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第37回障がい者制度改革推進会議(H24.1.23) 松井亮輔委員 提出資料

インチョン戦略草案

2011年12月16日付け

以下は国連ESCAP(アジア太平洋経済社会委員会)ステークホルダーコンサルテーション会議最終日の成果文書(報告書)の一部である。(数字は成果文書の数字)

Ⅳ. アジア太平洋障害者の十年(2003-2012)の実施に関する最終評価のためのハイレベル政府間会合の成果文書の骨格への考察

27.ESCAP 事務局は、アジア太平洋地域の障害者のための権利実現のためのインチョン戦略草案(ドキュメントSDD/DIS/RSC_2011/1)を提出した。

28.ESCAP 事務局は、ステークホルダーコンサルテーションに対し、本文書は、ESCAP最終年関連アンケート調査および第一次および第二次アジア太平洋障害者の十年(1993-2002、2003-3012)の実施経験を基に、政府代表、市民団体代表からの意見を反映させて作成したと述べた。

29.事務局は、インチョン戦略が次の4つのセクション(項目)から構成されることを説明した。

  • Ⅰ 前文
  • Ⅱ 主要政策方針と原則
  • Ⅲ インチョンゴールおよびターゲット
  • Ⅳ 効果的な実施方法

30.インチョン戦略の第三セクション、つまりゴールおよびターゲット(INGOTS)には10のゴールと22のターゲット、35の指標が含まれる。

31.ESCAP事務局は、インチョン戦略は、インクルーシブで、バリアフリーで権利に基づく社会のためのBMF(びわこミレニアムフレームワーク)*、BMFプラス5**(BMF後半5年のための補足文書)、障害者権利条約、それらはこの地域で障害分野での政策の枠組みとして存在するが、その内容を繰り返すものではないと述べ、むしろ、インチョン戦略は、優先度の高い特定の目標とターゲットの新十年(2013-2022)の実施のための道具として存続することを意図したと述べた。この地域でのさらなる進展を測ることの促進も目的としている。

32.インチョン戦略草案は、書かれてあるように、***ステークホルダーコンサルテーション会議で初めて提示された。ステークホルダーからの意見やコメントを基にINGOTSの修正版はESCAP域内各国政府に提出される。この過程は、10月のハイレベル政府間会合の成果文書はステークホルダー、特に障害者が主体的にかかわれることを確実にすることを意図していた。

33.同事務局はさらに、INGOTSの草案の目的は、限られた時間枠(2013-2022)の中で優先度の高い成果の達成を確実にするため、2010 年6 月に開催された第一回ステークホルダーコンサルテーション会議での提案を基とし、ゴール、ターゲット、指標については、現実的で計測可能であるように設定したと述べた。

34.ステークホルダーコンサルテーションはアジア太平洋地域における障害者の権利実現のためのインチョン戦略の草案作成に関する事務局の努力に対し謝意を表明した。

35.ステークホルダーコンサルテーションは、2012年3月に開催予定の政府間準備会議に提出するインチョン戦略の草案に含める次の10の目標について合意した。

  • ゴール1:貧困削減と就労・雇用
  • ゴール2:政治参加と意思決定のプロセスへの参加促進
  • ゴール3:物理的環境、公共交通機関、知識と情報・コミュニケーションへのアクセスの向上
  • ゴール4:社会的保護の強化
  • ゴール5:障害をもつ子どものための早期介入と教育
  • ゴール6:男女平等と女性のエンパワメントの向上
  • ゴール7:災害準備と管理への障害の視点の統合
  • ゴール8:障害データの信ぴょう性と比較可能性の改善
  • ゴール9:障害者権利条約の批准・実施促進と国内法との一致の促進
  • ゴール10:国際・地域・小地域内協力の進展

36.ゴール、ターゲット、指標に関する議論において、次の分野横断的課題が上げられた。

(a) 障害者団体や自助グループは、家族の支援も得て、あらゆるレベルの意思決定に参加し、脆弱な人々の利益になるよう考慮する。

(b) 安全な食べ物、住居、衛生、きれいな飲料水、利用可能な保健サービスへのアクセス、社会保障等の基本的ニーズに関して、農村で障害のある人と家族が貧困な生活により被る困難。

