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資料3-2

ワーキング・セッションⅡ:精神障害者・医療ケアを必要とする重度障害者等の地域移行の支援など議論の概要

○基本計画該当項目:「1.生活支援」「2.保健・医療」「5.生活環境」

○コーディネーター:上野委員、大濱委員、川﨑委員、平川委員

○参考人:
池原毅和(東京アドヴォカシー法律事務所)
折田みどり(人工呼吸器をつけた子の親の会<バクバクの会>)
竹田保(ホップ障害者地域生活支援センター)
山本深雪(大阪精神医療人権センター)

○出席委員
第1回 5月19日:
 上野委員、大濱委員、川﨑委員、平川委員、石川委員長、伊藤委員、大河内委員、大日方委員、河井委員、佐藤委員、松森委員、三浦委員

第2回 6月 1日:
 上野委員、大濱委員、川﨑委員、平川委員、石川委員長、伊藤委員、大河内委員、河井委員、佐藤委員、松森委員、三浦委員

■第1回 (5月 19日)精神

【参考人意見】

○池原参考人
・ 権利条約19条から解釈すると、2つの重要なことが地域移行との関係で言える。1つは、多様な人々の包容された社会で住むことができていなければいけないということで、単に物理的な空間や設備が、病室ではなくて居住施設であるというだけで、地域移行の権利が実現されているということは言えない。(1-(2)-1、2-(2)-1)
・2番目に重要なことは、19条が言っているのは地域生活の権利。権利条約は、最初から地域で生活する権利を保障しなさい、入院をしないで済むような政策をとりなさいと言っており、入院している人を退院させなさいということが第一義的な意味ではない。地域移行を考えるのと同時に、今後、現に精神障害を持っている方、今後障害を負うことになる人が、地域で生活できるような資源を開発することが重要。(1-(2)-1、2-(2)-1)
・ 精神保健福祉法33条が医療保護入院を規定していることが妥当なのかどうかは再検証をする必要がある。(2-(2)-6)
・ 日本の精神保健福祉法は、精神障害があることが強制入院になる前提条件になっている。医療保護入院も、精神障害であり、かつ、医療保護のために入院の必要があるものであって、当該精神障害のために第20条の規定による入院が行われる状態にないと判定されているものと書いている。従って、これも精神障害が前提要件になっているということになると、日本の精神福祉法の強制入院というのは、障害者権利条約14条にダイレクトに抵触してしまう。この点も今後十分に考えていかなければいけない。(2-(2)-6)
・ 家族という社会資源が重要な役割を果たしており、その家族自身に支援をしていくことが必要だということを権利条約は言っている。この点の充実も必要。(2-(2)-3
・ 自由権規約については、強制入院の要件が緩過ぎるということ、強制入院についての異議申し立てや救済の実効性のある手続がないということ、精神医療審査会が現実的には役割を果たしていないと、自由権規約委員会から批判を受けている。3番目に、入院を回避する代替手段が欠けている。その結果、入院が長期化している。4番目に、地域に基盤のあるサービスが存在していない。代替手段の充実が必要。5番目に、長期入院は最終手段であって、最も短い期間行われるべきものである。それから、入院の必要性と入院の長さや程度は、当然比例していなければいけない。比例原則を守りなさいと言われている。最後に、精神医療福祉施設での虐待の摘発や、制裁、賠償についての適切な手続が欠けており、独立の監視報告機関が存在していないことも大きな問題だと指摘されている。
・拷問等禁止条約についても日本政府は様々な批判を受けている。まず、精神保健指定医の強制権限についての疑問がある。なぜ、民間病院に勤務している精神保健指定医の判断で強制的な入院が成立するのか。これは国際人権法的には説明ができないと言われている。2番目に、入院に対する不服、病院の管理運営に対する不服、病院内での虐待に対する不服に対する司法審査が十分に機能していない。3番目に、医療保護入院に対する実効的で徹底した司法的コントロールが欠けている。4番目に、長期入院の解消に向けた政策がとられていない5番目に、隔離、拘束、強制投薬の非人道性が指摘されている。6番目に、入院に代替する措置が欠如している。つまり、入院を回避するような方法が提案されていない。7番目に、拘束が過剰に使用されていて、それについて公平な調査が欠けているということが様々指摘されている。

