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資料1-2

基本方針に関する委員意見一覧 その2

目次

2.行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項(2号関係)

2-1 対応要領に記載すべき事項として、どのようなものがあるか(例えば、不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等、相談・紛争解決体制等)。

3.事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項(3号関係)

3-1 対応指針に記載すべき事項として、どのようなものがあるか(例えば、不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等、相談・紛争解決体制、主務大臣による助言・指導等に関する事項等)。

4.その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項

4-1 相談及び紛争の防止等のための体制の整備、啓発活動、情報(具体的な相談事例、国際的動向等)の収集・整理及び提供について、どのようなことを期待するか。

4-2 障害者差別解消支援地域協議会について、どのような機能や取組を期待するか。

5.上記以外の事項

2.行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項(2号関係)

2-1 対応要領に記載すべき事項として、どのようなものがあるか(例えば、不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等、相談・紛争解決体制等)。

阿部一彦委員

 もちろん、不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等の周知に努めるとともに、その取り組みについて行政機関等、事業所のみならず、広く国民に示すべきである。とくに教育の場において浸透させる必要がある。
 また、相談・紛争解決体制について示すことはもちろんだが、各機関が好事例をもとに高め合うことができるシステムの構築を進める必要がある。

石川准委員

  1. 国立大学法人における合理的配慮に関する対応要領
     昨年の障がいのある学生の修学支援に関する検討会報告を参照されたい。
  2. 国の行政機関等が公開する情報へのアクセスについての合理的配慮に関する対応要領
     国の行政機関等が市民、国民に電子的に発信する情報のアクセシビリティを合理的配慮義務として対応要領で明記するよう基本方針で示す必要がある。
  3. 公共図書館における合理的配慮に関する対応要領(努力義務)
     公共図書館は著作権法37条3項による視覚障害者等情報提供施設として認定されている。
     しかるに公共図書館のなかで障害者サービスを行っている図書館は少数にとどまっている。
     差別解消法施行後は、市民からの求めがあれば、合理的配慮として障害者サービスを提供する義務があることを周知する必要がある。
     なお合理的配慮は著作権法37条に基づくサービスに限定されないことも周知する必要がある。たとえば聴覚障害者への窓口での対応等。

石野富志三郎委員

 合理的配慮について、行政機関からの支援により実現が可能となる好事例の列記し、支援を促すようにすべきだと考えます。

例1)障害の特性に対する理解、支援方法などの研修に対する助成
例2)聴覚障害者に対する合理的配慮を図るための支援機器の購入の助成制度の紹介
例3)情報保障のための通訳料等の負担を軽減する助成制度の拡充

氏田照子委員

 特に判断能力の低下している障害者の権利を擁護する仕組みである成年後見制度や日常生活自立支援事業および第三者によるチェックの仕組みを障害当事者の声を反映できるものとしていく必要があると考えます。また国民生活センターのような、消費者と事業者の間に生じた紛争に関する中立的な裁判外紛争手続きが円滑にできる組織が、身近な地域レベルにおいて存在し、差別の枠組みについて議論できる組織ADR(Alternative Dispute Resolution*)の設立が求められます。

※Alternative Dispute Resolution; ADR(裁判外の紛争解決手段)
 訴訟手続によらない紛争解決方法を広く指すもの。内閣府司法改革審議会意見書(2001年6月)参照

大谷恭子委員

 行政機関等もかなり広く,それぞれが独自に対応要領を定めると,その間に齟齬が生じる恐れがある。よって,この政府が策定する基本方針に各則を設け,統一的な運用を図るべきである。そもそも障害者差別解消法に各則を盛り込むべきであったが,これが入れられず総論のみの法律となった。しかし総論だけでは齟齬が生じる恐れがあったのでこの基本方針をまずは確定し,これに則って対応要領を策定することになったのである。よって各省庁が作る対応要領に影響を与え得るものでなければならない。前述のような差別の規定及び適用除外等を抽象的に規定するだけでは,基本方針としての意味はない。
 せめて各省庁ごとが定める総則に当たる部分を基本方針として示すべきである。例えば教育においては,差別が禁止されるべき事項や場面として,入学の拒否,条件の付与,授業や学校行事への参加制限として明示し,また差別をしてはならないとされる相手方の範囲として学校教育法に定める学校他同世代の子どもたちを対象にした保育園も含める等,も明示するべきである。さらに差別の代表的事例として,多くのアンケート調査に上がっていた差別事例を例示するべきである。合理的配慮についても,各個別の判断であるということを明示した上で,差別禁止部会意見で上げられた例を参考例として明示するべきである。
 以上,対応要領は各省庁が作るとしても,それの基本となるものを政府が作るのであるから,何らかの目安になる例示を設けるべきであり,これがあるのは差別禁止部会意見であり,これを参照にするべきである。
 さらに行政機関であるが,地方自治体も含むものであり,ここで作成される対応要領,例えば教育における対応要領となると,都道府県教育委員会,市町村教育委員会等重層的なものになると思われる。これについても可能な限り基本方針が及ぶよう,基本的な考え方を例示するべきである。

大濱眞委員

対応要領に盛り込むべき事項
 部会意見の各則(第2章)では、政策分野別に、
① 差別が禁止されるべき事項や場面
② 差別を禁止される相手方
③ 不当な差別的取扱いの具体的内容
④ 不当な差別的取扱いを正当化する事由
⑤ 合理的配慮の具体的内容
⑥ 合理的配慮の不提供を正当化する事由
などが列挙されていることから、これらの定義を国等職員対応要領や地方公共団体等職員対応要領に盛り込むべきことを、基本指針に明記すべきである。

具体例
小中学校、高校、大学などではエレベーターやスロープを整備していないところが多くあり、車いすでもアクセスできない。
税務署やハローワークなどでも同様。車いす用の低い受付カウンターがない。

好事例
車椅子用トイレやエレベーターの場所がわかりやすく表示してあること。

尾上浩二委員

○ 各種窓口等における接遇の在り方、尊厳を傷つけない態度の醸成

○ 障害特性に対応したコミュニケーション、情報提供に関する配慮

○ 職員採用試験における一定の障害者を排除する「受験資格」の廃止

 「自力(単独)で通勤できること」「介助なしで職務遂行できること」「活字印刷文に対応できること」「口頭面接に対応できること」などの受験資格を設けないこと。
 上記と併せて、点字や拡大文字や手話・筆記通訳をつけることなど、国・地方公共団体・独立行政法人の実施する採用選考や試験において、最低限想定して用意すべきことを定めること。

(好事例)「資格取得試験等における障害の態様に応じた共通的な配慮について」+「申請書等における配慮のイメージ」障害者施策推進課長会議決定2005年 http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sikaku.html

○ 公営住宅の募集で、「自活要件(身辺自立や、介助や援助を必要としないこと)」を設ける等の制限の廃止

○ グループホームの設置に当たってコンフリクトを誘発させている「地元同意」の廃止。また、反対運動が生じないように啓発や説得等、行政としての主体性を持った取り組み

(好事例)大阪府 施設コンフリクト(住民同意の取り扱い)
http://www.pref.osaka.jp/jinken/measure/shisetukonfuri-03.html

嘉田由紀子委員

 以下の意見については、全国知事会内で社会保障常任委員会構成自治体および差別禁止・解消に関する条例の制定自治体に意見照会を行った回答をもとに、委員として作成したものであり、全都道府県の総意として取りまとめたものではありません。

  • 不当な差別的取扱いとなる行為の具体例、合理的配慮の好事例等に加え、合理的配慮の不提供の具体例(不適切な対応、失敗事例)、不当な差別的扱いに該当しない正当な理由の具体例、過重な負担となる具体例、相談、紛争解決に関する対応体制やフロー図等、啓発活動のあり方等を記載すべきではないか。
  • 説明会、研修会、セミナーの開催案内には、「手話通訳が必要な方は○月○日までに事前に申し出てください」といった文言を必ず入れることなど行政側として「配慮すべき事項」も具体的に列挙してはどうか。
  • 対応要領の策定は、行政、教育、警察などの行政分野ごとに地方公共団体の努力義務とされているところであるが、各自治体の職員の行動の規範となるものであることから、可能な限り具体的な内容とすることが望ましい。
  • 地方公共団体における対応要領の基本的な部分は、国の機関における対応要領と同様であることが望ましいと考えられることから、まず国が具体的内容を示すべきものと考えられる。地方公共団体の対応要領の策定にあたっては、国が支援を行うこととされていることを踏まえ、ガイドラインの提示やハード面での整備に対する財政的支援などの支援等を講じる必要があると考える。
  • 各分野においてどのような設備が必要か、また相談窓口での対応方法など、ハード・ソフトの面で一定程度設置する必要があるかについても具体的に示すべきではないか。
  • 地域間で「不当な差別的取扱い」「合理的配慮」の判断に差が出ないよう、明確な判断基準や事例を、地方公共団体で策定する対応要領の検討期間を勘案し、できるだけ早期に国の基本方針において示していただきたい。
  • 都道府県や市町村が判断に迷った時に、直接相談できる電話相談窓口やヘルプデスクを、国において設けていただきたい。

川﨑洋子委員

精神障害者の雇用に関して

  • 精神障害者の障害特性を踏まえたハローワークでの職員の教育及び配置をする。
  • 中小企業等が障害者を採用する上での助成措置を更に充実させると共に、救済措置の組織をつくる。

後藤芳一委員

(1)差別を解消する取り組みが対象とする障害の範囲、取組の内容、達成時期、達成を評価する仕組み、評価結果によるさらなる取り組みの約束など

(2)その際、対応要項に記載する具体例を選んだ理由は何か等の背景となる情報を提供する、解説書のようなものが必要と考えます。

新谷友良委員

 行政機関等の差別解消措置の基本的事項を検討するに当たっては、①行政機関等が雇用主として行動する場合と②行政サービスの提供者として行動する場合を区別すべきである。
 ①の行政機関等が雇用主として行動する場合の基本的事項は、3号関係の事業者に関する基本的事項と同様に取り扱われるべきであるが、合理的配慮を提供する場合の原資が税金であることを考えると、「過度な負担」の抗弁が認められる余地は民間事業者と異なるものと考える。
 ②行政機関等が提供するサービスに関しては、アメリカの障害者差別禁止が「連邦政府の財政的援助を受けているプログラムや活動、または行政機関及び米国郵便公社のプログラムや活動」を対象に始まった経緯(リハビリテーション法504条)に留意すべきである。税金を原資とする行政サービスに於いては、差別は原則禁止であり、合理的配慮は平等原則に沿って厳格に提供されるべきであり、「過度な負担」の抗弁は原則認められないとすべきである。例えば、市役所窓口等での手続き説明の際、聴覚障害者が筆談対応を求めた場合、窓口業務が混雑していることを理由に筆談サービスを断り、「この資料を読んで手続きして下さい。」とすることは認められないと考える。
 教育分野をどのように考えるかは大きな課題である。現実の教育は国・地方自治体のみならず、プライベートセクターによって担われているが、教育分野の基本的事項を行政機関と事業者に切り分けて規定することは適当とは思われない。憲法が「義務教育は無償」としていることに鑑み、教育分野は公的分野と位置づけ、差別禁止・基礎的環境整備・合理的配慮の提供は、他の行政サービス以上に厳格に規定すべきである。

