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障がい者制度改革推進会議 資料7 第37回(H24.1.23)

小山貴氏 提出資料

東日本大震災 岩手県の障がいのある方を取り巻く状況について

2011/01/16

きょうされん岩手支援センター

小山 貴

1.事業所関係について

被災施設の状況についてですが、岩手県沿岸部の障がい福祉関係の施設は、比較的大規模法人の大規模施設が多く、その立地も高台の上にある施設がほとんどであるため、大きな被害も比較的少なく済みました。これは、高台(山の上)は地代が安かった事と、田舎なので、「障がいを持った方の施設は人里はなれた僻地に置く」といったことに起因しているのではないかと思われます。

逆に、全壊流出した施設のほとんどは、地域で暮らすことを目的としたGHやCHでした。このGHやCHの利用者さん方はバックアップ施設のほとんどが前述の大規模法人であるため、被災後も本体施設に避難し、7月から8月にかけて仮設GH・CHに入居できました。また、入所施設で全壊した「はまなす学園」も、7月中旬に仮設の施設での生活が始まりました。

次に、日中活動系ですが、ほとんどの事業所が4月の中旬までに事業再開を果たしました。独自で再建をした施設や、他法人の協力の下、間借りで再開する等様々ですが比較的早期に事業所の再開を行った為に、地域で暮らす障がいのある方の日中活動の部分では特に大きな問題は有りませんでした。

その他、居宅介護事業所で4月5月と利用制限(時間数減と日数減)が掛けられたり、障がい分野は老人の介護事業の二の次と言った感じでしたが、徐々にその点も解消しつつあります。しかし、人的不足から「支給量はあるが、サービスを受ける時間に制限がかかっている」自治体もあります。

この様に、居宅介護事業を除く福祉サービスが比較的早期に再開したのですが、最後まで再開の目処が立たなかったのが大槌町の社協が運営する「ワークフォローおおつち」「ワークフォローおおつち福祉作業所」の2箇所でした。

「ワークフォローおおつち福祉作業所」は大槌町安渡地区にあった身体の作業所で、海の近くの川岸にあり津波で全て流失しました。また、主たる事業所の「ワークフォローおおつち」は精神の作業所で、元来、地区の児童館で指定避難所であった所を作業所として使い始めたといった経緯があり、建物がその地区の唯一の避難所となっていました。そのため、建物の被災は免れたものの7月末まで避難所として運用されており、避難所解除後に精神の作業所と身体の作業所を精神の作業所に統合し、8月17日にようやく事業再開をしました。

その再開を持って、県内すべての日中活動系の事業所が再開をしています。

2.県の動き

岩手県では各圏域の相談支援専門員の他、岩手県が派遣した県職員や内陸部の相談支援専門員を中心に4月5日から、震災の被害が大きかった陸前高田市など3市町に「障がい者相談支援センター」を設置しました。

この間、安否確認の他、障害者手帳の再発行等、公的手続きの支援を行い、障害者の現状と支援ニーズの把握等を行いました。

3.民間の障がい関連団体の動き

■ 岩手県社会福祉協議会

「東日本大震災障がい協・知福協合同支援プロジェクト」

岩手県社協内の各種団体の部分では、障がい者福祉協議会と知的障害者福祉協会が3月19日に「東日本大震災障がい協・知福協合同支援プロジェクト」を結成し、当初週2回のペースで被災地への物資運搬と現地ニーズ調査を行ってます。(7月からは週1回で11月末まで継続)

また、はまなす学園への人的派遣として知的障害者福祉協会では、県内外の知福協加盟施設職員を5月末までに534名の派遣を行いました。その他、陸前高田市にある入浴支援コンテナへの人員派遣も障がい協・知福協の会員施設から行っています。

12月から、現地の幹事施設に各圏域のニーズを調査し、その上がったニーズに対して支援を行うといった形になりました。

「東日本大震災障がい者支援活動推進プラットフォーム会議」

前述の合同プロジェクトの物資輸送終了後に、岩手県に入っている各種支援団体が情報の共有の場として多数参加しています。(1月12日まで50回開催)

当初この会議は「お互いの団体の活動を尊重し、情報の共有はするが、支援内容には口出しはしない。」というスタンスでの会合でした。

しかし、福祉施設と在宅障がい者の被害状況の漏れのない把握と、必要な場所へ確実な支援を繋げるために「東日本大震災障がい者支援活動推進プラットフォーム会議」と名称を改め、互いの連携をより深く強め支援につなげようという事になりました。

この会議では、各団体が把握した被災地のニーズに基づき、岩手県に対し「被災前の生活環境の確保支援」「身体障がい者が利用しやすい仮設住宅の充実」「仮設を利用したGH建築」等の要望をあげています。

また、この活動の中で「合同プロジェクト」の支援物資運搬も、現在では被災した障がい施設のみならず、高齢者施設や在宅障害者、また、施設職員やその家族についても支援の対象が広がっています。

東日本大震災障がい者支援活動推進プラットフォーム会議 参加団体
1 岩手県社協障がい者福祉協議会 ※ 11 岩手県被災地障がい者支援センター(CIL)
2 岩手県知的障害者福祉協会 ※ 12 岩手県
3 きょうされん 13 全社協全国社会就労センター
4 特定非営利法人難民を助ける会 14 日本セルプ協会
5 全国脊椎損傷連合会岩手県支部 15 日本知的障害者福祉協会
6 岩手県身体障害者福祉協会    
7 障害者110番 ※印の「障がい協」と「知福協」の物資輸送は「合同プロジェクト」として存続。
8 岩手県重症心身障害児者を守る会
9 岩手県療育センター
10 特定非営利法人 ゆめ風基金

