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シンポジウム 「もっと知ろう、デイジー教科書を!」
日時:2013年02月03日(10:30~16:00)
場所:戸山サンライズ 大研修室
 

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障がい者制度改革推進会議
第7回(H22.4.12) 資料1

交通アクセス、建物の利用に関する意見一覧

基本的な考え方

「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」について

その他

第七回障がい者制度改革推進会議 意見提出フォーマット
交通アクセス、建物の利用

基本的な考え方

移動や建物を含む諸設備の利用の権利について、障害者基本法等に明文を置くことの是非について、ご意見を賜りたい。

【大久保委員】

明文化が適当と考えるが、位置付ける法や規定ぶりについては実効性を担保できるような工夫をすべきである。

移動や建物を含む諸設備の利用の権利を障害者基本法に盛り込むことに異存はないが、国民の移動に関する基本法として、現在検討が進んでいる「交通基本法(仮称)」との整合性にも配慮すべきと考える。

また、知的障害のある人が、移動や建物を含む諸設備の利用の権利を保障する点で指摘するならば、たとえば以前国会へ提案された「交通基本法案」(第165回国会[臨時会]、平成18年、民主党・社民党共同提出)の第十八条では、移動制約者に配慮された交通施設の整備の促進等として、
「国は、高齢者、障害者等移動に関し制約を受ける者(以下「移動制約者」という。)が日常生活及び社会生活を営むに当たり安全で円滑で快適に移動することができるようにするため、移動制約者の移動に係る身体の負担の軽減に配慮された交通施設の整備及び輸送サービスの提供(既存の公共交通機関による移動が著しく困難な移動制約者に対する輸送サービスの提供を含む。)の促進その他必要な措置を講ずるものとする。」
と規定しており、「移動に制約のある者」=「身体的な障害のある者」であると認識している印象を受ける。

しかし、実際には知的障害のある人が移動に相当の制約を受けていることは自明であり、身体の負担の軽減だけではなく、知的・発達障害の面からも負担の軽減が図られるよう、実効性を担保できるような規定ぶりとすべきである。

【大谷委員】

移動のための設備、建物の利用の権利について、障害者基本法その他の法律(例えば差別禁止法)に明文を置くべきである。

人が様々な社会生活を営むには、居住する場所から他所に移動することそして目的地における建物等を円滑に利用できることが確保されている必要がある。しかしながら、現状において、障がいのある人が公共交通機関を利用して移動すること、また、建物等にアクセスすることに多くのバリアが存在しており、障がいのある人の社会参加を阻害する要因となっている。

そこで、障がいのある人が公共交通機関を利用して円滑に移動出来る権利及び不特定または多数の利用に供される建築物(これに付属する出入り口、廊下、階段、昇降機、便所、敷地内の通路その他の施設を含む)を円滑に利用できる権利を明文化すべきである。

【大濱委員】

障害者権利条約二十条にのっとって、より具体的に障害者基本法等に明文を置くべき。

障害者権利条約

第二十条 個人的な移動を容易にすること

締約国は、障害者ができる限り自立して移動することを容易にすることを確保するための効果的な措置をとる。この措置には、次のことによるものを含む。

(a) 障害者が、自ら選択する方法で、自ら選択する時に、かつ、妥当な費用で個人的に移動することを容易にすること。
(b) 障害者が質の高い移動補助具、装置、支援技術、生活支援及び仲介する者を利用することを容易にすること(これらを妥当な費用で利用可能なものとすることを含む。)。
(c) 障害者及び障害者と共に行動する専門職員に対し、移動技術に関する研修を提供すること。
(d) 移動補助具、装置及び支援技術を生産する事業体に対し、障害者の移動のあらゆる側面を考慮するよう奨励すること。

障害者は、「保護される客体から権利の主体となる」ことを考慮すれば、利用の権利は当然明文化しなければならないとともに、条文全体を見直す必要がある。

障害者基本法は理念法であるとされているが、法律自体が障害者本人に直接安心感をもたらす内容になっていないのではないか。

固有の尊厳や個人の自立の尊重、また、非差別などに関して障害者自身が自立や社会参加等に対してもっと自信が持てるような力強い内容にすることが必要である。

また、たとえば、障害者基本法の第十八条2項に「社会連帯の理念に基づき」とあるように障害者基本法は曖昧であるため、障害者が直面する現実を具体的に想起起しづらい。権利条約に基づき「移動の権利」として明記するべきと考える。

障害者基本法第十八条 (公共的施設のバリアフリー化)

2 交通施設その他の公共的施設を設置する事事業者は、障害者の利用の便宜を図ることによって障害者の自立及び社会参加を支援するため、社会連帯の理念に基づき、当該公共的施設について、障害者が円滑に利用できるような施設の構造及び設備の整備等の計画的推進に努めなければならない。

【尾上委員】

未だに繰り返し生じている乗車拒否や利用拒否の事態をふまえて、当然、明記すべきである。

いままで国等において移動や利用について曖昧な表現(安心して自由に)を使い「権利」という文言を避けてきた。そのことから合理的配慮を欠く様々な問題が派生してきている。特に移動については生活の基盤そのものを奪うことになり障害者基本法や交通基本法なかに明記すべきである。

福祉のまちづくり条例やハートビル法、交通バリアフリー法、バリアフリー新法は、いずれも、国・都道府県・市町村・事業者のできる範囲でのバリアフリー化・ユニバーサルデザイン化を促進させてきた。その成果は、基本的に評価できる。

だが、あくまで、「行政が事業者に基準を示し、事業者が基準を満たすことによって、(結果として)移動等の円滑化が図れる」ということを想定した枠組みである。そのため、障害者の移動や建物を含む利用の権利は積極的に位置づけられてこなかった。

この枠組みから転換を図り、障害者の移動・利用の権利を中心に据えた法制度にしていくためにも、明文化は不可欠である。

また、移動の権利とともに、「切れ目のない移動の確保」の明記も、障害者基本法、(ないしは、今後、制定されると言われている交通基本法)になされる必要があると考える。「切れ目のない移動の確保」の明記の上で、電車やバス、地下鉄等の公共交通機関のバリアフリー化の推進の一方、STSといった個別的な移動サービスを拡充していくことが必要である。

【勝又委員】

必要だと思う。

【門川委員・福島オブザーバー】

障害者が社会の一員として活動するにあたって、移動の権利と建物を含む諸設備を利用する権利が保障されることは必要不可欠であり、障害者基本法等において当該権利を明文化する必要があると考える。また、同時に、そうした権利を実現するために、移動手段や諸設備の供給者や管理者に対して、障害者に当該移動手段や諸設備を利用させる義務についても明文化する必要があると考える。なお、そうした義務には、あらかじめ移動手段や諸設備を障害者にとって利用しやすいものとして調えておくという義務のほか、そのように調えることが難しい場合には個別に人的な対応をする義務や、行政機関が、自らが供給者や管理者となっている移動手段や諸設備はもとより、民間の移動手段や諸設備の供給者や管理者に対して適切な指導監督や助成助言を行う義務をも含む広範な内容とするべきであると考える。

【川﨑委員】

障害者基本法において明文化すべきである。

【北野委員】

A.明文化すべし。

R.障害者権利条約の目的は、各国の障害者が、他の市民と平等にその社会に参加・参画する権利を保障するものである。その権利を保障するために、その第9条で、物理的環境・輸送機関・情報通信・公共的施設及びサービスに対するアクセス権(利用権)とそのために必要な適切な人的及び技術的な支援を保障している。

このことは、19条の自立生活権の(c)項「一般住民向けの地域社会サービス及び施設が、障害者にとって他の者との平等を基礎として利用可能であり、かつ、障害者のニーズに対応していること。」にも関係している。

19条の自立生活権(他の市民と平等にその社会に参加・参画する権利をふまえた地域社会で生活する権利)は、その(a)項で、特定の生活施設(入所施設や病院)での生活を強制されずに、本人の選択に基づく地域生活をする権利と保障しまた(b)項で、地域社会での社会参加・参画に必要な支援サービスを利用できる権利を保障し、(c)項で一般社会全体のバリアフリー化とユニバーサル化を義務づけている。この(a)(b)(c)の3つの権利が相まってすべての障害者の地域生活権は、担保される。

ただし、地域生活権は必ずしも地域自立生活権を意味しない。施設と地域生活の違いは、その生活の場の規模や地域性の問題ではない。すべては、誰がその日中の社会生活(社会参加)とそれ以外の暮らしの生活を仕切っているのかに掛っている。支援者の支援等を活用しながら本人がそれを仕切っているならば、そこに如何に多くの支援者の手や息が掛っていようと、支援者がその管理の都合で誘導した(仕切った)ものでなければ自立生活と言えよう。

その意味でも、移動や建物を含む地域社会の諸設備の利用の権利(利用権=アクセス権)が重要である。(a)項と(b)項だけでは、支援者に仕切られて、決められた障害者だけのルーチン活動を行う作業所やグループホームが生き残ってしまう。大切なことは、普通の市民が行う活動に、障害者も希望すれば参加・参画できる、移動権・居住権を含むり利用権(アクセス権)の保障である。

さらに言えば、今後、奈良県の下市中学校のような問題を決して許してはならないのだ。段差のゆえに車いすの新入生の入学が拒否され、その理由がその学生ひとりのために、多大な改装費を支出することは過剰な負担(Undue Hardship)にあたるという訳だ。しかし、この理屈は通らない。なぜなら、学校等の公的機関が基本的にバリアフリーでユニバーサルであることは、権利条約第9条及び19条(c)項に規定された利用権(アクセス権)として、国の最低条件であって、過剰な負担論は全く成立しない。もしその法的根拠が薄弱であるとすれが、今後の総合バリフリー法(案)で、国にそのことを明確に義務付けねばなるまい。それをふまえて、この最低条件を超えて民間のシステムが障害者個人に対して合理的配慮を行う場合にのみ、過剰な負担論はかろうじて成立するケースが起こりうるだけである。

そして、今後、地域主権戦略会議等で議論されるであろう、施設・公物設置管理基準や計画等の見直しにおいて、万が一にも、基礎自治体に、障害者を含む市民のアクセス権(利用権)に対する差別的な裁量権を認めるような規制緩和が許されてはならない。

障害者を含む市民のアクセス権(利用権)を障害者の権利と支援に関する基本法(旧障害者基本法)及び総合バリアフリー法(案)で、明確にし、その最低基準(強制力あり)で、下市中学校のような事件が起こらないようにし、さらに、誘導基準(強制力なし)で基礎自治体の創意・工夫をサポートできる仕組みがあるべきである。

【清原委員】

障がい者を含むすべての国民にとって、社会において、様々な設備(交通機関などを含む社会資源)を利用し、また本人の意思により自律的に移動できることは、基本的人権の重要な構成要素であると考えられることから、基本法等においても、適切な形で明文化されることが必要と考える。

【佐藤委員】

必要である。障害者権利条約第9条の要請でもある。

【新谷委員】

障害者基本法には「アクセス」の定義を置き、建物・施設にとどまらず情報なども含むアクセス権を基本的人権として規定すべきと考えます。

繰り返しの議論となりますが、障害者基本法で個別分野(今まで議論してきたのは、労働、教育、医療、障害児、政治参加、司法手続き)の平等・非差別原則、配慮義務、施策義務を謳う場合の効果に疑問を感じます。分野ごとの差別のあり方やその救済を含めた権利性の規定は、障害者差別禁止法が担うものであり、分野ごとの施策・福祉サービスは障害者総合福祉法や個別分野法が担当するものと考えます。障害者差別が著しく、施策の遅れが大きい分野を例示として抜き出す象徴的な意味は理解できますが、例示した場合には受け落ちている分野が必ず出てきて、それへの対応も考慮しておくことが必要です。障害者基本法に求められるのは、障害・差別・アクセス・コミュニケーションなどの基本的な概念の定義や各法令間の総合調整機能であり、個別法で問題が起こり、疑念が生じた場合に解決の指針となる理念を明示することにあると考えます。