関口明彦委員

《不当な差別的取扱いとなる行為の具体例》

精神障害を理由とした公衆浴場の入場禁止を始めとする立ち入り禁止措置

精神障害を理由とした退職の強要

労働能力の判定をしない一律的な一般傷病求職扱い

警察における「マル精」保護という手続き的対応

司法における証言能力や裁判官の心証に与える影響

治療内容や治療計画を本人に説明しないこと

強制入院に際しての一律な身体拘束の実施

精神科以外の医療機関における治療拒否(精神科病院に行くように促すことなど)

本人の意向を無視した関係者会議

《合理的配慮の好事例等》

処方する薬剤の説明を文書で示して飲むかどうかを聞くこと

障害者週間のイベントで精神障害者が寝る休息スペースが設けられたこと

某大学の講義中に精神障害者が教室内で横になりながら受講できる措置が取られたこと

通院日の欠員補充体制がとられている企業の実践

通院日の授業の個別補講を設けている大学の実践

竹下義樹委員

  1. 障害者権利条約が禁止すべき差別として掲げている内容(2条など)を説明する。
  2. これまで障害者団体が改善を求めてきた要求(陳情)に含まれる合理的配慮を例示する。
  3. 障害者(団体)が求めてきた合理的配慮が妥当なものか否かを検討する機関の設置。検討機関の望ましい構成。

田中正博委員

 例示のとおりで良いと思います。
 ただし、行政機関側が無意識のうちに行っている差別的取扱いについては、当事者団体等と協働した「差別事例(いやな思いをした事例)」の収集などを通じて、できるだけ多くの具体例を示すことが重要と考えます。

土本秋夫委員

「差別的取り扱いとなる行為」

① 行政から福祉サービスの更新のお知らせが届くが、ふりがながなく、難しい言葉で書いてあり、内容がわからない。
② 年金を受給できることを、学校の先生や行政が教えてくれなかったので、申請していなかった。
③ 障がいがあるので、短期入所を利用して生活をしなさいと行政からいわれた。

「合理的配慮の好事例」

① 様々な困難をもった当事者と一緒に動物園の担当者と行政の人と回り、バリアを確認した。
② 区役所の窓口がわからないが、案内人が立つようになり、困ったとき、相談しやすくなった。
③ 知的障がいがあるが、政策委員会の前に、会議の内容でわからないところを事前に質問し、進行の予定を確認できることで、発言しやすくなった。

「紛争解決」

① たらい回しにならないように、最後はどこが対応するのかはっきりすること。
② 身近に相談できる窓口があるといい。

中西由起子委員

○ 不当な差別的取扱いとなる行為の具体例

 不当な差別取り扱いとなる行為を差別事例の収集の中より選別し、国民に差別の実態を知らせるとともに、その解決を迫る材料とする事。

○ 合理的配慮の好事例等

 合理的配慮を行った商店、交通機関、不動産屋、職場、学校、サービス事業者などの好事例を集め、官報やセミナーで広宣し、国民の意識を向上させる。

○ 相談・紛争解決体制等

 地域自立支援協議会と障害者差別解消支援地域協議会が連動するとともに、相談・紛争解決のシステムを国民と当事者が行政と一体となって作り上げる必要がある。

中原強委員

不当な差別的取扱いとなる行為の具体例

① 義務教育時の就学先(特別支援学校等)強制
② 学校への家族付添・待機強制
③ 新幹線の自由席に車いす専用スペースの設置がない(指定席にしか設置がない)
④ 公務員試験での「電話対応は可能か」の質問(聴覚障がい者の場合)
⑤ 生活圏域の学校への就学拒否(車いす対応、医療対応、その他障がい特性に対する専門的対応ができない等々)
⑥ レストラン等への入店拒否(車いすが他のお客さんにとって危険、行動障がい等障がい特性が他のお客さんに迷惑となる可能性がある等々)
⑦ アパートの賃貸契約解除(火の管理ができない、他の入居者とトラブルを起こすという理由(偏見)でアパート契約を拒否する等々)
⑧ 地域に福祉サービス事業を開設する場合の住民の反対運動
⑨ 特定日にしか利用できない公共施設(プール、ゲームセンター、アトラクション施設、スケートリンク等々)

合理的配慮の好事例等

① 公共家屋のエレベーター設置(バリアフリー)義務化
② 公共家屋、公共交通機関における、全身性障がい者が利用できる障がい者用トイレの設置
③ 障がい特性に応じたコミュニケーションの提供(手話・筆談・読み上げ・ルビ振り・絵カード等)
④ 資格取得試験の際の配慮

花井圭子委員

  1. 行政機関の職員等に対する障がい者に関する理解を促進するため必要な研修を実施する。
  2. 庁舎内での誘導チャイム、点字ブロック、音声案内、案内表示及び照明等を整備する。
  3. 行政によって提供されるすべての情報は、点字や文字データ、手話等により保障する。
  4. 投票に関し、移動に困難を抱える障がい者に配慮した投票所のバリアフリー化や障がい者の利用に配慮した投票設備の設置等、投票所における投票環境の向上にも努める。また、点字または音声による候補者情報の提供等、障がい特性に応じた選挙等に関する情報の提供を行う。
  5. 刑事事件における手続の運用において、被疑者あるいは被告人となった障がい者がその権利を円滑に行使することができるよう、障がい者の意思疎通等に関して適切な配慮を行う。
  6. 刑務所に入所する累犯障がい者等に対して、社会復帰支援のためのプログラムの提供を促進するとともに、これらの施設の職員に対して必要な研修を実施する。

藤井克徳委員

●不当な差別的行為の事例

  • 自書ができないことを理由に役所が印鑑証明など必要な証明書類を発行しない。
  • 車いすを理由に役所の試験を受けさせない。
  • 過去の病歴があるからの理由で試験を受けさせない、あるいはそのことの理由で採用しない。
  • 電動車いすを理由に催し物の入場を拒否したり、手動車いすへ合意性なく乗り換えを強要する。
  • 地域の学校の入学を拒否し、特別支援学校を強制する。
  • 障害を理由に公共的なお見合いパーティーの参加を拒否する。

●好事例

  • 事業所内に紛争解決システムを設置する。
  • 精神障害を持つ労働者のために、休憩用の簡易ベットを設置する
  • 行政機関のサービス利用等に関する、分かりやすい情報提供や、点字、音声などを含む多様な媒体での情報提供。

三浦貴子委員

 ①「国家公務員倫理規程」の行動基準と禁止行為への明記、地方公共団体はこれに準ずるものへの明記、②事務要領の見直し、チェックリストの作成と定期的な検証、③合理的配慮を行うためのマニュアル整備、④差別行為や合理的配慮の不当な拒否にあたる具体的な言動・対応の例示、⑤合理的配慮と考えられる対応事例、⑥相談・紛争解決にあたる常設窓口の設置と担当職員の配置(常設既存機関も活用、出張・訪問相談への対応)、等。

3.事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項(3号関係)

3-1 対応指針に記載すべき事項として、どのようなものがあるか(例えば、不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等、相談・紛争解決体制、主務大臣による助言・指導等に関する事項等)。

阿部一彦委員

 不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等、相談・紛争解決体制、主務大臣による助言・指導等に関する事項等について理解を深められるような記載が求められる。
 また、雇用に関する事項は、改正障害者雇用促進法に基づくとされているが、雇用に関す合理的配慮などについても参考として取り上げるべきであるとともに、他の法・制度における関係する事項について分かりやすく整理して示す必要がある。

石川准委員

  1. アクセシビリティに配慮されたスマートホンやタブレット(iOSやAndroid)上で動作する電子書籍リーダーアプリがアクセシビリティAPIに対応することで、視覚障害者や読字障害者は音声読み上げ機能により読書できるようになる。電子出版、電子書籍ストア、電子書籍端末業界に合理的配慮を求めたい。
  2. オンラインショッピングストア、インターネットバンキング、旅行宿泊施設のウェブサイト、チケット販売サイト、ソーシャルメディア、ネットニュース、Eラーニングなどのウェブサイトは公共的な施設である。民間事業者にウェブサイトのアクセシビリティの国際規格準拠を求める必要がある。
  3. アクセシブルなATMのさらなる増設を求める。
  4. 電子番組表の音声読み上げ機能を持つテレビ、録画機を業界標準とするよう求める。
    すでに実装しているメーカーもある。

石野富志三郎委員

  • 事業者に対する「合理的配慮の提供状況」の報告の義務化
  • 事業者からの報告を整理し、国による情報の提供及び情報公開

 情報を公開することにより、差別的取り扱いの基準の共有化され、また合理的配慮提供の好事例なども社会全体での共有化が可能となり、障害者の社会参加がより一層促進されるものと考えます。

上野秀樹委員

 現在、たとえば当院入院中の精神障害者が買い物に出かけていくと、買い物をさせない、そもそも入店させない店舗があったりする。看板や張り紙で表示している場合は論外であるが、店内や会計時にレジで「入院中の人?」などと尋ねてくる行為がこれにあたる。

氏田照子委員

 障害者地域自立支援協議会が法定化されたことに加え、協議会の部会においても障害者差別部会を設置することを定めていく必要があります。また同会が事例をもとに事例検討を積み重ね、地域住民に対して、差別の範囲や合理的配慮等の理解を促進していく明確な組織が求められます。

大谷恭子委員

 対応指針においても対応要領と同じく,各分野別に,可能な限り具体的に例示をしつつ,基本方針を示すべきである。なお,雇用においては雇用促進法に委ねられている部分もあるが,基本方針は雇用分野も含めて規定するべきとされているのであるから,基本方針に,差別の具体的,合理的配慮の好事例を記載するべきである。

