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資料1

基本方針に関する障害団体等からの意見一覧

目次

社団法人 全国腎臓病協議会

一般社団法人 全国心臓病の子どもを守る会

一般社団法人 全国手話通訳問題研究会

NPO法人 筋痛性脳脊髄炎の会

NPO法人 全国言友会連絡協議会

NPO法人 全国精神障害者地域生活支援協議会(あみ)

日本肝臓病患者団体協議会

NPO法人 全国要約筆記問題研究会

社団法人 全国腎臓病協議会

基本方針に関するご意見

団体名 社団法人 全国腎臓病協議会

1.行政機関等及び事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する共通的な事項(2・3号関係)

1-1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方として、どのような場合を差別的取扱いと考えるのか。

  • 透析患者は外見は健常者と何ら変わりません。そのため周りからはなかなか理解されません。透析さえ受けていれば比較的元気に生活できるので「1日ぐらい透析に行かなくても大丈夫じゃないのか」などと言われることがある
  • 医療費が高額なため組合健保などの企業からは採用が敬遠される。
  • 医療費が高額であることだけに焦点があてられ、まるで邪魔者扱いされる風潮がある。

1-2 不当な差別的取扱いの基本的な考え方として、正当な理由がある場合は、差別とはならないとされているが、どのような場合に正当な理由があると考えるのか。

  • 大変難しい課題かと思いますが、基本的にはいかなる場合も差別を正当化してはならないと思います。
  • 障害が理由ではなく個人の生産性が他の人に劣る場合は減給、配置転換など行うことは正当な理由にあたると思います。

1-3 合理的配慮の基本的な考え方として、どのような場合に、どのような配慮が求められると考えられるか。

  • 透析を受けるための時間的な配慮。たとえば、フレックス制度を適用するとか有給休暇を時間休にできる制度を認めるなど。

1-4 合理的配慮については、その実施につき「過重な負担」が生じる場合には、合理的配慮をしなくても良いということになるが、どのような場合に「過重な負担」と考えるのか。その判断要素をどう考えるか。

  • 行政においては合理的配慮は行うべき。
  • 事業者については、職場環境を整えるのに莫大な費用が掛かるとか、生産性が低下して損害が発生するような場合は「過重な負担」となるのではないでしょうか。

1-5 各行政機関等及び事業者において、障害を理由とする差別を解消するための取組として望まれる取組(職員・従業員の研修、相談・紛争処理体制の在り方など)はどのようなものがあるか。

  • 障害の種類は様々で人工透析のような一見して障害とわからないものもあること。日々体調が変化することなどを理解して欲しい。
  • 雇用形態を多様化すること。
2.行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項(2号関係)

2-1 対応要領に記載すべき事項として、どのようなものがあるか(例えば、不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等、相談・紛争解決体制等)。

  • 透析を医療費の面からだけではなく正しく広報する。
  • 合理的配慮の好事例。
  • トラブル発生時の対処例。
3.事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項(3号関係)

3-1 対応指針に記載すべき事項として、どのようなものがあるか(例えば、不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等、相談・紛争解決体制、主務大臣による助言・指導等に関する事項等)。

  • 合理的配慮の好事例。
  • トラブル発生時の対処例。
4.その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項 (4号関係)

4-1 相談及び紛争の防止等のための体制の整備、啓発活動、情報(具体的な相談事例、国際的動向等)の収集・整理及び提供について、どのようなことを期待するか。

  • 透析患者の病態や生活状況などの実態を知ってもらいたい。
  • 内部障害という障害があることを知ってもらいたい。

(以上)

一般社団法人 全国心臓病の子どもを守る会

基本方針に関するご意見

団体名 一般社団法人全国心臓病の子どもを守る会

1.行政機関等及び事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する共通的な事項(2・3号関係)

1-1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方として、どのような場合を差別的取扱いと考えるのか。

 心臓病児者等の、いわゆる内部障害者は、外見と障害の内容が繋がらない場合が多く、無理解や偏見又は固定化したイメージが生じやすい面があります。一方的な思い込みにより、事故等を恐れ、配慮等の負担を避けるあまり、過度に予防的、排除的な対応が行われる例が後を絶ちません。一定の配慮が必要なのはもちろんですが、教育、就労、社会参加等において、土俵に乗せない、入口に立たせない、さらには、保護者に様々な対応を強いる(暗黙のプレッシャーを含め)ようなものは、差別的な取扱いと考えるべきです。
 具体的には、病名のみを見て判断されて通常学級への進学が妨げられたり、通学時の送迎や学校行事等で保護者の付き添いを求められたりといったことが、現在でも、数多く見受けられます。また、障害者雇用枠で採用を希望しても、特に、先天性心疾患による「心臓機能障害」の場合、就職することが極めて難しいのが現状です。
 見た目では分かりにくい障害(疾患)への無理解、過度の不安(何かあったら直ぐに生死に関わるなどのイメージ)によって、健常者とは大きく異なるハードルを設定し、教育や就労の機会を損なうことがあってはならないと考えます。

1-3 合理的配慮の基本的な考え方として、どのような場合に、どのような配慮が求められると考えられるか。

 心臓病などの内部障害では、障害の状態、体調に変化が生じやすい(波がある)という特性をもっており、その時々の状態に応じた配慮が必要です。「体力がない」「疲れやすい」といったことは社会生活を送る上で障害ですが、何が、どの程度できるのかということを、本人からの告知や専門医からの正確な情報に基づき把握し、適切な配慮を行うことで克服できることは数多くあります。
 教育(とりわけ公教育)については、「社会的障壁の除去についての必要かつ合理的な配慮」は健常者に与えられる教育の機会と同等のレベルに達することを基本とし、広く、かつ、きめ細やかに行われるべきであると考えます。具体例としては、学校にエレベーターが設置されたとしても、見た目ではわからない障害をもつ子どもは、他の子どもたちの目が気になり利用がしづらいです。教師は、まわりの子どもたちへ内部障害をもつ子どもの生活上の困難さを理解させることが必要です。
 就労については、能力的には問題ない場合でも、長時間の勤務ができないことが多くあります。通勤の面での配慮さえあれば健常者と変わりない勤務が可能な場合もあります。個々の能力が十分に発揮できるよう、障害の状況に応じた就労時間、休憩や休日、勤務形態などが適切かつ柔軟に配慮されることが必要であると考えます。たとえ休暇をとれても仕事量が軽減されないと、残業や休日出勤などによって補うように強いられ、体を休めるための休日が無くなり、体調悪化により退職せざるを得ない状況に至るということが多く見受けられます。個々に合わせた勤務条件への配慮とともに、職務内容や仕事量への配慮も必要です。また、障害を理由とした休憩・休暇、勤務条件の変更については、雇用関係における身分保障を伴っていなければならないと考えます。

1-4 合理的配慮については、その実施につき「過重な負担」が生じる場合には、合理的配慮をしなくても良いということになるが、どのような場合に「過重な負担」と考えるのか。その判断要素をどう考えるか。

 教育(とりわけ公教育)については、健常者と同等の教育機会の確保を基本に、「過重な負担」が生じる場合については、極めて限定的に解釈運用されるべきと考えます。
 就労の場合も、雇用主との相互理解促進や話し合いの中で、双方の負担を軽減するための様々な工夫があり得ることから、「過重な負担」を認めることには慎重であるべきと考えます。

1-5 各行政機関等及び事業者において、障害を理由とする差別を解消するための取組として望まれる取組(職員・従業員の研修、相談・紛争処理体制の在り方など)はどのようなものがあるか。

各行政機関においては、障害に対する誤解や偏見を取り除く努力として、個々 の障害の特性についての理解を広めることが望まれます。学校では、体力的に 追いついていけない心臓病児は、いじめの対象になりがちです。障害をもつ子 どもの内面やメンタル的な課題も含めて、教育委員会や教職員が適切な配慮を 行えるよう、保護者や主治医との連携を強めていくことが望まれます。地域に おいて、患者・障害者の当事者団体を活用していくことも検討してください。

2.行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本 的な事項(2号関係)

2-1 対応要領に記載すべき事項として、どのようなものがあるか(例えば、不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等、相談・紛争解決体制等)。

教育の面での合理的配慮の主な事例として

  • 酸素を持って学校へ通う場合など、特定の医療的ケアが必要とされる場合には、それを行える人的配慮を行う。
  • 心臓病児は暑さ、寒さ等気温の変化で体調をくずしやすいので、冷暖房の設備が必要。
  • 階段を上がることが困難な子どものためにエレベーターの設置やクラスを1階に配置するなどの配慮を行う。
  • 介助員の付き添いによる遠足、校外学習など移動を伴う授業での負担軽減。
3.事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項(3号関係)

3-1 対応指針に記載すべき事項として、どのようなものがあるか(例えば、不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等、相談・紛争解決体制、主務大臣による助言・指導等に関する事項等)。

就労面での合理的配慮の主な事例として

  • 定期的な通院、長期療養に対し、有給での休日を保障する。
  • 体力に応じて、連続勤務を避けるための休憩が取れるよう、就業規則等において位置づける。
  • ラッシュ時間を避けた出退勤時間など、個々に応じた勤務形態を設定する。
  • 通勤が困難な場合に在宅勤務を可能とする環境を整える。
  • 自家用車での通勤を可能とする。
5.上記以外の事項

 上記質問のほか、基本方針の作成に当たり留意すべき点や整理すべき点等があればお聞かせください。

 心臓病患者の中には、配慮が必要であるにも関わらず、状態が一定でないため、障害の「固定・永続」を基準とする身体障害者福祉法の障害認定を受けることができない患者も多数存在しています。現行法の下においては、そうした慢性疾患患者も対象とした基本方針となることを望みます。

(以上)

