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特集/市町村の福祉のまちづくり

だれもが利用しやすい施設の整備に向けて

神戸市民生局心身障害福祉室

1 神戸市民の福祉をまもる条例

 神戸市では、全ての市民に安定した豊かな生活を保障することを目的として、昭和52年1月に「神戸市民の福祉をまもる条例」を制定しました。

 ここでは、豊かな市民生活を送るうえで、基礎的な要素となる健康、教育、労働、住宅、整備された都市施設を確保するための市民・事業者・行政の役割分担を明らかにしています。

 このうち、都市施設の整備については、不特定または多数の市民が利用する建築物、道路、公園などは、高齢者や障害者をはじめ全ての市民が安全かつ快適に利用できるよう配慮されなければならないとし、整備基準として「神戸市民の福祉をまもる条例に規定する都市施設の整備に関する規則」を定め、これに基づき民生局において建築物の指導・助言を、土木局において公園、道路の福祉整備を行っています。

 特に、上記の規則で定められた都市施設整備を促進し、またその理念を実施していくために助成制度を設けて、既存建築物の改修や鉄道駅舎のエレベーター設置にも努めています。

2 新築・増築建築物に対する指導・助言

 指導・助言の対象となる都市施設は、不特定多数の人が利用する公共公益的施設であり、具体的には官公庁舎、集会所、体育施設、銀行、劇場、駅舎、五百㎡以上の規模を有する病院、物販店舗、食堂、遊戯場、1000㎡以上の宿泊施設等がこれにあたります。

 整備項目は、対象となる施設及び延床面積により異なりますが、主なものとして誘導路・廊下・出入口の有効幅員の確保、段階の手すり・車いす用便房・スロープ・エレベーターの設置、車いす使用者の専用駐車区画の確保、点字ブロックの敷設等があります。

 建築確認申請の手続きと連携することにより、届出の捕捉率を高め、平成8年2月末までに指導・助言を行った建築物は1776件になります。

    昭和
54~63
年度
平成

年度
平成

年度
平成

年度
平成

年度
平成

年度
平成

年度
平成

年度
規則による届出件数(件)
 (昭和54年4月施行)
616 178 168 166 137 130 145 236
(*1)
1776
都市施設整備推進資金融資制度(件)
 (平成元年4月施行)
4 1 2 3 3 2 2
(*2)
17
鉄道駅舎エレベーター設置補助制度(基)
 (平成4年9月施行)
2 3 7 12
(*2)
24
鉄道駅舎エレベーター整備資金融資制度(基)
 (平成6年4月施行)
2 1
(*2)
3

*1:平成7年4月~平成8年2月末までの届出件数,*2:平成7年度の見込み件数

3 既存建築物の改修

 規則施行後の新築・増築の際の指導・助言のほかに、規則施行以前の公益的施設についても、福祉配慮をしていくためのインセンティブの付与をしていく必要があると考えています。このため、平成元年度から低利融資制度(都市施設整備推進資金融資制度)を設け、施設・設備の改善を促しています。

 融資制度の対象となる改修は、エレベーター、エスカレーター、スロープ、車いすトイレの設置や外部出入口周辺の段差解消などです。

 融資の内容は、1施設につき限度額100万円以上1億円以下とし、金利は年3%(中小企業者は2%)を設定しています。

 平成8年2月末までに実施した融資件数は病院、駅舎、物販店舗のエレベーター、エスカレーター、車いすトイレの設置など16件にのぼります。

4 鉄道駅舎へのエレベーター設置

 多くの市民の利用が集中する鉄道駅舎のエレベーターは、車いす使用者等障害者にとって駅舎内における移動の有力な手段です。

 本市は設置を促進するため、「鉄道駅舎エレベーター設置補助」(平成4年9月施行)と「鉄道駅舎エレベーター整備資金融資」(平成6年4月施行)の2つの助成制度を設け、各鉄道事業者に働きかけています。

 「鉄道駅舎エレベーター設置補助」制度は、エレベーター設置にかかる費用の2分の1(1基あたり上限5000万円)を補助するものであり、6年度末までに6駅で12基を助成し、7年度はこの度の震災からの復旧もあり、6駅で12基の助成を予定しています。

 また、「鉄道駅舎エレベーター整備資金融資」制度は、エレベーター設置及び同時に行われる福祉整備にかかる費用(1基につき限度額100万円以上1億円以下)を無利子で融資するもので、6年度は2駅2基の実績があり、7年度は1駅2基の融資を予定しています。

