保護者の同意の下に合同で協議会を持てるようにすべきである。

【説明】

要保護児童対策地域協議会と地域生活支援協議会が、それぞれに障害児の検討をするのではなく、一元化すべきである。また、要保護児童対策地域協議会の構成員として、障害児福祉関係者(障害児相談支援事業所や児童発達支援事業所等)が加わり、検討できる体制を整えるべきである。

【表題】家族支援ときょうだい支援

【結論】

○ 障害児が家族の一員として、地域の子どもとして成長できるよう、児童福祉法において育児支援、家族支援を行うべきである。保育所等訪問支援事業の対象に「家庭」を加える必要がある。

○ きょうだいのグループ活動等を支援し、障害児ときょうだいが一緒に参加できる事業を児童発達支援センター等が実施できるよう児童福祉法の必要な見直しを行うべきである。

【説明】

障害児のいる家庭の孤立化を防ぐために、保育所等訪問支援事業の訪問対象に家庭を加え、保護者への障害理解、育児支援、家族支援等を行うべきである。また、きょうだいへの支援は現在のところ事業化されていないことから、活動支援や一緒に参加できるプログラムを実施できるようにすべきである。

2.学校教育法関係

【表題】寄宿舎

【結論】

○ 特別支援学校の寄宿舎の本来の目的は通学を保障することにあり、自宅のある地域社会から分離されないよう運用されるべきである。寄宿舎の実態を調査し、地域社会への移行に向けた方策を検討する必要がある。

【説明】

寄宿舎は本来広域学区である特別支援学校への通学保障のために設置されたものであるため、学校が休みになる土・日や長期休暇は家庭に戻るように、運用されるべきである。寄宿舎については、小舎制に再編することや、ファミリーホーム等から通学できるようにすることも含め、今後の在り方を検討すべきである。手話等の習得には一定の集団形成が必要であるという指摘があることから、寄宿舎の在り方を検討する際にはこの点を考慮する必要がある。

Ⅲ-3 労働と雇用

就労合同作業チームは、従来、障害者自立支援法等で規定されてきた福祉的就労を障害者総合福祉法でどのように規定するかの検討とあわせ、障害者雇用促進法等を中心としてすすめられてきた一般就労・自営施策のあり方についても検討するため設置された。委員は、障がい者制度改革推進会議構成員4名と総合福祉部会構成員6名から構成された。

本作業チームで検討した主な内容は、次のとおりである。

① 障害者基本法に盛り込むべき就労に関する基本的事項
② 障害者総合福祉法の守備範囲(労働分野との機能分担など)
③ 福祉と労働及び雇用にまたがる制度と労働者性の確保のあり方
④ 就労移行支援事業、就労継続支援A型・B型事業、生産活動に取り組む生活介護事業、地域活動支援センターや小規模作業所のあり方
⑤ 雇用率制度及び差別禁止と合理的配慮を含む、一般就労・自営のあり方
⑥ 多様な就業の場としての社会的雇用・社会的事業所・社会支援雇用のあり方

1.障害者雇用促進法に関わる事項

【表題】雇用の質を確保するための法改正

【結論】

○ 量だけでなく質としての雇用を確保するため、障害者雇用促進法を改正し、障害者権利条約第27条[労働及び雇用]で求められる労働への権利、障害に基づく差別(合理的配慮の提供の拒否を含む)の禁止、職場での合理的配慮の提供を確保するための規定を設ける。障害者雇用促進法にこれらの規定を設けることが困難な場合には、それに代わる新法(労働法)で規定する。

【説明】

障害者雇用促進法に基づく障害者雇用率制度は、主に量としての雇用の確保を意図したものであり、障害者権利条約第27条で求められる、質としての雇用の確保を担保するものではない。

したがって、公的機関及び大企業に限らず中小の企業においても、障害者が他の者と平等な雇用条件や昇給・昇進、希望職種・業務の充足といった雇用の質が確保できるようにするために、労働の権利、障害に基づく差別(合理的配慮の提供の拒否を含む)の禁止、職場における合理的配慮の提供の確保等に関する必要な規定を設けるべきである。

【表題】雇用施策の対象とする障害者に就業上必要な支援を認定する仕組み

【結論】

○ 障害者雇用率制度に基づく雇用義務の対象を、あらゆる種類の障害者に広げると共に、それに伴って大幅な引き上げが求められる雇用率達成のため事業主への支援を拡充する必要がある。また障害者が職場で安定的に就業するための合理的配慮の提供を含む、就業上必要な支援を明らかにする総合的なアセスメントを整備する。

