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特集/市町村障害者計画

東京都における区市町村障害者計画の策定支援について

岡部一邦

 障害者基本法の施行により、市町村にも障害者計画策定の努力義務が求められることとなった。

1 策定済みは37区市町村

 本年3月に実施した調査によれば、平成8年4月末現在、都内63区市町村のうち、すでに障害者計画を策定済であるとしている自治体は37区市町村で上っており(このうち、現在、計画の改定作業を進めている自治体は8区市)、新たに障害者計画の策定に取り組んでいる自治体は7区市である。

 このように、障害者計画を策定している区市町村の数は、全国的に見ても、かなり高い割合を示していると言えよう。このことは、東京都が先駆的に取り組んできた「東京都地域福祉推進計画」の策定(平成3年1月)と、これに基づいて都が「区市町村地域福祉計画」の策定を誘導してきたことに起因する。

 「東京都地域福祉推進計画」は、21世紀に向けた社会福祉の基本的方向は「地域福祉」であり、今後は、だれもが、身近なところで、必要なときに、必要とするサービスを利用できるよう、区市町村が主体となって地域福祉を推進する必要があるとして、その基盤整備のために都が取り組むべき重点事業の具体的目標を示したものである。

2 「地域福祉計画」策定経費の助成

 また、区市町村も、地域住民の多様なニーズを的確に把握し、保健、医療、住宅、まちづくりなどの関係施策を含め、高齢者、障害者、子ども等が地域で生活していくために必要な施策を盛り込んだ総合的計画として「区市町村地域福祉計画」を策定し、サービスや施設の整備目標を定める必要があるとして、区市町村が「地域福祉計画」を策定する場合に、都はその策定経費の一部を助成することとした。

 この助成事業は、平成2年度から5年度にかけて実施され、その結果、59の自治体(当時は64自治体。他の5自治体は「老人保健福祉計画」として策定)で「区市町村地域福祉計画」が策定された。

 しかしながら、これらの59の「地域福祉計画」を子細に見てみると、障害者施策にかかる計画は、高齢者施策に比べ、整備目標に具体性と計画性が乏しいものも見受けられる。

 これは、都が、「地域福祉計画」を、当時策定が急がれていた「市町村老人保健福祉計画」として位置づけ、サービスの整備目標基準を示すとともに、助成を行って計画策定を促進してきたことによるものである。

 一方、障害者施策に係る計画は、具体的な整備目標を設定して、先駆的に取り組んでいる区市町村も見受けられるが、障害者計画の策定マニュアルが示されていなかったこともあって、計画上「促進」や「充実」との表現に止まっている区市町村も多い。すべての区市町村が、主体的に、具体的施策目標を盛り込んだ障害者計画を策定するには、なお一層の支援・誘導策が必要であると考える。

3 ニーズ別総合計画の策定

 平成7年5月に、国の障害者対策推進本部が作成した「市町村障害者計画策定指針」により、計画策定の手順や計画に盛り込むべき事項・施策目標などのメニューが示された。

 都は、この「指針」の内容について、区市町村の障害者福祉主管部課長の会議において説明し、都がこれまで、策定を誘導してきた「社会福祉計画」を「指針」に沿って見直すよう依頼した。都としては、「指針」で望ましいとしている単独計画の策定に限定せずに、「区市町村地域福祉計画」の基本的視点である、サービスの対象別ではなく、ニーズ別の総合計画の策定を、引き続き、進めていきたいと考えている。

 また、「指針」では、区市町村の障害者計画は都道府県の計画との整合性を図る必要があるとして、都と区市町村の情報交換や協議の場を設けて、区市町村単独で対応できないサービスの整備などについて、それぞれの役割分担を明らかにすることを求めている。

4 「ノーマライゼーション推進東京プラン」

 都は、平成4年3月に、福祉、保健、医療、教育、就労、住宅、まちづくりなどの関連分野にわたる312の事業を計画化した「ノーマライゼーション推進東京プラン東京都障害者福祉行動計画」を策定し、区市町村や関係団体等と連携しながら、障害者施策の計画的な推進に努めている。

 このプランは、平成3年度から12年度までの10年を計画期間としており、本年度から後期の5年がスタートした。

 これを契機に、21世紀に向けた障害者施策のあり方を展望するため、昨年9月に、東京都障害者施策推進協議会に調査審議を依頼し、去る5月30日に「地域における障害者の自立生活支援システムの構築とその基盤整備のあり方について」提言をいただいた。

 この提言では、どんなに重い障害をもつ人でも、地域の中で主体的に生活し続けるために必要な具体的方策を示すとともに、「地域福祉の推進」の視点に立って、都と区市町村、そして障害者団体をはじめとする住民の役割分担を明らかにしている。

 都は、この提言を踏まえ、民間団体が供給するサービスを含めて、都と区市町村の協働によりサービス資源を重層的に整備していくために、都の「ノーマライゼーション推進東京プラン」に様々な誘導・支援策を折り込むことで、区市町村の障害者計画の策定や改定に寄与していきたいと考えている。

 さらには、昨年12月、国が策定した「障害者プラン」においては、本プランが都道府県と市町村の障害者計画に適切に反映されるよう計画策定支援を行うとともに、本プランに対応した施策に主体的に取り組む地方公共団体を積極的に支援するとして、都道府県と区市町村の役割を高めようとしている。

 そのためにも、都は、先導的な政策立案機能を発揮して、「ノーマライゼーション推進東京プラン」に21世紀の障害者施策のグランドデザインを描き、区市町村の施策展開を支援していきたいと考える。

(おかべかずくに・東京都福祉局障害者福祉部、本誌編集委員)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年8月号(第16巻 通巻181号) 24頁~25頁