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別紙

資料1-4

議論の整理
~第3次障害者基本計画の実施状況を踏まえた課題~

平成27年9月
障害者政策委員会

目次

Ⅲ分野別施策の基本的方向  

1.生活支援

2.保健・医療

3.教育、文化芸術活動・スポーツ等

4.雇用・就業、経済的自立の支援

5.生活環境

6.情報アクセシビリティ

7.安全・安心

8.差別の解消及び権利擁護の推進

9.行政サービス等における配慮

Ⅳ 推進体制

(別添1)障害者に関する統計

(別添2)障害のある女性

Ⅲ分野別施策の基本的方向

1.生活支援

(1)成年後見制度も含めた意思決定支援【WS Ⅰ】

【論点】成年後見制度は権利条約に抵触するのではないか。

① 権利条約は代理決定を否定しており、取消権を中心とした保護主義的な代行型の枠組みである成年後見制度は権利条約に抵触するのではないか。
② 意思決定をする事項の中には、簡単な行為から高度な法律行為まであり、内容を理解できない事項については意思決定できない。本人に取り返しのつかない不利益を及ぼす重要事項の決定には、成年後見制度による権利擁護が必要であり、権利条約の理念に適っている。

(法務省)
法務省としては、我が国の成年後見制度は条約に抵触するものではないと認識している。民法上、成年後見人は、本人(成年被後見人)の意思を尊重し、心身の状態及び生活状況に配慮する義務を負っている(民法第858条)ほか、本人の利益を保護するために各種の措置が講じられており、これにより本人の権利、意思及び選好の尊重(条約第12条第4項)が図られている。なお、仮に本人による意思決定が事実上不可能な場合(例えば、重度の認知症患者など)にまで一律に成年後見人等の代理権を認めないとすると、本人は事実上何らの法律行為をすることができないことになりかねず、かえって本人の保護に欠けるおそれがあると考えられる。

【論点】成年後見制度そのものに限界があるのではないか。

① 本人の意思の確認が困難であり、やむを得ず代理決定をする場合でも、成年後見を限定的なもの、最後の手段として位置付け、意思決定支援も含めた制度運用の改善を図るべきである。
② 法律専門職が成年後見人に突然選任されても意思決定支援までは及ばないという現実もある。成年後見人が一人で対応するのでなく、普段の生活を熟知した家族・関係者や、福祉の専門職等の意思決定を支援する者が継続的に集まり、本人を中心に協議するなど、相談・連携できる体制づくりが必要である。
③ 本人の意思の確認、本人の意思に沿った決定は難しいものであり、中長期的な課題とせざるを得ないが、まずは、広くモデル事例を蓄積しながら、意思決定支援を促進するべきではないか。
④ 本人に判断能力がないことが成年後見制度を利用する前提である一方で、身上配慮義務が求められながらも、本人意思の尊重のあり方は未整理である。この点の議論が喫緊の課題であり、運用上の研究・検証を重ねた上で初めて、現行の成年後見制度と権利条約の関係を論ずることができるのではないか。

【論点】家庭裁判所の負担が重いのではないか。

① 家庭裁判所が本来業務に加えて成年後見人の監督業務を担っているのは、過重な負担ではないか。諸外国では行政機関が監督業務を担うことが多く、我が国においても中長期的な施策として、意思決定支援に知見がある機関が法人後見人や成年後見人などの支援を担う方向性を目指すことが現実的である。
② 本人の意向に沿った意思決定支援に係るガイドラインのようなものを、生活の場、人生設計の場、生命にかかわる場という3層構造で作れるのではないか。また、意思決定支援のあり方について関係者間で軋轢が生じた際に、調整・判断を担う機関があれば足りるのではないか。
③ 市町村が実施する地域生活支援事業において、市民後見人の活用を含めた法人後見の活動を支援することも模索されている。現場での意思決定支援を厚くして、最後の段階で家庭裁判所が機能・役割を果たすという分担も考えられる。

(2) 医療的ケアを必要とする重度障害者等の地域移行の支援【WSⅡ】
【論点】どのような場合でも地域で生活することが可能であるべきではないか。

① 地域によって水準に差異が生じないよう、人間らしく生きられるための24時間の医療的ケア保障、介護保障をしてほしい。
② グループホーム等地域での居住支援は評価するが、喀痰吸引など医療的ケアを必要とする人に対応するには、今の報酬は低水準である。
③ 進行性疾患の難病患者に対する、病態や生活状態の変化に対応した医療や福祉、施策の総合的な相談窓口が身近なところに整備されるべきである。