一般社団法人 全国手話通訳問題研究会

基本方針に関するご意見

団体名 一般社団法人 全国手話通訳問題研究会

◆当意見書における手話通訳についての基本的な考え方

○ 音声・書記言語ではなく手話言語(障害者基本法で言語と定義)を情報アクセス及びコミュニケーションの手段とする国民(=ろう者)がいる。ろう者は努力しても音声言語でコミュニケーションすることはあり得ず、ろう者が国民の一人として情報を受発信する場合及び社会参加する場合には、情報アクセス及びコミュニケーションの手段として、健聴者(社会)の側が手話(通訳)を用意する必要がある。

○ その際の判断基準は、「健聴者と同等の社会参加」である。

○ 当意見書における「手話通訳配置」とは、特に明記した場合以外は、公的制度(例:現行事業でいえば手話通訳派遣事業や手話通訳設置事業)によるものとし、手話奉仕員等のボランティア利用を想定していない。

○ 手話通訳派遣事業や手話通訳設置事業等の公的事業では、手話通訳者数や予算確保等の問題があることから、すべての手話通訳配置のニーズに対応できない(例:365 日24 時間いつでも公共施設に手話通訳者が待機していることは想定できない)。

○ 手話通訳配置だけでは情報提供やコミュニケーションが完全に保障されない場合がある(例:舞台公演、料理教室、医療診察、手元資料を見る必要がある会議等のように、視覚と聴覚を同時に用いる場面では手話通訳配置以外に主催者の配慮が必要。)

1.行政機関等及び事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する共通的な事項(2・3号関係)

1-1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方として、どのような場合を差別的取扱いと考えるのか。

◆ 手話によるコミュニケーションを必要とする聴覚障害者(以下「ろう者」という)の場合

○ パターンA(いわゆる直接差別)

  • 耳が聞こえないことを理由とする排除(例:耳が聞こえないから「雇用しない」「昇進させない」「受験させない」)

○ パターンB(いわゆる間接差別・関連差別)

  • 手話を使用することを理由とする排除(例:「問い合わせ方法が電話のみ」「面接は日本語のみ」)
  • 手話通訳を使用することを理由とする排除(例:「申込方法は電話だけであり本人以外の申込は認めない」「面接には第三者の出席を認めない」「目障りだから舞台上での手話通訳は認めない」「この会議には手話通訳はつきません」)

1-2 不当な差別的取扱いの基本的な考え方として、正当な理由がある場合は、差別とはならないとされているが、どのような場合に正当な理由があると考えるのか。

◆ 「ろう者」の場合

 例えば、緊急時等で手話通訳配置ができない場合は「正当な場合」に該当すると考えられる。
 この場合でも、手話以外の方法(例:筆談、絵や写真や文字による指示)による情報提供/コミュニケーションの努力が尽くされるべきである。ただし、この場合の手話以外の方法による情報提供/コミュニケーションは、あくまでも代用手段であり、平常時の対応手段として用意されることがあってはならないことに留意すべきである。
 また、冒頭の「◆当意見書における手話通訳についての基本的な考え方」に記したとおり手話通訳は、その性質上、情報アクセスやコミュニケーション保障が完全にできない場合があることに留意すべきである。

1-3 合理的配慮の基本的な考え方として、どのような場合に、どのような配慮が求められると考えられるか。

◆ 「ろう者」の場合

Ⅰ 公的機関(合理的配慮の提供は法的義務)

○ ケース1(情報提供)

ろう者に対して手話による情報提供が用意されない場合

※ 実例

① 国民/住民向け情報提供場面(例;テレビの官房長官記者会見や災害速報、行政機関の広報番組)に手話(通訳)がない。(理由:想定外、予算不足)
② 国民の権利を保障する場面(例:選挙公報、司法、教育、職業紹介)に公費負担による手話(通訳)がない。(理由:想定外、予算不足)

○ ケース2(双方向コミュニケーション)

ろう者がいる場面で手話によるコミュニケーションが(可能であるのに)用意されない場合

※ 実例

① ろう者が手話通訳配置を要求したが用意されない。(理由:手話ができる従業員が雇用されてない、時間外、要綱外、予算不足)
② ろう者の出席が予想される行事(例:市民向け行事、市民検診)やろう者の来 所が予想される公共施設(例;市役所、警察署、ハローワーク、病院)や大規模集客施設(例:百貨店、レストラン、ショッピングセンター、大病院)に手話通訳者が配置されない。(理由:想定外、予算不足、出席/来所が不確定)

→ これらの場合には手話通訳者が配置される必要がある。

→ なお、公共施設への手話通訳者の配置については、すべての公共施設への常時配置が必要とするものではなく、小規模施設については、妥当と考えられる時間内で配置が可能となるしくみを用意することで合理的配慮の提供といえると考えられる(例:交番に県警本部から1時間以内に手話通訳者を派遣する)。

Ⅱ 民間事業者(合理的配慮の提供は努力義務)

○ ケース1(情報提供)

ろう者に対して手話による情報提供が用意されない場合

※ 実例

① 幅広い情報提供場面(例:テレビのコマーシャルや店舗内の利用者案内)に手話(通訳)がない。(理由:想定外、予算不足)

○ ケース2(双方向コミュニケーション)

ろう者がいる場面で手話によるコミュニケーションが(可能であるのに)用意されない場合

① ろう者が手話通訳配置を要求したが用意されない。(理由:手話ができる従業員が雇用されてない、予算不足)
② ろう者の出席が予想される行事(例:一般顧客向け行事)やろう者の来所が予想される施設(例:大規模商業施設)に手話通訳者が配置されない。(理由:想定外、予算不足、出席/来所が不確定)

→ これらの場合には手話通訳者の配置に努力する義務がある(何ら対応しないことは認められず、例えば「公的な手話通訳派遣事業の利用」「従業員で手話コミュニケーション可能な者の活用」「従業員への手話研修」等の行動が必要である)。

→ また、合理的配慮の提供の質(例:手話通訳の質)を担保するために、「苦情処理」のしくみがあわせて用意される必要がある。

→ 合理的配慮の具体的内容は、障害者と相手方の両者協議によるとされるが、聴覚障害者の場合、両者協議そのものにも手話通訳が必要な場合があることが考慮されるべきである。

→ また、重複する障害のある聴覚障害者の場合「意思表明が困難な場合」(表明できない場合と表明するが疎通が困難な場合がある)があり手話通訳者及び当事者相談員等の専門的な立場からの支援が必要である。

1-4 合理的配慮については、その実施につき「過重な負担」が生じる場合には、合理的配慮をしなくても良いということになるが、どのような場合に「過重な負担」と考えるのか。その判断要素をどう考えるか。

◆ 「ろう者」の場合

○ 民間事業者については、手話通訳者や手話コミュニケーションが可能な人材を配置することにより、事業継続が困難になる場合は「過重な負担」と考えられる。

○ ただし、この場合でも、合理的配慮の観点から、手話以外の方法(例:筆談、絵や写真や文字による指示)による情報提供/コミュニケーションの努力が尽くされるべきである。同時にこの場合の手話以外の方法による情報提供/コミュニケーションは、あくまでも代用手段であり、平常時の対応手段として用意されることがあってはならない。

○ 具体的には、当該自治体は、利用しやすい手話通訳配置が可能である事業(例:手話通訳設置事業や手話通訳派遣事業)を用意する必要がある。

1-5 各行政機関等及び事業者において、障害を理由とする差別を解消するための取組として望まれる取組(職員・従業員の研修、相談・紛争処理体制の在り方など)はどのようなものがあるか。

◆ 「ろう者」の場合

○ ろう者を雇用した事業者内での職員/従業員向け手話講習会の開催

○ 住民への手話の普及(例:学校教育への導入)。

○ 手話による情報アクセス/コミュニケーションの不提供が差別であることの啓発

○ 各事業所単位での「合理的配慮推進委員会(仮称)」の設置

2.行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項(2号関係)

2-1 対応要領に記載すべき事項として、どのようなものがあるか(例えば、不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等、相談・紛争解決体制等)。

◆ 「ろう者」の場合

【不当な差別的取り扱いとなる行為の具体例】

○ 手話の使用を保障しない(例:普通学校のろう生徒に手話による学習機会を提供しない、公共施設での手話通訳者の不採用)

【合理的配慮の好事例】

○ 市役所への手話通訳可能な正職員の複数採用(例:福島県会津若松市、和歌山県紀の川市、石川県白山市、大阪府守口市))

○ 災害発生等の緊急時におけるテレビへの手話通訳者の配置(例:ニュージーランド、米国)

3.事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項(3号関係)

3-1 対応指針に記載すべき事項として、どのようなものがあるか(例えば、不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等、相談・紛争解決体制、主務大臣による助言・指導等に関する事項等)。

◆ 「ろう者」の場合

【不当な差別的取り扱いとなる行為の具体例】

○ 手話の使用の不保障(例:朝礼や会議での手話通訳の配置の拒否)

○ ろう者の排除(例:会議からの排除や採用拒否)

○ 性別を配慮した手話通訳者の配置がなされない(例:女性の診療場面での男性通訳)

【合理的配慮の好事例】

○ ろう者従業員を雇用する民間企業における手話通訳者の雇用や従業員の手話使用の促進

【その他】

○ 事業者の手話の使用の保障が進展するために、国や当該自治体からの多様な支援措置が必要である(例:利用しやすい手話通訳配置が可能である手話通訳派遣事業、手話通訳者雇用費用の税額控除、職場定着支援としての手話通訳派遣事業の充実強化)

4.その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項 (4号関係)

4-1 相談及び紛争の防止等のための体制の整備、啓発活動、情報(具体的な相談事例、国際的動向等)の収集・整理及び提供について、どのようなことを期待するか。

◆ 「ろう者」の場合

「相談及び紛争の防止等のための体制の整備、啓発活動、情報の収集」等の活動にあたっては、ろう者や手話通訳者の当事者団体の関与が必要である。

4-2 障害者差別解消支援地域協議会について、どのような機能や取組を期待するか。

◆ 「ろう者」の場合

○ 構成員に当事者(ろう者・手話通訳者)の参画

○ ろう者の社会参加にあたっての手話の使用の必要性の啓発

○ 手話の使用にかかる公的制度の充実強化の必要性の啓発

○ 手話の普及の促進

5.上記以外の事項

 上記質問のほか、基本方針の作成に当たり留意すべき点や整理すべき点等があれば お聞かせください。

◆ 「ろう者」の場合

別紙参照

(以上)

