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資料3-3

(案)

議論の整理
~第3次障害者基本計画の実施状況を踏まえた課題~

平成27年8月
障害者政策委員会

目次

Ⅲ 分野別施策の基本的方向

1 生活支援

2 保健・医療

3 教育、文化芸術活動・スポーツ等

4 雇用・就業、経済的自立の支援

5 生活環境

6 情報アクセシビリティ

7 安全・安心

8 差別の解消及び権利擁護の推進

9 行政サービス等における配慮

Ⅳ 推進体制

Ⅲ 分野別施策の基本的方向

1 生活支援

(1)成年後見制度も含めた意思決定支援【WSⅠ】

【論点】成年後見制度は権利条約に抵触するのではないか。

①権利条約は代理決定を否定しており、取消権を中心とした保護主義的な代行型の枠組みである成年後見制度は権利条約に抵触するのではないか。

②意思決定をする事項の中には、簡単な行為から高度な法律行為まであり、内容を理解できない事項については意思決定できない。本人に取り返しのつかない不利益を及ぼす重要事項の決定には、成年後見制度による権利擁護が必要であり、権利条約の理念に適っている。

(法務省)
 法務省としては,我が国の成年後見制度は条約に抵触するものではないと認識している。民法上,成年後見人は,本人(成年被後見人)の意思を尊重し,心身の状態及び生活状況に配慮する義務を負っている(民法第858条)ほか,本人の利益を保護するために各種の措置が講じられており,これにより本人の権利,意思及び選好の尊重(条約第12条第4項)が図られている。なお,仮に本人による意思決定が事実上不可能な場合(例えば,重度の認知症患者など)にまで一律に成年後見人等の代理権を認めないとすると,本人は事実上何らの法律行為をすることができないことになりかねず,かえって本人の保護に欠けるおそれがあると考えられる。

【論点】成年後見制度そのものに限界があるのではないか。

①本人の意思の確認が困難であり、やむを得ず代理決定をする場合でも、成年後見を限定的なもの、最後の手段として位置付け、意思決定支援も含めた制度運用の改善を図るべき。

②例えば、法律専門職が、突然、成年後見人に選任されても意思決定支援までは及ばないという現実もある。成年後見人が一人で対応するのでなく、普段の生活を熟知した家族・関係者や、福祉の専門職等の意思決定を支援する者が継続的に集まり、本人を中心に協議するなど、相談・連携できる体制づくりが必要。

③本人の意思の確認、本人の意思に沿った決定は難しいものであり、中長期的な課題とせざるを得ないが、まずは、広くモデル事例を蓄積しながら、意思決定支援を促進するべきではないか。

④本人に判断能力がないことが成年後見制度利用の前提である一方で、身上配慮義務が求められるが、本人意思の尊重のあり方は未整理である。ここの議論が喫緊の課題であり、運用上の研究・検証を重ねた上で初めて、現行の成年後見制度と権利条約の関係を論ずることができるのではないか。

【論点】家庭裁判所の負担が重いのではないか。

①家庭裁判所が本来業務に加えて成年後見人の監督業務を担っているのは過重な負担ではないか。諸外国では行政機関が監督業務を担うことが多く、我が国においても中長期的な施策として、意思決定支援に知見がある機関が法人後見人や成年後見人などの支援を担う方向性を目指すことが現実的である。

②本人の意向に沿った意思決定支援に係るガイドラインのようなものを、生活の場、人生設計の場、生命にかかわる場という3層構造で作れるのではないか。支援のプロセスにおいて、意思決定支援のあり方について関係者間で紛議が生じた際に、調整・判断を担う機関があれば足りるのではないか。

③市町村が実施する地域生活支援事業において、市民後見人の活用を含めた法人後見の活動を支援することも模索されている。現場での意思決定を厚くして、下から積み上げた最後の段階で、家庭裁判所が機能・役割を果たすという分担も考えられる。