名簿掲載順は岩手県社協作成名簿による

■ 現在の障がい関連団体の状況

現在、岩手県内で在宅の障がいのある方に対し、支援活動を行っている障がい関連団体は次の通りです。

①CIL盛岡 ゆめ風基金

  • 盛岡を拠点に活動
  • 田野畑村:現地法人に移送事業を委託。
  • 宮古市 :支援センターを設置。
  • 大船渡市:支援センターを設置。
  • 陸前高田市:現地事業所と連携。

②AJU自立の家

  • 釜石市:10月に支援センターを設置。

③JDF

  • 陸前高田市:1月末に支援センター設置。
    (・せきずい基金・きょうされん岩手が中心に設置準備中)

この中での一番大きな問題は移動の手段が無いことにあります。そのため、通院や買い物等の支援は大きな課題になっています。

その他、岩手県内各団体が事務局を中心に活動を行っています。

4.今後の課題について

移動の問題や、仮設住宅の問題、また社会資源不足の問題等、課題は山積です。ただし、その前段階で基本的な命を守るといった部分での問題を感じます。

■ 安否確認について

前述の岩手県が行った相談支援専門員による調査は知的と身体の手帳保持者、自立支援医療を利用されている方の名簿と避難所名簿を照合し、調査対象としたため、精神障がい者福祉手帳所持者の方に関しては、保健師が調査を行いました。ただし、保健師調査結果と相談支援専門員の調査結果がその後、現地で一つになることはなかったようです。

7月にきょうされん岩手として陸前高田市の相談支援専門員を訪問した際に、4月の調査の名簿を見せて頂きながら説明を受けました。この際の安否確認者は220名程であり、2010年度末の手帳保持者数1,397名からしても一部分の調査にしかなっていません。

3月31日時点での陸前高田市の避難所は81ヶ所、避難者数は13,474名となっておりましたので、避難者数からの推測でも800名程度の障がいをお持ちの方は避難をされていたことが予想されます。(陸前高田市の人口23,302名(2010年国勢調査))

この部分で数字に開きがありますが、安否確認が全ての障がいを持った方で出来たのか、行政機能を失った自治体では現在も被害状況の把握は出来ていないとの事でした。

この様な状況から、9月のNHKの調査や12月の毎日新聞の調査でも陸前高田市の回答は空白になっています。

また、仮設住宅入居者の状況把握に関しても、岩手県が12月上旬に行った調査においても、沿岸部で特に被害の大きかった陸前高田市、山田町、大槌町では仮設住宅に入居された方の数字は分かっていても、その中で障がいのある方の人数把握は出来ていません。

ここで、障がいのある方に関して、被災後の状況を一括で把握しているところが無いことが問題になります。

震災後の安否確認以後、障害がある方の状況を責任を持って把握するところがなく、結果、支援の手が行き届かない状況が続いている現状があります。

■ 個人情報開示について

2011年6月4日の「障害者の安否確認進まず、個人情報保護法が壁」という読売新聞の記事があります。内容は以下のようなものでした。「東日本大震災で被災した障害者の孤立が懸念される中、安否確認のために個人情報の開示を求めた障害者団体への対応が自治体によって大きく異なっていることが、読売新聞の調査で分かった。

宮城、岩手、福島の3県と33市町村に尋ねたところ、要請を受けた3県8市町村のうち、開示に応じたのは1県1市のみ。緊急時の支援に、個人情報保護法が壁となっている実態が浮かび上がった。

情報入手や移動が難しい障害者は取り残される例が多いだけに、安否確認と支援が課題だ。そのため、障害者団体が、氏名や住所などの個人情報を自治体に求める例が相次いでいる。

読売新聞が先月末から今月初めにかけて、岩手、宮城、福島3県と、被害が大きい沿岸部と福島第一原子力発電所周辺(警戒区域内除く)の33市町村に調査したところ、3県とも開示要請を受けたほか、直接要請を受けた市町村は8あった。このうち、開示に応じたのは岩手県と、福島県南相馬市だけだった。南相馬市では、安否確認のための職員不足から、「日本障害フォーラム」(東京)の要請を受け、身体障害者手帳か療育手帳(知的障害者)を持つ約1000人分のリストを渡し、訪問調査を依頼した。(2011年6月4日15時05分読売新聞)」

ここで、障がい者団体が求めた情報開示に対し、情報を開示したのは岩手県と南相馬市の1県1市とあります。

岩手県に問い合わせをした所、「日本盲人福祉委員会東日本大震災視覚障害者支援対策本部」に対してのみ情報開示を行ったとの回答でした。

その他、全日本ろうあ連盟が実施する聴覚障害者の実態調査、また視覚障がいの方への実態調査等に関しては県の協力がありましたが、その他の知的・身体・精神等の関連支援団体が求めた情報開示には個人情報保護法が大きな壁になり、一切の情報開示は認められませんでした。

すべての障がい手帳保持者を把握している県が、発災直後からの安否確認及び、その後の避難所生活や仮設住宅入居後の地域生活における問題を把握し、それに対して責任を持って継続的な支援を行うのであれば、障がい関連団体への個人情報開示は必要のない事であり、私共の様な障がい者団体が継続的に支援に入る必要もないと考えます。

ただし、現に支援の必要な方がいらっしゃるという事や、何らかの支援を必要とする行政や関連団体がいるという事は、公的な支援が必要な方へ十二分に行き渡っていない事実があるからで、そこに入っている団体への情報開示がなされないという事は、必要な方へ迅速な支援が行えません。今後の課題としてぜひ検討をしなければならない問題と考えます。

いずれ、どこかでまた災害は発生します。その時に今回の震災で表面化した問題が問題で無くなる様に、切に願います。