(別紙)政策委員会への提案書

1 現行意思疎通支援事業の問題点

◆差別解消法が設定する基準とそれがもたらす事業水準(ろう者関係)

差別解消法の内容個別事業で考えられる実施水準 総合支援法が定める事業水準と考えられる課題
障害を理由とする差別行為の禁止 ①手話の使用の拒否の禁止
→手話通訳者の配置や受け入れ
②手話通訳者等が確保できないときの情報伝達拒否の禁止
→筆談や指差し等による情報伝達の努力が必要
①ニーズに合わせた手話通訳者の配置が必要
→欄外参照
②手話奉仕員(ろう者とのコミュニケーション方法の理解者)の増員が必要
→手話奉仕員養成が必要
→国の補助金(負担金)増額が必要
社会的障壁の除去を怠ることによる権利侵害の防止
→国や地方公共団体は法的義務、民間は努力義務
①国や地方公共団体関連の施設や事業で手話が使用できる環境の提供
→手話通訳者の配置や受け入れ
②民間事業者関連の施設や事業で(努力により)手話が使用できる環境の提供
→民間事業者が利用できる手話通訳者の配置を保障する公的事業の実施
①手話通訳者の配置(採用)の義務付けは市町村の役所のみ。
→広く国や地方公共団体の施設や事業で手話通訳者の採用や配置できる事業の実施が必要
②手話通訳者派遣事業の全国的な展開実施が必要
→欄外参照
相談及び紛争防止のための体制整備
→国や地方公共団体は法的義務
①国や地方公共団体で当該機関の設立が必要
→「手話の使用の拒否」の相談や紛争の発生が想定される
→「手話の使用」についての十分な知識やノウハウのある団体や個人の関与が必要
①ろう者団体や手話通訳者団体の関与が必要
→会議でのろう者の参加保障のため手話通訳者の配置が必要
→欄外参照
障害者差別解消支援地域協議会の設置(任意)①国や地方公共団体で当該機関の設立が想定される
→「手話の使用の啓発」や「手話の使用の拒否」事例にかかる対応が想定される
→「手話の使用」についての十分な知識やノウハウのある団体や個人の関与が必要
①ろう者団体や手話通訳者団体の関与が必要
→会議でのろう者の参加保障のため手話通訳者の配置が必要
→欄外参照

◆総合支援法の課題への対応

○ いずれの場合も、現状では「有資格手話通訳者の数」があり、さらに手話通訳者がいる地域でも「事業費(予算)」がないか「手話通訳事業を担う事業者(市町村を含む)」がない状況がある。

○ これらの解決のためには、「手話通訳者養成と手話通訳者の身分保障」「国の補助金(負担金)増額」「手話通訳事業所基準の策定」が必要と考えられる。

2 手話通訳制度の福祉モデルと差別禁止モデル

 手話通訳制度が「障害を理由とする差別の解消の推進」に資する制度として有効に機能するためには、差別禁止モデルを考慮した制度とする必要がある。

①福祉モデル:障害者福祉の手話通訳事業により、教育や司法など多方面・他分野の手話通訳を実施する。
②差別禁止モデル:教育や司法など各分野の省庁・機関がその分野の情報保障責任(財政責任)を負う。

3 障害者総合支援法における意思疎通支援

 各行政領域を横断的にカバーできる施策であり、その財政措置が必要であることから、内閣府などによる統一した行政施策とし計画的に推進されることが必要であろう。
 また、当面の対策として、現行制度を発展させる観点から意思疎通支援を補助金制 度から負担金制度とすることも検討されるべきである。

NPO法人 筋痛性脳脊髄炎の会

基本方針に関するご意見

団体名 NPO法人 筋痛性脳脊髄炎の会

1.行政機関等及び事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する共通的な事項(2・3号関係)

1-1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方として、どのような場合を差別的取扱いと考えるのか。

 障害を理由とするあらゆる区別、排除、又は制限によって、すべての人権、及び基本的自由を差別なしに完全に享有することを妨げられることであり、合理的配慮が欠如していることによって、他の人と平等に社会参加する権利を奪われていることであると考える。
 筋痛性脳脊髄炎(慢性疲労症候群)という疾患は、脳と中枢神経に影響を及ぼす多系統にわたる複雑な慢性疾患であり、機能障害は全身に及び、癌や心臓病、エイズのような他の極めて重症な疾患と同様に、患者のQOLを著しく低下させる重大な病気であり、4 分の1の患者は寝たきりに近いか、ほとんど家から出ることのできない重症患者であると推定されているにもかかわらず、障害者施策の対象から除外されているために、必要な医療を受ける権利、教育を受ける権利、選挙権を行使する権利、働く権利等が奪われている。
 2011年に障害者基本法が改正され、障害者に慢性疾患に伴う機能障害が含まれることになり、難病に起因する心身の機能の障害があり、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受けている状態にある方も、障害者差別解消法の対象である。すなわち、障害者基本法や障害者差別解消法は、難治性疾患によって生活にしづらさのある方も障害者であるとし、これらの法律によって守られるとした。
 従って、難治性疾患によって生活にしづらさのある方も、他の人と平等に社会参加する権利が保障されるべきだが、筋痛性脳脊髄炎などの多くの難治性疾患が、障害者福祉をはじめとする多くの障害者施策の対象から除外され続けており、例えば必要な車いすやホームヘルプも利用できず、年金や雇用の支援も受けられない。その除外の理由は、診断基準が未確立等と言われており、患者自身の責任ではなく、社会的にも納得が得られるとは思われない理由である。
 難治性疾患によって日常生活又は社会生活に相当な制限を受けているのに、生活の維持や社会参加をするための支援を受けられないというのは合理的配慮に欠けており、障害者差別解消法の対象となる差別には当たらないのか。つまり、行政の障害者福祉サービスの申請に際して、障害者総合支援法の障害の範囲における難病の対象規定により除外される難治性疾患があることは、「行政機関において不当な差別的取り扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない」としたことと矛盾するのではないか。これは障害をインペアメント(機能障害)に限定するのか、インペアメントと社会的障壁の相互作用と捉えるかという基本的指針に通じる問題である。難治性疾患患者は、病名によって差別されることなく、合理的配慮を受けられるべきである。
 また、難病・難治性疾患は、診断がつくまでに何年もかかる場合も多い。後者の立場をとるのであれば、その間も生活のしづらさのある障害者は、ニーズに応じて合理的配慮を受けられるべきである。診断がつかない責任を患者に求めるべきではない。
 障害者差別解消法の「基本方針」では、障害を理由とする不当な差別的取り扱いをしないとしており、政府・国会による法制度の見直しをふくめ、その完全な実現のために全力をあげて取り組んでいただきたい。本法が施行されることにより、現実のニーズに即して、「谷間」に置かれた難治性疾患患者の状態が改善されることを望む。

1-2 不当な差別的取扱いの基本的な考え方として、正当な理由がある場合は、差別とはならないとされているが、どのような場合に正当な理由があると考えるのか。

 障害当事者の生命にかかわるような、極めて重大なリスクが生じることが予見される場合。

1-3 合理的配慮の基本的な考え方として、どのような場合に、どのような配慮が求められると考えられるか。

 難治性疾患を抱える障害者の多くは、体力がないために活動を制限せざるを得ず、無理をすると悪化する、激しい疲労や痛み、睡眠障害などにより体調に波があり継続的活動が困難、体調が不安定で長時間の休養を必要とし、短時間しか活動できない等の困難を抱えており、障害の特性(病気の特性)に応じた、一人ひとりの体調や体力に応じた社会参加の権利を保障するための合理的な配慮が必要である。
 また、障害者差別解消法においては、障害者本人の意思表明があった場合に、合理的配慮をしなければならないとしているが、そもそも障害者に慢性疾患に伴う機能障害が含まれるようになったのは、2011 年の障害者基本法改正においてである。病気による障害は外からは見えないために、障害を理解されることが困難で、時として詐病の扱いを受けてきた疾患さえある歴史を考えると、長年、差別と抑圧にさらされてきた疾患を抱えた障害者に、いきなり意思表示を求めるのはハードルが高すぎるのではないか。障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受けている状態にある難病の方も、障害者差別解消法の対象であることを、難病当事者はもちろん広く国民にも周知し、難病者が合理的配慮を求めやすくなるような環境整備が必要である。

1-4 合理的配慮については、その実施につき「過重な負担」が生じる場合には、合理的配慮をしなくても良いということになるが、どのような場合に「過重な負担」と考えるのか。その判断要素をどう考えるか。

 差別禁止部会での、「過度の負担であるかどうかの判断に当たっては、諸外国における立法例・運用等をふまえると経済的・財政的なコストの他に、業務遂行に及ぼす影響等を考慮する必要がある」という案を支持する。
 筋痛性脳脊髄炎の場合、現時点では専門医が極めて少ない事に鑑み、外出できない重症患者に専門医の訪問診療を求めることは過重な負担と考えられるが、諸外国ではそうしたことが行われている例もあり、将来的にはそうした配慮を求める。

1-5 各行政機関等及び事業者において、障害を理由とする差別を解消するための取組として望まれる取組(職員・従業員の研修、相談・紛争処理体制の在り方など)はどのようなものがあるか。

 障害者本人の意思表明があった場合に、合理的配慮をしなければならないとしているが、いわゆる従来の障害者以上に、難治性疾患を抱える障害者は、あらゆるものに遠慮して、必要な支援も我慢する傾向にある。そういった患者の特性を考え、支援者となるべき行政職員が、そのことをよく理解するために、難治性疾患や障害当事者による研修は必須とすべきである。病気による障害は目に見えないからこそ、配慮を求めやすくするためには、意思表示に向けた支援が必要という問題意識を育てる研修が必要である。