【論点】医療的ケアを必要とする子供の育ちをどう支えるのか。

① 医療的ケアを要する子供は常時介護が必要にもかかわらず、市町村によっては福祉サービスの運用が硬直的なところもあり、保護者に過度な負担となっている。
② 医療型障害児入所施設は、施設内で24時間365日を完結する制度であり、保護者としては、子供のことを考えると、医療的ケアの負担がありながらも入所という選択はしづらい。
③ 療養介護の利用条件は障害支援区分5以上であり、進行性の難病の子供の場合は、医療型障害児入所施設が利用できるが、療養介護は利用できない可能性がある。
④ ある調査によれば、7割以上の親が学校での付き添いをさせられており、付き添いをしている親のほぼ全員が医療的ケアも行っている。喀痰吸引等の制度が最大限有効活用され、保育・教育の場でも医療的ケアが提供されるように、研修費の補助をしたり、医療的ケア実施体制の補助費を付けたりしてほしい。

2.保健・医療

(1)精神障害者の地域移行の支援【WS Ⅱ】
【論点】精神保健福祉法等の制度と運用を改善すべきではないか。

① 医療保護入院についての規定である精神保健福祉法第33条の妥当性については、再検証をする必要がある。
② 医療保護入院は、民間人が民間人に対して強制力を行使するという形態になっており、国際的に理解を得るのは難しい。
③ 近年の医療保護入院の増加について、本人の意思が反映されない傾向が強くなっているとの見方がある一方で、症状悪化時に緊急介入するという考え方のもとでの在院日数の短期化と入院回数の増加という要因等も踏まえれば、本人意思の軽視、権利侵害の拡大と判断するのは早計との見方もある。この点は検証を要する。
④ 医療法の特例の中で精神科医師は48床に1人とされているが、精神科医療の機能に応じた適切な人員配置が必要ではないか。
⑤ 精神保健指定医制度においては、精神医療審査会に対する処遇改善請求等があるとはいえ、入院中の患者の行動制限に関して一人の精神保健指定医に権限が集中する構造となっている。
⑥ 精神科病棟における患者の権利擁護のため、家族や医療従事者から独立した権利擁護者の関与が不可欠である。
⑦ 精神医療審査会の審査結果について、「他の入院形態への移行が適当」又は「入院継続不要」とされた件数は26万件のうち9件、改善処遇請求308件に対して「入院又は処遇は不適当」とされたのは5.8%である。これについては、精神保健指定医の適正な判断を示しているとの見方もあるが、やはり少なすぎる印象は否めず、精神医療審査会が審査機能を十分に果たしていないとも考えられる。この点は検証を要する。
⑧ 医療法施行規則第10条第3号において、精神病患者は精神病室でない病室に入院させない旨が規定されており、改善の兆しがみられるものの、他科の医療従事者からの治療拒否が現在も存在している。
⑨ 認知症に関しては、精神科医療での社会的入院の実態が容認されているが、その状況を改める必要がある。
⑩ 過去の精神科病院での対応は問題があったかもしれないが、現在はその反省に立って状況が変わっている。「精神病床の利用状況調査結果報告」のような調査を継続的に実施し、最新の正確な統計に基づいて議論をする必要がある。

(厚生労働省)
医療保護入院は、精神保健指定医による診察の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者であって当該精神障害のために入院の必要性について本人が適切な判断をすることができない状態にある場合に適用されるものである。その実施に当たっては、精神保健指定医による診察や入院措置についての本人への書面告知が義務付けられており、人権への配慮の観点から入院の手続は厳格に定められている。また、入院の妥当性を判断するため、精神医療審査会において審査を行う仕組みも設けられている。
医療保護入院の際、精神保健指定医の診察だけでなく家族等の同意を要件としたのは、精神障害者本人の権利擁護が重要であることや、インフォームド・コンセントがますます重要とされる中で、患者の身近に寄り添う家族等に十分な説明が行われた上で家族等が同意する手続きが重要であることといった点を総合的に考慮した結果である。なお、法改正後は、家族等のいずれでも退院請求が行えることとなっている。
地域生活を支えるサービスの確保については、「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会」のとりまとめで示された方向性を踏まえ、地域の医療・福祉サービスの充実等に取り組んでいく。