【質疑・議論】

○川﨑委員
・ 一般、民間の入居に関しては、精神障害者ということでなかなか受け入れてもらえていないという実情がある。(5-(1)-2)
・ 地域移行というと、どこかの施設からの移行と考えがちだが、家庭からの移行も含めて、障害者の地域生活をいかに支えたらいいか。(2-(2)-1)

○上野委員
・ 日本の精神科医療のよく知られた特徴の一つは、入院者数の多さ。自発的な入院である任意入院において事実上退院の自由がないため、強制的な入院である医療保護入院よりも長期的入院者の割合が高いのが問題。日本の精神科入院医療の中で、地域で生活したいという希望を失った人、奪われた人がたくさんつくられていることを示している。入院が不要な人が狭い病棟空間で入院生活を継続していることが、多剤大量併用療法が蔓延している一つの原因となっている。(2-(2)-1)
・家族への過剰な負担を担うことができる人がいなくなったときにどうするかということが共通の問題になっている。家族等の同意で入院させる制度(医療保護入院制度)があることが、長期入院を生む一つの要因になっている。家族に対する社会的なサポートが乏しい。それで家族が消極的になってしまうことが、その背景にある。(2-(2)-3)

○平川委員
・資料 3-6として結果報告を出している平成 20年のような調査を継時的にやっていただきたい。(2-(2)-1)
・ 精神障害者だけを収容するような住宅をつくることは、我々病院にとっても決して幸せなことではない。(2-(2)-1)
・ 65歳になると介護保険が優先されるので、精神の制度を使おうとしても、高齢になった患者はなかなか地域移行に行けない。(1-(2)-7)
・ 20年前は、入院が年間 60人。26年度は 577人。大変短期で帰すという努力をしてきていると私自身は思っている。(2-(2)-1)

○山本参考人
・ 資料 3-6で、「統合失調症で近い将来退院の可能性なしとされた患者像について」という 44ページからの資料がある。45ページに、1年未満の患者さんに対して 21%の方が状態の改善が見込まれず、近い将来退院の可能性はないと数字が出ている。フランスなど他国のデータでは、こうした統計データをとったときに、8%という数字が出ていると読み取っている。日本の統計データが出てくる折には、21%ないしは 23%という数字で出てくることが多い。
統合失調症という病態像が国によって違うとは思えないので、なぜ日本において、入院後1年たった方で薬が合わないとか治療方針が見出せないということで近い将来退院の可能性なしとされた方が、他の国の約3倍近くの数字が常に挙げられているのかという捉え返しなど、どこかで議論をされてきた、もしくは資料としてつけられてき たということはあるのか。
→今回お求めがあって提出した資料の45ページに、1年未満の方について評価をした段階で、現時点で状態の改善が見込まれず、近い将来退院の可能性がないということで把握された方が21%あったという数字が出ている。海外との比較という意味で、この21%という数字を評価したような議論については、残念ながら承知をしていない。(厚生労働省)
→資料 3-2、2ページに退院患者数の割合が1年でどうかという数字が出ている。平成16年から、全国で見ると87.1%、平成23年が87.3%でほとんど変わらないが、87%ぐらいの方は1年間で退院している。従って、13%ぐらいの方が残っているということになる。参考までに、障害福祉計画において、精神障害で入院された方について、1年時点の退院率の上昇を計画の目標に入れている。その目標においては、平成29年度において入院後1年時点の退院率を91%以上とするという目標を立てており、1年時点の段階では91%以上の方が帰られる。1年以上入院される方に関しては、9%以下にするという目標を立てている。(厚生労働省)

○佐藤委員
・ ほかの国は地域の中でどのように、家族も含めて精神障害の人の生活を支える仕組みがあるのか知りたい。
→(6月 1日ワーキング・セッションⅡ資料3諸外国における地域移行をめぐる動向について 厚生労働省)

○伊藤委員
・ 一括して精神障害や精神病床という形でデータが出ている。例えば精神科の病院にかかっているか、精神障害者福祉手帳を持っている人の追跡なのだと思うが、一部の認知症であるとか、あるいは進行がかなり進んだ神経変性性の疾患であるとか、あるいはてんかんも全部これに含まれているのか。
→資料 3-2、3-4の数字に関しては、精神病床に入院された方を総数でとっており、全患者となっており、疾患で分けているものではない。統計によっては疾患を一部絞って集計されているものもあると考えている。(厚生労働省)

