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資料2-2

作成:DPI女性障害者ネットワーク(2015年7月)

モニタリングのために-障害のある女性について

 タイトル
A 条約条文
B 基本計画
又は基本法
進捗について
1 進捗していないこと
2 進捗したこと
3 基本法改正以前のこと
又は他の法律等において
解決していない実態政策課題
1一般原則・横断的視点
A 前文・1条・3条
B 3-(3)
1 基本法には「性別」と書かれたまででそれ以上には進捗していない。
2 基本計画に女性である障害者の複合的な困難への留意を記述した。
下記の全てを参照のこと。ア)障害のある女性の複合差別は、障害者権利条約に沿って課題として取り組まなければならないことであるという認識が、計画や方針では明記されてきたが、具体的には進んでいない。条約を批准した今、法律にこの認識を明記し政策化と実行が課題。
2障害のある女性
A 6条
B 3-(3)
3意識向上(固定観念、偏見・有害慣行)
A 8条
B -
1 基本法2条・4条に、観念を含む社会的障壁の除去が書かれているが、性別にかかわる記述がない。
2 -
3 男女共同参画社会基本法の総則には「社会における制度又は慣行」について記述されている。
イ)条約8条は「性および年齢を理由とするものを含む」と明記していることをふまえ、法と計画に取り組むべき課題であることの明記が必要。
4搾取・暴力・虐待からの自由
A 16条
B -
1 基本法に対応する条文がない。
2 障害者の虐待被害者のうち62.9%が女性という単純集計は出された(2013年度 厚生労働省報告書)
3 DV防止法は第23条で障害者も対象としている。障害者虐待防止法(2012年施行)は、性別や障害女性については全く記述していない。
a. 回答者87名の35%が性的被害を経験していた。
b. DV防止にかかわる行政の相談窓口は、電話による相談しか受けておらず、聴覚障害や言語障害がある人は利用し難い。公的なシェルターは、車いす利用者や介助を必要とする障害がある人の利用を想定していない。
c. 「婦人保護施設」にはDVで保護されている人が多数で知的・精神障害のある人も少なくない。

ウ)虐待防止法

 障害女性の環境を変えるには、医療機関、学校、保育所の虐待も通報の対象にすることが必要である。女性の被害が多いことについてジェンダーの視点からの調査分析を行うことと併せて、女性に重点をおいた法改正と政策が求められている。

エ)DV防止法

情報や支援を届けるには下記のことが必要。

  • 障害者だからと福祉の窓口や福祉施設にたらいまわしにしないで受けとめる。
  • 相談支援にあたる機関や窓口は、音声の電話では連絡やりとりができない障害者を想定したFAXやメールなどによる連絡方法を設ける
  • 障害がある人も共に利用できるシェルターのモデルをつくり拡大する
  • 個人情報やシェルターを秘匿のうえで本人の希望とニーズにあう介助や通訳を提供する
  • 同性介助を標準化する
  • 職務や立場から予防や支援にあたる人が障害女性による研修を受ける

オ)DV防止法および売春防止法

 「婦人保護施設」入所者の人権と福祉が課題であり、そのなかでも、複合的差別ゆえに困難が大きい知的障害や精神障害がある女性に必要なサポートが届くようにしなければならない。
 戦後まもなく制定された「売春防止法」の見直し検討も必要。

5家族の形成,性と生殖
A 23条・25条
B -
1 基本法に対応する条文がない。
2 -
3 女性分野では、第3次男女共同参画計画に、子育てをする障害のある女性について記述されたが、具体政策の進捗はない。
d. 障害のある人が十分な性教育を受けることができていない。
e. 障害のある女性は、現在も、医療機関や家族から妊娠や出産を阻まれたり、診療や入院を断られることがある。
f. 月経の介助を省くために子宮摘出を勧められた経験、子ども時代に優生手術を強制されたという経験も寄せられている。
g. 国連自由権規約委員会は、1998年に「法律が強制不妊の対象となった人たちの補償を受ける権利を規定していないことを遺憾に思い、必要な法的措置がとられること」を勧告、2014年にも改めて勧告の実行を求めている。
h. 病院や施設で、異性による介助を強制され、不快な経験をすることも多い。
i. 内診台や医療設備には障害女性には特に使いにくいものが多い。
j. 産科医療補償制度は根拠や運用実態が不透明なまま対象も拡大されている。
k. 出生前診断に課してきた条件の緩和は、「障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会(障害者基本法・目的)」とあいいれず、女性の心身の負荷も増大させている。

カ)誰に対しても産むことも産まないことも強制しないことを前提に、

  • 性教育の提供
  • 障害のある人が安全に適切に選択して使える避妊についての情報提供
  • 安心して産み育てることができる環境の整備
  • 医療機器や医療機関の設備環境について、障害女性を含めて受診する人の視点に立った改善
  • 本人が必要とした場合の家事援助や育児支援の促進
  • 医療機関や福祉施設において同性介助を標準化する

キ)旧優生保護法に基づく被害について人権侵害を認め、調査と謝罪、補償をすべきである。

ク)医療事故によって障害をもつことはないほうがよいと言えるが、結果として障害をもった人が、否定的に見られたりせずに、共生社会の一員として尊重されて生きていけるようにすることが課題。

