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特集/市町村障害者計画

「市町村障害者計画」へのアプローチ

藤田博久

1 経過

 福岡県社会福祉協議会では、「市町村障害者計画」へアプローチしていくため、現在、県域での障害者団体の組織化に取り組んでいます。県域での障害者団体の組織化という課題は、1992年10月、全国一斉に展開された「市町村網の目キャラバン」の折に本会が組織した実行委員会(障害者団体・障害者施設協議会・民生委員協議会・社協の14団体)から初めて提起されました。福祉のまちづくり条例の制定、無認可共同作業所への支援強化、福岡県心身障害者対策協議会の活性化といった県レベルの課題は確認されてはいましたが、この段階での必要性はそれほど具体的なものではなく、〝せっかくつながりができたのだから〟といった思い入れが先行したものでした。

 1992年以降、年1回「ふれあいのつどい」という名称で、障害者問題をめぐる重大な政策動向(障害者基本法・障害者プラン)をテーマとしたシンポジウム等を開催してきましたが、障害者基本法の中で市町村障害者計画の策定が明定され、付帯決議で地方障害者施策推進協議会への障害者と障害者福祉に従事する者の参加が規定されたこと、並びに、障害者の範囲が身体障害者、精神薄弱者だけではなく、精神障害者、てんかん・自閉症を有する者、難病に起因する身体又は精神上の障害を有する者を含めたものとして規定されたことが、それほど具体的でなかった県域の障害者団体の組織化という課題に明確な必要性と方向性を与えたと考えています。このような経過の延長線上に現在の取り組みがあります。

2 社協の役割

 1995五年度「ふれあいのつどい」の開催に合わせて「市町村障害者計画関連状況調査」を行い、障害者施策推進協議会の設置、障害者計画策定状況、障害者関連調査の実施、計画策定の壁や隘路について、市町村の個表を中心とした報告書を作成し提示しました。後日、「ふれあいのつどい」の講演録『市町村障害者計画策定に向けての課題と方策~障害者プランを基調に、今私たちに求められているもの~』(日本障害者協議会企画委員長・共同作業所全国連絡会常務理事 藤井克徳氏)をメインとして前述の報告書を参考資料とした冊子を作成しましたが、これが一部の人の目にとまり今回の筆耕依頼にも結びついたようです。

 しかし、社協の役割という視点からみれば、何か特別の取り組みをしたとはまったく考えていません。なぜなら、市町村老人保健福祉計画、市町村障害者計画、市町村児童育成計画といった行政計画の策定・実施・見直しにどうアプローチし得るのかが社協にとって大きなテーマであることは、当然のことだからです。計画が中・長期的に市町村の福祉施策の基礎整備のあり方等を決定づけ、住民の暮らしのありように大きな影響を与えることは必至であり、その計画の策定から実施にいたる手法(特に、実態調査やサービス必要度の算定方法、策定課程や進行管理への住民参加の保障)が概して不十分であることもまた明らかです。

 本会では、市町村老人保健福祉計画策定の折にも、県のモデル計画の比較表、市町村老人保健福祉計画策定進捗状況比較表(市町村社協を介して策定状況を把握し、老人保健福祉圏域ごとに各市町村の状況を比較できるように整理したもの)を提示し、福祉活動専門員研修会等で検討を加えるとともに、会長・事務局長・福祉活動専門員の合同会議を開催してチェックポイントを示し、アプローチのあり方について実践の申し合わせを行った経験をもっています。

 楽観主義といわれそうですが、このように県社協が具体的な実態に基づいて正しく課題を提起できれば、市町村社協は必ずその重みを受けとめてくれるものと確信しています。

3 取り組みの現状と構想

 今年の8月に組織化を呼びかけ、11月の発足を目標に、5月から実務者レベルの組織化推進会議(障害者団体、ボランティア連絡会、市町村社協、障害者施設協議会、研究者19名で構成)を進めています。

 県域の障害者団体は、市町村障害者計画へのアプローチを当面の課題としていますが、前述の調査によると、1996年1月現在で、95市町村中、策定済2市、策定作業中5市8町、検討中9市38町、その他33となっています。その後、計画書の現物を集めたり、聞き取り調査を行っていますが、策定への当事者の参加が不十分であること、精神障害・てんかん・自閉症・難病といった領域が欠落していること、数値目標が設定されていないこと、計画の実施を進行管理する組織づくりが検討されていないこと等の問題点が浮き彫りになっており、未策定のところへのアプローチはもちろん、策定中・策定済のところに対してもさまざまなアプローチが必要であることが明らかになってきました。

 また、策定主体である市町村へのアプローチのみならず、大きなウエイトを占める広域調整の課題に関する県へのアプローチ、運動を担う市町村単位(あるいはより広域)の障害者関係団体へのアプローチ、そして、行政施策に関する最新情報や全国的運動についてのトータルな情報を得るための全国組織へのアプローチも必要になってきます。

 市町村の計画づくりを担い得る運動の主体形成が未成熟な現状では、県域の障害者団体(障害の種別を超えた横断的組織であること、研究者や実践家を含めた英知を結集した組織であることが要件)の役割はきわめて重要であり、この組織が一定機能することなしには、まともな実践は期待できないとすら考えています。気運づくり、要請、要望、政策提言、調整、学習・情報提供、組織強化といった実践をどれだけ担い得る組織として発足し、動き得るのかが、今私たちの歩みに問われています。

 「なかなか難しい」というのが率直なところですが、力量不足を痛感しながらも、さまざまな可能性を秘めたこの組織づくりに夢を託しつつ、粘り強く取り組んでいきたいと思っています。

(ふじたひろひさ 福岡県社会福祉協議会)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年8月号(第16巻 通巻181号) 26頁~27頁