大濱眞委員

 対応指針に盛り込むべき事項
 部会意見の各則(第2章)では、政策分野別に、
① 差別が禁止されるべき事項や場面
② 差別を禁止される相手方
③ 不当な差別的取扱いの具体的内容
④ 不当な差別的取扱いを正当化する事由
⑤ 合理的配慮の具体的内容
⑥ 合理的配慮の不提供を正当化する事由
などが列挙されていることから、これらの定義を対応指針に盛り込むべきことを、基本指針に明記すべきである。

具体例
クレジットカードの自署ができない上肢障害者への対応。
古い旅館などの段差など。
鉄道事業者の3輪バンドルつき車いすの拒否事例など。
車いす使用者がツアーパックの利用を拒否されるなど。
空港までのバスに車いすで乗れないなど。

好事例
障害者特性に応じて会社がフレキシブルな勤務を認める。
映画館で(最前列では見上げる姿勢を長時間取れない車いす利用障害者が多いので)車いす用の席が見やすい場所にあり、横に介助者スペースも用意してある例。

尾上浩二委員

〇 不当な差別的行為の事例

  • 自署ができないことを理由を、金融機関等で手続きを受け付けない。
  • 過去に病歴があるからという理由で試験を受けさせない、あるいはそのことの理由に採用しない。
  • 電動車いすを理由に催し物の入場を拒否したり、手動車いすへの乗り換えを強要する。
  • 車いす使用を理由に理髪店・美容院の入店を拒否する。
  • 配慮をしようとせずに地域の学校の入学を拒否し、特別支援学校を強制する。

〇 合理的配慮の好事例

  • 例えば精神障害を持つ労働者のために、休憩用の簡易ベットを設置する。

〇 相談・紛争解決のしくみ

  • 当事者を交えた研修体制
  • 学識経験者や権利擁護団体・当事者団体との連携を記載すること
  • 解消のための促進策として、企業の内規等の情報公開

嘉田由紀子委員

 以下の意見については、全国知事会内で社会保障常任委員会構成自治体および差別禁止・解消に関する条例の制定自治体に意見照会を行った回答をもとに、委員として作成したものであり、全都道府県の総意として取りまとめたものではありません。

  • 不当な差別的取扱いとなる行為の具体例、合理的配慮の好事例等に加え、合理的配慮の不提供の具体例(不適切な対応、失敗事例)、不当な差別的扱いに該当しない正当な理由の具体例、過重な負担となる具体例、相談、紛争解決に関する対応体制やフロー図等、啓発活動のあり方等を記載すべきではないか。
  • 事業分野ごとに具体例等を例示すべきではないか。
  • 不当な差別的取扱いとなる行為の具体例・合理的配慮の好事例等などの態様を網羅的に示したうえで、「事業者は、差別にかかわる申し立てがあった場合の対応窓口を設けるなど自ら体制を整備すること」を明記するとともに、各主務大臣が十分な支援・指導ができる体制を整えていただきたい。
  • 対応指針は、事業主だけでなく従業員等も内容を十分理解することにより、実効性のあるものとなるため、事業主が従業員に指針の内容を周知することも記載すべきではないか。
  • 事業者からの各種照会(法解釈、事例対応等)にかかる国(主務大臣)と地方公共団体との役割分担について記載すべきではないか。

川﨑洋子委員

雇用における差別を解消するために

  • 採用の際、精神障害者が高校・大学中退者であることを理由として不採用にすることの無いようにする。精神障害の発症は10代後半から20代前半が多く、高校・大学等の中退者が多い。

新谷友良委員

 先ず行政・事業者と事業分野の関係の整理が必要と考える。部会意見は差別を考える個別分野として「公共的施設・交通機関」、「情報・コミュニケーション」、「商品・役務・不動産」、「医療」、「教育」、「雇用」、「国家資格等」、「家族形成」、「政治参加」、「司法手続」の10分野を挙げているが、これらの分野はある部分を行政サービスが担い、ある部分を事業者が担っている。法律が7条行政機関、8条事業者としているので、行政機関と事業者別に「不均等待遇」、「合理的配慮の提供」の内容を要領・指針としてまとめることが必要であるが、基本方針に於いては分野ごとの行政機関・事業者の役割を整理し、要領・指針に分けることで洩れる分野がでないように配慮すべきである。
 つぎに、事業者の差別・合理的配慮を考える場合、事業者が社会に提供する商品・サービスに於ける差別問題と、事業者が雇用主として行動する場合とは区別が必要と考える。そして、事業者が提供する商品・サービスに関しては、それが公共的な商品・サービスであるかどうかが大きな判断基準となる。
 公共的な商品・サービスの場合には、平等原則が厳格に貫徹されるべきで、事業者の提供する公共的な商品・サービスは行政機関と比較し「過度な負担」の抗弁が許される余地が広いとしても非常に制限的に考えるべきである。ホテルのフロントでの筆談対応は一般的なビジネスマナーとして職業訓練すべきであり、客室の遮音効果、字幕対応のテレビ、磁気ループ付きの電話は標準装備(基礎的環境整備)とすべきである。
 個人の嗜好に係る商品・サービスでは、基本的には契約関係が優先するが、ユニバーサルデザイン・バリアフリー・アクセシビリティなどの理念は契約関係に優先する公序と考えるべきである。
 雇用主としての差別・合理的配慮については、改正された障害者雇用促進法との整合を図るべきである。職場での支援について、聴覚障害の場合手話通訳・要約筆記などの人的支援が前面に出てくるが、設備的・制度的な職場改善が果たす役割が非常に大きい。一例として、職場では緊急時の情報伝達が、館内放送で行われることが多いが、館内放送はE-メールで同報を求める社員へのE-メールで同報を会社に求めて実現した。また、人事部門に障害者の職場問題への相談部門の設置を求めて実現し、聴覚障害者の相談は原則パソコンまたは手書きの筆談となった。

関口明彦委員

《不当な差別的取扱いとなる行為の具体例》

精神障害を理由とした公衆浴場の入場禁止を始めとする立ち入り禁止措置

精神障害を理由とした退職の強要

労働能力の判定をしない一律的な一般傷病求職扱い

警察における「マル精」保護という手続き的対応

司法における証言能力や裁判官の心証に与える影響

強制入院に際しての一律な身体拘束の実施

治療内容や治療計画を本人に説明しないこと

精神科以外の医療機関における治療拒否(精神科病院に行くように促すことなど)

本人の意向を無視した関係者会議

《合理的配慮の好事例等》

処方する薬剤の説明を文書で示して飲むかどうかを聞くこと

障害者週間のイベントで精神障害者が寝る休息スペースが設けられたこと

某大学の講義中に精神障害者が教室内で横になりながら受講できる措置が取られたこと

通院日の欠員補充体制がとられている企業の実践

通院日の授業の個別補講を設けている大学の実践

本人の意向を中心で行われている計画相談の本人を入れた関係者会議の実践

竹下義樹委員

  1. 障害者権利条約が禁止すべき差別として掲げている内容(2条など)を説明する。
  2. 障害者から提出される要求や苦情を受け付ける機関とそれを検討するシステムのあり方。
  3. 主務大臣による報告、助言、指導が行われる場合の基準。

田中正博委員

 例示のとおりで良いと思います。
 ただし、事業者側が無意識のうちに行っている差別的取扱いについては、当事者団体等と協働した「差別事例(いやな思いをした事例)」の収集などを通じて、できるだけ多くの具体例を示すことが重要と考えます。

土本秋夫委員

「不当な差別的取り扱い」

① アパートの入居を断る理由が「障がい」以外にみつからないのに、理由がわからないまま断られた。
② 遊園地や乗馬体験で、障がいがあることを伝えると、安全が確保できるかわからないという理由で断られた。(支援者が連絡し、大丈夫になった。)
③ ガイドヘルパーが「◯◯ちゃん」など子供扱いをしてきた。
④ 入所施設の職員が「お金がないから」という理由で一人暮らしはできないと言い、支援してもらえなかった。
⑤ 新聞記者が焦って質問を電話で言ってきたが、知的障がいがあり、話したことが誤解されても嫌だったので、FAXで質問をもらった。でも、伝えていたのに、ふりがなはなかった。

「合理的配慮の好事例」

① ノンステップバスが増えている。
② 地下鉄などのホームにある転落防止柵の設置
③ 空港やJRの大きな駅では、質問できる人が制服を着て立っていたり、インフォメーション(質問できる場所)がかならずあって、わかりやすい。

中西由起子委員

  • 全国チェーンのレストランや不動産屋については、本社で差別の解消が決済出来るので主務官庁が調停・斡旋に入る必要がある。
  • 都道府県市町村行政については内閣府より差別解消法の成立により差別の解消が義務付けられていることを周知徹底し、職員研修に務めることを通達すること。
  • 障害者差別解消支援地域協議会において、差別事例の収集を行い重大事例については行政全体で取り組むシステムを庁内に作り上げること。
  • 合理的配慮の好事例を地域自立支援協議会などを通じて収集し、行政で主催するセミナーや官報で広宣し、地域の意識変革を行う。

中原強委員

不当な差別的取扱いとなる行為の具体例

① 新幹線の自由席に車いす専用スペースの設置がない(指定席にしか設置がない)
② 就職試験での「電話対応は可能か」の質問(聴覚障がい者の場合)
③ 障がいを理由としたホテルへの宿泊拒否

特に障がい者施設の場合であると、

① 障がい程度を理由にしたサービス提供拒否(重い行動障がいがあるとの理由で短期入所利用を拒否される等)
② 人手不足を理由にした入浴回数制限
③ 特性(興奮したら大声を出す等)を理由にした行事等への参加制限
④ 食事ペースの遅緩を理由にした食事時間の制限
⑤ 職員配置が少ないことによる、入浴・排泄時の同性介護の拒否
⑥ 着替えが面倒との理由による、ジャージ等の服装の強制
⑦ 整髪等管理ができないとの理由による、短髪の強要
⑧ パニックになるとの理由により、外出・帰宅等の予定を知らせてもらえない
⑨ 誰に投票してよいかわからないという理由で、投票させてもらえない

合理的配慮の好事例等

① 福祉施設での緊急時対応(ショートステイ等)ができる十分な職員配置
② 学校における看護師配置
③ 企業でのエレベーターもしくはパーチペーター(段差解消機)等の設置
④ ハード面・ソフト面で3障害に対応した障がい者施設(現状では物的・人的にも不十分)。
⑤ 知的障がいのある人への配慮として、雇用者が仕事の手順やスケジュールを分かりやすい図や表で表示することやタブレット端末を利用すること

