障がい者制度改革推進会議 第7回(H22.4.12) 久松委員提出意見
第七回障がい者制度改革推進会議 意見
所得保障
障がい者制度改革推進会議構成員 久松 三二
(財団法人全日本ろうあ連盟 事務局長)
○所得保障に関する基本的な方向性について
1.現在の障害のある人の所得保障制度の課題について、ご意見を賜りたい。
雇用対策を優先すべきである。
福祉から就労への移行に関しては具体的な政策が十分でない。福祉的就労に関しては最低賃金法で保障されるべきである。
障害基礎年金を生計の拠り所としている障害者が多いが、それだけでは十分に生活できないので、生活保護の水準に引き上げるべきである。
2.障害者権利条約はすべての障害のある人が地域で暮らすことができるようにすることを目指しているが、こうした観点から、どのような仕組みでどの程度の所得を保障するべきなのか、ご意見を賜りたい。
地域で生活し暮らすためには、グループホーム・ケアホームの整備を充実することと、サービス提供人材の確保、日中活動の場が欠かすことができない。所得は、国の定める生活保護の水準に見合ったものにすべきである。
○障害基礎年金について
1.現在の障害基礎年金の水準は生活保護基準にも満たないとして、改善を求める声が従前より上がっている。また、障害基礎年金2級の支給額を1級に、1級をそれ以上に引き上げるべきとの意見もある。以上のことを踏まえて、障害基礎年金の水準についてのご意見を賜りたい。なお、障害基礎年金は老齢基礎年金の早期支給とみなしているため、障害基礎年金2級が老齢基礎年金と同額になっていることも、念頭におかれたい。
障害基礎年金を生活保護の基準に満たすように改善すべきである。
なお、18歳で特別支援学校を卒業してから20歳で障害基礎年金を受給できるまでの二年間は所得保障がないので支給年齢開始を18歳にすべきである。
○無年金障害者について
1.現在の障害基礎年金は、以下のような要因で無年金となる「谷間の障害者」を生み出している。
- 国民年金の任意加入時に学生、主婦が障害を負った場合。
- 日本国籍をもたない人が障害を負った場合。
- 海外に居住している日本人が障害を負って帰国した場合。
- 所得保障による支援が必要であるにもかかわらず、障害等級が低い等のために年金が支給されない場合。
- 保険料を未納としていたため、あるいは保険に未加入であったために年金を受けることができない場合。
このような現状についてのご意見を伺いたい。
障害基礎年金の認定基準の抜本的な改正が必要である。障害の定義の見直しに連動した新体系にしていくべきである。
2.無年金障害者の問題を解消するためにはどのような手立てが必要か、ご意見を賜りたい。
在日無年金障害者を緊急に救済することが必要である。
<理由>
障害者権利条約は、締約国に相当な生活水準及び社会的な保障の持続的向上を図る義務を課した条文を含んでいる。(第28条)。
障害基礎年金(第30条四の①)は、障害によって生活の安定がそこなわれることを防止し、健全な生活の維持及び向上に寄与することを目的に、20歳前に障害を持った重度障害者に無拠出で支給される障害者の生活の維持に必要なかつ極めて重要な所得保障である。
自己の責任によらず障害基礎年金が支給されず、何ら合理的な理由もなく放置され、生活困窮を強いられている在日無年金障害者は、全国に約3千人(2002年坂口試案を参考にした推計)いるといわれており、その実数さえ明らかにされていない。
また、1981年12月31日までに20歳に到達した者は対象とされないのであるから、現在、在日無年金障害者は49歳以上である。高齢化が著しく緊急的課題として取り組むべき人権問題である。
国民年金法の改正および「難民の地位に関する条約等への加入に伴う出入国管理令その他関係法律の整備に関する法律」附則第5項の削除による抜本的解決を進め、またその間の生活を支えるため、福祉的措置による救済が必要である。そのためには、「特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律」の附則第2条を速やかに実現し、在日無年金障害者を支給対象とすべきである。
○年金以外の手当について
1.障害者が地域での生活を安定的に継続するため、または地域生活に移行するために、家賃を保障する「住宅手当」の創設が必要であるとする考え方があるが、このことについてご意見を賜りたい。
自立した生活を営むために、あるいは施設から地域に移行するために、住宅の確保は絶対条件であるが、現行の障害基礎年金の支給水準では困難である。政策として「住宅手当」を盛り込む必要がある。
2.障害ゆえに特別に必要とする経費を補うためにどのような手当が必要だと考えられるか、ご意見を賜りたい。
○財源について
1.所得保障を拡充するための財源について、ご意見を賜りたい。
コンクリート事業等の公共事業や防衛費などの支出を削り、社会保障費を優先する施策を求める。
なお、交通(移動)バリアフリー、情報バリアフリー、コミュニケーションバリアフリー施策を推進する公共事業は積極的に支出すべきである。
○その他
所得保障の水準を高めることは、憲法に定められた人間として最低限の文化的な生活を送ることを保障することにつながるが、財政支出の節減にも大きな経済効果がある。
移動(交通)バリアフリー施策、情報バリアフリー施策、コミュニケーションバリアフリー施策を推進することによって、新たな公共事業や人材が創出され、障害者の雇用が拡大され、また雇用された障害者の給与所得総額が増加する。
所得保障施策と雇用拡大施策と地域移行施策とは連動して取り組まなければならない。徒らに財源確保のみを持ちだすと、従来から言われてきたことであるが、障害者施策はお金がかかる、支出抑制の議論に偏ってしまう恐れ(リスク)があるので留意する必要がある。