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特集/「アジア太平洋障害者の10年」中間年を迎えて

日本ポーテージ協会の活動-アジアの国々への支援-

山口 薫

 ポーテージプログラムは、1972年にアメリカ合衆国のポーテージで開発された発達遅滞乳幼児の早期教育プログラムであるが、現在では34か国語に翻案され、世界の90か国で使用されている、世界でもっとも広く使われているゼロ歳からの早期教育プログラムである。

 家庭で母親を中心とする家族が直接指導するプログラムであるので、施設や学校がなくとも親を訓練することによって効果を上げることができるので、アジア、アフリカ、中南米などの途上国でも多く使われている。

 日本ポーテージ協会は、1985年の創立以来、国内で普及活動を行うとともに、1988年には東京で国際ポーテージ会議を主催するなど国際的連携にも力を入れてきたが、最近はアジアの途上国への支援を重要課題の一つとして活動を行っている。

 これまで、フィリピン、パキスタン、バングラデシュ、中国(大連、北京、南京)、台湾で2、3日間のポーテージワークショップを行ってきたが、かなりの効果を上げることができ、引き続いてより高度のワークショップを開催してほしいという要望がでできた。今後はその要望に応えるとともに、アジアの他の国々にも広げることを計画している。

 幸い、この計画に対し、三菱財団から研究助成金をいただけることになったので、これからの1年間に下記のような活動を行うことが決定している。

 (1) ダッカ(バングラデシュ)、ダバオ(フィリピン)、大連(中国)、台北(台湾)、カラチ(パキスタン)の5か所でポーテージワークショップを行う。

 (2) 中国、台湾、およびアジアの各地に住む中国系の人たちを対象に、特殊教育、ポーテージ関係の資料を中国語に翻訳して配布する。

 このプロジェクトの題名は「アジアの途上国における発達遅滞乳幼児の早期教育を中心とするCBR活動の調査研究と研修事業」である。乳幼児の早期療育は家庭での家族が中心になって行われるべきであり、CBR活動として位置づけるのが望ましいと考え、これから行うワークショップには、できるだけ地方から参加者を集め、各地域でポーテージ指導の中心になるリーダーを育てたいと願っている。そのために各地のCBR活動の現状と課題の調査も行う予定である。

 1998年11月には、広島で第7回国際ポーテージ会議を主催することになっているので、アジアの途上国でのポーテージ活動の発展についてこの会議で成果を報告してもらうことにしている。

 これからの日本とアジアの国々との関係はこのような活動を通して連携を深めていくべきであると考えているが、その際大切なことは、われわれが途上国に一方的に援助を与えるのではなく、お互いに平等な立場で、ともに学び合うという態度である。事実、われわれが学ぶべき貴重なものが少なくないのである。

(やまぐちかおる 日本ポーテージ協会会長)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年1月号(第17巻 通巻186号) 28頁