(c) アジア太平洋地域の貧困状況において障害者権利条約の実施を促進する。

(d) WHOのCBRガイドラインの使用により、農村や辺境地で障害者権利条約を実施するための、コミュニティベースのインクルーシブ開発推進の重要性

(e) 自立生活の原則と実践(自己決定、障害者によるサービス管理、コミュニティでの施設以外での暮らし)。

(f) アジア太平洋地域で進行中の急速な人口移動(人口の高齢化)には障害が伴うこと、それに関するケアとサービスとの関連

37.セクションⅠの前文とセクションⅡの主要政策方針と原則が次のことが提案された。

(a) 上記に述べられた分野横断の課題に反映させる。

(b) 2010年10月に開始されたCBRガイドラインを、障害者権利条約の原則に基づく、貧困削減の取り組み方法として取り上げる。

38.さらにINGOTSに書かれた目的とターゲットでは、集中的で計測可能で、実施可能であることが強調されている。MDGs のようにESCAP 域内政府での開発のレベルが異なるのでそれぞれの政府は貧困状態を含む、国の状況に適したターゲット、指標の設定を検討出来る。

39.各ゴールのターゲットと指標に関しては特定の提案ができる。

40.ゴール1:貧困削減と労働・雇用

次の提案があった。

ゴール1に次のことが反映される。

  • (ⅰ) 障害者と家族の貧困緩和のためCBRガイドラインの採用を障害者団体が支援するよう奨励し、障害者の権利達成のため、主流の開発パートナーの努力を強調する。
  • (ⅱ) 労働・雇用の観点から、多くの機会を障害者が持てるような教育を行う。
  • (ⅲ) 1-3の指標が貧困削減プログラムを含めるように修正を検討する。

41.ゴール2:政治への参加および意思決定のプロセスへの参加促進

次の提案があった。

(a) 新しいターゲットとして、国と地方の権利擁護団体に、自助組織と家族のアドボカシーグループの参加促進、を加える。

(b) 障害のある若年層、知的障害者、心理社会的障害者、選挙権行使のため障害者のための合理的配慮とキャパシティビルディング、障害者、家族の団体の代表を含める。

(c) 次への障害者の参加を検討する:地方の司法機関、裁判官、開発セクターの意思決定機関、国内調整機関およびそれ以外の調整機関において様々な障害グループを統合する。(県・国および地方)

(d) 選挙関連資料、様々な障害者が利用しやすい手順、有権者としての障害者の登録のニーズに関する情報を含める。

(e) 追加として、国家選挙委員会またはそれに相当する組織への障害者とその団体の参加、を加える。

42.ゴール3:物理的環境、公共交通機関、知識・情報・コミュニケーションへのアクセスの増進

次の提案があった。

(a) 以下を検討する。

  • (ⅰ) ESCAP域内政府に、資源の限られた環境で暮らす障害者のニーズに合う、入手可能な支援技術や福祉機器に関する調査、開発、生産、輸出入を奨励する。
  • (ⅱ) 知識、生産物、支援技術、福祉機器、文化的言語的多様性のための技術を含める。
  • (ⅲ) ユニバーサルデザインによる地方のインフラの建設、修繕
  • (ⅳ) 新築の公共の建物や建設の企画、デザイン、モニタリングへの障害者の参加

(b) 以下を検討する。

  • (ⅰ) バリアフリーに関する法律の制定・実施の促進
  • (ⅱ) アクセシブルフォーマットによる知識、文化、コミュニケーションのリソースの促進
  • (ⅲ) 地方の公共交通機関をアクセシブルにすること。
  • (ⅳ) 空港と港およびバスターミナルを含めること。
  • (ⅴ) ニュースの音声化、教育的価値のあるプログラム。
  • (ⅵ) 政府刊行物をアクセシブルにすること。
  • (ⅶ) アクセシビリティ関連法や政策を採択した政府数
  • (ⅷ) アクセシビリティの国際基準を採択した政府数
  • (ⅸ) アクセシビリティの国際基準を備えた、オンラインの政府サービスや電子データでの政府刊行物
  • (ⅹ) 電話通信、図書館、美術館、劇場、スポーツ、観光のための合理的配慮に関する国のガイドラインのある割合
  • (ⅺ) 訓練を受けた手話通訳と要約筆記者数