【説明】

個々の障害者が具体的な就業の場においてどのような支援(合理的配慮の提供を含む)を必要とするかについて、当該障害者の就業にかかわるすべての利害関係者(障害当事者及び事業主も含む)がチームとしてアセスメントを行う仕組みを整備する必要がある。そうしたアセスメントは、状況の変化に応じた柔軟な見直しが求められる。

【表題】障害者雇用率制度および納付金制度の見直し

【結論】

○ 障害者雇用率制度の対象者の拡大に関連して、法定雇用率および納付金制度は、調査に基づいて課題と限界を検証し、法改正などに向けて必要な見直しを行うべきである。

【説明】

法定雇用率については、社会モデルに基づいた障害の範囲の拡大、就労系事業等への仕事の発注額等に応じて当該企業の障害者雇用率に算定する見なし雇用の制度化等を踏まえて、大幅に引き上げる方向での見直しが求められる。重度障害者を雇用した場合、1人を2人分として算定するダブルカウントについては、社会モデルに基づいた制度に見直すべきであるとの意見があった。

一方、雇用義務の対象とする障害者の範囲の見直しが先に行われるべきであることと、それに関連して、障害種別による雇用格差が解消されるような実効性のある取り組みをすべきである、という意見もあった。

障害者雇用納付金制度は、助成額の引き上げや給付期間の恒久化に加え、助成申請手続きの簡便化も必要である。また、助成金は事業主の申請により給付されるため必ずしも障害者の雇用を支えるために有効に活用されていないとの指摘がある。障害者の権利性を確立するためにも、障害者自身も申請できるようにする必要がある。

【表題】職場における合理的配慮の確保

【結論】

○ 事業主が障害者に合理的配慮を提供するのに必要な経済的・技術的支援を受けられるような仕組みとともに、合理的配慮が提供されない場合、苦情の申し立てと救済措置が受けられるような仕組みを整備する必要がある。

【説明】

就労系事業、特例子会社、重度障害者多数雇用事業所等での合理的配慮の実践例を企業に示すことで、企業の理解を求める。合理的配慮の類型化や事例のガイドブックの整備等も企業の取組みを進める上で有効と思われる。それにあわせ、合理的配慮に係る費用負担のあり方も整理する必要がある。

また、合理的配慮が提供されない場合、障害者が苦情を申し立て、救済措置が受けられるような第三者性を確保した仕組みについては、職場内および労働審判制度の整備を含めて平成24年度内を目途に得られる差別禁止部会および労働政策審議会障害者雇用分科会での検討結果などを踏まえ、適切な措置を講じる必要がある。

2.障害者雇用促進法以外の法律にも関わる事項

【表題】就労系事業に関する試行事業(パイロット・スタディ)の実施

【結論】

○ 安定した雇用・就労に結びついていない障害者に適切な就業の機会を確保するため試行事業(パイロット・スタディ)を実施し、賃金補填や仕事の安定確保等を伴う多様な働き方の就業系事業や、就労分野における人的支援のあり方を検証する。

【説明】

(1) パイロット・スタディの目的

現在の国の制度では、一般就労と福祉的就労しか選択肢がなく、しかも賃金(工賃)や位置づけ(労働者か利用者か)についても大きな乖離がある。そのため、両者の間に新たな選択肢をつくることや福祉的就労に労働法規を適用すること、さらには多様な働き方を保障することなど、種々の課題がある。

こうした課題を解消し障害者に適切な就業の機会を確保するため、就労分野における人的支援のあり方や、社会的雇用・社会的事業所・社会支援雇用(これらについての詳細は、就労合同作業チーム報告参照)等、賃金補填や官公需・民需の優先発注を伴う多様な働き方の制度化について実証的に検証することが、本パイロット・スタディの目的である。

(2) パイロット・スタディの対象

パイロット・スタディの対象は全国で80か所程度とし、下記のような事業所とする。

① 最低賃金の減額特例を受けている就労継続支援A型事業所
② 最低賃金の1/4以上の工賃を支払っている就労継続支援B型事業所
③ 箕面市等、地方公共団体独自で最低賃金をクリアするための補助制度を設け、その下で運営されている事業所の他、新たに起業する事業所等
④ 滋賀県及び札幌市等、地方公共団体独自の制度として障害者と障害のない者がともに働く職場形態となっている事業所