【関口委員】

利用権についての明文を置くべきである。

原則は、建築基準法等の法規に定めるべきである。

(エレベーター等構造的なバリアフリー化だけでなく、精神障害者に柔軟に対応できる人材を適所に配置することが必要である。)

【堂本委員】

障害者権利条約第9条第1項、第18条第1項、第20条の規定を踏まえ、障害のある人が障害のない人と同等の権利を有することを法律で明文化することが望ましい。

移動の自由の保障並びに施設及びサービスの利用の確保は、障害のある人が社会生活を営むために必要不可欠であるにもかかわらず、現実には次のような例があり、改善する必要がある。

  • 車椅子利用者が公共交通機関や公共施設の利用拒否や制限を受ける。
  • 点字ブロックや音響式信号機等がないために視覚障害のある人が道路を安全に歩行できない。
  • 車いすマークの駐車場に障害のない人が駐車してしまい、障害のある人が利用できない。
  • オストメイト対応のトイレが少ない。

なお、「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」では、商品又はサービスの提供について、以下のとおり差別の定義を設けている。

(参考) 障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例

第2条 (第1項省略)

2 この条例において「差別」とは、次の各号に掲げる行為(以下「不利益取扱い」という。)をすること及び障害のある人が障害のない人と実質的に同等の日常生活又は社会生活を営むために必要な合理的な配慮に基づく措置」という。を行わないことをいう。

(一号、二号省略)

三 商品又はサービスを提供する場合において、障害のある人に対して、サービスの本質を著しく損なうこととなる場合その他の合理的な理由なく、障害を理由として、商品又はサービスの提供を拒否し、若しくは制限し、又はこれに条件を課し、その他不利益な取扱いをすること。

(四号乃至八号及び第3項省略)

【中西委員】

移動と建物の利用についての権利について、障害者基本法で諸施設を利用することは権利であるという原則を明記するほかに、バリアフリー新法を改定してその権利性を明記すべきである。

またこれに伴い、障害の程度に関わりなく誰もが移動できる環境や地域の状況(過疎地・積雪寒冷等)を踏まえた移動環境の整備や移動の自由に関する施策の明文化も必要である。そのためには、障害者にとって制限や制約がない一般の公共交通機関の自由な利用とSTSといった個別移動システムの充実が重要である。特に個別移動システムの利用にあたっては、通常の公共交通機関を使用するよりも過度な負担が生じないための措置も必要である。

【長瀬委員】

障害者の権利条約の第9条と第20条に基づいて、明文を置くべきである。その際には、利用の権利の人権としての確立と、その定義の明確化が求められる。

*交通アクセス、建物の利用に関する本意見書について、川内美彦氏(東洋大学教授)、高橋儀平氏(東洋大学教授)、秋山哲夫氏(元首都大学東京大学院教授)の意見を参考にさせていただいたことを感謝と共に記します。

【久松委員】

移動や建物を含む諸設備の利用の権利について、障害者基本法等に明文を置くことが必要である。聴覚障害者に必要な移動・建物の利用に必要な情報へのアクセスについても明文化すべきである。

<聴覚障害者が利用するバリアの具体例>

①エレベーター利用時の緊急呼び出し

高い建物にはたいていエレベータが取り付けられている。エレベーターは密閉空間とも言え外部との直接的な接触ができない構造になっている。通常は特に問題なく利用できるが、地震などの災害が起きて、緊急停止した場合は外部とのコミュニケーションが一切取れなくなってしまう。緊急呼び出し用ボタンを使っても双方向の会話は音声のみ可能であり、音声の聞こえない聴覚障害者には会話ができない。

そこで、こういった緊急事態が起こってもエレベーター内に電光掲示板やミニモニターを設置することによって、文字や手話による双方向の会話を可能にする必要がある。

また、最近の性能の良いエレベーターは通常でも「○階に止まります」や「ドアが閉まります」といった音声による案内が流されるが、聴覚障害者にはそれが聞こえない。何らかの情報を流す際は、それが聴覚障害者にも伝わることが可能かどうかという観点を持って設置することが必要である。

②高速道路無人料金所の利用

聴覚障害者の場合、高速道路料金所の無人料金所で障害者割引の適用を受けるときの手順が問題になる。聴覚障害者には無人精算機のアナウンスが聴こえないので、何らかの音声情報を流す際は、それが聴覚障害者にも伝わることが可能かどうかという観点を持って、音声の代わりに目で視認できる機器を設置することが必要である。

③ドライブスルーの利用

郊外等のドライブスルーは、注文機械との音声による応答を通して品物を注文するシステムがあるが、聴覚障害者はこれを利用することができない。わざわざ、車から降りて建物の中に入って注文することになる。聴覚障害者でも一般の人と同じようにドライブスルーを利用したいという要望がある。

車社会であるアメリカでは、「オーダー・アシスト」を導入している例がある。聴覚障害者が、ドライブスルーの注文機械の前に車を止めて、「オーダー・アシスト」の青いスタンドのボタンを押してから商品受け取りの窓口までに車を移動させ注文用紙を受けとってその場で注文内容を書き、商品を受け取るしくみになっている。そのような方法も若干不便ではあることから、機器の改善のみならず建物の構造にも踏み込んだよりよい改善・導入・普及を図るべきである。

【松井委員】

アクセスの権利は、障害者基本法などで明文化されるべきである。

【森委員】

障害者基本法等に移動や建物を含む諸設備の利用の権利を明文化することは是非とも必要なことである。明文化をもとに、障害者週間をはじめ、さまざまな場面を活用して障害のある国民とともに障害のない国民に「誰もが暮らしやすい社会」の構築に向けた取り組みに関する理解とともに障害理解の促進を行うことが重要である。そのためには障害者権利条約の批准に向け、合理的配慮についての考え方を国民全体に浸透させ、超高齢社会における「誰もが暮らしやすい社会」を築くことに関して国民の関心と意識の向上を図る必要がある。

「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(以下、バリアフリー新法)」のについて

1、旧法も含めてバリアフリー新法が果たして来た役割の中で、積極的に評価すべき点について、ご意見を賜りたい。

【大久保委員】

バリアフリー新法を積極的に評価するならば、次の点が考えられる。

  • 交通事業者、地方自治体行政主体がともに施設や車両などのバリアフリー化に取り組んだこと。結果、大都市圏はもとより、地方都市の駅等においてもある程度エレベーターやエスカレーターの設置が進んだことで、身体障害者・高齢者のみならずベビーカーで移動する子ども連れや、大きな荷物を携行する旅行者などにとっても非常に便利になった。
  • 交通事業者においては、車いすを利用する人や視覚障害のある人に対する案内や誘導などを職員研修に盛り込むなど、ソフト面でも一定の合理的配慮を果たそうとする姿勢が出てきたこと。
  • 建築物や公共機関だけでなく、道路や都市公園など、障害のある人の生活圏にバリアフリーやユニバーサルデザインの施設が広がってきたこと。

しかし、指摘しなければならない課題は、現行のバリアフリー新法も「高齢者、障害者等の移動又は施設の利用に係る身体の負担を軽減することにより、その移動上又は施設の利用上の利便性及び安全性を向上すること」(国土交通省HPより抜粋)に主眼が置かれており、知的・発達障害のある人へ配慮した移動等の円滑化はほとんど手付かずで放置されている、という点である。

【大谷委員】

バリアフリー新法は、利用者に公共交通機関、建築物の利用の権利を認めたものではないが、公共交通事業者や一定規模の建築物の施工主に設備等のバリアフリー化を義務付けたことによって障がいのある人の公共交通機関や一定規模の建築物の利用が促進されつつあることは評価できる。

【大濱委員】

2000年に制定されたバリアフリー法は、新法も含めて障害者の生活全体に好影響を与えた。とくに、公共交通機関や不特定多数の者が利用する公共施設のバリアフリー化は、障害者の消極的な生活の意識を大きく変えた。

社会参加、自立生活、移動など、今では障害者全体が積極的に活動することは当たり前になり、社会を変えた新法を含めたバリアフリー法は高く評価すべきである。

国が一定のバリアフリー基準を設けたことで、意識も高まり、車いすでも利用できる施設が多くなった。大規模店舗や大都市部の大型駅で改善がされた。

バリアフリーがある程度進展した点が評価できる。また公共交通機関、建築物といった個別だった法律が「まちづくり」といった総合的な取り組みに変わった点が評価できる。

【尾上委員】

第一は、旧法において、旧法成立から10年間の期限を定め、目標数値を定めて整備を進めてきたことである。

これらの鉄道駅舎のエレベーター設置等、目標設定された事項については、旧法成立時にはバリアフリー化展開を現出したと評価している。

第二は、市町村が、都市計画の一手法として、主要な旅客施設を含む重点整備地域を定め、事業者毎に、バリアフリー化目標と期限を定めた基本構想を策定できるようにしたことである。

第三は、交通バリアフリー化の必要性等を各種バリアフリー化整備の進展と共に市民各層に渡って、継続的に広報周知してきたと思えることである。

ただ、これらの進展の一方で、後の質問項目にある地域間格差をもたらしたいことも大きな課題として指摘しておかなければならない。とりわけ、交通施設の内重点整備施設である駅舎の定義、5000人以上の乗降客については、地域の判断、区市町村が柔軟に決定できるよう、利用者数の規模制限を外すべきである。交通事業者の逃げ道を排除する必要がある。

また、目標設定がされた項目の中でも、未達成のものについて今後どのように達成させるかが課題である。

【勝又委員】

公共施設におけるバイアフリー工事が進んだこと。

【門川委員・福島オブザーバー】

バリアフリー法の積極的に評価すべき点は、バリアフリーを社会全体で取り組むべき責務として明記した点にある。また、一定の制約・制限のもとではあるものの、ハード面でのバリアフリー化の基礎的な条件整備がなされたことも、積極的に評価すべき点であろう。なぜなら、交通機関や建物等のバリアフリー化が同法によって実際に進んできたことによって、バリアフリー化の必要性がより多くの人々に認識されるようになる、という好循環を生み出した側面もあるからである。また、交通機関や建物等のバリアフリー化が進むことによって、障害者や高齢者の社会参加が一層進み、障害者理解や高齢者理解の広がりにもつながったということも言えるだろう。

【川﨑委員】

バリアフリー新法以降に作られた建物等において、バリアフリーが実現されたこと。とくに都市部においてはバリアフリーが進行したと評価できる。

【清原委員】

三鷹市の場合、バリアフリー法が果たした役割としては、障がい者や高齢者をはじめ、公共交通を担う鉄道事業者、バス事業者、タクシー事業者や商工関係者など、幅広い関係者が連携して、「三鷹市バリアフリーのまちづくり基本構想」を策定し、事業展開が着実に図られ推進してきたことである。

【佐藤委員】

一定の建築物や交通施設の新設・大規模改修時に移動等円滑化基準への適合義務を課した。

市町村が重点整備地区を指定し、事業者・障害者や高齢者を含む市民参加の協議会を設け、バリアフリー化の基本構想を策定し実施する仕組みを作った。

【新谷委員】

バリアフリー新法を受けて、移動に関しては「公共交通移動等円滑化基準」が策定されたことや、公共交通事業者等が「旅客施設や車両等を整備する際の義務基準」が定められたこと、また「公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン」と「公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン」によって、公共交通機関の利用環境の改善が図られていることは評価できます。

ただ、整備ガイドラインは、「高齢者、障害者等をはじめとした多様な利用者の多彩なニーズに応え、すべての利用者がより円滑に利用できるよう、旅客施設の望ましい整備内容を示したものである。公共交通事業者等は本整備ガイドラインに従うことが義務付けられるものではないが、本整備ガイドラインを目安として施設整備を行うことが望ましい。」ということで、公共交通事業者等の努力目標となっています。環境改善を進めるには、高齢者・障害者に関する社会の意識向上と、「交通施設バリアフリー化設備整備費補助金」の充実など施策の後押しが必要と考えます。

