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特集/「アジア太平洋障害者の10年」中間年を迎えて

国内外の障害者関係団体とのネットワーク強化に向けて

上野悦子

 日本障害者リハビリテーション協会(以下「当協会」とする)では、アジア太平洋障害者の10年(以下「10年」とする)が開始されて以来、10年の推進を事業の中心に据え、積極的に行ってきた。

 当協会は、10年を域内の民間でも推進していくことを目的に設立された「アジア太平洋障害者の10年推進NGOネットワーク」(以下「RNN」とする)の事務局(事務局長は、当協会の丸山一郎)を務めている。RNNは、域内12か国の国内NGOおよび6つの国際NGOとの連携強化のための活動を行っている。RNNの活動の一つとして、毎年アジア太平洋の各国持ち回りキャンペーン会議を開催している。1993年の日本・沖縄県での開催をスタートに、1994年はフィリピン・マニラ、1995年はインドネシア・ジャカルタ、そして昨年はニュージーランドのオークランドで開催し、「10年」の啓蒙に貢献している。本年9月には中間年として韓国のソウルでの開催が予定されており、日本からも多くの参加が期待されている。

 当協会は、RI(国際リハビリテーション協会)の日本における加盟団体としてRIを通した国際活動を行っている。昨年9月に開かれたRI総会では、日本の松井亮輔氏(日本障害者雇用促進協会)が副会長(同時にRIアジア太平洋地域委員長)に選出された。当協会は、今後4年間RIアジア太平洋地域事務局として活動を行う。

 1984年から実施してきたJICA(国際協力事業団)研修の成果として誕生した、元研修参加者のネットワークであるRANAP(アジア太平洋リハビリテーション従事者行動ネットワーク)および日本の障害分野で国際協力をしている民間団体(NGO)のネットワークであるJANNETの事務局も務めており、国内の関係者、団体とアジア並びに世界各国のネットワークの強化、コーディネーションに務めている。

 他にも、アジア太平洋地域のニーズに応え、車いす製作などの義肢装具やCBR(地域に根ざしたリハビリテーション)などのプロジェクトに対する協力活動も行っている。フィリピンで唯一車いすを製作している「段差なきセンター」に対しては、より軽量の車イスを量産するためのパーツ製作のための機械購入費の一部を、国際ボランティア貯金の助成を受けて協力し、さらに車いす製作の専門家を派遣して技術的アドバイスを行った。

 1991年からは、インドネシアのCBRを始める専門家やワーカーのためのセミナー開催に協力している。セミナーに参加した人は150人を超え、アジア各地で活躍している。

 今後の課題の中で最も大きなことは、リハビリテーション分野において国際活動を行う人材の養成である。幸い、当協会は、1996年から研究者養成のため国から厚生科学研究費の補助を受け、障害者等保健福祉総合研究推進事業を実施することになった。事業の内容は、海外の研究者の招へい、日本の研究者の派遣および若手研究員の養成などである。当協会としては、人材をいかに組織的に養成していくか、関係者の皆様のご助言ご支援を得て、取り組んでいきたい。

(うえのえつこ (財)日本障害者リハビリテーション協会)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年1月号(第17巻 通巻186号) 31頁