花井圭子委員

  1. 採用試験の実施にあたっては、点字・音声パソコン・拡大文字・照明・手話通訳・文字通訳(パソコン文字・要約筆記・筆記)・機器の活用等、障がい者が受験するために必要とする配慮を提供する。
  2. 障がいを理由とする解雇をしない。
  3. 中途で障がいをもった場合は原職復帰を原則とし、本人の希望する配慮を提供する。
  4. 障がいのない労働者と職務内容に違いがないのに障がいを理由として賃金を低くしない。
  5. 障がい者の必要に応じてガイドヘルパー、代読者、代筆者、手話・文字通訳者、介助者、ジョブコーチ等を確保する。
  6. 一般公共交通機関を利用できない場合は、障がいに基づき必要とする通勤方法(自家用車、福祉移送サービス、介護タクシー、移動支援等)を保障する。
  7. 職場における異動の機会を保障する。
  8. 職務評価にあたっては、障がいの状況を十分に勘案し、障がいによる不利益な評価をしない。
  9. 障がいに応じて必要とする休息時間・場所を確保する。
  10. 職場を移動するために必要な経路及びスペースを確保する。
  11. 体温調整機能に障がいがある場合は、室温や湿度に関する配慮をする。
  12. 福利厚生事業の実施にあたっては、障がい者が必要とする配慮(社宅及び宿泊施設のユニバーサルデザインの推進、介助者等の同行等)をする。
  13. 災害時の避難、対応等に関する訓練を実施し、マニュアルを作成する。

藤井克徳委員

● 不当な差別的行為の事例

  • 自書ができないことを理由に金融機関が取引を保留する。
  • 医療現場について情報保障の通訳の同伴を認めない。
  • 障害があるとの理由で、ホテルに宿泊させない。
  • 車いすなどの理由で不動産が対応しない。
  • 障害を理由に、家を貸さない。
  • 障害を理由に金融機関が金を貸さない。
  • 車イスを理由に鉄道会社が何の配慮もせずに他の人々と違う形式で特急券等の購入をさせる。
  • 車いすを理由で入店を拒否する。
  • 車いすを理由に、車いすの席がないから劇場の入場を断る。
  • パニックを起こすからという理由で劇場や催し物の入場を断る。

● 好事例

  • 事業者が差別解消に向けた独自のプログラムを策定していく。差別解消担当者を置く。
  • 法人と個別に労働契約書等で就業時間や休憩時間を定めることができるよう、就業規則を変更する
  • 事業者の発行物の漢字にルビを打つ事や、やさしい解説のコーナーを作ることで、知的障害や学習障害に情報が伝わるようにする
  • 精神障害を持つ労働者のために、休憩用の簡易ベットを設置する。
  • ホテルのフロントでの筆談対応や、客室の遮音効果、字幕対応のテレビの設置

三浦貴子委員

 ①法人理念・行動規範の検証と見直し、職員への周知、②日々の業務において差別行為や合理的配慮の不提供にあたるのではないかと懸念・疑問をもった事象や、国の収集事例を素材とした学習会・研修、③顧客、取引先等への理解促進、④業務要領の見直し、チェックリストの作成と定期的な検証、⑤差別行為や合理的配慮の不当な拒否にあたる具体的な言動・対応の例示、⑥合理的配慮を行うための留意事項や対応事例、⑦相談・紛争解決にあたる常設窓口、等。

4.その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項 (4号関係)

4-1 相談及び紛争の防止等のための体制の整備、啓発活動、情報(具体的な相談事例、国際的動向等)の収集・整理及び提供について、どのようなことを期待するか。

阿部一彦委員

 一連の取り組みの中で、障害当事者(団体)がかかわりを持ち、そのかかわる活動自体をもとに、障害当事者自身が「誰もが暮らしやすい街づくり」について考え、行動を重ね、地域の中で役割を果たしていくことが求められる。
 国際的動向については、学ぶことも多々あると考えられるので、国際シンポジウムの開催なども意義深い。また、国連における関係委員会で議論されている事柄に関する情報の周知、とくに※国連障害者権利条約・権利委員会の情報について周知する必要がある。
 さらには、障害者権利条約の批准・締結を踏まえ、十分なモニタリングを行う体制の中に障害当事者(団体)も関与し、これまで、とかくマイナスイメージを持ちがちであった障害者が共生社会の円滑な構築と運営における担い手になる必要がある。
 ※ the United Nations Committee on the Rights of Persons with Disabilities (CRPD)

石川准委員

 差別禁止法を持つ主要な国の法制度、その運用とその成果、問題点の調査

石野富志三郎委員

 障害者が「差別的取扱い」や「合理的配慮の不提供」に関する、相談・紛争を申し入れることにより、不利益を被ることがないようにすることが必要です。  そのためにも、障害者のみならず、事業者も障害者の問題について、いつでも相談し対応できるための相談機関を、障害種別に強化すべきではないかと考えます。

例:聴覚障害者情報提供施設、行政のろうあ者相談員、職業安定所(ハローワーク)の手話協力員等の活用等。

 しかしながら、聴覚障害者を専門に相談できる社会資源は、非常に限られており、その社会資源の少なさをどうカバーしていくかが直近の課題となります。

上野秀樹委員

 啓発活動としては、当事者、家族中心の活動が重要である。
 従来日本では、精神科医師が中心となって、製薬会社の後援すなわち資金提供を受けて精神障害に対する偏見を解消するための運動が行われてきた。しかし、特に製薬会社の後援・資金提供を受けることは大きな問題である。製薬会社は株式会社であり、株主の利益(会社の売り上げ向上、利益の向上)のために活動をしている。もし、株主の利益に反する活動をすれば、経営者は株主代表訴訟を起こされ、多額の賠償責任を負うことにもなるため、製薬会社による純粋な社会貢献などはあり得ない。また、現実的に製薬会社の後援を受けると、薬物療法の問題などに関して公正な議論がなされない可能性が高くなるなど、運営上のデメリットも大きい。
 精神障害の啓発活動に関しては、寄附による活動、もしくは公的な資金の投入が大切である。
 また、精神科医療の専門家には偏見が潜在している可能性もあり、当事者・家族を中心とした運動に変革すべきである。

氏田照子委員

 行政および障害者地域自立支援協議会、当事者組織等の連携を基盤に、地域において障害者差別部会を設置することを定めていく必要があります。また同会が事例をもとに相談及び紛争の防止等のための体制の整備を行い、その実践から得られた支援のあり方を検討していく必要があります。

大谷恭子委員

 差別解消法は,障害者権利条約の国内法として制定されたものである。よって,これからの広報は,まず権利条約の周知徹底と併せて行われなければならず,特に本年批准が見込まれているのであるから,国連障害者権利委員会への第1回報告は,本法の施行時期と重なるのであり,国連へのレポート作成と併せ,権利条約に基づく啓発が要請されている。
 わが国ではまだなじみの薄いインクルーシブや合理的配慮について,海外での先行事例を紹介し,国民の意識を変えていくことも必要である。

大濱眞委員

① 相談及び紛争の防止等のための組織については、既存の機関を活用するとなっているので、当面は、行政機関で積極的に差別的な事例の収集をし、公開すること。
② 内閣府は先頭に立ってあらゆる行政機関等を含め差別的な事例を集約をして、他の行政機関(自治体含む)や事業者も含めて、幅広く情報を共有する。
③ 収集された差別事例については、海外事例等をも参考に、問題解決について、政策委員会が再検証に関わる。

尾上浩二委員

○ 障害者基本法や差別解消法の第2条の「障害及び社会的障壁により日常生活・社会生活に制限を受ける状態にある者」という、障害の社会モデルの理解を広めること

〇 内閣府の責任の下で、国連障害者権利委員会における動きや各国の事例を収集し、自治体との情報を共有すること

〇 差別解消法の所管省庁である内閣府が自治体や他省庁との連携の下、各地の事例を収集すること。そして、困難とされた事例については、政策委員会で各国の先進事例等をもとに議論し、差別解消法の目的に沿った解決が可能になるような情報を提供すること

○ 障害者に関連する政府統計をはじめとする基礎データ、統計を収集し、調査、統計や報告それ自体の不備から是正していくこと。その際、女性障害者等の複合的差別の視点も含めた集計分析と取り組みを進めること

嘉田由紀子委員

 以下の意見については、全国知事会内で社会保障常任委員会構成自治体および差別禁止・解消に関する条例の制定自治体に意見照会を行った回答をもとに、委員として作成したものであり、全都道府県の総意として取りまとめたものではありません。

  • 体制の整備にあたっては、市町村虐待防止センターや都道府県権利擁護センターとの一体的な整備が望ましい旨を明示していただきたい。
  • 紛争解決について、行政機関で行えることには限界がある。司法判断が必要な事例についてまで行政機関で解決するのは困難である。行政機関で紛争解決を行う場合は、全国統一的な考え方、事例集が必要と考える。また、行政機関で紛争解決が出来ない場合の対応についてもしっかり示してほしい。なお、紛争解決は、司法で行うべきものと行政で行えるものに違いがあることを明確にしてほしい。
  • 国や地域での差別に関する具体的な事例等の情報収集・整理・提供、自治体間の情報共有や、その内容を踏まえた事業者や国民への啓発を期待する。
  • 全国同じ基準で統一的に啓発活動が行えるよう、平易で扱いやすいツール(DVD、パンフレットなど)の作成などを行っていただくことを期待する。
  • 具体的相談事例の整理や分析について、年次報告等があれば、国民間での差別に関する認識の共有が図られ、取組の広がりにつながると考える。
  • 地域からの困難事例への助言対応などを行う国の窓口の設置、地域の事情に合った相談及び紛争の防止等のための体制の整備等にかかる必要な人員配置や研修、啓発活動等に対する適切な指導助言や財政支援を行っていただくことを期待する。

川﨑洋子委員

 相談及び紛争の防止に関しては、初期の段階での解決が望ましく、体制の整備としては家族会、当事者団体の意見を取り込むようにすべきである。
 啓発としては、偏見をなくす活動が必要であるが、精神疾患に関しては全国調査により、誰が(年代別、男女別)どのような偏見を持っているかを具体的に調査し、その結果に基づき活動をすべきと考える。