補足ですが、上記のガイドラインでは聴覚障害に関わる規定が他の障害に比べて少ないように感じます。ガイドライン策定の委員構成に偏りがありますので、委員構成を見直しガイドラインの補充検討をお願いしたいと思います。

【関口委員】

バリアフリーという概念が社会に浸透した。

しかし、精神障害者の手帳所持者に対する交通費減免について、国は消極的であり、明らかに直接差別である。

社会的入院者が退院し、地域で暮らすことを想定して、バリアフリー法が成立しているわけではなく、精神障害者への配慮に欠けている。

精神障害者の高速バス、航空機料金を身体障害者と同様に割引とすべき。

【堂本委員】

第一に、配慮すべき障害者の対象範囲が拡大されたこと。従来の身体障害者だけではなく、知的障害、精神障害、発達障害を含むすべての障害者が対象範囲とされた。

第二に、バリアフリー化基準に適合するように求められる施設等の範囲が拡大されたこと。従来の建築物、公共交通機関、道路だけでなく、路外駐車場、都市公園も対象となり、各施設等のバリアフリー化が推進された。

第三に、バリアフリー化に係る基本構想を市町村が策定するに当たって、当事者の参画を可能にしたこと。これにより、利用者の視点を十分に反映したバリアフリー化の取組みが行われるようになった。

【中西委員】

  • バリアフリーの建築物や交通関係は、障害者福祉の所管省庁であった厚生行政で所管されていたが、それが本来の担当省庁のもとで推進されたことおよび、そのための法令が整備されたこと内容の充実と実効性に改善がみられた、
  • 内容についてはいまだ不十分であるものの、10カ年の整備計画を数値を示して実行した。
  • 市町村が「基本構想」を策定することができるようにしたことで、地域に根ざした形で障害当事者の声をバリアフリー施策に反映できる道を開いた。
  • 都内においては東京駅より100km圏の駅はすべてバリアフリー化されつつあり、ら48%にまで飛躍的に改善された。
  • 全国のエレベータ化も2%かバスについても低床スロープ化を基準とできたために、主要都市においては完全バリアフリー化に近付いた。

【長瀬委員】

旧法のハートビル法は現在と同様、政治的に激動期であり、細川護煕政権、羽田孜政権、村山富市政権と3つの政権を経験した1994年に誕生し、物理的なバリアフリーを政治的そして行政的課題として明確化した役割は大きかった。

新法では、対象を点や線から面に拡大した点と、対象者に知的障害者、発達障害者、精神障害者をはじめとするすべての障害者が対象となった点が評価できる。前者については、2001年の運輸省と建設省の統合による国土交通省の誕生が背景にあり、その正の効果である。

さらに、重点整備地区に関する基本構想の作成に関する協議及び基本構想の実施に係る連絡調整を行うための協議会について障害者の参加が記載されている点は、障害者の権利条約が求める、障害者の参加とも重なり、評価できる。

課題としては、民間の建築物に関するバリアフリー化の進展の不足が挙げられるが、全体としては、権利性に基づかない問題点はあるものの、整備が比較的進んできた点は評価できる。

【久松委員】

駅や車両等に視覚情報・聴覚情報を提供する設備を設けることが定められ、聴覚障害者のために電光掲示板が駅や車両に設置されることになったことは評価できる。

しかし、電光掲示板を設置しても、事故や延着等のアナウンス情報や緊急情報を即時に電光掲示板に文字表示しての情報提供はまったくと言ってよいほど行われていない。また古い駅舎や車両などにはまだ設置されていないのが問題である。このようにバリアフリー新法は、情報アクセスの視点では障害者への考慮が不十分な点が多い。

聴覚障害者の場合は、「移動」そのものではなく「移動に必要な情報」へのアクセスの面で大きな不利益(ハンディ)を持つことを配慮し、「移動に必要な情報」についても明確に定義し、音声情報を的確にかつ音声情報と同時に表示する体制を整備すべきである。

今後、情報バリアフリーやコミュニケーションバリアフリーの総合的なバリアフリー法(「情報・コミュニケーション保障法(仮称)」)を検討することになると思うが、これと明確に区分する意味で略称として呼称されている「バリアフリー新法」を「移動バリアフリー新法」と言い換えていただきたい。

【松井委員】

バリアフリー法によって、とくに大都市における鉄道の駅舎(ホームへのアクセスなど)や駅員の対応、および路線バスの低床化などが、近年かなりすすんできたことは、積極的に評価できる。

【森委員】

(1)身体障害者に加え知的、精神、発達障害を含む全ての障害のある人が対象となったこと。

(2)市町村が、移動等の円滑化を図ることが必要な一定の地区を重点整備地区とし、重点的かつ一体的な推進に関する基本構想を作成できるとしたこと。

(3)基本構想作成において当事者が参画できる体制がとられたことにより、利用者の視点をより反映できる環境が保障されたこと。

(4)段階的・継続的な発展を図っていくための“スパイラルアップ”の導入や高齢者や障害者等の自立した日常生活と社会生活を確保することの重要性について理解を深めるための“心のバリアフリー”が国の責務として新たに定められたこと。

(5)バリアフリーからユニバーサルデザインに進展してきている。

以上の点について、評価できると考える。

2、地方都市、農村における輸送機関の縮小やバリアフリー整備の遅れは、障害者及び高齢者の生活に与える影響が大きい。現行法適用対象外の既存建物、既存交通施設の段階的変更と支援策についてどう考えるか。

【大久保委員】

知的障害のある人が鉄道やバス等を安心して利用するための支援策や環境整備については、既述のとおりほとんど手つかずといってよい状況にある。また、「移動支援」は原則として日常的な通園・通学・通所・通勤等には利用できないことも考えると、知的障害のある人の交通アクセスは、公共交通機関の乏しい地方ではより制限された環境にあると言える。

このような環境下において、知的障害のある人の移動を支えるには、タクシーの積極的な利用(運転手によるサポートなど)や福祉サービス事業者等との連携によるコミュニティバスの運行(車両への介助員の派遣)、移動支援のより柔軟な運用などが考えられる。

もう一点指摘すべきは、「地方都市や農村部における輸送機関の縮小やバリアフリー整備の遅れ」については、障害者施策としてのみではなく、わが国の人口動態や地域社会の変容としての課題も有しているという点である。

たとえば、現在国土交通省で検討が進んでいる「コンパクトシティ」の考え方を全国で採用するのであれば、中山間部に住む移動困難者は都市中心部へ移住することになるため、それを前提としたバリアフリー化整備を検討する必要がある。そうではないとしても、わが国が少子高齢化による人口減少という人口動態から、地方都市や農村部において生活圏域を維持できない地域が出てくることは不可避である。その際、バリアフリー化整備の優先順位をどのように考えるかは、地域の実情によるであろう。

これらは、障害者施策というより人口動態や都市計画上の課題ではあるが、そうした障害者施策以外の施策を抜きにして、障害のある人の生活を考えることは不可能と考える。

【大谷委員】

義務化の対象とされる特定建築物の規模が2000平米以上とされているが、対象となる建築物の規模が大きすぎる。この基準では多くのコンビニエンスストアやファミリーレストランなどがその対象外となってしまう。より小規模の建築物も義務化の対象とすべきである。一方、義務化が過度な負担となる規模の建築物についても助成金の交付等によって一層のバリアフリー化を促進すべきである。

現行法では、2010年度までにバリアフリー化を図る対象となっているのは、1日の乗客数が5000人以上の駅となっているが、今後、段階的な対応が必要だとしても、全ての駅をその対象とすべきである。1日の乗客数が5000人未満の駅は駅全体の70パーセントを超えているとされており、障がいのある人が居住する場所が異なることによって駅利用の格差が生じる状況を放置することはできない。

【大濱委員】

現在、1日当たり平均利用者5,000人以上の鉄軌道駅(2,797駅)については、2010年度までに段差の解消を100%にする目標が設定されている。また、航空旅客ターミナルの21箇所は、既既に平成13年度までに100%段差解消されている。

しかし、それらは全て、1日あたり平均利用者数が5,000人以上の旅客施設であり、1日平均利用者5,000人以下は段差の解消はじめ、誘導用ブロック、障害者用トイレなどの設備が整備されていない状況であることは大きな問題として捉える必要があり、1日平均利用者5,000人以下の鉄軌道駅(約4,000駅)を対象に、今今後後10年間に段階的に段差解消を図り、地域間格差を是正する必要がある。このほか、バスターミナル、旅客船船ターミナルの段差解消もそれぞれ目標が設定されているが厳しい状況である。

障害者も含めて、全ての国民が利用する公共交通機関に対して、合理的配慮を求めて提提起起したが、予算との兼ね合いでこれは「不釣合いな又は過重な負担を課さない」の原則に反することになるのか判断が難しい。

よって、地方都市・農村こそ既存施設および交通機関を対象として、助成(全額助成)を実施すべきである。

地方都市・農村の鉄道駅のホームかさ上げやスロープ設置は全額助成していくべき。

地方都市・農村の駅では、例えば、跨線橋橋へのエレベーター設置の予算が確保できない場合は、当面は線路を駅員とスロープで渡れるようにする改造を行うなども暫定的な解決方法としては、とらざるを得ないので、その助成を行うべき。

既存建物へのバリアフリー設備改造も、補助していくべき。

大都市部以外のバス事事業者で都市部バスの中古を購入して運営することが通常になっている事事業者のある地域には、中古のノンステップバスを購入する際にも(中古の1ステップ・2ステップバスとの差額相当の)補助を行うべき。また、その際に、スロープ等の修理費なども全額助成すべき。

それとともに、今後新造するバスは高速バスタイプ(空港連絡バスなども)も含め、すべてバリアフリー設備を義務付け、それらが15~20年後に中古車として出回るように。特に鉄道がない地域における路線バスについて特に留意すべきである。

現行法適用対象外の施設について、合理的配慮は創意工夫で行なえるのではないか。現行法適用対象外の施設に、バリアフリー整備基準を満たさない代わりの代替案をどうしていくのか調査するべきと考える。

【尾上委員】

現時点から翻ると、旧法の制度的しくみは「一日の乗降客5000人以上の駅舎」を対象にする等、地方都市や農村と大都市とのバリアフリー格差をもたらすことを(意図していたかは別にしても)内包していたと言わざるを得ない。

現行法のバリアフリー化できる資力とやる気のある市町村及び事業者のみを想定したしくみでは、地方都市・農村部と大都市部では、格差が広がるばかりである。

この間の地方交通の疲弊と相まって、地方都市・農村におけるバリアーの相対的増大は、早急に解決しなければならない課題である。

そのために、地方都市・農村部に適合したバリアフリー化整備基準の創設及び目標数値と期限の設定、さらには、地方都市・農村部に適合したミニマム移動権・利用権の保障の観点を入れた都市計画・交通計画の策定が必要であると考える。

いずれにせよ、移動権や利用権を念頭に置いた新たな支援策を考えるべきである。

【門川委員・福島オブザーバー】

現行法適用対象外の建物や交通施設等についても、適宜改善を促すべきであり、そのための財政支援の仕組みも充実すべきである。具体的には、既存設備の通常の維持管理や補修に際して併せてバリアフリー化工事を実施することをより強力に推進する(助成措置等)ことが必要であると考える。そうでなければ、大規模・利用者が多い・新しいといった施設のみがバリアフリー化されることになり、都市と地方の格差をさらに一層拡大することになる結果にもなりかねない。