2.行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本 的な事項(2号関係)

2-1 対応要領に記載すべき事項として、どのようなものがあるか(例えば、不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等、相談・紛争解決体制等)。

 今回のヒアリングの場合でも、体力がなく体調が不安定な難治性疾患患者にとって、短期間に意見をまとめるよう依頼されることは、非常に負担が大きい。だからといって断れば、私達の声は届かない。期間的にもっと余裕を持って依頼していただくような配慮があるとありがたい。また、行政のこういった審議会に、難治性疾患当事者が出席する場合、スカイプやテレビ電話など、自宅からでも参加できる方法を考慮していただきたい。こうしたことは、特定の日にきちんと体調を合わせることの難しい難治性疾患患者への「合理的配慮」であると考える。
 また、車椅子を利用している障害者の質問に対して、相手が介護者に対して返事をするという場合が多々ある。質問の意味が解せたのであれば、障害当事者に返答しても理解できることは明白であるのだから、あたかも車椅子の障害者が保護の対象であるかのように扱うのは差別であると考える。

 筋痛性脳脊髄炎の患者には、身の回りのこともできず常に介助がいり、終日就床を必要としている患者や、身の回りのある程度のことはできるがしばしば介助がいり、日中の50%以上は就床している患者、身の回りのことはでき介助も不要であるが、通常の社会生活や軽労働は不可能である患者などがいることを考慮し、以下の配慮を求める。

【日常生活を送るため】

〇 障害の程度に応じてホームヘルプを受けられなければ、社会参加どころか、命を維持していくことさえできない。こうした事例の集積が急がれる。

【外出するため】

〇 重症度に応じて、電動車椅子やリクライニング付き車椅子が必要であり、臥床した状態のままの車椅子でなければ外出できなければ、車椅子を押す方も必要である。

〇 この疾患の特徴は、日常生活における最小限の活動や簡単な知的作業などによってさえ、著しく急激な身体的及び認知疲労が起こり、身体を衰弱させ、症状の悪化を引き起こし、回復が非常に困難なことである。たとえば、タクシーや電車を使って通院等した後、何日も何週間も寝たきりに近い生活を強いられる患者が非常に多く存在する。こうした場合は電動車いすを支給されるべきであると考える。

【選挙権を行使するため】

〇 車椅子を支給されず、外出支援も受けられず、郵便による投票も認められていないために、選挙権を行使できない患者が相当数いる。郵便等による不在者投票を認めるなどの合理的配慮をする事により、投票する権利を守るべきである。

【教育を受けるために】

 慢性疾患を抱える小児には、特別支援学級や院内学級があるが、筋痛性脳脊髄炎の症状で通学できない場合には、義務教育を受ける権利すら奪われている。診断できる医師が極めて少ないため、診断されるまでに数年かかる例も珍しくなく、不登校と思われ、無理して学校に行かされて症状が悪化してしまうケースもある。この病気のようなケースで自宅で療養している場合には、特別支援教育という制度があるが、そのことを教育委員会ですら知っているところは少ない。
 「難病相談支援ネットワーク」に相談し、文部科学省まで話が上がり、やっと特別支援教育で訪問教育が実現したものの、その間に1 年以上がたってしまったという実例もある。この方は訪問教育に結び付いたが、そうでないケースは全国に多々あるのではないかと推測される。また、体育の単位が取れずに、高校を退学せざるを得なかったという例もある。それゆえ以下の配慮を求める。

〇 全国どこでも訪問教育を実施し、教育を受ける権利を守ること。また、成長期の小児にとっては、勉強だけではなく、友人関係を築くことも大切であるので、たまに体調が良い時には短時間の通学を認めること。そして、特別支援教育を周知させること。

〇 学校に通学できる場合には、その日の体調に応じて、授業を受ける時間を短縮する事や、簡易ベッドなどに横になったまま授業を受けることを認めること。

〇 ホームスクールなどの単位を認めること。

【必要な医療を受けるため】

〇 筋痛性脳脊髄炎の治療を行う医師が極めて少ないために、患者は飛行機や新幹線などの通院を余儀なくされている。近くに病院がない場合に限って、通院に伴う費用を助成すること。

【コミュニケーション支援のために】

〇 体力のなさから、活動できる時間が非常に制約され、全ての面においての意見表明が制限されるため、自分の意思を表出・伝達する活動が制約されている。ほとんど家から出ることの出来ない重症患者も多いことから、インターネットを活用することが考えられるが、パソコンの入力作業は重労働であり、記憶力/集中力/思考力低下のために、習得出来ない方も多くおり、光に過敏なために、画面を見ることに耐えられない方もいる。そうしたことを補う支援を求める。

3.事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項(3号関係)

3-1 対応指針に記載すべき事項として、どのようなものがあるか(例えば、不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等、相談・紛争解決体制、主務大臣による助言・指導等に関する事項等)。

 公共交通機関等を利用する際、難治性疾患や内部障害などの見えづらい障害の方が、優先席等を利用しやすいような配慮や、多少は歩行できても、車イスを利用せざるを得ない重度疲労を抱えた障害者がいることへの配慮を求める。見た目に障害があることが分からないので、障害特性を啓発していく必要がある。
 筋痛性脳脊髄炎患者が、社会参加の機会を少しでも確保するために、以下の配慮を求める。

【外出するため】

〇 公共交通機関を使う際に、駅構内は備え付けの車椅子を押していただき、必ず優先席に座れるように配慮すること。

〇 新幹線を利用する際に多目的室を必ず予約できるようにすること。

〇 公共交通機関の駅構内に、必ずエレベータかエスカレーターを設置すること。

〇 障害者手帳を持っていなくとも、障害者用の駐車スペースを利用できるようにすること。

〇 移動支援事業所が、臥床した状態のままの車椅子を手配できるようにすること。

【必要な医療を受けるため】

 患者の中には、月に一回の通院で体力を使い果たす方、それすら出来ない方もおり、十年近くも専門医の診療を受けられずに亡くなった方もいる。また、寝たきりで何年も経管栄養に頼り、かろうじて命をつないでいる方もいる。病院に行くだけで体が衰弱し、行く前よりも症状が悪化する方もいるが、病状の管理や薬をもらうためには通院が必要である。

〇 病院や診療所において、横になれるスペースを用意すること。

〇 国際筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群学会は、患者の約25%は寝たきりに近いか、ほとんど家から出ることのできない重症患者であると発表しており、そうした患者には訪問診療や訪問看護を行うこと。

【就労するために】

 この病気のほとんどの患者は仕事を継続することができないが、軽症の方には以下の配慮を求める。

〇 短時間労働や週に数日の勤務。

〇 休憩室に長椅子やついたてを置き横になって休むことを認めること。

〇 ラッシュアワーを避けるために時差出勤を認めること。

〇 体温調節が困難なため、室温や空調を適切に設定すること。

〇 体調が不安定であることから、フレキシブルな勤務時間や在宅ワークを認めること。

4.その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項 (4号関係)

4-1 相談及び紛争の防止等のための体制の整備、啓発活動、情報(具体的な相談事例、国際的動向等)の収集・整理及び提供について、どのようなことを期待するか。

 障害者施策における長期慢性疾患患者等の対応についての国際的動向の情報収集やその対策についての体制整備の促進、また、患者の生活実態(就労実態も含む)の横断的な調査の実施を期待する。
 筋痛性脳脊髄炎は、日本では慢性疲労症候群と呼ばれ、病名によってもこの病気の深刻さが矮小化され、患者の置かれた深刻な状況は全く知らされてこなかったために、患者達は無理解と偏見にさらされてきた。国主導で正しい認知を広め、この病気の啓発を行い、患者達が差別的な扱いを受けないように配慮してほしい。その場合には、専門家の意見だけを聞くのではなく、家から出ることもできず、全く声を上げることもできない重症患者の声をも拾い上げ、当事者の置かれた状況をもれなく反映させたものにすること。

4-2 障害者差別解消支援地域協議会について、どのような機能や取組を期待するか。

 既存の障害者団体の代表のみでなく、長期慢性疾患患者等の新たな障害者の代表も委員会に参画可能な体制にすること。また、今まで難病患者の生活支援を担ってきた各地の地域難病連や難病支援センター等や、相談支援事業所、紛争解決機関に対して、「病気」や「患者」の特性を教示し、適切な解決に導けるよう連携する役割を担ってほしい。

5.上記以外の事項

 上記質問のほか、基本方針の作成に当たり留意すべき点や整理すべき点等があれば お聞かせください。

 難病(難治性疾患)についての差別事例が集積されたことがあまりないが、ハンセン病や水俣病、肝炎、HIV などを見れば、病気との戦いが「差別との戦い」であることは容易に想像できる。また、疾病の系統(遺伝系、筋・神経系、内臓系、免疫系などなど)によっても、被っている差別は千差万別である。
 これまで、難治性疾患を抱えた方は、障害者施策の対象として見られてこなかったこともあり、当事者側もいきなり「差別解消法の指針について述べよ」と言われても対応が難しい。もう少し丁寧なヒアリングをするなり、パブリックコメントで事例集積するなりの努力が必要ではないか。そして、まずは障害者施策の対象から除外され、「制度の谷間」にある難治性疾患を抱えた障害者の事例から始めるべきである。

(以上)