北野誠一委員

差別の解消の推進に関する施策の提案

① ともかく当事者の立場に立って、本人の侵害された思いを聞き、その問題を整理し、不服申し立てをサポートする公立民営を問わない権利擁護機関が必要である。
② 本人と相手方の双方の権利性と主張を踏まえて、その状況が有する差別性について調査検討し、第3者として中立公正な判断を行う一定の権限を有する準司法的機関が必要である。
③ 1つ目や2つ目の機関、あるいは本人や支援者や相手方が、その問題を明確にし、様々な偏見を取り除き、各種の専門的・機能的支援が得られる情報提供機関を構築することである。例えば、バリアフリーに関するUSAB(アメリカアクセスボード http://www.access-board.gov/)や障害者雇用の合理的配慮に関するJAN(合理的配慮ネットワーク http://askjan.org/)のような、様々な障害特性に応じた対応が可能な専門的情報提供機関が不可欠である。

新谷友良委員

 差別・合理的配慮の具体的な内容は、要領・指針の中で具体化されていくことになるが、差別禁止・合理的配慮の水準を決めていくのは社会の障害基づく差別に関する意識に係る。障害に基づく差別の啓発活動は、国・地方自治体、事業者各階層で多面的に、間断なく進められるべきである。障害者雇用率は、行政機関・事業者別に数値目標があり、毎年度それに対する達成率が報告されているが、障害者差別に基づく相談件数などは、雇用障害者数を母数に数値化して社会に見える形にする工夫が必要である。また、環境に関してはECOマークを付けたり、「環境経営」の事業者評価などが行われているが、障害をキーとした事業者の商品・サービス・雇用に関する評価、「共生経営」といった評価の基準が工夫されて良いと考える。行政機関・事業者の問い合わせ先に電話番号を載せてもFAX番号やE-メール番号を載せていないところが依然として多くあるが、このようなチェックポイントを増やしていけば、行政機関・事業者の「共生経営」度評価も可能ではないかと考える。

関口明彦委員

 分離・隔離されている精神病院入院者・施設収容者からの情報収集は特に重要である。
 障害者団体等アドボケイトによる立ち入り調査、その為の出入り権限を確保すること。
 相談事例を検討する場を自治体にとどめず制度的欠陥による困難事例等については、国に挙げていく回路が期待される。
 オルタナティブ(フィンランドの西ラップランド地方での実践も含む)について国にによる情報収集と検討及び情報提供。

竹下義樹委員

  1. 紛争解決機関の設置または位置づけ。紛争解決機関の構成のあり方及び解決の手順。
  2. 障害者差別解消支援地域協議会の構成メンバーのあり方、検討事項など。
  3. 事業団体による協議会の設置または位置づけ。

田中正博委員

 本法の趣旨は「差別の解消」による「共生社会の実現」を目指すことにあります。したがって、許しがたい(一方的、かつ確信犯的な)差別事案に対しては紛争も辞さない毅然たる対応が必要と考えますが、他方で差別の禁止を振りかざし、理解不足や行き過ぎた好意に基づく「イヤな思い」までをも「差別」と断じて糾弾するような運用は厳に慎まなければならないと考えます。
 その意味では、特に後者のような事案に対しては、否定的なアプローチではなく肯定的なアプローチによる啓発活動が必要であると考えます。

土本秋夫委員

① わかりやすいパンフレットをつくり、広める。
② 研修会へ助成金をだす。(講師を呼びたいが、お金がなくて呼べない)
③ 行政の窓口など担当者、福祉関係の仕事をしている人、民間の運営者や経営者、責任者への研修
④ 当事者団体より声を聞いて、情報を収集する。

中西由起子委員

  • 国際的動向の収集・整理・提供によって合理的配慮のレベルが向上したり、差別解消のための手法の開発が可能となる。
  • 紛争等の防止のための啓発活動によって、当事者が傷つかずに事前に差別が解消される可能性が広がる。
  • 学校の啓発活動によって、就学差別がなくなり、社会参加の道が広がる。
  • 体制の整備によって、差別事例が顕在化し、同様の問題が再発することが防げる。
  • 情報の提供によって差別されていることに気づかなかった障害者が、自分が被害者であったことに気づき、被害を拡大せずにすむ。

中原強委員

啓発活動

① パンフレット、ポスター等による啓発
② 学校教育での人権教育(権利擁護教育)の義務化(学校カリキュラムにおける定期的・継続的活動を設けること等)
③ 幼少時からのふれあいの機会の確保
④ インテグレーション教育の推進

相談及び紛争の防止等のための体制の整備

① 意見・要望・苦情等の窓口、情報の提供、相談斡旋等を行う「障がい者なんでも相談所」を地域に設置。また相談員が施設・事業所・家庭等を定期的に訪問して当事者の意見を聞き取るアウトリーチの活動を並行して行う取組み
② 情報収集のための相談機能(電話相談等)の強化
③ 調停機関の設置

花井圭子委員

  1. 相談や紛争解決等の窓口は、分野ごとに分けられるのではなく総合的なワンストップの窓口として、相談の際、障がい特性に応じた合理的配慮が講じられるべき。例えば、障がい者の障がいに対応して、手話・点字等の通訳を配置することが必要である。その窓口に係る情報については障がい者に伝わるよう周知する。
  2. 法で規定された障害者差別解消支援地域協議会は、相談及び紛争の防止等のための体制として不十分である。また、同協議会は、必置とされていないために設置について条例化するとともに規模の小さな自治体については広域的な対応も可能とすべき。
  3. 国として国民に対し、障がい者の置かれている状況を明らかにし、障がいに対する正しい理解を含めた啓発を行うとともに、分かりやすいパンフレットやPR資材などを活用して障害者差別解消法(以下、同法)に関する広報・情報提供に努めるべき。

藤井克徳委員

● 相談紛争解決については、既存の施設や機関で当面行っていくにしても、極力障害当事者の協力を得、関与を求めていく。

● 内閣府の責任の下で各国の事例を収集し、自治体との情報を共有すること

● 差別解消法の所管省庁である内閣府が政策委員会を活用し、各地の事例を収集し、困難とされた事例について各国の先進事例等を基に議論し、差別解消法の目的に沿った解決が可能になるような情報を提供する等、政府と自治体の連携

● 障害者差別に基づく相談件数などは、雇用障害者数を母数に数値化して社会に見える形にする工夫を行う

● 差別解消に関する、行政・事業者のサービス・商品・雇用に関する評価基準を設ける

三浦貴子委員

 ①相談・紛争解決窓口は常設設置、担当職員を配置(常設既存機関も活用し出張・訪問相談に対応)、②差別解消法のめざすものと具体例を全世代が学習できる機会の設定(保育指針・養育指針・学習指導要領やシラバスに記載、学習教材に採用、自治体や地域活動を行う団体主催の学習会、日常生活で頻回に訪れる場所での情報提供、政府広報番組・CMなど)、③合理的配慮を行うための設備等整備対する減税や優遇措置(普及促進策として)、等。

4-2 障害者差別解消支援地域協議会について、どのような機能や取組を期待するか。

阿部一彦委員

 障害者差別解消支援地域協議会は、都道府県、政令指定都市のみならず、できる限り多くの自治体に設置すべきである。少なくともさまざまな環境下、地域性にあっても地域の特性に基づいた取り組みが行えるようにしなければならない。
 その設置に関して、地方分権の趣旨によって政府が指導することができないのであれば、障害者政策委員会で十分に議論を重ねる必要がある。
 地域協議会の担うべき機能としては、関係機関の連絡調整のみならず、紛争解決、調整協議等の役割を担うべきシステムの構築に取り組み、紛争解決・調整において、当事者体験を重ねてきた障害当事者(団体)の声に耳を傾けるような検討が行われることが求められる。

石川准委員

 合理的配慮をめぐる建設的な対話の場
 縦割りを超えた理解の共有
 問題解決のためのネットワーク

石野富志三郎委員

 障害者の居住状況も含め、地域格差が大きいことが実情ですが、地域協議会では障害別の委員選出において、最大限配慮をする必要があります。
 また、地域協議会内の、情報保障の徹底化を図ることで、地域における会議運営等のモデルとなるよう、積極的に取り組むべきです。

氏田照子委員

 障害者地域自立支援協議会とは別の組織として、幅広い立場の住民の代表が集い、また障害当事者が参画できる協議会が必要です。

大谷恭子委員

 地域協議会は省庁間の連絡だけにとどまらず,障害のある人に開かれ,障害のある人からの直接の相談を受け,紛争解決の機能をもつべく,その体制・人員が整備されることが望まれる。

大濱眞委員

 先進的な事例紹介、設置状況の把握となっているが、将来的には、弁護士等も含まれた地域協議会で個別問題も解決できるようにすべき(ここで解決しないものは裁判に)。

参考
 (地域協議会の具体的な役割:衆 応答 山崎)
 先進的な事例紹介、設置状況の把握公表。地域協議会で相談を受けるということは可能だが、個別に解決する機能はない。主務大臣に橋渡しをする、既存の紛争解決機関に橋渡ししていくことは重要と考えている。構成員については、その中に弁護士もふくまれる

尾上浩二委員

〇 協議会が将来的には紛争解決仕組みへと発展していくことを期待する。地域で権利擁護活動を行っている障害当事者や当事者団体を中心とし、弁護士、法律の専門家の協力による情報の共有化を発展させる

〇 他に障害差別のための紛争解決機関がない中、当事者間のあっせん程度の調整は可能とすべき

嘉田由紀子委員

 以下の意見については、全国知事会内で社会保障常任委員会構成自治体および差別禁止・解消に関する条例の制定自治体に意見照会を行った回答をもとに、委員として作成したものであり、全都道府県の総意として取りまとめたものではありません。

