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特集/市町村障害者計画

「障害者計画」策定は、11%台

-市区町村長アンケート報告-

板山賢治

障害者施策と市町村

 平成5年12月の「障害者基本法」改正点の1つは、国に「障害者基本計画」の策定・公表を義務づけるとともに、都道府県及び市町村に「障害者計画」策定の努力義務を課したことである。

 市町村が、障害者施策において重要な責任を有することは、地方自治法をはじめ福祉関係各法に明示されているが、市町村当局の取り組みは、必ずしも関係者の期待にこたえるとはいい難い状況にあるようだ。

 特に、平成2年6月の「福祉関係八法」の改正により、老人、障害者施策の権限移譲と「老人保健福祉計画」の策定の義務化以来、市町村の障害者分野への取り組みの遅れが目を惹き、批判の対象となりつつあったのである。平成7年版の「障害者白書」によれば、市町村における障害者施策に関する長期計画の策定状況(平成7年5月末)は、「策定済」299(市町村の13.4%)「策定予定」190(8.5%)、「検討中」1739(78.1%)という危機的状況にあり、全市町村が策定したといわれる「高齢者保健福祉計画」との格差が際立ってきた。

 そして、相当の町村において、障害者福祉に関する担当窓口や担当者の配置がないという批判や不満が噴き出しつつあるのである。

「新・障害者の十年推進会議」

 平成5年3月、政府は、「障害者対策に関する新長期計画」を策定し、「アジア・太平洋障害者の十年」をも視野に入れつつ、21世紀にむけての障害者施策の推進に取り組みを始めた。「新・障害者の十年推進会議」は、これを民間の立場から推進しようとして日本身体障害者団体連合会(日身連)、日本障害者協議会(JD)、全国社会福祉協議会(全社協)、日本障害者リハビリテーション協会(リハ協)の四団体の手で組織された。

 主に、

①障害者施策に関する情報交換

②障害分野の国際的動向

③障害団体相互の交流・提携

④政策提言、陳情活動

等を目的としているが、障害者福祉法の制定、障害者プランの実現を機に、その推進運動に重点を置いている。

 なお、本推進会議の会長は、山下リハ協会長、副会長は、村谷日身連会長であり、事務局は、リハ協である。

「市区町村アンケート調査」

 このアンケート調査のねらいは、

①「市町村障害者計画」の策定状況を把握すること

②市区町村の障害者施策への取り組みの実態を明らかにすること

③「市区町村長」に、障害者基本法、障害者プラン等への認識を喚起すること

④地元障害者団体にアンケート調査の主旨を連絡、連帯して「市町村障害者計画づくり」推進のエネルギーとなってもらうことであった。

 いわば、統計数値のための調査というよりも、このアンケートを通じて市区町村長に障害者問題への取り組みを強めてほしいという願いをもつソーシャルアクションといえよう。

2000市区町村から回答

(平成7年12月末現在を調査)

 全国3255市区町村のうち、回答されたのは、2043市区町村、回答率は62.8%であった。回答率が70%以上の都府県は、東京、静岡、富山、愛知、埼玉、岡山、神奈川、大阪、新潟、千葉の10県である。回答のなかった理由は不明だが、民間団体のアンケートにご協力いただいた各位に心から感謝いたしたい。

 なお、市区町村長ご本人の回答も相当数あった。

(1)「障害者計画」策定は11%台

 回答のあった市区町村の「障害者計画」策定状況は、次のとおりである(図2)。

 ・策定済  127(6.2%)

 ・策定中  103(5.1%)

 〈小計〉  230(11.3三%)

 ・策定予定 723(35.6%)

 ・検討中  921(45.3%)

 ・予定なし 159(7.8%)

 「策定済」「策定中」を合わせると11.3%となるが、問題は「予定なし」である。一部には「すでに地方自治法にもとづく基本計画、福祉計画に含めてあり、改めて障害者計画の策定はしない」というところもあるようだが、本音として障害者計画にまで手がまわらないというところもあり、回答のなかった市区町村の実情が気になるところである。