5 道路、公園の整備

 交差点などの歩道は、「歩道及び分離帯段差切下げ基準」(昭和51年2月適用)により段差の切下げを行っています。これまでに全ての幹線道路及び準幹線道路について整備を完了しています。

 また、歩道への点字ブロックの敷設についても、「点字ブロック敷設基準」(昭和51年2月適用)により整備を進めています。交差点、段差、バス停には、注意を促す警告ブロックを、また、多くの市民が利用する公共施設には、最寄りの駅舎やバス停から誘導ブロックを敷設しています。

 公園については、「神戸市公園施設等設置基準」(昭和49年9月適用)によりスロープの設置、園路の有効幅員の確保、階段への手すり設置、点字ブロックの敷設などを行っています。

 阪神・淡路大震災により甚大な被害を受けましたが、道路については、平成9年度末を目処に復旧を進め、また公園については、仮設住宅建設または区画整理事業が計画されている公園を除き、平成七年度を目処に復旧を進めています。

6 整備基準の改正

 平成6年9月に「高齢者・身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(ハートビル法)が施行されたことに伴い、ハートビル法の基礎的基準を本市の施設整備の規則へ反映させることにより基準の一元化と充実を図りました。

 主な改正内容は、①整備対象の建築物として新たに五百㎡以上の公衆浴場、クリーニング店、理容店などのサービス業を営む店舗を加えたこと及び、②2000㎡以上の建物(学校、銀行等を除く)へのエレベーターの設置義務化、③敷地内通路の有効幅員の拡大、④傾斜路・点字ブロックに関する規定の新設、等です。

 この改正により、これまで以上に快適で円滑な施設の整備がなされていくものと期待しています。

7 震災復興を契機としたまちづくり

 このたびの阪神・淡路大震災により、市内の多くの建築物や鉄道駅舎、道路などの都市施設は甚大な被害を受けました。しかし、震災復興期においては、被災したこれら多数の都市施設が一斉に更新されます。この機を逸することなく、改修・新築に際し、規則による指導・助言を通じて、福祉のまちづくりを積極的に進めていかなければならないと考えています。実際、届出による指導・助言の件数は、例年150件程度ですが、平成7年度は8年2月末までに236件にのぼっています。

 また、被災した駅舎を中心に「鉄道駅舎エレベーター設置補助」制度によりエレベーター整備を進めていますが、前述したように平成7年度のエレベーター設置は平成四年度から6年度の3年間の設置数と同数の12基行う予定です。

 建築物や都市構造物は一度建てられると、改修等による障害者・高齢者に配慮された仕様・構造の変更はなかなか実施されません。このため、現在急ピッチで進められている震災復興での都市施設整備の機会を捉えて、障害者及び高齢者をはじめとする全ての市民が安全で快適に利用できるまちづくりに取り組んでいます。

8 今後の取り組み

 障害者、高齢者などハンディキャップを負う人々がそのあるがままの姿で他の人々と同等の権利を享受できるようにするというノーマライゼーションの考え方は、近年広く行政の政策理念の1つとして受入れられています。

 この観点から見れば、建築物、道路、公園、駅舎などのいわゆるハード面の整備だけではこの理念が実現されるものではなく、今後、障害者や高齢者が積極的に、社会参加できるようにするためには、例えば、「ガイドヘルパー派遣」や「手話奉仕員」などのソフト面の事業の充実も図っていかなければなりません。

 一方、まちで困っている障害者や高齢者を見かけたときに、一声かけて必要に応じて介助するような思いやりや点字ブロックの上に自転車を放置しないといったマナーの向上が不可欠です。そのため、様々な機会・方法を捉えて、市民の理解を深めていく啓発事業をこれまで以上に推進していく必要があります。

 今後、ハード、ソフト両面からの取り組みを進めることにより、すべての市民が安全かつ快適に過ごすことができるまちづくりに向け努力していきます。

 なお、この企画は、平成8年3月に締め切られるものであり、投稿者は神戸市民生局心身障害者福祉室としました。平成8年4月には組織の改正が行われ、この企画が掲載される平成8年5月には「神戸市保健福祉局障害福祉部」となっている予定です。


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年5月号(第16巻 通巻178号) 17頁~19頁