また、そもそも、地方都市、農村における公共交通機関の縮小やバリアフリー整備の遅れは、交通施策の根本に関わる問題であると考える。道路や線路があっても、タクシーやバスや列車が走らなければ、そしてそれらに乗ることができなければ、障害者や高齢者は移動することができない。障害者や高齢者の移動の権利を保障するためには、基盤整備としての道路(高速道路を含む)整備や新線(新幹線を含む)整備においてのみバリアフリー化が実施されることだけではなく、バスやタクシーなどの暮らしに身近な公共交通機関を維持しバリアフリー化することが必須である。また、いわゆる地方ローカル線や並行在来線こそバリアフリー化を積極的に推進し、その機能を高め有効活用することを真剣に検討すべきである。そうでなければ、バリアフリー化が進んでいないがゆえに利用者が少なく不採算になってしまうタクシー・バス・鉄道が軒並み廃業してしまい、地域経済の活力をも失う結果となるだろう。国が地方における交通体系の維持のための条件整備としてバリアフリー化を全面的に支援することが必要であると考える。

【川﨑委員】

地方の自治体において、既存の建物の変更や赤字路線の維持はかなり財政的に苦しいものがあると考える。高齢化対策も含め、国が支援し計画的に進めていくことが必要。

【新谷委員】

地域格差の問題は、障害分野にとどまりませんので、総合的な施策の中で検討すべき課題と考えます。既述しましたガイドラインなり交通施設バリアフリー化設備整備費補助金の利用状況の調査を実施する必要があると思います。

【関口委員】

早期にバリアフリー化し、整備することが必要である。

青森市の無人駅(JR)は、障害者が利用できない設計となっている。

青森市内のほとんどの小中学校もバリアフリーはない。

あるいみ、格差の象徴となりつつある。

【堂本委員】

既存建築物についても、バリアフリー化基準に適合するよう努力義務が課せられているが、これを支援する効果的な政策がとられていない。高齢者や障害のある人が頻繁に利用する施設については、これらの人たちが円滑に利用できるよう、建築物の改修等に係る補助金等による誘導策を検討すべきである。

このことと併せて、ハード面における施設の不備を、マンパワーによる介助やバリアフリーに関する適切な提案を行うバリアフリーアドバイザーなど、ソフト面を充実することでカバーすることが必要である。

また、旅客施設については、平成19年7月に策定された「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン」を基に整備を進めることが求められる。

【中西委員】

公共交通については、地方都市・農村部はバスが中心である。しかし、地方部のバス事業そのものが行き詰まりを見せる中で、地方都市・農村部のバスのバリアフリー化は遅々として進んでいないのが現状である。

また、特に農村部の場合、家からバス停までの距離や移動経路のバリアといったことも考慮に入れないと、家から目的地までの連続した移動が確保されない。自動改札の普及、無人駅など障害者の乗降を阻害する要素が増えていることも、バリアフリー化停滞の要因となっている。つまり、移動の権利の確保、という視点から考えたとき、単にノンステップバスを地方部にも普及させたり、主要駅をバリアフリー化するだけでは問題の解決にはならない。既存の公共交通機関のみならず、コミュニティーバスやドアツードアの移動手段などを組み合わせて移動の権利を確保していく必要がある。

既存建物や既存交通施設のバリアフリー化については、その段階的バリアフリー化が進むように、バリアフリー新法の中で補助金を出すことなどの配慮が必要である。

自治体の財政や交通事業者の経営状況によっては、バリアフリー化の予算が、過度な負担となって実施できないこともある。こうした状況を回避するために国として、移動円滑化に係る基金を設置して対応することが必要である。

【長瀬委員】

既存建物と既存交通施設にも遡及する方向に向かうべきである。

医療・福祉関係の建物や教育施設や乗り換え駅など整備の緊急性が高いものから優先的に進めるなど、優先順位に応じた対応(短期的整備、中期的整備、長期的整備に整理)のほか、改修に伴うバリアフリーの整備義務化が考えられる。また、現に障害者が住んでいる公営住宅のバリアフリー化の推進(改修と新築)が特に急務である。

支援策については優先順位に応じた財政的支援が求められる場合があるのは確かだが、基本的に事業者責任であり、最小限とすべきである。

前段の地方での公共交通・輸送機関の縮小は深刻な課題であるが、政策対応は国土全般の整備と広義の社会保障という観点から求められる。

【久松委員】

既存建物・既存交通機関のバリアフリー整備は遅々として進んでいず、大都市の古い駅舎は障害者に利用できないまま放置されている。そのため、長年、移動の自由を奪われたままである。また、転落防止柵も僅かであり、政府のバリアフリーと安全促進への積極的な姿勢が求められている。

現行法適用対象外の既存建物、既存交通施設の段階的変更と支援策については、工程表を明示し、対応状況を随時開示し早急に取り組む必要がある。

なお、地方都市、農村との格差だけでなく、バリアフリー化が進んでいると思われている首都圏においても、JR東日本の音声対話型の券売機「Kaeruくん」の例のように、聴覚障害者への合理的配慮を欠いているものがある。新しい建物、施設などについても現状の監視と改善の実現を保障することが必要である。

【松井委員】

過疎化する地方都市や農村、および既存の建物や交通施設などのバリアフリー化は、段階的にすすめるにしても、相当の経費がかかることから、その財源の確保とそのための国民的コンセンサスづくりを含め、計画的に取り組む必要がある。

【森委員】

障害者の権利条約においては都市及び農村における物理的環境や輸送機関、施設、サービスにアクセスすることを確保するための適切な措置をとることを明記している。障害者の権利条約に関する批准と法制度などへの適切な改正などをもとに、やがては現行法適用対象外の領域に、段階的な取組み、改善を行っていくことが求められる。

障害者権利条約の批准に向けての周知活動とともに合理的配慮についての考え方を浸透させ、現行法適用対象外の既存建物、既存交通施設への段階的適応拡大に努める活動が必要である。

3、地域間格差を埋めるために、「移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準」等の各種基準をどのように策定し、個人にとって必要となる合理的配慮が提供されるような仕組みを構築するべきか、ご意見を賜りたい。

【大久保委員】

前段については、問の趣旨が不明。

ここでいう「地域間格差」が、大都市圏と地方部との格差を指すのであれば、前項と同様、全国的な人口動態を考慮した視点と地域の実情に応じた対策が必要との点を指摘したい。

後段については、まず法令等で交通事業者に合理的配慮を義務付け、その上で事業者に対し取り組みの推進を促し、実効性を高めていく仕組みが必要と考える。

【大谷委員】

「移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準」等の各種基準をより細分化して、事業者の義務化を強化することによって障がいのある人の円滑な利用を促進すべきである。

現在、人工呼吸器をつけ、リクライニング式やストレッチャータイプの車いすで利用しようとする場合、列車、バス、航空機等それぞれで多くの制約を受けている。たとえば、人工呼吸器などの医療機器を使用している場合、それだけで一方的に「病人搬送」と決め付けられ、制約者や医師の証明を求められたり、あるいは社内で規格を決め、規格外の車いすは乗車拒否し、その社内規定も明らかにしないところがある。

このようなことを生じさせないために、個人に必要な合理的配慮を類型化し、基準化することも必要であると思われる。

また、一方で、段階的適用等によって義務化が遅れる場合であっても、公共交通機関を利用する個々の障がいのある人については、事業者に合理的配慮義務を課してその合理的配慮義務に違反する場合は差別に該当するものとして個別救済を行う仕組みを構築すべきである。

【大濱委員】

バス一般

乗合バス車両の総数6,000台は原則的に2015年までに低床化し、そのうちノンステップバスは18,000台、30%とする目標が設定されている。

車いす使用者にとって移動の自由に欠かせないのは、生活の場から目的地までのアクセシビリティである。しかし、それに必要なノンステップバスの普及率は30%に留まっており、もっと積極的に普普及及させるべきである。

他の者との平等の基礎が原則であり、「普通の人が利用できるが、障害のある人は利用できない」であっても仕方がない。というのは、早急に改善して誰にでも利用できる車両モデルにすべきである。

そのためには、改造費(やノンステップタイプとの購入費の差額)等の全額助成を行うべきである。

地方では、バスも駅エレベーターも、円滑化基準や、円滑化ガイドラインに定められている数値の最低ラインで作られているものがほとんどになっている。

例えばバスの場合、ノンステップバスでも、手動車いすの、リクライニング型などの前後方向に長いタイプではない車いすでないと、バス車内の車いすスペースに収まらない。車いすスペース以外は固定の座席がびっしり並んでいて通路がせまく、車いすスペースからはみ出すような大型の車いすは実質的に乗れない状況。

したがって、基準やガイドラインについては、手動のコンパクトなサイズの車いすを想定するのではなく、ストレッチャータイプなど大型の車いすを想定した数値を盛り込むべき。

高速バス

高速バスのバリアフリー化について、地方では、いまや、鉄道よりも高速道路を使った高速バス路線が、生活路線化している。たとえば、広島県では、県北部への公共交通は、バスの方が便利になっている。空港にしても、鉄道が通っておらず、自動車でしかたどり着けない。

そのような状況をふまえ、基準40条(基準の適用除外)は厳格に運用し、たとえば県内各都市を結ぶような生活路線となっている高速バスは、適用除外を認めないようにすべき。規制をかけないと、バリアフリーな高速バス車両の開発が進まない。

特に、列車乗り入れのない空港と地方都市を連絡するバスは代替手段がないので、特に優先的にリフト改造等の助成等を国が行い、電動車椅子やストレッチャーの使用者が乗れる構造を義務付けるべき。

また、バスに障害者用トイレを設置することも重要である。

タクシー

タクシーについては保有する3台に1台はスロープ車両を義務付け、電動車いす利用者が予約なしでもタクシーを利用できるようにすべき。(現状は大都市の東京でも夜は事前予約がないとスロープタクシーを利用できない。たとえば、急に病院に行行っても夜になると帰れない)

空港・小型航空機

飛行機のリージョナル化が今後進むが、ボンバルディア等の小型機にも対応したボーディングブリッジを義務付けるべき。また、空港備え付けの車椅子が小型機であっても客室内に入れるように航空機の基準を強化すべき。

小型航空機には荷物室が小さいため、大きな電動車いすの収納時時に車いすを壊してしまう例が多い。これは教育が必要。

空港のエレベーターにはストレッチャーが乗れるエレベーターを設置すべき。(最重度障害者以外にも、妊婦なども機内で産気付いた場合などに利用する)

空港備え付けの車いすはリクライニング式を全飛行場に設置義務化を。

航空機

航空機の乗降口のすぐ近くの1列については、各障害者の自前の車椅子で航空機シートにアクセスしやすいようにすべき。(自分専用の車いすでないと座位が取れない、体に合合わないので空港の車いすには乗れない重度障害者には自分の車いすで座席そばまで行き前後を抱えてもらい座席に乗り移る必要がある)

特に板1枚で出入り口部分通路と座席最前列を仕切っている機材は左右どちらかの板を撤去すべき。

最後部再後部座席などの場合は、リクライニングが必要な重度頚損などの身体障害者の場合は、離着陸中離着陸中もリクライニングを許容することのできる座席を設置する(最後部などに)。

(これは、離着陸時時リクライニング禁止の運用についても改善必要。胸ベルトなどの追加装着で安全性確保し認めるようにすべき)

座席シートベルトは、2点式のみでは倒れてしまう障害者のため、CAが使用しているような6点式のベルトなども用意すること。

条文に〔ストレッチャー座席の設置〕という項目をつくるべき。

寝ながら飛行機に乗る障害者のための6~8席を使ってのベッド設置について、研修を受けたキャビンアテンダントでも15分分以下で容易に設置・取り外しを行えるように、ワンタッチはめ込み式の仕組みなどを航空機側に義務付けるべき。

また、新規に製造する60席以上の航空機には、壁側側面に組み込んだストレッチャー座席を1座席以上設置しなければならない、としてはどうか。いつもは窓の壁側に収納されていて、一般の座席も使用できるようにしておき、座位のとれないストレッチャー利用者が搭乗するときには、スチュワーデスなどがパタンと倒して簡易ストレッチャーにすればいいと思われる。

(イメージとしては、車椅子用トイレに最近は設置されるようになった、壁側に収納している簡易ベッド。)