【論点】地域で生活する基盤の充実をどのように進めるのか。

① 精神障害者が地域で生活する上で、家族に対する社会的なサポートが乏しい。
② 障害者権利条約は、地域で生活をする権利の保障という観点から、精神障害者が入院をしないで済むような施策を求めている。精神科に入院している人の地域移行を考えるのと同時に、精神障害者が地域で生活できるような資源を開発することが重要である。
③ 精神科医療そのものの地域移行が必要である。地域ケアへの支出や人員配置を増加させるとともに、地域にいる精神障害者を訪問し福祉的サービスや医療的サービスを提供する「モバイルチーム」が求められている。
④ 報酬が低額で持ち出しが発生してしまうために、地域移行支援から撤退していく事業者が増加している。そのため、利用人数の少なさの背景をもう一度分析し、精神障害の特性に見合った予算を設定することを求めたい。
⑤ 精神障害者の地域生活を支える専門職の養成を強く望みたい。
⑥ 民間住宅の入居に関しては、精神障害者というだけでなかなか受け入れてもらえない。
⑦ 単に物理的な空間や設備が病室ではなく居住施設であるというだけでは、地域移行が実現されているとは言えない。また、社会的な役割を失った精神科病棟は閉鎖すべきものであり、用途を変えて人を隔離・収容するために利用すべきではない。

(厚生労働省)
長期にわたって入院している精神障害者が退院するにあたっては、自宅や民間アパート、グループホームといった、地域での生活に直接移行することが原則であり、精神科病院敷地内におけるグループホームは、退院に向けた支援を徹底しても、なお、直接、地域に出ることを不安に感じる方にとっての通過的な居住の場として、あくまで試行的・例外的に設置を認めるものである。その設置・運営については、第三者が関与しつつ利用者本人の自由意思に基づく選択による利用であること、構造的に病院から一定の独立性を確保すること、利用期間を原則2年以内とすることなどの条件を設定しているところである。

3.教育、文化芸術活動・スポーツ等

(1)インクルーシブ教育システム【WSⅢ】
【論点】インクルーシブ教育の進捗状況はどうか。

① インクルーシブ教育の到達点は何か、その進捗状況を監視するための指標は何か、それを前提としてどのように推進するのかという議論が必要である。
② 進捗状況を議論するに当たっては、幼稚園・小学校・中学校・高等学校と特別支援学校を分けたデータや障害種別のデータがあると分かりやすい。特別支援学校・学級に通っている生徒の、障害のない生徒との交流の実態についても記述があるとよい。また、質的なデータとしては、個別の支援計画・指導計画が重要であり、本人の振り返り評価も含めて分析してはどうか。
③ 個別の教育支援計画が絵に描いた餅にならないよう、作成の段階から活用するまでの全プロセスを念頭におくことが求められる。
④ 通所支援利用計画やサービス利用計画は、障害児相談支援と個別の教育支援計画を密接に連携させながら計画を立てていくことが求められる。
⑤ 特別支援連携協議会については、設置状況等の実態を把握し、機能がどこまで果たせているのか分析する必要がある。
⑥ インクルーシブ教育の進捗状況の報告に当たっては、あらゆる障害のある子供が一緒に教育を受けることをベースにした上で、それぞれのニーズにどこまで対応できるのかという考えに立脚しなければならない。
⑦ 進捗状況の報告の際は、障害の有無の視点も重要であるが、障害のある子供が学校で学び、生活するときに、どのような困難があるのか、また、学校がどのような支援をしているかに注目すべきである。
⑧ 教育支援資料を全国に配布し、就学に関する理解を深めた点は効果的だった。
⑨ 合理的配慮については、誰でも取り組めるものとするために、好事例とともに失敗例もきちんと挙げて、分析することが必要である。
⑩ 高等学校への進学時のような選抜の場において、手帳の有無や内申等の仕組みにより障害のある子供が排除されることは、インクルーシブ教育の実現からすると問題である。

(文部科学省)
インクルーシブ教育システムとは、障害者権利条約や障害者基本法にあるとおり、障害のある者が、その能力等を最大限に発達させ、自由な社会に効果的に参加できることを可能とするとの教育理念の下で、障害のある者とない者とが可能な限り共に教育を受けられるよう配慮することを意味すると理解している。
平成24年7月に公表された中教審初等中等教育分科会の報告においても、自立と社会参加を見据えて、その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる、多様で柔軟な仕組みを整備することが重要であり、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある多様な学びの場を用意しておくことが重要であること等が提言されている。