(2)医療的ケアを必要とする重度障害者等の地域移行の支援【WSⅡ】

【論点】どのような場合でも地域で生活することが可能であるべきではないか。

①地域によって水準に差異が生じないよう、人間らしく生きられるための24時間の医療的ケア保障(介護保障)をして欲しい。

②グループホームのような地域での居住支援は評価するが、人工呼吸器など医療的ケアを必要とする人へ対応するには報酬が低水準である。

③進行性疾患の難病患者に対する、病態や生活状態の変化に対応した医療や福祉、施策の総合的な相談窓口が身近なところに整備されるべき。

【論点】医療的ケアを必要とする子供の育ちをどう支えるのか。

①医療的ケアを要する子供は常時介護が必要にもかかわらず、市町村によっては福祉サービスの運用が硬直的なところもあり、保護者に過重な負担となっている。

②医療型障害児入所施設は、施設内で24時間365日を完結する制度であり、保護者としては医療的ケアの負担がありながらも、子供のことを考えると入所という選択はしづらい。

③療養介護の利用条件は障害支援区分「5」以上であり、進行性の難病の子供の場合には、医療型障害児入所施設が利用できても療養介護は利用できない可能性がある。

④ある調査によれば、7割以上の親が学校での付き添いをさせられており、付き添いをしている親のほぼ全員が医療的ケアも行っている。喀痰吸引等の制度が最大限有効活用され、保育・教育の場でも医療的ケアが提供されるように研修費の補助や医療的ケア実施体制の補助費をつけるなどしてほしい。

2 保健・医療

(1)精神障害者の地域移行の支援【WSⅡ】

【論点】精神保健福祉法等の制度と運用を改善すべきではないか。

①精神保健福祉法33条が医療保護入院を規定していることが妥当なのかは再検証をする必要がある。

②医療保護入院は、民間人が民間人に対して強制力を行使するという形態になっており、国際的に理解を得るのは難しい。

③精神保健指定医制度においては、入院中の患者の行動制限に関して一人の精神保健指定医に権限が集中しており、本人の権利を守る仕組みがない。

④過去の精神科病院での対応は問題があったかもしれないが、現在はその反省に立って状況が変わっている。

⑤医療法の特例の中で精神科医師は 48 床に1人いればいいとなっている。

⑥医療法の施行規則第 10 条3号に精神病患者は精神病室でない病室に入院させないことと記載されており、他科の医療従事者からの治療拒否ということが現在も存在している。

⑦精神科病棟の密室性が問題。利害関係のない第三者が病棟に来て、入院中の方の権利擁護者として付くことが必要。

⑧精神保健福祉法の附則において「代弁者制度の検討」ということが書き込まれているが、実現されていない。

⑨「精神病床の利用状況調査結果報告」のような調査を継続的に実施し、最新の正しい統計に基づいて議論をする必要がある。

⑩認知症に関して、精神科医療を中心とすべきではない。新オレンジプランの循環型の仕組みが問題。

(厚生労働省)
 医療保護入院は、精神保健指定医による診察の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者であって当該精神障害のために入院の必要性について本人が適切な判断をすることができない状態にある場合に適用されるものである。その実施に当たっては、精神保健指定医による診察や入院措置についての本人への書面告知が義務付けられており、人権への配慮の観点から入院の手続は厳格に定められている。また、入院の妥当性を判断するため、精神医療審査会において審査を行う仕組みも設けられている。
 医療保護入院の際、精神保健指定医の診察だけでなく家族等の同意を要件としたのは、精神障害者本人の権利擁護が重要であることや、インフォームド・コンセントがますます重要とされる中で、患者の身近に寄り添う家族等に十分な説明が行われた上で家族等が同意する手続きが重要であることといった点を総合的に考慮した結果である。なお、法改正後は、家族等のいずれでも退院請求が行えることとなっている。
 地域生活を支えるサービスの確保については、「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会」のとりまとめで示された方向性を踏まえ、地域の医療・福祉サービスの充実等に取り組んでいく。

【論点】地域で生活する基盤の充実をどのように進めるのか。

①障害のある方や精神障害のある方に出向いて、福祉的サービスや医療的サービスを提供するという地域でのモバイルチームが求められている。地域ケアの支出の増加や地域ケアへの人員配置の増加など、地域で生活を支えながら医療や福祉を提供することが必要。

②家族に対する社会的なサポートが乏しい。

③報酬が低すぎるために、地域移行支援から撤退していく事業者が増加している。利用人数の少なさの背景をもう一度分析していただき、精神障害の障害特性に見合った予算の設定を求めたい。