ケ)女性一般においても、障害のある女性にとっても、子どもにとっても、本来必要なことは、障害や疾病を出生前診断の対象として排除することではなく、障害があっても疾病があっても安心して暮らしていける社会にすることである。

6健康・保健サービス
A 25条
B 基本法14条
1 基本法14条に対応する基本計画がない。
2 基本法14条に「性別」の記述が加えられた。
3 -
d-k(前出)

カ~ケ(前出)

コ)基本計画に、医療機関や福祉施設において同性介助を標準化する記述が必要。

サ)障害者基本法第31条を削除する改正が求められている。障害や疾病そのものを問題とする見方からの転換を含む社会的障壁の除去が必要なこと。

7相談・苦情・救済
A 27条
B -
1 基本法、基本計画に障害女性にかかわる記述はない。
2 -
3 障害者差別解消法の基本方針には「障害者の性別」という言葉が入れられた。
l. 障害女性は、しばしば、職場の上司など力関係が上の者から、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメントを受けている。
m. 女性を対象としている相談窓口が、電話による相談しか受けておらず、聴覚障害や言語障害がある人は利用し難い。

シ) 性別に配慮した相談応対のために次のことが必要。

  • 職務や立場から相談にあたる人が障害女性による研修を受ける
  • 障害のある女性の立場からの支援業務等への参画の推進
  • 障害のある女性に対する就労支援の強化と差別的取扱の禁止の徹底

ス) 障害者基本法18条(職業相談等)、23条(相談等)に、「性別、年齢、障害種別の観点に留意して」といった記述を加える改正が必要。

8安全、犯罪被害、災害とジェンダー
A 10条・11条
B 基本法26条
1 基本計画には関連した記載がない。
2 基本法26条に「性別」と記載された。
3 兵庫県基本計画(2015年度-)は災害を捉える複合的な視点から女性、子ども、高齢者等について記述している。
a. (前出)
n. 2014年世界防災会議(仙台)において障害のある女性のような複合的な差別への視点はほとんどなかった。
o. 災害時、紛争時には平時以上に性別役割の強要がなされがちでDVや性的被害も大きい。
セ)平時からバリアがないまちづくりを進めること、「一般避難所」となる公共施設のバリアフリー化を前提として、障害のある女性には特に着替えやトイレのスペースや人的支援などが必要になることをふまえて基本計画でも記述に入れる。
9貧困・社会保障
A 28条
B -
1 基本法、基本計画には対応する記述がない。
2 -
3 -
p. 就労収入を含む総年間収入においても、障害者単身世帯においては、男性が174万円、女性が92万円と、全就労者の収入と比較して、男性が42.5%、女性が33.9%と、著しく低い水準にとどまっている。(「障害者制度改革の推進のための第二次意見」2010年)
q. 女性の就労率(福祉的就労を含む)が低く、一般就労をしていても短時間労働の割合が多い。男性と比べて女性の収入が統計的に有意に少なく、52.9%が5~10 万円の層に集まっている。(兵庫県障害のある人への生活実態調査)
r. 障害年金の受給や、就労支援制度の利用について、男女の差があるのかどうかトータルに把握できる調査がないために、統計的に実態が明らかになっていない。

ソ)全ての人のディーセントワークの推進を基本として、障害のある女性の複合的差別ゆえの貧困を重点的課題として扱うこと。

タ)制度の利用状況について女性が男性に比べても低いとすれば、社会的な意識の障壁、教育機会の格差など、その背景を分析し対応する政策をとること、セルフアドボカシー・エンパワメントにつながる取組を支援促進することが特に必要。

チ)後出

10基礎データ・調査・PDCA
A 31条
B 推進体制5
1 基本計画には「性別」が記述されたが、実行に移されていない。
2 基本法に「性別」等の記述がない
3 男女共同参画基本計画(第3次2010年)の基本方針で「男女別等統計の充実」を課題としている。
s. 政府の業務統計でありながら「性別」を調査集計していないものがある。障害者雇用促進法に基づく「障害者雇用状況調査」の調査票には性別の回答欄もない。チ)条約批准国として、あらゆる調査でジェンダーの視点からも集計と公表をすることが求められている。障害者基本法で調査研究については個別分野の一部および機関の単位で書かれているが、総論を設ける改正が必要。
11障害女性の参画
A 34条
B -
1 基本法、基本計画に対応する記述がない。
2 -
3 「2020年30%目標」(第三次男女共同参画計画・2010年12月閣議決定)で、社会のあらゆる分野において2020年までに、指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする目標が立てられた。
t. 内閣府第2期障害者政策委員28名中、障害女性は2名のみ。

ツ)障害者政策委員会に、障害のある女性の立場で取り組んできた人を補充し、障害のある構成員のうち30%は女性が占めるようにする必要がある。基本法において政策委員会の構成について、権利条約に沿って「性別の釣合いがとれた構成となるよう配慮されなければならない。」といった条文を加える改正が必要。

テ)内閣府男女共同参画会議等にも、障害のある女性の参画確保が課題。

ト)国も自治体も障害者に関連する条例や政策の審議会・検討会・協議会等には、障害のある女性の参画確保を進めることが政策立案の前提である。