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特集/市町村の福祉のまちづくり

まちづくりに期待する

障害当事者の意見は不可欠(新宿区)

佐藤剛一

 真に「障害者のためのまちづくり」を行うなら、そこに障害当事者の意見は不可欠である、と私たち「新宿身障明るい街づくりの会」(以下、街づくりの会)は考えます。街づくりの会は昭和52年の6月に発足しました。発足当時より車いす利用者が中心となり、街の不便な箇所を点検し、改善していく運動に取り組んできました。歩道と車道との段差の解消や信号機の設置、電柱の移設による歩道の拡幅など、点検活動に基づく要望を関係機関に対して要望し、実現してきました。

 さて、新宿区では一昨年より福祉の街づくりモデル地区事業に取り組み、対象地区内では「人にやさしい街づくり」をスローガンにした改善が進められています。街づくりの会はこの事業をより障害者にとって実のあるものにしていくために、行政との対話、現地調査への立合などを積極的に行ってきました。その結果、「福祉のまちづくりモデル地区事業推進懇談会」が結成され、私達障害者団体と行政が協力して事業を推進していく場となっています。今年1月には整備計画案が完成しました。これは地区内の公共的建築物、道路等、公園、公共交通機関の四項目にわたって現況調査を行い、これに基づいて以下の5つの方針を打ち出しているものです。

① 進展する高齢化社会に対応し、高齢者や障害者などの社会参加の増大を図るため、安全で快適な都市生活がおくれるよう、都市基盤施設や公共的施設の福祉的環境整備を推進する。

② 福祉のまちづくりの理念に則り、行政、民間、区民の協調と役割分担に基づいて、福祉のまちづくり整備を推進する。

③ 安心して暮らすことができ、一生住み続けたくなるような魅力的なまちの実現を目指し、快適でゆとりと潤いのある福祉のまちづくりを推進する。

④ 福祉関連施設の利用が、よりスムーズに安全に行えるよう、特に鉄道駅や施設相互のネットワーク機能の向上に向けて、まちづくりを進める。

⑤ ハード面だけではカバーしきれない、地区全体の福祉的環境整備水準を向上させていくため、福祉サービスの提供など、ソフト面での支援方策を充実させる。

 この方針の中で特に注目すべきは⑤においてソフト面の充実を明言していることではないでしょうか。さらにこの計画案では、障害ケースごとに必要なソフト面の支援を具体的に列挙しています。例えば、視覚障害者に対しては「施設等のアナウンスを単純かつ的確なものとする」「誘導ブロック上に物をおかない」など。車いす障害者に対しては「ボランティアセンター等で車いす体験講習を行う」「車いすトイレをいつも利用できるようにしておく」など。ここまで具体的な内容に立ち入った計画は画期的であると評価しています。今後はさらにかみくだいた表現で一般区民向けに啓発パンフレットを作成していくとのことで、おおいに期待しています。

(さとうこういち 新宿身障明るい街づくりの会)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年5月号(第16巻 通巻178号) 22頁