(2)「地方障害者施策推進協議会」の設置(図3)

 ・設置済  76(3.8%)

 ・設置予定 164(8.1%)

 ・検討中  1299(64.3%)

 ・予定なし 480(23.8%)

 市町村障害者施策推進協議会の設置は、障害者の政策形成過程への参加の場として、基本法改正のポイントの1つであったが、この協議会に「障害者」ないし「家族」が参加している市区町村は、173(8.5%)と少数であり、今後のテーマといえる。

(3)少ない「相談窓口」(図4)

 ・「身障福祉の窓口」あり

110(15.3%)

 ・「精神薄弱福祉の窓口」あり

285(14.0%)

 ・「精神障害福祉の窓口」あり

181(8.9%)

 障害者福祉は従来、福祉事務所、身体障害者及び精神薄弱者更生相談所あるいは、保健所、精神保健センター等を中心に運営されていたこともあり、特に町村段階での窓口体制の不備が指摘されていたが、実態はまさにそのとおりであった。

第2回アンケート調査を!!

 第1回アンケートは、障害者基本法の全面施行(平成6年6月)、「市町村の障害者計画策定に関する指針」(平成7年5月)を受けて、平成7年12月末日現在で実施したものである。昨年12月に策定された政府の「障害者プラン」は、まさに画期的なものといえるが、肝心な地方自治体が、このような状況に推移するならば、それは「絵に描いたモチ」となろう。

 「新・障害者の十年推進会議」に結集したわれわれは、第2回アンケート調査の実施を期したいと考えているので、関係各方面のご理解、ご協力をお願いしたい。

 

障害者計画策定に係わる市区町村長アンケート調査結果(抜粋)

 調査概要として、調査項目のうち以下の5点について示す

1.回答件数(回答率)(図1)

 2043件(全国3255市区町村のうち62.8%)

2.市町村障害者計画の策定状況(図2)

(1)策定済

 127件(当設問に回答した2033件のうち、6.2%)

(2)策定中

 103件(当設問に回答した2033件のうち、5.1%)

3.地方障害者施策推進協議会の設置状況(図3)

(1)設置済

 76件(当設問に回答した2019件のうち、3.8%)

(2)設置予定

 164件(当設問に回答した2019件のうち、8.1%)

(3)上記(1)、(2)および「検討中(1299件)」のうち、「障害をもつ委員を含む」件数 99件

4.障害者を対象とする専門の相談窓口の設置状況(図4)

(1)身体障害者担当相談窓口がある

 310件(当設問に回答した2029件のうち、15.3%)

(2)精神薄弱者担当相談窓口がある

 285件(当設問に回答した2029件のうち、14.0%)

(3)精神障害者担当相談窓口がある

 181件(当設問に回答した2029件のうち、8.9%)

5.障害者施策を展開するにあたり、自治体の長として、最も重要と考える項目(図5)

 あらかじめ「啓発広報」「教育・育成」などの7つの分類から成る31項目から、該当する項目を5つ選ぶ方法をとった。その結果、「公共建築物や道路等の障害者に対する配慮」が最も多く46.5%であった。

図1 市区町村別回答件数

図1 市区町村別回答件数

図2 市区町村障害者計画の策定状況

図2 市区町村障害者計画の策定状況

図3 地方障害者施策推進協議会の設置状況

図3 地方障害者施策推進協議会の設置状況

図4 専門の相談窓口設置状況

図4 専門の相談窓口設置状況

図5 障害者施策を展開するうえで重要と考える項目(回答の多い順)

図5 障害者施策を展開するうえで重要と考える項目(回答の多い順)

(いたやまけんじ 新・障害者の十年推進会議企画委員、本誌編集委員)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年8月号(第16巻 通巻181号) 8頁~11頁