(3) パイロット・スタディでの検証事項

パイロット・スタディでの検証事項は主に以下の諸点とする。

① 障害者自身の働く意欲への影響やともに働く障害のない者の意識の変化
② 就労分野における人的支援のあり方
③ 対象とすべき障害者や事業所の要件
④ 事業者が提示する賃金への影響
⑤ 障害従業員の心身・労働能力の変化の状況
⑥ 収益の配分とその決定の仕組み
⑦ 事業者の生産性・付加価値引き上げの取組み
⑧ 民間企業と就労系事業が連携する取組み
⑨ 総合的アセスメントの仕組みなど、新たな就労系事業の制度化にあたって予想される課題の整理

【表題】賃金補填と所得保障制度(障害基礎年金等)のあり方の検討

【結論】

○ 賃金補填の導入を考える上で、現行の所得保障制度(障害基礎年金等)との関係を整理した上で、両者を調整する仕組みを設ける。

【説明】

就労系事業に従事する障害者が賃金補填を受ける場合、障害基礎年金等現行の所得保障制度との関係を整理した上で年金給付を賃金補填に振り替える仕組みや、賃金補填の対象となる障害者の認定の仕組み等の検討が必要となる。平成22年6月29日に閣議決定された「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」では、「障害者が地域において自立した生活を営むために必要な所得保障の在り方について、給付水準と負担の在り方も含め、平成25年常会への法案提出を予定している公的年金制度の抜本的見直しと併せて検討し、平成24年内を目途にその結論を得る。」とされる。賃金補填と所得保障制度(障害基礎年金等)の在り方についてもそれを関連づけて検討されるべきである。

なお、賃金補填の導入に当たっては、下記の点に留意する必要がある。

① 事業者が、モラルハザードを起こし支払う賃金を引き下げる等しないよう、生産性や付加価値を高めるとともに、障害のある従業員の能力開発により賃金補填額の縮小、あるいは賃金補填がなくとも最低賃金以上の賃金を支払うことを目指すような制度設計とすること。
② 賃金補填により労働市場の賃金決定にゆがみが生まれ、障害者以外の労働者の雇用の減少が発生しないようにすること。

【表題】障害者雇用・就労にかかる労働施策と福祉施策を一体的に展開するための体制の整備

【結論】

○ 障害者の雇用・就労にかかる労働施策と福祉施策を一体的に展開しうるよう、関係行政組織を再編成するとともに、地方公共団体レベルで雇用・就労、福祉および年金等に係る総合的な相談支援窓口(ワンストップサービス)を置く。

【説明】

現在、一般就労・自営は労働行政等、また福祉的就労は福祉行政の所管となっているが、それらを一体的に展開するには、中央レベルの行政組織を再編成するとともに、地域レベルで就労・生活支援にかかわる、ハローワーク、福祉事務所、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターおよび地方公共団体が設置する就労支援機関、地域生活支援協議会、発達障害者支援センターならびに特別支援学校等の関係機関のネットワークが有効に機能し、かつシンプルな仕組みを整備する必要がある。

また、常時介助等を必要とする障害の重い人びとも、希望する場合には、その能力を生かして働けるような就労のバリエーションを検討することも重要である。さらに、こうした関係機関ではコミュニケーションに支援が必要な障害者が利用しやすいよう、十分な配慮がなされる必要がある。

【表題】就労合同作業チームの検討課題についてフォローし、実現化をめざすための検討体制の整備

【結論】

○ 推進会議、およびそれに代わるものとして、障害者基本法に基づき新たに設置される障害者政策委員会のもとに就労部会または就労検討チームを設置して、就労系事業にかかる試行事業の検証を含む検討課題についての結論を得る。そのメンバーは経済団体、労働団体、学識経験者(労働法、労働経済学、経営学、社会保障論等の分野の専門家等)、障害当事者団体、事業者団体および地方公共団体等から構成する。

【説明】

就労合同作業チームではきわめて広範囲にわたる、一般就労・自営および就労系事業に係る課題について検討したが、構成員の専門領域が限られていたことや検討期間および時間が短かったため、結論を得るまでには至らなかった。

したがって、推進会議、およびそれに代わるものとして、障害者基本法に基づき設置される障害者政策委員会のもとに新たにつくられる部会または検討チームには幅広い専門領域の構成員を加え、十分議論を尽くし、結論をえる。