【論点】本人及び保護者の意思は尊重されているか。

① 本人及び保護者の意思の尊重という観点から、初等中等教育における地域の学校への就学について、適切なデータを示すことなどを通じて、着実に前へ進んでいるということが言えるといい。
② 特別支援教育支援員の配置について、発達障害の児童生徒については積極的であるにも関わらず、知的障害の児童生徒に対して消極的なのは、必要な支援を受けながら同じ場で共に学ぶことを追求するという点に反するのではないか。個別の支援を求めて特別支援学校に進学する子供が増えるという、インクルーシブ教育とは逆の流れになることが懸念される。予算配分のバランス等も検討し、本人及び保護者が希望すればできるだけ地域の学校で受け入れるという体制づくりが必要である。

(文部科学省)
インクルーシブ教育システムとは、障害者権利条約や障害者基本法にあるとおり、障害のある者が、その能力等を最大限に発達させ、自由な社会に効果的に参加できることを可能とするとの教育理念の下で、障害のある者とない者とが可能な限り共に教育を受けられるよう配慮することを意味すると理解している。
平成24年7月に公表された中教審初等中等教育分科会の報告においても、自立と社会参加を見据えて、その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる、多様で柔軟な仕組みを整備することが重要であり、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある多様な学びの場を用意しておくことが重要であること等が提言された。
また、特別支援教育支援員は、各学校において、障害のある子供に対して日常生活動作の介助や、学習活動上のサポートを行うため、各地方公共団体が支援の必要な子供の実態に応じて配置するものであり、知的障害のある子供が支援の対象外というものではない。

【論点】環境の整備は進んでいるのか。

① 早期からの教育相談・支援体制の整備や特別支援学校の情報発信センター的機能の強化、教員定数の改善、特別支援教育支援員の配置や増員については評価しているが、更に教員の定数改善が必要であるとともに、教室不足の課題が残っている。
② 特別支援教育支援員の配置は、教育委員会において地方交付税交付金を含めた一般財源で手当てされているが、文部科学省の国庫補助金の中で手当てされるべきである。
③ 教科書のデジタルデータ等、教育的ニーズに応じた教材の提供、特に発達障害児・者の読み上げ教材等の保障を推進してほしい。

(文部科学省)
特別支援教育支援員の配置に必要な経費については、地域の実情に合わせて国からの地方交付税として地方財政措置されており、各地方公共団体の配置実績を踏まえて、年々拡充している。

(2)文化・スポーツ

① 障害者のスポーツ実施率は健常者に比べて低いという政策課題について、明確に取り組もうとしている点を評価する。
② 世界の一番を目指したい人もいれば、身近なところで週に1回程度運動をしたいという人もいるため、全て「障害者スポーツ」という形で一括りにしてしまうと、多様なニーズが見えにくくなる。
③ 盲ろう者の文化的活動等について課題が残されている。
④ バリアフリー映画の上映については、日本語字幕や音声ガイドなど、各省庁が協力して取り組む必要がある。

4.雇用・就業、経済的自立の支援【WS Ⅲ】

【論点】法定雇用率の達成に向けてどのように取り組むべきか。

① 教育の現場を統括する機関である都道府県教育委員会が障害者を採用することは、障害者の教育の面でも施策推進に役立つものであり、雇用率の達成が求められる。
② 障害者雇用ができていない企業に障害者理解の推進を図ってほしい。
③ 障害者自身に対する就労支援だけでなく、企業に対する支援も必要である。すでに、高齢・障害・求職者雇用支援機構により各種の助成がなされている点は評価できるが、助成に関する情報提供とともに、更なる内容の見直しを適宜行っていくことが求められる。
④ 中小企業に対しては既に様々な支援がなされ、新たな助成金も創設されているが、更に充実させていくことが課題である。また、中小企業等に対する障害者雇用相談啓発事業の実施状況のような数字を示すこと等を通じて雇用政策を推進してほしい。
⑤ 今後、発達障害や難病を含め多種多様な障害者が相談に来ることが考えられるが、引き続きハローワーク職員への研修を充実させ、また、就労後の定着支援を推進してほしい。
⑥ 中途障害者に対する支援は手薄になりがちである。一定の時間を中途障害者に与えて復帰の努力をさせるなど、企業側も復帰についての理解を持ってほしい。また、中途障害の国家公務員に対する職場復帰に向けた取組を踏まえ、企業もどのように取り組んでもらうかが課題である。
⑦ 在職訓練や能力開発は、障害者の職域の拡大にも資するものであり、十分にお願いしたい。
⑧ 改正障害者雇用促進法の施行に向けて、障害当事者や企業に対し、改正の趣旨や、2015年3月に公表された「障害者差別禁止指針」及び「合理的配慮指針」等に係る情報提供が重要であるとともに、これらガイドラインの着実な実施が求められる。

