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特集/市町村障害者計画

京都市でつくられた「国際障害者年第2次京都市行動計画」について

高木 進

1 地域の特性、実態

 京都市の地域特性については、説明するまでもないが、福祉の視点からみれば、寺院と大学の多いことに見られるごとく、伝統と先進性の調和にもとめられる。

 伝統はさておき、先進性については、福祉施策や施設で全国に先駆けて整備あるいは実施されたものは少なくない。

 例えば、福祉のまちづくりなど、昭和48年に「身体障害者福祉モデル都市」として、厚生省から全国に先駆けて指定を受けて以降、昭和51年には「福祉のまちづくりのための建築物環境整備要綱」を制定、法的強制力をもたない要綱での指導ながら、市民の協力を得て着実な成果をあげてきている(平成7年4月からは、対象を建築物から道路、公園、駐車場、公共交通機関にまで広げ、名称も「人にやさしいまちづくり要綱」に改め、内容を充実させた)。

 また、町衆の伝統を受け継いだ市民の自治意識も強く、今は社会福祉協議会に発展的に吸収されているが、昭和40年代末から始められた「福祉の風土づくり運動」などは、広範な各界各層による市民ぐるみ運動の代表的なものである。

 また、保育所の設置率の高さもさることながら、そこでの障害児保育の積極的な取り組みは、児童の「障害」に対する自然な理解を進め、将来の社会のノーマライゼーションの実現に大いに寄与しているものと考えられる。

2 障害のある市民に対する施策の実態とニーズの特色

 京都市における障害のある市民の特性は、市民の高齢化を反映し、障害のある市民の高齢化が進んでいることでもあり、平成3年の実態調査でも、障害のある市民の高齢化、それに伴う、健康管理と医療施策のきめ細かな配慮の必要性が指摘されている。

 また、持ち家比率は高いが、住みづらい箇所の改造希望が強く、早急な対策が求められている。

 現在のニーズは先進的に整備してきた施設の老朽化のほか、保護者の高齢化に伴う療護施設や重症心身障害者施設など入所施設の整備、また、養護学校高等部卒業生の進路の確保などが主なものである。

 特に、最近は、重度の障害があっても地域で生活できる条件整備の要望も高まってきており、障害のある市民一人ひとりが主体的に施策を選択し、自らの人生を主体的に生きていける、新たな視点での障害福祉体系が求められている。

3 計画の策定をどのように進めたのか

 昭和58年1月に推進期間を10か年とし、5つの生活分野にかかる施策目標を掲げた「国際障害者年京都市行動計画」を策定し、障害のある市民の社会への「完全参加と平等」に向けて、各分野における施策の推進に努めてきた。その後、平成3年11月、「健康」を尺度に、「人」を主役とする、これからの京都のまちづくりの指針となる「京都市健康都市構想」が策定された。この構想は、生きていることの尊さと、人権の重さへの認識を基本とする「健康都市・京都」の実現を目指している。

 平成3年度末をもって従前の行動計画の10年が経過したことに伴い、それまでの実績と健康都市構想を踏まえながら社会の諸情勢に対応する新たな計画を策定することとした。

 第2次行動計画の策定にあたっては、京都市社会福祉審議会からの意見具申、また、5年ごとに本市独自で実施している「京都市心身障害者実態調査」、障害ある市民の団体や施設に対する「現行の制度・施策に対する意見と今後実施してほしい制度・施策」についてのアンケート調査を踏まえ、障害のある人もない人も共に暮らせるノーマライゼーションのまち・京都を築くために「ノーマライゼーションを進めるための総合的福祉施策のあり方」として策定したものである。

4 計画の内容と特色

(1)計画の性格

① ノーマライゼーションの理念を実現するための推進目標を示したものである。

② 障害のある市民の福祉を推進するにあたり、京都市健康都市構想の内容を具体化する計画であり、市政の総合的な指針である新京都市基本計画の柱となる計画である。

③ 行政はもとより企業、民間団体等、すべての市民がそれぞれの立場においてこれを共有の計画とし、実践するものである。

(2)計画の期間

 平成4年度から平成13年度までの10年間とする。

(3)施策目標と事業計画数

① 保健・医療の充実 項目57

 健康都市構想の理念を重要な視点としつつ「発生予防」から社会的自立を図るための「リハビリテーション医学」に至る一貫性のある施策の推進に努める。

 また、精神に障害のある市民や難病のある市民に対する保健・医療対策や福祉サービスについても充実する。

(新規4 充実15 継続38)

② 教育の充実 項目29

 障害のある児童・生徒一人ひとりの能力を可能な限り伸ばし、社会的自立の達成を図るため、その障害の種別や程度あるいは適正に応じた適切な教育を生涯にわたって受けられるような環境が用意される必要がある。

 また、乳幼児の段階での早期療育に続く各時期に相応した療育・教育・生活・指導・職業訓練などが一貫したつながりの中で保障され、かつ医療・福祉・労働の分野との連携が確保される必要がある。

(新規1 充実15 継続13)

③ 雇用・就労の充実 項目15

 労働の権利は憲法に保障された基本的人権の1つであり、「働く」ということは、障害の有無にかかわらず人間にとっての基本的権利であり、崇高な営みである。

 働く意思と能力のあるすべての障害のある市民に対して、その適性と能力に応じた「働く場」が確保されなければならない。

(新規2 充実7 継続6)

④ 所得保障の充実 項目8

 障害のある市民の所得保障については、人間としての尊厳を保ちつつ、それぞれのライフサイクルに対応し、自立した社会生活を営むのに十分な水準を確保する必要がある。

(新規1 充実6 継続1)

⑤ 福祉サービスの充実 項目87

 障害のある市民に対する福祉サービスは、障害のある市民の基本的人権を守り、自立と社会参加を促進するものでなければならない。

(新規17 充実51 継続19)

⑥ 生活環境の整備 項目24

 「障害物が障害者をつくる」という言葉のとおり、社会参加を願う障害のある市民にとって、生活環境の改善は不可欠である。障害のある市民が社会の一員として、自立した生活が営める生活環境の整備を図っていかなければならない。

(新規4 充実14 継続6)

⑦ 市民行動計画 項目7

 ノーマライゼーションの理念は、子どもや高齢者、そして病気や障害のある市民が共存して福祉的な生活を営むことのできる社会の実現である。

 障害のある市民や高齢者及びその家族が抱える問題を、だれもが自分のこととして認識し、行動する市民となる必要がある。

(新規3 充実4 継続0)

5 今後どう計画を展開していくのか

 現在、「障害者基本法」に基づき、平成7年に設置した「京都市障害者施策推進協議会」において、「国際障害者年第2次京都市行動計画」の定点評価と必要な見直しを行っているところであり、計画の中間年にあたる平成8年度においては、「京都市障害者実態調査」を実施し、障害のある市民の実態とニーズの変化を的確に把握し、障害者施策の基礎資料を得るとともに、国の障害者プランを踏まえ、計画の見直しを図っていく。

(たかぎすすむ 京都市民生局障害福祉課)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者福祉」
1996年8月号(第16巻 通巻181号)17頁~19頁