(今は航空会社の整備の部局でしか簡易ストレッチャーを設置できない。それも羽田空港でしか設置できないので、例えば午後便札幌東京予約時利用飛行機以下のような場合に不便である。
・飛行機が東京―福岡―札幌―東京と運航し、ストレッチャー利用者が札幌―東京の便に搭乗したい場合。
前福岡この場合、朝、飛行機が東京から朝福岡へ出発するときから羽田ストレッチャーを設置しておかなければならない。またストレッチャーで使えなくなる座席は空席にしておかなければならない。そうすることで、その飛行機が福岡→札幌へとやってきて乗れるようになる。
その分、搭乗便の調整が難しくなり、航空会社としても、整備スタッフが設置する作業時間や何便かを空席扱いにしなければならないリスクを考えると、通常料金の3席分の高額な料金をとらざるを得ない。ストレッチャー座席は遅くとも3日前までに予約をしないと準備できないのはそのため。ゴールデンウィーク・お盆・年末年始等にはストレッチャー座席の設置すら受け付けられない「搭乗拒否」の状況がある。)

なお、ストレッチャー座席料金は、普通料金1席分とし、満席の便の場合、8席分の航空会社の収入損失分を国が航空会社に助成し、利用者は普通料金1名分の負担で乗れるようにすべき。

鉄道

新幹線や特急などのボックスシートおよびクロスシートの車両について、車椅子使用者の乗車のための取り外し可能な座席を、1両につき2ヵ所設置すべきである。

また、中距離都市間鉄道車両のバリアフリー化の中でとくに必要なのは、障害者用トイレの設置である。

船舶

客船については、車椅子ごと乗降可能とすること、船内での移動の自由を確保するために手すりやトイレ等を整備することについて、現行の基準を拡充するべきである。

エレベーター

まっすぐ直線で通り抜けられる2方向タイプのものはまだいいが、正方形のガイドラインをギリギリ満たすようなサイズのエレベーターの場合は電動車いすの人など結構苦労して出入りしている。また、時々、直角で通り抜ける2方向タイプのエレベーターも登場しているが、出入りが困難で大変不評。

したがって、基準やガイドラインについては、手動のコンパクトなサイズの車いすを想定するのではなく、ストレッチャータイプなど大型の車いすを想定した数値を盛り込むべき。

まとめ

個人にとって必要となる合理的配慮は、各種基準などで一律にできるものではない。各種基準の谷間に漏れてしまう方たちの声をいかに拾い上げて行くかその仕組みが必要になってくる。専門の会議を当事者で作り国土交通省等に勧告する仕組みを作るべき。

【尾上委員】

基本的考え方で述べた通り、現行のバリアフリー法や福祉のまちづくり条例は一般的なバリアフリー基準を満たすことにより(結果として)利用の円滑化が進むことを想定している枠組みである。そのために、事業者が提供しているサービス・機能を実際に利用できるかどうかという点からの基準の設定はきわめて不十分である。障害者一人ひとりの「特定の場合に必要」とされる「合理的配慮」が確保されるような見直しが必要である。

また、基準の見直し(並びに、人的接遇対応の研修内容等も含めて)にあたっては、この間、ストレッチャータイプやハンドル式車椅子利用の障害者に対する乗車拒否・利用拒否の事例が目立っていることから、これらタイプの車椅子の利用を想定したものにしていくことが求められる。

尾上追加資料 参照

個人のニーズに対する合理的配慮は、ユニバーサルデザインの視点からも共通な仕様と個別ニーズ対応する仕様を同時に行うべきである。この場合ハード面について共通仕様の整備を前提に、人的接遇対応等も射程に入れたものでなければならない。

その際、人的接遇対応が適切になされるためには、事業者の職員研修を障害当事者参画のもと進めていく仕組みが必要になる。「心のバリアフリー」など情緒的な表現ではなく、事業者等の責務とし研修・教育プログラム等を位置づけ、当事者参画のもとでの義務化にすべきである。

【門川委員・福島オブザーバー】

「移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準」等の各種基準については、国として最低限度の基準を設けているものと理解する。地域によって実情は異なるが、地域間格差を縮小する(バリアフリー化が進んでいない地域においてバリアフリー化を促進する)ためにも、現行法適用対象外の既存建物や既存交通施設についても、これらの基準が順守されるようにすることがまずは重要であると考える。また、地域により異なる基準を作る場合には、当該地域に居住する障害者をはじめとする利用者の意見が十分に反映されなければならない。

【北野委員】

A.不特定多数あるいは特定多数の利用する移動及び利用施設等のアクセス義務と、そうではない構造及び設備における合理的配慮義務を分けて検討すべし。

R.19条の自立生活権(他の市民と平等にその社会に参加・参画する権利をふまえた地域社会で生活する権利)は、その(a)項で、特定の生活施設(入所施設や病院)での生活を強制されずに、本人の選択に基づく地域生活をする権利と保障し また(b)項で、地域社会での社会参加・参画に必要な支援サービスを利用できる権利を保障し、(c)項で一般社会全体のバリアフリー化とユニバーサル化を義務づけている。この(a)(b)(c)の3つの権利が相まってすべての障害者の地域生活権は、担保される。

ただし、地域生活権は必ずしも地域自立生活権を意味しない。施設と地域生活の違いは、その生活の場の規模や地域性の問題ではない。すべては、誰がその日中の社会生活(社会参加)とそれ以外の暮らしの生活を仕切っているのかに掛っている。支援者の支援等を活用しながら本人がそれを仕切っているならば、そこに如何に多くの支援者の手や息が掛っていようと、支援者がその管理の都合で誘導した(仕切った)ものでなければ自立生活と言えよう。

その意味でも、移動や建物を含む地域社会の諸設備の利用の権利(利用権=アクセス権)が重要である。(a)項と(b)項だけでは、支援者に仕切られて、決められた障害者だけのルーチン活動を行う作業所やグループホームが生き残ってしまう。大切なことは、普通の市民が行う活動に、障害者も希望すれば参加・参画できる、移動権・居住権を含むり利用権(アクセス権)の保障である。

さらに言えば、今後、奈良県の下市中学校のような問題を決して許してはならないのだ。段差のゆえに車いすの新入生の入学が拒否され、その理由がその学生ひとりのために、多大な改装費を支出することは過剰な負担(Undue Hardship)にあたるという訳だ。しかし、この理屈は通らない。なぜなら、学校等の公的機関が基本的にバリアフリーでユニバーサルであることは、権利条約第9条及び19条(c)項に規定された利用権(アクセス権)として、国の最低条件であって、過剰な負担論は全く成立しない。もしその法的根拠が薄弱であるとすれが、今後の総合バリフリー法(案)で、国にそのことを明確に義務付けねばなるまい。それをふまえて、この最低条件を超えて民間のシステムが障害者個人に対して合理的配慮を行う場合にのみ、過剰な負担論はかろうじて成立するケースが起こりうるだけである。

そして、今後、地域主権戦略会議等で議論されるであろう、施設・公物設置管理基準や計画等の見直しにおいて、万が一にも、基礎自治体に、障害者を含む市民のアクセス権(利用権)に対する差別的な裁量権を認めるような規制緩和が許されてはならない。

障害者を含む市民のアクセス権(利用権)を障害者の権利と支援に関する基本法(旧障害者基本法)及び総合バリアフリー法(案)で、明確にし、その最低基準(強制力あり)で、下市中学校のような事件が起こらないようにし、さらに、誘導基準(強制力なし)で基礎自治体の創意・工夫をサポートできる仕組みがあるべきである。

【清原委員】

施設や環境の整備が一部の地域にとどまることの弊害をさけるためには、施設や車両に関する基準等を総合的に整備するとともに、それが達成される期間についても目標を設定し、確実に整備が進むようPDCAサイクルが着実に実施される仕組みを構築することが必要と考える。

【新谷委員】

交通機関などの設備基準、利用配慮にはナショナルミニマム的なものがあって、それに地域の特殊性が加わるものと考えます。ナショナルミニマムは、既述の基準なりガイドラインを定期的に見直しして整備していく道があると思います。地域ごとの特殊性の反映は、「街づくり条例」などで補強していくなど、行政施策と一体になった検討が必要と考えます。

【関口委員】

社会的入院者が退院し、地域で暮らしていく時、切符の買い方等を柔軟に助言してくれる人材が、駅にほしい。

【堂本委員】

都市と地方の間で、駅のエレベーターやノンステップバスの数など、公共交通機関のバリアフリーの格差が拡大しており、この解消に努めることは重要である。

利用客の多寡によって整備の優先順位をつけることはやむを得ない面があるが、このことが地域間格差を生み出しているので、地方において高齢者や障害のある人たちが円滑に移動できるよう、コミュニティバスの運行や福祉サービスにおける移動支援の利用拡大等を公的に保障するなどの政策が必要である。

【中西委員】

障害者等のニードに基づいて計画がなさるように、「移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準」等の各種基準は障害当事者の参画・主体による見直しを実施なければならない。

まず現行のエレベーター設置基準等の見直しが必要である。バリアフリー新法では、利用客の状況によって駅舎のバリアフリーの整備の優先順位を規定しているが、そのような基準では、小規模な自治体や過疎地のバリアフリーは進まず、格差は拡大の一途をたどるため、エレベーター等の設置基準の範囲の拡大が必要である。

小規模自治体や過疎地の自治体の財政や交通事業主の経営基盤が脆弱な場合は、公的責任により、そこで暮らす障害者や高齢者及びすべての住民の移動については、権利に基づく施策として公的責任において、確保する。コミュニティバスの運行や福祉サービスにおける移動支援の利用拡大がその例となる。

バリアフリー推進しようとしても財政措置を図ること自治体の財政や交通事業者の経営状況から困難な場合には、バリアフリー化の予算が過度な負担となって実施できないこともある。こうした状況を回避するために国として、移動円滑化に係る基金を設置して対応することが必要である。

【長瀬委員】

交通インフラについては地域間格差の存在を前提とした上で、各種基準の設定をせざるを得ない。

小規模自治体の場合など、技術的支援の提供が求められている。

【久松委員】

いつでもどこでも同じサービスを受けられるようにする必要がある。

移動そのものに支障がないとされる聴覚障害者でも、切符を購入する段階で、すでに障壁にぶつかっているケースが少なくない。移動中も、バスがどこにあるかの表示がなく、近くにいる人に聞かないとわからないところが多い。古い電車・バスや地方の駅だと今でも案内表示がない。駅の改札の上にあるような発車案内表示が駅の入口にも設置が必要である。鉄道の遅延情報・事故などの情報の配信が遅れる。特に、電車事故などの時には情報弱者として孤立化してしまう。

これらの問題点を取り除くモデルを、障害をもつ当事者とともに構築していく必要があると考える。また、JR東日本の券売機「Kaeruくん」のように、ある地域で問題になったケースが他の地域でそのまま導入されることのないよう、バリアフリーのための情報を各企業で流通し共有化するしくみが必要である。

【松井委員】

前項と同様、地域間格差の是正や障害者個々人にとって必要となる合理的配慮が提供されるような仕組みづくりには、相当の費用がかかることから、その財源の確保とそのための国民的コンセンサスづくりを含め、計画的取り組みが必要である。

【森委員】

支えあうことに価値観をおく成熟社会においては、身近な地域で生活の充実を図ることが重要となる。人々が互いに支えあうことができる身近な生活圏における環境の整備、「誰もが暮らしやすいまちづくり」を構築するためには、身近な地域で障害のある住民の生活環境を整備することが基本であることについて障害のない住民と障害のある住民がともに考え、協働の取り組みを行う必要がある。すなわち、障害者の権利条約の批准に向けて、障害のある住民と障害のない住民が互いに学ぶと共に積極的な活動に取り組むことが重要である。

4、同法25条により策定される市町村の重点整備地区の基本計画の義務付け、ならびに障害者の参画について、ご意見があれば賜りたい。

【大久保委員】

重点整備地区の基本計画の義務付けは、障害のある人の参画とともに、一定の効果があったものと考える。特に、市町村の都市計画部署あるいは土木担当部署が、高齢の人や障害のある人などの移動制約者と直接議論することで、移動制約者に配慮した都市計画や土木工事を行う必要があることに意識を向けるきっかけとなった点は評価できる。