【論点】特例子会社はどうあるべきか。

① 特に親会社と特例子会社の間で人事交流を図る、特例子会社で蓄積された障害者雇用のノウハウを発信する、親会社でもそれらノウハウを生かすなどの工夫をして、障害者雇用を推進してほしい。
② 中途障害等の場合に、本人の同意が得られないにもかかわらず特例子会社に出向させられるといった実態があるとすれば、インクルーシブの視点から少し問題があるのではないか。

5.生活環境

① 民間住宅の入居に関しては、精神障害者というだけでなかなか受け入れてもらえない。(再掲)
② バリアフリー法により整備は進んでいるが、対象になる施設や建築物等が非常に少ない。
③ バリアフリー法の対象外となる施設等についても、バリアフリー化の状況を把握することが重要である。
④ バリアフリー化の数値目標が低いのではないか。
⑤ 福祉タクシーの数値が伸びていると報告されているがその実感がないのは、福祉タクシーとして数えられている車両の基準が障害者の想定する基準と違うからではないか。ユニバーサルデザインの基準について再検討する必要がある。
⑥ 特にソフト面のバリアフリー化に関して、新しい技術が導入されたときに、障害者が利用することを想定しないまま新しいシステムに変わり、問題が発生しがちである。

6.情報アクセシビリティ【WS Ⅳ】

【論点】情報提供を充実すべきではないか。

① 放送媒体における、手話放送、音声解説の普及が進んでいない。
② 政見放送には字幕や手話がついていないものがある。また、国会中継には字幕も手話もついていない。
③ 駅以外のバス、電車の中、競技場、その他の施設におけるディスプレーの表示が不十分で生かされていないため、今後の方針の検討が必要である。
④ 放送媒体におけるアクセシビリティは向上しているが、緊急時の対応においては大きな改善に結びついていない。
⑤ 緊急時の情報は、正確さが重要であるが、少々不十分でもタイミングの方が急がれることがある。
⑥ インターネット動画等、様々な動画素材の字幕付与について、規格が存在しない状態になっている。
⑦ 情報関連の規格を決める場には、当事者あるいはその意見を反映できる人を入れることが必要である。また、省庁横断的な規格について検討できる場が必要である。

(総務省)
放送における手話、音声解説の普及に向けて、目標の策定・実績の公表、制作費の助成等の取組を行っているところ。
衆議院比例代表選挙及び都道府県知事選挙の政見放送においては手話通訳の付与、参議院比例代表選挙においては手話通訳及び字幕の付与が可能であり、また、衆議院小選挙区選挙においては、候補者届出政党が作成したビデオに手話通訳や字幕を付与することができる状況にある。未だ実施されていない選挙もあるが、手話通訳の付与については、手話通訳士が地域的に偏在していることなどから、その確保が課題となっており、字幕の付与については、ごく限られた期間の中で収録を行わなければならないという時間的制約の中で、実施体制をどのように確保するか等の課題がある。
国会中継の字幕、手話については、国会審議という内容の重要性ゆえの課題もある。生放送で、かつ、正確性、公平性が求められ、現時点では対応が難しいと聞いているが、引き続き、技術開発の推進等による取組を要請していきたい。

【論点】意思疎通支援を充実すべきではないか。

① 重度重複障害者や重篤な難病患者など個別性の高いコミュニケーション方法を用いる人たちも常に視野に入れて検討してほしい。
② 身体障害者手帳を持たない難聴者の情報アクセシビリティの施策にも対応してほしい。
③ サービスを利用できる人の範囲や利用目的が限定されているなど、複数の都道府県、市区町村から人が参加するような場における意思疎通支援について十分に検討していない地方公共団体も一部ある。
④ 盲ろう者向け通訳・介助員を派遣する事業の地域差をなくしてほしい。また、就労の場から教育の場、日常生活など、幅広い分野において支援が必要とされるため、各省庁の横断的な対応が求められる。
⑤ 障害者が情報通信技術を活用できるよう、利用支援に係る施策の充実を図るとともに、それを支援する人材の育成が重要である。