④精神障害者に対する専門職の養成を強く望みたい。

⑤民間の入居に関しては、精神障害者ということでなかなか受け入れてもらえていない。

⑥単に物理的な空間や設備が病室ではなく居住施設であるというだけで、地域移行の権利が実現されているということは言えない。

⑦権利条約は、最初から地域で生活をする権利の保障、入院をしないで済むような政策を求めており、入院している人を退院させることが第一義的な意味ではない。地域移行を考えるのと同時に、現に精神障害のある方、今後障害を負うことになる方が、地域で生活できるような資源を開発することが重要。

⑧社会的な役割を失った精神科病棟は閉鎖すべきもの。用途を変えて再び人を隔離・収容するために利用すべきではない。

(厚生労働省)  長期にわたって入院している精神障害者が退院するにあたっては、自宅や民間アパート、グループホームといった、地域での生活に直接移行することが原則であり、精神科病院敷地内におけるグループホームは、退院に向けた支援を徹底しても、なお、直接、地域に出ることを不安に感じる方にとっての通過的な居住の場として、あくまで試行的・例外的に設置を認めるものである。その設置・運営については、第三者が関与しつつ利用者本人の自由意思に基づく選択による利用であること、構造的に病院から一定の独立性を確保すること、利用期間を原則2年以内とすることなどの条件を設定しているところである。

3 教育、文化芸術活動・スポーツ等

(1)インクルーシブ教育システム【WSⅢ】

【論点】本人及び保護者の意思は尊重されているか。

①本人及び保護者の意思の尊重という観点から、初等中等教育における地域の学校への就学について、このように着実に前へ進んでいるということが言えるといい。

②発達障害の児童生徒は特別支援教育支援員の支援対象であるのに、知的障害のある子は対象ではないのは、合理的配慮を含む必要な支援を受けながら同じ場で共に学ぶことを追求するという点に反するのではないか。個別の支援を求めて特別支援学校に進学する子供が増えるという、インクルーシブとは逆の流れになることが懸念される。予算配分のバランス等も検討し、保護者本人が希望すればできるだけ地域の学校で受け入れるという体制づくりが必要。

(文部科学省)
 障害者権利条約に定めるインクルーシブ教育システムについては、障害のある者が、その能力等を最大限に発達させ、自由な社会に効果的に参加できることを可能とするとの教育理念の下で、障害のある者とない者とが可能な限り共に教育を受けられるよう配慮するものと承知している。
 平成24年7月に公表された中教審初等中等教育分科会の報告においても、自立と社会参加を見据えて、その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる、多様で柔軟な仕組みを整備することが重要であり、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある多様な学びの場を用意しておくことが重要であること等が提言された。
 また、特別支援教育支援員は、各学校において、障害のある子供に対して日常生活動作の介助や、学習活動上のサポートを行うため、各自治体が支援の必要な子供の実態に応じて配置するものであり、知的障害のある子供が支援の対象外というものではない。

【論点】インクルーシブ教育の進捗状況はどうか。

①教育支援資料を全国に配布し、就学に関する理解を深めた点は効果的だった。

②個別の教育支援計画を立てるにあたっては、作成の段階から活用を推進することが求められる。

③通所支援利用計画やサービス利用計画は、障害児相談支援と個別の教育支援計画と関係を密に持ちながら計画を立てていくことが求められる。

④あらゆる障害のある子供が一緒に教育を受けることをベースにした上で、それぞれのニーズにどこまで対応できるのかという考えに立って報告をしていかなければいけない。

⑤合理的配慮の好事例と同時に、誰でも取り組めるものとするために、失敗例もむしろきちんと挙げて、分析することが必要。

⑥手帳の有無や内申等の仕組みにより、高等学校への進学時のような選抜の場で排除が起きることは、合理的配慮の実現からすると問題。

(文部科学省)
 障害者権利条約に定めるインクルーシブ教育システムについては、障害のある者が、その能力等を最大限に発達させ、自由な社会に効果的に参加できることを可能とするとの教育理念の下で、障害のある者とない者とが可能な限り共に教育を受けられるよう配慮するものと承知している。
 平成24年7月に公表された中教審初等中等教育分科会の報告においても、自立と社会参加を見据えて、その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる、多様で柔軟な仕組みを整備することが重要であり、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある多様な学びの場を用意しておくことが重要であること等が提言されている。

【論点】環境の整備は進んでいるのか。

①早期からの教育相談・支援体制の整備や特別支援学校のセンター的機能の強化、教員定数の改善、特別支援教育支援員の配置や増員については評価している。更に教員の定数改善が必要であり、教室不足の課題が残っている。