【表題】全国民のなかでの障害者の生活実態等を明らかにする基礎資料の整備

【結論】

○ 障害の社会モデルを基礎として雇用・就労施策を検討する基礎資料をえるために、国の基幹統計調査(全国消費実態調査や国民生活基礎調査等)において障害の有無を尋ねる設問を入れた全国調査を実施する。

【説明】

厚生労働省では、身体・知的・精神、3障害の就業実態調査や障害者雇用実態調査を行ってきているが、いずれも、手帳所持者やすでに雇用されている人等、限定された障害者集団の状況しか明らかにできない。障害ゆえに雇用・就労の機会を得がたい者は、それらの障害者以外にも数多く存在する。いわゆる制度の谷間で公的支援を受けることができない人びとを支援してこそ、障害者雇用・就労の裾野を広げることができる。

また、障害の社会モデルを基礎とした雇用・就労施策を検討する基礎資料として全国民のなかでの障害者の経済活動や生活実態を明らかにすることが重要である。そのためには、国の基幹統計調査(全国消費実態調査や国民生活基礎調査等の全国民を対象とした大規模社会調査)において、少なくとも一時点で病気や障害によって活動が一定期間以上制限されているかどうかを聞く設問を追加し、その調査結果を分析する必要がある。

Ⅲ-4 その他

Ⅰ-1 法の理念・目的・範囲との関連

【「能力に応じ」という表記】

○ 社会福祉法第3条は福祉サービスの基本的理念として、福祉サービスが「その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援する」ためのものと規定しているが、これは能力主義を想起させ「インクルーシブな社会を目指す」という改革の趣旨とは整合しないので削除する。

【障害者手帳】

○ 障害者基本法や障害者総合福祉法における障害者の定義については、従来の考え方の転換が図られたが、障害者手帳制度に関しては、今後その在り方が慎重に検討されるべきである。

【所管省庁を横断した総合的支援】

○ 障害者施策は、障害者総合福祉法による施策のみならず、住宅、所得保障等の施策が、所管の厚生労働省はもとより、文部科学省、国土交通省、総務省、財務省、経済産業省、法務省等全ての官庁により横断的かつ有機的な連携が取られながら実施されることに特に留意が必要である。これは、都道府県や市町村レベルでも同様である。

Ⅰ-4 支援(サービス)体系との関連

公営住宅や民間賃貸住宅の活用

○ 公営住宅の障害者優先枠を拡大する。

○ 民間賃貸住宅の一定割合を公営住宅として借り上げること、一定規模以上の民間賃貸住宅には障害者に配慮した住宅の設置を義務付けこれに公的補助を行うこと等、民間賃貸住宅への入居を進めるために必要な施策を講じる。

○ 民間賃貸住宅におけるグループホーム設置を一層促進する。
定員を4~5名とするグループホームは、一般の住居として扱い、建築基準法等による用途変更や防火壁等の工事を必要とする等の現在の厳しい運用を見直す。

○ 事業者に対する税制の優遇(不動産取得税、固定資産税、都市計画税等の減額もしくは免除)を設けるとともに、住居提供者に対する経済的支援策や優遇策を講じる。

一般住宅に住む障害者への家賃補助、住宅手当等

○ 一般住宅に住む障害者への経済的支援について、家賃補助や住宅手当の創設等を含め、関係する省庁による連携の下、検討を進める。

Ⅰ-5 地域移行との関連

地域移行・地域生活の資源整備に欠かせない住宅確保の施策

○ 長期入院を余儀なくされ、そのために住居を失う、もしくは家族と疎遠になり、住む場がない人には、民間賃貸住宅の一定割合を公営住宅として借り上げるなどの仕組みが急務である。グループホームも含め、多様な居住サービスの提供を、年次目標を提示しながら進めるべきである。

○ 保証人や緊急連絡先が確保できないために住居が確保できない入所者・入院者に対して、公的保証人制度を確立すべきである。

Ⅰ-9 権利擁護との関連

第三者の訪問による権利擁護制度と虐待防止

○ 平成23(2011)年6月に成立した障害者虐待防止法では、都道府県や市町村は虐待を防止するために、他団体と連携協力することとされており、この連携を強化することが重要である。それには、第三者の訪問による権利擁護(オンブズパーソン)を行う団体も想定される。