【論点】教材のアクセシビリティをどう改善するのか。

① 情報保障ニーズを正しくアセスメントし、教科書と副教材、試験問題、解答用紙や教師の口頭指示などのアクセシビリティを保障するとともに、これらの情報保障の流れを通常のカリキュラムで原則にすることが必要である。
② 標準拡大教科書と比べ、それ以外の拡大教科書、マルチメディア教科書に対する文部科学省の取組には温度差がある。後者について、ボランティアを側面から支援するというだけでは不十分である。
③ 教育現場で様々な教材へのアクセスが可能となるよう、学校等がデジタルテキスト化や点訳等の作業をするために必要となる書籍の元データを出版社から入手できるようにする制度的枠組が必要である。

(文部科学省)
音声教材については、平成26年度から製作費やインターネット配信するためのシステム運営費などを文部科学省が支援しているところであり、現在、希望する児童生徒が製作するボランティア団体に申請すれば、無償で提供を受けることが可能となっている。
なお、これらの音声教材について今後、より一層の普及推進を図るため、平成26年度より、全国5ブロック(仙台、東京、名古屋、大阪、福岡)で、学校、教育委員会関係者を対象とした、音声教材の普及推進会議を文部科学省が開催・運営し、その活用方法等について周知徹底に努めている。

【論点】行政情報のバリアフリー化は進んでいるのか。

① ウェブ・アクセシビリティ支援ツールを提供することは、個々の行政情報をアクセシブルにすることを保障するものではない。行政情報のバリヤフリー化の施策として求められているのは、行政情報そのものをアクセシブルにすることである。
② 中央省庁や各地方公共団体がどのようなウェブ・アクセシビリティ方針を立て、どのような試験を行い、何を目指しているのかもとりまとめてほしい。

7.安全・安心

① 避難所については、障害のある女性の視点からも考えていく必要がある。
② 災害時における精神障害者の避難の支援方法をしっかりと考えてほしい。
③ 避難が長期化することによる影響をどの程度把握し、どういう対応をとるのかというスキームが、東日本大震災で作られなかったのではないか。特に発達障害者や知的障害者、脆弱性を持っている子供の方がPTSD(心的外傷後ストレス障害)を持ちやすいことは把握されており、様々な支援が必要な人たちのことをしっかり捉えていくことが重要である。
④ 復興計画の立案や実施において、どの程度障害者が参加しているのかについて実態の把握を検討する必要がある。
⑤ 希少疾患、その他の難病患者の薬は、どこの地域でも簡単に入手できるわけではなく、様々な工夫をして備蓄してきた。しかし、最近、薬の飲み残しをしないようにとの厚生労働省による指導を受け、災害に備えた薬の備蓄方法について懸念している。
⑥ 消費者被害については、認知症と知的障害を区別して集計してほしい。また、男女別で集計してほしい。

8.差別の解消及び権利擁護の推進

① 権利侵害の防止や被害救済を図るための体制整備について、現実に虐待があったときの救済手順や、被害救済のための機能を担う主体を明確にする必要がある。
② 病院や学校、保育所について、障害者虐待防止法の通報義務から外れているのは、極めて問題と考える。
③ 障害者虐待防止法については、障害者が被害者になるという視点だけでなく、家族も被害者になりうるという視点を持ってほしい。
④ 法務省で所管している人権救済にかかわる案件、障害者虐待防止法に基づく虐待の案件と、来年度から施行される障害者差別解消法の差別にかかわる案件については、重なるところがある。それらを横断的につなげていくような仕組みはないのか。
⑤ 合理的配慮の提供について、過重な負担という要素も含めて、事例を集積していかないと、適切に対応できないと考える。

9.行政サービス等における配慮

(1)司法手続等における配慮等

① 取調べにおいて、知的障害者や発達障害者にも、立会人や通訳があってもいいのではないか。
② 取調べにおける録音・録画については、全過程の録音・録画でないと、かえって大事な部分だけ落ちてしまい、取調べを受けた本人の主張が全く逆の意味に捉えられてしまうことがありうることを懸念する。
③ 服役を終えた障害者は家に帰りたくても、地域での生活が難しいのではないかと判断されてしまい、また、施設側にも加算がつくことから、安易に施設入所が行われていると聞く。地域生活定着促進事業が本当に本人の利益になっているのかどうかは、もう一度検証しなければならない。
④ 矯正施設に入所している人について、障害特性に対応するようなプログラムを実施して再犯を予防することが重要である。