②教育委員会では、特別支援教育支援員の配置は、地方交付税交付金を含めた一般財源で組まれているが、文部科学省の国庫補助金の中で組むべき。

③教育的ニーズに応じた教材の提供、拡大教科書や教科書のデジタルデータ等、特に発達障害関係の方の読み上げ教材等について、更に推進してほしい。

(文部科学省)
 特別支援教育支援員の配置に必要な経費については、地域の実情に合わせて国からの地方交付税として地方財政措置されており、各自治体の配置実績を踏まえて、年々拡充している。

(2)文化・スポーツ

①障害者のスポーツ実施率は健常者に比べて低いという政策課題について、明確に取り組もうとしている点を評価している。

②世界の一番を目指したい人もいれば、身近なところで週に1回程度運動をしたいという人もいる。全て障害者スポーツという形で切り取ってしまうと、多様なものが見えにくくなる。

③見ることも聞くことも両方できない者の文化的活動等について課題が残されている。

④バリアフリー映画の上映については、日本語字幕や音声ガイドなど、各省庁が協力し取り組む必要がある。

4 雇用・就業、経済的自立の支援

(1)雇用【WSⅢ】

【論点】法定雇用率の達成に向けてどのように取り組むべきか。

①教育委員会の中でも、特に都道府県教育委員会は、教育の現場を統括する機関でもあり、障害者の採用は、障害者の教育の面でも施策推進に役立つものであり、雇用率の達成に努力いただきたい。

②障害者雇用ができていない企業に障害者理解の推進を図ってほしい。

③障害者自身に対する就労支援だけでなく、企業に対する支援も必要。すでに、高齢・障害・求職者雇用支援機構により各種の助成がなされている点は評価できるが、それらの情報提供、更なる内容の見直しを適宜行っていくことが求められる。

④中小企業に対しては既に様々な支援がなされており、新たな助成金も創設されており、充実させていくことが課題。また、中小企業等に対する障害者雇用相談啓発事業の実施状況のような数字をあげていくことで、雇用政策を推進してほしい。

⑤今後、発達障害や難病の方を含めて多種多様な障害の方が相談に来られることが考えられるが、引き続きハローワーク職員への研修を充実させ、また、就労後の定着支援を推進してほしい。

⑥中途障害者に対する支援は手薄になりがち。一定の時間を中途障害者に与えて復帰の努力をさせ、企業側も復帰についての理解を持ってほしい。

⑦在職訓練や能力開発については、障害者の職域の拡大にも資するので、十分にお願いしたい。

⑧改正障害者雇用促進法の施行に向けて、障害当事者や企業に対し、改正の趣旨や、2015年3月に公表された「障害者差別禁止指針」及び「合理的配慮指針」等に係る情報提供が重要であるとともに、ガイドラインの着実な実施が求められる。

⑨就労の実態を把握するためにも、今後、男女別・地域別の人数も把握できるよう検討してほしい。調査の直接の目的が雇用促進であることや事業者の負担は性別のデータをとらない理由にはならない。

(厚生労働省)
 男女別データや都道府県別によるデータで精緻なデータをとることによってどういうメリットがあるのか、また条約上の義務のようなものがあるかなど具体的に示して頂くことが大事。その辺を整理して議論して頂くことが先決だと考える。

【論点】特例子会社はどうあるべきか。

①グループ適用に際しては、特に親会社と特例子会社の間で人事交流を図る、特例子会社で蓄積された障害者雇用のノウハウの蓄積を発信する、親会社でも生かすなどの工夫をして障害者雇用を推進してほしい。

②特例子会社の存在意義を認めつつ、新たに導入された差別禁止原則に抵触しない特例子会社の在り方が、今後、一層求められる。

③特例子会社における対応が悪い、一旦行くと二度と親会社に戻れない、賃金の格差があるといった実態があるのであれば、インクルーシブの視点から少し問題があるのではないか。

(厚生労働省)
 特例子会社と本社では行っている業務自体が異なっているため、賃金の違いということだけで判断するのは難しい。

5 生活環境

①民間の入居に関しては、精神障害者ということでなかなか受け入れてもらえていない。(再掲)