43.ゴール4:社会的保護の強化

次の提案があった。

(a) 障害者のための恩典に加えて、一般の人の社会的保護プログラムを障害者が利用できるようにする。

(b) 盲ろう者とCBR(地域に根ざしたリハビリテーション)を特記する。

44.ゴール5:障害をもつ子どもの早期介入と教育

次の提案があった。

以下を検討する。

  • (ⅰ) 原因予防と児童の障害の発見(スクリーニング)に関するサービス
  • (ⅱ) 出産前の検診と中絶の選択の実施に関すること
  • (ⅲ) 原因予防、スクリーニング、早期発見・介入・教育のための技術開発
  • (ⅳ) 障害をもつ子どもの親を支援するコミュニティでのプログラム
  • (ⅴ) 一般学校において障害をもつ子どもと若年層の教育を支援する情報・資料を入手しやすくする仕組み
  • (ⅵ) ろうの子どものための手話教育と手話環境の整備
  • (ⅶ) アクセシブルフォーマットでの入手可能な指導用教材および学習教材、さらに利用可能な技術と用具の開発、生産、配布
  • (ⅷ) 障害をもつ若年層と高等教育

45.ゴール6:男女平等と女性のエンパワメントの向上

次の提案があった。

(a) このゴールに関係のある他の課題(例:保健ケア全般、HIV/AIDSをもつ女性障害者をリプロダクティブヘルスに加える。

(b) 以下を検討する。

  • (ⅰ) 障害をもつ少女と女性の強制的避妊の慣行の廃止
  • (ⅱ) 暴力、性的虐待を禁止し対応する法的枠組み
  • (ⅲ) 障害をもつ少年
  • (ⅳ) 地域と国の機関におけるジェンダーに配慮した政策とプログラム

46.ゴール7:災害準備・管理への障害の視点の統合

次の提案があった。

(a) 以下を検討する。

  • (ⅰ) 自然災害時に被災した障害者数は非障害者数と比較して高い。
  • (ⅱ) 災害のリスク削減と管理の仕組みにおいて障害者のニーズを述べるタスクフォースの設置への要望
  • (ⅲ) 被災した障害者へのカウンセリングの必要
  • (ⅳ) 次の内容のすべての段階への障害者の積極的参加:障害が含まれる災害準備・管理計画、国とコミュニティレベルでの災害発生の軽減、避難、復興のすべてのプロセスをカバーする手順を実施するマニュアルや基準。
  • (ⅴ) 国とコミュニティレベルで災害リスク削減と管理計画の意思決定に障害者団体が参加する割合
  • (ⅵ) 国とコミュニティレベルで障害を考慮した災害管理計画作成の割合
  • (ⅶ) 災害発生後の復興および再定住した障害者の割合

47.ゴール8:障害データの信ぴょう性と比較可能性の改善

次の提案があった。

(a) 以下を検討する。

  • (ⅰ) 国勢調査やサンプル調査に、ワシントン・グループによって開発されたICFを基礎とする質問を含めることを推進する。
  • (ⅱ) サブグループによる障害データ収集のために政府が障害者団体への支援を開始するようにする。
  • (ⅲ) 被災した障害者人のデータ収集

48.ゴール9:障害者権利条約の批准・実施促進と国内法との一致の促進

次の提案があった。

(a) 既存の法律で、障害者への直接的差別または実施上差別を生じさせる項目の修正または廃止

(b) 障害者権利条約の実施を支援する地域の仕組みの検討

(c) 障害の基礎において差別の形による合理的配慮の否定を定義づける法律

(d) 各国でのターゲットと指標に(権利条約の)オプショナルプロトコルへの批准を含むこと

49.ゴール10:国際・地域・小地域内協力の進展

次の提案があった。

(a) 適切な所に次のことを反映させる:効果的開発のため、障害を含めることの重要性と効果的開発のための国際協力の基本となる、援助効果に関する国際協力のための釜山パートナーシップ

(b) ユニバーサルデザインの原則に反映させる国際基準や制度を発展させるための多分野間での取り組みへの支援

(c) ユニバーサルデザインの原則との関連で、アジア太平洋地域で取り組まれる基準や制度の必要

50.ステークホルダーコンサルテーションは、新たなターゲットの追加や修正の場合には、同時に関連する内容の指標も設定することよう通知された。

51.ステークホルダーコンサルテーションは、INGOTSを含む、提案されているインチョン戦略の実施の支援にはESCAPの役割が重要であることを強調した。ESCAP事務局が情報交換や好事例の紹介等の努力を行っていることに謝意が表され、ステークホルダーコンサルテーションは今後も、特に地域内の途上国への支援を継続するようESCAP事務局を奨励した。