  • ①相談、紛争に対応する地域のスキームづくり、②困難・特殊事案の早期の検討支援、③主務大臣による権限行使の情報収集及び地域の事業者への情報提供、差別解消にかる施策全般への支援などの機能が必要ではないか。
  • 地域協議会は、各関係機関から寄せられた情報等の共有や行政措置の権限を有する行政機関等に橋渡しすることなどを役割とし、利用者が混乱することを防ぐため、地域協議会が自ら調停を行うことはできない旨を明確にすべきではないか。
  • 困難事例に関し、その分野に応じた協議会委員が随時に参加し事例検討を行う、柔軟な体制が必要ではないか。教育、公共交通、雇用、医療、福祉など様々な関係機関が協議会に参入し、ネットワークを構築することにより、地域社会全体で障害者の差別解消に向けた取組を推進できる。
  • 多くの関係機関からの情報提供により、事例集積及び共通認識の確認等を行い、それを各機関においてフィードバックし、より良い取組ができるようにするとともに、具体的事例については既存の紛争解決機関へのルートを確立することが必要ではないか。
  • 地域協議会は解決機関ではないことから、地域協議会に参画する関係機関が問題意識を持ち、自ら問題解決の主体として積極的に取り組むことが必要ではないか。
  • 「障害者差別にあたるかどうか判断がわかれる場合」の最終判断は障害者差別解消支援地域協議会には任されていないと考えているが、取扱いが不明なので、取扱いが明確になるように明示すべきではないか。
  • 構成員に想定される国の出先機関に対して法の趣旨や果たすべき役割などを十分に周知・徹底し、国の積極的な関与のある協議会とすべき。また、国の出先機関で解決が困難な場合は、本省において解決することをルールとして確立することが必要ではないか。
  • 虐待防止法に基づく連携協議会との一体的運営がなされることが望ましい。
  • 協議会が有効に機能するためには事務局の調整機能、体制整備が不可欠であり、そのために必要な財源措置等を国として講じる必要があるのではないか。
  • 当該協議会は、国も設置できることから、庶務等については、地方公共団体のみに事務を負わせるのではなく、国の機関も行うことができるよう取り扱う必要がある。また、協議会の設置については、障害者施策審議会等、既に地方公共団体が実施している既存の会議等の活用が可能とすべきではないか。

川﨑洋子委員

 障害者が地域生活をする上で必要な医療、保健、福祉に関する相談、差別解消を効果的に行うためには、協議会の構成員に家族、当事者を含め、障害者とその家族のおかれている状況を把握して、差別の解消に取り組むことが望まれる。

北野誠一委員

障害者差別解消支援地域協議会についての提案

① 名前が長ったらしすぎる。障害者差別解消協議会で十分である。
② 当該協議会は、行政、警察、基幹相談支援センター、権利擁護センター、各種相談支援センター等が受けた差別に関する相談事例を、自らが調査検討し、第3者として中立公正な判断を行う機関として位置づけられたものではなく、関係機関が集まって、差別の解消に向けた各種の共同の取り組みを、啓発や事例検討等を通じて行うネットワーク機関として位置づけられている。
 だとすれば、地域自立支援協議会が一定機能している地域では、地域自立支援協議会の権利擁護部会等との連携を踏まえて、地域自立支援協議会の1部会として例えば差別解消・権利擁護部会として機能・存在することで、実質的に機能出来よう。
③ 地域自立支援協議会が、障害当事者(団体)と行政関係者(教育委員会や警察・消防等を含む)と医療・教育・福祉関係者と地域関係者(事業者を含む)等から成り立っているとすれば、まさに、日常社会生活の各分野・領域で起こりうる差別事象を解消するための手立てを検討する機関としてふさわしいとは言えるが、その事務局機能の予算・人的措置や、当該自治体の差別解消に向けた条例設置や権利擁護機関設置といった政策提言的機能を、地域自立支援協議会や障害者施策推進協議会等との関係も含めて、どのように付与するのかが重要である。

清原慶子委員

  • 詳細な検討は必要であるが、自治体の規模によっては、障害者総合支援法第89条の3第1項に規定する協議会で障害者差別解消支援協議会の一定の役割を担える可能性もあるのではないか。
  • なお、地域協議会の機能として、調停までの機能は有しないとしても、自ら障害者等からの相談を受けることとした場合、総合支援法に基づく協議会では対応が困難になるので、都道府県と市町村との機能分担についても議論が必要ではないか。

新谷友良委員

 理想的には、障害者政策委員会の地方版とすべきと考える。法律上設置は任意となっているが、地域における差別禁止を実質化するためには必須機関とし、条例などで協議会の権限を明確にすべきと考える。

関口明彦委員

 相談機能、支援機能、調査機能、調整機能などが考えられる。現状では自立支援協議会と連携して取り組むのが良いだろう。障害種別・年代の均衡を図った当事者部会を設けてその他の部会への代表参加を認めることが適当である。さらに条例で実効性を担保することが望ましい。

竹下義樹委員

  1. 啓発。
  2. 障害者のニーズの把握。
  3. 紛争事例の収集と解決策の検討、提言。

田中正博委員

 地域協議会が「設置できる」規定になっていることを踏まえ、まずはすべての都道府県と政令市、中核市に地域協議会が設置されるよう、国がリードすることが重要と考えます。
 そのうえで、都道府県協議会が管内市町村で受け付けた差別に関する相談の報告を受ける、市町村単独では解決が難しい案件について協議を担う、などの取組みが必要と考えます。「設置できる」規定である以上、地域協議会が設置されない市町村が出てくることを想定し、居住地によって差別されることがないような仕組みとすることが重要と考えます。

土本秋夫委員

① どこに行って、誰に相談できるのか、誰が協議会に入っているのかわかりづらい。
② 当事者がいない。

中西由起子委員

  • 差別案件の調停、斡旋、勧告、公表
  • 差別解消法の広宣
  • 障害当事者参加のシステム
  • 施設や親元からの地域移行システムの構築
  • 就労支援システムの構築

中原強委員

① 虐待防止の関係機関(市町村虐待防止センター・都道府県権利擁護センター)、運営適正化委員会、自立支援協議会、法務省の人権擁護機関等、様々な関連機関があることから、これらを整理してネットワーク化する必要がある。いずれにしても迅速な対応を図ることが重要。
② 障がい者の権利活動に関わってきた当事者団体や社会福祉士、弁護士等の積極的な参画。(参考:『北海道障がい者条例』により振興局圏域ごとに設置・活動する「障害者の暮らしやすい地域作り委員会」)
③ 「差別解消適正化委員会」的機能と役割(相談/調停/救済機関としての機能)
④ 他機関とのネットワーク化(弁護士、警察、教育委員会、福祉事務所、労働基準監督署、児童相談所、婦人保護施設、社会福祉士会、社会保険労務士会、司法書士会、権利擁護センター、民間権利擁護組織、精神保健福祉士協会、当事者団体 等)

花井圭子委員

4-1の2.の再褐

2. 法で規定された障害者差別解消支援地域協議会は、相談及び紛争の防止等のための体制として不十分である。また、同協議会は、必置とされていないために設置について条例化するとともに規模の小さな自治体については広域的な対応も可能とすべき。

藤井克徳委員

● 差別解消支援協議会については、複数の特定の地域でモデル事業を行い、国が財政的にも支援していく中で、ひとつのモデルを作り出していく。そしてこの協議会が将来的には紛争解決の仕組みへと発展していくことを期待する。地域の当事者団体、弁護士、法律の専門家の協力による情報の共有化を発展させる

● 他の紛争解決機関がない中、当事者間のあっせん程度の調整は可能とすべき

● 条例などで協議会の権限を明確にすべきと考える。

三浦貴子委員

 ①好事例の収集公開、②一時的な相談窓口機能(たらいまわしを生じさせず地域全体で相談・紛争解決機能の向上を期待するならば、情報交換や連絡調整に加え一時的な相談窓口機能も果たす)、③障害のある方や家族、支援者個人または活動団体を含めた構成とすること、等。

5.上記以外の事項

 上記質問のほか、基本方針の作成に当たり留意すべき点や整理すべき点等があればお聞かせください。

阿部一彦委員

 バリアフリー法等、他法との関係について明確に理解できるように整理すること。他法との関係から、かかわる領域が一見不明瞭な場合、例えばバリアフリー法等の法律との関係において、谷間を作らないようにすること。
 障害及び障害者理解に関する啓発が重要であり、その活動にこれまで様々な体験を積み重ねてきた障害当事者(団体)が関与できるようにするとともに、障害及び障害者理解の活動を担うべき障害当事者(団体)活動への支援のしくみを充実させること。
 法の意義並びに障害及び障害者理解に関する啓発活動への十分な財源的支援。
 各省庁に共通する課題、または共通に検討したほうがよい課題に関しては縦割りに基づく谷間を作らないように配慮し、(内閣府がかかわり)総合的、包括的に検討を進めて連携できるような取り組みを行うべきである。例えば、移動支援の充実、コミュニケーション支援の充実。
 権利条約の締結に伴い、取り組み実施状況について国連への報告などが行われるようになると考えられるが、そのような時に表出する課題については、内閣府において総合的、包括的に議論を行い、基本方針、対応要領、対応指針に反映できるようにすること。
 各行政機関等及び事業者を対象とする障害を理由とする差別を解消するための取組ではあるが、一連の取り組みをもとに国民一人一人が障害及び障害者理解を深め、障害を理由とした差別のない誰もが暮らしやすい社会づくりに関心を抱くように整理し、周知に努めることがたいせつである。

石川准委員

 なには環境整備によるべきで、なには合理的配慮によるべきかについて様々な考えが錯綜し、混乱する危険が高い。
 環境整備と合理的配慮の関係について整理して示す必要がある。
 さらには、バリアフリー法制が未整備な領域ほど合理的配慮への要求が高まると予想される。しかし個々の現場での合理的配慮には限界がある。それは本来環境整備により実現すべきことだというような議論を誘発すると考えられる。
 内閣としてこのような問題とどのように取り組んでいくのかを、基本方針に示す必要があると考える。

石野富志三郎委員

 聴覚障害者の「合理的配慮」の大部分を占めるであろう、「聴覚障害者の就労に関する情報保障」は、企業内秘密のため手話通訳や要約筆記を依頼しない企業の存在が多いこと、要約筆記は雇用助成金の対象となっていないため、雇用助成金制度を活用して要約筆記の派遣が利用できないこと、中小企業に対する救済措置が不足していることなど、事業者が積極的に合理的配慮に取り組むための環境として十分ではない現状があります。
 合理的配慮の提供に際し、事業者の「過重な負担」を頻発させないためにも、国の支援体制をまず明確にするとともに、合理的配慮の提供は、一律ではなく障害者の特性や状態などに合わせて柔軟に支援を受けられるよう、「助成金制度の見直し・改正を促進していくこと」についても項目に加えるべきではないかと考えます。
 また、差別解消法の対象は、現在行政府のみとなっていますが、立法、司法も段階的にその対象に取り入れ、将来的には、「三権の分立」と整合のとれた取り組みとなるようにすべきです。