②バリアフリー法で整備は進んでいるが、対象になる施設や建築物等が非常に少ない。

③バリアフリー法の対象外となる施設等についても、バリアフリー化の状況を把握することが重要。

④バリアフリー化の数値目標が低いのではないか。

⑤福祉タクシーとして数えられているものの基準が、私たちの思っている基準と違うのではないか。数値が伸びているが実感がない。ユニバーサル(デザイン)の基準について再検討する必要がある。

⑥特にソフト面のバリアフリー化に関して、新しい技術が導入されたときに、障害者が利用することを想定しないまま新しいシステムに変わり、問題点が発生しがちである。

6 情報アクセシビリティ

【論点】情報提供を充実すべきではないか。

①放送等における、手話放送、音声解説の普及が進んでいない。

②政見放送には字幕や手話がついていないものがある。国会中継には字幕も手話もついていない。

③ディスプレーでの表示が不十分で生かされていない。駅以外のバス、電車の中、競技場、その他の施設における表示について、今後の方針が必要。

④放送媒体でアクセシビリティが向上しているが、緊急時にはなかなかリンクしてこない。

⑤緊急時の情報は、正確さが重要であるが、少々不正確でもタイミングのほうが急がれることがある。

⑥テレビを超えたインターネット動画等、様々な動画素材の字幕付与が、規格のない状態になっている。

⑦情報関連の規格を決める場合には、当事者あるいはその意見を反映できる人を入れることが必要である。また、省庁横断的な規格について検討できる場が必要。

(総務省)
 放送における手話、音声解説の普及に向けて、目標の策定・実績の公表、制作費の助成等の取組を行っているところ。
 衆議院比例代表選挙及び都道府県知事選挙の政見放送においては手話通訳の付与、参議院比例代表選挙においては手話通訳及び字幕の付与が可能であり、また、衆議院小選挙区選挙においては、候補者届出政党が作成したビデオに手話通訳や字幕を付与することができる状況にある。未だ実施されていない選挙もあるが、手話通訳の付与については、手話通訳士が地域的に偏在していることなどから、その確保が課題となっており、字幕の付与については、ごく限られた期間の中で収録を行わなければならないという時間的制約の中で、実施体制をどのように確保するか等の課題がある。
 国会中継の字幕、手話については、国会審議という内容の重要性ゆえの課題もある。生放送で、かつ、正確性、公平性が求められ、現時点では対応が難しいと聞いている。引き続き取組を要請していきたい。

【論点】意志疎通支援を充実すべきではないか。

①重度重複障害と身体障害の方々も常に視野に入れて検討してほしい。

②難聴者の情報アクセシビリティの施策にも対応してほしい。

③サービスを利用できる人の範囲、利用目的が限定されている。複数の都道府県、市区町村から人が参加するような集まりでの意思疎通支援について十分に検討されていない。

④通訳・介助員を派遣する事業の地域差をなくしてほしい。また、就労の場、教育の場、日常生活と、各省庁の横断的な対応が求められる。

【論点】教材のアクセシビリティをどう改善するのか。

①教育的なアセスメントを行い、情報保障ニーズを正しく把握すること、教科書と副教材、試験問題、解答用紙や教師の口頭指示などのアクセシビリティを保障することを、通常のカリキュラムの指導で原則にすることなど、一連の情報保障の流れが教育の中でも必要。

②標準拡大教科書とそれ以外の拡大教科書、マルチメディア教科書に対する文部科学省の取組には温度差がある。ボランティアを側面から支援するというのは不十分。

③現場で様々な素材へのアクセスが可能となるよう学校等が処理作業をするために必要となる、データを入手するための枠組が必要。

(文部科学省)
 音声教材については、平成 26 年度から製作費やインターネット配信するためのシステム運営費などを文部科学省が支援しているところであり、現在、希望する児童生徒が製作するボランティア団体に申請すれば、無償で提供を受けることが可能となっている。
 なお、これらの音声教材について今後、より一層の普及推進を図るため、平成26年度より、全国5ブロック(仙台、東京、名古屋、大阪、福岡)で、学校、教育委員会関係者を対象とした、音声教材の普及推進会議を文部科学省が開催・運営し、その活用方法等について周知徹底に努めている。

7 安全・安心

①避難所については、障害女性の視点からも考えていく必要がある。

②精神障害者の避難所への支援方法をしっかりと考えてほしい。

③避難が長期化したことによる影響をどの程度把握し、どういう対応をとるのかというスキームを、今回の東日本大震災で作られなかったのではないかと懸念している。障害、特に発達障害や知的障害等、脆弱性を持っている子どもの方が PTSD を持ちやすいことは把握されており、様々な支援が必要な人たちのことをきっちりとらえていくことが重要。