【参考資料】

NPO法人「筋痛性脳脊髄炎の会」
理事長 篠原三恵子
東京都練馬区高野台3-11-12
HP:http://mecfsj.wordpress.com/

【筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群とは】

  • 突然激しい倦怠感に襲われ、生活が著しく損なわれるほど強い疲労とともに、頭痛、微熱、筋肉痛、脱力感などの全身症状と、思考力・集中力低下などの神経認知機能障害が長期にわたり持続し、社会生活が困難になる難病です。
  • この病気の中核症状は、日常生活における最小限の活動や簡単な知的作業などによってさえ、著しく急激な身体的及び認知疲労が起こり、身体を衰弱させ、症状の悪化を引き起こし、回復が非常に困難なことです。
  • 主な病態は中枢神経系の機能異常や調節障害であり、通常ウィルス感染後に発症するというのが、欧米諸国における共通認識で、決して慢性疲労が重症化すると、本疾患を発症するわけではありません。
  • 国際 ME/CFS 学会は、患者の約25%は寝たきりに近いか、ほとんど家から出ることのできない重症患者であると発表しています。
  • 1969年よりWHO で神経系疾患と分類されており、国際的に認められた診断基準があり、疾病概念が確立している病気ですが、詳しい病態は未だ不明で有効な治療法もなく、成人が発症前のレベルの身体機能を取り戻す率は0~6%との報告があります。
  • 脳と中枢神経に影響を及ぼす多系統にわたる複雑な慢性疾患であり、機能障害は全身に及び、癌や心臓病、エイズのような他の極めて重症な疾患と同様に、患者のQOL を著しく低下させる重大な病気です。
  • 国内の患者は 24~30 万人と推定されており、子供でも発症します。

【病名】

  • 日本で慢性疲労症候群(CFS)と呼ばれている病気は、イギリス・カナダ・ヨーロッパでは、筋痛性脳脊髄炎(ME)と呼ばれています。
  • 1930年代にカルフォルニア州で集団発生し、初めて医学雑誌に論文が掲載。
  • 1955年にロンドンで集団発生し、1956年に医学誌「ランセット」に、良性筋痛性脳脊髄炎と名付けることが提案。その後、重度の身体障害を引き起こす患者が多いことから、筋痛性脳脊髄炎(ME)として症例定義発表。
  • ところが、1984~86年の米国ネバダ州での集団発生後、1988年の国際学会で患者の反対を押し切って、慢性疲労症候群と命名。
  • CFS : Chronic Fatigue Syndrome
  • ME : Myalgic Encephalomyelitis

【病気による生きづらさ】

  • 体は衰弱しているが外見上は健康そうに見えるため、病気の辛さが周囲から理解されない。
  • 体力がないために活動を制限せざるを得ず、無理をすると悪化する。
  • 激しい疲労や痛み、睡眠障害などにより体調に波があり、継続的活動が困難。
  • 体調が不安定で長時間の休養を必要とし、短時間しか活動できないため、社会から孤立する。
  • 日常生活動作(ADL)が著しく低下するにも関わらず、身体障害者手帳を取得できる患者は稀で、必要な社会保障が受けられない。

※詳しくは、NPO法人「筋痛性脳脊髄炎の会」のホームページをご覧下さい。
http://mecfsj.wordpress.com/

NPO法人 全国言友会連絡協議会

基本方針に関するご意見

団体名 NPO法人 全国言友会連絡協議会

1.行政機関等及び事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する共通的な事項(2・3号関係)

1-1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方として、どのような場合を差別的取扱いと考えるのか。

 私たちは、日本国内34 地域にある吃音のある人たちのセルフヘルプグループを会員とする全国的な組織です。
 吃音とは、ことばが滑らかに出ないで、ある人は繰り返し、ある人は伸ばし、またある人は詰まって出るまでに時間がかかるという障害です。脳機能の損傷によらず、幼少期からの環境的遺伝的要因でそのような特徴を持つようになる発達性吃音を持つ人がほとんどです。言語面のそのような特徴のため、人とのコミュニケーションに支障があるだけでなく、どもるのではないかという予期不安、からかいや差別を受けるのではないかという気持ちから発言を控えたり、行動を抑制してしまいます。思うようにコミュニケーションがとれなかった場合など大きな挫折感を味わいますし、社交不安に陥る人も多いのです。会話という言語面のみならず、心の問題にも深くかかわってきます。
 このような障害であるため、社会生活を送る上で大きな負担を覚えますし、社会生活の多くの場面で差別的取扱いやその一歩手前のことが起こっています。ここでは、その中から雇用の場面と教育の場面を中心に述べます。
 因みに、吃音のある人は100 人に一人という割合でどのような社会にもいるといわれています。少数派でありますが、日本だけで100万人にも上ります。

 吃音のある人は、その特徴的な話し方をことさら強調して捉えられてしまいがちです。少数派でありかつその負のイメージは、その人が持っている他の能力をも低く捉えられがちであること、また人と違うことでからかいや攻撃の対象とされやすいことがあります。人としての正当な評価を拒む、そのような態度が不当な差別的取扱いに結びついてくるように思います。

<雇用分野>

① 仕事の本質部分の業務は問題なく遂行できるのにも拘わらず、話し言葉による情報伝達・コミュニケーションに障害が出るため、その仕事から排除されたり、また人格を傷つけるような侮蔑的・差別的な言動を受けることがあります。

② 採用試験にあたり、特に面接(1 対1 の場合のほかに最近ではグループ面接も採用されている)の場面では吃音症状が平時より重くなることが多いにあります。昨今、コミュニケーション能力を重視した採用形態をとる企業が多々あります。そのような状況において、吃音による適切な理解と配慮があれば、本質的なコミュニケーションには問題がないにも関わらず、吃音のある人は不利な状況にあります。その結果、就職を希望しながらも、叶わない人が沢山います。

<教育分野>

③ 教師や生徒に真似をされたり、からかわれたりして不快な思いをします。また仲間はずれや差別的扱いも受けることがあります。

④ 国語の授業などで、吃音のある生徒の気持ちを聞かないで朗読の順番を飛ばされたり、逆に話す練習だと称して何度も読ませるなど他の生徒と違う扱いをされることがあります。

1-2 不当な差別的取扱いの基本的な考え方として、正当な理由がある場合は、差別とはならないとされているが、どのような場合に正当な理由があると考えるのか。

 吃音は原因が明確でなく、完治の困難な障害です。それゆえ、吃音のある人は、そういう自分の状態を受け入れ、そのままで生きていくことを望みます。しかしながら、アナウンサーのように仕事の本質部分がことばで情報を伝えることの場合などはあきらめざるを得ないと思います。

<雇用分野>

 仕事の本質部分が話し言葉による情報伝達・コミュニケーションに関わるものであり、話すことが滑らかでない、時間がかかる、わかりにくいという吃音の特徴的なことが、いろいろな配慮で補えない場合がそうでしょうか。。

<教育分野>

 教育という観点からは、不当な差別的取扱いをゆるす正当な理由は見つかりません。

1-3 合理的配慮の基本的な考え方として、どのような場合に、どのような配慮が求められると考えられるか。

 合理的配慮とは、その特徴的な話し方に寛容の気持ちで接していただくこと、あるいは代替の手段によりコミュニケーションを補い、吃音のある人のその持てる能力を発揮できるような配慮のことを言います。

<雇用分野>

① 話し言葉による情報伝達・コミュニケーションの場面において、話すことが滑らかでない、時間がかかる、わかりにくいという吃音の特徴的なことがありますが、余裕をもって対応すること、あるいは紙楳体を使ったりタブレット端末を使ったり、話し言葉以外の手段でもできるようにすること。

<教育分野>

 1-1の③については、教師は吃音の知識・対応の仕方について学び、それを基に学級の生徒にも伝えておくこと、そしてからかいはしてはいけないことを指導すること。また1-1の④については、吃音のある子の気持ちを聞いてから対応を決めることや、吃音の特徴を知った対応を心掛けることです。
 ことばの教室の先生や言語聴覚士と連携し、相談できる関係を築いておくことも必要です。

1-4 合理的配慮については、その実施につき「過重な負担」が生じる場合には、合理的配慮をしなくても良いということになるが、どのような場合に「過重な負担」と考えるのか。その判断要素をどう考えるか。

 合理的配慮をしなくてもいい場合を考えるのはつらいことですが、安全・安心のために迅速な対応が要求されるような状況の時はやむを得ないかと思います。そのほか一般的なことですが、そのための費用や時間が大幅に必要な場合などがあり得ます。

<雇用分野>

 民間企業ですと経済的効率という基準で考えると、人の雇用もコストとなります。効率的な働き方が常に求められています。合理的配慮により多額の費用が必要になる、時間が大幅にかかる、安全・安心を損なうなどが発生する場合には合理的配慮が免除される場合ともなり得ます。
 しかし、事前に吃音であることを伝えられる場合には、それを考慮した働き方を考えるなど、合理的配慮を免除される「過重な負担」の適用はないように思います。

<教育分野>

 教育という観点からは、合理的配慮が免除される過重な負担は見つかりません。

1-5 各行政機関等及び事業者において、障害を理由とする差別を解消するための取組として望まれる取組(職員・従業員の研修、相談・紛争処理体制の在り方など)はどのようなものがあるか。

 1-1で述べたような不当な差別的取扱いが生じる背景には、吃音という障害についての無理解が潜んでいるように思います。吃音のある人の心理・行動特性などを理解するような研修を開催することを要望します。教育分野では教育委員会主導で開催し、必要に応じてことばの教室など関係機関や当事者団体にも依頼するなどのネットワーク作りにもあたっていただきたい。地域の言語聴覚士協会もそのようなネットワークに入っていただきたいと思います。

2.行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項(2号関係)

2-1 対応要領に記載すべき事項として、どのようなものがあるか(例えば、不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等、相談・紛争解決体制等)。

差別的取り扱いとなる行為の具体例:

① 発達障害の公的な相談機関(発達障害者支援センター)は存在するのに対し、吃音の公的な相談機関は存在せず、また民間にも多く存在するわけでもないことから、吃音のある人は孤立し精神的に追い詰められる状態になりやすい現状があります。言友会のようなセルフヘルプグループが唯一頼れる場という地域もあり、言友会もない地域ではどこに相談したら良いのでしょうか。

② 義務教育である小中学校において、教師をはじめ周囲の人の吃音への理解・認知が乏しいことから、吃音はからかいの対象となりやすく、また吃音があってもその症状を本人が隠すことにより、その苦悩が吃音のある児童本人の心の奥に追いやられ、問題を更に根深いものとしています。