○池原参考人
・ 日本の強制入院が使われている比率が、 OECD諸国の平均値の4倍を超えている。なぜかというと、例えば1991年の国連原則にもかかわらず、日本の精神保健福祉法の措置入院や医療保護入院の要件が法律上緩過ぎるのではないか。同時に、入院を避けるための代替措置や、退院を促進するための地域の資源というものに対する財政的な投入の度合いも極めて低く、言わば財政面から見ても入院中心主義ということが見えてきてしまう。法改正でもっと要件を厳格化するような努力は必要だろうし、財政的にも地域資源にバランスを十分にかけた資源開発をやっていると言えなければ、申し開きができないということになるのではないか。(2-(2)-6、2-(2)-7)
・ 医療保護入院は、実は法律上は何で強制力が発動するのかというのが説明しにくい制度。措置入院というのは行政権限、知事の権限で入院させているので、国際的にもシステムとしては理解できる。しかし、一民間病院の勤務医である精神保健指定医が医療保護入院に相当すると判断したときに、なぜ強制的に入院させることができるのか。言わば私人が私人に、民間人が民間人に対して強制力を行使するという形態になっているので、かなり国際的に理解を得るのは難しい、説明が難しいものになっている。従って、要件の緩さとか資源の乏しさと並んで、システムとしての不可解さが、批判の対象にされているということになる。(2-(2)-6、2-(2)-7)

■第2回 (6月 1日)精神

【参考人意見】

○山本参考人
・ 国際基準と比較して人口当たりの精神科病床数が4倍を占めている。認知症の患者の増加ということだけでは説明できない増加の伸びを示している。(2(2)-1)
・ 精神科病棟においては、利害関係のない第三者が病棟に来て、入院中の方の権利擁護者としてついていくことが絶対に必要。(2-(2)-4)
・ 精神保健福祉法の附則において「代弁者制度の検討」ということが現在でも書き込まれているが、現場においては実現されていない。(2-(2)-6、2-(2)-7)
・ 状況を見直して改善していくためには、本人にとって不本意な入院時に「本当に他に代替案のない入院なのか」、本人の話を聞き、本人の応援をできる権利擁護者(第三者機関による監視体制)が必要不可欠である。(2-(2)-4)
・ 患者の診察の折、主治医に落ちついて話を聞いてもらえないという声は相変わらず続いている。なぜなのか考えると、医療法の特例の中で精神科医師は48床に1人いればいいとなっている。信頼関係が取り結べない関係のまま長期間の収容となっていることが、結果として、先ほどからお伝えしている人権侵害が繰り返し発生する土壌になっていると思う。(2-(2)-7)
・ 任意入院の患者に対する違法な退院制限は現在も存在している。(2-(2)-6、22)-7)
・ 他科の医療従事者からの偏見のため、治療拒否ということが現在も存在している。医療法の施行規則第10条3項に精神病患者は精神病室でない病室に入院させないこと、と記載されており、それが変わってない。障害者基本計画の実施条項にはきちんと書き込まれていないように思える。(2-(2)-6、2(2)-7)
・ 地域移行支援での実利用人数が全国において平成26年12月時点で 379名と非常に少ない人数となっている。報酬が低すぎるために、精神障害の障害特性の中には「状態の揺れ」があり、そのことにより入院したらグループホームの事業主が入居費を運営経費から持ち出して負担をせざるを得ないという仕組み上の問題点があるがゆえに、そこから撤退していく事業者が、この間、増加してきている。なぜ、利用人数が少ないのかという分析をもう一度していただきたい。予算のつけ方、何が問われているか、障害特性に見合った予算の設定を求めたい。(2-(2)-1)
○池原参考人
・海外の様々な脱施設化から病床の削減ができてきている国の先行的な経験を参考にすると、1つ浮かび上がってくることは地域でのモバイルチーム。つまり障害のある方や精神障害のある方に出向いていって福祉的サービスや医療的なサービスを提供するというあり方。地域ケアの資質の増加や地域ケアへの人員配置の増加など。当然のことだが、社会的資源、地域で生活を支えながら医療や福祉を提供するということが当然必要だということがわかってくる。これに対して一番懸念しているのは、象徴的に言うと、今の日本の精神医療の進み方というのは、手っとり早く強制力と抗精神病薬を使っていく。時間もかからず人手もかからずお金も少し安くするかもしれないということがあって、非常に安易な方法をとられていることが、今の国際的な動向とは大きく食い違っている。(2-(2)-1)
・ 最近の認知症の高齢者の方に対する新オレンジプランというものも、循環型と言ってはいるが、認知症の方が必要に応じて病院に入院したり別の施設に行ったり、いわば認知症の方が循環していくシステムとしてでき上がっている。これも非常に逆行した考え方。先ほどのモバイルというのは、言ってみれば、本人のところにサービスが動いていく。