④復興計画の立案や実施において、どの程度当事者が参加しているのかという具体的な実績、実態の把握を検討する必要がある。

⑤希少疾患、その他の難病患者の薬は、どこの地域でも簡単に手に入るわけではなく、様々な工夫をして薬を備蓄してきたが、最近、薬の飲み残しをしないようにとの厚生労働省による指導を受け、災害に備えた薬の備蓄方法についての心配が出てきている。

⑥消費者被害については、認知症と知的障害を区別して集計いただきたい。また、男女別で集計していただきたい。

8 差別の解消及び権利擁護の推進

①権利侵害の防止、被害からの救済を図るための体制の整備について、現実に虐待があったときの救済の手順や、どこが救済を担って権利回復や正常な状態を回復させるのかを明確にしないと意味を成さない。

②病院や学校、保育所については、障害者虐待の通報義務から外れているのは、極めて問題だと考えている。

③障害者虐待防止法については、障害者が被害者になるという視点だけでなく、ご家族にもその視点を持っていただくような調査、進ちょくのチェックをしてほしい。

④法務省で所管している人権救済にかかわる案件の内容、障害者虐待防止法に基づく虐待の案件の内容と、来年度から施行される障害者差別解消法の差別にかかわる案件については、かなり重なるところがある。色々なところで色々な方が動いているという状況がある中で、きちんとつなげていくような仕組みがないか。

⑤合理的配慮の不提供について、過重な負担、必要かつ合理的な配慮ということに関して、何らかの指針を集積していかないと、適切に対応できないと考える。

9 行政サービス等における配慮

(1)司法手続等における配慮等

①取調べにおいて、知的や発達障害の方にも立会人、通訳があってもいいのではないか。

②取調べにおける録音・録画については、全過程の録音・録画でないと、かえって大事なところだけ落ちてしまい、全く逆の意味になってしまうことがありうることを懸念する。

③本人は家に帰りたいが、地域での生活が難しいのではないかと判断されてしまい、安易に施設入所が行われていると聞く。施設も加算がつく。地域生活定着促進事業が本当に本人の利益になっているのかどうかは、もう一度検証しなければならない。

④矯正施設に入所している人について、障害特性に対応するようなプログラムを実施して再犯を予防することが重要である。

(2)国家資格に関する配慮等

①障害や必要な配慮を申告した受験者の人数と障害別内訳、実際に試験で行われた合理的配慮の内容や件数、免許交付数などの数を見えるように集計していくことが課題を明らかにすることになる。

②公務員試験で、例えば、活字印刷物による出題に対応できる者、自力通勤できる者という規定があるために受験できないという問題が昨年あった。現在も半数の自治体でこういう要件を作っており、これらをなくすためにも公務員試験の共通的な指針を策定すべき。

Ⅳ 推進体制

①障害者に関する統計の課題として、日本の人口全体を対象として障害について尋ねた調査がない。日本でも、国勢調査に障害の設問を入れるべき。

②障害者に関する統計の課題として、男女別統計をきめ細かくとることが徹底されていない。複合差別の実態がわからない状況を解消するためメリットがあり、批准国は障害者権利条約第6条の複合差別解消に取り組むのが義務であると思う。さらに、政府が今、国会に提出している女性活躍推進法案の中に、同じ女性として障害のある女性も含まれるべき。

③男女比に差があることをもって直ちに違法ではないという状況下で、人数比をとることが、どういう意味を持っているのか、行政側がどう受けとめていくのかについて、より積極的、あるいは納得できるような理屈が求められる。必要だ、望ましいというだけでは、予算に限りがある中、政策の優先順位ということでは物事が進んでいかないように思う。

④障害者に関する統計の課題として、政策監視・評価に使える水準の統計が、国のみならず地方自治体でも不足している。使える統計がなければ、それを作る必要がある。

⑤障害者団体等が作成するもの、実施するものは、障害当事者、周辺にいる支援者の間の情報にとどまりやすい。今後、どう外へ向けて広げていくのかが課題である。


参考1

ワーキング・セッションのコーディネーター・参考人一覧

【ワーキング・セッションⅠ:成年後見制度も含めた意思決定支援など】

○コーディネーター:田中委員、玉木委員、野澤委員

○参考人:佐藤 彰一(国学院大学)、都築 美幸(愛知太陽の家)、細川 瑞子(富山育成会)