③ 国家資格である医師、言語聴覚士、そして臨床心理士においても、吃音について学ぶ時間や機会がすくないことなど吃音への臨床経験が乏しいことにより、医療機関等において、受診を希望しても対応できる専門家が少ないため、受診を拒否される場合があります。

④ ハローワークでの求職相談に際し、吃音であることを告げると障害者手帳をもらわないと就職先はないといわれます。障害者手帳の取得も吃音だけでは難しく、結局就職ができていません。

合理的配慮の具体例:

① 公務員試験の面接において、吃音を持つことを述べると、質問をゆっくりとしていただき、話し終わるまできちんと待っていただけた。また、グループ面接においても、発言の機会を与えていただいた。

3.事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項(3号関係)

3-1 対応指針に記載すべき事項として、どのようなものがあるか(例えば、不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等、相談・紛争解決体制、主務大臣による助言・指導等に関する事項等)。

差別的取り扱いとなる行為の具体例:

① 店での注文の際に、会話による注文がスムーズに出来ないことから、店員から注文をせかされるだけでなく、冷ややかな態度・視線を浴びせられ、不快な気持ちにさせられることがあります。

② 例えばコンビニにおけるホットスナックの注文など、会話によってしか注文ができないシステムの場合、上記①にあるような対応への不安から、注文を諦めてしまう吃音のある人もいます。

③ 就職等の集団面接において、「吃音がある」理由に配慮しての、たとえば会話による自己アピールの時間を長めに与えられるというようなことはありません。

合理的配慮の具体例:

① 会話による注文がスムーズではなくても、真摯な態度で吃音のある人を接客する店員もおり、そのような場合は安心して注文をすることができます。

4.その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項(4号関係)

4-1 相談及び紛争の防止等のための体制の整備、啓発活動、情報(具体的な相談事例、国際的動向等)の収集・整理及び提供について、どのようなことを期待するか。

 差別的取扱いが生まれる背景には、直接、障害のある人と接する職員・従業員だけでなくもっと広く一般の人たちにも、障害特性や障害のある人のことについての無理解があるように思います。それらを啓発するような取組をぜひしていただきたいし、また障害者団体等で実施している場合には積極的に支援をしていただきたい。たとえば、10月22日は『国際吃音啓発の日』です。吃音のことを知らない人たちに、吃音のことを知ってもらおうという国際的な日です。その日に合わせて吃音の啓発活動、行政機関等のホームページにおける吃音情報の掲載、“『国際吃音啓発の日』とは“の開示などがあります。
 吃音の認知度がまだまだ低いこととあいまって、気軽に相談できる機関が少ないかあるいは周知されていない状況にあります。公的な相談・支援機関体制の設立と周知をお願いしたいと思います。
 小学校にはことばの教室があるものの中学校にはほとんどありません。教育機関にも相談・支援体制を充実していただくとともに、教師や生徒たちへの吃音啓発も大切で、吃音の理解はいじめやからかい・差別意識をなくす一歩となるものと思います。
 また、障害のある人の個々人の状況についてはわかるのですが、多くの同じ障害のある人たち全体としての社会のなかでの状況、たとえば差別意識・生活実態などは国レベルの支援の下でないと実施が難しいことがあります。ぜひ、障害当事者団体とも連携して、調査や情報収集(海外からも含め)をお願いしたいと思います。

4-2 障害者差別解消支援地域協議会について、どのような機能や取組を期待するか。

 障害者差別解消支援地域協議会は、国や地方公共団体や関係する機関の既存の組織を生かした会議体とする方向ですが、吃音の場合には相談する場が少なく新たな機関や組織づくりを支援する機能も持っていただきたいと思います。言友会は全国34 カ所にあります。「各地域」において、「障害者差別解消支援地域協議会」を構成する団体に加わりたいと考えます。また、国際的には、WHO(世界保健機関)やISA(国際吃音者連盟)とも連携できたらと思います。
 また、紛争処理体制としてはもっと強い権限は持てないでしょうか。障害者差別解消支援地域協議会(都道府県レベル)の中に、ADR(裁判外紛争解決手続)を実施する機関を組み入れてほしいという声があります。差別的取り扱い・合理的配慮の不提供の禁止について相談・監視・行政指導(悪質な場合は送検も)を行うような強い機関という姿です。イメージとしては労働基準法を実効・担保する為の機関としての労働基準監督署のような機関です。

5.上記以外の事項

 上記質問のほか、基本方針の作成に当たり留意すべき点や整理すべき点等があればお聞かせください。

 障害の範囲をこれまでよりも広く捉えて、差別的取扱いにつながりやすい軽 度の機能障害(インペアメント)や心身の特徴保有者なども対象に含めていた だきたい。
 障害の範囲として、これは含まれるのかこれは含まれないのかの議論があっ て、障害の範囲に枠があることが前提となっています。障害者基本法の考え方 を踏まえ、機能障害(インペアメント)に重きが置かれ、障害者権利条約でう たわれている「社会的障壁」による障害の考え方は「考慮する」と弱い表現に なっています。また、「障害の意味については誰しもが理解しうる一定の明確性 が確保される必要」「ある程度あいまいな内容を含むものとならざるを得ない側 面もある」などの記載がありますが、できるだけゆるい枠で障害を捉えていた だきたいと思います。吃音は、脳機能に原因があることが最近の研究で示され てきており、社会の一般の認識でも障害であることに反対の声はないと思いま す。
 この法律は、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」とあります が、「すべての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に尊重」 とあるように、差別的取扱いの解消というところに重きを置き、機能障害(イ ンペアメント)はゆるい枠で考えるのがふさわしいように思います。

(以上)

NPO法人全国精神障害者地域生活支援協議会(あみ)

基本方針に関するご意見

団体名 NPO法人 全国精神障害者地域生活支援協議会(あみ)

1.行政機関等及び事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する共通的な事項(2・3号関係)

1-1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方として、どのような場合を差別的取扱いと考えるのか。

障害があることにより、障害がない人とは異なった場面や条件を強要されること。

  • 今も残る障害者に係る欠格条項
  • 一般医療とは別に定められた精神科医療制度の存在(精神保健福祉法そのもの、事実上残っている入院医療における精神科特例)

1-2 不当な差別的取扱いの基本的な考え方として、正当な理由がある場合は、差別とはならないとされているが、どのような場合に正当な理由があると考えるのか。

 「不当な差別的取扱い」に「正当な理由」があるのだろうか。
 本人にとっては「不当」な取り扱いではあるけれど、本人または第三者への著し危険が明らかな場合に例外的に行われる強制医療等は考えられるが、その必要性については説明可能なものでなければならない。
 「正当性」ではなく、「例外的」かつ「緊急性」のある行為として、行為者がそのことを立証可能であることが必要であり、かつ障害者差別解消支援地域協議会における報告と承認が求められるのではないか。

1-3 合理的配慮の基本的な考え方として、どのような場合に、どのような配慮が求められると考えられるか。

 精神障害者が、障害を理由とした社会参加の阻害状況を生まないようにするため、例えば次のようなことが考えられる。

  • 疲れやすさ等の障害特性に配慮し、休憩時間の回数を増やしたり、勤務時間を短縮することや、通勤時間の配慮(ラッシュを避ける等)
  • 薬の副作用への配慮。(口渇がある人への水分補給の保障等)
  • 感覚過敏のある人への配慮(耳栓をする、サングラスをする等)
  • こだわりや儀式の受容

1-4 合理的配慮については、その実施につき「過重な負担」が生じる場合には、合理的配慮をしなくても良いということになるが、どのような場合に「過重な負担」と考えるのか。その判断要素をどう考えるか。

 「過重な負担」であるかどうかは、その行政機関や事業者の規模や財政状況とともに、個別具体的な事情によるところが大きいと考えられる。
 しかし、それは「合理的配慮をしなくても良い」ということにとどめるのではなく、その個別具体的な事情についても、障害者差別解消支援地域協議会による検証を行うこと等により、合理的配慮の全体としての水準を上げていく努力が必要である。

1-5 各行政機関等及び事業者において、障害を理由とする差別を解消するための取組として望まれる取組(職員・従業員の研修、相談・紛争処理体制の在り方など)はどのようなものがあるか。

  • 職員・従業員に対する障害理解(生活のしづらさの実態や、求められる支援のあり方等)を深めるための研修会の開催
  • 各行政における障害者施策や事業者における障害者への対応のあり方を検討する際には、障害当事者の参加を必須とすること
2.行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項(2号関係)

2-1 対応要領に記載すべき事項として、どのようなものがあるか(例えば、不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等、相談・紛争解決体制等)。

  • 行政機関の窓口におけるプライバシーへの配慮(環境の整備と職員の対応についての教育等)
  • わかりやすい行政文書の作成
  • 障害者雇用の促進(例えば、精神障害者の場合は、中途障害であるため就職活に入った際の年齢が公務員の採用年齢から外れることも少なくないため、少なくとも障害者枠での募集をする場合は年齢制限を撤廃するなどしてはどうか。また知的障害者のついては、一般の筆記試験とは別の試験形態が必要ではないか)
3.事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項(3号関係)

3-1 対応指針に記載すべき事項として、どのようなものがあるか(例えば、不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等、相談・紛争解決体制、主務大臣による助言・指導等に関する事項等)。

障害を理由とした差別的取り扱いとして、次のような事例がある。

  • 賃貸アパートの入居拒否
  • 店舗への出入り禁止
4.その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項(4号関係)

4-1 相談及び紛争の防止等のための体制の整備、啓発活動、情報(具体的な相談事例、国際的動向等)の収集・整理及び提供について、どのようなことを期待するか。

  • 障害者差別の事象に対する公平な第三者機関の相談・解決窓口の常設必置
  • 啓発活動は、その対象者(行政職員、福祉事業者、民間事業者、市民、障害当事者)のそれぞれに合わせたものが必要。なお、そこにおいては、障害当事者および家族の参加が必須