○ 障害者虐待防止法では、福祉施設で働く人等が虐待を発見した時には、市町村に通報しなければならないとされている。したがって、虐待の早期発見や通報に関しても、市町村と福祉施設で働く人やオンブズパーソンの連携が重要になる。

苦情解決機関(社会福祉法)

○ 苦情解決制度は、現行の社会福祉法に基づく仕組みを、権利擁護の観点から抜本的に見直す。そのポイントは下記の2点である。

  • 都道府県社会福祉協議会に設置されている福祉サービス運営適正化委員会の下の苦情解決合議体が、苦情を受ける当事者である事業所との関係で独立性を担保されていること。
  • この合議体によるあっせん、意見具申が苦情解決に当たって有効であったかを検証し、その機能を高めること。

モニタリング機関

○ 障害者総合福祉法の実施状況に対するモニタリングは、障害者基本法で示された国、都道府県、市町村に設置される「障害者政策委員会」あるいは「審議会その他の合議制の機関」(以下、モニタリング機関という)において行い、その結果に関する勧告を含む意見等は、国(所管省庁の大臣)に対して、または、都道府県および市町村の関係行政機関や地域の地域生活支援協議会等に報告される。

○ 市町村のモニタリング機関は、障害者総合福祉法の当該市町村(広域連合を含む)での施策展開状況や障害福祉計画の達成状況について評価・分析・問題点抽出(調査・審議)を行い、必要に応じて、当該市町村の関係行政機関をはじめ地域生活支援協議会等の関係機関や団体に対して改善の提案を行う。
なお、市町村のモニタリング機関の設置が市町村の任意となっている問題については、障害者施策の市町村格差をなくす観点から今後の課題として引きつづき検討する。

○ 都道府県のモニタリング機関は、市町村モニタリング機関から集められた全県的課題を整理した上で、その評価・分析・問題点の抽出(調査・審議)を行い、必要に応じて、当該都道府県の関係行政機関や地域生活支援協議会等の関係機関や団体に改善の提案を行う。

○ 都道府県、市町村のモニタリング機関には、実際にサービスを利用する障害当事者の参画が不可欠である。

○ 都道府県、市町村の地域生活支援協議会では、障害福祉計画の進行管理や次期計画の作成等において、モニタリング機関から提示された内容を踏まえた検討を行い、その整備水準を高めることとする。

○ 地域の全般的な課題については、障害者や相談支援機関がモニタリング機関に課題提起をすることができるようにする。

権利擁護と差別防止

○ 国及び地方自治体は、障害の有無にかかわらずすべての人が地域で共に安心して暮らすため、障害の理解、権利擁護や差別の防止等の必要性等の普及啓発に向けた取組みを行う。

○ 国においては、情報の提供、相談、支給決定プロセス等の福祉サービス利用全般における不利益取扱いを禁止し、差別事案が発生した時のあっせん・調整・相手方への勧告等の仕組みを法定化した差別禁止法制の制定が求められる。

○ 地方公共団体は、国の差別禁止法制を踏まえ地域の実情にふさわしい形で差別事案の解決のためのあっせん・調整・相手方への勧告等の仕組みを盛り込んだ差別禁止条例の制定が求められる。

なお、普及啓発については、権利の形成や獲得とその支援に関して、鳥取県や島根県で進められている「あいサポート運動」のような活動が参考とされるべきである。「あいサポート運動」とは、地域の理解が不可欠という考え方をもとに、障害のある人が地域の一員としていきいきと暮らすため、住民に障害の特性や障害のある人への配慮の仕方などを理解・実践してもらう運動である。平成21(2009)年より取組まれ、一般市民、障害者団体や県内外の民間企業等が“あいサポーター”として参加協力し、暮らしやすい地域社会づくりのために運動を繰り広げている。

民事法との関連

【成年後見制度】

○ 現行の成年後見制度は、権利擁護という視点から本人の身上監護に重点を置いた運用が望まれるが、その際重要なことは、改正された障害者基本法にも示された意思決定の支援として機能することであり、本人の意思を無視した代理権行使は避けなければならない。また、本人との利害相反の立場にない人の選任が望まれる。

○ 同制度については、その在り方を検討する一方、広く意思決定支援の仕組みを検討することが必要である。

○ 同制度において、被成年後見人であることが選挙権等のはく奪をもたらす欠格事由とされているなど、様々な欠格条項と関連しており、関係法の改正が検討されるべきである。