一方、移動制約者は必ずしも重点整備地区だけで生活しているわけではないため、重点整備で得られたノウハウをいかに全地域へ広げていくかという面的広がりにおける課題がある。あわせて、鉄道やバス、タクシーなどの交通機関種別ごとに取り組みを深化させる必要と考える。

【大谷委員】

現在、基本計画の策定が義務づけられていないため、平成21年9月30日時点で基本計画を策定している市町村は250である。これは全市町村の1割を超える程度に過ぎない。基本計画の策定を法律によって明確に義務づけるべきである。また、基本構想の作成に関する協議及び基本構想の実施に係る連絡調整を行うための協議会を設置することも義務づけるべきであり、協議会の構成員には一定割合の障がいのある人を選出すべきである。

【大濱委員】

基本計画に参画する障害者の障害状況によって、基本計画の内容が薄いものにならないかと考える。たとえば下肢障害者が基本計画に参画だけではなく、あらゆる障害を持った方の参画がなければ、あまり意味がないのではないか。

市町村の基本構想の作成に当事者の参画する協議会制度が法定化されているが、この種種の当事者の選定は常に市町村の都合の良い当事者を選んでいる傾向がついて回る。人選の公開と公平性が必要ではないか。人選にあたっては、社会参加について最重度の特に移動の困難がある障害者が中心になるべき。人選を市町村が決めるのではなく、都道府県単位の第3者者機関(条約23条に規定されるもの)が市町村単位の計画策定に参画する当事者を含む委員の人選を行う仕組みなども検討すべき。

【尾上委員】

市町村基本構想の策定は義務付けとしない限り、既存交通施設、建築物のバリアフリー整備は大きくは変わらない。また併せて協議会の設置および当事者参画は義務とすべきである。今までも当事者の参画と言われてきたが、多くのところで形式的に扱われており実質的な参画を実現させなければならない。一方で実質的な参画を実現させるうえで不可欠な人材育成は急務とされ、障害当事者のバリアフリーアドバイザーの育成等を図る必要がある。

また、バリアフリーチェック、アドバイス等を、障害当事者だからこそできる仕事として取り組めるように雇用を開発すべきであると考える。

また、基本構想策定の際には、「切れ目のない移動の確保」も計画の中の項目として、STS等の充実策等も盛り込むようにすべきである。

【門川委員・福島オブザーバー】

市町村の重点整備地区の基本計画を義務付けることは、当該計画の実施の裏付けとなる財政措置とのセットであれば、バリアフリー化を促進するために非常に有効であると考える。また、当該基本計画を策定する際には、当該基本計画と地域福祉計画や障害者計画といった隣接分野の諸計画との整合性の確保を図るとともに、公の場での議論とそうした場への障害者の参画が必要不可欠であるとともに、そうした議論の場が、当該基本計画の策定のみならず、地域の交通体系のあり方全体についての提言も行うような機能を有することが望ましいと考える。

なぜなら、地域によって歴史的経緯や地理的条件や障害者のおかれている状況が異なり、障害者の移動の権利を保障するために望ましい方法は地域によって異なるからであり、障害者の参画によって、「そんなお金があったらこちらを改善してほしかったのに」というようなことが生じることを防ぎ、より効果的かつ効率的な交通体系を構築することが可能であるからである。例えば、バスの車体をバリアフリー化しても、障害者の住宅とバス停までの距離が遠く、歩道が整備されていないのであれば意味がない。そうした場合に、バス停の設置箇所の増加や変更をより柔軟に行うことができるようにしたり、要望に応じて経由路線を変えるデマンドバスのような仕組みを導入したり、といったような対応を考えることができるだろう。そのほか、特に過疎地などでは、タクシー利用への助成措置の拡充や乗合タクシーの運行の検討が必要であろうし、福祉有償運送の地域の交通体系における位置づけも、福祉有償運送に係る運営協議会のみならずバリアフリーに係る基本計画を議論する場においても議論する必要があるだろう。

【北野委員】

A.地域主権戦略会議の提起する、市町村の重点整備地区の基本計画の義務付け、ならびに障害者の参画に対する自治体への裁量権の付与について。

今後、地域主権戦略会議等で議論されるであろう、施設・公物設置管理基準や計画等の見直しにおいて、万が一にも、基礎自治体に、障害者を含む市民のアクセス権(利用権)に対する差別的な裁量権を認めるような規制緩和が許されてはならない。

障害者を含む市民のアクセス権(利用権)を障害者の権利と支援に関する基本法(旧障害者基本法)及び総合バリアフリー法(案)で、明確にし、その最低基準(強制力あり)で、下市中学校のような事件が起こらないようにし、さらに、誘導基準(強制力なし)で基礎自治体の創意・工夫をサポートできる仕組みがあるべきである。

【清原委員】

三鷹市では、平成13年に策定した現行の三鷹市基本構想及び第3次基本計画において「バリアフリーのまちづくり」を市の最重点施策に位置付けている。

そこで、「三鷹市バリアフリーのまちづくり推進協議会」を設置し、アンケート調査をはじめ、障がい者団体とのバリアフリー点検調査などを行い、交通バリアフリー法に基づく重点整備地区や重点的にバリアフリー化を図ることが望ましい路線の選定と事業内容、市内全域で取り組むべきバリアフリー化事業などの検討が重ねられ、提言書が提出された。

三鷹市はこの提言を踏まえて、パブリックコメントを実施し、平成15年「バリアフリー基本構想」を策定し、駅前周辺地区2か所を重点地区として計画的に整備を進め、特定経路については目標年次である平成22年度までに、ほぼ計画通り達成される見込みである。

このような障がい者の参画による取り組みは、大変有意義である。

【佐藤委員】

基本構想の義務化と障害者・高齢者の協議会への参加の義務化をおこなう時期にきていると思う。

【新谷委員】

自治体での障害福祉計画で検討している事例もありますが、街づくり計画に障害者問題をきちんとした形で組み込む必要があると考えます。

【関口委員】

基本計画の中に、精神障害者への配慮を位置づけるべきである。

エレベーター等構造的なバリアフリー化の必要性は言うまでもないが、精神障害者が駅を利用する時、柔軟に助言してくれる人材が必要である。

【堂本委員】

現在、重点整備地区の基本構想の策定については、市町村の任意となっているが、バリアフリーのまちづくりを確実かつ迅速に推進するため、これを市町村に義務付けることを検討すべきである。

また、基本構想の策定に当たっては、障害のある人に対する配慮を実施するために当事者が参画することが重要である。バリアフリー新法第26条に規定する協議会の組織化も市町村の任意とされているが、これを義務化することも検討すべきである。

【中西委員】

基本計画策定時に障害者が参画するようになったことは評価できる。一方で、策定された基本計画に基づいて事業者が公共交通特定事業を実施する際に障害者等のユーザーが監視・評価するメカニズムがない。そのために、いくらよい基本計画を策定しても、それが障害者の移動の権利の保障に必ずしもつながらない場合がある。こうしたメカニズムも含めて障害者の参画を図っていくべきである。

バリアフリー・アドバイサーとして障害者を養成することは、必要である。バリアフリーが生活上必須な条件となっている障害者に、建築物、道路、交通機関に関する基本的知識と、自らの体験等に基づき建築物、道路、交通機関監督、評価を行い、バリアフリーな環境等の推進するための技能を取得する必要な研修を実施し、バリアフリー・アドバイサーとして養成する。

計画や設計段階から、常にこのようなバリアフリー・アドバイサーとなった障害当事者の参画を必須要件とする。バリアフリーは、それを必要としない者だけで進めた結果、実際には効果のない事例がすでに数多く存在する。これによって設備投資や経費の無駄が生じている。こうした問題を未然に防止し、本来の目的を効果的に達成するためには、様々な制限と制約を体験してきた障害者の参画が必要である。ちなみに、中部国際航空は障害当事者団体が参画して整備されたため、他の空港と比較してその施設状況は一般の旅行者からも高く評価されている。

【長瀬委員】

基本構想の義務付けが必要である。重点整備地区の基本構想は、2009年3月末で.基本構想を作成済み、あるいは今後の作成を予定しているのは465市町村(1800市町村中)にとどまっている。また、利用者数5,000人/日以上の鉄道駅等の旅客施設が所在する市町村では、350市町村(515市町村中)についてもとどまっている。後者に高い優先順位を置いての、義務付けが必要である。

障害者の参画については、現在の協議会への参画については、同法26条において、協議会の構成については「高齢者、障害者等、学識経験者その他の当該市町村が必要と認める者」とされているが、障害者の代表の参画を明確に義務付ける必要がある。

【久松委員】

基本計画の策定及び障害者の参画が市町村の義務付けになっていない。また、基本計画を作成する市町村は、市町村協議会を組織できることになっているが、障害当事者の参画の全国状況に関する国のデータがない。

移動に支障がないと見られている聴覚障害者も、基本計画の立案段階から参画し、施設完成後のモニタリングにも聴覚障害者の参加を求めていく必要がある。

【松井委員】

基本計画策定の義務づけとその策定過程や実施状況のモニタリングに障害当事者団体や障害者の参画は、その計画を実効性のあるものとするうえで、きわめて重要である。

【森委員】

重点整備地区の基本計画を義務付け、地域住民にとって身近な地域で交通アクセスや建物利用に関してモデル的な整備を行い、地域住民が利用、体験を進めることは、それらの環境整備の重要性と意義を身近なものとして捉えるためにとても重要である。

また、それらの取り組みについて、これまで不便性を体験してきた障害者の経験に基づく参画が大きな役割を担うと考えられる。障害者の関与は整備に求められるニーズの的確な把握と実践をはかることのみならず、障害のある住民自身の達成感とともに、障害のない住民の障害理解の促進、ユニバーサルデザインの理解の推進につながると期待される。

5、障害者の権利に関する条約9条1項は、「施設及びサービス利用等の利用の容易さに対する妨げ及び障壁を特定し、及び撤廃する」ための適切な措置をとることを規定している。
一方で、乗車拒否、利用拒否があることを鑑み、実態調査を行い、改善をはかる仕組みについて、ご意見を賜りたい。

【大久保委員】

実態調査を行い、それによって「施設及びサービス利用等の利用の容易さに対する妨げ及び障壁を特定し、及び撤廃する」ことに異論はない。ただし、実態調査の実施に当たっては、その対象を幅広く捉える必要がある。

知的・発達障害のある人の場合、旅客施設又は車両等の構造や設備に関しては特段の形状変更を要しないが、切符の購入、ホーム(停留所)や車内における他者とのコミュニケーション、トラブル発生時のフォローなど、ハード面ではなくソフト面での配慮・支援の不備が「利用の容易さに対する妨げ及び障壁」となっており、当然この部分についても実態を全国規模で明らかにすべきであり、その改善を図るための方策も検討されるべきである。

したがって、実態調査の実施に当たっては、知的・発達障害を含め、その対象を幅広く捉える必要がある。

【大谷委員】

低床バスの運転手が車いす利用者の乗車を拒否した事例、車いす利用者が航空機への搭乗を拒否された事例、聴覚障がいがあることを理由として旅館の宿泊を拒否された事例、盲導犬を伴った宿泊を拒否された事例、医療機器を使用している人が乗車を拒否された事例、元はんせん病患者が旅館の宿泊を拒否された事例など、現在でも障がいを理由とした公共交通機関の乗車拒否、サービス利用拒否が多く報告されている。

