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特集/「障害者の機会均等化に関する基準規則」から見た日本の現状

日本の現状

⑥規則22 国際協力

成瀬正次

特別報告者は述べた

 ご存じのように国連の障害者機会均等基準は、1990年に提案されてから約4年の歳月を費やして策定された。この規則の特別報告者に任命されたベンクト・リンドクビスト氏は、1992年訪日の折に開催された講演会で次のように述べている。

 「基本的に重要なのは『人間とは何か』ということだ。すべての人間が平等な権利を持つという認識が先にあって、それに基づいて社会は築かれなければならない」

 さらに、原因究明によって児童の事故を防いだ実例を上げ、「知識を集め活用すれば、社会にとってよりよい成果が期待できる」から「力をあわせて『すべての人のための社会』を実現しよう」と結んでいる。

 昨年の3月3日、社会開発サミットの初日に開催された障害者フォーラムでは、各国政府からのレポートが十分でないと報告されている。残念なことである。

わが国の国際協力

 日本政府から国連にどのような報告書が提出されたかは不明である。入手することもできないので、平成7年12月に総理府から発表された「障害者のために講じた施策の概況に関する年次報告」(障害者白書)を手がかりにしよう。ところで、国際協力について基準規則に述べられているところは規則22であり、次の文章ではじまっている。

 「政府は障害を持つ人の機会均等化政策に関する国際協力に積極的に参加する」

 わが国が、アジア太平洋障害者の十年の提案国として大きな役割を果たしたことを第一番目に挙げなければならない。これは日本の障害者団体による国際協力の源泉となった。その1つは、アジア太平洋地域NGOネットワーク(RNN)の誕生である。わが国内においては、日本障害者協議会、日本身体障害者団体連合会、全国社会福祉協議会、日本障害者リハビリテーション協会の四つのNGO団体が集まって結成した新十年推進協議会が母体となっている。付記すれば、このNGOネットワークは、1993年の沖縄におけるキャンペーン会議にはじまり、1994年マニラ、1995年ジャカルタとNGO国際協力の実績を積み上げている。RNNはESCAP(国連アジア太平洋経済社会委員会)アジア太平洋障害者十年のタスクフォース委員会の強力なメンバーでもある。

 基準規則22の1には、「政府は国際連合等の専門機関・他の政府間機関内で障害政策の開発に参加すべきである」とある。

 『障害者白書』を読み進めることにしよう。国際協力については、第1章の第2節に[我が国の国際的地位にふさわしい国際協力]という表題の文章があるが、その後半部に、「我が国では国連等国際機関を通じた協力も行っている。昭和63年度から国連障害者基金に対して継続的な拠出を行っており、平成6年度には10万ドルを拠出している。さらに、アジア太平洋地域への協力としては、ESCAPに対し、JECF(日本・ESCAP協力基金)を通じた活動支援を実施しており、平成6年度には20万ドルを拠出した」と書かれている。

 さらに、西アフリカの河川盲目症撲滅の基金に200万ドル、ユネスコのアジア太平洋地域教育開発計画に3.2万ドル、特殊教育セミナーの開催等となっている。

 基準規則22の2「政府は、適切である場合には常に、障害に関する側面を基準、情報交換、開発計画等に関する全般的な交渉に導入すべきである」に対応するものとしては次の文章を示すことができる。

 「政府はNGOとの連携強化の重要性を考慮し、NGO支援として、NGO事業補助金を拠出しており、平成六年度には[難民を助ける会]に対して、カンボディアにおける身体障害者センター内の産業振興施設増設事業及びヴェトナムにおける聾唖孤児院での職業訓練事業に補助金を交付している」

 基準規則では「障害に関する側面」を開発計画に導入せよと言っている。とすれば、開発援助によって建設されるものは、すべて障害者や高齢者が円滑に利用できるものになるはずであろう。

 基準規則22の3は、

 「政府が知識と経験の交渉を奨励し、支援すべき対象は以下の通りである。

 (a) 障害問題に関する非政府組織

 (b) 障害問題に関する研究機関・個人の研究者

 (c) 障害分野の現場での代表と専門職者集団

 (d) 障害を持つ人の組織

 (e) 国内調査委員会」

 さらに、障害者白書には、「また、草の根無償資金協力として、障害者のためのリハビリ施設や職業訓練施設整備などに対し、毎年10件以上の供与を行っており、平成6年度においては、ジョルダン及びグァテマラに対し、障害者のためのバス供与など18件の援助を行った」とある。

 その他、国際協力事業団を通じての研修員受入れ、技術援助、国際厚生事業団による社会福祉関係行政官の研修、日本障害者雇用促進協会による現地セミナーやニーズ調査、職業リハ専門家の研修、国際会議や国際スポーツ会議による障害者間の交流や情報交換となっている。

 基準規則22の4、「政府は国際連合、その専門機関、政府間機関、議会間機関が、世界・地域レベルで、その業務に世界・地域の障害を持つ人の組織を含むことを保障すべきである」

 NGOでは、障害者自身による国際協力も盛んに行われるようになってきている。その可能性に関する調査も行われているようである。新しい取り組みが始まろうとしている。期待したい。

(なるせまさつぐ 日本障害者協議会)

規則22 国際協力

政府は障害を持つ人の機会均等化政策に関する国際協力に積極的に参加する。

1.国際連合・その専門機関・他の政府間機関内で政府は障害政策の開発に参加すべきである。

2.適切である場合には常に、政府は障害に関する側面を基準、情報交換、開発計画等に関する全般的な交渉に導入すべきである。

3.政府が知識と経験の交換を奨励し、支援すべき対象は以下の通りである。

(a)障害問題に関する非政府組織

(b)障害問題に関する研究機関・個人の研究者

(c)障害分野の現場での計画の代表と専門職者集団

(d)障害を持つ人の組織

(e)国内調整委員会

4.政府は国際連合、その専門機関、政府間機関、議会間機関が、世界・地域レベルで、その業務に世界・地域の障害を持つ人の組織を含むことを保障すべきである。


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年3月(第16巻 通巻第176号)26頁~27頁