【質疑・議論】

○川﨑委員
・ 今回、厚生労働省の資料にあるように、訪問型の支援によって精神障害者の再発が防げて、地域で生活できているというデータがしっかり出ている。これをしっかりやっていただきたいが、人材の養成が必要だと思っている。精神障害者に対する専門職の養成を、今、強く望みたい。(2-(2)-1)

○上野委員
・ 認知症において、新オレンジプランの循環型の仕組みが問題。認知症の方の思いと希望を最優先して、状態が変化しても、認知症の方が暮らしたいと希望する場所で、必要なサービスを受けて暮らし続けることができるという仕組みが必要。精神科のアウトリーチサービス、モバイルチームがあれば、入院させるよりも、よりよい治療効果が期待される。認知症に関して、精神科医療を中心にすべきではない。
・ 精神保健福祉法に規定されている行動制限の手続きは、第三者チェック機能が機能していないうえに1人の指定医に権限が集中しすぎていて問題。加えて指定医制度には深刻な制度的欠陥がある。入院中の本人の権利を守る仕組みが必要。(2-(2)-4)
・社会的な役割を失った精神科病棟は閉鎖すべき。用途を変えて人を隔離・収容するために利用すべきではない。

○平川委員
・ 多職種による外部組織による監視体制は、是非こういう制度ができて精神科病院もまんざらひどくないと思っていただけるような仕組みができたらいい。その辺からオープンになって人々の目にさらされて改善していることがわかるように、基本計画の中でも進ちょく状況の中でお示しいただく仕組みがあるといい。(2-(2)-4)

○池原委員
・ 障害者権利条約の基本的な要請からすると、障害のある人も障害のない人と同じように地域で生活するという原則が守られなければいけない。権利条約が21世紀に切り開いた地平は、新しい地平に向けての人類の挑戦のような部分があり、どこの国だったら模範解答というのが今のところない。そのために当然、先行する経験を学びながら、さらにその先行する経験では不十分なところをでは日本はどう乗り越えていこうかという姿勢が、特に障害者政策委員会には期待されているのではないか。(2-(2)-1)

■第1回 (5月 19日)医療的ケア

【参考人意見】

○竹田参考人
・ 進行性疾患あるいは筋疾患の難病患者にとって、現在だけではなく、将来の病態の変化に伴って、生活状態の変化に対応した医療や福祉、施策の総合的な相談窓口が身近なところに存在してほしい。(1-(2)-2)
・ 重度訪問介護を含め在宅サービスは、年度を重ねていくに従ってサービス利用の増加傾向があるようだが、必要なサービスが地域によって偏ることがなく、必要なサービスが対象者の需要に沿って提供されているのかということを、是非検討していただきたい。大半の対象者は、月のサービスのことを考えたら、24時間の半分以下のサービスの中で生活をしている。市内の例えば重度心身障害児(者)のデータを見たときに、約857名の重症児(者)がいるが、そのうち在宅で暮らしている方が半数以上の525名、施設入所は332名となっている。これだけを見ると在宅での生活者が多いと感じるが、年齢の構造を見てみると、18歳以上では約5割の333名が在宅。ところが、18歳未満の児童では、192名の方が在宅で暮らしている。89%の方が在宅で暮らしていながら、18歳を超えた段階では 50%の方に減ってしまうということも読み取れるのではないか。これは 24時間介護の支給決定者が少ないこ と、あるいは必要なサービスが提供されていないということの裏返しではないのかと感じている。(1-(2)-1、1-(3)-6)
・ 福祉タクシーの普及を図るときに、果たしてこれが限定なのか一般の車両なのかによって使いやすさというものは変わってくるのではないか。そういう意味では、福祉タクシーのあり方そのものを考えていくべき。(5-(2)-4)

