音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

特集/市町村の福祉のまちづくり

まちづくりに期待する

大震災から立ちあがる(神戸市)

新阜義弘

 私は、視覚障害者の立場から意見を述べてみたいと思います。また、阪神・淡路大震災の被災者としてもいくつかの提案をしたいと考えます。

 神戸市は大震災により、多くの建物や施設が破壊され、街は廃墟となってしまいました。しかし、単にそれが決定的なダメージを与えられたということではありません。「災い転じて福となす」という精神で、今後のまちづくりを考えたいと思います。いくつかの地方自治体では先行して「まちづくり条例」を施行しています。それらは、既設の公共の建物にスロープや点字ブロックの施設、誘導鈴や音響信号機を設置することなのですが、神戸市では、新しい街の中での公共的な建物に、意識したそれぞれの設備を十分に考えて設置できると思うのです。

 今後の神戸市のまちづくりの基本構想の中では、防災上の配慮が大きくなってきます。広い道路や区画整理されたまち並み、埋設された電柱や美しい外観を備えたビルディング等だけでは、点字ブロックや音響信号機等の設備がないと白杖で歩く私にはとても恐ろしくて歩けません。また、様々な場所で試験的に行われているエレクトロニクス化された誘導システムや、コンピュータによる音声化された誘導システム等も、多くの新しい場所で実践的に使っていくことが、新しい取り組みとなるのではないでしょうか。

 視覚障害者にとっての職業の問題、特に「三療」という鍼・灸・マッサージの職場がなくなったり、大きく場所が変更されたのは生活不安の大きな要因です。ですから私は小規模作業所と同様に、交通の便がよい所に盲人ホーム(治療院)を重点的に設置し、障害者関係施設や用具の販売、点字図書や拡大本が置いてある福祉の店が、コンビニエンスストア(少し無理があるが)にいくつか開店してくれないかと思っています。

 神戸市や兵庫県下の市町村が、それぞれの復興にかける情熱は凄まじいと思う点もあります。それは単に産業復興の面だけでなく、震災時のボランティア活動の盛り上がりによる「人の心はまだまだ捨てたものではない」という印象を誰もが強く持っているからだと思います。ですから、私達は新しくボランティアのネットワークづくりに取り組む必要があると思います。それは若い人から高齢者、晴眼者や視覚障害者も参加したまちづくりのための復興ボランティアサークルです。この会はまちづくりへの提言をまとめたり、実際に行動したりします。こうした会を地域で組織化していきます(解散はせずに援助活動等、変容していってもいいのです)。とにかく、こうしたグループづくりが私達のまちづくりの基本でありたいと思います。

 私が期待するまちづくりには、社会的な弱者といわれる人達の意見が決して無駄になっていないことが大切だと考えるのです。

(におかよしひろ 千山荘)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年5月号(第16巻 通巻178号) 23頁