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特集/障害者基本計画

(4)第二次いわき市障害者福祉計画

「障害者専用」という意識の克服

いわき市福祉厚生部社会福祉課 武山忠弘

1.策定の経緯

 本市は、国際連合が1981年(昭和56年)を「国際障害者年」としたことを契機に、国際障害者年のテーマである「完全参加と平等」を長期的、総合的に実現していくため、昭和59年に向こう10か年を計画期間とした「いわき市障害者対策に関する長期計画」を策定した。

 この計画の基本理念として「障害を持つ人も、生まれ育った家庭や地域の中で1人の社会人として生活していけるような施策の実現」を目指し、障害を持つ人も、明るく、豊かな日常生活が送れるよう、幅広い分野にわたり各種施策を積極的に推進してきた。

 しかしながら、本計画が、平成5年度をもって、10か年が終了したこと、さらには、21世紀に向けた超高齢社会の到来など、障害者を取り巻く諸課題に適切に対応していく必要があることから、新たな「長期計画」を策定することとした。

2.策定の方法

 新長期計画の策定にあたっては、その理念と基本的な考え方は、これまでのものを引き継ぎつつ、新たなニーズに的確に対応できるよう、障害者関係団体、施設等の意見、要望等を踏まえながら、学識経験者や障害者福祉団体の代表者等の市民の代表者22名で構成する「いわき市障害者対策新長期計画策定会議」及び庁内の関係18次・課長で組織する「いわき市障害者対策新長期計画策定委員会」により、並行的に各々8回にわたる調査、検討を重ね平成6年9月「第2次いわき市障害者福祉計画」を策定した。

3.計画の基本的な視点

① ライフステージに対応した施策の推進

 乳幼児期から老年期に至る、各段階における施策が、一貫性をもって整えられ、かつ、障害の種別や程度に応じて緊密な連携のもとに推進させる必要がある。

 このため、各行政領域ごとの縦割り弊害を排し、関係課の連携、強化等により、ライフステージに対応した、きめ細かな施策の展開を図る。

② ノーマライゼーションの理念の推進

 市民の間には、この10年間、ノーマライゼーションの理念も次第に浸透しつつあるが、多くの市民の意識は、必ずしも十分とは言えない状況にある。

 この理念が、より一層深まるよう、さらに、障害者の生活が障害をもたない人々の社会的、経済的、文化的水準と同等となるよう施策の推進を図る。

③ 自立への支援

 障害者は、多くの市民と同等の基本的人権を有し、責任ある個人として生活設計し、地域社会へ参加することが期待される。

 このため、障害者が日常生活や社会生活が、可能な限り多くの市民と同じように営むことができるような社会を実現する。

④ 「障害者専用」という意識の克服

 障害者が住みよい社会をつくっていくことは、高齢者等多くの市民が住みよい社会をつくっていくことにほかならない。

 これまでの障害者福祉施策は、トイレ等の設置にみられるように、「障害者専用」という位置付けの傾向にあった。

 このことは、「障害者は特別」という意識を生み、「ノーマライゼーション」の理念が十分に浸透しない一因ともなっている。

 したがって、今後は可能な限り「障害者専用」という意識を改めていくものとする。

4.計画の性格と期間

① 計画の性格

 「市総合計画」の部門別計画であり、障害者福祉の総合的な計画である。

 「市総合計画」「市高齢者福祉計画」との整合を図るとともに、「市福祉のまちづくり整備指針」とも十分に連携を図る。

② 計画の期間

 平成6年度から平成15年度までの概ね10か年とする。

5.計画の内容

 ライフステージに沿って、7つの施策目標を設け、それぞれに現状と課題及び推進すべき施策の方向、施策名、施策内容、事業名、事業内容、事業計画、関係課(担当課)を示した。

 7つの施策目標と、それぞれに基づく施策の方向は次のとおりである。

① 保健・医療(事業数32)

ア、保健・医療の充実

イ、リハビリテーション医療の充実

② 教育・育成(事業数17)

ア、教育の充実

イ、社会教育の充実

③ 雇用・就業(事業数25)

ア、雇用及び自営業への援助

イ、福祉的就労の場の確保

④ 福祉(事業数28)

ア、生活安定のための施策の充実

イ、福祉サービスの充実

ウ、福祉機器の普及

⑤ 生活環境(事業数21)

ア、建築物の構造の改善

イ、住宅環境の整備

ウ、移動・交通対策の推進

エ、情報提供の充実

オ、防災・防火対策の推進

⑥ 啓発・広報(事業数13)

ア、障害者理解の促進

⑦ スポーツ・レクリエーション及び文化活動(事業数18)

ア、障害者の学習・文化活動の充実

イ、スポーツ・レクリエーション活動の充実

6.計画の推進

 本計画は、向こう10か年の計画であり、各事業の年度ごとの実施スケジュールは明示していない。今後、関係団体や施設等との情報交換を行いながら、関係課との協力のもとに各事業の実施スケジュールを明確にし、各年度ごとの計画の進行管理を行って行く予定である。

(たけやまただひろ)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年1月号(第16巻 通巻174号) 16頁~17頁