【質疑・議論】

○河井委員
・ 各サービスの実績等の数字が出ているが、これらについてのニーズの調査はどういう形で行われているのか。また、達成率はどうなのか。全体を包括した数字は、このページの途中に出ているが、居宅であるとか住宅補助といった形の達成率が出ていないので、それがわかれば。(1-(2))
→基本的に障害福祉計画については市町村で計画値を立てる。そのときには、過去直近の何年間かの実績や利用者の利用意向等を総合的に勘案して目標値を立てるということだと思う。(厚生労働省)
・ 保健・医療 2-(1)で医療のことが書かれているが、精神の方の実施状況のみ記載されている。医療が必要なのは精神の方だけではなく、重度重複の身体の人たちも、リハビリテーションも含めて必要としているところであり、これらの取組について何かあれば伺いたい。(2-(1))
→(6月1日ワーキング・セッションⅡ資料4重度の身体障害者を含めた障害者に対する保健・医療施策について 厚生労働省)
・ 居宅介護で喀痰吸引等の支援を必要としている人の数字について、 785人というのは少ない気がする。厚生労働省として、これで充足しているとお考えか。私の実感としては、支援する人が足りないために、必要としながらこのサービスが受けられないという人が多く潜在していると思っているが、厚生労働省としての受けとめ方がどのようなものか伺いたい。(1-(2)-1、1-(2)-2)
→喀痰吸引の研修を受ければ喀痰吸引ができるという仕組みになってから、そして、その加算で評価するとなってから時間がたっていないので、潜在的なニーズはもっとたくさんあるだろうと思っている。(厚生労働省)

■第2回 (6月 1日)医療的ケア

【参考人意見】

○折田みどり参考人
・医療的ケアが提供されないため親が学校や保育所に常に付き添いをしなければならないケースや居宅介護においても医療的ケアを提供してもらえず子どものそばから片時も離れられないケースはまだまだ多い。基本計画の実施状況等は、年々進んでいるということだが、子どもの場合、例えば人工呼吸器使用で常時介護や見守りが必要という場合であっても、子どもは1カ月13時間までしか居宅介護時間は出さないとか、子どもは2時間以上連続のサービスは提供できないとか、未就学児は移動支援は一切認めていないといった対応をする市町村がある。(1-(3)-5)
・ 各サービスの実施状況の報告に、子どもの利用状況がどうなのか、進んでいるのかいないのかがわかるようにしていただきたいことが1つ。子どもであることで単に一律の扱いをするべきではないということを市町村に周知していただきたいのが1つ。(1-(3)-3)
・ヘルパー研修費の補助や喀痰吸引等の加算の算定を特定事業所加算を受けている事業所も受けることができるようにするなど、医療的ケアの人材育成の施策をもっと考えていただければ。(1-(2)-2)
・ 保育や教育の場における医療的ケアの推進状況について、バクバクの会で昨年行った実態調査では7割以上の親が学校での付き添いをさせられており、付き添いをしている親のほぼ全員が医療的ケアも行っているという結果だった。要するに医療的ケアが提供されないために親が付き添わざるを得ないということ。喀痰吸引等の制度が最大限有効活用され、保育・教育の場でも医療的ケアが提供されるように研修費の補助や医療的ケア実施体制の補助費をつけるなどして、子どもたちが親の付き添いなく保育所や学校に通えるようにしてほしい。(1-(2)-2)
・医療的ケアのニーズの把握について、子どもを親が見るのは当たり前とされて、行政の窓口で申請そのものを受け付けてくれないというケースも後を絶たない。把握されているかも疑問である。(1-(2)-2)
○折田涼氏
・ お伝えしたいことは、 24時間、人工呼吸器使用、寝たきり、コミュニケーションはまばたきのみ、全介助が必要でも親の付き添いなしに地域の学校に通い、ひとり暮らしもできるということ。必要なときに必要なケアをしてくれる人が常にそばにいてくれれば、私はどこへでも行けるし、どこででも暮らせる。けれども 24時間2人体制の介護時間はどの地域ででも保障されるわけではない。障害が重くて医療的ケアが必要で、2人介護が必要で、それでも自立して自分らしく生きたいという気持ちはほかの人と変わりない。そんな人にひとり暮らしは無理でしょという偏見・差別をなくしてほしい。(1-(2)-2)

