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特集/市町村の福祉のまちづくり

まちづくりに期待する

聴覚障害者が住みやすい街(府中市)

峰谷 正

 昭和56年の国際障害者年を契機として、長期的計画にわたる障害者施策で「障害者基本法」の公布、「障害者プラン」の発表等の法的な枠組みが順次整備されてきている。東京都では平成7年4月から、「東京都福祉のまちづくり条例」が施行され、今年9月からは同条例施行規則に基づく整備基準が施行されようとしている。それにより各自治体は「福祉のまちづくり」に関する施策を施行、または取り組みをはじめているところであろう。

 私達の住み慣れた地域社会で豊かな生活を送れるようにするためには、障害者、高齢者、子供などのすべての人々にとって、福祉的な配慮の行き届いた環境を形成していかなければならない。その意味で「福祉のまちづくり」を条例化していくことは画期的なことである。

 こうした中で、私の住む府中市は平成8年1月9日に条例の策定に関わる検討ということで「府中市福祉のまちづくり検討協議会」が設けられた。そして聴覚障害者の私が委員に任命された。これを機に「聴覚障害者の住みやすいまち」を施策に反映できるように努めている。

 先ず、第1に教育やボランティア活動などの福祉サービスに対する「ソフト面」である。聴覚障害者は外観上障害が見えないが故に、情報やコミュニケーションに制限を受ける、ということをみんなにわかっていただく必要がある。聴覚障害者は外部からの色々な新情報を獲得しにくいという理由で、自分からの主張をするのが極めて弱くなり伝達が遅れがちになる。この状況の下で、すべての人が手話に対しての認識を深め、聴覚障害者が自由に社会参加ができるようになることが大切であろう。

 第2には建築物や道路整備などの生活環境に対する「ハード面」である。各自治体におけるまちづくり整備指針の中に聴覚障害者対応に配慮されている部分があまりなく、十分なものではないということである。もしも、災害(火災、地震等)が起きたら公共施設、住宅等の情報の獲得をどうすればよいのかという面、および日常生活においての窓口呼び出し、ホームアナウンス、有線放送等の情報が入手しにくいという不安がいつもつきまとい、心理的負担が重くなっているはずである。この負担を除くために災害信号灯、誘導表示、文字電光表示等の視覚情報機器、そして振動伝達機器の活用を積極的に導入する必要がある。

 いずれにしても、「福祉のまちづくり」というと、聴覚障害者に対しての整備、改善という存在が薄くなりがちである。条例の策定にあたって聴覚障害者自身が目覚め、自らの要求を声にするべきであり、それとともに聴覚障害者自身が実感できるような「聴覚障害者の住みやすいまち」を実現することを期待したい。

(はちやただし 府中市聴覚障害者協会)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年5月号(第16巻 通巻178号) 24頁