上野秀樹委員

 私たち精神科を専門とする医師や精神科医療の専門家が潜在的に持ってしまっている可能性がある、「精神障害に関する偏見」に注意が必要である。
 例えば、「精神科医療の専門家」は、知らず知らずのうちに精神障害者の就労・就学に関して、悲観的な迷信を持ってしまうことがある。迷信とは「精神障害者は通常働きたいと思わないし、働くことは出来ない」といった考えである。こうした「迷信」を持った「精神科医療の専門家」が、雇用主や他の就労支援者、そし当事者に対しても同じような悲観的な迷信を抱かせてしまい、就労へ向けた行動そのものを抑制してしまう。そして精神障害者のわずかしか就労していない状態を作り出し、さらにその「迷信」が強化されてしまうという悪循環が繰り返されていくのである。
 実際に精神障害者の就労支援において、「精神科医療の専門家」を関与させない方が良い結果を生むことがあるほどである。

氏田照子委員

 障害のある人の自立と社会参加を促進し、障害の有無にかかわらず、すべての人が誇りをもって共に生きることができる社会をつくっていくためには、保険・医療、福祉、教育、雇用等が一体となった取り組みを推進することが必要です。中でも障害のある人の雇用・就労支援はその重要な柱となると思います。障害者雇用率の達成をめざす企業が増えてきていることを大変うれしく思っていますが、雇用の場においても社会的障壁の除去、合理的配慮の提供などにより、差別のない環境を準備していくことが必要です。例えば、障害者として雇用された人には、一般社員には用意されているキャリアアップを前提とした評価基準やそれに基づく処遇ならびに配置がありません。職場内のキャリアアップや処遇改善についても差別的取扱いにならないよう、改善が必要であると思います。

大谷恭子委員

 障害者政策委員会の基本方針に対する意見は,政策委員会としての意見であり,決して政策委員個人の意見を聞くことが求められているものではない。これは条文が,障害当事者の意見を聞くこととは別に政策委員会の意見を聞くことと明示していることからも明らかである。障害者差別解消法のこの条文を受けて,障害者基本法が改正され,障害者基本法に定められた政策委員会の権能に新しく付与されたものである。要するに内閣府に設置された諮問委員会に諮問事項が法定されたのである。かような場合は委員会としての討議を一つにまとめ,意見書として提出することが通例であると思われる。先回の会議で,意見を継続的に出し続け、意見書としての取りまとめはしない旨の発言があったが,意見を出し続けることと,現時点における意見を1本に取りまとめることとは矛盾するものではない。意見書としてまとまった意見がある方が、今後政府の作る基本方針に影響を与え続けることができる。よって,6月の基本方針の閣議決定を目指し,3月中には政策委員会の意見を取りまとめて頂きたい。これは政策委員会の法的責務であると認識している。
 なお,既に政策委員会差別禁止部会において意見の取りまとめがされているので,これの周知を図り,これを尊重して頂きたい。特に総論は今回の障害者差別解消法に一部盛り込まれたが,各則については法文化しなかったのであるから,基本方針と対応要領および対応指針において各則の内容が定まるという法構造である以上,基本方針にまずは差別禁止部会意見を可能な限り反映して頂きたい。

大濱眞委員

紛争解決

大枠としては

① 基本指針、対応要領、対応指針で何が差別に当たるのかの判断の物差しを提供することにで、これにより差別等の紛争が事前に回避されること。この第一段階の役割を地域協議会が担えるようにすること。
② 既存の行政型裁判外紛争解決制度の斡旋、調停、仲裁による解決。
③ 司法による判断を。

参考

① 本法案は、障害者基本法第4条(差別の禁止)を具体化するもので、障害者基本法の施策の一つとして障害者計画の中に盛り込むことになります。また、政策委員会は基本計画の実施状況を監視することになる。したがって、政策委員会の監視の対象になります。(衆 応答 森担当大臣:5/29)
② 基本方針、要領、指針、地域協議会などの措置の中で差別の解消が図られる(同上)
③ (衆内閣委 答弁 山崎)によれば、4)その他重要事項には、環境整備などの規定、障害者差別解消支援地域協議会の規定などの事項がふくまれる。参内閣委で、国務大臣と政府参考人は、基本方針は、障害者権利条約や、この条約をふまえて改正された障害者基本法などをふまえたものになる、とのべている。
④ 第5条は、バリアフリー法等での事前的改善措置の規定(衆 応答 山崎)

通学中、授業中、通勤中、就業中の介助

 障害者の社会参加を実質的に保障するためには、差別禁止のアプローチと福祉施策のアプローチをセットで考えていく必要がある。
 たとえば、重度障害者に対する通学中、授業中、通勤中、就業中の介助を、学校設置者や事業主の合理的配慮で賄うことは非現実的である。このため、差別禁止のアプローチだけでは、重度障害者の社会参加の機会は実質的に保障されない。
 したがって、障害者総合支援法に基づく重度訪問介護の内容を見直し、重度障害者については、居宅内や私用の外出だけではなくて、通学中、授業中、通勤中、就業中の介助も含めてシームレスに利用できるようにすることで、福祉施策のアプローチによる支援を確立させることが不可欠である。

参考

「障害を理由とする差別の禁止に関する法制」についての差別禁止部会の意見

○通学支援

 通学時の移動支援は、学校やその設置者がなすべき合理的配慮であるのか、行政による福祉サービスであるのかについては、障害者が教育を受ける上で不可欠な支援であることから、政府において引き続き検討することが求められる。

○通勤支援等

 通勤時の移動支援や職場内での身体介助が事業主のなすべき合理的配慮であるのか、行政による福祉サービスであるのかについては、障害のある労働者にとっては、働く上で不可欠な支援であることから、政府において引き続き検討することが求められる。

障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言

○重度訪問介護の発展的継承によるパーソナルアシスタンス制度の創設

 決定された支給量の範囲内であれば、通勤、通学、入院、1日の範囲を越える外出、運転介助にも利用できるようにする。

地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律

附則第3条 政府は、…この法律の施行後三年を目途として、…常時介護を要する障害者等に対する支援、障害者等の移動の支援、障害者の就労の支援その他の障害福祉サービスの在り方…について検討を加え、その結果に基づいて、所要の措置を講ずるものとする。
2 政府は、前項の規定により検討を加えようとするときは、障害者等及びその家族その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。

尾上浩二委員

○ 女性障害者の複合的差別の解消の明記

 障害者差別との複合的な差別についても、基本方針、対応要領、対応指針に包含してその解消を明記する。障害者のなかでも女性に対して就業難、貧困、さまざまな抑圧などの困難が加わっている状況をふまえた検討を進めること。

○ 欠格条項の廃止・見直しの明記

 第3次障害者基本計画で「欠格条項について,各制度の趣旨も踏まえ,技術の進展,社会情勢の変化等の必要に応じた見直しを検討する」と決定されている。
 基本方針では、差別禁止部会意見が重ねて述べているとおり「業務等の本質的部分の遂行に必要な最低限の要件や能力」以外の要素で制限・禁止することや不利益につながることは差別として、根本的な見直し、廃止を明記すること。
 具体的には、試験に合格し、適切な医療も受けて症状や生活状態が就業や行為にさしつかえない状況の人に対して、障害を理由に、就業や行為を制限・禁止すること、あるいはその前提ともなる養成・教習・研修、試験の受験、資格や免許の交付・更新を、拒否することがないように、合理的配慮の不提供がないようにしなければならない。
 例えば、既往症を理由に「危険に違いない」として採用拒否や解雇をすることや、運転にさしつかえない状況にもかかわらず障害や病を理由に運転免許を交付・更新しないことも差別にあたるという理解を広めると共に、既存の欠格条項の根本的な見直し・廃止を行うことが必要である。

○ 国家公務員法・地方公務員法の被後見人欠格条項の廃止等、「率先垂範」の取り組み

 後見制度を受けた人(成年被後見人・被保佐人)が公職や公的な地位につけず公務員試験なども受験できない、公務員として働いてきている障害者が後見を受けると退職しなければならないという問題が国会で指摘されている(2013年11月28日参議院外交防衛委員会)。問題の解決のためには、公務員法の改正等が必要であり、こうした課題に国として率先垂範して取り組む方針を明記すること。

嘉田由紀子委員

 以下の意見については、全国知事会内で社会保障常任委員会構成自治体および差別禁止・解消に関する条例の制定自治体に意見照会を行った回答をもとに、委員として作成したものであり、全都道府県の総意として取りまとめたものではありません。

  • 法律の適切な運用により、どの自治体でも障害を理由とする差別の解消に向けた的確な対応が可能となるような基本方針であることが望まれる。
  • 基準や考え方に関する部分については限定的に記載すべきではないか。
  • 過重な負担や正当な理由について、紛争を解決する立場の行政機関からの意見に対して、差別を受けた障害者が納得しない場合に紛争解決機関と紛争になる場合もあるが、そういった場合の紛争解決方法についても整理すべきではないか。
  • 環境整備と合理的配慮の関係性の明示、国及び地方公共団体(市町村と都道府県)の具体的な役割分担の提示も必要ではないか。
  • 地方公共団体の対応要領を作成すべき機関の範囲の明示が必要ではないか。特に、議会や、各種委員会(教育委員会のほか公安委員会、人事委員会等)は、それぞれ作成する必要があるのか、市町村においてはどうかなどについて明示してほしい。
  • 自治体が設置する施設の指定管理事業者は、その施設の運営に関する合理的配慮は法的義務と解して良いか。法的義務とする場合、同一事業者においても、「地方公共団体等」と「民間事業者」の両面を有することとなる旨の明記をしてはどうか。
  • 「民間企業における障害者雇用」の観点からは、別途、障害者の雇用の促進等に関する法律の改正法により、具体的な措置を規定することとなっているので、雇用分野との整合性に留意する必要があるではないか。
  • 障害者の範囲について、「性同一性障害」を理由とする差別解消の取組は、障害者差別解消法の対象となりうるのか明確にしてほしい。
  • 全ての国民に対して責務を有する国として果たすべき役割を基本方針に明確に位置づけた上で、国、地方のそれぞれの役割に応じて、地域の実情に沿った地方の取組を支援していただくようお願いしたい。

勝又幸子委員

5-1 差別の解消の推進の成果を監視(モニタリング)するために、基礎となるデータの整備が必要です。

 そのデータは、統計法の下、所定の手続きを経て公的統計調査として承認され、実施については継続的な予算措置が国によって行われ、そこで得られたデータについては障害者政策の促進のために、大いに利活用されるべきです。
 「平成23年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」は、障害者制度改革推進会議の総合福祉部会でワーキンググループを組織し、10回の検討を経て議論され実施に至ったものです。しかし、これが総務省の公的統計調査としての承認を得ることなく実施され、「世論調査」扱いになっています。そのため、統計法で公的統計調査には認められる調査票情報の二次利用もできない残念な状況になっています。

