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第38回障がい者制度改革推進会議
―新たな障害者政策委員会へ向けて―
-リレー推進会議レポート16-

大濱 眞(おおはままこと)
(社)全国脊髄損傷者連合会副理事長

 平成22年1月に開催された「障がい者制度改革推進会議」は、平成24年3月12日の第38回推進会議で幕を閉じた。平成24年度以降は、改正障害者基本法に定める「障害者政策委員会」に障害者基本計画の策定を含めその役割が引き継がれる。会議室は最終回ということもあり、日ごろと違う意味での緊張感に包まれて開始された。
 冒頭、園田康博政務官から、「インターネットを活用しリアルタイムで全国の障害者に情報提供してきた推進会議は先進的な会議であった。成果としては基本法の改正があるが、課題はまだ残っているので次の政策委員会で引き続き議論をしていただきたい」と挨拶があった。

1 障害者総合支援法の検討状況

 東推進会議担当室長から新法をめぐる動向の報告後、総合福祉部会長でもある佐藤委員より新法の課題等も含めて概略が説明された。まず、障害者自立支援法に代わる新法・障害者総合支援法の検討状況について、昨年8月の骨格提言から民主党WT法案了承までの経緯の説明と、民主党WTでの岡本座長の説明会資料が紹介された。
 しかし、その説明会資料の内容は骨格提言の内容とはかなりの落差があるものだった。委員からは「自治体の財政問題が骨格提言の主眼なのに総合支援法ではその点が規定されていない」「検討の方向性が不明」「『可能な限り』という表現は自治体の裁量をさらに広げても良いようにとらえられ曖昧な表現なので削除してほしい」「障害者個人としての生活が尊重されていない」「この改正案こそ医学モデルそのもの」「中軽度の障害のために支援が受けられない人のことは検討もされていない」等、骨格提言が無視された内容が多いことに対し批判意見が続出した。これに対して園田政務官は「まだまだ不十分ではあるが、これから段階的にやっていきたい」と返答した。
 また、ある委員からは「内閣総理大臣を本部長に設定された有意性のある会議であるはずなのに、推進会議で委員たちが主張してきたことが後退した内容で国会に出ている。推進会議の有意性はどこにあったのか?」と疑問が出た。園田政務官はこれに対して「有意性とは、実質的に担保をしていただいてきたこの場の皆様の熱心な意見ではなかったか」、また、推進会議が法定化されなかった背景についても、「反省としては時間が足りなかった、議論に余裕もあれば良かった。今後はもっとスピードアップしていきたい」。最後に「震災で犠牲になられた方に申し訳なかった」と述べた。

2 推進会議の存在意義

 推進会議で評価すべき点が挙げられた。事務局を民間から登用したこと、障害者の専門家による意見交換で議論が深まったこと、第二次意見の取りまとめのように民主主義を貫いてきたこと、政権の枠組みにとらわれない実績を挙げたこと等である。だが、これらの前向きな検討内容が、法改正や制定、予算等に反映されてない印象もある、という意見も出た。他にも反省点として他省庁との関係性、省庁間の縦割りで課題解決ができない、各省庁での検討会や研究会との間で意思疎通が上手くいかなかった、次の障害者政策委員会でも推進会議と同じような情報保障ができるようにという意見が挙がった。この点について東室長より「内閣府は障害者に係わる自前の施策を抱えていない。連携調整が上手くできないことは最初から想定すべきで、すぐに変わることは難しいということを理解してほしい」という説明があった。
 最後に、推進会議で評価される点として以下が確認された。1.当事者主体・障害当事者と家族で過半数、2.当事者委員に対する合理的配慮を含むさまざまな支援策(要約筆記、手話点字等の情報保障等)、3.実質審議ができる開催頻度・時間の確保(1回4時間超を38回開催)、4.徹底した情報公開。

3 障害者政策委員会に期待すること

 「モニタリング機関として役割を果たせることを期待」「委員構成はどうするのか、ヒアリング等の予算、地方の意見吸い上げをどう行うか」「自立支援協議会と地域の合議機関との関係性の整理を」等の意見が出た。
 今後の「障害者政策委員会」については、東室長より「国家行政組織法は適用されず内閣府設置法第37条に基づく「審議会」であり、国家行政組織法第8条に基づく、いわゆる8条委員会と同等の位置付けである」。また「具体的な権限としては、障害者基本法32条2項を確認解釈すると、「意見を述べる」については、あらゆる事項を幅広く議論できる」との説明があった。
 事務局からは「無理難題な要求はあったがその背景にこそ真実があると感じた。この2年間を通して、一定の方向性の第一ステップが形作られたと感じる」との発言があった。障害をもつ人が本気で議論できた推進会議であった。最後に委員から推進会議の議長や部会長、室長、スタッフ他関係者に感謝と労いの言葉、花束贈呈が行われた。

筆者コメント

 推進会議の最終回も白熱した議論で終始した。この2年間は次の第二ステップに向けて、その発射台が整備されたかの感がある。『政策委員会は、基本計画策定に当たり調査審議し、必要があるときは、内閣総理大臣又は関係各大臣に対し、意見を述べ、実施状況を監視し、勧告することができる。この勧告に基づき講じた施策について内閣総理大臣又は関係各大臣は、政策委員会に報告しなければならない。』と規定されている。
 この政策委員会は、すべての障害者の期待と注視はもちろんであるが、ここでの議論が、広く国民に注視される委員会として発展することを願う。


原本書誌情報

大濱眞.第38回障がい者制度改革推進会議―新たな障害者政策委員会へ向けて―(リレー推進会議レポート16).ノーマライゼーション 障害者の福祉.2012.5,Vol.32, No.5, p.38-39.

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