このような差別事例について実体調査を行い、また、現実に差別が存在する場合に救済申立によって迅速に救済を行う独立した機関である救済機関を設置すべきである。

また、知的障害、発達障害、精神障害に関してのバリアフリーは、ハード面よりもむしろソフト面=周囲の理解が肝要であるので、障害理解を促進する仕組みが必要である。

疑似体験を組み込んだワークショップや分かりやすいパンフレット、Q&Aなどを利用した研修を職員に積極的に行うべきである。

【大濱委員】

実態調査といっても、交通事交通事業者側を調査してもその実態を把握することは難しい。また被害者である障害者も傷ついていると乗車拒否や利用拒否についてもう一度話をすることに抵抗を感じる例もある。被害を受けても気軽に相談できる第3者者機関が必要である。その機関で広く全国から電話相談を受け、その被害の実態をまず把握し改善すべき。

【尾上委員】

これまで移動円滑化基準等に適合しているバリアフリー施設や車両においてすらも、障害者が「乗車拒否」されてきた。これはバリアフリー法の趣旨からしても、とても容認できないことである。

障害当事者参画の下で、早急に実態調査を行い、障害当事者参画の下での調停機関を設けるべきであると考える。

また、バリアフリー新法の市町村基本構想では、重点整備地区を決め基本構想策定が行われ、その後特定事業計画が立てられ、計画にそって事業の実施が行われる。その過程で当事者参画のもとでのPDCAサイクルの重要性について謳われてはいるが、各プロセスや完成後の評価はほとんどされていないのが現状である。そのため当事者によるモニタリングを明確に位置付ける必要がある。(最後の、その他の項目を参照)

当事者による監視は施設や建物にのみだけではなく、乗車拒否や利用拒否等へ対しても行われる機関を協議会に併設し当事者の役割のひとつとする。

なお、調査、是正勧告、救済については自治体及び国レベルで行う必要がある。

当事者を半数以上含む委員会を関連省庁内に設置し、相互に情報交換しながら対策結果を公表する仕組みとする。また、対策への反論、苦情も受け付ける仕組み、対策がどのように改善されたかの検証も同委員会での責務と考えます。重大な差別行為に当たる場合は、現地調査を行い、罰則規定を設けるなどの措置が必要。

そうした委員会の下で交通事業者と利用者を同時に実態調査し、齟齬を分析、対策に役立てることは、きわめて有益であると考える。

【勝又委員】

実態調査は是非行うべき。障害のある人でも乗車拒否を受けたことのある人と無い人がいるだろう。どのような交通機関や施設が拒否するのか実態をひろくあきらかにすることは重要。

【門川委員・福島オブザーバー】

乗車拒否や利用拒否については、その理由がなんであるのかについて、実態調査や改善を図る仕組みを設けることには一定の合理性はあるものの、乗車拒否や利用拒否の対象となってしまう者が障害者に限られない(大きな荷物を持つ人、子供連れなど)ことから、障害者の乗車拒否や利用拒否に限定した仕組みが有効に機能するかどうかには疑問が残る。公共交通機関の乗車拒否については、その運営の適正化について行政をはじめとする関係機関がより適切な指導監督を行い、また、法を厳格に適用して処罰を行うことによって、地道に防いでいくよりほかないのではないか。また、乗車拒否や利用拒否の理由として、設備において対応できていないことが「言い訳」としてなされうるため、やはりバリアフリー化を広範に推進すること、設備面で不十分な場合には人的に対応することを義務付けることが、対応策となりうるだろう。なお、身体障害者補助犬のように、無理解によって拒否されることが多い場合については、業界団体を通じた啓発活動を行うことも必要であると考えられる。

【川﨑委員】

障壁の撤廃には国民の理解が重要である。サービス関係の会社全体に対する啓発、理解の促進を図るなどの対策が必要。また調査においては、利用する側と、利用される側の調査が必要である。

【清原委員】

三鷹市では、誰にもやさしいまちづくりの実現をめざし、地域公共交通の活性化及び再生を総合的かつ一体的に推進するため、これまでの同様の趣旨の組織を改組し、今年3月、「三鷹市地域公共交通活性化協議会(会長:市長)」を設置した。この中で、市民の実態を把握するため、市民アンケートや高齢者・障がい者などの利用者ヒアリングを行い、多様なニーズに応えられる公共交通サービスのあり方を検討し実践していくこととしている。

また、国土交通省が進める「歩行空間ネットワークデータ整備」は、移動制約者(視覚障がい者・車いす使用者・高齢者など)を対象としたもので、施設等のバリアフリー化などハード施策に併せたバリアフリールート情報の提供などソフト施策を実施することで、歩行者の利便性の向上をめざすもので、市としても積極的に参画し取り組んでいきたいと考えている。

なお、環境整備に向けた基準等を整備し、関係者それぞれの責務を明確にするとともに、実際の利用に関する問題点を公正に分析し、整理するための「調整」及び「紛争処理」を行うための第三者委員会を設置することも有用と考える。

【佐藤委員】

重点整備地区の基本構想に関わる協議会への障害者・高齢者の参加とは別に、市町村レベルおよび都道府県レベルでの「まちづくり」のために、障害者・高齢者が日常的にバリアフリー点検と提言活動ができるよう、特別な仕組みを設けることが望まれる。たとえば、委員の委嘱、団体への調査提言活動の委託、などである。

【新谷委員】

乗車拒否や利用拒否は明確な直接差別ですので、障害者差別禁止法に明文規定を置き、必要な罰則や会社名の公表など社会的制裁を加える仕組みを考える必要があると考えます。

【関口委員】

障害者を多数とするモニター委員会を設置し、実態調査の分析・改善策の提案をおこなう必要がある。

精神障害者の場合、入国拒否に基づく搭乗拒否がある。

【堂本委員】

障害のある人に対する公共交通機関による乗車拒否、施設管理者及びサービス提供者による利用拒否は、合理的な理由がない限り、これを差別としてとらえ、禁止すべきである。

実態調査については、乗車拒否や利用拒否に特定せず、これを含めて差別事例を広く収集すべきであると考える。

【中西委員】

道路運送法13条で、事業者による乗車拒否を原則禁じておきながら、例外として「当該運送に適する設備がないとき」「当該運送に関し申込者から特別の負担を求められたとき」には乗車拒否が可能であると規定していることからも分かるように、障害者の交通機関等の利用が「権利」として保障されているとは言い難い。なぜ乗車拒否・利用拒否が発生したかについて、事例を収集し、詳細に原因を分析していく必要がある。そうすることで乗車拒否・利用拒否をなくしていくための必要な措置が明らかになっていく。

そのためには、苦情処理対応機関を設置が重要である。バリアフリー新法に関する国会審議で乗車拒否・利用拒否、事故への対応が議論されたことや実際に起きていることから、乗車・搭乗・利用拒否や施設の不備等に関する苦情処理および問題を解決するための機関を設置することが必要とされる。

バス、タクシー、列車、船舶、航空機等の設備・対応については、原則として、すべての障害に対してアクセシビリティを確保することを義務化する。また、構造上等から確保できない場合は、代替え方法によって対応する。また、専門委員会で個別・具体的な課題の検証とその課題を改善するための最低基準を作成し、原則として、その最低基準により障害者等の利用に配慮することを義務化する。

乗車・搭乗・利用拒否が起きることなく、安全・快適に乗降・移動・利用をできるようにするため、バリアフリー新法の理念・内容と障害および福祉機器等の取り扱いと接遇に関する研修を実施する。

【長瀬委員】

基本的な人権侵害としての利用拒否や乗車拒否、また、そこまで至らなくても、利用の事前申請の要求などを含め、実態を把握する必要がある。その際には、発達障害を含め、さまざまな障害種別によって「妨げ」や「障壁」は異なるため、障害の多様性が反映されるような仕組みが求められる。

また、個別の問題を拾い上げて改善するという枠組みとは別に、バリアフリー新法やそれを根拠にして行われてきている諸施策(地方を含む)が有効に働いているかどうかを検証し、改善していく方策が必要である。個別の問題、法や制度の問題の両方について、問題点をデータベース化し、今後に活用していく仕組みが必要である。

【久松委員】

聴覚障害者、視覚障害者、知的障害者、発達障害者、言語障害者等のあらゆる障害者にとって最も大きな施設利用の容易さに対する妨げ及び障壁は、公共交通機関、行政窓口、銀行、大型店などでのアナウンス・インフォーメーション・呼び出し等の情報提供において、音声あるいは墨字案内だけで、その情報を必要とする人が情報を入手できない、または入手しにくい点にある。このような施設においては、建築要件に電光文字表示装置、点字の案内等複数のアクセス手段・様式の設置・整備を義務づけ、さらに表示内容においてもわかりやすさ、理解しやすさに工夫が必要である。

なお、現時点でも、宿泊を伴う乗船を断る船舶業者、宿泊施設を拒むホテル業者、旅行ツアーの申し込みを拒む旅行業者が存在する。また、補助犬のタクシー乗車拒否も行われている。介助者の同行がないと安全性に危惧があるとの業者等の理由だが、通信装置などの機器の活用を図る等の合理的配慮により解決できると考える。

乗車・乗船拒否等の苦情を地方公共団体に伝えても解決のために努力しない例がある。拒否された具体例を障害者からくみ上げ、警告・罰則等の指導が必要である。聴覚障害者にとっても乗船拒否や宿泊拒否の事例は枚挙にいとまがない。このような例も含め、障害の枠を超えた実態の調査、改善を図っていくことを求めたい。

【松井委員】

乗車や利用拒否に対応したり、その防止をはかるには、そうした差別的取扱いを受けた障害者などからの苦情の受付や対処する窓口を設置するとともに、同条2(c)「施設及びサービスなどの利用の容易さに関して障害者が直面する問題についての研修を関係者に提供すること」とあるように、関係者に対して定期的に研修を実施することも必要である。

【森委員】

ハード面の整備に関しては、実地調査などによりある程度の把握と改善に向けての取組みが可能になる。

一方、ソフト面の整備、心のバリアフリー化に関しては、実地調査では点検しづらいところが多い。そこで、乗車拒否、利用拒否などについての事業者等とのヒアリングやアンケートを基にした実態調査を行い、改善をはかる仕組みを機能させる必要がある。

その他

【大久保委員】

○窓口の無人化傾向について

自動券売機や自動改札機の普及などによって、改札や窓口が無人化されている駅が増えている。しかし、運賃計算や乗り換えなど困ったときに聞くことのできる人、助けてくれる人がいないことは、知的障害のある人にとって大きな問題となっている。

駅職員や旅客案内係などの配置についても、合理的配慮の一つとして必要と考える。

○交通割引制度について

(療育手帳の提示について)

知的障害のある人が割引運賃で鉄道やバス、タクシーに乗車する際、多くの場合、療育手帳の提示が求められる。しかし、療育手帳については全国的な統一がなされていないため、居住地域以外の都道府県で割引を受ける際、窓口等での確認に手間取ったり、割引適用を拒否されたりする場合もある。また、療育手帳の提示ないし常時携帯は個人情報保護の観点からも望ましくない。こうした点から、全国一律で「交通割引カード」のような制度を導入することが必要と考える。

あわせて、ICカード型の乗車券が普及している現実も考え、下記に言及する割引条件の見直しにあわせ、「交通割引カード」にICカード型乗車券を組み合わせるなどの対応も必要と考える。

(割引の条件等について)

JRおよび私鉄では、障害者手帳2種および1種の単身利用の場合、片道の営業キロが100キロを超えた場合にのみしか割引が適用されない。しかし、鉄道が日常的な移動手段の一つとなっている現在において、半世紀以上前に設定された上記の割引条件が適当か、見直す必要があると考える。

障害者割引の100営業キロという条件は「学生割引」の考え方を援用して設けられ、割引の主眼は旅行者の「経済的負担の軽減」に置かれている。障害のある人への所得保障が不十分な現在において、その経済的負担軽減の観点から距離制限を撤廃するなど割引条件を緩和する必要がある。

