特集/市町村障害者計画
福山市障害者保健福祉総合計画
-地域の人たちと共に暮らせるまちをめざして-
梅田真治
はじめに
本市は、国際障害者年(1981年)のテーマであった「完全参加と平等」という目標の実現のため、各種障害者施策の充実に努めてきました。
しかし、障害の重度化・重複化や障害者の高齢化が進行するなかで、障害者が地域社会で暮らしていくためには、市民啓発をはじめ療育、教育、雇用、まちづくり、生活等、さまざまな分野の施策を総合的かつ計画的に推進する必要があるとの声が高まり、「障害をもつ人の人権が尊重され、健やかで、自立し、地域の人たちと共に暮らせるまち福山をめざして」を基本理念とする福山市障害者保健福祉総合計画を策定しました。
1 総合計画の策定体制
この計画の策定体制として、行政内部の関係部・課長(55名)からなる「高齢者・障害者保健福祉総合計画推進委員会」を設置するとともに、学識経験者や各種団体等で構成する「高齢者・障害者保健福祉総合計画策定委員会」(委員数12名)及び障害者関連施策の実務者や障害者関係団体等で構成する「障害者保健福祉総合計画懇話会」(委員数32名)を設置し、広く市民の意見を計画に反映させる場としました。
2 障害者実態調査
この計画の策定にあたり、障害者の生活実態を把握する必要性から、1993年9月に障害者実態調査を実施しました〔身体障害児(者)1259人、知的障害児(者758人にアンケート調査を実施〕。
その結果をみると、重度障害の割合が高く(身体障害者は、1~3級が56.8%、身体障害児は、1~3級が83.2%、知的障害者は、重度判定が40.8%、知的障害児は、重度判定が48.2%)、また、障害者の高齢化もみられます(身体障害者では、60~80歳未満が49.6%)。
日常生活での介護の実態をみると、身体障害者、知的障害者ともに約30%、身体障害児、知的障害児ともに約55%が何らかの介護を必要としています。また、福祉施策への要望をみると、「所得保障を図ってほしい」「社会が障害者に理解と関心をもってほしい」「医療制度の拡充を図ってほしい」などの要望が高い割合を占めていました。
このように障害者実態調査結果をみると、解決すべき課題がたくさんあることが分かりました。
3 総合計画の構成と期間
本計画は、障害者実態調査結果等を踏まえ、障害者施策の基本的考え方や今後の方向性を総合的・体系的に示す「基本構想」(1994年3月策定)、及び「基本構想」で示した施策の方向性を具現化するための個別事業等の展開方向を示す「基本計画」(1995年3月策定)で構成しています。
また、本計画は、総合的計画として療育、教育、雇用、まちづくり、生活等、障害者の生活全般にわたる分野はもとより、すべての市民が取り組むべき内容も含んでいます。
4 総合計画の期間
この計画の期間は、第3次福山市総合計画の目標年次(2005年度)との整合性を確保するため、1994年度から2005年度までの期間としました。
5 総合計画策定の視点
この計画を策定した視点は、次のとおりです。
・障害者の主体性・自立性の確立
・ライフステージに対応する施策体系の確立
・在宅福祉の充実
・市民参加によるノーマライゼーションの実現
・高齢者保健福祉施設との連携
6 施策体系
総合計画の施策体系の概要は、図のとおりです。
図 障害者保健福祉総合計画の施策体系
現在、この計画に位置づけた新たな事業として、「(仮称)総合福祉センター」の整備に向けた基本構想の策定、各種障害者施策を分かりやすく紹介する「障害のある人の福祉のしおり」の作成、障害者の社会参加促進のため「(仮称)福祉ガイドマップ」などに取り組んでいるところです。
7 計画推進に向けて
本計画の推進にあたっては、全庁的な取り組みを必要としており、行政内部で組織する「福山市高齢者・障害者保健福祉推進委員会」を活用し、障害者施策の総合的かつ効果的な推進を図るとともに、計画の進捗状況等のフォローアップを行うことにしています。
(うめだしんじ 福山市民生福祉部総合福祉対策課)
(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年8月号(第16巻 通巻181号) 19頁~21頁