【ワーキング・セッションⅡ:精神障害者・医療ケアを必要とする重度障害者等の地域移行の支援など】

○コーディネーター:上野委員、大濱委員、川﨑委員、平川委員

○参考人:池原 毅和(東京アドヴォカシー法律事務所)、折田 みどり(人工呼吸器をつけた子の親の会<バクバクの会>)、竹田 保(ホップ障害者地域生活支援センター)、山本 深雪(大阪精神医療人権センター)

【ワーキング・セッションⅢ:インクルーシブ教育システム、雇用など】

○コーディネーター:佐藤委員、柘植委員、辻井委員

○参考人:大南 英明(全国特別支援教育推進連盟)、田中 伸明(名城法律事務所)、永野 仁美(上智大学)、村上 由美(ボイスマネージ)

【ワーキング・セッションⅣ:情報アクセシビリティ】

○コーディネーター:石野委員、門川委員、竹下委員

○参考人:近藤 武夫(東京大学)、新谷 友良(全日本難聴者・中途失聴者団体連合会)、寺島 彰(浦和大学)

※ 五十音順、敬称略、所属は事務局把握によるもの


参考2

障害者政策委員会の講演者・参考人一覧

【第21回障害者政策委員会】

○ロン・マッカラム(シドニー大学名誉教授、前国連障害者権利委員会委員長)

【第23回障害者政策委員会】

○勝又 幸子(国立社会保障・人口問題研究所)

※ 敬称略、所属は事務局把握によるもの


参考3

第3次障害者基本計画の実施状況の監視に係る障害者政策委員会及びワーキング・セッションの開催実績

5月29日(金) 13:30~17:30〔4時間〕
第21回政策委員会

ロン・マッカラム氏(前国連障害者権利委員会委員長)講演

「1.生活支援」
「2.保健・医療」
「3.教育、文化芸術活動・スポーツ等」
「5.生活環境」
(※ いずれも、ワーキング・セッションで扱うテーマを除く)

   ↓

終了後、事務局において「議論の整理案」を作成

6月29日(月) 13:30~17:30〔4時間〕
第22回政策委員会

「7.安心・安全」
「8.差別の解消及び権利擁護の推進※
(※ワーキング・セッションで扱うテーマを除く)
「9.行政サービス等における配慮」
「10. 国際協力」
「Ⅳ 推進体制」

5月19日(火)

10:30~12:30〔2時間〕

ワーキング・セッションⅣ①
【情報アクセシビリティ】

13:30~15:30〔2時間〕

ワーキング・セッションⅡ①
【精神障害者・医療ケアを必要とする重度障害者等の地域移行の支援など】

5月22日(金)

10:30~12:30〔2時間〕

ワーキング・セッションⅠ①
【成年後見制度も含めた意思決定支援など】

14:00~16:00〔2時間〕

ワーキング・セッションⅢ①
【インクルーシブ教育システム、雇用など】

6月1日(月)

10:30~12:30〔2時間〕

ワーキング・セッションⅣ②
【情報アクセシビリティ】

13:30~15:30〔2時間〕

ワーキング・セッションⅡ②
【精神障害者・医療ケアを必要とする重度障害者等の地域移行の支援など】

6月5日(金)

13:30~15:30〔2時間〕

ワーキング・セッションⅢ②
【インクルーシブ教育システム、雇用など】

6月12日(金)

10:30~12:30〔2時間〕

ワーキング・セッションⅠ②
【成年後見制度も含めた意思決定支援など】

7月10日(金)13:15~16:15〔3時間〕 第23回政策委員会

  • 各ワーキング・セッションから議論概要の報告
  • 意見交換

8月10日(月)13:15~16:15〔3時間〕 第24回政策委員会

  • 全分野にわたる再度の議論

8月31日(月)13:15~16:15〔3時間〕 第25回政策委員会

  • 「2.保健・医療」における精神科医療、及び「3.教育、文化芸術活動・スポーツ 等」におけるインクルーシブ教育システムについて有識者ヒアリング+議論
  • 第24回で出された意見に係る修正箇所の確認
    →「議論の整理」のとりまとめ