(注) 従前行われていた、身体障害児・者実態調査 (平成18年7月実施)、知的障害児(者)実態調査 (平成17年11月実施)は、公的統計調査でした。その2つの調査の予算をこの調査に費やしているはずです。

5-2 障害の有無に関係なく国民全体の意識と行動を啓発活動によって変えていくことでしか差別は解消されません。

 全国民を対象にした標本調査を実施し、どのような属性や立場にいる人がより差別意識を強くもっているのかを明らかにし。差別解消のために特に力をいれて働きかけるべき対象を明確化し、そこに継続的に働きかけていく必要があります。

川﨑洋子委員

 精神疾患に対する偏見はまだ根強くある。偏見は差別である。差別解消には偏見のない社会をつくることである。精神障害、発達障害、知的障害の正しい理解が国民に周知されるには、学校教育が必要である。児童、教師、父兄が誤解のない障害者観を持つようにすべきである。

後藤芳一委員

(1) 定期的・持続的なローリング(繰り返しの改良)

 障害者差別に関する当事者の権利意識、社会の理解と知識の水準がまだ低く、啓発活動や、事例を見て次第に向上すると考えられる(権利条約では「障害は、発展している概念」(前文c))。よって、差別解消法の運用はアドホックに(必要に応じて適宜)見直すのではなく、定期的・計画的に見直すことを基本方針におり込んでおく(例:1、2年ごとと規定)。そうすると、当事者からもそれに向けて盛り込むべきことを出す活動が続き、持続的に取組みが進むと期待されます。

(2) 政策委員会の「意見」を文書でまとめる

 現場(例:国、自治体、事業者)の対応を考えると、基本方針によって法の運用としてどの水準を求めるのか(例:差別的取扱い、過重な負担等の線引き)を示すことが需要です。ただ、内容柄、単純な定義や線引きだけで表現できないことも多くあると考えます。よって、議論を通じてよく練り、かつ、その成果として得られた議論の背景を含む情報を提供することが重要と考えます。政策委員会には、議論を練る役割があると考えます。よって、並行して行われるヒヤリングの結果も尊重しつつ、意見は文書でまとめる必要があると考えます。

(3) 地域格差

 地域格差(例:風土、地形、生活習慣や水準、日頃の情報量)が差別につながると考えます。マンパワーやバリアフリーの状況は個々に異なるので、障害のある人が抱える差別の質や内容が異なるので、配慮した議論が必要と考えます。

(4) ヒアリング対象にしている団体「等」

 「等」は、どこまでの対象者を含むのか、確認させていただきたく思います。雇用促進以外の枠で一般就労している人や、自宅や病院から出られないほど重度な障害のある人が抱える「解消したい差別」や「望む合理的配慮」には、きめ細かい調査と対応が必要と思われます。

佐藤久夫委員

 障害者権利条約では、「本人に代わって他者が意思決定するシステム」を「支援を受けて本人が意思決定するシステム」に転換することを推奨している。この点では、日本の成年後見制度も転換が求められている。少なくとも多くの契約行為の資格を一律に奪っている制度の改善が緊急に求められている。
 こうした中での差別解消法の「基本方針」は、現行法を前提にせざるを得ないとはいえ、成年被後見人も含めて最大限本人の意思を受け止める努力をすることが合理的配慮に含まれるものであることを示すべきである。

新谷友良委員

 基本方針には差別・合理的配慮に加えて、基礎的環境整備(事前的改善措置)について記載する必要がある。聴覚障害者が直面する情報・コミュニケーションに係る不均等な取扱いや社会的障壁の多くは、個別具体的な合理的配慮に加えて、基礎的環境整備で解決される場合が多い。学校の教室や会議施設すべてとは言わないが、一定程度の教室・会議室は遮音効果の高いものとし、磁気ループなどの補聴援助システムを建設段階で装備しておけば、聴覚障害者にとって非常に利用しやすいものとなる。また、公共施設・交通機関での文字表示は拡大してきているが、公共施設・交通機関での音声情報の文字表示は義務化を目指して頂きたい。また、障害者基本計画策定の時にも意見を出したが、緊急時の文字表示を実現するためには、音声情報の自動認識・文字化が必須の技術である。最近の交通機関は車内にモニターを装備しているので、車掌の緊急放送も自動認識ソフトを通せばモニターに文字表示できるはずである。基盤技術は出来ているので、実用化への施策の後押しが求められる。
 基本方針に基礎的環境整備をどのように記載するかは工夫が必要であろうが、「障害者差別解消のために、差別の禁止・合理的配慮の提供・基礎的環境の整備が求められる。個別の対応要領・対応指針には、不均等待遇・合理的配慮の具体例と並べて基礎的環境整備の具体的例を明記すること。」などの記述を考えて頂きたい。

関口明彦委員

 不当な差別的取り扱いは、障害者というアイデンティティ全体に向けられたものを対象とし得ない。なぜなら、障害者というアイデンティティ全体に向けられた行為によって結果的に不利益を受けるのは、アイデンティティそのものではなく個人だからである。あくまで、障害に基づく差別は、結果的な不利益が生じた段階で障害に基づく別と位置付けられる。すなわち、精神障害の有無の明示する犯罪報道は、個人に向けられるためアイデンティティの問題とはいえないが、精神障害と犯罪を結びつけた言説一般(小説ではサイコホラーというジャンル自体がそれにあたるし、精神障害の治療と犯罪防止を連続的に思考する研究もそうである)は、それ自体を単純に禁止することが原理的には難しいのである。しかし、こうした言説一般が形成する精神障害者像を理由した行為による結果的不利益は、行為者への善処を求めるだけでは足りず、言説そのものに対するアプローチがなされていく必要もある。それは、言論を封殺するような方法論である必要はなく、たとえば、科研費の中で、精神障害と犯罪に関する研究の主題が精神障害者の犯罪を減らすことを志向するものが全体の6割を超えるようならば、そうした言説の払しょくを志向する研究や精神障害者の団体によって担われる精神障害と犯罪を結びつけないための実証的な研究への研究費補助を実施するなどして、均衡を保つように努力されればよい。
 現状では障害者の差別問題は、実益主義としてではなく、情状・道徳主義的な認識の上にあるため、一般の人々は、障害者に対してどれほどの優しいまなざしを向けなければならないのだ、と不安を抱えているようである。しかし、法律に定めた障害に基づく差別は、いずれも結果的不利を要件とするため実益主義といえる。そのため、法律に定める障害に基づく差別は、一般の人々が不安に思われるようなものと異なるのである。
 その点を、強調しておくことで理解の促進に向かうのではないかと考える。

竹下義樹委員

  1. 環境整備と合理的配慮の関係を可能な限り明確にする。
  2. 障害者差別解消支援地域協議会の検討結果や紛争解決機関によって取り扱われた内容を障害者政策委員会において検討する。そして、地域間格差が生じないような措置を講ずる。
  3. 主務大臣による報告、助言、指導、あるいは勧告がなされた場合のその結果(改善の状況)を定期的に障害者政策委員会に報告してもらうことが必要。
  4. 国連に提出するレポートの内容を障害者政策委員会において検討することが必要。
  5. 締約国が国連の委員会から受けた是正命令などを集約し、定期的に障害者政策委員会に報告する。そして、これを国内の必要な措置に反映させる。
  6. 先進事例を学ぶための視察。

田中正博委員

 本法の現実的な運用を考えると、実質的な対応は市町村が担うことになると思われます。しかし、そもそも市町村には人口350万人を超える横浜市のような巨大政令市から、人口200人以下の東京都青ヶ島村までの規模が含まれるうえに、現下の状況では障害者施策関連の法制度が続々と創設、改正されていますので、実効性のある差別の解消を目指すためにも、市町村からの丁寧なヒアリング(少なくとも、地域性と自治体規模を考慮して10市町村程度)を実施する必要があると考えます。
 そうしたヒアリング等を踏まえて、既存の合議組織(障害者総合支援法に基づく協議会や、障害者虐待防止法に基づくネットワーク組織など)を活用するなどの、実現可能性が高い具体案を提示する必要があると考えます。

土本秋夫委員

  • 主務大臣の表し方は、具体的に書いておくことが必要。
  • 名前や個人情報の管理をしっかりとしてほしい。勝手に流さないような仕組みをつくる。
  • 学校、公共交通機関、病院、報道機関など、行政と同じほとんどの人が利用する事業者として義務にできないか。
  • 要約筆記を難聴だけではなく、すべての人にとって必要なものとして研修につけるようにする。(ふりがな版、外国語版)など

中西由起子委員

  • 行政への合理的配慮の義務付け通達を主務官庁から出させる
  • 全国チェーン店での差別事例を国で勧告、指導
  • 合理的配慮の欠如とみなされる規準事例の作成

中原強委員

 基本方針は、不当で理不尽な差別に苦しむ人たちを救済するだけでなく、人間の本質のひとつともいえる、異形、異質なものを排除したり、恐れて遠ざけたり、不利益を与えたりする心的構造から解放されなければならない。それらの心的構造が法律や規則、慣習を作り出し、差別や排除の仕組みと雰囲気をつくるのに一役かっている。例えば、「障がい」の標記に「害」の字を使用することについても社会的な差別を助長するような心的構造につながっていると思われる。
 また、地方公共団体における対応要領の策定は努力義務とされているが、すべての地方公共団体で対応要領や条例を策定すべきである。
 障害者権利条約第4条1項に「障害者に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し、又は廃止するためのすべての適当な措置をとること」とあるように、政府は差別の解消に責任を負っている。基本方針は、差別に苦しむ「障がい」ある人たちを救い出す具体的な施策につながる内容になることが求められる。
 また、社会福祉法人等の場合、財源が限られているという事情もあることから、事業者の合理的配慮実施にともなう出費への財政的な裏付けについて十分な配慮をお願いしたい。

花井圭子委員

  1. 合理的配慮の提供については、国の行政機関や地方自治体等とともに民間企業にも法的義務を課すことを検討する旨を記載しておくべき。

藤井克徳委員

  • 障害者も他の市民と同等な権利を持つ市民であるという意識を徹底化させてほしい

三浦貴子委員

 ①障害のある方を特別に優遇・有利にするのではなく、すべての方に分け隔てない均等な社会参加の機会を保障するという視点を、あらためて強調すること、②障害のある方がたの思いを聴き、それを確実に反映すること。