【質疑・議論】

○河井委員
・現状で療養介護というのは施設入所ということであり、重心の方が入所して、施設内で24時間365日を完結しているという制度。療養介護を利用すると、そこにしかいられなくて、日中ほかの生活を選択できない。従ってそれは選択肢の中になく、在宅で医療的なものがなかなか受けられず親は大変だが、子どものことを考えたら療養介護を選ぶことができない人が多い。

○折田みどり参考人
・もっと地域の中に、こぢんまりとした拠点があるほうがより多くの人に関わってもらいやすいだろうと思うが、ケアホームが進んでも、人工呼吸器をつけた人までは手が回らない。採算が合わないので、なかなかやるというところも出てこないという状況を聞いている。

○三浦委員
・療養介護は入所支援と一体となっている制度のみか。(1-(3))
→療養介護は、障害者総合支援法の中で少し特殊な位置づけのサービスになっている。日中活動と位置づけられてはいるが、基本的に入院する形で活用していただく。要は、病院に入院しているので、病院に対する報酬は基本的なところは診療報酬で払われるが、診療報酬でみているスタッフとは別の追加的な福祉のスタッフを置くことに対して障害者総合支援法から療養介護に対する報酬を支払う形になっている。従って入所支援と一体ということではないが、ただ、病院に入院しているという状態を前提にしているので、そこから別の生活介護などに通うことを想定しているものではないことが今の仕組みになる。 (厚生労働省)
・医療的ケアが必要でも今、日中活動としてその方々を受け入れることのできる制度上の仕組みは、生活介護しかない。生活介護の支給日数は一月に原則22日だったと思うので土日の支給までは特別な事情がないと認めていない。その辺りはいかがか。
→療養介護以外の日中活動としては生活介護ということになる。原則としては 22日までで、どのくらいの医療的ケアが重度の方々に対応できているかはなかなかわからない面もある。少なくともこの4月から常勤で看護師を置く場合には加算を新設している。もう少し加算算定状況を見ると実態がわかってくるかと思う。(厚生労働省)
・(常勤で看護師を置く場合の)加算は4人まで。平均で4人ぐらい看護師が要るということが重要なポイントで、地域で暮らしやすくなるかがホームヘルプの支給と合わせて日中活動の場の確保と言われている。その辺りは要望としてもお願いしたい。(1-(3))

○佐藤委員
・喀痰吸引は、数年前からヘルパーもできるようになったが、この間の人員、ヘルパーの数、利用時間、事業所の数、利用者の数といったデータの推移を教えていただきたい。(1-(2)-1、1-(2)-2)
・ 学校の中での親の付き添いが非常に多い。学校内での医療的ケアがされてないからだというお話があった。実際どのぐらいの付き添いが実態として学校の中であるのか。特別支援学校、普通学校、それぞれのデータもお願いしたい。(1-(3)-3)

○三浦委員
・ 「医療的」となると、医療職が直接行わなければいけないケアだけではなく、佐藤委員からも先ほど発言があったように一定の研修を受けた介護職や教職の方々がケアができるように制度が改正されたので、私たちのセッションの方も「医療的」としていただければと提案する。

○竹田参考人
ユニバーサルの基準をどうとらえていくのかは、もう少し考えていただきたい。今の時代のユニバーサルな基準というものがどういう基準に合わせていったらいいのかを考えていただきたい。(5-(1))
・ 福祉ハイヤーが伸びているという資料だが、実際には私たちは地域で暮らしていく中で、実感は全くない。ではなぜタクシーが増えているのに、一方では自由に使える医療が増えていないのか。タクシーという基準自体が、私たちの思っている福祉タクシーの基準と、ここに取り上げられている福祉タクシーの数の推移というものが違うのではないかと感じているので、言葉の使い方として、福祉タクシーとは何なのか、あるいは障害者自身が抱えているタクシーへの情報がどういう問題があるのか、是非検討していただきたい。(5-(2)-4)
・ 政策医療としての療養介護という位置付けに変わってきたと思っているが、この療養介護の位置づけが変わったとき、もともと政策医療は児童福祉法を背景にしてできあがってきた部分があると思う。そう考えたときに、区分5以上が療養介護の対象だということになれば、進行性の難病の子どもたちはこれから障害が重くなるのであるから、療養介護を必要としている子どもたちのニーズをどうとらえていくのか。つまり、重度にならなければ使えないとなると、児童福祉法を背景にした政策医療と療養介護の区分5というものが、つながっているようでいないのではないかと思っている。この点の検討も是非お願いしたい。(1-(3))