52.ESCAP事務局は、ステークホルダーコンサルテーションに、INGOTSへの上記の提案に対し謝意を表明した。新十年の10年間に実現可能で測りうるゴール、ターゲット、指標を確実にすることを政府間で検討するため、今回提案された変更点を主張するあらゆる努力が記述された。

インチョン戦略の効果的な実施方法

53.ESCAP事務局は、ステークホルダーコンサルテーションに対し、インチョン戦略はまた国、小地域、地域レベルで、2013年から2022年までの新十年のためのインチョン戦略の完全でかつ効果的な実施を各政府が行うため、「効果的な実施方法」の章をもうけることを通知した。

国レベル

54.ステークホルダーコンサルテーションは、第一次アジア太平洋障害者の十年、第二次アジア太平洋障害者の十年の間に設置された、障害に関する国内調整機関が軸となる役割を持ってインチョン戦略の実施を調整し、過程に多様な関係者のかかわるよう責任を持つことを認識した。障害者権利条約とその他の障害関連活動を行うその他の国の機関も、インチョン戦略の実施のために活用されるであろう。国連カントリーチームは、国連カントリーチームと実施パートナーに関する国連のガイダンスに沿って、各国レベルでの国連のプログラムに障害者の権利を含むことでインチョン戦略を支援するよう要請された。

小地域レベル

55.ステークホルダーコンサルテーションは、ASEAN 事務局、太平洋フォーラム事務局、南アジア地域協力協会(SAARC)事務局、さらに小地域の障害者団体等の小地域機関の関与の重要性を強調した。この点において、ステークホルダーコンサルテーションは、2010年から2020年までの障害に関する太平洋地域戦略、ASEAN各国首脳が2011年から2020年までをASEAN障害者の十年と宣言したことによる障害者の役割と参加の強化のためのBali宣言に注目する。

56.ESCAPは事務局本部に加えて、北・中央アジア、東・北東アジア、太平洋、南・南西アジアの4か所にある小地域事務所が、インチョン戦略支援のための小地域協力推進のために活動可能とであると記している。

地域レベル

57.ステークホルダーコンサルテーションは、インチョン戦略の地域での実施を支援するため、ESCAP事務局が主要な役割を持つことを強調した。具体的な活動内容は、規範設定の役割と会合、分析作業、各国のINGOTSに関する経験交流・好事例交換のための政府間プラットホーム等。ステークホルダーコンサルテーションは、政府を十分に支援し、障害者団体、ビジネスセクターを含む市民社会との有効なパートナーシップを構築するため、障害の活動をさらに強化するよう、ESCAP事務局に主張した。一方、ステークホルダーコンサルテーションは、インクルーシブビジネスの概念の重要性を強調し、このことがインチョン戦略に適切であれば反映されるよう要請した。

58.ステークホルダーコンサルテーションは、リージョナル常任委員会はインチョン戦略の実施における進展を見直す役割を持てること、INGOTSの実施において達成する進展を定期的、組織的見直しに関して政府を支援するための効果的方法となりうる、という見解を持った。ESCA務局は、ステークホルダーコンサルテーションが、ESCAP総会決議66/11に対応すべく、2012年のハイレベル政府間会合までの準備過程を支援し、障害者のニーズと抱負のための新十年の関連性と責任を確実に定期化することに合意した。

59.ステークホルダーコンサルテーションは、韓国政府が、ESCAP加盟国、準加盟国に対し、アジア太平洋地域におけるインチョン戦略の実施の支援のため、マルチドナー基金を設立する提案を歓迎した。

以上。

(日本語仮訳:公財日本障害者リハビリテーション協会)

注:

*BMF(びわこミレニアムフレームワーク)は、2003年から2012年までの第二次アジア太平洋障害者の十年の政策文書。滋賀県で行われた政府間会合で採択されたことからびわこの名まえが付けられた。7つの優先課題から構成される。

**BMFプラス5**(BMF 後半五年の補足文書)は、第二次アジア太平洋障害者の十年の政策文書であるBMFの補足文書で、2007年の政府間会合で採択された。

***ステークホルダーコンサルテーション会議

第二次アジア太平洋障害者の十年を推進するステークホルダー(関係者)によるコンサルテーション会議。2011年12月14日―16日までバンコクの国際会議場で開かれた。

原文はESCAPのサイトのこちらをご覧ください。

http://www.unescapsdd.org/disability/meeting-document/report-regional-stakeholder-consultation-high-level-intergovernmental