4-2 障害者差別解消支援地域協議会について、どのような機能や取組を期待するか。

すべての自治体に必置とすべきである。

なお、期待される機能は次の点である。

  • 「不当な差別的取扱いにおける正当な理由」や「合理的配慮の過重な負担」を判断する機能
  • 差別事象の紛争の解決
  • 好事例の収集と公開
5.上記以外の事項

 上記質問のほか、基本方針の作成に当たり留意すべき点や整理すべき点等があればお聞かせください。

  • 対応可能なものは、法の施行を待たず順次取り組んでいくこと
  • 民間事業者の努力義務規定のなかでも、住宅の確保等、生活の維持に関わる極めて重要なものについては義務規定とすること
  • 障害がある人もない人も、それぞれが社会の構成員であることを実感していけるよう、統合教育等、子どもの頃から障害理解の教育が保障されていかなければならないこと
  • 問題の指摘のみではなく、よい取り組みを広げる努力の必要性

(以上)

【参考資料】

平成25年7月19日

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)に対するあみの見解

特定非営利活動法人
全国精神障害者地域生活支援協議会 代表 伊澤 雄一

 平成25年6月19日に参議院本会議において全会一致で可決・成立した「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以下:障害者差別解消法)においては、これまでの障害に対する理解の不足から起こる様々な差別に対してその解消を目指す足がかりとなる物であり、関連するその他法律と共に国連障害者権利条約批准に向けた国内法整備の一環としての大きな意味を持つものと考える。
 障害を持つ方の多くは差別を受けたと感じる体験を持っていると考えられ、精神障害においては間違った情報からの偏見、無理解からくる差別が未だに多く存在する。
 平成24 年に成立した障害者基本法改正において定められた障害者への差別禁止について、差別解消策を具体化するために位置付けられた同法であるが、それらの解消への第一歩として大きく期待を寄せている。
 しかしながら、同法においては以下に示す通り課題があり、また実効性を高める上においても、今後の十分な検討が必要である。しかし、検討を重ねている間においても、差別は存在し、平成28 年4 月1 日の施行を待たず、対応可能なものから具体的対応を行うとともに、施行後3 年後の見直しまで待たず、検討会などを設け、課題点などの検証を行うと同時に実際に応じた見直しの機会を設ける事が肝心であると考える。

1)「差別」の定義を具体的に提示する必要があるとこ

 同法成立に至るまでに、障がい者制度改革推進会議・差別禁止部会、障害者政策委員会・差別禁止部会等において、差別禁止に関する具体的な議論がなされてきた。
 平成24年9月14日に障害者政策委員会差別禁止部会より示された「『障害を理由とする差別の禁止に関する法制』についての差別禁止部会の意見」では同法において定められた「差別的取り扱い」「合理的配慮の不提供」より、具体的かつ細分化された内容として「不均衡待遇」と「合理的配慮の不提供」の2つに分類し、とくに重要と考えられる10の分野において、どのような場面で差別が生じるかを明らかにしている。
 施行となる平成28年4月1日までに、ガイドラインを作成し実際の運用の指針を定めるものとしているが、その内容として、運用の指針とは別の形でなにが差別となるかの具体的な定義を示す必要がある。その際は、先の差別禁止部会で示された意見を十分に反映し、直接差別、間接差別、関連差別等についても具体的な提示がなされることを望む。

参考)直接差別、間接差別、関連差別に関する例
「視力障害があり盲導犬を伴ってレストランに入ろうとしたところ入店できなかった場合」

  • 入店できない理由として「視力障害」が理由となる場合には「直接差別」
  • 入店できない理由として「連れている盲導犬が入店出来ない」場合には「間接差別」
  • 入店できない理由として「犬の入店が認められない」場合には「関連差別」

と分類することができる。

2)合理的配慮の不提供の禁止における義務対象の拡大

 同法における「合理的配慮の不提供」において国及び地方自治体等においては法的義務とされているが、民間事業者においては努力義務とされている。
 精神障害者の生活において、衣・食・住のほか、教育、交通、就業、医療、社会参加など、日常生活を送る上で不可欠な内容の多くは民間事業者の対応の範疇となっている。
 一部の理解ある民間事業者の努力により、安心した地域生活の獲得に至る現状である。
 特に住居、就業においては様々な既存の制度を利用した上で一部の理解ある民間事業者の関与から実現を図っているところである。
 障害を理由とした住まいの場の不提供や、就労の機会の消失等は、多くの方が直面している喫緊の課題であり、日常生活で不当な扱いを受けることなく送るために、必要だと考えられる事業を取り扱う民間事業者には努力義務ではなく法的義務とし、日常生活に潜む様々な差別の解消を推し進めるためにも拡大を図ることが望ましい。

3)障害者差別解消支援地域協議会の設置の義務化

 同法においては紛争解決の仕組みについて、新たな組織を設けず既存のものの活用を基本としているが、同法内においては障害者差別解消支援地域協議会の設置について規定が設けられている。
 「障害を理由とする差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行うため設置」するとされている障害者差別解消支援地域協議会は障害者への差別を解消するために重要な窓口であり具体的な紛争解決に向けた重要な役割を果たすものだと考えられるにもかかわらず、都道府県、市町村等の自治体に対する設置の義務はない。
 施行3年後の見直しにおいては、地方自治体の設置の状況により、障害者差別解消支援地域協議会を設置することを義務化し、また、障害者差別解消支援地域協議会においては、その役割として障害者政策委員会差別禁止部会で示された紛争解決に対しての相談及び調整、調停等の役割を盛り込み、第三者として中立・公平である仕組みとされることを望む。

日本肝臓病患者団体協議会

基本方針に関するご意見

団体名 日本肝臓病患者団体協議会

1.行政機関等及び事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する共通的な事項(2・3号関係)

1-1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方として、どのような場合を差別的取扱いと考えるのか。

 私たちはB、C型ウイルス性肝炎の患者により成り立っています。ウイルス性肝炎は感染症であるため、一般社会においては、「うつる」という恐怖感により差別を受けています。ウイルス性肝炎はB、C ともに血液感染であり日常生活において感染はしませんが、一般社会の誤解や偏見により差別が生じると考えられています。
 具体的には、内定取り消しや退職命令のような就業の場における差別、これまで親しかった友人や地域、さらに家族から村八分の様な扱いをうける人間関係や地域における差別などがあげられます。
 しかし、もっとも多く差別的な扱いを受けているのは医療機関においてです。特に歯科での差別的扱いは日常的に行われています。これは、説明なく常に順番を最後にされる、嫌がらせを受けるというものから診療拒否まで様々です。

1-2 不当な差別的取扱いの基本的な考え方として、正当な理由がある場合は、差別とはならないとされているが、どのような場合に正当な理由があると考えるのか。

 歯科で常に順番を最後にされる、あるいは診療拒否という場合、その医療機関における感染症対策が万全ではないため、他の患者や医師に感染させてしまう可能性がある、という理由によると思われますが、そのような説明がなく突然命じられるため、患者は不当な差別であると受け止めてしまいます。そのような医療機関に対して、肝炎患者であっても一般の患者と分け隔てなく、まったく普通に対応してくれる歯科医も多数いるため、患者が混乱してしまっているのが現状です。

1-3 合理的配慮の基本的な考え方として、どのような場合に、どのような配慮が求められると考えられるか。

 1-2 で述べたようにきちんとした説明が与えられれば、それが差別ではないと患者は理解できます。患者は他人に感染させることを最も嫌い、常に注意しているからです。
 国内で最大の感染症といわれている肝炎ですが、肝臓専門外の医師の肝炎に対する知識レベルがあまりにも低い、ということもあげられると思います。肝炎の感染について正確な情報を持たないことが、医師の差別的言動を引き起こしているとも考えられます。専門に関わらず医学部での感染症教育を徹底することも重要だと思います。
 また、就労における不当な扱いなども、一般社会の誤解によるものであり、感染について正しい知識を普及させることがこの問題を解決できる唯一の方法と考えます。

1-5 各行政機関等及び事業者において、障害を理由とする差別を解消するための取組として望まれる取組(職員・従業員の研修、相談・紛争処理体制の在り方など)はどのようなものがあるか。

 まず、疾患について(特に私たちは感染について)正しい知識、情報を普及させることが第一であると考えます。社員研修はもちろん、地域のコミュニティーにおいて肝炎について教育する場を設けるなど、あらゆる場面において教育・啓発が行われるようになることを望みます。

2.行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項(2号関係)

2-1 対応要領に記載すべき事項として、どのようなものがあるか(例えば、不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等、相談・紛争解決体制等)。

 就労における差別案件については、相談、解決できる場がほとんどないため、相談から解決までを引き受ける、人権擁護機関等の設置が望まれます。現在の人権擁護局を活用できればより良いと思います。これまで、就労関係の訴訟は2度あり、ともに和解していますが、患者に対する経済的、精神的負担が大きく、訴訟にまで至らずに解決できる方法が必要だと考えます。
 医療機関での差別案件については、患者団体が自治体や医療機関に申し入れを行っています。最近は介護施設での入居拒否など差別問題も増加しており、これも正確な知識・情報を福祉関係においても徹底することが望まれます。

3.事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な 事項(3号関係)

3-1 対応指針に記載すべき事項として、どのようなものがあるか(例えば、不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等、相談・紛争解決体制、主務大臣による助言・指導等に関する事項等)。

 肝炎の治療薬にはインターフェロンなど激しい副作用をともなうものもあり、就業を継続できないことがあります。治療は長期にわたるものもあり、治療後に職場復帰すると配置転換、部署異動など命じられることが少なくありません。
 そのような実態を懸念し治療を避け、病態が進行してしまうこともあります。治療後は治療前と同様に働くことが可能ですので、治療期間後の就労環境を保障していただければ安心して治療を受けられます。
 先に述べた歯科での差別的扱いについては日本歯科医師会が率先して、医師に対する感染症教育を徹底することだと思います。