(2)国家資格に関する配慮等

① 各種国家資格の試験の実施等において求められる合理的配慮について、障害や必要な配慮を申告した受験者の人数と障害別内訳、実際に試験で行われた合理的配慮の内容や件数、免許交付数などの数を見えるように集計していくことが、課題を明らかにすることになる。また、いわゆる欠格条項について、必要に応じた見直しを進めてほしい。
② 公務員試験で、例えば、活字印刷物による出題に対応できる者、自力通勤できる者という規定があるために受験できないという問題が昨年あった。現在も半数の地方公共団体でこういう要件を設けており、これらをなくすためにも公務員試験の共通的な指針を策定すべきである。

(総務省)
地方公共団体の採用試験の実施に当たり、どのような受験資格を設けるかについては、募集の主体である各地方公共団体において、募集しようとする具体的な職務内容等を踏まえて定めるべきものである。
一方、平成28年4月に施行される改正障害者雇用促進法第36条の2に規定される合理的配慮については、地方公共団体に対しても適用があるため、各地方公共団体に対して、改正法の趣旨、合理的配慮に関する指針の趣旨を踏まえた適切な対応を要請しており、今後とも、必要な情報提供等を行う考えである。

Ⅳ 推進体制

① 広報啓発活動について、障害者団体等がパンフレットを作成し、イベントを実施しても、障害者や周辺にいる支援者の間にとどまりやすい。今後、社会一般に向けてどのように広げていくのかが課題である。
② 障害者施策を検討するに当たっては、男女比、障害種別等のバランスにも配慮して意見を聴くことが重要である。

障害者に関する統計

別添1

① 障害者に関する統計の課題として、障害について日本の人口全体を対象として尋ねた調査がないことが挙げられる。例えば、国勢調査に障害の有無に関する設問を入れることなどが検討されるべきである。
② 政策の監視・評価に使える水準の統計が、国のみならず地方公共団体でも不足している。そのような統計がなければ、それを整備する必要がある。
③ 男女別統計をきめ細かくとることを徹底すべきである。障害者権利条約の締約国は、条約第6条の複合差別の解消に取り組むことが義務とされており、複合差別の実態がわからない状況を解消するためにもメリットがあると思われる。
④ 障害者施策の実施に当たっては、就労収入や就労率、就労支援制度の利用等について、男女の差があるかどうか、まず現状を把握することが必要である。
⑤ 例えば、就業面においては、障害者雇用状況報告の延長線上に男女別調査を位置づけるのは限界があるため、障害者雇用実態調査について性別ごとのクロス集計を進めるなど、工夫をして活用することなどが検討されるべきである。

(厚生労働省)
障害者雇用状況報告は、従業員50人以上の企業に対し、雇用義務を満たしているか否かの報告を義務付け、報告をしない場合や虚偽の報告をした場合は罰則を適用するものであり、いわゆる調査ではないため、男女別の報告を求めていない。一方、障害者雇用実態調査は、従業員5人以上の事業所に対して実施するサンプル調査であり、男女別の勤務時間、賃金などを含めた障害者の雇用実態を網羅的に把握している。男女別の雇用実態を把握するという観点からは、障害者雇用実態調査の項目を工夫する方が適切ではないか。

障害のある女性

別添2

① 男女雇用機会均等法の改正は、好影響があった。一方で、未だに、車いすで利用できるトイレが男性用トイレの中にしかないなどの課題も残されている。
② 日本は他の先進諸国と比較して、女性の社会参画が低い水準にあり、世論調査からも固定的な性別役割分担意識が依然として残っているという課題がある。
③ 国や地方公共団体の政策を決定する様々な審議会や有識者会議の委員構成については、ポジティブ・アクションの取組が推進されている。障害者政策委員会においても、こうした視点・取組が必要である。
④ 医療機関に関する必要な情報が手に入りにくいなどの課題が残されている。また、障害の有無にかかわらず、安心して産み、育てることができる支援や環境整備が必要である。
⑤ 性的被害や配偶者からの暴力などの女性の相談窓口に、障害のある女性も連絡、相談できる体制が必要である。
⑥ 障害者虐待防止法について、障害のある女性という視点からも検討する必要がある。
⑦ 障害者権利条約第6条「障害のある女子」に対応するため、障害女性の視点からの記述及び統計を充実させるとともに、例えば、福祉施設での同性介助を標準化するなど、女性に重点を置いた政策立案を推進する必要がある。

