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第6回と第7回の報告 -リレー推進会議レポート2-

山崎公士(やまざきこうし)
神奈川大学教授

第6回

2010年3月30日(火)の第6回障がい者制度改革推進会議(以下「会議」)では、「司法手続き」、「障害児支援」と「医療」について議論された。すべての論点に触れることはできないが、議論のポイントと大方の意見を簡単に紹介したい。

1.司法手続き

日本の司法手続では、障害者が裁判を受けることを想定してこなかった。その結果、令状主義や弁護人選任権・黙秘権が知的障害者や視覚障害者に十分に伝達されていない。障害者への取り調べは適正でなく、調書作成やその内容確認の方法に問題がある。したがって障害種別に応じて、手話通訳、要約筆記、支援者の立ち会い等の情報保障をし、取り調べは全面可視化すべきである。知的障害者が裁判官・検察官・弁護士の配慮不足の結果、執行猶予とならず、長期刑を科され、また冤罪も生まれている。こうした認識から、司法に携わる法曹三者や警察官・刑務官への人権教育が必須の課題であることが確認された。

2.障害児支援

障害者権利条約第7条に関し、児童福祉法の中で障害児への支援を整備すべきであり、障害児の意見表明権は障害者基本法で明文化すべきである。障害のある子どものハビリテーション及びリハビリテーションについて、子どもの生活構造にそった再編成・シンプル化に総論賛成する意見が多かった。 障害を少しでも軽くする保護者の責任論によって、保護者が社会的に孤立し、罪悪感を抱く場合がある。障害児の通園施設の一元化については、賛成意見が多かったが、通所施設は不要との意見もあった。相談支援体制については、国・都道府県・市区町村の連携や広域的な相談支援体制の重要性が指摘された。

3.医療

精神障害者に対する強制入院制度(措置入院・医療保護入院等)に関し、自傷他害のおそれは「自由のはく奪」の根拠とならず、制度を見直すべきである。また精神障害者に対する強制医療介入を見直すべきで、精神科病院での7万人ほどの社会的入院については、地域での受け皿を用意し、これを無くすべきである。 重度障害児の在宅移行が進まない状況について、多くは人権侵害であるとの意見であったが、これと異なる意見もあった。

第7回

4月12日(月)の第7回会議では、「所得保障」、「交通アクセス、建物の利用」、「情報アクセス」と「障害者施策の予算確保に向けた課題」について議論された。

1.所得保障

障害基礎年金を少なくとも生活保護の水準で支給し、最低賃金を障害者の就労についても適用すべきである。障害基礎年金に関しては、①障害を特化して独自の議論をする、②年金全体の中で水準を上げる方向で議論する、と意見が分かれた。無年金障害者を解消するため、初診日でなく実質的な障害の発生日を基準として障害を認定し、制度の仕組みを簡素化する等、転換を図るべきである。なお在日無年金は人権問題なので、現行制度で救済すべきである。

2.交通アクセス、建物の利用

障害者基本法にこの問題を明文で規定すべきである。その際、交通基本法との整合性を図り、知的・発達障害者の負担を軽減すべきである。バリアフリー新法の課題として、知的障害者の移動の円滑化、地域間格差の解消、聴覚障害者への的確な情報伝達体制の整備等が指摘された。

3.情報アクセス

障害者権利条約第21条を国内実施するためにも、何らかの法律に情報アクセス分野でのバリアフリー化を規定する必要がある。同時に、情報アクセスに関する最低基準と指針を策定すべきである。

4.障害者施策の予算確保に向けた課題

日本の障害者関係の公的支出(対GDP比)はOECD諸国中でも低水準であり、これを増やすべきである。このため、広範な国民的合意と理解が不可欠である。国と地方の財政負担については、サービスに要した費用を、国が2分の1、都道府県が4分の1負担することを原則としつつ、障害程度区分にしたがった「基準額」を超える部分は市区町村が負担することにするとの意見があった。予算確保のため、地域基盤整備の施策項目と達成期間を定めた総合的な福祉計画を、財源を明らかにした上で定めるべきである。

まとめ

第7回で15分野に関する議論を終え、第8回以降は障害者団体や主要省庁からのヒアリングに入った。東室長から提示された「論点表」に基づく6回にわたる集中的な議論はまさに革命的であり、障害当事者や支援者のたまりにたまった不満や批判が一気に表現された機会であった。これまでの障害者法制や施策を考えれば、これは通るべき過程であった。6回に及んだ第一段階における議論と意見集約の成果は、省庁ヒアリングの場で早速発揮された。 他方で、第一段階では、若干の心配も感じた。第一に、第7回に福島委員が指摘されたように、会議は急ぎすぎてはいないか、提出された意見のすりあわせが十分になされていない、その結果、かみあった議論がなされていないという危惧である。第二に、会議での意見集約を実現するには相当の財源と人員を要するが、その裏付けに関する議論がほとんどなされていないことである。この点は、いずれ「第一次意見」の中でより明確になるものと思われるが、率直な印象として、この段階で示しておきたい。


原本書誌情報
山崎公士.第6回と第7回の報告(リレー推進会議レポート2).ノーマライゼーション 障害者の福祉.2010.7,Vol.30, No.7, p.42-43.

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