○駅などにおける絵文字表示の統一について

知的障害のある人が公共施設や交通機関を利用するにあたって、絵文字や記号による案内は不可欠の要素となっている。しかし、こうした案内表示は全国的な規格の統一が進んでおらず、地域や運営主体によって採用される種類や形状が異なっている現状がある。たとえば、鉄道の改札ゲートにおいて進入禁止を示す表示は、「-」(横棒)や「×」など運行会社によって異なる。また、JRや私鉄、地下鉄が乗り入れるターミナル駅などでは、駅ビルや各社の管轄エリアごとに案内表示のしかたが異なる場合がある。こうした状況は、知的障害のある人を混乱させ、スムーズな交通機関の利用を妨げる原因となっている。

公共施設や交通機関の表示およびコミュニケーションボードなど支援器具において、「標準案内用図記号」や「コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則」などによる絵文字・記号表示の統一を徹底させるための方策が検討されるべきと考える。

【大濱委員】

実態調査を実施すべきである。

ただ、バリアフリー新法について、設備基準を示したことで、ハード面でのバリアフリー化は着実に進んでいる。しかし、設備を使用する交通事交通事業者の従業員の教育が進んでいないのが実態である。従業員への教育不足不足が障害者差別の温床になっている。設備基準と同じように、社員教育についてもなんらかの評価基準が必要と考える。

トイレについて

高速道路等の車いす用トイレの汚れや故障(座面の固定が壊れて左右にずれて乗ると便器に落ち込む)などが多い。土日や連休ほど利用者が多いので(中には男性障害者や高齢者で立って用を足すが障害により狙いが定められず便座を汚す人もいる)、次に使う重度障害者は掃除をするのが困難なので、清掃スタッフが掃除を頻繁に行うことが必要。休日の掃除予算を増やすように(ハードだけではなくソフトの)ガイドラインを作るべき。

また、重度の全身性障害者に多い体温調節障害者のため、トイレ内の冷暖房の義務付けが必要。

駐車スペース

車いす用の駐車スペースは広い幅が必要だが、都市部の高速道路・空港などでは休日などは駐車スペースが足りなくなる。車いす以外の障害者は一般の横幅でいいので、出入り口に近い一般駐車スペースをそれに充てる統一ガイドラインを作るべき。「車いす以外の障害者・妊婦・病人」の駐車スペースとしてもよい。

レンタカー

大手のレンタカーについては、スロープタイプのユニバーサルタイプの車両を各県の空港や駅などの営業所に配置するようにガイドラインを整備すべき。(その際、車両差額を国が助成等すべき。)

【尾上委員】

【当事者参画の制度化、評価システムとスパイラルアップの実行化】

広範な都市再開発、まちづくり計画、住宅地計画、大規模建て替え事業など、特に面整備事業での総合的なバリアフリー(ユニバーサルデザイン)事業について、企画、設計、施工、供用開始、その後の運用に至るまで一貫してチェックし、バリアフリーの観点から事業評価する新制度が求められる。多くの大規模事業では、構想から基本設計段階までのチェックは行われますが、実施設計、維持、管理についての規定がない。利用者の参加を法により制度化すべきである。

これまで理念や手法的な提示にとどまっている「バリアフリー改善のスパイラルアップ」について、今後、それを実行させる仕組みを、国レベル、都道府県政令市レベル、区市町村レベルの三段階で設置する規程を盛り込みたい。この各段階において、自己評価、第三者評価、改善内容(対策)の公表を義務付ける必要がある。

障害者の地域生活を実現していくためには、公営住宅をはじめとする住宅のバリアフリー化が急務である。特に、高齢者住宅に対する制度(新規、改修)はある程度ありますが、障害者が居住する公的住宅制度の改善が完全に取り残され、老朽化が深刻であり、早急な対応が求められる。

さらに、住宅のハード面だけでなく、多様な地域での住まいの確保のために、借り上げ賃貸住宅等の手法や公的保証人制度等も活用した、「地域での住まい方支援」の飛躍的な拡充が求められる。

【門川委員・福島オブザーバー】

公共交通機関における運賃割引制度は、現状においては、それぞれの事業者が自主的に運賃を割り引くとともに、そうした「割引分」を負担することによって成立しており、行政の責任が不明確なものになっている。とりわけ、タクシーにおける障害者運賃割引の適用に際しては、事業主が運転手に「割引分」を負担させるという事例があると聞いており、そうした事例があることが、乗車拒否につながることもありうると考えられる。

また、特に飛行機のように、各種運賃割引制度が発達することによって、障害者割引ではない割引運賃の方がより低額で利用できる事例も発生しているほか、障害種別によっては運賃割引が適用されないといった問題も生じている。

障害者の所得保障制度は不十分であり、他方、障害者が外出時に同行を依頼する介助者の運賃に対する公的な補助制度も未整備である。こうした現状を踏まえれば、公共交通機関における運賃割引制度は、障害者の社会参画に一定程度貢献していると言えるだろう。こうした点を踏まえれば、公共交通機関が運賃割引制度を導入することについて行政として財政面も含めてなんらかの支援措置をとるとともに、特に公共交通機関における運賃割引制度についてどのようなあり方が望ましいのか、事業者、行政、障害者による、公開の場での十分な議論が必要ではないかと考える。

【佐藤委員】

以下は、2008年度に内閣府がJDFの協力で行った「いやだったことやしてほしいこと」に関する調査への回答の一部で、交通や建物に関するものである。交通従事者への研修の必要性、具体的な合理的配慮の明確化の必要性などが伺われる。

公共バスで「7時~9時は無理」と乗車拒否された。(肢体不自由、40代、男)

無人駅などで夜間に駅を使った時、「もうちょっと早く帰って来なさい」と駅員に言われ、理不尽に感じた。買い物の帰り、バスを使ったが、ノンステップバスにもかかわらず、「今度乗る時は、会社に電話して下さい」と言われ、何の為のノンステップバスなのかわからなくなりました。(重複障害、30代、男)

精神障害者は、症状の重い者は、公共機関の使用をするとき、大声を上げたり、叫んだりする者もいる。そういうとき、確かに一般的には驚くが、周囲に良き理解者(バスの運転手など)が同乗していれば、話し相手になって、落ち着きをとり戻すこともある。(精神障害、30代、女)

「レジャー施設を団体利用しようとして問い合わせたところ、あれやこれや言って受け入れようとしない。粘って聞いていたら「他のお客様がいやがる」と言った。」(知的障害、30代、男)

遊園地の乗り物には、乗れるもの、乗れないものが、どうしてもあるが、利用料の割引きがなかった。(難病、20代、女性)

ホテルなどの設備は、耳の不自由な者のことは全く考えていない所が大部分です。50室以上のホテルには、せめて一室はTVは字幕を備え、外部からのノックは光で伝わるものがほしいです。(聴覚障害、70代以上、女性)

【関口委員】

精神障害者の移動については、現行の障害者自立支援法では、通院等介護および地域支援事業の移動があるが、いずれも身体介護なし移動とされ、外部の移動のみ支給ということであり、実際には使えない制度となっている。

社会参加に使っても会合の途中で気分が悪くなりかえることもあるし、参加の際中も安全保障観および相談や役所での権利主張への支援、医療受信時の支援も必要な場合もあるので、屋内では一切介助が使えないとなると、実際にはこれら移動介助は使えないことになる。

診察の待ち時間も使えないために現実に使えない場合が多い。

またJRをはじめ、精神障害者に対しては行政が介助を認めていても介助者の交通費無料化はないので、精神障害者は2人分の交通費負担を求められ、これもあって移動介助を使えない実態がある。

【土本委員】

ひつようで てきせつな こうつうの じょうほう が ほしい。

のりものが どこに いくのか わかりやすく かいて いくことです。

もくてきちの ばしょが わかりづらい。

きっぷも ひとりで かうのが むずかしく なっている。

きかいで きっぷを かうときは さいしょ わからない。

なんかいも つかって ようやく わかるように なっても すぐに むずかしい きかいに かわってしまう。

きかいかが すすむと いっしょに いってくれる ガイドヘルパー を ひつよう とする ことが ふえてくる。

なかまたちは きかいに よわい人も おおい。

こうれいしゃ でも むずかしくて がいしゅつ そのものが バリアです。

JRなどの でんしゃに のるときは かいだんが きゅうだし ながいこと おりたり のぼったり しなければ のるばしょ まで いけない。

かいだんや いくところの だんさが あったら つまづく こともある。

しょうがいしゃ だけでなく こうれいしゃ の ガイドヘルパー を ふやして いくべきです。

バスに のるときは りょういく てちょうを みせなければ だめだと いわれているけど 「これは なんですか?」ときかれた ときもある。

札幌市では ちてきの ふくし わりびき ウィズユーカードが へらされてしまった。

「よさん が ない」と きりすて られた。

まっさきに きりすて られるのは 自分たちや こうれいしゃです。

こうぎの こえを あげることが むずかしい ことに つけこんで へらしている としか おもえない。

すくない おかね から こうつうひ を だすことが むずかしい なかまたちは がいしゅつ したくても がまん させられています。

そうげいの くるまを どうしても ひつよう とする ばあいも あるとおもうけど ガイドヘルパーを つかって こうつうきかん をつかい もっともっと がいしゅつ できる ようにして しみんのひと に なかまたちが まちで いきている ことを しらせて いかないと りかいも されない。

ともに いきる しゃかい を つくるためには おおくの なかまたちが まちに でる かんきょうを つくる ことです。

【中西委員】

1 バリアフリー新法において、車いす対応エスカレータをバリアフリー化施設として位置付けるのは間違いである。車いす乗客転落事故による生命の危険が報告されているほか、一時的にエスカレータを止めて連結と低速での運転によって生じる使用を拒否された乗客との摩擦など問題は多い。昇降機はエレベーターに統一すべきである。

2 障害に基づき必要とする内容に負担を加算しない。障害者の状況によっては、航空機の座席数の複数利用やホテルのバリアフリールーム等を必要とするため、座席数の占有、部屋の広さを基準として料金が請求される。しかし、これは、障害者が障害に基づき必要とする内容である。したがって、こうした場合は、そうした配慮を必要としない人が、その航空会社等が定める通常の利用料金で使用できるように改善することが必要である。

3 地方自治体の基本構想の義務化は変更しない。内閣府のホームページに地方主権のページがあるが、そこの資料では、地方分権施策として地方自治体に義務化されている「基本構想」の義務化廃止または努力規定化が方針として示されている。このような規制緩和が実施されないように対応することが必要である。なお、これ以外にも「障害者基本法」に基づく「障害福祉計画」及び「障害者雇用促進法」に基づく「障害者雇用」も同様に、地方自治体に対する現在の義務規定を廃止または努力規定に変更することも方針として示している。

4 航空機搭乗の対応には問題が多い。障害者等特別なニーズを持つ者への対応は別個に窓口を設けて対応している航空会社が多いが、そこのスタッフの研修は不十分である。障害の種類を聞いてきてもそれが何を意味しどんなんニーズがあるかもわかっていない。さらに現在、一部の障害者には、航空機搭乗時の診断書の提出が必要とされているが、その意味はほどんどないと考えるので、経済的、時間的、精神的負担が大きい診断書は、当事者も含めた見直しを実施することが必要である。

【長瀬委員】

(民間を含めた住宅全般のアクセシビリティ・バリアフリー義務化)

日本の住宅のアクセシビリティは低く、公的な住宅提供には限界があり、民間の住宅のバリアフリー化を、一定規模以上の共同住宅や団地では義務付ける時期が来ている。

(住宅と交通の総合的なバリアフリー整備の必要性)

大規模な都市再開発やまちづくり計画、立て替え事業など、総合的なバリアフリー事業(ユニバーサルデザイン事業)については特に、維持、管理を含めた、一貫したチェックと評価を行う新制度が必要である。その際には障害者代表の参加の法的制度化が求められる。

【久松委員】

移動や建物を含む諸設備の利用の権利について、先述したように利用権には移動に関する情報や建物を含む諸設備の利用に関する情報等へのアクセスが保障されることが含まれていることを強く認識する必要がある。

また、建物には、情報やコミュニケーション保障のために必要な設備・機器が設置できるようあらゆる障害者のために考慮される必要がある。この配慮がなされて利用権が保障されたと言うことができるのである。