ワーキング・セッションのコーディネーター・参考人一覧

参考1

【ワーキング・セッションⅠ:成年後見制度も含めた意思決定支援など】
○コーディネーター:田中委員、玉木委員、野澤委員
○参考人:佐藤 彰一(国学院大学)、都築 美幸(愛知太陽の家)、 細川 瑞子(富山育成会)

【ワーキング・セッションⅡ:精神障害者・医療ケアを必要とする重度障害者等の地域移行の支援など】
○コーディネーター:上野委員、大濱委員、川﨑委員、平川委員
○参考人:
  池原 毅和(東京アドヴォカシー法律事務所)、
  折田 みどり(人工呼吸器をつけた子の親の会<バクバクの会>)、
  竹田 保(ホップ障害者地域生活支援センター)、
  山本 深雪(大阪精神医療人権センター)

【ワーキング・セッションⅢ:インクルーシブ教育システム、雇用など】
○コーディネーター:佐藤委員、柘植委員、辻井委員
○参考人:大南 英明(全国特別支援教育推進連盟)、田中 伸明(名城法律事務所)、 永野 仁美(上智大学)、村上由美(ボイスマネージ)

【ワーキング・セッショⅣ:情報アクセシビリティ】
○コーディネーター:石野委員、門川委員、竹下委員
○参考人:近藤 武夫(東京大学)、新谷 友良(全日本難聴者・中途失聴者団体連合会)、 寺島 彰(浦和大学)

※ 五十音順、敬称略、所属は事務局把握によるもの

障害者政策委員会の講演者・参考人一覧

参考2

【第21回障害者政策委員会】

○ロン・マッカラム(シドニー大学名誉教授、前国連障害者権利委員会委員長)

【第23回障害者政策委員会】

○勝又 幸子(国立社会保障・人口問題研究所)

【第25回障害者政策委員会】

○西田 淳志(東京都医学総合研究所)

※ 敬称略、所属は事務局把握によるもの

第3次障害者基本計画の実施状況の監視に係る
障害者政策委員会及びワーキング・セッションの開催実績

参考3

5月29日(金) 13:30~17:30〔4時間〕
第21回政策委員会

ロン・マッカラム氏(前国連障害者権利委員会委員長)講演

「1.生活支援」
「2.保健・医療」
「3.教育、文化芸術活動・スポーツ等」
「5.生活環境」
(※ いずれも、ワーキング・セッションで扱うテーマを除く)

6月29日(月) 13:30~17:30〔4時間〕
第22回政策委員会

「7.安心・安全」
「8.差別の解消及び権利擁護の推進※
(※ワーキング・セッションで扱うテーマを除く)
「9.行政サービス等における配慮」
「10. 国際協力」
「Ⅳ 推進体制」

5月19日(火)

10:30~12:30 ワーキング・セッションⅣ①
〔2時間〕 【情報アクセシビリティ】
13:30~15:30 ワーキング・セッションⅡ①
〔2時間〕 【精神障害者・医療ケアを必要とする重度障害者等の地域移行の支援など】

5月22日(金)

10:30~12:30 ワーキング・セッションⅠ①
〔2時間〕 【成年後見制度も含めた意思決定支援など】

14:00~16:00 ワーキング・セッションⅢ①
〔2時間〕 【インクルーシブ教育システム、雇用など】

6月1日(月)
10:30~12:30 ワーキング・セッションⅣ②
〔2時間〕 【情報アクセシビリティ】
13:30~15:30 ワーキング・セッションⅡ②
〔2時間〕 【精神障害者・医療ケアを必要とする重度障害者等の地域移行の支援など】

6月5日(金)

13:30~15:30 ワーキング・セッションⅢ②
〔2時間〕 【インクルーシブ教育システム、雇用など】

6月12日(金)
10:30~12:30 ワーキング・セッションⅠ②
〔2時間〕 【成年後見制度も含めた意思決定支援など】

7月10日(金)13:15~16:15〔3時間〕
第23回政策委員会

  • 各ワーキング・セッションから議論概要の報告
  • 意見交換

8月10日(月)13:15~16:15〔3時間〕
第24回政策委員会

  • 全分野にわたる再度の議論

8月31日(月)13:15~16:15〔3時間〕
第25回政策委員会

  • 第24回で出された意見に係る修正箇所の確認