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列島縦断ネットワーキング

[福島]

平成7年度福島県における地域ネット活動

佐藤 平


■平成7年6月20日

 福島県ではかねてより検討を重ねてきた「人にやさしいまちづくり条例」を平成7年3月17日付けで福島県条例22号として公布し、引き続き平成7年6月20日「人にやさしいまちづくり条例施行規則(平成8年4月1日施行)」を公布した。

 この条例は建設省で示している「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(平成6年法律第44号・最終改正平成6年6月29日法律第62号)並びに高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律施行令・施行規則」(通称ハートビル法)に基づくもので、以下にその概要を示しておく。

 福島県条例は、建設省の「ハートビル法」と比較すると、まず第1に高齢者や障害者などが日常的に利用する建物にあっては、例え規模が小さい建物であっても原則としてこの条例を適用することを示したことである。

 例えば高齢者や障害者などが日常的に利用する建物で、最小面積基準の一例を示すと、病院、図書館、銀行などは面積にかかわらず全ての建物、スーパー、飲食店などは300m2以上の建物、理髪店、美容室などは50m2以上の建物、アパート、寄宿合などは50戸以上の集合住宅が該当する。

 第2はこの条例に示されている守るべき条文であるが、高齢者や障害者などが利用する公益的建築物にあっては、常に彼らが利用する出入口、廊下、階段、昇降機、便所、敷地内通路、観覧席、客席、浴室、更衣室、シャワー室、客室、受付・案内カウンター及び記載台などはあらかじめ利用しやすいような配慮が必要と言う事である。高齢者・障害者などが利用すると思われる全ての部分に、この条例の適用を受けることが示されている。

 第3は「ハートビル法」より建築物の範囲を広げたことが上げられる。例えば建築物以外の公共の交通機関の施設(鉄道事業法に規定する鉄道施設・港湾法に規定する旅客施設・自動車ターミナル法に規定するバスターミナル施設)、道路(道路法に規定する道路)、公園(都市公園・児童公園・港湾環境整備施設である緑地・博物館法に規定する博物館・動物園又は植物園)、駐車場なども加えている。

 第4は一定の規模を有する公益的施設を新築する場合は、知事に届け出ることを義務づけていること、届け出を受けた公益的施設については、知事は必要に応じ指導・助言をすることができること、勧告に従わない場合は、それらの公益的施設に対して立ち入り調査することができること、そして更にそれらの施設に不備があった場合は、その内容を公表することができるとしている。

 第5は、県の責務として「人にやさしいまちづくり」体制の確立と県有施設の先導的整備、市町村には市町村施設に対して先導的整備を求めていることは勿論、その他の公益的施設を所有する事業者等に対しても、別紙に示された整備基準に適合するよう努めることを義務づけている。

 第6は、教育活動等を通して「人にやさしいまちづくり」啓発活動等を実施すること。また一般住宅の整備に当たってもこの基本理念を尊重すること等が明記されている。

 第7は、この条例を推進するに当たって「やさしいまちづくり推進基金」を設けたことである。なお推進基金の対象は店舗等の増改築、高齢者・障害者用バス、福祉タクシー等の購入費となっている。

■平成7年7月22日(土)

 郡山高齢化社会研究会では、帝京平成短期大学石黒チイ子教授をお招きして「21世紀の高齢化社会をどう生きるか」について講演会を行った。なお講演会には一般参加者、障害者、ボランティア、学生など多数集まった。

■平成7年9月19日(火)

 福島県では前述した「人にやさしいまちづくり条例」を県民運動として広げることを目的とし、「人にやさしいまちづくり県民会議」を発足させた。

 なおこの県民会議の設立総会後は、「やさしいまちづくりフォーラム」を行った。

 フォーラムは、まず最初に長年ボランティア活動に携わってきた俳優の牟田悌三氏が「人生って支えあえっこ」というテーマで約1時間半にわたる基調講演を行い、引き続きパネルディスカッションを行った。

 パネルディスカッションは元NHKアナウンサーの飯窪長彦氏をコーディネーターとし、タレントの内海好江氏、日常生活で車イスを利用しているエッセイストの大石邦子氏、それに私の3人で意見を交換しあった。なお会場には高齢者、障害者を含め2000人以上の県民が訪れフォーラムに参加し、「人にやさしいまちづくり条例」の理念について理解を深めていた。

■平成7年9月27日(水)

 福島県障害者雇用促進協会の設立20周年記念式典が、福島市の杉妻会館で行われた。

 県内企業の障害者雇用状況は、平成6年度現在で1.72%となっており、どうにか法定雇用率1.6%を達成している。しかし雇用企業の規模を見ると、相変わらず中小企業が多く大企業の達成率は雇用率が低くなっている。そしてまた障害者の身体状況では障害が重いほど雇用率は低くなっている。

(さとうひとし 日本大学工学部教授)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1995年12月号(第15巻 通巻173号) 45頁~46頁