4.その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項(4号関係)

4-1 相談及び紛争の防止等のための体制の整備、啓発活動、情報(具体的な相談事例、国際的動向等)の収集・整理及び提供について、どのようなことを期待するか。

 肝炎治療は日進月歩、毎年新薬が保険適用になるという状況です。常に正しく新しい治療情報を提供することが、「治る(あるいは病状を安定化することが可能な)病気」との概念を普及させ、「肝炎=治らない怖い病気、うつったら大変、差別」という図式を覆すことが可能であると考えます。

4-2 障害者差別解消支援地域協議会について、どのような機能や取組を期待するか。

 ひとことに障害者といってもさまざまで、肝炎患者は、内部障害者であるとともに、感染症患者であることが患者に重くのしかかっています。そのため差別の実態も他の疾患では考えられないような内容になっています。それぞれの疾患特性を考慮したうえでの取り組みを期待します。

5.上記以外の事項

 上記質問のほか、基本方針の作成に当たり留意すべき点や整理すべき点等があればお聞かせください。

 私たち肝疾患の障害者認定基準は現実に即しておらず、基準を満たす患者はほぼ寝たきりの肝硬変患者です。まずこの実態を把握していただき基本方針作成にあたっていただきたいと思います。

 B型肝炎には感染予防のためのワクチンがあり、現在母子感染予防を目的とし、母親がB型肝炎感染者である場合にのみ、生まれた子供にワクチン接種を実施、保険適用となっています。
 しかし、すべての子供に対しワクチンが摂取されているわけではないので、乳幼児期のB型肝炎感染のリスクは0 ではありません。現在、日本とイギリス以外の先進国においては、すべての子供に対しユニバーサルワクチンが実施されています。ユニバーサルワクチンを導入すれば、感染予防だけでなくB型肝炎患者に対する差別もなくなるものと考えられます。

(以上)

NPO法人全国要約筆記問題研究会

基本方針に関するご意見

団体名 NPO法人 全国要約筆記問題研究会

1.行政機関等及び事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する共通的な事項(2・3号関係)

1-1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方として、どのような場合を差別的取扱いと考えるのか。

 身体、精神等の個人の抱える要因により、ほかの人と異なる状況に置かれ、それを解消・軽減する方法があるにもかかわらず放置されているケース

1-2 不当な差別的取扱いの基本的な考え方として、正当な理由がある場合は、差別とはならないとされているが、どのような場合に正当な理由があると考えるのか。

 上記のような個人の要因を解消・軽減する方策が現段階では存在しない、または確立されていないと認められるケース

1-3 合理的配慮の基本的な考え方として、どのような場合に、どのような配慮が求められると考えられるか。

 聴覚障害者に関して;教育、労働、社会生活においてその構成員に対し、当人が利用可能、かつ当人の希望する情報獲得やコミュニケーション支援の方法が用意されること(設備や機器及び人的支援)

1-4 合理的配慮については、その実施につき「過重な負担」が生じる場合には、合理的配慮をしなくても良いということになるが、どのような場合に「過重な負担」と考えるのか。その判断要素をどう考えるか。

 聴覚障害者に関して;一般的には事業者が日常的に通訳料を負担することによりその事業所の財政を著しく圧迫する可能性がある場合などが考えられる。しかし、聴覚障害に関していえば、日常業務は周囲とのコミュニケ-ションとして筆談(チャット)やメール等の使用や会話程度の手話の取得などの果たす役割もある。会議や研修等の場面では、福祉サービスによる情報獲得手段の利用やコミュニケーション支援制度などの併用も考えれば、過重な負担とまでいえるものはないと考える。
 なお、「合理的配慮」は当事者からの申し出により行われるとされているが、中途失聴者や難聴者には、何らかの配慮があれば自らのコミュニケーションがもっと楽に行われるのにその手段、方法を知らない人も多い。したがって、合理的配慮を申し出ることに結びつかないケースも多いと考えられる。

1-5 各行政機関等及び事業者において、障害を理由とする差別を解消するための取組として望まれる取組(職員・従業員の研修、相談・紛争処理体制の在り方など)はどのようなものがあるか。

① 職員の研修はもちろん必要だが、それだけではなくインターンシップのような形で学生や社会人が障害者施設で一定期間働く、障害のある人と一緒に働くなどの体験のできる仕組みを作る(福祉系の学生の単位取得には福祉施設での実習があるが、行政機関や企業での新人の研修に組み込むなど。また、受け入れ施設に期間中支払われる謝礼に助成制度を設けるなど)

② 公益財団法人大学基準協会の評価基準項目に、障害を持つ学生の受け入れと行なった支援体制を明確化する調査項目を加えること(入学の確約書等に特別な配慮を求めない等の記載があったり、口頭でノートテイクが必要なら自分で連れてくると言わせたりする例もある)。

③ 独立行政法人高齢障害求職者支援機構による「手話通訳担当者の委嘱助成金」の対象を拡大し、要約筆記の利用も同様の扱いにすること。

④ 区市の法律相談等は無料で利用しやすいが、30分程度とされているので、要約筆記利用の聴覚障害者には相談時間は不十分。情報獲得がしにくい障害のある場合(手話通訳や要約筆記者を同行することがわかっているケースなど)は時間的余裕を持たせるなどを手引きに入れるなど。

2.行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項(2号関係)

2-1 対応要領に記載すべき事項として、どのようなものがあるか(例えば、不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等、相談・紛争解決体制等)。

合理的配慮をしているようでいて、現実には十分機能する状態でないこと。

① 大かがりなイベントでは特に、行政からイベント会社に委託をするので開催の進行は一秒の狂いもなく進行する。そのために歩くのに支障のある人が急がされたり、椅子のないところに長時間待たされたり、手話通訳者や要約筆記の設置個所が舞台の隅で利用者は舞台のそでを見るしかない状態になっているなど。障害者関係のイベントで首をかしげるような「配慮」はよく見かける。予算的な措置をすることで配慮していると関係者が思ってしまう様子が見られる。

② 行政職員の研修等では要約筆記の用意がされることは増えている。しかし、講師の外部委託が多く、その人たちへの説明が不十分だったり、研修の進行への配慮が見られないことも多い。研修企画段階で障害のある人が同じ質の研修が受けられているかのチェックはされにくい。聴覚障害者には通訳を頼めば責任は果たしたかのような状況の改善が必要。

③ 好事例;障害福祉課と社会福祉協議会の合同で難聴者への窓口対応研修を複数回実施し、悉皆研修として行った。

3.事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項(3号関係)

3-1 対応指針に記載すべき事項として、どのようなものがあるか(例えば、不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等、相談・紛争解決体制、主務大臣による助言・指導等に関する事項等)。

① 就職説明会や面談で要約筆記者が配置され、一見配慮されている。しかし、人事担当者は、入社後は職場では特別な扱いはできないが大丈夫かと聞く。就職したい学生は大丈夫だと答えざるを得ない。質問者が差別と気づきにくい質問事項を例示することが必要。

② 好事例;聴覚障害学生を受け入れるにあたり学生課の職員が難聴者理解と窓口対応の研修を行った。

4.その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項(4号関係)

4-1 相談及び紛争の防止等のための体制の整備、啓発活動、情報(具体的な相談事例、国際的動向等)の収集・整理及び提供について、どのようなことを期待するか。

 差別や合理的配慮の不提供の実例を蓄積し、改善状況や取り組みの報告を義務付ける。
 大きく問題のある事業所などは公表する。

4-2 障害者差別解消支援地域協議会について、どのような機能や取組を期待するか。

 障害当事者、支援者の声は当然必要であるが、一見すると障害者に無理解な問いかけをするような地域住民が加わることが重要。運動関係者や仲間内での集まりにしないよう、また、そこで鍛え上げた議論から共通認識が得られるような構成員や進行役の人選が求められる。

5.上記以外の事項

 上記質問のほか、基本方針の作成に当たり留意すべき点や整理すべき点等があればお聞かせください。

① 聴覚障害者の自立した社会生活を保障するための情報入手手段として、字幕付放送の完全実施が必要である。

② 要約筆記に関して福祉サービスと合理的配慮、環境整備を整理した。関連のイメージ図も作成したが、図に説明文をつける時間がなく、口頭での説明としたい。
 十分に整理しきれていないし、境界を引きにくい部分もあるが次の3部門となる。
 1つめが、日常生活への責務として福祉サービス。2つめが、構成メンバーへの責務として合理的配慮。3つめが催事等の開催に対する責務として環境整備である。
 1つめの日常生活への責務は日常生活で必要とされるサポートで、国や自治体の責務として総合支援法でカバーする。手書きのノートテイクが多い。単に聞こえたことを文字にするだけでなく、利用者や場の状況を把握しコミュニケーションの成立を図る。
 2つめは、構成メンバーへの責務。行政や企業、教育機関などが合理的配慮として通訳を用意するもの。 ノートテイクが多いが全体投影も場によって有効である。
 3つめは、障害者権利条約にいわれるような社会環境整備である。申し出の有無に関わらず開催に対する責務として用意されるもの。文字情報に関しては字幕やその他、幅広い支援が考えられる。

③ 障害当事者の主体性を尊重し、その意見を十分に反映された施策が実施されることを期待したい。だが、同時に多くの支援者が継続して安定的に質の高い支援を提供できるような方策が望まれる。
 現状では、専門性を確保できるような研修体制、職務の重要性に見合った報酬・身分保障などがあるといい難い。福祉従事者は安価な報酬や過酷な環境であっても、それを自分の仕事の価値としてやりがいを持って取り組むことが多いため、口に出すのがはばかられる雰囲気もある。また、かつては、知識や技術の不足と報酬や身分保障が裏表の関係にあった。こうしたことが障害者への問題行動になったり、結果的に十分な対応が取れないことにもつながる。支援者への待遇は障害者に跳ね返るので、適切な待遇改善が必要である。

(以上)