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特集/「アジア太平洋障害者の10年」中間年を迎えて

日本精神薄弱者福祉連盟の取り組み

有馬正高

 知的障害をもつ人たちへの多面的な取り組みのなかで、アジア太平洋地域の協力に主眼をおいて日本精神薄弱者福祉連盟(以下「福祉連盟」という)が行ったことについて申し上げたい。

 設立の当初から、福祉連盟は知的障害に関係するアジア各国の諸団体とともにアジア精神遅滞連盟(AFMR)を結成してきた。

 AFMRは、2年に1度国際会議をもち、アジア各国の教育、福祉、保健の担当者や家族などの参加のもとに、各国からの発表や情報の交換を行っている。また、その会議には、国連、世界連合の役員なども参加し、国際的な情報の伝達にも役立っている。ノーマライゼーションやインクルージョン等の思想とその実現に向けた欧米の歩みを知る機会をもたらしてくれたと思う。AFMRへの役員の派遣や優れた研究に対する表彰などについて、福祉連盟は人的、物的協力を行ってきたので、今後も可能な限り継続したいと考える。

 福祉連盟は、日本の知的障害問題について、政治、地方行政、NGOの活動等に関する統計資料やニュースを発行しているが、その一部を英文の白書として発刊してきた。本年度も1996年版を作成中であり、アジア各国の個人および団体に配布する予定である。97年以降は、さらにアジア諸団体の協力を得て各国の行政やNGOについても白書に収載し、各国の相互理解に役立てることを計画中である。

 福祉連盟は、知的障害に関係するアジアの専門家を支援したいと努めてきた。すでに、1980年から精神遅滞専門家養成コースを企画し、JICA(国際協力事業団)の支援を得てアジア各国から推薦され選ばれた研修生10名弱を毎年受け入れ、数か月のカリキュラムで日本各地の専門家や専門機関による講義と現場実習を続けてきた。当初、研修生を推薦した国の多くは、資源と経済が豊かになり、帰国した研修生もリーダーとして実績を上げている。

 今後もこの事業は継続するよう努力するが、さらに新しい国からの推薦を積極的に受けられるよう、広報を工夫したいと考慮中である。

 アジア諸国の関係者との協力をすすめるなかで自国での活動に対する経済的支援や留学などを引き受けて欲しいという要請は以前からもあったし、現在もしばしば遭遇している。福祉連盟自体は経済的支援を行える状態にはないので、情報の伝達と基金を得て事業を行うという役割で今後5年間の計画を立てている。

(ありままさたか (社)日本精神薄弱者福祉連盟会長)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年1月号(第17巻 通巻186号) 24頁