音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

気になるカタカナ

バリアフリー

木塚 泰弘

 バリアフリー(barrier free)という言葉は、barrier(障壁・障害物)がfree(除去されて存在しない)状態を意味し、道路などが自由に通れる状態を表していました。障害者の問題と関連して用いられるようになったのは、「障害」の概念の変遷と関係があります。

 第二次世界大戦前は、障害を疾病の結果としてのインペアメンツとしてしかとらえられず、本人と家族の責任に任されていました。第二次大戦後、北欧やイギリスの社会民主主義政権などによって、障害をハンディキャップスとしてとらえ、生存権に基づく社会福祉の対象としました。1960年代になるとアメリカの公民権運動の影響のもとで、障害をディスアビリティーズとしてとらえ、平等権を主とする人権確立の対象としました。

 ディスアビリティーズは、生活行動能力の状態を意味し、訓練や教育によって向上する能力と、環境のバリアとの相対関係としてとらえられた概念です。たとえば、訓練によって車いすが操作できても、段差があれば建物にアクセスできません。そこで、自立のためのリハビリテーション訓練と共に、物理的環境や社会的環境のバリアフリーが着目されるようになったのです。

 バリアフリーという言葉が注目されるようになったのは、1974年に国連の建築に関する報告書に「バリアフリー・デザイン」という言葉が用いられてからです。その後、わが国では、建築関係者の間で静かに広がり、公共の建物だけではなく、交通機関、道路、住宅などへの身体障害者や高齢者のためのバリアフリー・デザインへと拡張されました。

 さらに、1990年代になると、障害者や高齢者の社会参加の増大と共に、福祉機器や福祉用具はもとよりのこと、共用品や共用サービスも、バリアフリー・デザインの観点から見直されるようになってきました。

 高齢者も障害者も共に生きる社会の共用品・共用サービスの開発をめざして発足したE&Cプロジェクト(文献1)では、バリアフリーを前面に掲げて活発な活動を続けています。最近アメリカでは、さらに上位の概念として、ユニバーサル・デザイン(万人のためのデザイン)という言葉が、共用品や共用サービスに用いられるようになってきました。

 なお、「障害者プラン」の7つの柱のうちの2つに、物理的環境と社会的環境のバリアフリーが強調されています。

(きづかやすひろ 国立特殊教育総合研究所)

(文献1) 略


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年4月号(第16巻 通巻177号) 37頁